【写真】渡辺のヒジとヒザが目立ったが、玉田も決定打を許さず(C)MATSUNAO KOKUBO
<女子アトム級/5分2R>
渡辺久遠(日本)
Draw.1-0:20-18.19-19.19-19.
玉田育子(日本)
【写真】渡辺のヒジとヒザが目立ったが、玉田も決定打を許さず(C)MATSUNAO KOKUBO
<女子アトム級/5分2R>
渡辺久遠(日本)
Draw.1-0:20-18.19-19.19-19.
玉田育子(日本)
【写真】黒部が頭を下げるところを狙っていたという前戦。強い打撃を生かすための冷静な判断力と当てきる技術がある(C)SUSUMU NAGAO/SUSTAIN
21日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催される女子修斗興行COLORSにて、修斗世界女子スーパーアトム級王者SARAMIに挑む渡辺彩華のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike
プロ4戦目で修斗王座に挑むこととなった渡辺。対戦相手は過去2試合の相手、藤野恵実と黒部三奈の練習仲間でもあるSARAMIだ。日本女子トップファイターとの連戦で、自身でも成長を感じているという渡辺が語るSARAMI戦への自信と、その先に見据えているものとは――。
<渡辺彩華インタビューPart.01はコチラから>
――柔道出身の渡辺選手が打撃中心のファイトスタイルになったのは、いつ頃からなのでしょうか。
「なぜか最初からそうでしたね。柔道の投げを生かしたテイクダウンを練習していたのに、気づいたら打撃戦になっていて……」
――気づいたら(笑)。その理由は分からないのですか。
「分からないです……。打撃に触れたのはMMAを始めてからなのに、自分が一番驚いています(苦笑)」
――前回の黒部三奈戦を見て驚いたのは、渡辺選手の足さばきです。確かにリーチはあるし、パンチも伸びる。それ以上にプロデビュー3戦目にも関わらず、しっかりとパンチを効かせるための位置へ移動するための足さばきが目立ちました。
「そうなんですか! ありがとうございます。自分でも気づいていませんでした。ボクシングジムに通い始めたのも最近というか黒部戦のあとで。もともと打撃は我流でしたし、基本的にはAACCの打撃練習に参加していただけだったんです。
ただ、浜崎さんやRENAさんと練習しているのは大きいと思いますね。RENAさんの打撃は言うまでもなく、浜崎さんもパンチが当たるとメチャクチャ痛いんですよ。拳が固くて、石で殴られているような感じで。そう考えると、自分より強い人たちと練習することが重要なんだなって思いますね。今もAACCで、打撃もテイクダウンも寝技も自分より強い人しかいなくて(苦笑)。だから普段の練習はキツいです。でも藤野さんとの試合や黒部さんとの試合で――実際の試合で自分の成長を感じさせてもらっているというか。最近は自分より強い選手と対戦した時に、どこまでやれるのか楽しみで仕方ないです」
――戦うために生まれてきた、ナチュラルボーン・ファイターのようですね。敗れたとはいえ、プロデビュー2戦目でトップファイターである藤野選手と対戦できたことは大きかったですか。
「すごく嬉しかったです。私がMMAを始める前から、藤野選手も黒部選手も、そしてSARAMI選手のことも知っていたわけですよ。こんなにキャリアが浅い自分が、そういう選手と対戦できるのはラッキーだなって思います。やっぱり強い選手に勝つと、それだけパーンって上がっていくじゃないですか」
――黒部戦の内容と結果は、まさに選手が上がっていく様を体現したと思います。
「そうですよね。MMAを始める前から、とにかく強い相手と対戦したかったし、藤野戦のオファーが来た時も嬉しくて。強い選手と試合するのも恐怖はなくて、楽しみでしかないです。やっぱり格闘技って他のスポーツと比べて、選手寿命も短いじゃないですか。短い期間の中で、どれだけ濃い格闘技人生を送ることができるか。それは練習でも、試合でも。勝てる相手とだけ試合をして、戦績だけ良くする――私がやりたいのは、そういうことじゃないんですよ。強い相手に勝っていくのは格闘技だと思っているので」
――では敗れた藤野戦とKO勝ちした黒部戦の間に、何か成長したり身につけたものはありますか。
「藤野さんとの試合は52キロ契約で、やっぱり相手が大きかったです。パンチの威力も違うし、体づくりって大事だなって痛感しました。黒部さんの時は階級を下げたうえで、自分の通常体重を上げたんですよ。だから減量の幅も試合当日の体重も、藤野戦よりも黒部戦のほうが上で。おかげで私のパンチが効いているのは分かりました。藤野さん、黒部さんと対戦させてもらって一番良かったのは、そういう体づくりの重要性が分かったことですね」
――なるほど。その藤野戦、黒部戦を経て次はSARAMI戦を迎えます。
「皆さん、練習仲間なんですよね。もうその練習会が敵になっていますよ(苦笑)」
――アハハハ。
「私の中では、やっぱり藤野さんに負けたのが悔しくて仕方ないです。同じ体重で打ち負けて――もうボッコボコにされましたから。黒部さんとの試合でも、SARAMIさんと試合をすることになっても、どうしてもその先に藤野さんのことを考えてしまいます。いずれ藤野さんにリベンジしたいんですよ。絶対に、たとえ52キロ契約でも。藤野さんはパンクラスに出ていて、私は修斗に出ているからお互いの試合があるし、タイミングが合わないかもしれません。だから今は修斗で、私がチームメイトに勝つ姿を藤野さんに見せつけたい。間接的に藤野さんと戦っている、という気持ちで自分の気持ちを盛り上げています。私、ずっと根に持つタイプなので(笑)」
――根に持つというよりも、戦うということに対して正直なのではないでしょうか。渡辺選手のチームメイトでいえば、浜崎選手と初めて話した時と同じような感覚を持っています。
「そうなんですね。自分では『今、負けただけ。最後に私が勝てば良い』と思っています。MMAって考え方はシンプルじゃないですか。勝てば良い。勝つことで発言権が得られる。黒部さんにKO勝ちして、次はベルトを目指したいと発言したら、実際にSARAMIさんとの試合が実現しましたよね。だから今後も、勝ち続けて藤野さんを引きずりだしたいです」
――とはいえ、その先に藤野選手が見えるかどうか分からないほど、SARAMI選手の壁は高いと思います。
「もちろんです。本当に何でもできる選手ですよね。何かに偏っているわけではなく、巧くて引き出しが多いと思います。でも私が柔道時代に先生から言われたことがあって――『巧い選手は強い選手に勝てない』と。巧さよりも強さを身につけろ、と教わりました。SARAMI選手はすごく巧くて、私からすればもうキャリアの差は埋められないんですよ。でも、黒部さんの試合でもそうでしたけど、私は思い切りが良いと自分でも思っています。フルスイングしてSARAMIさんの意識を飛ばしてやります!」
■視聴方法(予定)
5月21日(日)
午後1時~ABEMA格闘チャンネル
■COLORS 対戦カード
<修斗世界女子スーパーアトム級選手権試合/5分5R>
SARAMI(日本)
渡辺彩華(日本)
<女子アトム級/5分3R>
古賀愛蘭(日本)
ジェニー・ファン(台湾)
<女子アトム級/5分3R>
中村未来(日本)
川西茉夕(日本)
<グラップリングルール53キロ契約/8分1R>
前澤智(日本)
杉内由紀(日本)
<インフィニティリーグ2023女子ストロー級/5分2R>
杉本恵(日本)
吉成はるか(日本)
<インフィニティリーグ2023女子ストロー級/5分2R>
宝珠山桃花(日本)
エンゼル☆志穂(日本)
<女子アトム級/5分2R>
渡辺久遠(日本)
玉田育子(日本)
<グラップリングルール49キロ契約/5分1R>
井上愛羅(日本)
NOEL(日本)
【写真】AACC内では浜崎朱加選手は「あやか」、渡辺彩華選手は「なべあや」と呼び分けられているそうです(C)SHOJIRO KAMEIKE
21日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催される女子修斗興行COLORSにて、渡辺彩華がSARAMIの持つ修斗世界女子スーパーアトム級王座に挑む
Text by Shojiro Kameike
2020年12月にパラエストラ柏からDEEP JEWELSでプロデビューした渡辺は、ブランクを経てAACCに移籍。2戦目は藤野恵実に判定負けを喫したものの、続く3戦目で元修斗王者の黒部三奈をKOして今回のベルト挑戦のチャンスを掴んだ。女子修斗の中でも1、2を争う大波乱を巻き起こした渡辺のキャリアは、いかにして形成されてきたのかを訊くと、まさかのライバル関係についても自ら触れ始めた。
――渡辺選手はアマチュア時代からプロデビューして現在に至るまで、打撃中心で戦っていますが、もともとは柔道出身と聞いて驚きました。
「実はそうなんです(笑)。柔道は小学1年生から大学4年まで、15年間やっていました」
――15年間! 柔道での実績を教えてください。
「大学時代、インカレに出たぐらいですね。地元の愛知県には大成中学校・高校という、日本一を続々と輩出するような柔道の強豪校があるんですよ。私は大成の選手にずっと勝てませんでした」
――これまで柔道出身のMMAファイターにお話を聞くと、強豪校の壁に阻まれて柔道を引退するケースもありました。渡辺選手の場合は、大学まで柔道を続けたのですね。
「中高時代は練習で大変な思いをしても、なかなか勝てませんでした。すごく悔しかったです。でも自分の中で柔道に対して一区切りつけるためには、全国大会に出たい。そうでないと、大変な思いをしたことが報われないと思いました。
私は小さい頃、心も体も弱くて柔道を始めたんですよ。柔道のおかげで心も体も強くなることができました。中高時代は勝てなかったけど、それでも大学に進んで柔道を続けて、インカレに出た時に『これで柔道を辞めることができる。頑張って良かった!』と思いました」
――しっかりと一つ目標を達成することができたわけですね。大学卒業後にすぐMMAを始めたのでしょうか。
「いえ、大学時代から公務員になるための勉強をしていて、愛知県内で公務員として就職しました。3カ月ぐらいで辞めちゃったんですけど……」
――3カ月で退職というのは早いですね。
「柔道を辞めて公務員になったものの、刺激が足りなさすぎてMMAを始めようと思いました(笑)。ずっと柔道をやっていて、毎日練習していましたから、戦うことが日常化していたんですよね。それが戦わなくなると、一気に刺激がなくなって」
――刺激を求めて、いわゆる「遊び」に走る人もいます。渡辺選手はそうではなく、再び戦う日々を求めたということですか。
「遊びたい、っていう感覚はなかったですね。お酒も得意じゃないですし。ウチはお父さんが格闘技の大ファンで、リビングのテレビにMMAの試合が映っていることが普通でした。だから自分がMMAに進むことになっても、恐怖とか違和感というものはなかったです」
――1997年生まれの渡辺選手にとって、子供の頃は山本KID徳郁さんや五味隆典選手が活躍していた頃だったと思います。しかし以降は国内の興行規模も縮小していくなかで、MMAを始めることに不安はなかったのでしょうか。
「確かに子供の頃と比べると、男子の試合はそうだったかもしれないです。でも女子に関しては盛り上がってきていましたよね。RIZINが始まってから浜崎朱加さん、RENAさん、浅倉カンナ選手が活躍していて。私が初めてRIZINの会場にお客さんとして足を運んだのが、大学3年の時でした。ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で浜崎さんや浅倉選手の試合を見た時、『すごくキラキラしている』って感じたんですよ。その頃から、趣味として見るのではなく、競技としてMMAをやってみたいと意識し始めました」
――そして、最初は浜崎選手側ではなく浅倉選手側へ……。
「いやいや(苦笑)。最初はパラエストラ柏とAACCの両方を見学する予定だったんです。先にパラエストラ柏を見学した時に、初めてMMAに触れたら楽しすぎて。もうMMAをやりたい気持ちが強くなりすぎて、AACCを見学せずにパラエストラ柏への入会を即決してしまいました。今考えると、ヤバいことをしてしまいましたよね」
――ヤバい、というのは?
「だって……、やっぱりライバルじゃないですか」
――アハハハ。パラエストラ柏の鶴屋浩代表とAACCの阿部裕幸代表も、そこでトラブルに発展するような間柄ではないでしょう。
「パラエストラ柏時代、プロ2戦目の前に負傷して、一度地元に戻ったんです。実家から病院に通院することになって、パラエストラ柏からも離れてしまいました。『もうMMAは無理かな……』と思っている時に、ずっと知り合いで連絡を取っていた大島沙緒里さんが『もう少しMMAを続けてみたら?』と言ってくださったんです。それで通院が終わってからAACCへお邪魔させていただいた時に、体を動かしたら『やっぱりメチャクチャ楽しい!』と感じて。阿部さんにも相談し、AACCに移籍することになりました。……ウフッ、AACCとパラエストラ柏の複雑な関係もありましたけど(笑)」
――ネタにしようとして、もう先に自分で笑ってしまっているじゃないですか(笑)。ちなみに浜崎選手と浅倉選手が対戦した時は、どちら側だったのでしょうか。
「2度目の対戦(2021年3月)ですよね。その時は地元で通院しているので、どちら側でもなかった――と思います(笑)」
――一方、地元を離れてMMAを始めた娘さんが負傷して地元へ帰ってきた。でもMMAを再開するということで、親御さんは反対しませんでしたか。
「お母さんからは最初にMMAをやるという時に反対されていましたし、やっぱり再開する時も反対されました。一緒に病院へ行った時、先生に『同じようなことが続くと……』と説明を受けて、お母さんからは『これからの人生のほうが長いのだから、MMAは辞めたほうが良い』って。私も迷惑をかけ続けてしまいましたからね。メチャメチャ時間をかけて、お母さんを説得しました。親と一緒に病院の先生とも相談しながら、私からも『MMAは今しかできないから続けたい』と説明して。その時、私自身の中でもMMAをやっていくための覚悟ができた気がします。お母さんも納得して、今はすごく応援してくれています」
<この項、続く>
■視聴方法(予定)
5月21日(日)
午後1時~ABEMA格闘チャンネル