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Interview Special UFC カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:10月─その弐─ヌルマゴメドフ×ゲイジー「引退は信じちゃダメ」

【写真】スクランブル全盛時代、スクランブルにならない強さを持つヌルマゴメドフだった (C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年10月の一番、第2 弾は24日に開催されたUFC254からガビブ・ヌルマゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジーの一戦を語らおう。


──10 月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?

「ヌルマゴメドフとゲイジーですね。この試合で面白いと思ったのは、やっぱり総合格闘技だということ。ヌルマゴメドフって打撃が粗いと思うんです。でも、だからって打撃が上手じゃないってことではなくて、組みありきだから。それであれだけプレッシャーを与えることができる。あの個体の強さがあって、組むまでにあの打撃があれば無敵だと思いました。

あれだとゲイジーは前に出られない。出ると殴られるし、倒される。それでヌルマゴメドフが押し切っちゃいました」

──あのジャスティン・ゲイジーを相手に……。

「ハイ。ゲイジーが疲れるって、凄いモノを見ましたね」

──テイクダウンも強いですが、テイクダウンをしてからも強かったです。

「ヌルマゴメドフの一番の強味は寝かせる技術です。今回の試合はあまりなかったですけど、倒してから寝かせることができる。だから殴って、極めもある。でも、今回はゲイジーが殴る前から消耗していて。

フォークスタイルはスクランブルがあるといっても、あれだけ力の差があるとゲイジーは無理でしたね。ただヌルマゴメドフも正直、初回は効いていたと思うんです。それでも前に出続けることができる強さ……新しいスタイルじゃないんですけどね」

──新しいスタイルではないというのは?

「凄くテクニカルにMMAを戦うわけじゃないです。GSPよりの前の世代というか。スタイルとして前の世代で、アレは新しいとか最先端ではない」

──打撃からテイクダウンで倒されない。倒されても直ぐ立つ。だから今のスクランブルMMAの時代になったのですが、ヌルマゴメドフは倒して抑えることができてしまう。

「ハイ。GSPはもっとテクニカルで、ジャブも綺麗でレベルチェンジも素晴らしい。そしてレスリングもテクニカルでした。だから参考にしたくなりますけど、ヌルマゴメドフを参考にしようとは思わないですよね」

──確かに、その通りですね。

「結論として、ヌルマゴメドフが強いからってことで他の選手がやってもああはならない。ヒョードルっぽいですよね。マネできるものじゃない」

──そのヌルマゴメドフが無敗のまま引退を決めました。

「あぁ、なんでしょうね……UFCのシステムだと次のスターが生まれるから、また次の戦いが見られる。ヌルマゴメドフがいなくなったからって、UFCがつまらなくなると思わないです。どんどん、出てくるでしょう。マイケル・チャンドラーもいるし、階級を上げたり、落としたりっていう選手もでてくるだろうから。

ゲイジーもまだやるだろうし、ファーガソンもいる。他のロシア人や中央アジア人も出てくるでしょう」

──ただしUFCとしては痛くないでしょうか。

「えっ、なぜでですか」

──ヌルマゴメドフがここまでの存在になったのは、コナー・マクレガーがいたから。ヌルマゴメドフはその彼に勝った。いわばレガシーを継いだ。青木選手やコアファンは、強いファイターが出てくると楽しめる。ただし、UFCに必要な一般層は、そういうレガシーを継ぐ選手なのではないかと。

「あぁ、でもヌルマゴメドフは勝ったままいなくなるってことですね。引継ぎができなかった。そうですね、マクレガーが今、試合をしてもタイトル戦の軸にいないし。そこが継げる選手は出てこないわけだ」

──BMF路線は名実ともにトップにはなれないです。人気は抜群であったとしても。

「そうですね。そもそも僕にとってマクレガーはチャド・メンデス、ジョゼ・アルドまでで。ネイト・ディアスとの時はいわばBMF路線でしたよ。でも、一般の人はそこが必要なんですよね、UFCといえども。タイトル戦の抱き合わせっていうPPVじゃない王者がいなくなるわけだ。

でも、ヌルマゴメドフもまた出てきますよ」

──引退撤回しますか。

「マクレガーにしても一生食えるのに出てくるって……明確にファイトジャンキーですよ。覚せい剤と同じなんでしょうね、やったことないから分からないけど(笑)」

──アハハハハ。例え話でないと、人生破滅です。

「要は快楽ですよ。快楽が欲しくなればヌルマゴメドフも戻ってきます。格闘家とミュージシャンの引退は信じちゃダメです(笑)」

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Bu et Sports de combat カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ヌルマゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジー

【写真】予想外の一方的な展開になったのは──なぜか(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──UFC254におけるカビブ・ヌルメゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジーとは?!


──序盤の打撃戦はともかく、テイクダウンから試合はヌルマゴメドフの一方的なモノになりました。

「ボクシングだけでいえばゲイジーの方が良かったです。1Rに右を当てて、ヌルマゴメドフをふらつかしていますし。ヌルマゴは上下で攻めてくる人間に対して、苦手にしている部分があります」

──ただし、ゲイジーは強烈なローキックの持ち主ですが。ローでKO勝ちもしています。

「まぁ武術的な理の話は理論であったり、技術の話になりがちですが、そこを突き詰めていくと今回の試合のように──そこを動かしているのは人間性、精神、思考ということになります。人間力が結果として質量を上げるということを感じます。

どこを目指してやっていくのか……何を目指しているのか。不利な試合に挑むというのは、指導をするにあたって非常に役立つことがあります。今回、ゲイジーはもう怯えていました。あのトニー・ファーガソン戦の強さはどこに行ったのかというほどに。なぜ、あのパンチをヌルマゴに打てなかったのか。

ヌルマゴのレスリングと寝技に対して自信がなかったので、あれほどまでにビビってしまったのではないかと思います。つまりは──ヌルマゴの凄まじいレスリング力とコントロール、そしてフィニッシュ力に対し、最悪の想定をしていなかったのではないかと。

試合でビビるというのは、自分を信じることができていないからです。では、どうすれば自分を信じることができるのか──まずは自分にとって不都合なことばかりを想定することです。最悪な状況を想定する。

そうなったときにトレーニングと稽古の違いが見られます。トレーニングは本人が最高のパフォーマンスを発揮するために行うモノです。最高のパフォーマンスが10だとすれば、トレーニングではパフォーマンスが12の人との溝は永遠に埋まらないです。しかし、10の人間が8しかない、7しか出せない状況に追い込めば、10を超えて12、15という力を出せることがあります」

──それが稽古ということですか。

「ハイ。稽古ですが、相当に厳しい稽古です。毎日が憂鬱になるような。ただし、そこを経験すれば試合前の恐怖や緊張はなくなります。緊張やプレッシャーは誰にでもあるからこそ、自分の心も体もぶっ壊れるような稽古をする。ただし、これは1人では無理です。選手と指導者の間にそこまでやる信頼関係があれば勇気を持って上がって行けると思っています。

ゲイジーはNCAAの強いレスラーをパートナーに練習をしていたとも聞きました。ヌルマゴの動きを想定して、そういうトレーニングをしたのでしょう。でも、そういうパズルが上手く組み合わさることは余りないです。

そういう方法論は通じない。方法論を動かすのは人間です。だから、どこまで想定していたのか。稽古の修羅道というのですが、挫折して嫌になるような修羅を何度見たかで、フッと乗り越える瞬間があります。

ゲイジーもレベルの高い練習はしていたはずです。ただし、修羅を見るまでの稽古をしていたのか。していたようには、私には見えなかったです。これは彼が負けたからではないですよ。負けても、それが見える選手はいます。ヌルマゴは子供の頃から、お父さんとやってきたのでしょう。息子だから、ダメなところをどんどんついていたでしょうしね。

ゲイジーがあそこまでビビっていたのは、稽古でそこまで追い込んでいないから。そうなると怖くなってくるんです。この試合で圧倒的にヌルマゴの質量が高くなったのですが、それはゲイジーがそうさせてしまったんです。ゲイジーの質量がいつもと比較して、全くなかった。怯めば、質量は下がります。そうなるとヌルマゴの質量は上がる一方です。

相手が自分にとって、そこまで強いと容易に分かる相手の時は、やはりそういう稽古をしなければならない。それはトップ・オブ・ザ・トップのUFCの世界戦かもしれないし、海外で戦う試合かもしれない。日本の大会でベルトに挑む試合、あるいは2回戦かもしれないです。でも、強大な敵と対することが分かっているなら、自分の限界から始める稽古を行い、乗り越えた自信がつくと試合でそこまでの精神的なプレッシャーには掛からない。そうなることで質量は下がらないです。

相手より自分の質量が低い場合は、相手の質量を上げさせないで戦うことが重要になってきます。つまり、いかに自分の質量を下げないで戦うのか。それは怯まないこと。その怯まないで戦う精神は、自分の限界を超える稽古で養われます。ただし1人では無理です。だからMMAの場合は、チームでやれるのか。そういう稽古をしているようには感じられなかったゲイジーは、大勝ちするか、一方的にやれるのか。そういう選択しか、ヌルマゴと戦うことでなかったように見えました」

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Report UFC UFC254 カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ブログ

【UFC254】三角絞めでゲイジーを落として勝利したヌルマゴドフが、まさかまさか──涙の引退表明!!

<UFC世界ライト級王座統一戦/5分5R>
カビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア)
Def.2R1分34秒by 三角絞め
ジャスティン・ゲイジー(米国)

やや遠い距離で右に回るヌルマゴメドフに対し、ゲイジーが左ローを蹴る。ゲイジーは左右に小刻みにステップを踏み、右ローも空振りに。それでも飛び込んで左ローを蹴ったゲイジーが、前に出てきたヌルマゴメドフにパンチを当てる。左アッパーで前に出たヌルマゴメドフだが、当たらず左ジャブを伸ばす。ローをキャッチしたヌルマゴメドフは、リリースして右を当てて組みへ。離れてジャブを連続でヒットしたヌルマゴメドフに対し、ゲイジーの大振りのパンチは当たらない。

足を使って回るゲイジーにヒザを入れたヌルマゴメドフは近い距離から走るように離れるゲイジーにジャブから右ストレート、さらに腹を蹴っていく。跳びヒザは距離が合わなかったヌルマゴメドフだが、左を振るって前へ。ゲイジーはボディからフックを狙う。かなりドタバタした展開のなかで、ヌルマゴメドフが右、ゲイジーが左を当てる。残り40秒でヌルマゴメドフがダブルレッグでテイクダウンを決めマウント、腕十字を狙ったところで初回が終わった。

2R、左ジャブを被弾するゲイジーは、左フックを打ち返す。さらにテイクダウン狙いを切り、右ローでヌルマゴメドフはバランスを崩される。直後にゲイジーのローにダブルレッグを仕掛けたヌルマゴメドフがバックに回る。上を向こうとしたゲイジーからマウントを取ったヌルマゴメドフが、三角絞めへ。そのまま下になり、三角を完成させるとゲイジーがタップ。レフェリーが見落とし、ゲイジーが落ちて勝負が決まった。

直後にキャンバスにしゃがみ込んで涙を流したヌルマゴメドフは、「神が全てを与えてくれた。ここにいる彼ら、そして20年以上も面倒を見てくれた父に感謝している。全ての僕のチーム、AKA、心の底から愛している。これが最後のファイトだと言いたい。父がいないなかでやってきた。初めてことだ。父を亡くして、UFCからジャスティン戦の話がきた時、母と3日間話した。彼女は父なしで、僕に戦ってほしくなかった。これが最後の試合だと約束した。全てをぶつけた。だから引退を実行する。

UFCに一つだけ望むことは、P4Pのナンバーワン・ファイターに認定してほしい。それが望みだ。UFCアンディスピューティッド・ライト級王者、29試合のMMAキャリアでFCでは13勝0敗だ。ロレンゾ・フォルティタ、ダナ・ホワイト、感謝している。そしてジョー・シルバ、僕と契約してくれたことは忘れない。ありがとう。パンデミックのなかで、素晴らしい仕事をしているUFCの皆にありがとうと言いたい。ジャスティン、ありがとう。君が勇敢なことは知っている。君のことは良く分かる。明日のことは誰も分からない。でも、いつかこういうことは起こる。みんな、ありがとう。今日が僕のUFCでの最後の試合だ。父の夢が叶った。コナーとジャスティンの2人からチョークで勝った。もう、コレに興味はない」とUFC統一世界ライト級王者は、衝撃の引退発言を行った。


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News UFC UFC254 カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ブログ

【UFC254】計量終了 下着を脱いでパスのヌルマゴメドフに心の乱れ?! ゲイジーにブレなし!!

【写真】ファイトウィークで、このような覇気のないヌルマゴメドフの表情は過去にあっただろうか(C)Zuffa/UFC

24日(土・現地時間)、UAEはアブダビのヤス島=UFC Fight Island で開催されるUFN180:UFN on ESPN+38「Ortega vs Korean Zombie」が開催されるUFC254「Khabib vs Gaethje」の計量が行われた。

メインでUFC世界ライト級王座統一戦を戦う正規王者カビブ・ヌルマゴメドフと暫定王者ジャスティン・ゲイジーは、揃ってリミット丁度の155ポンドでクリアした。


サングラスとマスク着用でステージに登壇したヌルマゴメドフは、下着を脱いで計量をパス。その瞬間に心底ホッとした表情を浮かべると、大きく息をついてスケールの上でポーズを取った。一方のジャスティン・ゲイジーはマスク越しからでも、自信と集中力が伝わってきた。

ケージ内では常にポーカーフェイスのヌルマゴドフが見せた心のぶれだったが、フェイスオフではゲイジーと握手をかわし泰然とした顔に戻っていたが……果たして。

ウェルター級でシャクハト・ラクモノフと対戦するアレックス・オリヴェイラは、: 3ポンドオーバーで20パーセントの減給、オープニングファイトのライト級に出場するジョエル・アルバレスは4.5 ポンド超過、ファイトマネーの30パーセントを没収されアレクサンドル・ヤコブレフと拳を交えることになった。

またバックファイターとして現地入りしているマイケル・チャンドラーは155ポンド、セルゲイ・モロゾフは139.5ポンド、イシ・フィティケフが203.5ポンドとなっている。

■視聴方法(予定)
10月25日(日・日本時間)
午前零時~UFC FIGHT PASS
午前3時~UFC Fight PASS PPV
午前3時~WOWOWメンバーズオンデマンド
午前11時~WOWOWプライム

■UFC254計量結果

<UFC世界ライト級王座統一戦/5分5R>
[正規王者]カビブ・ヌルマゴメドフ: 155ポンド(70.31キロ)
[暫定王者]ジャスティン・ゲイジー: 155ポンド(70.31キロ)

<ミドル級/5分3R>
ロバート・ウィティカー: 186ポンド(84.37キロ)
ジャレッド・キャノニア: 185ポンド(83.91キロ)

<ヘビー級/5分3R>
アレキサンダー・ヴォルコフ: 265 ポンド(120.2キロ)
ウォルト・ハリス: 254ポンド(115.21キロ)

<ミドル級/5分3R>
フィル・ホーズ: 186ポンド(84.37キロ)
ジェイコブ・マルクーン: 186ポンド(84.37キロ)

<女子フライ級/5分3R>
ローレン・マーフィー: 126ポンド(57.15キロ)
リリア・シェキロワ: 126ポンド(57.15キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
マゴメド・アンカラエフ: 205.5ポンド(93.21キロ)
イオン・クテレバ: 205.5ポンド(93.21キロ)

<ヘビー級/5分3R>
ステファン・シュトルーフ: 265 ポンド(120.2キロ)
タイ・ツイバサ: 265 ポンド(120.2キロ)

<140ポンド契約/5分3R>
ケイシー・ケニー: 140ポンド(63.5キロ)
ナサニエル・ウッド: 140ポンド(63.5キロ)

<ウェルター級/5分3R>
アレックス・オリヴェイラ: 173ポンド(78.47キロ)
シャクハト・ラクモノフ: 171ポンド(77.56キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
チョン・ダウン: 206ポンド(93.44キロ)
サム・アルヴィー: 206ポンド(93.44キロ)

<女子フライ級/5分3R>
リアナ・ジョフア: 126ポンド(57.15キロ)
ミランダ・マーヴェリック: 126ポンド(57.15キロ)

<ライト級/5分3R>
ジョエル・アルバレス: 159.5 ポンド(72.34キロ)
アレクサンドル・ヤコブレフ: 155.6ポンド(70.57キロ)

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Preview UFC UFC254 カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ブログ

【UFC254】世紀の一戦、ダゲスタン・レスリング=ヌルマゴメドフ✖フォークスタイルを使わないゲイジー

【写真】ゲイジーは肩にかけていたベルトを外して写真に納まっていた(C) Zuffa/UFC

24日(土・現地時間)、UAEはアブダビのヤス島=UFC Fight Island でいよいよUFC254「Khabib vs Gaethje」が開催され、UFC世界ライト級王座統一戦=正規王者ガビブ・ヌルマゴメドフ✖暫定王者ジャスティン・ゲイジーの1戦が行われる。

これまでFight Islandでのイベントは米国時間の土曜日の夜に合わせ、現地では日曜日の未明、日本時間だと日曜日の早朝スタートであったが、今回の大会はロシア時間に調整したのか、それが正規王者のパワーなのか現地の土曜日の夜に取り行われる。


今さら説明の必要もないだろうが、ヌルマゴメドフはロシア・ダゲスタンのマハチカラ出身で2008年9月のMMAデビュー以来、実に12年間で28勝0敗、デビューから負け無しの世界記録保持者だ。

トニー・ファーガソンとの運命のいたずらともいえるすれ違いを経て、2018年4月にUFC世界王者に輝くと、同年10月にはコナー・マクレガーを破り同王座の初防衛に成功。昨年9月のダスティン・ポイエーを相手に2度目の防衛を収め、今年の4月にファーガソンとの大一番が予定されていた。

しかし、COVID19のパンデミックによりロシアに残ることを選択し、大会自体も5月の無観客時代の幕開けとなったフロリダ大会にリスケされ、彼の代役であったゲイジーがファーガソンを下し暫定王者となった。

7月に新型コロナウィルスに感染した父であり、コーチであったアブドゥルマナプさんを7月に亡くしたフルマゴメドフにとって、今回の統一戦は弔い合戦ともいえる。そんな王座統一戦を前に、UFCと契約を果たしたマイケル・チャンドラーは全てを知り抜いたうえで、「ヌルマゴメドフのレスリング✖ゲイジーの打撃の勝負となる」とバーチャル・メディア会見で発言している。

(C)DAVE MANDEL

とはいえゲイジーはもともとノース・コロラド大時代にはD-1オールアメリカンに輝いているレスラーだ。

そして、MMAでは打撃戦のなかでダブルレッグでスラム、首を取るような形でスナップバックを決めて対戦相手の背中をマットに叩きつかせることはあったが、徹底して殴り合いを続けレスリング・スキルを見せたことはほぼない。そのゲイジーが今回の試合前に、現在のNCAA D-1レスリングで157ポンド最強と目されているライアン・ディーキンとトレーニングを積んできた。

ゲイジーは21日(水・同)の記者会見で「自分のベストを考えている。ヌルマゴメドフは自分の持つレスリングを駆使せずに戦うこともあった。それは僕も同じだ。皆がその準備をしているかというけど、彼は僕をケージに押し込むことはできない。中央で僕に組んで来ようとしたら、ダメージを与える。足を蹴れば、もう前に出てくることはできなくなる」と自信を覗かせた。

あくまでもレスリングを使わず、打撃でダメージを与えるというゲイジーに対し、ヌルマゴメドフは「ジャスティンがレスリングができることは知っている。ただし、ダゲスタン・レスリングとアメリカン・レスリングは違う。スタイプ・ミオシッチにしても一度、テイクダウンすると立ち上がってフィニッシュしていた。アメリカのレスラーはすぐにスタンドに戻る。それが自分との大きな違いだ。私は一度テイクダウンすると、相手のディフェンスが良くても一晩中レスリングを続けることができる。それがアメリカのレスリングとダゲスタンのレスリングの違いだ」と反応した。

ダゲスタンではスリングは人生の一部と言われている。キッズ・レスリングでも大きな体育館で100人、200人と言う子供たちが組み合い、カスピ海のビーチでは砂の上で彼らは組み合っている。そんな環境で生き残った能力のある者だけが、戦闘民族ダゲスタン代表のレスラーになれる。とはいっても、ダゲスタンで行われているレスリングはあくまでもフリースタイル・レスリングだ。

いってみればボディロックがなく、スクランブル戦が主流のアメリカン・フォークスタイル・レスリングの方がコントロール&打撃の融合という部分でMMAに適している。ヌルマゴメドフがいうようにアメリカのレスリングがスタンドに戻るのは、立ち上がることにフォークスタイル・レスラーは優れているからだ。

(C)Zuffa/UFC

同時にヌルマゴメドフは、スクランブルが主流になったMMAでテイクダウン後は立たせずにコントロールを続け、殴り、絞めて勝っている。

といってもれがダゲスタン・レスリングかといえば決してそういうことではなく、ヌルマゴメドフがフリースタイル・レスリングとブラジリアン柔術を巧みに融合させ、トップコントロールと打撃を見事に一体化させているのだ。

ヌルマゴメドフはマウントを取り、バックでは両足をフックしている。対して、フォークスタイル・レスラーは足をフックしないバックコントロールもグライディングとして、重視している。さらにいえばバックをとっても両足でなく、ワンフックに近い形で──両足フックで腹を突き出して背中を伸ばすヌルマゴメドフの潰し方とも違い──相手の足を広げる動きで背中を伸ばさせている。

映像に残るカレッジ時代のゲイジーはダブルレッグやアンクルピック、シングルからのスラムなど見せる一方で、ピンよりもバックコントロールを重視する向きもある。何よりも受けが強く、パーテルでは一瞬にして立ち上がって胸を合わせて1P奪取するというフォークスタイルに準じた戦いを身につけている。

倒す、コントロール&スクランブルというフォークスタイルの要素をゲイジーの持つ、フリースタイル&柔術を融合させたヌルマゴメドフに対して組ませないという自信は、やはりフォークスタイルを知り抜いているからなのか。

ヌルマゴメドフにしてもKOパワーを有している。とはいえ、テイクダウンがその先にあるからこその強振であり、テイクダウンで倒されないゲイジーの自信が本物なら、頭を下げて腕を振るうヌルマゴメドフのパンチは暫定王者に攻撃の突破口を与えることになりかねない。

いずれにせよ、打撃戦で勝負が進んだとしても、レスリング勝負という局面が背景ある王座統一戦。会見の最後に自身のベルトを肩から外し、挑戦者という意味合いを強調したゲイジーの潔さから、激しくもクリーンな戦いが見られそうだ。ヌルマゴメドフが組めるのか、そしてゲイジーはテイクダウンを許すと立つことができるのか。

世紀の一戦は、まずこの2点から注視したい。

■視聴方法(予定)
10月25日(日・日本時間)
午前零時~UFC FIGHT PASS
午前3時~PPV
午前11時~WOWOWプライム

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Interview Special UFC UFC254 カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ブログ

【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編─10月25日、ヌルマゴメドフ✖ゲイジー戦の愉しみ方

【写真】まず注目はフルマゴメドフとゲイジーのレスリング能力 (C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

ここでは番外編として、UFCで控える大一番──カビブ・ヌルマゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジー戦の愉しみ方を青木に話してもらった。


──UFCでついにカビブ・ヌルマゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジーのUFC世界ライト級統一戦が決まりました。この試合について、青木選手の期待度を尋ねたいと思います。

「あぁ、ゲイジー✖ヌルマゴは……レスリングでヌルマゴが圧してしまうと思います」

──この試合に備えてゲイジーがシカゴにあるノースウェスタン大学のレスリング部で昨季のBIG10で21勝0敗のパーフェクトレコードを残し、コロナ禍で中止となった今年のNCAAの157ポンド級でナンバーワンシードだったライアン・ディーキンとトレーニングをしてきたそうなんです。そこが青木選手のいうようにレスリング勝負になることをゲイジー陣営が考えているのかと。

「ヌルマゴメドフはロシアン・レスリングですしね。どれだけNCAAのレスラーと対策を練ってきてもヌルマゴメドフ有利は変わらないと思います。勝負はゲイジーが最初にいかに行けるかのってことで決まってくるような。最初に下がらずに、どれだけいけるのかが大切になってくるでしょうね」

──ジャスティン・ゲイジーならそういうスタイルで行こうとしそうですが。

「ハイ。ただし、行こうとするのと行けるのとは違うので。ゲイジーがいくら行こうとしても、ヌルマゴドフがそれをさせまいとしたら行けなくなることも十分にありえますしね」

──ゲイジーはこれまで乱打戦が多く、レスラーとしての側面を余り出していない。そのなかでテイクダウンをされていないじゃないですか。

「確かに、そうですね」

──テイクダウンの攻防がヌルメゴメドフの力によって見ることができると、それはそれで凄く興味深いです。

「ゲイジーはいつも打撃戦になってしまっていますよね。そして、頭を下げて殴りにいくことがある。そこにヌルマゴメドフの凄い一発が入ることもあり得ますし。ただ、それがあるならゲイジーも一発が入ることもある。そういうフィニッシュも考えられます」

──ゲイジーのローは有効打にはならないでしょうか。

「蹴ることができますかね。それを狙うと、テイクダウンされるような気がしますね」

──この試合は戦略を考えて愉しむという一戦でしょうか。

「もちろん、そういう愉しみ方はどの試合でもできます。ただし、どうしても不確定な要素が多いので、つまりは万人が愉しめるファイトなるということですね」

──その万人が愉しめる試合も、コア・ファンは愉しむことができるということで、順番としてヌルマゴ✖ゲイジーの前にマイケル・チャンドラー✖ゲイジーが見たかったという想いがあります。

「あぁ(笑)。僕はチャンドラー✖ヌルマゴの方が見てみたいです。この試合の方が、幻想がありますよね。一発当たったらっていう部分で」

──青木選手が予想したようにヌルマゴメドフ✖ゲイジーで、ヌルマゴメドフが勝利して、次はチャンドラーというのはあるかと思います。そうなる前に絶好調のゲイジーとチャンドラーが見たいというのがあったんです。

「あぁ、そういうことですね(笑)。ゲイジーが傷つく前に見たいという。ゲイジー✖チャンドラーを楽しむには、そっちの方が良いですしね。でもセコンドが新型コロナウィルス検査で陽性になったら試合ができないという状況ではヌルマゴメドフ✖ゲイジーが、ヌルマゴメドフ✖チャンドラー、ゲイジー✖チャンドラーに取って代わられる可能性は普段よりよほど高いですし、チャンドラーだってスタンバっているかと思います。

試合以上に不確定要素があり、何か起こった時にチャンドラーを用意している。凄く贅沢で、ここを抑えることができるのがUFCの凄さです。中東の王子様の持ち物じゃないのに、そこまでUFCは地力があります」

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News UFC UFC254 カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ダナ・ホワイト ブログ マイケル・チャンドラー

【UFC】マイケル・チャンドラーと正式契約!! ヌルマゴ✖ゲイジーのバックアップファイターに

【写真】ファンもガッツポーズのチャンドラーUFC参戦、だ (C)MMAPLANET

17日(木・現地時間)、ダナ・ホワイトがESPNスポーセンターでマイケル・チャンドラーと正式契約したことを発表した。

ダナはその前日に「最高にイカしたヤツがチームに加わったことを誇りに思う」とツイッターで呟いていた。


チャンドラーもESPNの取材に対し「大人しく、これまで言ってきたこと──僕がライト級でベストファイターだということを証明できる機会が来るのをまっている」と話している。またチャンドラーは10月24日(土)にUAEのファイトアイランドで開催されるUFC254のメイン──UFC世界ライト級王座統一戦=カビブ・ヌルマゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジーのバックアップメンバーになったとのことだ。

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News UFC カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ダナ・ホワイト ブログ

【UFC】ダナ・ホワイトが10月24日にカビブ・ヌルマゴメドフ✖ジャスティ・ゲイジー戦を組むと明言

【写真】果たして、このダナの発言だけでヌルマゴメドフ✖ゲイジーのライト級王座統一戦が決定したと考えて良いのだろうか (C)Zuffa/UFC

28日(火・現地時間)、CNNでインタビューを受けたダナ・ホワイトがカビブ・ヌルマゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジーが10月24日(土・同)に組まれることを明言した。

UFC世界ライト級王者ヌルマゴメドフは大会自体が延期となったUFC249でトニー・ファーガソンの挑戦を受ける予定だったが、ロシアにおける新型コロナウィルス感染拡大をうけて出場を取りやめていた。そして5月に延期された同大会のメインでジャスティン・ゲイジーがファーガソンを破り暫定世界王座に就いている。


今月、ヌルマゴメドフは父である指導者でもあったアブドゥルマナプ氏をCOVID19による合併症で失くしたばかり。そんなハードな状況ながら、ダナ・ホワイトはCNNでこの両者の対戦が、開催場所は未定だが10月24日に組まれることを伝えた。

UFCでは両者の対戦を9月に行う方向で動いていることが5月中に明らかとなっていたが、アブドゥルマナプ氏の死を受け、ヌルマゴメドフの実戦復帰には時間を要することになるという見方もでていた。なおヌルマゴメドフ、ゲイジーの両者をマネージメントするドミナンスMMAマネージメントは両者の対戦についてはコメントを出していない。

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【UFC249】タチパレスで開催決定?!→UFC249、5度目の正直とならなかったヌルマゴ✖ファーガソンの歴史

UFC249【写真】果たして6度目の正直が実現することはあるのか──ヌルマゴメド✖ゲイジー(C) Zuffa/UFC

6日(月・現地時間)、開催地は未だに不明だがショーは18日(土・同)に決行されることになったUFC249。同大会は当初の予定ではニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンバークレーセンターで開催され、メインでUFC世界ライト級王者カビブ・ヌルマゴメドフにトニー・ファーガソンが挑戦する予定だった。

Tachi palaceしかし、既報の通りロシアから米国に入国できないチャンピオンに代わり、暫定王座決定戦でファーガソンがジャスティン・ゲイジーと戦うことがアナウンスされている。同大会、ダナ・ホワイトが個人所有の島で行うという発言があったなか、カリフォルニア州リムーアのタチパレス開催という話も──有名サイトSherdog創始者のジェフ・シャーウッド氏=リムーア在住)による発言として米国MMAサイトでは報じられている。

ここでは5度目の延期となったヌルマゴメドフ✖ファーガソンの過去──トップコンテンダー入りを賭けた対決から暫定王座決定戦、さらに世界戦とことごとく実現しなかった両者のニアミスを纏めてみた。


最初に彼らのマッチアップが組まれたのは2015年12月のTUF22フィナーレだった。TUF13ウィナーのファーガソンは、UFC戦績9勝1敗──元Strikeforce世界ライト級王者ジョシュ・トムソンというこの階級のパイオニアを破るなど、上位に顔を覗かせてきた状態だった。対してヌルメゴメドフはキャリア22連勝中、UFCでも6連勝でハファエル・ドスアンジョスを下して以来、ドナルド・セラーニとの対戦が2度に渡りキャンセルされた状況であった。

この時、ヌルマゴドフの負傷欠場によりファーガソンはエジソン・バルボーサと対戦しダースチョークで一本勝ちを収め確実にキャリアップを果たした。

続いて両者の対戦が決まったのは2016年4月のUFC FOX19だった。元々は3月のUFC196でヌルマゴメドフは、ファーガソンがオクタゴンで唯一黒星を喫したマイケル・ジョンソンとの試合が組まれていたが、ジョンソンの欠場でファーガソンに代役の白羽の矢が立てられた。が、この時はファーガソンが肺に不調が生じて流れた。

3度目の正直が期待された2017年3月のUFC209では、2人は暫定ライト級王座を賭けて戦うことが決まっていたものの、計量を翌日に控えたヌルマゴメドフが減量中に体調を崩し、病院に運ばれドクターストップが掛かった。この7カ月後にファーガソンはケビン・リーを破って暫定王者に就いている。

そして2018年4月、UFC223=NYブルックリン大会のメインイベントで世界王座と賭けて暫定王者ファーガソンとヌルマゴメドフの対戦が決まったが──何と試合を6日後に控えたファーガソンがメディアデーで会場のコードに足を引っかけてヒザの靭帯損傷という予想もできないアクシデントで、4度目の対戦も流れた。

この週末、ヌルマゴメドフは代役マックス・ホロウェイの代役で、体重オーバーのアル・イアキンタと自らが勝利したのにベルトを巻くという変則王座決定戦に勝利。晴れてUFC世界ライト級のベルトをその腰に巻いている。

それから1年、NY決戦は人類が過去に経験したことがない新型コロナ・ウィルスのパンデミック下におかれ、五たび実現することはなかった。

tachi out side来週末ファーガソンが2度目の暫定王座獲得を目指しゲイジーと拳を交える同大会。メイン以外でも、マイケル・ジョンソン✖カーマ・ワーシー、ビセンチ・ルケ✖ニコ・プライス、フランシス・ガヌー✖ジャルジーニョ・ホーゼンストライク、サム・アルヴィー✖ライアン・スポーン、ジェシカ・アンドレジ✖ローズ・ナマジュナス、ジェレミー・スティーブンス✖カルヴィン・ケイター、ホナウド・ジャカレ・ソウザ✖ユライア・ホールらが組まれた同大会が開催地は米国領内のどこかの個人所有の島なのか、果たしてタチパレス・カジノリゾートとなるのか続報を待ちたい。