<フェザー級/5分3R>
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
Def.1R1分29秒 by TKO
ソディック・ユースウ(米国)
ユースウが右ロー。ロピスも右ローを蹴り返し、ワンツーから右カーフにつなげる。距離が詰まってユースウがクリンチしようとしたタイミングでロピスが右アッパーを当て、この一発でダウンを奪う。ユースウも必死に組みついて立ち上がるが、ロピスが再び組み際の右アッパーでダウンを奪うと、最後はマウント、バックマウントからのパンチで試合を終わらせた。
<フェザー級/5分3R>
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
Def.1R1分29秒 by TKO
ソディック・ユースウ(米国)
ユースウが右ロー。ロピスも右ローを蹴り返し、ワンツーから右カーフにつなげる。距離が詰まってユースウがクリンチしようとしたタイミングでロピスが右アッパーを当て、この一発でダウンを奪う。ユースウも必死に組みついて立ち上がるが、ロピスが再び組み際の右アッパーでダウンを奪うと、最後はマウント、バックマウントからのパンチで試合を終わらせた。
【写真】落ち着き払っているホルムだった (C)MMAPLANET
13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」で、ホーリー・ホルムがケイラ・ハリソンと対戦する。
Text by Manabu Takashima
2017年にボクシングの殿堂入りを果たしたホルムだが、ボクシングでの活動が9年間だったのに対し、MMAは13年目を迎える。そしてボクシングよりも、キックの印象が強い被弾しないMMAストライカーは42歳になっても衰えることを知らない。
ハリソンと戦うことで、ロンダ・ロウジー戦が思い起こされるホルムだが、日進月歩の女子MMAで2011年から戦い続けてきたホルムこそ、今はベルトを巻いていなくともUFC300で戦う相応しいファイターに違ない。
――今週末UFC300という大舞台で戦うこと、どのように考えていますか。
「現役チャンピオンと元チャンピオンが揃って出場している大会に参加できて、本当にワクワクしているわ。この大会で戦うメンバーの1人に選ばれて光栄よ。でも、出場するからにはしっかりと勝たないといけないから」
──ボクシングで世界のベルトを15本も巻いた。そんなホーリーが、Legacy FCに出場し始めた頃からファイトを見させてもらってきましたが、あの頃ここまでMMAにのめり込むと思っていましたか。
「こんなに長く戦うなんて、思っていなかったわ。ファイト毎に自分の限界を見極める必要があると思って戦ってきて、それが1年、1年と続いてきた感じね。それにしても、ここまで長いキャリアになるとは全く想像もしてなかった」
──ここまで戦うことができる要因はどこにあると思っていますか。
「やっぱり精神面の影響が大きいと思うわ。ファイトでも、ビジネスでもフィジカルよりもメンタルに依るところが大きいから。もちろん肉体的にヘルシーでないといけないけど、メンタルもそうね。心身ともに健康で、しっかりと考えることができる状態でいないと。それに他の選手が負ったような大きなケガとは無縁というのも、やっぱり大きいわね。だからこそ、前進できる。今も、前を見続けて戦うことができているわ」
──ところで今回のケイラ・ハリソンとの一戦は、多くの人がロンダ・ロウジーとの戦いを連想しているかと思います。「2人ともバックグラウンドは柔道だから。皆が、あの2人を比べるのはしょうがないこと。でもロンダとケイラは全然違う。ロンダの方が立ち技で戦いたがっていた。それにロンダは柔道で戦っていたけど、ケイラはレスリングで戦っている。何よりロンダはオーソドックスで、ケイラはレフティ。そこからして違っているわ。だから、ロンダ云々でなくケイラの動きに集中する必要があるの。
同時にロンダと戦ったことで、私は本当に色々なことを手にすることができたのは事実よ。メンタル的にもあんなに凄いプレッシャーのなかで戦ったことはなかった。それでもポジティブに乗り越えることができた。ケイラは、MMAでそういう経験していないでしょうね。何よりロンダと戦った時と比べると、MMAは凄く進化している。それは私も証明してきたし、多くのガールズがケージのなか見せてきた。今もそう。少しでも成長しようと、練習を続けているから」
──では、ケイラとの試合でカギを握る攻防はどこになると思いますか。
「とにかく集中することよ。ケイラの想うような試合展開にさせないためにも、集中して戦うこと。ファイターなら誰もそうだけど、距離のコントロールは絶対よ。望むような試合をするには、絶対的に自分の距離で戦わないといけない。
どれだけ相手との間に距離があるのか。そして、どれだけ空間をコントロールできるのか。それがMMAというゲームで、自分のパズルで埋めていく必要があるの」
──簡単に伝わることではないでしょうが、そこも踏まえてどのような試合をファンに見せたいと考えていますか。
「今も私がこの階級の実力者だと、証明したい。私の持つ、全ての技術を駆使して戦うわ。とにかくケイラとの試合はビッグファイトよ。この試合で勝利を手にすれば、またタイトルに挑戦できると思っている。どうなるかしらね」
■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT
■UFC300対戦カード
<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)
<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)
<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)
<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)
<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)
<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)
<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)
<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)
<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)
【写真】両者とも156ポンドで計量を終えている。最高の駆け引きのあとで、最高の殴り合いに発展する可能性も?? (C)Zuffa/UFC
13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催される。プレリミ含めて全試合がメインイベント級と呼べるスーパー・メガ・ヒストリカルショーで、UFC認定の非公式タイトル=BMF(Baddest Motherfucker=最高にヤバい奴)現王者であるジャスティン・ゲイジーにマックス・ホロウェイが挑む一戦もラインナップされている。
Text by Isamu Horiuchi
もともとこのBMFタイトルが創設されたのは、2019年11月のネイト・ディアズ×ホルヘ・マスヴィダル戦だ。その3カ月前のアンソニー・ペティス戦に勝利したネイトが「俺は真のBaddest Motherfuckerの座を賭けてマスヴィダルと戦いてぇんだ。ただ相手を抑え込んでルール上の勝利を狙うような連中じゃなくな」と発言。この言葉にダナ・ホワイト代表も大いに乗り気となり、BMFの文字が大きく刻まれたベルトを本当に作成、両者による決定戦を敢行したのだった。
試合は1Rに右ハイでネイトの右目上をカットしたマスヴィダルが終始優勢に試合を進め、3R終了時にTKO勝利。元WWEスーパースターのザ・ロックことドウェイン・ジョンソンにBMFベルトを巻かれたのだった。
その後4年近く封印されていたBMF戦だが、初代王者のマスヴィダルが引退を表明した3カ月後の昨年7月、ゲイジー×ダスティン・ポイエーにて復活。ここでゲイジーが右ハイでポイエーを沈め2代目王座に輝いた。この勝利でイスラム・マカチェフの持つライト級王座の挑戦権を得たと思われたゲイジーだが、その話がなかなか具体化しないまま、今回元フェザー級王者のホロウェイを相手に史上初のBMF王座防衛戦に臨むこととなった。
挑戦者のホロウェイは、現在アーノルド・アレン戦とコリアンゾンビことジョン・チャンソン戦と2連勝中。ライト級のゲイジー同様、こちらもフェザー級タイトル挑戦に最も近いところにいると思われる選手だが、新王者イリャ・トプリアの都合や前王者アレックス・ヴォルカノフスキーとのダイレクトリマッチが優先されているせいか、なかなかタイトル戦の話が挙がらない。
そこで今回──ある意味正式のタイトルよりも世間的な注目は高いかもしれない──BMFタイトル戦に出陣を決めた。
現BMF王ゲイジーはこれまで25勝のうち20KO、実に80パーセントのKO率を誇る。名だたる強豪たちと対戦経験を持つ前ライト級王者シャーウス・オリヴェイラをして「自分が対戦した中で最もパンチ力があったのは断然ゲイジー」と言わしめるライト級屈指のハードヒッターだ。対する挑戦者ホロウェイは、これまでUFCの試合中に誰よりも数多く有効打を当てているとされるボリュームストライカー。(有効打かどうかの判断に厳密さはないと思われるが)昨年のアレン戦のライブ中継の途中で合計3000発ヒットという記録を達成したと伝えられ、2位に1000発以上の差をつけていると説明された。
そんな両者の「ヤバい奴決定戦」である以上、期待されているのがド派手な打撃戦であることは言うまでもない。実際にゲイジーはこの試合について「理想的には、KOして眠らせるよりも目をカットするとか、彼の腕が折れてしまうとか、何らかの形で歩けなくすることで試合が終わってくれる方がいいとは思う。でも実際に向こうはこっちをKOしようと向かってくるだろう。だからこっちも向こうがどうなろうが、完全に眠らせてしまおうがまったく良心の呵責は感じないよ」と彼流の静かな言い方で凄絶な展開を予告している。
対するホロウェイも「僕なりにBMFを一言で言い表すなら”violence(暴力)”だ。ゲイジーはバイオレントな男だ。この試合は暴力そのものとなる。最高だ。生きがいだ。考えるだけで満面の笑みが浮かんでしまうよ」と真っ向から打撃戦を挑む姿勢を見せている。
わざわざ階級上の超弩級のハードパンチャーとの殴り合いに嬉々として臨むホロウェイの精神性は、確かに常識を超越したBMFさ(ヤバさ)に溢れている。しかし、近年の両者の戦いぶりやMMAファイターとしての進化を考えた場合、この戦いで重要なのはBMFな要素のみではないと思われる。むしろBMFを超えたお互いの格闘家としての成熟度こそ、今回問われているのではないだろうか。
前回ポイエーを倒してBMF王座に就いたゲイジーだが、その勝因が本人の成熟ぶりにあったのは自他ともに認めるところだ。2018年4月にポイエーと対戦した際には、序盤から体を振って距離を詰めて殴りに行ったゲイジー。最後も強引に前に出たところにカウンターをもらってマットに沈んだ。以降この試合を教訓として忍耐強く戦う術を身に付け、5年を経た再戦となった前回のBMF戦ではまるで違う戦い方を見せた。
前に出てくるポイエーの打撃に柔らかく体を使って反応しては強烈なカウンターを何度も当て、最後もポイエーが近づいてきたところに右ストレートから右ハイ一閃。見事なコンビネーションをもってゲイジーは鮮烈なKO勝利を収めた。
2018年のポイエー戦と並んでゲイジーが「大きな教訓となった」と認めているのが2022年5月のシャーウス・オリヴェイラ戦だ。序盤からお互いに効かせ合う凄絶な展開となった1R。チャンスと見るや我を忘れて大振りの一発狙いを繰り出していったゲイジーは、逆にオリヴェイラの一撃を貰ってダウンし、チョークで仕留められてしまった。
その後ゲイジーは、次戦となる昨年3月のラファエル・フィジエフ戦でこの敗戦の学びを生かしてみせた。最終3R、やや動きの落ちたフィジエフに対してゲイジーは急くことなく強烈なジャブで出鼻をくじき続けてペースを握る。終了寸前、後のないフィジエフが勝負を掛けて振り回してきた左右のフックを見切ったゲイジーは、見事なカウンターのテイクダウンに成功。最後まで冷静さを保ち勝負どころを見極めての完勝だった。
昨年のフィジエフ戦とポイエーとの再戦でゲイジーが見せた冷静さと忍耐強さこそ、今回の対ホロウェイBMF戦の勝利に向けても、最重要視される。一発の威力より圧倒的な手数で勝負するホロウェイだが、相手が強引に前に出たところに放つカウンターには一撃必殺の威力が宿る。前戦にて手負いのコリアンゾンビが強引に詰めてきた時に巧みにバックステップして距離を作り、右オーバーハンドをスマッシュヒットして劇的なKO勝利を挙げたのは記憶に新しいところだ。
5年前、急遽のオファーを受けて短い準備期間で敢行したライト級戦(2019年4月、ポイエーとライト級暫定王者決定戦にて5R判定負け)の時とは違い、今回は十分に時間を掛けて筋肉量を増やしてきたというホロウェイ。減量苦からも解放され「スピードは落ちず、パワーは上がって体調は100パーセントさ」と語っており、過去最高に力強い姿が期待できそうだ。
仮にBMFを期待する雰囲気に流されて、ポイエー初戦やオリヴェイラ戦の向こう見ずなゲイジーが現われるようなことがあれば、ホロウェイが世間を驚かせる可能性も高まるだろう。
当然ゲイジー本人もそこは十分承知しているようで「確固たる技術を用いて、距離を支配し、角度を作って素早く反応して戦う」と予告している。おそらく今回のタイトル戦で我々が見るのは、闇雲に前に出て相手を殴りにゆくのではなく、冷静に相手を見て反応し、有効な打撃を繰り出してゆくゲイジーの姿だろう。
その上で勝負所を見極め凄まじい威力の打撃を爆発させる、前戦に続くゲイジー流進化版BMFを期待したい。
今回のBMF戦で進化が求められるのは、ホロウェイも同様だ。この試合でまず警戒すべきはゲイジーの強烈な右のカーフキックだろう。オーソドックスに構えて絶妙の間合いを保ちつつボクシングで勝負するホロウェイは、以前から相手の右ローを被弾する傾向が見られる。2019年末のヴォルカノフスキーとの初戦では序盤からカーフを何度も貰ってペースを握られ、2年後のジャイー・ロドリゲス戦の序盤でもローを効かされる場面が目立った。
そこで鍵となりそうなのが、昨年4月のアレン戦でホロウェイが見せた新しい戦い方だ。普段とは逆にサウスポー中心に構えたホロウェイは、スイッチや横への動きも随時に交えて多彩な角度を作り、強打を誇る新鋭アレンに動きを読ませずに判定勝利した。
昨年の来日時にこの試合について筆者が質問した際「MMAは常に進化するスポーツだから、自分も進化しないと置いていかれてしまうんだよ」と答えてくれたホロウェイだけに、今回も危険極まるゲイジーの蹴り、そして凄まじい破壊力の拳を捌くための新しい姿を期待したい。
ちなみにゲイジー陣営もこのアレン戦のホロウェイの新しい戦い方を警戒しているらしく、公式予告番組「UFC 300 Countdown」カウントダウンでも、ゲイジーがコーチたちとともにこの試合のホロウェイの立体的な動きを熱心に分析研究する姿が映し出されている。ホロウェイが見事なタイミングでアレンにワンツーを入れた場面を見たゲイジーは「もし俺がローを蹴ることで、彼のこの動きを誘い出すことができたなら、そこにカウンターを合わせることができるよな」とコーチに語っている。
やはり──この試合はただのBMF決定戦ではない。お互いが最も進化した状態の対戦相手を想定し、勝つための緻密な策を組み立て最高の状態に仕上げた上で、死力を尽くして戦うのだ。
すでに長きにわたって世界トップで戦いつつ、なおかつMMAファイターとしての進化を見せてくれるゲイジーとホロウェイ。この階級を超えたBMF戦は、彼らがそれぞれの階級で頂点に登ってゆくための道筋としても興味深い。
■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT
■UFC300対戦カード
<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)
<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)
<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)
<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)
<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)
<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)
<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)
<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)
<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)
【写真】1983年8月30日生まれ。MMA戦績37勝17敗1NC。UFC戦績26勝16敗1NC。いぶし銀な鉄人(C)MMAPLANET
13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」で、ジム・ミラーがオクタゴン44戦目をボビー・グリーン相手に戦う。
Text by Manabu Takashima
ジム・ミラーはUFC100、UFC200 、UFC300を戦う──この惑星でたった1人の存在だ。UFC100は25歳の時、UFC200は32歳だった。そして40歳になってUFC300を戦う。功労賞的な出場ではない。今も世界最高峰にあってコンペティティブな存在だから、あの場に立てる。世界チャンピオンという肩書はない。それでも紛れもなくMMA界のオンリーワン、ジム・ミラーに話を訊いた。
――今週末、UFC300でボビー・グリーンと対戦します。今の調子は?
「キャンプも最高だったし、凄く調子が良い。後は戦うだけだよ。UFC300に関しては、数年前から出たいという気持ちは口にしていた。でも、自分の立ち位置によってUFC300のようなビッグショーで戦えるか否か状況次第だった。でも、このところのファイトが認められたのか出場オファーが届き、拘って来た甲斐があったよ。
トレーニングキャンプを経て、ボビーと戦う。つまり、ここからということ。ボビーに勝って、このまま正しい方向に進んでいくつもりだよ」
──ところでジムはUFC100、UFC200、そしてUFC300を戦う唯一のファイターです。心の底から、自らを誇れることかと。
「そうだね。自分でも凄いことだと思っている(笑)。ただ、本音をいえば少しプレッシャーも感じているんだ。第1試合からメインイベントまで凄い試合が並んでいるなかで、チャンピオンと元チャンピオンの名前をいくらでも見ることができる。18人もの世界チャンピオンが出ているショーで、僕は彼らに繋げるためにもしっかりとファンの気持ちを温めたい。自分の役割を果たすつもりだ」
──そんな……UFC300は試合順こそあっても、全員がヘッドライナーですよ。この大会は過去の名声だけで戦える場所ではないはずです。UFC100でマック・ダンジグと、UFC200では五味隆典選手と戦った。UFC100は2009年で、UFC200は2016年でした。そして2024年となった今も、ジムはコンペティティブな存在です。だから出場権利を得ることができたに違いない。
「サンキュー。本当に色々と努力を続けてきた。と同時に、幸運でもあったんだ。大きなケガをすることなく、キャリアを積みかさねることができた。ライム病との診断を受けて頭を悩ますこともあったけど、症状を軽減させる努力をして……楽しく、ここまで戦い続けることができた。そして、今回のような大きな大会で大勢のファンの前で試合ができることが凄く嬉しい。コロナ後、今回のような大観衆のなかで戦うのは2度目なんだ。ファンが僕の名前を叫ぶなかで戦うことが楽しみでならない」
──そして今回のファイトが、UFCで実に44戦目になります。信じられないような試合数です。
「アッハハハハハ。こんな風なキャリアを送ることになるなんて、予想もしていなかったよ。期待もしていなかった。年老いたライト級ファイターとして、いかにトレーニングをして、いかに戦うのか。その方向性を見つけ出せたことが大きい。40歳のライト級って、ヘビー級では50歳のようなモノだからね(笑)。
簡単なことではない。でも、MMAの戦い方をずっと研究してきた。マーシャルアーチストとして、自分のスタイル、自分の力に合った方法論を見つけてきたんだ。そうやって積み重ねてきたことが、合致して実を結んだとは思っているよ。なんといってもファイトだけでなく、僕の人生に合致したんだ」
──素晴らしいです。
「UFC100の翌年に生まれた子供がもう14歳だ。以前は子供達は、僕が何をしているのかはちゃんと理解できていなかった。それが今では、より深く理解できている。この時間、経験を子供達と共有できて幸せな限りだ。子供達も土曜日の試合を観戦することを楽しみにしている。本当に喜ばしいことだよ」
──そんな記念すべき夜も、対戦相手はジムをぶっ飛ばしに来ます。
「その通りだ(笑)。ボビーは素晴らしくタフなファイターだよ。彼もまた長い間、UFCで戦ってきた。過去に何度か戦う話もあったけど、実現には至らなかった」
──2022年7月に対戦予定でしたが、グリーンがドラックテストに陽性反応が出てキャンセルとなりました。
「その通りだね。ただ、あれからもいつかは戦う時が来るとずっと思って来たんだ。ボビーのようなユニークなスタイルの選手と、こうやって戦うことができて嬉しいよ。ヤングキッズと戦う時は、何も知らない。本当に何も分からない相手と拳を交えることになる。でもボビーは違う。彼は彼で、色々なことを積んできている。ボビーのようなUFCで20数試合(※23試合)も戦ってきた選手と戦えることが楽しみでしょうがない」
──押忍。ところでUFC100に出場していた選手で現役を続けているのはジムに以外、ジョン・ジョーンズ、そして秋山成勲選手がいます。秋山選手は48歳になった今も試合に出ていますが、ジムが秋山選手の年齢に近づく頃にUFC400が開かれるはずです。
「ノー、ノー(笑)。待ってくれ、UFC400で戦うつもりはないよ(笑)。だから、僕はライト級だからセクシーヤマとは違う。ライト級ファイターが48歳で戦うなんて、あり得ない」
──可能性はゼロとは思えなくて。
「う~ん……。UFCが僕と同じようにリタイアしている選手との試合を組んで、ショーの役に立てるなら……その時は考えるよ(笑)」
■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT
■UFC300対戦カード
<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)
<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)
<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)
<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)
<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)
<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)
<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)
<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)
<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)
【写真】KO必至。MMA的にはヒルという見方も成り立つが、近い距離のポアタンの振りにどう体が反応するか (C)MMAPLANET
13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催される。プレリミ含めて全試合がメインイベント級と呼べる豪華カードがズラリと揃ったこの記念大会のメインを飾るのは、二階級制覇を達成した王者アレックス・ポアタン・ペレイラに、前王者のジャマール・ヒルが挑むUFC世界ライトヘビー級選手権試合だ。
Text by Isamu Horiuchi
この試合は、約1年半続いてきたUFCライトヘビー級戦線の混迷状況に完全に終止符を打ち、ついに誰もが認める──”Undisputed”王者を決定する戦いといえる。
同級の混乱は2022年11月、当時の王者イリー・プロハースカが右肩の負傷によりタイトルを返上したことに端を発する。これを受けて翌月、2位のヤン・ブラボヴィッチと3位のマゴメド・アンカラエフの試合が急遽王座決定戦に格上げされて行われた。
しかしこの試合が、直後の会見でダナ・ホワイト代表が「酷い試合だった。ファッ○ンな3ラウンドが終わった後、私は卒倒しそうになったよ」と得意のFボムを投下し吐き捨てるような内容の末にドロー、王座は空位のままとされた。呆れた表情のホワイト代表はその場で、年明けの2023年1月リオ大会にて、元王者のグローバー・テイシェイラと当時6位のヒルの間で新たな王座決定戦を行うと発表したのだった。
突然の大抜擢を受けて敵地に乗り込む形となったヒル。地元の英雄に対して多彩な打撃でスタンド戦を支配。5Rにはテイシェイラ執念のテイクダウンからマウントを奪われたものの、股間を抜けてスクランブルして上を取り返し、文句なしの判定勝利を収めた。デビュー後14戦にして見事世界の頂点に立ち「俺のような境遇からここまで来られるなんて」とマットに突っ伏して感涙にむせんだヒル。
そこから顔を上げて「多くの人間が俺には無理だとぬかしやがった。チャンスは1Rしかなく、5Rは戦えないとかな。見たかこのクソ野郎ども!!」とアンチに大見栄を切ったが、思わぬ展開が重なった末の「棚ボタ的」戴冠という印象は拭えず、ヒルをまだ真の王者としては認め難いという声が消えることはなかった。
防衛を果たすことでそんな声を黙らさんと意気込んでいたヒルだが、半年後の7月に悲劇が襲う。なんとファイトウィークの催しで行われたファイターたちによるバスケットボールの試合にてアキレス腱断裂の大怪我を負ってしまい、タイトル返上を余儀なくされたのだ。
そこで同年11月、この一年間で実に三度目の王座決定戦へ。前王者プロハースカと二階級制覇を目指して階級を上げてきたアレックス・ポアタン・ペレイラ。1Rに強烈な右カーフでダメージを与えたポアタンは、2Rに強引に詰めてきたプロハースカに左右のフックをヒット。崩れたところに追い討ちをかけてTKO勝利。キックボクシングとMMAの両方で世界二階級制覇という大偉業を達成してみせた。
今回の記念大会ではその新王者ポアタンに、手術とリハビリを経て復活したヒルが挑む。正規王者と、敗れることなく王座を失った前王者による真の世界の頂点を決める戦いが、ついに実現するというわけだ。
ヒルにとってこの試合は、戴冠後も自分を認めようとしない世間に対して自分を証明する戦いでもある。対戦相手の悪口を言わないストイックな求道者ペレイラのことを「クールな男で、ああいうやつは好きだ」と認めているヒルだが、自分のことをビッグマウスと罵るペレイラファンたちのことは我慢がならない様子だ。
「俺はアレックスを立ち技でKOしてやる。そしてその事実を奴のファンどもの目の前に突きつけてやるぜ。アレックス本人に対してはやらないけどな。俺のことを侮辱しやがる奴ら、お前らより俺の方が遥かに優れた存在だ。俺は自分の本職で世界のトップに上り詰めたんだ。それと比べてお前らは何様だ? たかが百人くらいの規模の工場で月間優秀社員に選ばれたとか、そんな程度でお前らは自慢し、自分を特別だと思ってたりするんだろ?
お前らなとど違い、俺は選ばれた1パーセントの中の1パーセントの中の1パーセントだぞ。そんな俺の達成や努力に唾を吐きかけクソぶっかけるような真似しやがって。その理屈で行けばお前らなど、人生において誇れることなど何一つありはしないということを理解するがいい。お前らがどう足掻こうが、俺はこの3年間で、ほとんどの人間が生涯で稼ぐ額より遥かに多くを手にしたんだ。そいつらの子供が稼ぐ金を含めてもな。俺はお前らの言葉をモチベーションにして、お前らが崇め奉るアレックスを眠らせてやるぜ」と、対戦相手ではなくそのファンに対して身も蓋もないトラッシュトークを展開する前王者だ。
それはさておき、この試合で期待されているのは凄まじい殺傷能力を持つ両者による大打撃戦だ。グローリー2階級制覇という輝かしいキックボクシングの実績を持つポアタンは、当然のようにMMAでも9勝中7フィニッシュの全てがKO勝利だ。対するヒルも、7つのフィニッシュの全てがKO。しかし高校時代までバスケットボールに励んでいたというヒルは、MMAを始めるまで特に格闘技経験はない。まったく異なるバックグラウンドとスタイルを持つMMAストライカー同士の対決という意味でも、興味深い頂上決戦だ。
まず注目なのは、ポアタンの主武器である右カーフキックを巡る攻防だ。腰を捻らないコンパクトな蹴り方でありながら強烈無比な威力を持つこの右カーフを駆使し、序盤に相手の足を殺すのがポアタンの常套手段だ。ほぼノーモーションから放たれるため、相手にとっては反応が極めて困難となる。
ヒルのヘッドコーチであるチャド・ポメロイも「我々はローキックの対策を重点的に行っていて、強いムエタイ選手たちにスパーでローを蹴ってもらっている」と発言しており、挑戦者陣営がこの技を最も警戒していることは間違いない。ヒルとしては、スタンドでいかにプレッシャーをかけて王者のローを封じるかが勝利への大きな鍵となりそうだ。
その点本人は、11月のポアタンの戴冠をケージサイドで目撃した直後にすでに「1Rはスローな展開だった。イリーは広いスタンスでローに対処せずにダメージを受けてしまったが、俺にはアレックスが対処できないようなスキルと特性がある。奴は俺が試合に持ち込むスピードとボリュームに対抗できないよ」と自信を覗かせている。
実際ヒルは王者と同じ193センチという長身を誇り(201cmのリーチは王者のそれを1センチ上回っている)、前手での多彩な攻撃を軸に、足技も交えてプレッシャーをかけることを得意とする。さらに相手のジャブにカウンターを合わせるタイミングにも天賦の才を持ち、サウスポーを基本としつつスイッチも駆使するが故に、ローのダメージを両脚に分散させることもできる。
王者のローの距離を殺しケージ際に詰めるために必要な適性に恵まれているのは確かだ。さらに誰よりもポアタンをよく知るイスラエル・アデサニャとの練習も敢行したヒルは「彼は俺の質問に全て隠すことなく答えてくれて、(打倒ポアタンのための)素晴らしいインサイトを授けてくれたよ」と語っている。
もっともポアタンとしては、ローを嫌がる相手が前に出てくるのはいつものこと。前戦でも、プロハースカが2Rに強引に詰めてきたところを待ち構えていたように強烈な左右のフックを当てて沈めている。近距離からでも異次元の破壊力を発揮する拳こそ、ポアタンの真の怖さだ。
が、挑戦者はむしろそこにポアタンの弱点を見出しているようだ。「奴のディフェンスは、自分のオフェンスに依存しているんだよ」とヒルは言う。「守るときには、自分の攻撃の背後に隠れる形になっている。だからディフェンスを余儀なくさせるように追い込んでいけば、そこに弱点が出てくるはずだ」と。
実際ポアタンは、相手が距離を詰めてきた時に上半身を動かさず腕を伸ばして下がる傾向があり、その際に相手のパンチを被弾する場面も見られる。ケージ際からの一撃必殺のカウンターは持っているが、巧みなディフェンスワークを披露することはあまりない。対してヒルは柔らかく体を使ったスウェイも得意とする。前戦の4Rにテイシェイラをケージ際まで詰めると、リーチに勝る自分の打撃だけが当たる絶妙な距離を保ち、反撃を巧みなボディワークでかわしつつ多彩なコンビネーションで滅多打ちにしてみせた。「オフェンスに依存したディフェンス」を攻略する術を、ヒルは確かに持っている。
しかし──この師と仰ぎ敬愛する存在がヒルに打ちのめされる光景を、ポアタンはセコンドとして間近で目撃している。打撃戦で師と同じ轍を踏むつもりは毛頭ないはずだ。
今回の試合に向けてテイシェイラの道場で共に練習し、攻略法を伝授される日々を過ごしてきた王者は「ヒルの打撃は確かにパワーがあって危険だ。でも技術レベルを見ると(自分が倒した)イリーの方が優れていると思う」と静かに語り、自信を覗かせる。両者の間合いが蹴りの距離からパンチの距離へと移行した時、射程距離の長いヒルの拳と短いポアタンの拳、二つの凄まじい殺傷能力はどのように交錯するのか。
お互いのことを熟知し、研究し尽くした最高峰のMMAストライカー二人による決戦。意表をついてどちらかがテイクダウンを仕掛けてゆく可能性も含め──真のライトヘビー級の頂点を決める、記念大会に相応しい至上の攻防を堪能したい。
■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT
■UFC300対戦カード
<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)
<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)
<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)
<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)
<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)
<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)
<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)
<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)
<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)
【写真】柔道時代ともPFL時代とも明らかに違う、バンタム級で戦うケイラ・ハリソン。計量まで3日、声に力があった(C)MMAPLANET
13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」で、ケイラ・ハリソンがオクタゴンデビューを迎える。
Text by Manabu Takashima
2度五輪を制した柔道家は2017年にMMA転向を果たすと、2019年&2021年のPFL女子ライト級シーズンウィナーとなった。2022年はMMA初黒星の喫し準優勝に、昨年は女子フェザー級が実施されたがケイラは参加しなかった。
そんななか11月にワンマッチで元UFCファイターのアスペン・ラッドを下すと、今年の1月になりダナ・ホワイトからケイラとの契約、UFC300で初戦を戦うことが発表された。UFCに転じた理由、そしてホルム戦とこれからに関して、ケイラ・ハリソンに尋ねた。
――UFC300という歴史に残る舞台で、オクタゴンデビューを果たすケイラです。今、どのような気持ちですか。
「凄く楽しみだし、この機会を得られたことに感謝しているわ。新しい舞台で、新しい階級のファイトを伝説になるようなショーで戦う。大きなリスクを伴っているけど、見返りの大きな試合はワクワクするわ」
──ケイラがUFCと契約したと知った時、凄く驚きました。PFLがBellatorを買収したことで、女子フェザー級のシーズンが楽しみだったので。いつ頃から、UFCで戦うことを考えていたのでしょうか。
「いつ頃からということでいえば、ずっと前からよ。MMAを始めた時からゴールはUFCチャンピオンだった。それでもPFLを離れることは、簡単な決断じゃなかったわ。PFLがスタートした時から、共に歩んできたわけだし。でもUFCこそがMMA界におけるオリンピックなの。
きっと、今回のコントラクトが私のキャリアにとって恐らくは最後の契約になるはず。70歳になった時、自分の人生を後悔したくなかった。『あの時、チャレンジしていれば』って。後々「あの時、なぜトライしなかったの?」と自分を責めたくなかったから、UFCに挑戦することを決めたの」
──素晴らしいですね。本当に素晴らしい。ケイラは既に五輪で2階級を制し、PFLでは100万ドルを2度も手にしている。ダブル・ゴールドにダブル・ミリオンなわけですよ。
「アハハハハ。ダブル・ミリオン(笑)」
──それなのにベストファイターになることを渇望しているのですね。
「そうね、それが私なんだと思う。とにかく好きなことに邁進し続けたい。MMAはただの仕事じゃないから。凄く大変よ。多くを犠牲にして取り組む必要がある。自分で背中を押して、成長する必要がある。それがファイターとして、人としての成長に繋がるわけで。常に自分を次の段階、ニューレベルに引き上げたいの。それこそが、私の人生を完成させるピースになるの。毎朝、目を覚まして──その日をベストバージョンの自分でいたい。誠実さ、尊敬心、献身、規律──全てをひっくるめて、自分を成長させる。そこに安らぎが存在しているから」
──深いです。そんなケイラですが、実はフェザー級に落とすということで減量がハードでインタビューがキャンセルされることもあると思っていました。そもそも柔道時代は78キロで戦っていて、8年後に65キロで戦う……。いや、常識では考えられないだろうと。
「柔道時代は、ピザやクッキーも食べ放題だったわ(笑)。真剣にダイエットにはとりくんでいなくて、食べたいモノを何でも食べていたの。今は違う。栄養士、ダイエットの専門家とチームを創って減量に取り組んでいる。チームだけでなく、UFCもサポートしてくれる。無理なく体重を落とせているから、ボディもメンタルもコンディションは最高で。気持ちもデキているし、いつでも戦えるわ」
──しかし、ピザやクッキーを好きなように食べていたとは。この事実をケイラに敗れた柔道時代のライバルが知ると……。
「アハハハ。まだ若かったのよ。16歳から一人で生活してきて、料理もできなかった。回りには常にダイエットコーク、ピザ、ハンバーガー、フレンチフライがあったから(笑)」
──ところで2017年の秋、MMAデビュー前の日本でインタビューさせていただいた時に「ロンダのことを聞かれなかったのは初めて」とケイラは言っていました。
「そうそう。あのときは誰もが私にロンダのことを尋ねてきて、少しフラストレーションがたまっていて(笑)。でも、あなただけがロンゴと比較するようなことを聞いてこなかったの」
──あの言葉は凄く印象に残っていて。ただし今回、UFCがケイラに用意した相手はホーリー・ホルムです。どうしてもホルムロンダを思い出せるマッチアップではないかと。
「皆がロンダとホーリーの試合を連想するのは、もう仕方のないことだと思う。ロンダ=柔道、ケイラ=柔道というイメージは絶対で。でも私はロンダとは違う種類のファイターで、人間も違う。正反対よ。だから、土曜日の夜は試合結果も違ってくるわ」
──女子MMAもロンダが活躍したころと、今では相当に違っています。払い腰から腕十字が取れると、もうハイライトリールの極みです。
「別モノね。私は柔道でなく、MMAを戦う。ウェルラウンディッド・ファイターで、ビギナーじゃない。17試合を戦ってきたわ。ドミネイトするのが一番だけど、皆が楽しめる試合をしたい。そういう意味ではPFLでは禁じられていたエルボーを使えるのが、凄く楽しみで」
──いやぁケイラにエルボーがあれば、まさに鬼に金棒です。
「たくさんの人を驚らかせることができるはず。絶対に(笑)」
──とはいえホーリー・ホルムはあれだけのストライカーですが、MMAで結果を残せたのはその距離の取り方にあると思います。彼女の印象を教えてください。
「とにかくホーリーのことは凄く尊敬していて。素晴しく高いファイトIQの持ち主で。素晴しいフットワークから、最高の打撃を繰り出すことができる。グラップリングも常に成長している。あんな風に瞬く間に成功すると、その場に踏み止まってしまうアスリートが多い中で、彼女は常に成長してきた。変化を厭わない強い気持ちで、強くなり続けている。そこが一番尊敬できる点ね。
彼女のフットワークは女子バンタム級でも最高。そこに立ち向かうことが、私にとって最大にタフな挑戦になるはず。あのフットワークが、ホーリーの最高の武器であることは間違いないわ」
──対してケイラのアドバンテージは?
「それは……凄くたくさんある(笑)。自分ではそう思っているわ。MMAを始めた時、知識も経験も凄く僅かだった。柔道の力で限界を突破して、勝利を手にすることができていたけど今の私はより強く、より大きく、より速くて経験豊かなファイターになった。この1年でさらに成長できたという感覚もあるから、全ての動きに注目してほしいわ」
──会場の雰囲気はPFLとUFCでは違うかと。あの盛り上がり方はUFC独自なモノで。
「それこそ、凄く楽しみにしているポイントよ。何度もUFCの会場を訪れたけど、あれはもうマジックね。凄くオリンピックや日本での柔道世界選手権に似ているわ。2010年、私が初めて世界選手権で優勝したのは東京だった。あの時も会場(国立代々木競技場)の雰囲気は特別だったわ。あんな空気の中で、最高の自分でいる。毎晩、頭のなかでイメージしているの。自分があの場に立つことを」
──UFCでの第一歩。これからのケイラ・ハリソン、特別な存在の雄姿を追うのが楽しみでならないです。
「ありがとう。そう、私はスペシャル・ファイター。今回の試合は新たな章に向かう、第一歩。私はすぐにUFC世界バンタム級チャンピオンになるから」
──では最後に日本のMMAファンに一言お願いします。
「日本、柔道。柔道は日本の皆のマーシャルアーツで、私の初恋だった。今はMMAを心から愛している。皆、応援ありがとう。UFC300で皆に私の試合を見てもらえることが凄く嬉しいわ。アリガトゴザイマシタ」
■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT
■UFC300対戦カード
<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)
<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)
<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)
<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)
<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)
<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)
<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)
<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)
<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)
【写真】300回のスーパーイベントは現地時間の月曜日から水曜日までメディアデーが設けられている (C)MMAPLANET
13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」は、実に新旧12人のUFC世界王者が出場するスーパー・メガ・アニバーサリー・ショーだ。
Text by Manabu Takashima
プレリミ出場となった6人の元世界王者に前UFC世界バンタム級王者アルジャメイン・ステーリングが含まれている。昨年8月にショーン・オマリーに敗れて以来の再起戦は、フェザー級二階級をカルヴィン・ケイターと戦うアルジャメインに、この間に出場したグラップリング戦、そして当たらな階級で戦う胸の内を尋ねた。
――UFCでは初めて、実に12年ぶりにフェザー級で戦うアルジョです。今の心境を教えてください。
「良い感じだよ。階級を上げいるから、これまでとは食事も変わり違った体験をしている。凄く状態も良くて、フェザー級でも自信をもって戦えるよ。体の強度も全く落ちていないからね」
──UFC300という記念すべきショーで戦うことに関して、どのような気持ちですか。
「これらのカードに自分の名前が入っていることに、ワクワクするね。現役のチャンピオンと元チャンピオンが揃っている。こんな凄い試合が並んだショーは、これまでになかったはずだ。ファンのためにも良い試合をしたい。ただ勝ちに徹するようなファイトではなくて」
──5年振りにプレリミで戦うことになりますが、そこに何か想うことはありますか。
「全然、気にしていない。早く家に帰ることができるじゃないか(笑)。友人を集めて乾杯して、一杯やるのも早くなる。それが今から楽しみで仕方ないんだ」
──ハハハハ。昨年8月にバンタム級のベルトを失って以来、この8カ月でグラップリングマッチで3度戦いました。組み技の試合に出た目的は何だったのでしょうか。
「試合に出ていたかったんだ。グラップリングも好きだし、自分より大きな相手と手合わせができる。3試合中、2試合は大きな相手と戦うことができた。試合にでることで、実戦感覚を失いたくなかった。それがグラップリングを戦った一番の理由かな。顔を殴られる心配はないし、良い経験になっている。
グラップリングといえども実戦を戦うことで、体が錆びつかないし、技もしっかりとシェイプできる。それにプロの試合だ、ちゃんと稼げたからね(笑)。例え組み技でも、フリーで戦おうとは思わない。色々と試せたし、モチベーションを保つことができた。そんなことを全て含めて、チャレンジしたってことだよ」
──なるほどです。ところでファイトウィークになっても、やはりバンタム級時代と違って肌に張りがあって元気そうです。
「とにかくメンタル面で違いがある。凄く良い感じだ。肉体的にもベターだ。何よりエナジー・レベルは明らかにバンタム級時代より高い。もう2019年には、あと数試合戦ったら階級を上げようとは思っていたんだ。それがバンタム級でタイトルコンテンダーになったから、135ポンドでの戦いを続けていた。ワールドベストにもなれた。結果的にバンタム級世界王者として、試合に勝つたびにもう一度バンタム級で戦うということを繰り返していたんだ。
でも前回は、試合をすることを凄く急いでいた。今回は時間をかけて調整してきたし、全てがポジティブに動いている。自分に誰よりも厳しい減量を課すことで、自らの可能性を高めてきた。それがバンタム級で戦うということだったんだ。脂肪が少なく、ほぼ筋肉のボディなのにギリギリの減量を強いてきた。今回からフェザー級で戦うことで、自分の体の可能性をさらに探りたい」
──アルジョだと、フェザー級でも全く見劣ることはないかと思います。ただし、やはり対戦相手はバンタム級時代と比較すると大きくなるかと。
「カルヴィンに関しては、身長も変わらない。そして、ショーン・オマリーは4インチ(※約10センチ)も背が高かった。細かったけどね。それに練習で長身の選手とやってきたし、相手が大きくなっても構わない」
──では体格面でなく、技術面でケイターのことをどのように思っていますか。
「ボクシングの基礎がある。フットワークも良いし、ジャブも良い。右クロスが特に良いね。ただ、いくら威力のあるクロスを持っていても、その威力が発揮できるような攻防にはならない。そんな場所に留まることがない。すぐに移動するからね。
それでも自分の力を試すファイトになるだろう。今回は過去2試合と比較しても、しっかりと調整できた。過去最高の体調だといえる。だから、ファンの皆に喜んでもらえるよう戦界、その腕でこの手が挙げてもらうファイトをするよ。それからフェザー級タイトルに向けて、動き始める。
正直なことをいえば、現時点でもう自分がやりたいことは全てやってきた。やり切った。もうゴールに辿り着いている。だからこそ2024年は新しいゴールを目指し、新しい挑戦を始めるんだ。今回の試合で、他のフェザー級のタフ・ファイター達にアルジャメイン・ステーリングの存在を認識させるつもりだ」
──ところで、今ではずっとラスベガスでキャンプをしているのですか。
「そうだね。NYに戻る理由がない。最高のトレーニング・パートナーに囲まれていて、より整備された環境で練習ができているからね。NYよりもラスベガスの方が、必要なピースが簡単に手に入るんだ。可能な限り、最高の練習がしたいからベガスでやっている」
──アルジョ、今日はインタビューを受けていただきありがとうございました。最後に日本のファンにメッセージをお願いできますか。日本ファンは井上姉弟のチームメイトだったアルジョのことを少し身近に感じていると思います。
「そうなんだ。ありがとう。そして、いつも日本のファンのサポートに感謝している。そんな皆に伝えたいことは、大変な時を迎えても顔を上げて前に進んで欲しいということ。どんな困難にぶちあたってもダイジョウブ、ダイジョウブ(※日本語で)」
■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT
■UFC300対戦カード
<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)
<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)
<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)
<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)
<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)
<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)
<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)
<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)
<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)
<フェザー級/5分3R>
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
Def.1R1分30秒 by KO
パット・サバティーニ(米国)
細かくスイッチするサバティーニ。前に出ながら右フックを当てる。ロピスが右ストレートを出すと、サバティーニはシングルレッグで組み付く。これを切ったロピスが首相撲からヒザ蹴りを突き上げる。サバティーニが再びシングルレッグに入ると、ロピスが小手を巻いて投げるような形となり。サバティーニの立ち際に右アッパーと右フック。これでサバティーニがバランスを崩し、サバティーニが一気にパウンドを連打し、レフェリーが試合を止めた。
見事なKO勝利を収めたロピスは「MSGで戦うことは夢だった。全てのサポートに感謝している。一発目が入った時、これはいかないとと思った。最高のコーチ、フランシスコ・グラッソが柔術をストライカーにしてくれたんだ」と試合を振り返った。
【写真】豪州勢らしく125ポンドでもパワフルなウェルラウンダーのアーセグ(C)MMAPLANET
11日(土・現地時間)、秋のUFCビッグショー in NYC──UFC295「Prochazka vs Pereira」がニューヨーク州ニューヨークシティのマジソン・スクエア・ガーデンで開催される。
Text by Manabu Takashima
イベント名にあるようにイリー・プロハースカアレックス・ポアタン・ペレイラによるUFC世界ライトヘビー級王座決定戦を筆頭に、UFC暫定世界ヘビー級王座決定戦=セルゲイ・パブロヴィッチトム・アスピナルなど選りすぐりのマッチアップが並ぶ同大会で、豪州フライ級のエース=スティーブ・アーセグが、オクタゴン2戦目でアレッサンドロ・コスタと対戦する。
今年の2月にパースで開かれたUFC284の前夜、ある意味ダナ・ホワイト・ルッキン・フォー・ファイト的なPPVショーウィークのローカル大会=Eternal MMAで平井総一朗を破り最高峰に辿り着いたアーセグを初インタビューした。
――今週末、MSGでアレッサンドロ・コスタとオクタゴン2戦目を戦います(※取材は8日に行われた)。今の気持ちを教えてください。
「感謝の気持ちでいっぱいだよ。なんせMSGだからね。1年前のことを想うと、ここにいることが信じられない。Eternal MMAで戦っていてUFCとサインし、MSGで戦う。これ以上のことはないだろう。コスタは強敵だし、凄くチャレンジングな試合になる。最高だよ、真っ向勝負をしたいと思っている」
──スティーブは今年の2月に、UFC284ファイトウィークに行われたEternal MMAで日本の平井総一郎選手を破ったことでUFC入りを果たしました。その過去があって、日本のファンにとっても気になる選手です。
「UFCの前日の試合だったけど、実は対戦相手がなかなか決まらなかった。豪州国内では僕と戦いたがる選手が誰もいなくて。そして英国や海外の選手に当たることになった。結果、ヒライが試合に応じてくれて本当に嬉しかったよ。彼とは試合後、そして日本に戻ってからも何度か連絡を取り合った。
あの大会後、バックステージでUFCとの契約が決まった。僕はあの試合でUFCに良い印象を与えて勝つ必要があったけど、ヒライが試合を受けてくれたからUFCとサインできたんだ。試合がなければそれは不可能だったからね」
──6月のダヴィッド・ドヴォルザーク戦はショートノーティス、ランカーとのUFC初戦となりました。
「いつだって試合ができるように準備していたから、あのチャンスに跳びついた。10日前だろうが、2日前だろうが構わない。オファーがあった時、僕はコーチに『皆が大丈夫なら、俺は戦うよ』って伝えたんだ」
──コーチからの確認でなく、コーチの方を確認したと(笑)。
「そうなんだ(笑)。それにさ、普通にオファーを待っていたらいきなりトップ10ファイターと戦うことはできなかっただろうしね」
──とはいえ、そのランカーを破ったのにスティーブはランク入りしていません。
「どういう仕組みでランキングが決定されているのか、僕には分からないんだけど……そこは気にしていないよ。いずれにせよ、デビュー戦でトップ10の選手に勝てたことで2戦目からもトップランカーと戦えるポジションを手にすることができたんだ。この状況はチャンピオンを狙ううえで、好ましいことは変わりないから」
──当初の予定ではランク9位のマット・シュネルと対戦予定でした。
「ランク9位の選手との試合がなくなって……やはり勝てば返ってくるモノも大きかったし、最初は引っ掛かるものがあったよ。けど、NYのビッグイベントで戦えるし気持ちはすぐに切り替わった。実際コスタはシュネルより、手強いと思う。グラウンドが強くて、テイクダウンディフェンスにも長けている」
──では、そのコスタ戦ではどのようなファイトを見せたいですか。
「僕がどの局面でも、しっかりと戦えることを証明したい。打撃、寝技、レスリング、全ての場面で僕の爆発力がアドバンテージを握るだろう。彼は距離を保つタイプだから、開始直後から詰めて圧力をかける。そして打撃に優位に立つ。彼が持っている僕のイメージとは違う武器を使って戦う。彼のカウンター狙いに対して、あくまでも僕のファイトを貫く。僕が世界のベストだと証明できるファイトを心掛けたい」
──ところで私はUFCフライ級ファイターのインタビュー機会を得ると、常に平良達郎選手のことを尋ねるようにしています。スティーブにとって、平良達郎選手のパフォーマンスはどのように映っていますか。
「UFCで戦っている日本人だよね。あのサブミッションが得意な。いや、彼のサブミッションは良いよ。いつか戦う日がやってくると思うけど、その時は思い切りファイトしたい。凄く良いファイターだ。日本のファンも、その前に僕の試合を見て楽しんで欲しい」
■視聴方法(予定)
11月12日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC FIGHT PASS
午後12時~PPV
午前7時30分~U-NEXT
<UFC世界ライトヘビー級王座決定戦/5分5R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレックス・ポアタン・ペレイラ(ブラジル)
<UFC暫定世界ヘビー級王座決定戦/5分3R>
セルゲイ・パブロヴィッチ(ロシア)
トム・アスピナル(英国)
<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マッケンジー・ダーン(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
マットフレヴォラ(米国)
ベノワ・サンドニ(フランス)
<フェザー級/5分3R>
パット・サバティーニ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)
<フライ級/5分3R>
スティーブ・アーセグ(豪州)
アレッサンドロ・コスタ(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
タバタ・ヒッチ(ブラジル)
ルピタ・ゴディネス(メキシコ)
<158ポンド契約/5分3R>
マテウス・レンベツキ(ポーランド)
ルーズベルト・ロバーツ(米国)
<ライト級/5分3R>
ナジム・サディコフ(アゼルバイジャン)
スラヴァ・ボルシェフ(ロシア)
<ライト級/5分3R>
ジャレッド・ゴードン(米国)
マーク・マドセン(デンマーク)
<138ポンド契約/5分3R>
カン・ギョンホ(韓国)
ジョン・カスタネダ(米国)
<フライ級/5分3R>
ジョシュア・ヴァン(ミャンマー)
ケヴィン・ボルハス(ペルー)
<147ポンド契約/5分3R>
デニス・ブズーキア(米国)
ジャマール・エマース(米国)
【写真】カーラ・エスパルザ、アレクサ・グラッソに続き、アンドラーデに勝利。世界挑戦が待たれるスアレスだ (C)Zuffa/UFC
5日(土・現地時間)テネシー州ナッシュビルのブリヂストン・アリーナでUFC on ESPN50「Sandhagen vs Font」が開催された。翌日は北米を代表するオープンホイール・レース=Indy CarのMusic City Grand Prixが開かれ、強さと速さを荒そうウィークエンドのDay01=UFC ESPNは2019年3月以来、実に4年5カ月ぶりの世界最高峰の来訪だった。
メインのバンタム級戦はコリー・サンドハーゲンが、ロブ・フォントをTD&コントロールで完封。サラリとパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトが5選手に行われる印象的なフィニッシュが見られたイベントとなった。
デビュー戦でボーナス獲得となったアス・アルマバエフ、そしてジェイク・ハードリーを破ったコディ・ダーデンとフライ級で気になるファイターが台頭している。
パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト=タチィアナ・スアレス、ダスティン・ジャコビー、ジエゴ・ロピス、カールストン・ハリス、アス・アルマバエフ
UFC ESPN50 | ||
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<140ポンド契約/5分5R> | ||
○コリー・サンドハーゲン(米国) | 5R 判定 詳細はコチラ | ×ロブ・フォント(米国) |
<女子ストロー級/5分3R> | ||
○タティアナ・スアレス(米国) | 2R1分31秒 ギロチンチョーク 詳細はコチラ | ×ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル) |
<ライトヘビー級/5分3R> | ||
○ダスティン・ジャコビー(米国) | 1R1分33秒 TKO | ×ケネディ・ンゼチェクウ(米国) |
<フェザー級/5分3R> | ||
○ジエゴ・ロピス(ブラジル) | 1R1分38秒 腕ひしぎ腕固め 詳細はコチラ | ×ギャビン・タッカー(米国) |
<ライトヘビー級/5分3R> | ||
○タナー・ボーザー(カナダ) | 3R 判定 | ×アレクサ・キャマー(米国) |
<ライト級/5分3R> | ||
○ルドヴィット・クライン(スロバキア) | 3R 判定 詳細はコチラ | ×イグナシオ・バハモンテス(チリ) |
<バンタム級/5分3R> | ||
○カイラー・フィリップス(米国) | 3R 判定 詳細はコチラ | ×ハオーニ・バルセロス(ブラジル) |
<ウェルター級/5分3R> | ||
○カールストン・ハリス(ガイアナ) | 3R1分50秒 アナコンダチョーク 詳細はコチラ | ×ジェレマイア・ウェルス(米国) |
<フェザー級> | ||
○ビリー・クゥアンティロ(米国) | 3R 判定 | ×デイモン・ジャクソン(米国) |
<フライ級/5分3R> | ||
○コディ・ダーデン(米国) | 3R 判定 詳細はコチラ | ×ジェイク・ハードリー(英国) |
<146.5ポンド契約/5分3R> | ||
○ショーン・ウッドソン(米国) | 3R 判定 | ×デニス・ブズーキア(米国) |
<フライ級/5分3R> | ||
○アス・アルマバエフ(カザフスタン) | 2R3分11秒 RNC 詳細はコチラ | ×オーデ・オズボーン(米国) |