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【TTFC08】朝岡秀樹氏に訊く、岩﨑大河の可能性─02─「対戦相手は強心臓そうなので、試練に」

【写真】空道での岩﨑。素面、MMAグローブ、ケージ、相違点は多く存在するが、技の正確性を問われつつ破壊力が求められる北斗旗の経験は非常に有効なはずだ (C)HIDEKI ASAOKA

27日(土)に会場非公開の無観客大会として開催されるTTF Challenge08。

メインでリカルド・サープリスと岩﨑大河。彼についいて元格闘技通信編集長で1992年の北斗旗軽量級優勝、現在では大道塾御茶ノ水支部長の朝岡秀樹氏に話を訊いたインタビュー後編。

重量級の逸材だったからこそ、国際戦で苦戦を強いられた岩﨑にとって、今回の試合は苦手な部分を克服するための試練の一戦と朝岡氏は明言した。

<朝岡秀樹氏が岩﨑大河を語るインタビューPart.01はコチラから>


──強くなるためにMMAに進出するわけですが、日本人と戦った時と国際戦で戦った時のギャップをどう埋めることができるのかという課題は残ったままと?

「そうなんですよね。MMAでも同じようになることはあり得ます。ただ空道で加藤久輝や野村幸汰という相手がいなくなると、もう勉強にならないですからね。だから不安な点はありますが、それ以上に重量級で上段への蹴りを交えながらスピードのあるパンチの攻防ができるなど、全般的に能力が高い選手ですし、MMAでもミドル級なのにライト級やフェザー級の動きができると思います」

──おお、それは期待値が高まります。

「それでも、繰り返しいなってしまいますが……メンタル面は心配です。だからこそ、TTFCの煽り映像で対戦相手がアフガニスタンで戦場を経験してきたとか、そういう心臓の持ち主なので良いマッチアップだと思いました。

リカルド・サープリス選手は打たれても、打ち返してきそうですよね。凄くタフネスさを見せそうで、そうなった時に岩﨑選手が焦ったりしたら、良い試練になるかと思います」

──そういう意味では小径ケージで戦うと、空道の試合場と違い凄く圧迫感があるので、そういう部分でも岩﨑選手がどのように正確な技術を出せるのか楽しみです。

「僕自身、アマ修斗に出た時に地域大会の柔道場での試合と、リングで戦うのでは同じルールでも違う競技だって感じたんです。上手く戦場を使えないと、勝敗はひっくり返るなって感じたのを思い出します。

修斗の柔道場とリングですら、そんな風に感じたぐらいなので岩﨑選手は空道の試合場の広さと、狭いケージだと凄く違ってくるでしょうね」

──仮にサープリス選手が振り回してきて、下がるとすぐに金網が迫ってくるかと思います。

「まぁ、これは言って良いか分からないですが、大道塾の体重別王者だろうが、MMAに転向するならアマチュア修斗からやれって思うんですよね……僕は今でも。

アマチュアの他競技をやっていた人間が、デビュー戦でプロの大会のメインって……なんで、そうなっちゃうのってことは思っています」

──さすが朝岡No Fake秀樹です!! そういう意見を今、口にする格闘技マスコミは自分も含め皆無になりました。

「だってKIDだってアマ修斗に出ているんですよ」

──先日、修斗暫定世界バンタム級王座を賭けて岡田遼選手と戦った倉本一真選手も、天皇杯3連覇でアマ修斗を経験しています。

「その方が説得力ありますよ。だって、そうじゃないですか。違う競技なんだから」

──いやぁ、嬉しくなってしまいますね。今、MMAPLANETで武術とMMAの関係に関して連載させてもらっている剛毅會の岩﨑達也さんが……。

「MMAデビュー戦で。ヴァンダレイ・シウバとやった(笑)」

──そうです。その岩﨑さんが「あの時、あなたは『総合やるなら、アマ修斗からやれって』って書いて。いや、色々と事情はあったにせよ、その通りだって思いましたよ(笑)」と言ってくださったことがあって(笑)。

「アハハハハ。本当にその通りです。デビュー戦でシウバなんて(笑)。そこも含めて、こっちの岩﨑選手も凄くプレッシャーが掛かって、それが良い経験になるかとも思います。彼が必要なことを勉強できますしね」

──と同時にアマ修斗も再開の目途が立っていないですし、長南さんも実力の査定はしていると思います。その上で、「甘くないぞ」という相手を組んで来たのかと。

「アハハハ。長南さんも甘くないですよね。きっと、岩﨑選手をビビらせてやろうと思っているはずです(笑)」

──今回はONEの階級なので、体重のリミットが93キロです。岩﨑選手は確か身長が185センチ……。

「体重は85キロとかだと思います」

──ご飯をたくさん食べないと体重がアンダーになってしまうと言っていましたね。なら海外志向が強いですし、向こうでやるならウェルター級というのもあり得るかもしれないですね。

「将来的には77キロが適正かと、僕も思います」

──では最後に岩﨑大河選手の……その将来性に関して、一言お願いします。

「ポテンシャルが非常に高いことは間違いないと思っています。なかなか日本の重量級には存在しない、逸材です」

■TTFC08対戦カード

<ミドル級(※93.0キロ)/5分2R+Ex>
岩﨑大河(日本)
リカルド・サープリス(米国)

<ライト級(※77.1キロ)/5分2R+Ex>
マックス・ザ・ボディ(カメルーン)
村岡倫行(日本)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分2R+Ex>
MG眞介(日本)
前川大輔(日本)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分2R+Ex>
真人ガーZ(日本)
スソン(日本)

<ミドル級(※93.0キロ)/5分2R+Ex>
関野大成(日本)
泰斗(日本)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分2R+Ex>
石井巧太郎(日本)
狩野優(日本)

<フライ級(※61.2キロ)/5分2R+Ex>
大竹陽(日本)
川北昴生(日本)

<フライ級(※61.2キロ)/5分2R+Ex>
御代川敏志(日本)
谷村愛翔(日本)

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【TTFC08】元格通編集長&大道塾・朝岡秀樹御茶ノ水支部長に訊く、岩﨑大河の可能性─01─「動ける選手」

【写真】思えば大道塾は相反するプリンシプルを持ちながら、真っ先──というか唯一Vale Tudoと向き合った──武道を標榜する団体だった(C)t.SAKUMA/Fight&Life

27日(土)に会場非公開の無観客大会として開催されるTTF Challenge08。メインでは岩﨑大河がリカルド・サープリスと戦う。

2017&2018年の北斗旗体力別選手権=体力指数260+級で二連覇、2015年と2016年は準優勝、昨年の無差別でも準優勝するなど、正真正銘の大道塾=空道のトップ選手だ。

空道は打撃、組み、寝技ありの総合武道であるが、MMAとは明白に別物だ。そして打撃、投げ、寝技という共通要素を持つが故に、キックボクサーやレスラーのMMA転向より実態が測りづらい部分がある。

(C)HIDEKI ASAOKA

そこで、今回は元格闘技通信編集長で1992年の北斗旗軽量級優勝、2003年には全日本アマ修斗バンタム級も制し、現在も大道塾お茶の水支部の支部長であり国際・全日本空道連盟の広報としても活動している朝岡秀樹氏に、岩﨑大河のポテンシャルについて尋ねた。

現在発売中のFight&Life誌では岩﨑大河本人にMMA転向とこれからについてインタビューが掲載されているが、ここではユース時代から岩﨑を追ってきた朝岡氏は第三者として、どのように岩﨑の可能性と課題を考えているのか。


──MMAPLANETでは空道の試合を追っていなかったので、改めて試合映像をチェックしても、総合武道故に分かりづらい部分があります。そこで朝岡さんに岩﨑選手のMMAにおける可能性を伺わせていただきたいと思います。

「分かりました」

──まず空道を戦っているうえで、岩﨑選手の強さとはどういう部分なのでしょうか。

「一番は体が大きい割に、動けることです。あの体で、あそこまで動ける選手は珍しいです」

──あぁ、なるほど。だから、映像で見ると軽量級の選手のように動けるので、さほど大きく感じなかったのかもしれないです。

(C)HIDEKI ASAOKA

「体つきを見てもらっても、僕らの競技では185センチも身長があるとポッチャリ系でモッサリしている選手が多いんです。彼も一時期は100キロほどあったのですが、その時でも速かったです。今は85キロぐらいだと思うのですが、より動けますよね」

──技的に岩﨑選手の得意とするのは、どういう技術だと考えていますか。

(C)HIDEKI ASAOKA

「技は偏っていないです。ある意味、ミスター空道というか……パンチ、キックから掴んでの頭突き、投げ、襟を使った絞めだとか、全般的に綺麗に戦うことができます」

──前足の蹴りを上下蹴り分けることができて。そこは日本のMMAファイターにはまだまだ少ないかと。

「空道の世界でも、重量級には彼のようにそれができる選手がほとんどいないです。非常に稀な、素晴らしい選手でした。ただし高校生の時から大きくて、ジュニアの頃は階級が細かく分かれていて、そうなると相手がいないということも彼にはありました」

──試合映像を視ても、無差別級も存在する競技特性上からするとMMAでは起こりえない小柄の選手と戦うことも少ないです。

「その体格という要素が、彼に課題を残してきたんです」

──それはどういうことでしょうか。

「日本では体が大きくて相手がいない。でも、ジュニアの時から世界大会に出ると、海外の選手の大きさに慣れていなくて負けてしまうということがありました。世界選手権は4年に一回で、他にワールドカップやアジア大会もあるのですが、キャリアを通してどうしても自分より小さい選手と戦うことが多かったです。

空道では国内にライバルがいない。だから国内では圧倒的に勝っているのですが、国際大会になると負けた試合は脆いです。強い時、弱い時がハッキリしている。それは空道の時からの課題に挙げられていたことで、競り合いの経験が少ないということがあります。メンタル的にも大きな相手と戦うと、焦って強引な攻めを見せて負けてしまうことがありました」

──なるほど、そういう課題があるとMMAでも海外の選手は同階級といえども大きいですからね。

「もともと彼がMMAを考えるようになったのは、そういう課題を克服するために『お前、アメリカに行ってこい』と彼の新潟時代の指導者である山田(利一郎)支部長がアドバイスをしたからなんです。

20歳ぐらいでまだまだノビシロがあるのに、国内には敵がいなくて成長が止まってしまうことを危惧して、もっと大きな選手とやってこいということだったんです。僕自身、記事にしたことがあるのですが、『MMAとか外で揉まれる方が良い』と思っていました」

──それだけ空道でも大きな海外勢が強いのですね。

「空道の場合はロシアやアゼルバイジャン、ジョージア、タジキスタンなど旧ソ連の国が強くて、2017年のアジア大会で岩﨑選手はアゼルバイジャンのバイラム・ゴザレフに一本負けしています。2018年の世界大会では準優勝したセルゲイ・ミナコフというロシア人選手と、拳を骨折した状態で戦い延長スプリット負けでした」

──旧ソ連はMMAでいっても一番えげつない地域です……。旧ソ連の国は今もレギュレーションはかなりルーズで、強い人間が強いという感じで。

「空道も同じだと思います。今、MMAを見ているとダゲスタンの選手が凄く強いじゃないですか。ONEでも中央アジアとか、それと同じ状況です。フィジカル的に強い……ジョージアとかも、皆ああいう感じですね。

日本人相手だと予定調和的に倒れるような攻撃が入っても、旧ソ連の国の選手たちは『アレ、倒れない』ばかり向かっていくので(笑)。岩﨑も自分の攻撃が効かない状況になると、弱くなっていました」

──なるほどぉ!! その打撃に関してですが、空道と比較するとMMAの方が遠いかと思いますが、その辺りはどうでしょうか。

「重量級のなかでも、出入りや距離の調整は巧みでした。掴まれたくない相手と戦う時は出入りも早かったですし、そういう部分でも器用な選手です」

──いわゆる重戦車ではないということですね。

「ハイ(笑)。重量級になると、下れない選手も多いですが彼はパッと入って、パッと下がることはできます。と同時に、その必要性がなかったのか下がって待って打つというか……カウンターは余り見たことはないですね。

と同時に相手のパンチが当たらない位置に頭を振って、パンチを纏めてから距離を取り直すという動きは上手いです。だからMMAにおいても、強い時は強いはずです。それができた時は。そうでないときがどうなるのか、その課題は実は空道でもMMAでも変わらないと思います」

<この項、続く>