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【Special】月刊、生粋MMA人・中村倫也を創ったこの一番:2012年2月26日、ベンヘン✖エドガー

【写真】2万円の席でライブ観戦したUFC JAPANにより、中村の目指す頂が決まった (C)MMAPLANET

フリースタイルレスリングで世界選手権5位、U23世界選手権優勝、輝かしいレスリングでの戦績を誇り2020年4月にMMA転向──2021年LDH martial arts所属となった中村倫也は、物心がついたころからシューティングジム大宮→PUREBRED大宮でMMAに触れて育った。

26歳ながらMMAファン歴20年以上、プロデビューから5カ月しか経ていないが、常に傍にあったMMAに関する知識量は半端ない。そんな生粋MMA人、中村倫也が養成される血肉となったMMAの試合を振り返ってもらう当企画──月刊、生粋MMA人・中村倫也を創ったこの一番──がスタート。

その第1回は2012年2月26日に開催されたUFC144から、中村のUFC志向を絶対化したUFC世界ライト級選手権試合=ベンソン・ヘンダーソン✖フランキー・エドガー戦について語らおう。


──倫也選手に取材させていただいていると、プロMMAキャリア5カ月にも関わらず、MMAへの造詣が20年選手のように深いです。

「ありがとうございます(笑)。やっぱり、子供の頃からずっと見てきたので」

──ワールドクラスのレスラーがMMAに転じたのではなく、ピュアMMAファイターがたまたまフリースタイルレスリングが世界レベルで強かった。そのように結論づけました(笑)。

「いやぁ……そういってもらえると、嬉しいです(笑)」

──そんなジェニュインMMAファイター中村倫也の肉付けとなった一番を今月から1試合ずつ挙げて頂き、MMAの愉しみ方を深掘りしていきたいと思います。その第1弾の試合は何になるでしょうか。

「ベンソン・ヘンダーソンとフランキー・エドガーのUFC世界ライト級タイトルマッチです。2012年2月(※26日)のUFC JAPANのメイン、初めて生で観戦したUFCで高校2年の時だったと思います。

僕は実家から高校(花咲徳栄高校)に1時間ほどかけて通っていたので、さいたまスーパーアリーナにUFCが来るということは地元にUFCがやって来るという感じでした。

生まれてからずっと『PRIDEのチャンピオンになる』って言い続けていたのに、小学6年生の時に急になくなって。『じゃぁ俺はUFCを目指したら良いのか』という想いにはなっていたので、情報量は少ないですし、視覚に訴えられたり、空気感を知るということができず、現実味がなかったです。

そこで初めて会場でUFCを見て、まずその雰囲気に驚きました。外国人のお客さんが凄く多くて。だから、余計に本場のUFCという感じが2012年の大会ではしました」

──確かに。PPV大会だけあって日本在住ばかりか私の知り合いでもフィリピン、香港からUFCを観戦するために日本にやってきたというケースも複数例見られました。

「これが世界なのか……PRIDEとは明らかに違っていて、あの時に時代の流れを高校生ながら感じたんだと思います。しかも試合内容が……エドガーはヒット&アウェイが、今より顕著で。改めて見直しても角度とか距離の創りが尋常じゃないんですよね」

──弱冠、右の勢いが過去のポイントメイクを完全に成し遂げていた頃より強くなっていたかと。

「あぁ右のオーバーハンドを当てに行っていたかもしれないですね。そういうエドガーに対して、ベンヘンが下がりながらカウンターを合わせると時と、テンカオで迎え撃つという2つの対応で距離感を狂わせていた。あのセンスは凄まじいですね。当時はエドガーの勝ちだろうって思っていた試合なんですけど、今ではベンヘンの巧さが優っていたということがいえるんじゃないかなぁと思える試合です」

──個人的にはベンヘン……というか、どの選手が使っても同じなのですが、スタンドでバックコントロールを取られり、がぶられた選手が掌をマットにつけてヒザ蹴りを顔面に貰わないようにする行為に明らかな劣勢という定義が欲しいな、と思うんです。

「あぁ、ルールを使って身を守るってやつですよね。マジで分かります。それと同じ感じなのが、ハーフで抑えて前腕のフレームで頭を抑えて殴ろうとすると、横を向いて後頭部を見せるヤツがいて。『なんや、それ』みたいな。

劣勢でルール使って、殴れないようにしているだけで、そんなの格闘技じゃないだろうって思うんですよ。ああいうディフェンスは反則でなくても、明確な劣勢として欲しいです」

──そこも踏まえて、巧妙とも取れるのですね。

「ベンヘンには上手いところがありますよね。太腿を殴るとか、ちょっと想像の枠を超えた攻撃を仕掛けたり。そういう部分は自分も参考にしています」

──あと、あの髪の毛を振り乱していると、どうにもベンヘンの方がよく動いているという錯覚をジャッジに与えているのではないかと。クレイ・グイダもそうですが。

「あぁ、本当だ。そうですよね。ベンヘン・グイダ効果ですね、アハハハハ。躍動感を髪を振り乱して表している。ソレ、本当ですよ。ジャッジも目は奪われますし、互角だったらジャッジがベンヘンの6-4を取ってしまう。それ、あるッスね(笑)。ベンヘン・グイダ効果は空振りでも、加点される。いやぁ、ありますよ(笑)。

そうやって考えると、MMAの進化は凄まじいので今のMMAとは違ってはいるのですが、それでも学べるところがあって」

──あの時点で北米MMAの最先端の攻防が見られました。特に真っ向勝負でないけど、真正面から最高峰の技術を駆使していてた。

「素晴らしい距離感、テイクダウンとディフェンスがありながら、最後の最後にはこういう戦いになるのかということを見せてくれましたね。どうしてもライトなファンには技術力が高度化すると、理解が困難な部分って出てくると思うんです。

MMAはそこが顕著なんですけど、そういう高度な攻防を見せてくれたベンヘンとエドガーが、最後はバチバチに殴り合う。技術の粋を集めた先のハート、僕もそういう試合がしたいです」

──あの試合でUFCは日本で根付くかと思われたのですが、翌年からPPV大会ではなくなり……。

「日本仕様になっちゃいましたよね。ヴァンダレイ・シウバ✖ブライアン・スタン、マーク・ハント✖ステファン・シュトルーフ、五味さんとディエゴ・サンチェスと。分かりやすくなったけど、それが何を意味するのか分かる……そういう人が増えたと思います。結局、外国人のファンがグッと減ってしまって。

ステーキから寿司になってしまったような。僕にとってはUFCを目指すという原点、それがベンヘン✖エドガーの試合でした。あの日の夜から、寝る時にイメージするものは完全に金網の中に変わったんです」

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