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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:2月 鶴屋怜×チーニョーシーユエ「どう原石が磨かれるか」

【写真】練習仲間たちは、まさに渡辺を送り出す。そんな空気に包まれていた(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2024年2月の一番──2月4日に行われたRoad to UFC2023Finalの鶴屋怜×チーニョーシーユエ戦について、担当・中村の「取材は3月31日だったのでギリギリOK」という言い訳と共に語らおう。


――取材日が3月31日ということで……ギリギリ2月の「今月の一番」で間に合ったということでよろしくお願いします(笑)!今回は鶴屋怜×チーニョーシーユエをピックアップしていだきました。

「トーナメント全体を見て鶴屋選手の強さが際立っていたと思いますし、特化している技術でトーナメントを勝ち抜いた凄さもあったと思います。これからUFCで試合を重ねていくことで、21歳の彼がどう仕上がっていくのかを楽しみにしています。この試合そのものを推したいというよりも、これからの鶴屋選手への期待感も込めて、この試合をセレクトしました」

――鶴屋選手はレスリングのバックボーンがありますが、テイクダウン&トップキープという手堅い戦い方ではなく、色んなことにトライする思い切りのよさが特徴的なファイトスタイルだと思って見ていました。

「だからこそ準決勝でマーク・クリマコとフルラウンド戦ったことが大きな経験になったと思っていて。あの思い切りのいいスタイルをUFC本戦でもやりきるのは大変だと思うんですよ。Road to UFCの選手たちは決してトップレベルではないですし、それで今のスタイルをやりきれている部分もあると思うので。逆にクリマコはLFAでもキャリアがある選手なので、ああいった試合の経験も踏まえてUFCでどんな戦い方をするのか注目したいです」

――例えば首投げからの袈裟固め。あれは鶴屋選手の必殺技であり、得意な形である一方、UFCの本戦レベルの選手に対してはリスキーな技なのかなとも思ってしまいます。

「そうなんですよ。ただ、今の鶴屋選手はダイヤの原石だと思うので、ここからどう原石が磨かれていくかですよね」

――自分の武器をどうぶつけるか。ユニファイドルールや北米の選手と戦ってどう勝つか。UFCにチャレンジする選手はそのバランスが一つの壁だと思っています。

「今のスタイルのままでいくと、いずれ大きな壁にはぶつかると思います。それは本人もチームのみなさんも考えていることだと思いますし、UFCのトップ選手たちと戦う前にUFCでの戦い方・勝ち方を身につけてほしいです。UFCとしても鶴屋選手を将来性のある存在的な扱いで、ちゃんと段階を踏んだ相手を用意してくれると思うので、そこで一戦一戦成長しながら勝っていく。

そして最終目標までたどり着いてほしいです。だからこそ鶴屋選手のUFCデビュー戦が決まる前にRoad to UFCの試合を再チェックしておくと、鶴屋選手の進化や変化も分かって、日本のUFCファンにとってはすごくいい楽しみ方もできると思います」

――そういう意味ではいきなり本戦契約するのではなく、Road to UFCから実績を積んでトップ選手と勝負できる環境は遠回りのように見えて充実したキャリアの作り方とも言えますね。

「はい。それこそ僕はCAGE FORCEのトーナメントで優勝して、WECデビュー戦の相手がミゲール・トーレスでタイトルマッチでしたからね(笑)」

――北米デビュー戦の相手がいきなり当時の軽量級世界最強(笑)。

「すごく貴重な体験でした(笑)。今はUFCのオペレーションのなかで、試合が決まる→試合までの練習・準備をする→試合当日を迎えるという流れを経験できる場があるので、それはすごく大きいと思いますね」

――UFCというピラミッドの一番下からキャリアを積み重ねることは決してネガティブではない、と。

「むしろポジティブな要素の方が多いと思います。しかも今UFCで戦っている日本人はみんな若いですし、慌てて試合を重ねるのではなく、今のUFCのレールに乗って、キャリア相応の相手と戦って、着実に上に上がっていくといいと思いますね。平良(達郎)選手はまさにそうじゃないですか。2人とも同じフライ級で、同門のような存在だと思いますが、この2人がランキングを駆け上がってUFCのベルトをかけて戦うことになったら、日本のMMAは盛り上がると思います」

――水垣選手の戦績を振り返ると、WEC・UFC参戦当初は勝ち負けを交互に繰り返して、徐々に勝ち星を伸ばしていくキャリアだったんですね。

「今は契約満了まで試合をやらせてもらえることも多いですが、当時は2連敗したらリリースされるという暗黙のルールのようなものがあったので、毎回崖っぷちの感覚で試合をして、何とかサバイブしていましたね。だから一戦一戦を何としてでも勝たなければいけなかったし、そのプレッシャーも大きくて、自分を成長させる余裕や時間はなかったなとも思います。もう少し時間的な余裕があって、自分を成長するための時間を作れたら、もうちょっと変わった自分を出せたのかなとも思っていて。そういう意味で鶴屋選手はすごくいい環境にいると思うので、自分を磨いて強くなって欲しいなと思います」

――水垣選手がWECで戦ってきた相手も錚々たる選手たち(ミゲール・トーレス(戦)、ジェフ・カラン(戦)スコット・ヨルゲンセン(戦)ハニ・ヤヒーラ(戦)ユライア・フェイバー(戦))ですし、あそこで米国で勝つ術を覚えたことがUFCでの5連勝にもつながったと思います。

「WECの5戦は本当にきつかったですけど、自分を成長させてくれた試合でしたね。WECは一階級の契約選手が20選手くらいで、当時のバンタム級のトップ20人が集まっているような状況だったので、毎回がトップランカーとの対戦だったんです。なかなかタフな戦いでしたけど、今思えば一番充実していた、楽しかった時期だったかもしれないです」

――今回も水垣選手らしいコメントをありがとうございました!

「Road to UFCという注目される舞台を経てUFCで戦う。そこで選手が成長していく、チャレンジしていく過程を見ていくのは今のUFCの楽しみ方だと思うので、鶴屋選手の成長とチャレンジにも注目したいと思います」

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45 MMA MMAPLANET o Road to UFC Road to UFC2023 Road to UFC2023Final UFC ロン・チュウ 原口伸

【Road to UFC2023Final】原口、右のカウンターを浴びて3RにRNCで一本負け。チュウがUFC返り咲き

<Road to UFCライト級T決勝/5分3R>
ロン・チュウ(中国)
Def.3R3分06秒 by RNC
原口伸(日本)

サウスポーの原口がシングルレッグに入るが、チュウが切る。すぐに原口は左足にシングルレッグに入り、その左足を持ち上げるようにチュウをケージに押し込む。バックについた原口がヒザを入れると、チュウが正対する。原口はボディロックで押し込み、再びシングルレッグへ。チュウは深く組ませずに距離を取る。

チュウは左手で距離を測りつつ右ミドル。原口は左のパンチを振って、ニータップでテイクダウン。チュウは尻餅をついたままケージに移動するが、原口はチュウの手を取って寝かせる。チュウは背中を見せて立つと、原口のクリンチ際にパンチをまとめる。左を見せて組もうとする原口。距離を取ったチュウがワンツーを打ち込む。

これをもらう原口だったがダブルレッグに入って、リフトするようにテイクダウンする。原口はサイドポジションからヒジを落とし、チュウは脇を差して立ち上がる。チュウは左手を伸ばして距離を取って右ストレートを当てる。なかなかタックルに入れない原口だったが、左フックからニータップで組んでシングルレッグへ。離れ際に左フックを打った。

2Rもチュウは左を伸ばして、右ストレート・右の蹴りを狙う。原口はシングルレッグに入りつつ、離れ際の打撃を狙う。チュウが右ストレートと右ミドル、原口のダブルレッグに右ヒザ蹴りを合わせる。何とか組んだ原口が左足にシングルレッグに入って、チュウをケージに押し込む。チュウが半身になると、原口はチュウの左足を自分の左足に乗せて固定し、コツコツとパンチを入れる。

チュウもケージを背にして立ち上がり、左手を入れて原口の組みを切る。距離が離れるとチュウが右ミドル、右フック、右のヒザ蹴り。原口も左ハイを蹴って、シングルレッグに入るが切られる。原口が左フックを振ると、チュウは右アッパーから左フック、組み際の右のヒザ蹴り。

段々と組みに行けなくなる原口に対し、チュウがジャブから右フック、右の前蹴り、右ストレート。原口もガードを上げて左ストレートを返すが、打撃ではチュウにが分があり、右ミドル、右ボディ、右ストレート、右の三日月蹴り。チュウのコンパクトな右が原口を何度も捉えた。

3R、チュウが右の飛びヒザ蹴り。原口は左ストレートからシングルレッグに入るが、テイクダウンできない。チュウは右ストレートで前進し、これで原口の動きが止まる。距離があいまいになる原口に対し、チュウが強烈な右ストレート。この一発で原口のマウスピースが吹っ飛ぶ。なんとかシングルレッグに入った原口だがチュウをテイクダウンできない。

レフェリーにマウスピースをつけるように指示され、マウスピースをつける原口だったがしゃだんだ状態からすぐに立ち上がれない。何とか試合再開となるが、シングルレッグでしがみつく原口にチュウが鉄槌を連打。亀になる原口は動きなく、チュウが殴り続ける。最後はチュウが首だけを絞めるRNCを極め、原口がタップして試合が終わった。

最後までテイクダウンを仕掛けた原口だったが無念の一本負け。一方、この勝利でUFC再契約となったチュウは「アイム・バックUFC。これがUFCに戻れる最後のチャンスだったから、すごくプレッシャーを感じていた。チーム、PI上海、エンポ―に感謝している。ハラグチはとてもタフで、下がるとどんどん出てきたと思う。ダナ、Road to UFCはボーナスがないけど、受け取るに相応しいパフォーマンスを僕らは見せたよ。この瞬間を本当に長い間待っていた」と語った。


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45 MMA MMAPLANET o Road to UFC Road to UFC2023 Road to UFC2023Final UFC イー・チャア リー・カイウェン

【Road to UFC2023Final】体重超過のカイウェンを腕十字破ったイー・チャアが、フェザー級を制す

<Road to UFCライト級決勝/5分3R>
イー・チャア(中国)
Def.1R3分03秒by 腕十字
リー・カイウェン(中国)

リー・カイウェンの計量失敗で149 .5ポンド契約で実施されることになった一戦。互いにサウスポーで構えた友人対決は、まずイー・チャアが左ローを蹴る。リー・カイウェンもローを返すが、イー・チャアも左ローで前足を蹴り、左ストレートを伸ばす。リー・カイウェンは左を2度、3度と被弾するとアッパーカットを突き上げられる。さらに左を入れたイー・チャアはテイクダウンを狙うが、切ったリー・カイウェンがパンチでラッシュをかける。ここも組んだイー・チャアは左エルボーを受けながら、ダブルレッグへ。押し返したリー・カイウェンが小外掛けでテイクダウンを奪いトップと取り切る。

と、イー・チャアは腰を切って腕十字一閃。腹ばいになり右腕を伸ばされたリー・カイウェンが、タップし勝負は決した。

「UFCで戦える能力があることを、証明できた。これで正式にUFCファイターだ。リー・カイウェンは僕の兄弟で、彼が体重を落とせなかったけど本当にハードワークの重ねてオクタゴンに上がったんだ。彼は今も良いファイターだよ。ボーナスを貰って、2人揃ってUFCと契約したい。僕らは友人だけど、オクタゴンに入ればファイトが優先で、友情はその次にある。これが僕らの仕事だから。それが競技なんだ。もっと色々と見せることができる。でも、段階を踏みたいと思う。エンポ―ファイトクラブ、UFC、PI上海、チームに感謝している。旧正月、おめでとう」と話したウィナー。体重をしっかりと落としたイー・チャアの優勝で、フェザー級ファイナルは丸く収まった。


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45 MMA MMAPLANET o Road to UFC Road to UFC2023 Road to UFC2023Final UFC チーニョーシーユエ 鶴屋怜

【Road to UFC2023Final】鶴屋怜、バックマウントからパウンドアウト!1RTKO勝利でトーナメント優勝

<Road to UFCフライ級決勝/5分3R>
鶴屋怜(日本)
Def.1R4分59秒 by TKO
チーニョーシーユエ(中国)

お互いにサウスポー。鶴屋が右手を伸ばし、前後にステップ。チーニョーシーユエの右に合わせて組みつき、チーニョーシーユエをケージに押し込む。鶴屋は左腕を差し、首相撲クラッチから右の肩パンチとヒザ蹴りを入れる。鶴屋はここから首投げを狙うが、チーニョーシーユエはクラッチを外して距離を取る。

チーニョーシーユエはボディへのジャブから左ストレート。鶴屋が前蹴りを見せると、チーニョーシーユエは左ストレートを伸ばす。鶴屋はジャブから左ストレート、右フックからダブルレッグで組みつく。ここから鶴屋は首投げから袈裟固め、肩固めを狙いつつマウント→バックとポジションを変える。鶴屋はシングルバックで左足を斜めにフック=おたつロックで固め、ツイスターを狙う。

さらに鶴屋は右脇でチーニョーシーユエの首を抱え、マウントポジションでネックロック気味のチョーク=エクセキューショナーチョークで締める。これは極まらなかったが、バックマウントで落ち着くと一気にパンチを連打し、レフェリーストップを呼び込んだ。

プロ無敗のまま、UFC契約を勝ち取ったつ鶴屋は開口一番「負けを知りてえーー!」と絶叫。「勝ててよかったというのと、決勝なんで相手も強いので判定になると思っていました。フィニッシュできてよかったです」と試合を振り返った。


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45 AB Brave Fight27 Grachan Grachan59 MMA MMAPLANET o ROAD FC Road to UFC Road to UFC2023 Road to UFC2023Ep04 Road to UFC2023Ep06 Special UFC   イー・チャア ウィンドリス・パティリマ キム・スーチョル シャオ・ロン チーニョーシーユエ パク・ジェヒョン リー・カイウェン ロン・チュウ 原口伸 小谷 小谷直之 海外 鶴屋怜

【Special】J-MMA2023─2024、Road to UFC決勝へ。原口伸「全然、負ける気はしないです」

【写真】既に計量を終えている両者。ロン・チュウはかなり戻してきそうな体をしており、当日はフィジカルの差は出てきそうだ (C)Zuffa/UFC

2024年も早くも1カ月が過ぎ、MMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、こらからの1年について話してもらった。
Text by Manabu Takashima

J-MMA2023-2024、第十九弾はRoad to UFCライト級ファイナルを控える原口伸に話を訊いた。

3日(土・現地時間)にネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるRoad to UFC2023 Finalでロン・チュウと対戦する原口は、いわばレスリング一本槍のMMAスタイルを今回の決勝まで全うすると断言。MMAファイターとしての底上げは、UFCとの契約後であることを明らかとした。

なおRoad to UFCバンタム級決勝はシャオ・ロンの負傷欠場で不成立、フェザー級はリー・カイウェンが4.5ポンドのリミットオーバーとなっている。

■2023年原口伸戦績

2月12日 Grachan59 X BRAVE FIGHT27
〇 1R3分57秒 by TKO 小谷直之(日本)

5月28日 Road to UFC2023Ep04
〇 2R1分25秒 by TKO ウィンドリス・パティリマ(インドネシア)

8月27日 Road to UFC2023Ep06
○ 3-0 パク・ジェヒョン(韓国)


──昨年の今頃はGrachanライト級王座防衛戦の準備をしていたかと思います。あの時、1年後にUFCとの契約まで一歩のところにいる自分を想像できていましたか(※取材は16日に行われた)。

「Road to UFCに出ることを目指していましたけど、声も掛かっていない状況で。気持ちとしてはあやふやな感じでした。現実味がなかった、それが本当のところですね」

──対して決勝を控えるだけとなった今の心境を教えてください。

「Road to UFC出場が決まった時から、心のどこかで優勝するもんだと思い、普段の生活から練習への取り組みができていました。なので、ようやく来たかというぐらいの感覚です」

──10月にお兄さんの央選手と対談をさせていただいた時、試合に向けての練習に関して悩みがあって病んでいるという発言もありました(笑)。

「あっ、でも次の日にはケロッとしていました(笑)」

──アハハハ、何なのですか。それは(笑)。

「気楽にはやれてなかったですね(苦笑)。今から思うと、色々と背負ってしまってやりたいこととデキていることが噛み合っていなかったです。僕は完璧主義みたいなところがあると思うので、上手くいかないとモヤモヤしてしまうということはあります」

──12月9日に当初は予定されていた決勝戦ですが、その1カ月少し前に韓国で央選手がRoad FCのグローバルT決勝をキム・スーチョルと戦いました。敗れはしましたが、あの激闘を傍で見て何か得ることはできましたか。

「兄貴という一番近い存在が、キム・スーチョルというメチャクチャ強い相手と対峙する。その緊張感はセコンドでも、味わうことができました。キム・スーチョル選手は普段はニコニコしていて凄く良い感じの人なのですが、試合になると殺気に溢れていて。MMAファイターになって初めて、怖いと感じました。アレを感じ取れたことは良かったです。

その怖いと感じた選手に向かっていく──アニキの覚悟が見えました。あそこは自分が見習わないといけない部分ですね。そこは決勝戦に向けて、良い経験になりました」

──同時になかなか日程がハッキリせず、2カ月ズレたことをどのように捉えていますか。

「僕にとってはプラスです。一番大きなことは開催地が上海からラスベガスになったことですね。米国はホームではないですけど、アウェイでもない。中立の場所なので」

──十数時間の飛行機の旅、時差もある。それでもベガスの方が良いと。

「ラスベガスと聞いて、『良しッ!』ってなりました。ラスベガスはMMAのメッカですし、意識しないところでテンションが上がっていたと思います。経験という部分では相手の方がずっとあって。だからこそ、この2カ月という時間は少しでも詰めることができたと思いますし」

──対戦相手のロン・チュウですが、準々決勝と準決勝の試合を見返して思っていた以上に手強い選手だと思うようになりました。

「Road to UFCから見るようになって1回戦は強烈なKO勝ちをして、強さを見せて準決勝は判定で手堅く勝っていた。最初は韓国人選手をマークしていたのですが、ロン・チュウの方が全然強いですね(苦笑)。

それでも全然、負ける気はしないです。なんか燃えていますね」

──テイクダウン対策は徹底してくると思います。

「得意なのはバレていますよね。すぐに行ってダメなら、我慢するのも手かと思っています。打撃戦につき合うということではなくて、動いてタイミングをずらしてテイクダウンへの意識が薄まった時に一気に狙う。切られて、そのまま続けるとそこは防がれるので、そういう風に戦おうかと考えていますし、練習もしています。

ただし自分のテイクダウンは初速なんかは、普通のMMAファイターと違うと思っています。だから、基本は切られないと考えています。でも相手が準備をしているところで仕掛けると切られます。準決勝では、相手が準備しているのに仕掛けて切られたので……言ってみれば、プレッシャーをかけても仕掛けない。そこで相手が出てきたところで、仕掛けるとかタイミングに変化を持たせようと思います」

──組んで倒しても、立たれる。だから、組みは淡泊になり打撃戦が多くなるのも今のMMAです。組み技は疲れるという意識を持っていますか。

「疲れます。でも、自分の武器なので。最後は離れると死ぬぐらいの意識でやっています。それでも無理から打撃をするよりも、組んでいる方が……そうですね、体力的には疲れますが、気持ちは一切折れないです。そこで相手が嫌がるような素振りを見せれば、また元気になりますし」

──UFCでは準決勝の動きだと、切られるだけでなくパウンドを打たれるかと思います。今回はその辺りも意識することはありますか。

「次の試合はトーナメントの決勝ですし、今持っている強さをぶつけます。勝ちに徹するというか、全てをぶつけて戦います。そうなると、これまでやってきた打撃の展開になることもあるだろうし、結果的にそうなれば先を見越していることになるかもしれないですね。理想は倒して殴る。でも、パウンドでは隙間ができてスクランブルに持ち込まれるので、エルボーとか密着して打つ方向で考えています。

テイクダウン後の相手の処理が上手いと、テイクダウンから後の勝負になります。テイクダウンは取れるので。意識は倒した後、そこから何をやるのかは3パターンほど用意していて、そのうちのどれかを当てはめる。相手の動きとかでなく、そこにはめ込みます」

──契約することがデフォルトとして、2024年はどのような活動をしていこうと考えていますか。

「それこそUFCを契約した後は、MMA選手として完成度を上げていきたいです。だから契約した後は、少し時間を空けるかもしれないですね。UFCデビューは夏から秋、その前に海外で練習もしてみたいです。トーナメント中は勝つ事に集中してきたので、終わればMMAを楽しめる時間も創りたいと思っています。幸い、今回の試合でビザも取れ、アッチで練習する障害はなくなったので米国──キルクリフFCとかで練習したいですね。また、しっかりと考えますけど、MMAを……知らない世界を味わいたいです」

──そのためにもロン・チュウ戦、クリアしてください。

「ハイ。一部では厳しいとか言われているようですけど、僕は勝つことしか考えていないです。そうやって自分を信じ込んでいるので、それを当日にしっかりと見せることができれば……と思っています」


■視聴方法(予定)
2月4日(日・日本時間)
午後1時30分~UFC FIGHT PASS
午後1時15分~U-NEXT

■Road to UFC2023 Final計量結果

<Road to UFCライト級T決勝/5分3R>
ロン・チュウ: 156ポンド(70.76キロ)
原口伸: 155.5ポンド(70.53キロ)

<Road to UFCフェザー級決勝/5分3R>
リー・カイウェン: 149.5ポンド( 67.81キロ)
イー・チャア: 145.5ポンド(66.0キロ)

<Road to UFCフライ級決勝/5分3R>
鶴屋怜: 125.5ポンド(56.92キロ)
チーニョーシーユエ: 125.5ポンド(56.92キロ)

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45 AB KAREN MMA MMAPLANET o ONE RIZIN Road to UFC Road to UFC2023 Special UFC イ・チャンホ スムダーチー チーニョーシーユエ マーク・クリマコ ムハマド・モカエフ ライカ 修斗 太田忍 平良達郎 松井斗輝 根井博登 神龍誠 秋元強真 鶴屋怜

【Special】J-MMA2023─2024、鶴屋怜─02─「達郎君だけでなくライバルに『負けろ』という気持ちはある」

【写真】準決勝、マーク・クリマコ戦の鶴屋怜。完全にZONEに入っている (C)MMAPLANET

J-MMA 2023-2024、第五弾・鶴屋怜、後編。
Text by Manabu Takashima

2月4日、ネバダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるRoad to UFC2023Finalでフライ級決勝に挑む鶴屋怜だが、チーニョーシーユエとの決勝の勝利はデフォルトで既にUFCでどのように戦っていくのか青写真を描いていた。

<鶴屋怜インタビューPart.01はコチラから>


──Road to UFCは自分の動きができれば、負けることはない。一貫して、その想いを持続できているようですね。

「そうですね。マーク・クリマコは自分と似ている部分もあるので、ちょっと警戒していました。それ以外はストライカーが多くて、普通にやれば一本勝ちできるかと思っています」

──UFCとの契約はデフォルトという怜選手ですが、もう契約後のことも青写真を描いているのでしょうか。

「自分、1戦目からランカーとやりたいぐらいの勢いではいます。例えば中国のスムダーチーとか、UFCがやらせてくれるのかは分からないですけど。あの選手もストライカーで寝技もそんなにできない。UFCで最初に戦うには良い相手かなって思っています。どうなるのか分からないですけど、15位とかそこぐらいのランカーと一発目から戦いたいです」

──子供の頃から「日本人初のUFC世界王者」を目標に格闘技に取り組んできました。そのなかで、UFCフライ級戦線では平良達郎選手が、5戦5勝で世界が注目する存在となっています。その辺り、どのように感じていますか。

「今、UFCフライ級ではムハマド・モカエフも5連勝していても、タイトルマッチに届いていないです。達郎君もここから2年は掛かると思います。僕は年齢も2歳下でデビューも2年半遅い分、現時点で達郎君が先を行っているのは当然です。でも、この2年の間に自分が一気に近づく、追い越すぐらい勝って行けばと思います。でも、焦っているということはないです」

──いじわるな質問ですが、自分が先にUFC世界王者になることを考えると、平良選手の試合を見ていて「負けろ」と思うこともありますか。

「それは達郎君だけでなく、チャンピオンになる力に持っていそうな選手……ライバルになる選手が試合をする時は『コイツ、負けろ』という気持ちはあります。同じ階級で同門以外の選手は、負けた方が良いというのは──。それは達郎君に限ったことじゃないです」

──なるほど、これだけ近しいパラエストラ千葉ネットワークとザ・パラエストラ沖縄であっても同門ではないと。

「ハイ。毎日、一緒に練習している選手が僕にとって同門──チームメイトです。達郎君は他のジムの選手ということでもなくて、なんていうのか……家族ではなくて、親戚のような感じですね」

──ではタイトル戦でなくても、対戦相手の一人として戦うことができる?

「UFCならしょうがないです。日本の団体とかで達郎君と戦えと言われると違うかなって思うけど、UFCなら一発目で平良戦が組まれても……。別にランカーが相手になるわけだし、それはそれで自分的にはオイシイんで、やって勝ちたいです」

──平良選手が勝ち星を重ねる間にも、UFCフライ級はブラジルや中央アジアから続々とポテンシャルの高い選手が集まってきています。

「そうっすね。自分、まだ21歳でMMA的には全然完成していなくて。自分がUFCで2年ぐらい経験を積めば、今の自分とは全然違うようになっていると思います。今、こういうことを言っても信じてもらえないだろうけど、2年間UFCと絡めば中央アジアとかのヤツにも負ける気はしないです」

──日本でもフライ級は層が厚く、その日本のトップとの対戦がないことで怜選手の能力に関して、懐疑的な目が向けられることもあります。そのような意見に対して、また日本のフライ級戦線に関してどのように思っていますか。

「う~ん、これから何が起こるのかは分からないですけど……交わることは、今のところはない。そう思っています。別に神龍にライバル心はないし、そっちに行ったんだなって思っていますし」

──日本のフライ級の話題になると、対象はいきなり神龍誠選手ですか(笑)。

「神龍はUFCに行きたいって言っていて、CFFCとかで試合までしたけどUFCと契約できなかったわけじゃないですか。UFCで戦いたいなら、なぜ面倒くさがらずRoad to UFCに出なかったのか。そこに出ないで、僕からすると近道を選んで契約はできなかったからRIZINで戦っている。もう同じ道を歩いているとは思っていないです。

もちろん堀口選手は日本のトップで、世界のトップです。僕自身、堀口選手を越えないといけないことは分かっています。ただ、今の僕には堀口選手を越えるために日本で戦うという道にはいないです。だから、日本で戦うことを選ぶ選手と交わることは──今はないと思っています。

『鶴屋怜、日本で誰と戦ったんだ?』という声があっても、僕はUFCに行って、UFCでチャンピオンを目指します。UFCでチャンピオンになれば、誰も文句は言えなくなる。誰も、何も言えなくなる。僕が目指すのは、そこなんです。だから『日本で強い選手と戦っていない』と言われれば、そうです。そこを見ていないので」

──押忍。あと一点、怜選手はチームメイトのセコンドに就くことが多いですね。週末には連日で、また1日で会場を変えても怜選手が会場にいてセコンドをしているということがありました。

「なんか、頼まれるんですよ(笑)。太田忍さんとかも、毎試合のように『怜、就いてもらえる?』って感じで。KAREN、松井斗輝君、秋元強真もそうですね。チームメイトのセコンドに就くと、勝って欲しいから本当に緊張します。自分の試合であんな風になることがないのに、セコンドだとメチャクチャします。

将来的に自分の試合でも、そんな感じで緊張することもあるだろうし。皆、そこは乗り越えるしかない。そんなときに、セコンドをしていて凄く緊張し、乗り越えた経験は生きてくるのかもしれないです。とにかく、あの感覚は何とも言えない嫌な感じなので。

ただ、それはあくまでも付随してくるもので、チームメイトに勝って欲しいからセコンドをやっています。一緒に練習している仲間だし。それに圧勝とかすると、俺もこの勢いで行くぞって思えますし。ただ負けた時は……これが勝負なんだと、気分が落ちないように自分に言い聞かせています」

──そういえば1月28日に修斗新人王トーナメントのストロー級決勝で、麻生Leg Lock祐弘選手と戦う根井博登選手のセコンドにも就いていますね。

「あぁ、根井は中学の頃からレスリングを習いにきていて。自分がコーチをしていたんです(笑)。それで高校でレスリングをやるとかでなく、MMAをやるようになって」

──2006年6月生まれ。まだ17歳の根井選手ですから、そういうこともあるのでしょうね。既に次世代が育ってきている怜選手ですが、2月4日のRoad to UFC決勝に向けて、一言お願いします。

「一発目、しっかりとインパクトを残す勝ち方をして、自分はUFCでも通用するんだと思われるような試合をします。正直、4階級とも中国人選手が決勝戦で出てきます。フェザー級は2人とも中国人で、凄い勢いになっています。だから俺が中国人選手を止めないと。」

──バンタム級決勝で戦う韓国のイ・チャンホも、韓国と日本がしのぎを削り合って成長し中国に負けないようにしないといけないということを言っていました。

「ハイ。そのインタビューは自分も読みました。ここで中国を止めないと、これからどうなってしまうのかという危機感もあるし。バンタム級は韓国の選手も頑張ってもらう。ライト級で原口(伸)選手にも勝ってもらって──フライ級は絶対に俺が勝ちます」


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AB F1 o Road to UFC Road to UFC2023 UFC エッガー キック シャノン・ロス ステファニー・エッガー ソン・ケナン ティム・エリオット パク・ジョンヨン パク・ヒョンソン リッキー・シモン ルアナ・サントス 平良達郎

UFC on ESPN+91:オッズ/予想と展望

ソン・ヤドン 1.25
クリス・グティエレス 4.10
アンソニー・スミス 2.90
カリル・ラウントリーJr. 1.43
ナスラット・ハクパラスト 1.49
ジェイミー・ムラーキー 2.70
ティム・エリオット 1.69
ス・ムダルジ 2.24
パク・ジョンヨン 1.57
アンドレ・ムニス 2.45
ソン・ケナン 2.24
ケビン・ジュセ 1.68
パク・ヒョンソン 1.17
シャノン・ロス 5.25
ティーブ・ガルシア 3.20
メルキザエル・コスタ 1.37
ルアナ・サントス 1.65
ステファニー・エッガー 2.30
平良達郎 1.18
カルロス・ヘルナンデス 5.10
ハヤネ・アマンダ 1.60
タリタ・アレンカー 2.40

本来は上海大会の予定だったが、突然説明なくAPEX大会に変更。関係者からの情報も流れてくることなく、なぜ開催地が変わったのか理由は不明なままとなっている(完全な憶測だが、中国当局から開催許可が折りなかったのでは)。合わせて、同大会で行われる予定だったRoad To UFC2023決勝戦についてもアナウンスが無く、来月行われる2大会のカードもほぼ出揃っているため、最速でも2月以降になると見られる。

それに合わせてビザの問題などでカードが次々と変更。さらにRoad To UFC決勝が予定されていた分の試合を急遽詰め込んだりと、直前になってもまだ試合の変更が続いている。

メインは当初から中国大会のトリを飾る予定だった、中国No.1プロスペクト・ソン・ヤドンとランキング15位グティエレスの対戦。ヤドンは明らかにプッシュされたマッチメイクだったが、テイクダウンの対処に穴があり、連勝がストップ。しかしそこから弱点を克服して再浮上。飛び級で組まれたサンドヘイゲン戦では打撃で打ち負けてTKO負けしたが、前戦では苦手とするレスラーのリッキー・シモンのテイクダウンを凌いで打撃で仕留めての勝利。今月2日に26歳になったばかりで、ランカー最年少。

グティエレスはランキングこそ15位だが、UFCでは8勝2敗1分け。ヤドンと比べて、なかなかチャンスが与えられないだけに、数少ないチャンスをモノにしたいはず。ストライカーでカーフキックの名手。

オッズは意外なほどの大差でヤドン優勢。予想はヤドンのKO勝ちだが、グティエレスも打撃が強く、打撃勝負になったとしてもヤドンが楽に勝てるとは限らない。

平良は10月に組まれていた試合が相手の都合により流れたが、なんとか年内にUFC5戦目に臨むことができた。ここまでは対戦時点での相手のUFC戦績は0勝1敗、1勝1敗、0勝0敗×2と、ド前座の相手としか戦うことができなかったが、今回もUFC2勝1敗の相手。ランカークラスとの対戦に拘ると年内に試合をすることが難しかっただろうから、致し方ない。ヘルナンデスは距離を取っての打撃でポイントアウトするスタイルで、アマチュアのキック・ムエタイのキャリアはあるが、プロでのKO勝利はゼロ。怖さはない。オッズは平良が圧倒的フェイバリット。今年もトラブル続きだったが、最後はきっちりとフィニッシュ勝利して来年に繋げたい。

その平良以上にオッズで優勢になっているのは、昨年のRoad To UFCフライ級ウィナーのパク・ヒョンソン。しかしヒョンソンが評価されているというより、相手のロスがコンテンダーシリーズでは負けたが盲腸炎を押しての出場ということで根性が認められてのUFC契約であり、UFC本戦では2試合続けて1分持たずにKOされているレベルのため。逆にこの相手に苦戦するようだと、Road To UFCのレベルが疑われる。

第1試合開始は10日朝9時半から。速報します。

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お蔵入り厳禁【Road to UFC2023 Ep06】「課題の克服に3カ月を費やす」。原口伸がRTU準決を振り返る─02─

【写真】決勝へ。Braveジムのタフな練習仲間とのスパーで課題の克服に努める(C)MMAPLANET

8月27日(日・現地時間)、シンガポールのインドアスタジアムで開催されたRoad to UFC 2023Ep06のメイン=ライト級準決勝でキム・ジェヒョンを判定で破り、決勝戦進出を決めた原口伸インタビュー後編。
Text by Manabu Takashima

お蔵入り厳禁――対戦相手の計量失敗と、ワンマッチ出場選手の代役出場。1度は切れた気持ちを紡ぎ直し、スクランブルに長けたキム・ジェヒョンを徹底的にテイクダウンで攻め切った。そのうえでの不満顔と、決勝戦に向けて何をすべきかを原口が語った。

<原口伸インタビューPart.01はコチラから>


――対戦相手のスクランブル能力の差ということも考えられますが、これまでの試合より組んでの打撃が少ないように見えました。

「立たせたくないっていう気持ちから、そうなってしまったように思います。過去の対戦相手は、ジッとしていることが多くて。だからこそ、この試合は本当に勉強になりました。本当に勉強だらけだったと自分でも思います」

――初回は倒し続けることができたと思いますが、2Rからは切られることも出てきました。完全レスリングという展開に疲れたということはありますか。

「実は試合映像を視て、びっくりしました。自分で『こんなにキツい顔をしていたんだ』って」

――そうだったのですか(笑)。

「でも気持ちは全く折れていなかったです」

――折れていてはあの試合はできないです。逆に絶対に倒すという気持ちのファイトでした。一方で体力の方はどうでしたか。

「僕の動き続けるというのは、ずっと元気に動き続けるということではなくて、疲れても動くということなんです」

――あっ、なるほどです。

「ただ、終わってみるとあの試合展開では一発をもらったり、テイクダウンをする過程で相手の細かいパンチを受けることで向こうのラウンドになることもあると思うようになりました。現にヒジは打たれましたし。スタンドでも打撃を見せて組まないといけないし。本当に準決勝の試合内容で、自分が勝ったと胸を張るつもりは一切ないんです。

帰国中の飛行機でも、今も寝る前にずっと試合映像をチェックして『これじゃいけない。どうすれば良いのか』を考えています。試合後にここまで考えるのは、初めてのことです。だから……とりあえず決勝には進めたけど、勝った喜びは全くなかったです。やっぱり対戦相手が代わったことで気負ってしまって。気持ちの重さがフットワークの重さに関係していたのかなって」

――少しでも不戦勝になると思った。その影響があったのかもしれないですね。

「そうならないようにしようという意識はあったのですが、でも……やっぱり無理でしたね(苦笑)。気持ちが切れた感覚はありました。本来はいけないことですが、気持ちと精神はリンクしていたと思います。本来の対戦相手と戦うために積み上げてきたことが帳消しになり、新たに創り直す時間はなかった。ただ1回戦はフィニッシュができても、まるで勉強にならない試合だったので今回の経験は自分のキャリアに役立てることができます。それなのに――終わった瞬間は、何か腑に落ちない。しっくりこない気持ちがあって……」

――あの笑顔がない勝利写真でも明らかです(笑)。

「自分に対して、こんなもんなのかってガッカリしてしまい……でも、お客さんに対して『ごめんなさい』というのも違うし」

――絶対に違うと思います。自分の練習してきたことを出し切る。勝っている試合で、客を沸かせるために自分のスタイルでないファイト、一か八かの動きをする必要は全くないです。

「なので『俺は俺』っていう言い方はしたのですが、自分の中では反省点だらけの試合です。謝るものかとは思っていましたけど、勝ち名乗りを受けた時にブーイングがあって――。『これが自分』という発言を外に向けて出てしまったというのもあります。『黙ってろ』っていう気持ちは凄くありましたね(笑)」

――上手く立たれましたが、何か攻撃を受けたわけではなかったですし。

「そこから脱却できない相手にも、問題はあるでしょっていう気持ちもありました」

――必殺「漬けられるヤツが悪い」理論ですね。

「アハハハ。本当に兄の気持ちが少しずつ分かってきました。これから決勝、その先のUFCで戦うことを考えて、テイクダウンを取った後のことを考えていきたいです。いかに背中をマットにつけさせるか。そうすることで、勢いのあるパンチを打てるようになるはずです。

それにテイクダウンのフェイントが掛かって、手が下がっている相手にパンチを打つとか。フェイントからハイキックも、やれば入るじゃんって。それができないということは、まだビビり過ぎている部分があったということです。結果的にこれからに向けて、やることが明確になりました。どうすべきかを自分の頭の中で考えて、今日も練習できました。

ヌルマゴメドフの教則みたいなのをたくさん見て(笑)。しっかりと抑えられるようにします。2回だけロータスに行って練習させてもらったのですが、その時に上久保(周哉)選手にもその辺りの話を聞かせてもらいました。青木選手の技術も見て。これからもロータスに行かせてもらい、その辺りを見て・聞いて、自分のモノにしていきたいと考えています」

――では12月にあると思われる決勝戦に向けて、今はどのような想いでいますか。

「準決勝の反省点、課題の克服に向けて3カ月という時間を費やそうと思います。何かを加えるのではなくて、そこをやることで殻を破ることができるかと。練習相手が強いですし、そのなかで強くなる練習と勝つ練習がリンクできているので、どっちも充実しています」


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お蔵入り厳禁【Road to UFC2023 Ep06】原口伸がRTU準決を振り返る─01─「力を使わないで行こうと」

【写真】本来はこの日まで休養に当てていたが、取材に合わせて練習に復帰してくれた原口伸。ケガもなく好調をキープしていた (C)MMAPLANET

8月27日(日・現地時間)、シンガポールのインドアスタジアムで開催されたRoad to UFC2023Ep06のメイン=ライト級準決勝でキム・ジェヒョンを判定で破り、決勝戦進出を決めた原口伸。
Text by Manabu Takashima

当初の予定ではバーハートゥブールゥ・アトゥボラティと対戦予定だったが、計量オーバーに。自身の本計量前には、どうやら体重は落ちないという状況を把握していた原口だが、急遽ワンマッチ出場予定のキム・ジェヒョンと戦うこととなった。それでも徹底したテイクダウン奪取で、判定勝ちを収めた原口の話を勝利から10日後にBRAVE三郷で訊いた。

お蔵入り厳禁──試合前、試合と共に想定外の状況にあった原口はどのように気持ちを創り、切り替えていたのか。心の襞を覗かせてもらった。


──Road to UFC準決勝をクリアして10日、今の気持ち──あの時の気持ちではなく、今の気持ちを教えてください(※取材は9月4日に行われた)。

「前日に相手が代わったことで、絶対にメンタルはブレていて。それでもブレたなかで勝ち切れたことは、自分もよくやったなとは思います」

──ブレたというのは?

「去年、風間(敏臣)選手の準決勝の相手が体重を落とせずに、不戦勝で決勝進出が決まったことが、すぐに脳裏をよぎったんですよ。計量まで1時間で、あと2キロ落とせていない。何がどうあっても落ちないじゃないですか。バックアップがいるとも聞いていなかったですし」

──このまま試合はなくなって、決勝進出だと。

「ハイ。一度、気持ちが切れました。で計量が終わってメディカルに行って戻ってくると、『上が絶対にやらせるから』ということを関係者から伝えられて……」

──結果、ワンマッチ出場予定だったパク・ジェヒョンと戦うことになった。理不尽だとは思わなかったですか。

「いや、凄く思いました。準決勝から出てくるなんて、1回戦から戦ってきたこっちからするとズルいと言っちゃあズルい。事前にそれが分かっていたわけじゃないので」

──個人的には兄弟揃って週末にトーナメント準決勝が、相手の計量失敗で不戦勝なんて世界初だと。面白いことになったと思って記事を書いていました」

「アハハハハ」

──それが一転して、どうやら戦うことになりそうという空気になりました。あの時、パク・ジェヒョンの一択ではなくてバーハートゥブールゥとのキャッチウェイトで準決勝という選択肢もあったと聞いています。ただし、ドクターストップで彼の試合出場はなくなったと。

「ハイ。その二択だったんです。体重オーバーでも、20パーセントのファイトマネーを受け取って戦うのか。ずっと対策して、練習もしていたので元々戦う予定だった選手とやりたいと返答しました。『この韓国人選手は、誰だよ!! どこかのチャンピオンだし』みたいな(笑)」

──韓国筋からはコリアンゾンビ系の選手だらけになるのでトーナメントから外されたという話が伝わっていた実力の持ち主でした。

「そうだったんですね。戦績を調べたら、準決勝で(※ロン・チュウに)敗れたキム・サンウクに勝って、Angel’s FCのチャンピオンになっている6勝0敗の選手で」

──伸選手はライト級としては小さい。バーハートゥブールゥが戦えたとしても、体重を戻した時に105パーセント以上重くて、ベガスの規定になると対戦できないのではという話もされていました。パク・ジェヒョンと戦うことが決まった時の気持ちというのは?

「さっきも言いましたが、『ズルい』。あとは正直、『ふざけるなよ』っていう気持ちにもなりました。ただ、フェイスオフまでに一度ホテルの部屋の戻った時に、UFCと契約してからはこういうことも絶対にあるはず。

Road to UFCはあくまでもRoad to UFCで絶対に勝たないといけないトーナメントだけど、キャリアを線として捉えた場合、ここで試合をせずに決勝戦で勝ち上がったとしても、契約した後に通用するのかっていうのもあって。なら、こういう状況で試合をすることも後々のためになるんじゃないかと、ポジティブに捉えるようになっていました。フェイスオフの時には『よし、やるか』という気持ちでした」

──素晴らしい切り替えですね。そこから相手の試合映像などをチャックしたのですか。

「サッと目を通して、元々の相手はサウスポーだったけどオーソになったのでサウスポーを相手にするとどういう戦いをするのか。そこは結構、見ました。戦ってみて、まま動画のままでしたね」

──バーハートゥブールゥ戦を想定していた時と、戦い方に変化を加えたのでしょうか。

「テイクダウンのフェイントから打撃、それを見せてテイクダウンを取るという作戦を中国人選手と戦う時は考えていました。韓国人選手と戦う前も色々とは考えていたのですが、いざ実際に対面すると気負ってしまって。『絶対に負けたくない』という想いで、相当に慎重になっていました。

準決勝で負けると意味がなくて、でも勝負の世界は残酷だからパッと出てきたヤツが決勝に行くなんて幾らでもあり得るとか、色々と考えてしまっていました。相手もワンマッチから本戦の出場で張り切っているだろうし。そこも含めて相手云々ではなくて、自分のなかのプレッシャーと戦っていたように思います」

──まず、ケージに向かう時はどのような気持ちでしたか。

「入場曲のサビの部分で普通に涙が出そうになって、『やっべぇ』と思いました。感極まってしまっているので、『集中しろ』、『集中しろ』って自分に言い聞かせて(苦笑)。そうしたら、すぐに戻りました。でも『来るぞ』、『来るぞ』という風で、自分のなかの何かと戦っている感じでしたね。これまでの試合の入り方とは、大分違っていました」

──テイクダウン、スクランブル、テイクダウンの繰り返しではあったかと思います。

「やっぱり立つのが上手かったです。上手いとは分かっていましたが、あんなに上手いとは思っていなかったですね。いつものように足を束ねていけると考えていましたが、そうさせないことだけに集中しているような動きをしていました。

力を使っていないのも分かりました。だから僕も手を引っ張るだけで、深くはいかないで。そこはレスリングで培ってきたモノが生きました」

──パク・ジェヒョンがこれだけ立って来ると、もう立たせて倒すという繰り返しで削ろうという判断をしたのでしょうか。

「いえ、頭をケージ中央の方に倒しても、凄い勢いでケージ際に移動されて。

『なんだ?』と思いました。徹底していましたよね。なら、こっちも力を使わないで行こうと」

──そこは自制できると。

「ハイ、レスリングは熱くならないです。打ち合いだと『コイツッ!!』ってなってしまうのですが、立たれても攻めているのは自分だったので。こういう精神的な削り合いの時は、絶対に負けないと気持ちでやっています」

──組みで殴る。コントロールして殴るという原口選手に究めて欲しい部分は、あまり出ていなかったように映りました。

「殴るという感覚はあったのですが、思った以上に立つのが上手くて気後れしてしまった部分はあります。少しルーズにして殴るのではなく、しっかりとクラッチして組みに集中していました」

<この項、続く>


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【Road to UFC2023Ep05】鶴屋怜が振り返る、クリマコ戦─02─「やっと”MMAをやった”感がありました」

【写真】笑顔、安堵感の岡田遼&鶴屋浩。そして、テンションが高いままの鶴屋怜。良い感じだ(C)MMAPLANET

8月27日(日・現地時間)、シンガポールのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたRoad to UFC 2023Ep05のフライ級準決勝で、マーク・クリマコから判定勝利を収めた鶴屋怜インタビュー後編。
Text by Nakamura Takumi

左ヒザを負傷し、PRP注射の効果もあってRoad to UFC準決勝ラウンドを勝ち抜くことができた鶴屋が、父・浩と共にクリマコ戦を振り返る。父と息子、岡田遼、陣営の合致した考え、加えてプレイヤーに対し勝利を掴むためのコーナーマンの仕掛け等々、心理面、技術面からMMAの醍醐味、そして核心に触れたい。

<鶴屋怜インタビューPart.01はコチラから>


――2Rを終えた時の心境はいかがでしたか。

「ちょうどセコンドと会話しているのが映像にも残ってるんですけど、僕が岡田さんに『僕、勝ってますか?』と聞いたら、岡田さんから『2Rは取られているかもしれない』と言われて、思わず『フォーー!!』と叫んじゃったんです(笑)」

――あれは見ているこちらも驚きました(笑)。

鶴屋浩 僕としてはポイントはイーブンだと思ったから、3Rは無理して極めにいかなくてもいい、テイクダウンして手堅くいかせたかったんです。それで2Rは取られたと伝えたら、なぜか興奮して叫んでいました(笑)。普段はあんなこと言わないのに。

「興奮してたんだよ、きっと(笑)」

――その3R、ここも鶴屋選手がテイクダウンに入り、グラウンドでフルバックをとりました。ボディで足を四の字フックをして、左足をクリマコの右足にかけた状態です。この時に首を抱えて極めに行っていますよね。

「1Rとは逆でこの態勢から首をひねって変形ツイスターみたいな形で極まることがあるんですよ。ただクリマコの左腕が曲がった状態で僕の内側に来ていて、本当はこの腕が伸びた状態で僕の外側に抜けていたら極まるんですよ。でも僕も焦っていたので強引にいきすぎましたね」

――このあとクリマコは何度か正対しようとしてきますが、足が一本深くフックできていればバックキープできるものですか。

「四の字ロックをしている僕の足が相手の対角の足まで引っかかってるんで、これがかかっていればバックキープできるんで大丈夫でした。ただ、1Rと同じようにクリマコは手首を持ってはがして、しつこくディフェンスしてくるんで、これは嫌でした。おそらくクリマコもここを何とかしのいでスタンドの一発にかけようって気持ちだったと思うんですよ。だから必死だったし、徹底していましたよね」

――残り1分、1Rと同じように鶴屋選手がクリマコの左腕を小手に巻いて投げから足関節を狙い、スクランブルの攻防になってお互いに立ち上がります。

「ちょうどこの攻防をしているところから時計が見えて、残り50秒くらいだったんです。だからスタンドになった時に打撃で一発かますか、テイクダウンに入ったら終わるだろうなと思っていたら、あんなことになりました(苦笑)」

――クリマコの右ミドルが鶴屋選手のダブルレッグにカウンターで合う形になり、鶴屋選手がダウン気味に倒れました。あの場面は覚えていますか。

「ダブルレッグに入った時に蹴りが来たのが分かったんで、蹴りに反応して後ろにのけぞろうとしたんです。それと相手の蹴りのタイミングが合って、後ろに吹っ飛ばされたみたいになりました。実際、蹴りは腕に当たっていたし、ダメージはなかったんですよ。そのあとの右アッパーも見えていたから自分から寝転がって、もらわないようにしたんですけど……見栄えはむちゃくちゃ悪かったです(苦笑)」

――そしてここで追撃しようとしたククリマコから上を取り返すわけですけど、これはいわゆる柔術のホレッタスイープですよね。

「この時はあまり何も考えてなかったですね。とりあえず上を取ろうと思って必死に動いていた感じです」

鶴屋浩 20年くらい前にホレッタ・マガリャエスが来日したとき、僕が彼を国内の色んな道場に連れて行ったり、一緒に教則本を作ったりしたんです。その時に本人からホレッタを教えてもらって、僕も道場でも教えていました。きっとそれが試合で自然に出たんでしょうね。

「スイープの形は覚えてないですけど、後ろ袈裟で抑えるのは好きなんですよ。パスガードするときもこっち(後ろ袈裟)で抑えるのが多いんで、だから最後は自分の得意な形に収まりました」

――最後は横三角の形から足関節を狙いに行って試合終了となりました。これは最後まで攻め続けようという意思の表れですか。

「お父さんがずっと『極めろ! 極めろ!!』って言ってるんですよ。内心この時間で極められねえだろと思いつつ(笑)、ヒザ十字を狙ってみようとは思いました」

鶴屋浩 万が一、あの打撃でポイントがついていたら、3Rに試合をひっくり返されちゃうわけじゃないですか。極めるのが難しいのは分かっていましたが、最後まで攻めさせました。

決勝の相手はチーニョーシーユエ。決戦の日時は12月9日、その舞台は上海は梅賽徳斯-奔馳文化中心=メルセデスベンツ・アリーナか

――最終的にクリマコに判定勝利して決勝進出を決めました。

怪我があったなかでの試合、そして初めてフルラウンド戦っての勝利と多くの経験値を積むことができた試合だったと思います。

「初めて3R戦えたし、しかも3Rを取ったほうが勝つという展開で、お互い勝負をかけるラウンドを経験できたのもよかったです。何か僕としてはやっと“MMAをやった”感じがしました。こういう試合はいずれ経験しなきゃいけないと思っていて、UFCに行く前に経験できたことは本当に大きかったですね。次の試合までにヒザをしっかり治して、もっといい状態に仕上げて決勝に臨みたいと思います!」

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