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【ADCC2022】88キロ級 次々と現れる組み技界の未来=ジャンカルロ・ボドニ─準決勝までの勝ち上がり

【写真】柔術とレスリングが見事に調和されたボドニ。上でも下でも勝てるスタイルは、ADCCルールとサブオンリーの両ルールでも同様の活躍が見込める選手だ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第12 回からは88キロ級──まずはジャンカルロ・ボドニ×エオガン・オフラナガンの準決勝の模様と両者の勝ち上がりをお伝えしたい。

北米予選覇者のジャンカルロ・ボドニは、ベウナウド・ファリアの教えを受けてアリアンシの黒帯を取得し、昨年からジョン・ダナハー門下に移った選手。昨年のノーギパンナムでルーカス・バルボーザを倒した実績が光る。

7月のWNO15におけるジェイ・ロドリゲス戦ではグラップリングの未来といえる柔術とレスリングの融合体を見せてジャッジ3人の支持を得て勝利した試合も印象深い。

そのボドニは1回戦で元柔術世界王者のイザッキ・バイエンセと対戦。

巧みなシッティングガードやハーフガードでバイエンセの上からのプレッシャーに対抗。足関節合戦からのスクランブルで背後に回ってフック入れて3点を先取すると、一度フックを緩めてから入れ直してさらに3点追加。バイエンセの左腕を足で封じた状態でチョークを狙い続けて6-0で完勝した。


続く2回戦では前回王者にして優勝候補筆頭と見られたマテウス・ジニスとボドニは相対することに。

序盤にアームバーからニータップにつないでテイクダウンを奪いパスまで決めたボドニは、加点時間帯に入ってから場外際のスクランブルでボディロックを取り、ブレイク後に中央から再開されると直後にテイクダウンに成功。さらにニアマウントから腕十字を狙い、最後は三角絞めを完全にロックオンして本戦で一本勝ちを収めた。

バイエンセ&ジニス、柔術&グラップリング界の超ビッグネーム2人に完勝という驚くべき快挙を成し遂げて、絶好調のボドニは準決勝進出を決めたのだった。

そのボドニの相手はヨーロッパ予選覇者にして、こちらも前日に2戦連続で大物食いを果たして世界を驚かせた英国のエオガン・オフラナガンだ。

1回戦、下から柔軟なガードでレジェンド中のレジェンドであるシャンジ・ヒベイロのプレッシャーに対処したオフラナガンは、足関節攻撃でむしろ優位に本戦を終えた。

延長ではシャンジのタックルをギロチンで切り返したオフラナガンは、バックにまわってフックを入れて先制点。その後シャンジに脱出されるも、柔軟性を存分に活かしたガードワークと巧みな足関節の仕掛けをもってシャンジに反撃を許さず、3-0で完勝した。

続く2回戦も、オフラナガンは柔軟性を利したガードワークをもってメイソン・ファウラーのトップからの攻撃に対処。ファウラーが上から外ヒールを仕掛けてきたところを内ヒールで切り返し、最後は両腕を組むような形で極めてみせた。

世界的には比較的無名の存在ながら、大ベテラン世界王者のシャンジ、SUG王ファウラーを連覇したオフラナガンは、今大会のブレイクアウト・スターの1人といえるだろう。

<88キロ級準決勝/10分1R>
ジャンカルロ・ボドニ(米国)
Def. 2分18秒by トーホールド
エオガン・オフラナガン(英国)

揃って大物2人を撃破し勢いに乗る両者の準決勝。試合後すぐ座ったのはオフラナガンの方。自分の両足の間にあるボドニの右ヒザ裏を外から抱え、崩しながら下の足を抜いてサドルに入るフォールス・リープを狙うが、ボドニは同時に回転し、絡んでくる左足を両手で押し下げて回避する。

さらに絡もうとするオフラナガンの足を丁寧に捌くボドニは、やがて体勢を低くして上半身でオフラナガンの足を潰しにかかる。が、オフラナガンはインバーテッドから柔軟な股関節を利用して足をこじ入れて、回転しながらサドルを作る。

ここからが足関節を熟知しているダナハー門下のボドニの真骨頂だった。アフラナガンの動きに冷静に付き合うと、絡まれている足の支点をヒザより下に持ってきてから、改めて手で押し下げて絡みを解除し、再び低く体重を預けてゆく。オフラナガンは再びインバーテッドから鋭く回転してサドルへ。が、ここもボドニは落ち着いて回転しつつ、外掛けで絡むフラガナンの左足を右手で抑えて防御する。

それでもオフラガナンが左足を絡めようとするが、ボドニはその左足を左手で抱えて自らの胸部にかかとを付けると、右手を内側から入れて(自らの胸部とかかとの接着面を支点に)足首を捻りあげる。フリーだった左足首を突然極められたオフラガナンはすぐにタップ。ボドニはしてやったりと言わんばかりにニヤリと笑ってみせた。

今大会一躍注目の的となったオフラガナンの下からの攻撃に対し、抜群の安定感のベースを軸に慌てず騒がず、きわめて落ち着いた様子で対処し、段階を踏んで着実に潰していったボドニ。

その姿は、技の一つ一つの工程を丁寧に説明する師匠ジョン・ダナハーの教則映像の如しであった。そして最後は、人体の関節の構造を知り尽くしたかのようなカウンターの足関節。この階級では今まで見たことがないような類の緻密な技術を披露し、ボドニが決勝に進出した。

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Jiu-Jitsu University Special The Fight Must Go On サウロ・ヒベイロ シャンジ・ヒベイロ ブログ

【The Fight Must Go On】Amazonで星4.9のサウロ・ヒベイロの柔術が詰まった一冊「Jiu-Jitsu University」

Jiu-Jitsu Univ【写真】ノーギ、MMAにも使える技も少なくなく、競技柔術的でありながらその本質が見られるサウロ・ヒベイロらしい技術解説書となっている (C) MMAPLANET

国内外のMMA大会の中止及び延期、さらには格闘技ジムの休館など、停滞ムードの真っただ中です。個人的にも大会の延期と中止のニュースばかりを書かざるをえない時期だからこそ、目まぐるしい日々の出来事、情報が氾濫する通常のMMA界では発することができなかったMMAに纏わる色々なコトを発信していければと思います。こんな時だからこそ The Fight Must Go On──第15 弾は必読の技術書紹介第3回として「Jiu-Jitsu University」を紹介したい。

Amazonのカスタマーレビューが1066件で星4.9という驚異の高評価を受ける技術書とは!!


「Jiu-Jitsu University」──カリフォルニア州サンディエゴにあるサウロ・ヒベイロ率いる柔術アカデミーの名称そのもの柔術の手引き。サウロの語りを教え子で2008年の上梓当時は紫帯だったケヴィン・ホーウェルが纏めたオール4色、370ページからなる超大作だ。

技術解説は第一章(ホワイトベルト)~第五章(黒帯)と5つのチャプターで構成されており、第四章は教え子のパウロ・パウロ・ギロベル以外はほぼ多くの受けを実弟シャンジ・ヒベイロが務め、またごく一部のみディエゴ・モラエスとジョー・ヴァンブラックルのコンビが実演をしている。

技の解説文は全てサウロの1人称で説明されており、非常に分かりやすい。英語のリスニングやスピーキングが苦手なMMAファン、柔術家の方でも十分にリーディングできるだろう。

Jiu-Jitsu Univ02白帯から黒帯へと変化する技術だがサバイバル→エスケープ、ガードワーク、パスガード、サブミッションという順序になっているのも、またサウロの柔術哲学を表している。

本著の素晴らしい点は、先に記したようにオールカラー、説明写真は多くの場合が2つの角度から撮影されており、並行して配置して説明がなされる。

加えて間違った例の解説もしっかりとされている点も詳しく解説がついている。さらに受けと重なる場合は受けのいない──エアー〇〇という状態での連続写真も数多くあり、技術書としての完成度は外国の書籍は随一といえる。

40種類の技術が、一つの技は最大22項目に渡るなど、多岐に渡るパターンの解説が加えられているのも嬉しい。その紹介されている技術はもうサウロならでは。第1章=サバイバルで見られるバックからの生き残り方法などは、日本のトップMMAファイターとサウロの下を訪れた時に、彼らがその説明を受けて目から鱗が落ちるという表情を浮かべていたのと同じ技術が紹介されている。

Jiu-Jitsu Univ03全編道着着用だが、カラーチョークやラペラを使った技以外は、袖や裾を掴むということはほとんどなく。ヒジの裏を押す、手首を掴むというようなノーギで使える技術が満載。

またマットへの手のつき方や、ヒザで相手を制するポイントなどMMAファンやファイターも必読の技術書──「Jiu-Jitsu University」はサウロの柔術が詰まっている1冊だ。