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【UFC ESPN52】オクタゴン2戦目、初勝利へ。木下憂朔─01─「まずは自分が落ち着いて戦うこと」

【写真】先週末から、すでにシンガポール入りしている木下(C)SHOJIRO KAMEIKE

26日(土・現地時間)、シンガポールのインドアスタジアムで開催されるUFC225で、木下憂朔がビリー・ゴフと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

昨年8月にDWCSからUFCとの契約を勝ち取った木下は、活動拠点を米国フロリダのキルクリフFCへと移し、今年2月にオクタゴン初戦を迎えた。しかし結果はアダム・ヒューギットに1R TKO負け――。あれから6カ月、シンガポールの地で復帰戦に臨む木下に、前回の試合と半年間の成長について訊いた。


――今日はよろしくお願いいたします。すでにシンガポールに入っているのですね(※取材は18日に行われた)。

「はい、昨夜シンガポールに到着しています。時差があるので、ファイトウィークの前に入って体を慣らしておこうと思ったんです。前回のラスベガスもビザの問題があって一度日本に帰国したので、同じように体を慣らそうと少し前に入っていました」

――今回はフロリダからシンガポール入りしたかと思いますが、長旅ではなかったですか。

「メチャクチャ遠かったです(笑)。フロリダからサンフランシスコを経由して、サンフランシスコからシンガポールへ――24時間ぐらい掛かりました。これからボチボチと体が慣れてくると思います」

――なるほど。今年2月のアダム・ヒューギット戦から6カ月が経ちました。この半年間、何か新たに取り組んできたことはありますか。

「もともと自分にレスリングの部分で足りないところがあるのは分かっていました。この期間はレスリングについて詰めてきました。ただ、前回の負けは自分にとって技術云々ではなくて。僕の中で緊張感が無さすぎたというか」

――緊張感が無さすぎた……、どういうことでしょうか。

「なぜかは分からないけど、今までの試合の中で一番緊張していなかったと思います。『あぁUFCだ』みたいに楽しんじゃっていて……。相手もUFC初勝利を目指して必死なのに、それも忘れていました。結果、そういう雰囲気に飲まれて負けてしまったんです。だから今回は、練習の時から集中するように心がけてきましたね」

――緊張感が無いことに関して、試合前から自覚はなかったのですか。

「いつもより緊張せえへんなぁってぐらいにしか感じていませんでした。もともと試合前にメンタルをコントロールしようとはしていなかったので、『このまま緊張感が無いほうが自分には合っているのかな』と思っていたんですよ。でも負けてしまって、試合後にメンタルのコントロールや集中力について考えるようになりました」

――そのヒューギット戦から今回のビリー・ゴフ戦まで感覚が6カ月も空いた理由は何だったのでしょうか。

「ヒューギット戦の後にチームの中で『もっともっとトレーニングして、自分自身のレベルを上げてから夏ぐらいに試合ができれば良いかな』っていう話をしていたんですよ。そこで夏にシンガポールで戦うオファーが来て。ここを逃すと間隔が空きすぎて、練習していてもダラけてくると思ったのでちょうどタイミングが良かったです」

――KO負けを喫すると即、次の試合を望むファイターも多いです。木下選手の場合は、もっと間隔を空けようと考えたのですね。

「最初は、早く次の試合をしたかったです。僕の中でも『なんで負けたんや……』という気持ちが強くて。自分が持っているものを出せれば勝てる試合やったと思います。でも、そんなに急いでも仕方ないですからね。まだ年齢も若いし、別に明日ランキング戦をしなきゃいけないわけでもない。何年も先を見据えてトレーニングしていこうと考えました」

――キルクリフFCのチームメイトは、ヒューギット戦の内容について何と言っていましたか。

「セコンドに就いてくれたヘンリー・フーフトからは『相手を見なさすぎる』と。僕が『何の駆け引きもせず、自分のパンチが当たれば倒せる』と思っていて。とりあえず前に、前にと出て行ったらテイクダウンを取られてしまったんです。そこから疲れて、パンチを当てられて……。だからヘンリーからも『もっと駆け引きをしよう』と言われました」

――これまで国内で戦ってきた相手と、世界一の舞台であるUFCで戦う相手を比較して、そこに差は感じなかったでしょうか。

「それは感じなかったです。レベルの差っていうのは、トップ選手以外はそんなに変わらへんのかなと思っていますね。まずは自分が落ち着いて戦うこと。自分が考えることを実行できるように練習を繰り返してきたので……。考えたら普通のことなんですけどね。今まで、あんまりやってこなかったので(苦笑)。今回の試合は自信があります」

――それは楽しみです。ヒューギット戦の前と今回では、キルクリフFCでの練習期間が異なりますよね。

「ヒューギット戦の前は2カ月半ぐらいで、今回は半年間ですね」

――2カ月半と半年間では、練習内容も身に付いたものも違いますか。

「全然違います。……具体的に何が違うかは分かっていないんですけど(笑)。まず練習で繰り返すことって大事やなと思いましたね。それとこの半年間で、ジムの仲間とも打ち解けてきました」

――コミュニケーションも問題ない?

「いえ、英語は全く喋れないです(苦笑)」

――えっ……。どうやってチームメイトとコミュニケーションを取っているのですか。

「英語は喋れないけど、コミュニケーションは取れるんですよ。格闘技やから身振り手振りを交えて教えてくれますし、それで何となく理解できたことに対して、パッションで返すというか(笑)」

謎の声 アハハハ!

――横で爆笑しているのは、どなたですか(笑)。

「佐藤天さんがいます。今回はシンガポールにも一緒に来てくれていて、すごくお世話になっているんですよ」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
8月20日(日・日本時間)
午後6時~UFC FIGHT PASS
午後5時30分~U-NEXT

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BELLATOR MMA MMAPLANET o PFL PFL2023#02 UFC   アマンダ・ヌネス エメリヤーエンコ・ヒョードル ケイラ・ハリソン ヘンリー・フーフト ベラトール ボクシング マリーナ・モフナトキナ ヴィセンチ・ルケ ヴィヴィアニ・アロージョ 東よう子

【PFL2023#02】東よう子と対戦、キルクリフFC唯一の女子選手マリーナ・モフナトキナが話していたこと

【写真】何か一つのことを究めた人は確かな自信と、独特の落ち着きを持っている(C)MMAPLANET

7日(金・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのザ・シアター@ヴァージンホテルで開催されるPFL2023#02で、東よう子と対戦するマリーナ・モフナトキナと対戦する。

世界大会で68キロ級を6度も制した不世出の女子サンビストは、さらになるコンバットスポーツ界での成功を目指し、MMAに転じた。今回、PFL参戦2年目を女子フェザー級という新しい階級で迎えるモフナトキナ。MMAPLANETでは昨年8月に彼女のインタビューを行っていたが、紹介するタイミングを逸していた。

女子禁制のキルクリフFCでの練習参加が許された唯一の女子MMAファイター、マリーナ・モフナトキナとはどのような選手なのか。当然、東戦に関しては言及されていないが、彼女の人となりとその実力のほどを想像できるよう、ここでインタビューを掲載したい。

東よう子、キャリア最大のタフファイトが待ち受けていることは間違いない。


──マリーナ、6度のサンボ世界王者からMMAに転向した理由を教えていただけますか。

「サンボではもう何もかもやり切って、何か成し遂げることがなくなってしまったの。でもアスリートとして、高いレベルでコンペティションに出場し続けたかった。そしてサンボで成功を収めた選手の次への挑戦ということを考えるとエメリヤーエンコ・ヒョードル、ハビブ・ヌルマゴメドフのような先人がMMAで成功を収めていることが、凄く刺激的だったわ。

私はサンボで最も成功を収めた女性として、MMAにチャンレジをすることを決めたの。ヒョードルやヌルマゴメドフのように成功を収めることが、私のゴールね」

──とはいえ、その両者を含めサンボからMMAに転じたファイターはスポーツサンボではなくコンバットサンボで成功を収めています。彼らは打撃の経験があるだけでなく非常にMMAに近い競技で実績を残している点は、スポーツサンボの頂点にあったマリーナとは相違点があると思われますが。

「全くもって、あなたの言っていることは正しいわ。私は26歳になって初めてボクシンググローブをはめて、打撃の練習を開始した。ゼロからのスタート、それもまた私に最高のやる気を与えてくれたの。

私はサンボで成功したけど、MMA界はサンボとは比較にならないぐらい巨大よ。サンボの世界王者になった時より、ケージの中で戦うと皆が私のことを認識してくれるようになったわ。そういう世界で成功を収めたい。それも私のモチベーションであることは絶対ね」

──そんなマリーナはキルクリフFC唯一の女性ファイターです。ヘンリー・フーフトは選手同士が男女の仲、いえ男女の仲につきもののトラブルを嫌がり、女子を受け入れていませんでした。そんなキルクリフでマリーナはハードトレーニングを積んでいます。

「アハハハハハ」

──ここから車で15分ほどのATTでは原則ドームは男の選手のみ、女子は近くのホテルに部屋を借りるというルールがありますが、多くの女子ファイターが所属しています。なぜキルクリフだったのでしょうか。

「2020年、Bellatorで戦うために初めて米国で練習しようと思ってフロリダにやってきたの。でも、COVID19の影響でどのジムも閉められていて。ATTは既にATTのメンバーになっていてワクチンを接種した選手だけが練習することが可能だった。外国人で新参者の私はトレーニングに参加することはできなかったの。

参加率の下がる水曜午前のレスリングにも参加

あの時、マネージャーから『ロイック・ラジャポフはサンフォードMMA(現キルクリフFC)で練習しているから一緒に行けば良い』と言われ、ロイックと一緒にジムを訪れた。

でもヘンリーには『このジムはまだ女子選手を受け入れる体制が整っていないんだ。男子ばかりで良い練習にはならないよ』と言われて。

それでもヘンリーは試しに練習する機会を与えてくれたの。その次の試合で私は勝つことができ、試合後にジムのコーチ達が私の処遇についてミーティングして……。『MMAは本当に厳しい練習が必要だ。集中力が途切れる要素は省きたい。でも、マリーナはそんな連中と変わらない。本当に必死に練習していた。男女の違いの前にマリーナは一流のアスリートだよ』って言われ、そのままジムで練習をする許可がもらえたの」

──おお、素晴らしい話です。

「私がストロー級やフライ級でなくて、運よく私と同じサイズの選手がたくさんいることも練習できる要因だったと思う。男子選手と練習を続けることは本当にハードだけど、これ以上良い練習は存在しないわ」

──そうはいっても、女子のトレーニングパートナーは欲しくないですか。

「実はATTを離脱したアマンダ・ヌネスと私のフィジカルストレングス・コーチは同じで、彼から『できれば一緒に練習しないか? きっと互いのためになるから』と言ってもらっていて」

──おおっ!!

漢の選手にヒザ十字を極めていた

「でも、私はUFCで戦うことも視野に入れているから、すぐにYesとは言えなくて。

きっと私の去就が定まれば彼女と練習することもあるだろうけど……。男子と女子は体の作りが違うし、女子の練習相手は欲しいとは思っている。もし、彼女と練習できるようになればチャンピオンの精神性なんかに触れる機会ができるわけだから、一緒にトレーニングすることになれば大歓迎ね。

それでも今はキルクリフで十分な練習ができているから。ここいることは間違いないって断言できるわ。男の選手に殴られて、鼻血を流していると怖いモノになしなるから(笑)」

※今回の試合前の調整はロシアで行っていたモフナトキナは、大会後にキルクリフFCに再合流を果たす。そして、今キルクリフには所属ではないがヴィセンチ・ルケのトレーニングパートナーとして──あのヴィヴィアニ・アロージョの姿の見られるそうだ。

──なるほどぉ。PFLは女子ライト級を実施する唯一のメジャープロモーションですが、フェザー級であればBellatorもUFCも試合を組んでいますね。つまりマリーナは今後、フェザー級で戦うことも考えているわけですね。

「もちろん、フェザー級はライト級よりポピュラーで有名な選手も多く、戦える舞台も多いわ。私自身、ライト級よりフェザー級で戦ってきたけどPFLで100万ドルが懸かった試合が組まれるから、今はライト級で戦っているの。私よりずっと大きなケイラ・ハリソンとも戦えて、私の力は示せたと思っている。私はケイラに初めてフィニッシュされなかった選手になったし。

それでも本来はフェザー級だし、Bellatorがベルトに挑戦できる機会を与えてくれるならベラトールで戦うわ。もちろん、UFCで戦えるならそうする。私はケイラと違って、フェザー級で戦うことための減量も特に問題はないから。

同時にマネージャーからPFLも来年はフェザー級のシーズンを組むという話がレイ・セフォーからあったと聞かされているし。PFLは私のMMAファイターとしてのキャリアのなかで、最高の条件を提示してくれたプロモーションだし、PFLがフェザー級を創るなら喜んでPFLで戦い続けたいと思っている」

■視聴方法(予定)
4月8日(土・日本時間)
午前7時30分~DAZN

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BELLATOR Bellator290 MMA MMAPLANET o PFL   アクメド・マゴメドフ アナトリー・トコフ アリ・イサエフ アレハンドラ・ララ エメリヤーエンコ・ヒョードル カール・アルベクツソン クリス・ゴンザレス グレッグ・ジョーンズ サバウ・ホマシ ジョニー・エブレン スティーブ・モウリー ダリオン・コールドウェル ニキータ・ミハイロフ ネイマン・グレイシー ブラック ブレナン・ワード ヘンリー・コラレス ヘンリー・フーフト ムハメド・ベルハモフ ライアン・ベイダー ロレンツ・ラーキン ヴァレンティン・モルドフスキー 佐藤天

【Bellator290】ベイダー✖ヒョードルだけじゃない。モウリー✖イサエフも要・要・要注目のヘビー級戦

【写真】イサエフの蹴り技は、警戒する必要はあるかと思うが……(C)MMAPLANET

4日(土・現地時間)、カリフォルニア州イングルウッドのキア・フォーラムでBellator290「Bader vs Emelianenko2」。世界ヘビー級選手権試合=王者ライアン・ベイダー✖挑戦者エメリヤーエンコ・ヒョードルがメインの今大会で、プレリミながら10勝0敗と9勝0敗というトッププロスペクト対決が実現する。

デビューから10連勝、全試合フィニッシュ勝利のスティーブ・モウリーと、9勝0敗で2019年PFL世界ヘビー級王者アリ・イサエフは次期挑戦者決定戦であってもおかしくない顔合わせといえる。

10の勝利中、6試合がサブミッションで試合を決めている技師モウリーに初インタビューを試みた。


──チームメイトの佐藤天選手に繋いでいただきインタビューができることになったのですが、メッセージでスティーブンは佐藤選手のNii-Chan(兄ちゃん)と呼んでいたのが微笑ましたかったです。

「そうなんだ、ニーチャンって呼んでいる(笑)。ブラザー、タカシはキョーダイだよ」

──そんなスティーブンですが、今週末アリ・イサエフと戦います。今の調子はいかがですか。

「絶好調だよ。しっかりと準備できたから、今はとてもリラックスしてその時を迎えようとしている」

──スティーブンはヘビー級なのに、ミドル級のように速くて色々な仕掛けを見せています。テイクダウンしてコントロールするアメリカン・レスラーとは一味違っていて興味深かったです。

「確かにレスリングの経験はあるけど、自己流で練習していただけなんだ。だからMMAに転じた名前のあるレスラーと違って、大会で結果を残せてもいない。でも、僕のファイトをそういう風に思ってくれているのなら、コーチと練習仲間に恵まれたおかげだよ」

──レスリングで結果を残せなかった? そうなのですか。MMAではしっかりとテイクダウンを奪って、ポジションを奪取しています。では柔術の方では?

「柔術で僕がメダルを取ったのは、2013年のノーギワールドの青帯(※スーパーヘビー級)の銅メダル。それだけだよ。あの頃は頻繁に柔術の試合に出ていたかな。それからMMAに集中するようになって、柔術の練習も続けているけどグラップリングの試合に出ることはなくなったよ。

レスリングを自己流にやっているときに、MMAを始めたいと思った。でも、どうすれば良いか分からなかった。柔術の練習をして、レスリングもより力をいれるようになり、2012年からMMAの練習をスタートさせたんだ。

さっきも言ったように最高のコーチと練習仲間がいるから、しっかりと技術を備えて戦えるようになった。柔術に関してはトーナメントで実績があるわけじゃないけど、最高の柔術家達とトレーニングを続けてきたから、それなりの腕前にはなっていると思っている」

──MMAはヘンリー・フーフトやグレッグ・ジョーンズの下で始めたのでしょうか。

「MMAは2012年にペンシルバニアで始めた。アマの試合にでるようになり、7年前にフロリダに移ってブラックジリアンに合流した。ペンシルバニア時代に何人かのコーチとトレーニングをして、プロでやっていこうかと考え出した頃にヘンリーに出会ったんだ。

ヘンリーと話をして、ただ練習をするだけでなく人間として良い関係を築くことができると思った。そして、ヘンリーの下でやっていれば良い形で化学反応を起こして強くなれると確信したんだ。それ以来、ヘンリーやグレッグとはブラックジリアンからコンバットクラブ、ハードノックス365、サンフォードMMA、そしてキルクリフFCとずっと一緒にいるよ。

キルクリフFCには世界のトップコーチが揃い、前向きで生産性のあるトレーニングを課してくれる。そこに世界中からやる気があり、経験も積んでいる選手たちが集まってくるんだ。自分だけでなく、皆で強くなれる。背中を押してもらえる環境があるよ」

──そんなキルクリフFCで鍛えられたスティーブンの前回の試合、ヴァレンティン・モルドフスキー戦は勝利すればタイトル戦が見えてくる試合だったと思います。しかし、アイポークでNCになってしまいました。

「ついていなかったし、凄く残念な結果に終わってしまった。色々なことが掛かっている試合だったからね。だからこそ、今回の試合が楽しみなんだ。前回のノーコンテストを払拭するだけでなく、勝てば前に大きく進める相手と戦える。もちろんモルドフスキーとは決着をつけたい。ただし、今はイサエフ戦に集中しているよ」

──2021年から昨年と4度に渡り、PFLの試合がキャンセルになったイサエフですが、2019年のヘビー級王者で既に100万ドルを獲得している実力者です。キャリアで最もタフな相手とも考えられますし、メインカードでないことが驚きです。

「その通りだよ。100パーセント同意するよ。ただ、プレリミだろうがメインカードだろうが最高の試合をすることに変わりないからね。イサエフは優れたレスラーだ。前の試合ではまだ経験が十分じゃなかったけど、実現しなかった試合でも勝ち続けていただろうね」

──テイクダウンも強いですが、近距離でも遠距離でも使える蹴り技も大きな武器だと思います。

「色々とやっているけど、特に彼の蹴り技を気にすることはない。立ち技でもやり合っても問題ないと思っている」

──イサエフに勝てばモルドフスキーとの再戦の必要がなく、タイトル挑戦権獲得も有り得るのではないでしょうか。

「良い試合、良いフィニッシュができればね。それだけ良い相手だということだよ」

──ではメインの世界ヘビー級選手権試合、ライアン・ベイダー✖エメリヤーエンコ・ヒョードル戦の行方を占ってもらっても構わないですか。

「きっとグッドファイトになるだろう。ヒョードルに勝ってほしい気持ちもあるけど、ライアン・ベイダーだろうね」

──スティーブン、今日はありがとうございました。最後に日本のファンにメッセージをお願いできないでしょうか。

「日本のファンにはアリガトと言いたい。MMA文化の中には、日本の文化が存在している。日本のファンが僕の試合をチェックしてくれることは、凄く光栄だよ。日本からマーシャルアーツが世界に伝わったんだからね」

■視聴方法(予定)
2月5日(日)
午前7時30分~ U-NEXT

■Bellator290対戦カード

<Bellator世界ヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]ライアン・ベイダー(米国)
[挑戦者] エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)

<Bellator世界ミドル級選手権試合/5分5R>
[王者] ジョニー・エブレン(米国)
[挑戦者] アナトリー・トコフ(ロシア)

<ウェルター級/5分3R>
サバウ・ホマシ(米国)
ブレナン・ワード(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ネイマン・グレイシー(ブラジル)
ダンテ・シーロ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ロレンツ・ラーキン(米国)
ムハメド・ベルハモフ(ロシア)

<フェザー級/5分3R>
ヘンリー・コラレス(米国)
アクメド・マゴメドフ(ロシア)

<ヘビー級/5分3R>
スティーブ・モウリー(米国)
アリ・イサエフ(ロシア)

<ライト級/5分3R>
クリス・ゴンザレス(米国)
マックス・ロスコフ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
グラント・ニール(米国)
カール・アルベクツソン(スウェーデン)

<女子フライ級/5分3R>
ジアナ・アフサラゴワ(ロシア)
アレハンドラ・ララ(コロンビア)

<バンタム級/5分3R>
ダリオン・コールドウェル(米国)
ニキータ・ミハイロフ(ロシア)

<バンタム級/5分3R>
ジェイロン・ベイツ(米国)
ジョーネル・ルゴ(米国)

<フェザー級/5分3R>
アイザイア・ホキット(米国)
ピーター・イシグロ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
イーサン・ヒューズ(米国)
ユスフ・カラカヤ(トルコ)

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ACA BELLATOR Bellator290 MMA MMAPLANET o ONE PFL RIZIN UFC   アクメド・マゴメドフ アナトリー・トコフ アレハンドラ・ララ エメリヤーエンコ・ヒョードル カール・アルベクツソン クリス・ゴンザレス サバウ・ホマシ ジョニー・エブレン スティーブ・モウリー ダリオン・コールドウェル ニキータ・ミハイロフ ネイマン・グレイシー ブレナン・ワード ヘンリー・コラレス ヘンリー・フーフト ベラトール ボクシング ムハメド・ベルハモフ ヤーソラフ・アモソフ ライアン・ベイダー ロレンツ・ラーキン ローガン・ストーリー

【Bellator290】ラーキンと再戦。遅れてきた最恐ロシアン=ベルハモフ「100パーセント、僕が勝つ」

【写真】「英語はまだ不十分だ」と奥方が通訳をしてくれたが、ほぼ問題なく受け答えをしてくれた(C)MMAPLANET

4日(土・現地時間)、カリフォルニア州イングルウッドのキア・フォーラムでBellator290「Bader vs Emelianenko2」が開催される。ヘビー級とミドル級という2階級の世界戦がヘッドラインとなる同大会では、全14試合中11試合がプレリミで組まれている。

これだけのプレリミの数があると、当然のようにメインカードで組まれていてもおかしくないマッチアップが含まれている。それがバンタム級のダリオン・コールドウェル✖ニキータ・ミハイロフであり、ヘビー級のスティーブ・モウリー✖アリ・イサエフ、そしてウェルター級のロレンツ・ラーキン✖ムハメド・ベルハモフだ。

Bellatorウェルター級戦線のジョーカー、ベルハモフは世界で一番過激かつ厳しいフィーダーショー時代のACBでウェルター級王者に就くだけでなく、ロシアの最恐プロモーションで5勝0敗、全ての試合がフィニッシュ勝利という凄まじいレコードの持ち主だ。

そのベルハモフには4年に1試合しか戦っていない沈黙の刻が存在している。このブランクさえ無ければ今頃UFC、そうでなくもベラトールでタイトルコンテンダーになっていても不思議でなかった。遅れてきたウェルター級の最強候補は非常に紳士的な受け答えをする物静かな男だった。


──ロレンツ・ラーキンとの再戦が今週末に控えています。前回の試合はアイポークでNCという思いもしない結末を迎えてしまいました。

「あの終わり方には本当にガッカリした。全く、あんなことになるとは……。だからこそ、リマッチをベラトールに申し出たんだ。皆に僕の方がラーキンより明白に強いということを証明したいから」

──ところでムハメドのレコードは15勝1敗なのか、14勝0敗なのかどちらなのでしょうか。

「14勝0敗だよ。2013年8月に出場したSPB Fightersというサンクトペテルブルクで行われた大会のトーナメントの決勝で負けた記録がプロMMAファイトとして扱われることがあるけど、あれは間違いだ。確かに僕は負けた。でも既に当時はプロだった僕は、プロレベルでない試合……それもほとんどレスリングという試合で負けたんだ。

あの試合はMMAではなかったし、相手はアマチュアでファイトマネーも出ていないんだ。トーナメントで勝利した1勝もプロレコードとしては数えていない。だから僕のレコードは15勝1敗ではなくて、14勝0敗だよ」

──ではキャリア14勝0敗のムハメドですが、ロシアの何共和国の出身なのでしょうか。名前はムスリムでも、少しダゲスタンのファイターとは違った面影に感じます。

「同じ北コーカサスだけど、ダゲスタンの隣にチェチェンがあって、その隣のガダルダ・バルカル共和国のナリチクの出身だよ。知っていると思うけど、南ロシアらしい凄く綺麗な街だよ。そして僕らの街でもダゲスタンのようにレスリング人気が凄く高かったんだ。

僕にとっても一番の格闘技はフリースタイルレスリングだった。心の底からやる気になって取り組むことができるのがレスリングだったんだ。それからグラップリング、ボクシングと全てを練習するようになった」

──レスリングベースで、ウェルラウンダー。そのようなロシアや東欧系、元はソ連、もしくは衛星国だった国のファイターはコンバットサンボの経験者も多いです。ムハメドもコンバットサンボの経験はありますか。

「もちろん、コンバットサンボでも戦っていたよ。2、3年かな。マスター・オブ・スポーツの称号も得えている。当然のように勝った大会もあるし、負けた大会もある。ただし、コンバットサンボを戦う前に僕はもうアマチュアMMAの試合に出ていたし、プロになる過程でコンバットサンボをやっていたんだ。

コンバットサンボは本当にハードなスポーツだ。MMAとサンボが融合したコンバットサンボを戦ったことは、凄く良い経験になっているよ。トーナメント形式で、強い気持ちを養うこともできたしね」

──MMAに転じてからACBのウェルター級王者になっています。ムハメドがチャンピオンになった2017年頃、まだUFCにそれほど多くのファイターがステップアップを果たしておらず、ACBはUFCに次ぐレベルのMMA大会だったと言えます。そのACBで5戦全勝、加えて全てフィニッシュ勝利。それだけでもムハメドの実力が分かるというものですが、防衛戦を行うことなくタイトルを剥奪されたのはなぜでしょうか。

「あの頃は体中ケガだらけだった。ヒザ、腕、そしてヒザを再び負傷して手術を繰り返した。2017年の夏から2019年の夏まで2年近く全く練習ができなかった。1度、2019年8月にACAで戦い、Bellatorと2020年に契約をした。そこでもケガが原因で1年半以上、試合に出ることができなったよ。

元々は他のファイターと同じようにUFCを目指していた。誰だってUFCで戦いたいだろう? でもUFCからは1年、2年ほど契約まで時間が掛かると言われたんだ。そうなると4年も試合ができないことになる。だから、ACAで1度戦い好条件を提示してくれたベラトールと契約した。全ての手術を終えた後でね」

──ではキルクリフFCに合流したのはいつからですか。

「フロリダでキャンプをして、暮らすようになってまだ1年目だよ。サンフォードMMA時代だけどね」

──ヘンリー・フーフトの下でトレーニングをしようと決めたのは?

「僕の判断じゃないんだ。マネージャーがそうしようと言って来た。だからサンフォードMMAに合流したんだ。キルクリフFCにはとても優秀なコーチが揃っている。彼らはマスターだ。特にウェルター級とミドル級のファイターにとって、このチームは世界で最高の環境だよ。UFC、ベラトール、PFL、ONEと世界のトップで戦う選手ばかりだ。強いファイターしかいない。凄く高いレベルでトレーニングができているよ」

──そんな最高のジムで練習をして来たムハメドですが、ラーキンとの再戦に向けて自信のほどは?

「100パーセント、僕が勝つ。実は前回の試合は1カ月前に首を負傷して、しっかりとキャンプもできなかった。でも今回は違う。ハードなキャンプを2カ月間やってきた。あとは試合で勝つだけだ」

──2月25日にはヤーソラフ・アモソフとローガン・ストーリーの間でウェルター級王座統一戦が行われます。ムハメドはどちらが勝つと予想していますか。

「この試合は凄く良い試合になるだろう。両者とも本当に強い。だから僕は勝者を選ぶことはできない。全くの互角、50/50だと予想しているから」

──ストーリーが王者になると、チームメイトが頂点に君臨することになります。

「そうだね……今、そのことを話題にするのは時期尚早だと思う。こないだの試合もノーコンテストになり、僕は過去数年間キャリアを失って来た。だから、まずは自分の力を世に示さないと。もちろん、世界中のどのファイターも世界チャンピオンを目指している。それは僕も変わらない。ただし今はそういうことを口にすべきじゃない。そして、そうなるとも限らない。でも、チャンピオンになる自信は十分にあるよ」

──では最後に日本のファンに一言お願いします。

「皆の応援に感謝している。いつの日か日本で戦いたい。年末にBellatorとRIZINがクロスプロモーションで戦ったけど、あのような機会が再びあるなら絶対に僕もベラトールのメンバーになりたいと思っている。アリガト」

■視聴方法(予定)
2月5日(日)
午前7時30分~ U-NEXT

■Bellator290対戦カード

<Bellator世界ヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]ライアン・ベイダー(米国)
[挑戦者] エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)

<Bellator世界ミドル級選手権試合/5分5R>
[王者] ジョニー・エブレン(米国)
[挑戦者] アナトリー・トコフ(ロシア)

<ウェルター級/5分3R>
サバウ・ホマシ(米国)
ブレナン・ワード(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ネイマン・グレイシー(ブラジル)
ダンテ・シーロ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ロレンツ・ラーキン(米国)
ムハメド・ベルハモフ(ロシア)

<フェザー級/5分3R>
ヘンリー・コラレス(米国)
アクメド・マゴメドフ(ロシア)

<ヘビー級/5分3R>
スティーブ・モウリー(米国)
アリ・イサエフ(ロシア)

<ライト級/5分3R>
クリス・ゴンザレス(米国)
マックス・ロスコフ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
グラント・ニール(米国)
カール・アルベクツソン(スウェーデン)

<女子フライ級/5分3R>
ジアナ・アフサラゴワ(ロシア)
アレハンドラ・ララ(コロンビア)

<バンタム級/5分3R>
ダリオン・コールドウェル(米国)
ニキータ・ミハイロフ(ロシア)

<バンタム級/5分3R>
ジェイロン・ベイツ(米国)
ジョーネル・ルゴ(米国)

<フェザー級/5分3R>
アイザイア・ホキット(米国)
ピーター・イシグロ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
イーサン・ヒューズ(米国)
ユスフ・カラカヤ(トルコ)

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BELLATOR LFA MMA MMAPLANET o ONE PFL UFC ブライアン・バトル ヘンリー・フーフト 佐藤天 修斗

【ONE】2022年中に話が訊きたかったファイター。4人目、佐藤天―01―「身銭を削って生きている」

【写真】選手の選択肢はそれぞれあることを踏まえたうえでUFCが唯一の世界最高峰で、そこを目指す練習環境は米国にある。この自論は崩れない(C)KILLCLIF FC

2023年が始まり、MMAワールドでは本日6日(金・現地時間)に米国でLFAが開催され、アジアではONEのタイ大会=14日(土・同)のFIGHT NIGHT06からスタートを切る。日本の戦い初めは15日(日)、後楽園ホールの修斗公式戦だ。

そんな2023年のMMAに向け、『2022年中に話を訊いておきたい』勝者、敗者を6人リストアップしインタビューを行った。第4弾は世界最高峰との契約更新から2連敗、苦悩の時を過ごしたUFCウェルター級ファイター=佐藤天に話を訊いた。

フロリダ、キルクリフFCでの生活は不変である佐藤。契約したばかりのUFCファイターの生活環境まで言及してくれたうえで、彼からは強くなるために米国で生きることは普遍の原理と考えていることが伝わってきた。


──悔しい気持ちを抱えたまま、2022年が終わろうとしているかと思います。

「そうっスね。ハイ。一言でいえば残念で。やり残したことばかり、やってきたことを試合で出せなかった。その想いが一番強いです。悔しい1年になりました、本当に」

──8月のブライアン・バトル戦以降、どのような日々を過ごしてきました。

「まず1カ月ほど日本に帰国して。そこから練習に戻ったのですが、最初の1カ月ゆっくりと軽い動きから練習を再開しました。ここ2カ月は組み技、あとはドリル練習に重きを置いて年明けから試合に向けての練習をメインでやることになります」

──ではあまり打撃の練習はしてこなかったと?

「ハイ。初めてあんな風にKO負けしたので、コーチ性質も敏感になっていて。打撃のスパーリング自体は1カ月ぐらい前から再開したのですが、試合が決まっていない状態だから『年内は大きなグローブを使って、強度の高い練習は無しにしょう』と言われました。なので打撃も技術練習や基礎練習が中心でしたね」

──ヘンリー・フーフトたちはそれだけKO負けした時は、回復具合を気にしているのですね。

「ギルバート(ジルベウト・ドリーニョ・バーンズ)とも話をしたのですが、タイトル戦でウスマンにKO負けした後は半年間、打撃のスパーリングをしなかったと言っていました。次の試合ではチマエフにジャブを効かされたので、あの後もずっと脳に衝撃を与えないで練習をしていたようです。

試合が決まっていれば、スパーリングも再開します。でも、試合が無いようだったらコーチ達も『スパーはやらなくて良い』という方針ですね。それで他の練習メニューを指示されるので、ぶっちゃけ我慢しながらやっています(笑)」

──やはりスパーをしたくなるものですか。

「米国に戻って毎日練習に行くと、そうですね……(笑)。練習ができないというのは一番厳しいです。それでも、ジムに行くと見えてくることもたくさんあります。だからプラスになるように過ごしていましたけど……練習できないことは、気持ち的にキツイというのはあります。プラスになることは凄く多くても。でも練習をできる体は維持しているので、ここから試合に向けての練習にシフトしていけます」

──クリスマスとニューイヤー、UFCがクリスマス前から約1カ月のウィンターブレイクとなりました。そんななかキルクリフFCも里帰りをする選手たちが多くなかったでしょうか。

「もともと試合前にだけ来るという選手以外は、変わりないです(笑)。皆、練習を続けていますね。1年間で見ると、チーム全体の成績が2021年は2/3は勝っていたのが、2022年は6割ぐらいに勝率が下がりました。そういうところにコーチもシビアになっていて、年末も追い込みのメニューが用意されていました。気を引き締めていこうということだと思います。厳しい練習をしています」

──そんななか日本では話題になったBellatorが2019年の年間27イベントからコロナ禍で18大会となり、2023年はさらにイベント数が減るという話も伝わっています。薄っすらと景気後退のように感じられ、UFCの独創感が鮮明になっているような気がするのですが現地にいる佐藤選手から見るといかがですか。

「Bellatorのイベント数が減るというのは聞いています。以前からBellatorに出ているチームメイトからはUFCと比べると試合が決まるのが、遅い。プロモーションも短くなるという話も聞いているし。マーケティング的にもUFCが独創している感はあります。そういう点でもUFCとは差があるので、UFCを第一に目指すという選手が圧倒的に多いです。PFLで優勝したら100万ドルという魅力的な話があっても、やはり選手としてはUFCに出たいというのが多いです」

──キルクリフの所属選手でUFC、Bellator、PFL、そしてONEと契約している選手と、フィーダーショーで戦っている選手の割合はどのようになっていますか。

「正確な数字は分からないですけど4割から5割が大きな団体と契約していますかね。さっきも言ったようにキャンプの時だけ来る選手もいますし、全体の人数はちょっと分からないのですがUFCファイターは20数人います。Bellator、ONE、PFLを含めると30人以上になります。だから半数近くがそうで、他がフィーダーショーで戦っています。

最近、ロシアの選手が増えてきました。コンテンダーシリーズを狙っている選手や、アマチュア大会に出ている若い選手も凄く高いレベルの選手が来ています。だから練習的には凄く高いレベルを維持しています」

──ロシアや中央アジアでアマMMAを戦っている選手は国や企業からサポートを受けて、他に仕事をしない。いわばファイトマネーを得ていないプロですよね。

「アマチュアでプロ戦績のない選手のSNSのフォロワーが10万人とかなんですよ」

──!!

「国を挙げてサポートを受けているところはありますよね。こっちでも、毎日練習だけをしています」

──対してフィーダーショーに出ている他の選手たちは、どのような境遇なのですか。

「自分の前のルームメイトもUFCと契約しましたけど、2戦目が流れたのでウェイターをしながら練習しています。UFCと契約しても、バイトをしている選手はたくさんいます」

──佐藤選手の場合は、ファイト以外でお金を得ることはできないビザですよね。

「ハイ。だからサポートしてもらいつつ、身銭を削って生きている──ぐらいで。バイトをしないで練習できているのですが、それだけで生活自体はUFCと契約する前と大きく変わることはないです。ただし、ずっと練習していられるので恵まれていると思っています。好きなことやっているので」

<この項、続く>

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MMA MMAPLANET o UFC UFC276 イアン・ギャリー ゲイブ・グリーン ヘンリー・フーフト

【UFC276】仕留めきれず、圧倒できなくとも致命的な打撃は食らわずギャリーがグリーンを下しUFC3連勝

<ウェルター級/5分3R>
イアン・ギャリー(アイルランド)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27
ゲイブ・グリーン(米国)

サウスポーのグリーンが右ジャブを伸ばし、右ローを蹴っていく。右ヒザから右を見せたギャリーが右ハイを蹴っていく。左右に動き、右インサイドローを蹴ったギャリーはグリーンの左→右のコンビをかわし、左ローを蹴る。左を入れたグリーン、ギャリーもすぐに左を返すが、近い距離でガードが低いのは危ない。

飛び込んで右を打ったグリーンだが、すぐさまギャリーがワンツーを打ち返す。グリーンが予想以上に落ち着いた試合の組み立てをしボディを殴る。ケージ際、その左ボディを被弾したギャリーがワンツー、右を入れてパンチを纏める。右の相打ち後に右前蹴りから間合いを取り直したギャリーは、オーソで構えたグリーンにジャブを当てる。残り30秒、ギャリーは組んできたグリーンにヒザを入れ、ワンツーからスリー、そして右ハイと攻撃を纏めて時間を迎えた。

2R、「急ぐな」というヘンリー・フーフトの指示を受けたギャリーは、右ローでグリーンの姿勢を乱す。さらにローには右を当て、ジャブから左ハイを繰り出す。右ハイに続き、ワンツー&スリー・フォーと攻撃をまとめたギャリーに対し、グリーンはアイポークがあったとアピールし試合が中断する。再開後、左ハイを蹴られたグリーンが左を振るって前に出る。ギャリーはここで組んでクリンチゲームへ。グリーンも譲らず、ケージにギャリーを押し込む。ギャリーはボディロックから大内刈りでテイクダウンを奪い、そのままマウントを奪取する。背中を譲って前方にギャリーを落としたグリーンがバックを取る。向き合ったギャリーはヒザ蹴りがパンチを纏め、間合を取り直したグリーンに左ジャブを打っていく。左右の粗いが、鋭いフックで前に出たグリーンが、得意のパターンに持ち込むが。乱打戦になりそうな展開でギャリーはミドルからワンツー、左は空振りする。グリーンは右ローを3発入れて、左を顔面に打ち込んだところでラウンド終了となった。

最終回、今度は「そんなに待つな」というアドバイスを受けたギャリーはローから前に出てくるグリーンにカウンターの右を当ててダウンを奪う。左腕を差して立ち上がったグリーンがテイクダウン狙いからバックに回る。ギャリーは胸を合わせてヒザ蹴り、グリーンの大振りのパンチをかわして右から左のワンツーをヒットさせる。

スピングバックフィストにも右を当てたギャリーは、ワンツーで右をヒット。さらにジャブを当てるが、グリーンも前進を続ける。ギャリーは左オーバーハンドをかわして右を伸ばすが、グリーンも跳びヒザの着地に左を打っていく。足を使いつつ、着実にパンチを当てるギャリーは、右ヒザからジャブを連続で見せて右ストレートに繋げた。グリーンも最後まで前進をやめなかったが、判定では勝ち目はなかった。フルマークの判定勝ちでギャリーはUFC3連勝とした。


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ABEMA MMA MMAPLANET o UFC UFN204 カミ・バルジニ グンナー・ネルソン ジルベウト・ドゥリーニョ パンクラス ヘンリー・フーフト ベラル・モハメッド 佐藤天

【UFN204】世界に立ち向かうJ-MMAファイター(02)佐藤天「ラストじゃない。まだ、ある。まだ、あるので」

【写真】インタビュー中は非常に厳しい表情が続いたこともあって、最後は笑顔のリクエストをしました(C)MMAPLANET

3月19日(土・現地時間)、英国ロンドンのO2アリーナで開催されたUFN204:UFN on ESPN+62で佐藤天はグンナー・ネルソンに完敗を喫した

1年4カ月振りのオクタゴン。この日のために全てを費やしてきた、考え得るだけの努力をしてきた。そして、敗れた。

2022年、春~世界に立ち向かうJ-MMAファイター特集~。第2弾は、UFCという最高峰に拘り、全てを自己責任で生きる佐藤天に話を訊いた。


──正直に言わせていただくと、やるせない完敗でした。どれだけの想いがあって、人生の全てを賭けようがこのようなシビアな現実に直面する。そんな試合でした。

「凄く残念で、悔しい。それが率直な想いです。ただ、もちろん諦めていないので進んでいくしかない。ちょっとしたところで、大きく結果が変わる。それを実感しています。試合が終わってからなのでタラレバになるのですが、グンナー・ネルソンにバッククラブに入られると、過去もほとんどの選手が逃れることができていないです。だから、そこまでをどうするのか……という勝負でした。

最初のコンタクトにしても、肌を直接合わせた時の感覚は悪くなかったんですよね。実は予想していた試合展開は、もっとネルソンが圧を掛けてきてケージレスリングの展開になると思っていました。それが思った以上に自分が圧を掛けることができたことで、オクタゴン中央での戦いになりました。ネルソンがどういう風にクラッチしてくるかも予想できていて、そこでカウンターを打つとかできれば良かったのですが……決して、感覚的には試合開始直後から悪くなかったんです。

そこから1度テイクダウンされてバックを取られた。戦い方をネルソンは変えてきました。フレキシブルに試合を創ってきました。リスクを最大限に減らして。自分は対照的に柔軟な対応ができなかったです。そうッスね……そういう細かいところの違いが、大きな差となって結果に表れました。それを実感させられた試合でした」

──圧力は掛けることができていた。でも、手が余りでなかった。特にテイクダウンを奪われてからは、ネルソンにテイクダウンがあるというのが念頭に来て、そこから頭で考え手数が減っていったようにも映りました。

「もちろんテイクダウンのプレッシャーもありましたが、ネルソンが凄く待っていました。試合の入り方として動きもメンタルも凄く良かったです。さっきも言った少しの違いを掴み切れなかったということがあったうえで、待たれたことで考えてしまったという部分はあります」

──あのスタンスでネルソンは、右の奥足で蹴りが届くのは戦い難かったかと。何よりテイクダウンを奪う時のパンチ。当たらなくても組めば良い打撃、当てる打撃の2つのパンチを持っていました。

「その見極めは凄く難しかったです。2Rの途中から打撃がかなり見えるようになってきました。合わせるタイミングとか計っていたのですが、その見極めだけは困難になっていきました。組む、打つ、モーションは慣れて見えてきたけど、その織り交ぜてくるのは全く同じ動作で。だから……考えるというよりも、考えさせられました。1回スイッチとかしたのですが、あんなの実際は意味がないです。でも、考えされた結果ああいうこともしていて」

──打つ手がなくなっていったような感じでしょうか。

「う~ん、それよりも何か……考えさせられることによって後手に回らされましたね」

──お互いが相手の動きを見て反応する。相手に動きを見せて反応させる。そんな神経戦のなかでネルソンが当て、組んでテイクダウンを決める。あれはMMAの技術を消化したうえで、彼がポイント空手の試合で積んできた経験。先の先、後の先、ダメージを与える競技ではないですが、心理戦のなかでどう踏み込んで当てるのかという競技をしてきたのが生きたのかと思いました。MMAとはそういう部分で、ポイント空手ですら生きるのかと。

「あぁ、そうですね。今からすれば、組みと打撃の見極めが難しいなら自分から組むこともできたと思います。組んだ時の感覚も悪くなかったので。ギルバート(ジルベウト・ドゥリーニョ)からも『別にパワーはない』と聞いていました。3Rに組んだ時も感触は悪くなかったです。そこでディフェンス有りきで考えてしまって出なかったというのは、絶対にあります。

上を目指している以上、ベラル・モハメッド戦と同じように悔しい負けです。凄く遠いバケモノとかでなくて、自分の持っているモノを生かして勝ってランキングを上げていっている選手に勝てていない。そこはもっと煮詰めていかないといけないです」

──それこそ佐藤選手が言われている、何か一つで局面が変わる。変えてくれという気持ちで2R、3Rと視ていて。そしてテイクダウンからバッククラブというなかで、制されて終わった。

「そういう場面で、柔軟性をつけないと……創り方も大事になってきますし。色々なところに注意を払って、頭を巡らせないといけない。そういう練習もしてきているのですが……」

──ここも結果論ですが、動きが良く圧を掛けられることができる。それでもテイクダウンは取られた。そういう時に自らケージを背負う位置を取るということは難しいのでしょうか。

「それも必要になってきますよね。ケージレスリングに突破口があるのであれば、金網の近くで戦って組みの展開に持ち込む。そういう判断もすべきだと思います」

──あの局面、逆転には打撃を当てること。だからといって、前に出ていくことが打開策になるのか。もちろん、負けているなら一か八かも必要な時もあるのでしょうが……。そこで究極の先手、あるいはカウンターの取り合いが行われている。だから無暗に打って出られない。特に相手が見て、待っているわけですし。

「そうッスね。どう手を出すか、どういう中身の攻めを繰り出せば良いのか。その中身を詰めていかないと、玉砕になります。片道の燃料で敵を目指すのは……違うというのが僕の考えです。漢を見せるとか、そういう次元の話ではないです。勝つために一つひとつ、正しい選択をしていかないといけない。

例えば僕が1回でもネルソンのダブルレッグを切れていれば、彼も消耗したはずです。そうしたら流れが変わったかもしれない。そういった面でも、創りが大切で。それができるよう積んでいかないといけないと本当に思っています。防戦一方で、判定までいって負けてしまったんですけど、動き、切れは以前よりずっと良くなっています。

僕はバックを取られているとパンクラス時代でも、UFCになってかも負けています。だから取らせないということもやってきました。そこは意識していて……、試合では機能しなかったですけど……。

でもネルソン戦がラストじゃない。まだ、ある。まだ、あるのでこの間に詰めていかないと……」

──ヘンリー・フーフトやカミ・バルジニ達、コーチ陣と試合に関して話はされましたか。

「ハイ。皆と話しました。ヘンリーは家に呼んでくれて、『間違いなく良くなっている。もう少し自信を持つことが大切で、細かいところもやっていこう』と言ってくれました。『練習中に、そんなにナイスでなくて良い。もちろんケガをさせたらダメだけど、自分の感覚を大切にするためにもっと我がままを通しても良い。少しぐらい当てても、そういうレベルで戦っているんだから、そこをしっかりとやっていこう。思っている以上に上とは近いところにいるんだ。手が届かないモノじゃない』とも。

カミやグレッグ(ジョーンズ)は『少しの部分、そこをリフィックスできなかった。そういう部分を詰めていこう』という話や『試合間隔が空いたことで、打撃の選手はちょっとした感覚が違ってくるから。その違いも分かったから、今度はちゃんとファイトキャンプをして、対戦相手の研究ができる早目のオファーで準備できるようにやっていこう』と言ってくれました。

今回は1年間、どういう相手がこようが試合を受けることができる。自分のコンディションを整え、穴を埋めるという準備をしてきました。今後はそれに加えて、しっかりと戦略を立てて試合に向かいたいです」

<この項、続く>

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Interview UFC ブログ ヘンリー・フーフト 佐藤天

【UFC】佐藤天に訊いた日米の違い─02─「高い意識の者が突き抜けてしまうようじゃ強くなれない」

【写真】このインタビュー、全てが金言といっても過言でないです(C)MMAPLANET

日本に帰国中の佐藤天インタビュー後編。強くなる──誰もが思っているはずの思考だが、佐藤は日本とサンフォードMMAの違いに関して腹を割って話してくれた。

目標はどこでも良い。強さを求める選手、そして日本を強くしたいと思っているMMA関係者の全てに、佐藤天の言葉を伝えたい。

<佐藤天インタビューPart.01はコチラから>


──佐藤選手が環境の違いという言葉を口にするのは、そういう選手たちのモチベーションという部分だったのですね。

「ハイ。だから米国のジムに移った方が良いとか、そういうことは言わないです。ただし、1度は経験してみると良いとは思っています」

──それは湾曲的な言い回しになりますが、UFCで戦いたいという目標を持っている選手達はということになりますか。

「そういう目標を持っている選手もいるだろうし、色々な目標があると思います。色々な目標があることは良いと思っています。

でも、その目標に向かって……どこまでやっているのか。若いから遊びたいっていう気持ちも分かります。でも、サンフォードMMAで『一回、機会をつくって皆で飲みたいね』とか話していても、実現しないです」

──皆が一緒に飲みに行く時間が創れないと。

「日本でも高い目標を持ち、それだけの気持ちを持って練習している選手はいます。そうなるとその選手の実力が少し抜けるようになる。

そうなると、選手同士ではその抜けた選手に意見できなくなるというように見えることがあります。やっている選手こそ、指導者だけでなく選手からも色々と意見してほしいはずなんです」

──佐藤選手がサンフォードでは、選手から色々とアドバイスをもらうとうことですね。

「ハイ。それが日本だと自分もUFCファイターなり、言われなくなりました。青木さんや元々の先輩ぐらいで。でも強さ、弱さなんて関係ないんです。言ってほしいですよね。どの言葉にも強くなるヒントが隠れている。そういうことを言い合えるのがチームだと思うんです。

高い目標を持って、強さが抜けてくると──『〇〇は強いから』という風になってしまう。そうなってくると、選手は孤独になるし。誰にも理解してもらえないという状況のなかで、強くなるしかない。そういう頑張っている選手が、周囲の選手から『話が合わないよね』なんて風になってしまう。こういう風になってしまうと、『この環境だとしょうがない』って気持ちに陥ってしまいますよね」

──なるほど、設備やジムの広さでなく。日本のMMAを持つ問題点はそういう部分でもあるのですね。

「自分だけ頑張れば良いっていう風になる。それはもう練習している集団であって、チームではないです」

──佐藤選手のこの言葉の真意が伝わってほしいと思います。

「もちろん、自分の知らないところでそういうチームがあったり、そういう関係でできている選手もいるかもしれないですが……。練習って下に合わせる必要はないんです。でも上に合わせるというのではなくて……そうですね、サンフォードだと皆が上を見ている。合わせるとかじゃないですね。

何とか上に行ってやろうという連中が、上を見ている。そうでないヤツは勝てなくなっていなくなっちゃいます。チームメイトも頑張っている選手をサポートしたくて、皆が協力的になれます。そうじゃない選手とは、どうしても表面上の付き合いになります」

──そこで数の論理になってしまいますが、日本では高みを目指す選手ほど浮いてしまうということですか。

「まぁ、そうなるかと……。1人だと感じるようなことがある選手は辛いと思います。それでも頑張っている選手って、もう近寄りがたい存在になってしまうじゃないですか。本当に上を目指して、足らないことがあると思ってもがいているのに、『アイツは違う』って感じで何も言ってもらえないって本当に辛いと思います。もっと色々と言ってほしいはずです」

──私も取材をしていて、今、佐藤選手が話してくれた事例に当てはまるような選手は幾人が思い当たります。そういう選手って取材が終わってからも、話が尽きないというか……どこまでが取材で、どこからプライベートなのか線引きが難しいことがあります。

「モヤモヤしていますよね。そういう選手って。だから、そこが分かってくれる人を信じる。分かってくれているような人も信じる。一本気があるから、付け入られることもあるし……」

──それが選手同士で盛り上げていくことができれば、もっと余裕もできるということなのですね。あぁ、でも本気でUFCで戦おうという選手は、そこが上手くできるセンスを持つ選手と、それこそ一本気で人間関係に苦労する選手に分かれますね。

「そこも分かります。人間関係は難しいです(笑)」

──佐藤選手は、そこもしっかりとしています。

「人は良いところも、そうでないところもあります。だから誰かが話している内容でその人と判断するのではなくて、自分が直接話して真意を理解していきたいと思っています」

──そんなバランス感覚に優れた佐藤選手が、ここで言ってくれていることは本当に有難いです。米国に行くだけで強くなれるということではない。そこに通じているかと。

「サンフォードで練習しているからって、強くなれるわけじゃないです。これは日本での練習でも見られることだと思うのですが、プロ練習の時間が終わった。そこで練習を続けている人間がいる。

『アイツ、凄いな』って寝転がって見ている人間、影響を受ける人間がいます。サンフォードでもアダム(ボリッチ)はとにかく練習の虫です。チーム練習が終わって、20分、30分と動いている。そうなると、そこに引っ張られる人間が何人かいる」

──まさに良く働く2割、なんとなく働く4割、働かない2割の法則ですね。

「いや、本当にそうです。アダムに引っ張られてモチベーションが上がる選手は多いです。でもアダムは孤立せず、そのアダムに皆がどんどん意見する」

──今、佐藤選手が日本に戻って来ていて、そういう米国のジムの真実を尋ねてくる選手はいますか。

「ハイ、います。今日も取材の前に、1人の選手と会って話していました。知らないで良い、悪いを判断してほしくないですね。知った上で、自分で選択してほしいです。知ることは凄く大切で、そこが前提にあってどうするのかを自分で決めれば良いと思います。

それこそサンフォードにいても強くならない人間はいるわけですしね。ホント、全ては自分で。その個人として、強くなるためにどん欲な選手がより良い環境にいることができるか。頑張っている人間が、精神的に厳しくならない環境は日本にいても創れるはずです。個々の気の持ち方で。

ヘンリーもカミも、グレッグも本当に素晴らしいコーチです。でもヘンリーは『俺たちはナンバーワンじゃない。ナンバーワンになるためにやっているんだ』と常に言っています。正直、設備面なんかは日本よりずっと整っています。でも、そこが一番重要じゃないことをコーチたちに教えてもらっています。

だから、あの場にいるだけ強くなれるとか勘違いはしないです。より良い環境に身を置くだけで、強くなれるなんて思わない。それは日本も同じです。でも、そういう指導者にどれだけの選手がついて行っているのかって……。

選手がやる気がいないと、指導してくれる人だってやる気はでないですよね。練習している選手が、その程度かって思われているようだと。本気度がトレイナーの方が上なら、そりゃ上手くいかないです。

個々のモチベーションの集まることで、全体のモチベーションができあがる。そのなかで、高いモチベーションを持つ選手が1人や2人なのと、10人、15人だとチームとしてのモチベーションが違ってくる。高い意識の者が突き抜けてしまうようじゃ強くなれないです」

──今日は本当にありがとうございました。MMAに限らず、全ての道において当てはまる話ばかりでした。

「海外のジムに行くから強くなるなんてことはないです。そのジムで何が行われていて、どういう状況なのか。海外が合わない選手、事情があって海外へ行けない選手もいます。

でも、国内にいても強くなれる。個でなく、チームがその選手を強くできる状況になれば……。もっとやらないと──もっと考えないといけないという風に常に意識する。この感覚が大切だと思います」

──だからこそ、個々の問題でもあるのですね。ここまで色々と考えている、そして分かっているとフルに練習できないもどかしさも人一倍でしょうね。

「まぁ、本当に練習はしたいです。でも、そこまで理解してくれているヘンリーが休めと言ってくれたので。今は休む時だと思っています。

ただ負けているままなので、勝つまではモヤモヤが続くので。このままUFCと再契約できても、それはチャンスをもらえるということに過ぎないです。とても大切なことですが、そこから勝たないと……。敗北って失敗ですよね。そこから何をやっていかないといけないのか、明確にはなっていますし……気合はめちゃくちゃあるので、練習に戻った時には爆発させます(爆)」

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Interview UFC カミ・バルジニ ブログ ヘンリー・フーフト 佐藤天

【UFC】帰国中の佐藤天に訊いた2020年と日米の違い─01─「30年の人生のなかでも最もタフな1年だった」

【写真】佐藤天こそ、日本を代表して世界と戦っているMMAファイターだ(C)MMAPLANET

日本人男子で唯一のUFCファイター、佐藤天。11月にミゲール・バエサに敗れ、この試合で負傷したこともありヘンリー・フーフトというMMA界を代表する司令塔の指示もあり、日本で休息の日々を送っている。

そんな一時帰国中の佐藤に2020年を振り返ってもらい、彼が米国に拠点を置く、何が日本と違うのかということを尋ねた。


──日本に帰国中の佐藤天選手です。今回の帰国理由とはどういったものなのでしょうか。

「僕のなかでは3連勝したら帰国しようという考えが頭にあって、このタイミングで日本に戻ってくるつもりはなかったです。ただ前回の試合で少しケガもあり、通常の練習ができないのなら今のうちに一度、日本に帰国しておけとヘンリー(フーフト)やカミ(バルジニ)に説得されたんです(笑)。

『リラックスする時間は必要だし、今がその時なんだ。家族や日本で応援してくれる人に会ってこい』って」

──佐藤選手の日常を見ている2人が言うなら、間違いないですね。

「『ちょっと休んだ方が良い』とも言ってくれましたね。もうケガの方も良くなってきていたんですけど、リフレッシュして来いという言葉に従いました」

──日本でリフレッシュできますか。

「落ち着けますよね。家族や仲間に会えるので。そこは落ち着くのですが、これだけ練習しない期間があると気持ち悪いです(笑)。ただフロリダにいても練習はできなかったので、もっと練習したいという気持ちは強くなっていたと思うし。やはりリフレッシュできています」

──日本とフロリダ、コロナに対する空気感は違いますか。

「日本の方がしっかりしています」

──そうですか。随分と緩んで感染者数も増えていますが、もう褌を締め直すことは個人の意思では難しいと感じていますが……。

「フロリダでは外でマスクをしていないですし、特に緩いのか……。車移動だし、空間も広いので日本とはやはり違いますね」

──日本も閉塞感はありますが、帰国した佐藤選手がゆっくりと過ごせていられるなら幸いです。

「そうですね、TRIBEとニック(末永)さんにご挨拶に行き……少し体を動かして、1月の第2週にはフロリダに戻るので、そこからまた全力でできるようにと思っています」

──世界が変わった2020年が終わろうとしています(※取材は12月30日に行われた)。佐藤選手はそのなかでもパンデミック後に2試合を戦いましたが、本当に色々あった1年でした。

「そうですね、自分の30年の人生のなかでも最もタフな1年になったと思います。常に前を向いてやってくることはできたのですが、振り返ると色々なことがあった1年です。

パンデミック前の2月にニュージーランドで対戦相手が体重を落とせず試合がなくなり、パンデミックが起こったなかで6月に勝ち、8月は自分の帯状疱疹が原因で試合ができなくなりました。そして……11月に負けた。

そこも含めて今後、プラスにはできる。これは口にしてはいけないことかもしれないですが、コロナウィルス感染の影響を受けたから色々とあったのですが、僕としてはコロナのことを忘れられるほどの日々を送ってきました」

──あれだけ周囲に感染者があっても!!

「ルームメイトで罹患しなかったのは自分だけですからね。1人が感染したので、違うルームメイトと検査に行って。そうしたら、僕は陰性でしたけど、一緒に受けに行った人間は陽性で(笑)」

──結局、何度PCRを受けたのでしょうか。

「13回ですかね。UFCで9回ぐらい受けて、フロリダでは無償で検査できるので、あとは個人的に検査をして」

──日本で罹患しないといっているのと、桁が違うところで感染していない。もう人として強いとしか考えられないですね(笑)。

「回りが皆、なっていましたね(笑)。11月の試合ではセコンドに就く予定だったショーン・ソリアーノも陽性になり、ラスベガスに入れなくなっちゃいましたしね」

──その状況でもコロナを忘れるほど集中している時間があったというのは凄いです。

「良いか悪いか……は分からないですが、MMAに集中できていました。だからこそ、11月の試合に勝たないといけなかったです。契約最後の試合でしたし、勝つのと負けるのとでは自分の置かれた状況はまるで違いますからね。

勝てば確実に更新できたけど、負けるともう運任せではないですけど、神頼みのような状態ですし。やってしまいましたね」

──大量リリースをUFCも宣言していましたし。

「まあ60人のカットということは、1階級に5、6人で。でも2勝2敗というのは普通に切られてもおかしくない戦績ですしね……。周囲の方にも心配を掛けましたし、自分も緊張の日々を送ってきました」

──現状、UFCと契約更新はなったのでしょうか。

「正式にサインはしていないですけど、明るい方向ではあります」

──それは良かったです。リリースされた時のことも考えることはありましたか。

「ハイ。ただ米国には残るつもりでした。米国に入れるビザが持てるところで戦っていくか、ビザがなくても3カ月いて日本に戻って、また3カ月フロリダで練習する。そういう選手もサンフォードMMAにはいくらでもいますし。それでも良いと思っていました」

──米国で戦っていこうと?

「日本で戦うということは、全く考えていなかったです。最悪リリースされたら、自分のモチベーションを保つためにもBellatorという選択はありました」

──ベラトールも、UFCに戻るための活動において選択肢に入るのですね。ベラトールには業界2位のステイタスはあるかと思うのですが……。

「ステイタスははなから求めていないです(笑)。だからUFCに戻るための選択ですよね。もちろん強い選手が揃っていますが、勝ち残ることに集中しないといけないですけど」

──Titan FCやLFAというのは頭になかったですか。

「選択肢としては、なくはないです。LFAは欠場が出た時に一番声が掛かるところですしね」

──つまりは米国ではUFCへの筋道があるということに通じてきますね。

「日本にいると見えなくなりますからね。自分はパンクラスで戦っている時に、フロリダで練習をして米国に触れることができて良かったと思います。今から考えると、あの時点で目標設定が明確になっていたので。

本当に色々な国から選手が集まっていて。文化も常識も全然違う。でも、皆が覚悟を持ってきている。アダム・ボリッチもハンガリーの友人がカンパをしてフロリダに来た。国籍も人種も、考え方も違うけど、皆が同じ方向に向いています。

僕も最初にフロリダで練習した時に、ここを上回る環境は日本にはない──と思ったんです。それは設備とか、ジムの環境ではなくて練習している選手たちのモチベーションという部分で……」

<この項、続く>

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Interview UFC ブログ ヘンリー・フーフト 佐藤天

【Special】フロリダの佐藤天─02─「いつもより時間が割けることがある。現状に対してポジティブで」

Sato Takashi【写真】今や──笑顔をアップすることも憚れる世の中になりつつあるが、笑顔こそ忘れてはならない必要要素かと (C)MMAPLANET

非常事態宣言が出た米国。10人以上の集会が禁止され、飲食店もデリバリー以外は営業できず、移動の制限という判断も取られてきた。そんな状況で、MMAファイターがどのような生活を送っているのかを佐藤天に尋ねたインタビュー後編。

新型コロナウィルス感染者が世界最多となった米国は、最先端のMMAトレーニングが積める場所だ。MMAファイターとしてより良い環境を手にすることを念頭にフロリダのサンドフォードMMA(ハードノックス)に拠点を移した佐藤天は、ジムが閉鎖され、望んでいた練習環境を失った状況で何を想い、日々を過ごしているのか。

ヘンリー・フーフトのリーダーシップとチームメイトへの信頼感、リスクを減らす行動について話を引き続き訊いた。

<佐藤天インタビューPart.01はコチラから>


──それがUFC249の代替大会だけでなく、それ以降のことも考えているようですね。

「実際にUFC249をやると言い切ったことでダナ・ホワイトも批判を受けているようですし、どうなるのか……」

──ところでプロファイターは決して安くない指導料を支払っていますが、この間は稼ぎも途絶えるわけですし、佐藤選手の場合はどうなっているのですか。

「そこは僕は2月のニュージーランドの試合が飛んだ時点で、ヘンリーが『試合がなくなったし、次の試合までジムにお金は入れなくて良い』と言ってくれて」

──おぉ。素晴らしいですね。

「2月分さえ受け取らないって言ってくれましたし。この状況でもヘンリーは皆のところを回って顔を見て話す。素晴らしいリーダーで、皆がついて行こうと思える人です。だから、ポジティブな人間が選手にも多いです。ヘンリーだってジムの人間に会いに行くことはリスクがあるのに、統率してくれようとしています。

『人数に限りがあるし、試合が決まりそう選手をピックしていく。ここに関しては不満を言わないで欲しい。体調に不安のない選手で、他との接触を避けている選手はプライベートで練習を見ることもできるようになると思う。とにかく今はこういう状況だから、我慢できることをしてくれ。そして皆で乗り越えよう』と」

──もう、それはサンドフォードMMAだけでなく世界中に通じる金言ですね。右に倣えのリモートワークで、何も統制できないトップもいるようですからね。

「街中は怖いから1人でいようという風な人が多いようにも感じられます。そんななかでヘンリー自身が、自分がデキることをやってくれる。なら、自分もと思います。現実を見て、悲観もせず、素晴らしいです。

僕もルームメイトとチームメイトを信頼していますし、家族や一緒に住んでいる人以外とは接しないようにと言われている状態で、会っているのはルームメイトと近くに住んでいるチームメイトだけです。それ以外の人とは関わり合いを持っていないです。外に出るのも、車で買いだしに行くくらいですしね」

──米国もUFCやBellatorのファイター以外は、MMAだけで生活できないのは日本と変わらないと思います。そういう選手たちは生活の危機でもあるわけですよね。

「さっき言ったバーで働いているトムは、焦ったりしていないですね。家でアクセサリーを作って、『売れないかな?』ってやっています(笑)。前向きな人間と、極端に怖がっている人がいて──自分の回りはポジティブな人間が多いです。人とは関われないけど、何とかして食っていくしかないという風で。

僕も他の選手と変わらず、金銭的には厳しいところがありますけど、やることをやるだけですね。悲観的にはなっていないです。日本で自分を応援してくださっている人たちの方がもっと大変になってくるだろうし。

試合ができない状態がいつまで続くのか不安要素ではありますけど、自分でコントロールできないことなので悲観しているわけではなく、前向きに毎日笑顔で過ごせています。練習も課題を見つけて、やっていますし」

──自宅トレだと打撃中心になるかと、柔術はともかくレスリングをすることは難しそうですね。

「レスリングはなかなかできないです。そこはストレスというか……組み技がしたいですね」

──米国から日本の今回の取り組み方への批判がよく聞こえるようになってきました。今フロリダにいて佐藤選手は、家族のいる日本の有りようをどのように見ていますか。

「少し、行動するのが遅いのかとは感じます。友達と話したりしますけど、一つ一つの対応が徹底していないというか。ただし自分が日本に残っていたら、やはりジムの選手とは少人数で練習していたと思います。

と同時に日本にいると、どうしても移動手段が電車になるので、そこは考えないといけなかったでしょうね。なのでジムに行かなければ練習ができないという風にならず、自分で工夫することも必要になってくるかと思います。

色々とできることはあるはずです。スパーリング、組み技ができなくなるなかで、いつもより時間が割けることがある。そういうことに重点を置いて、時間を掛けても良いはずですしね。こっちにいても、家でしか練習できないので、そういう現状に対してポジティブでいたいです」

──なるほどぉ。本当にその通りですね。日本と違う日常にいる佐藤選手の言葉で、日本にいる格闘技従事者も考える材料を貰えたと思います。今日はありがとうございました。