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【SOGI】岩本健汰がメインで、キース・クリコリアンを相手にSOGIウェルター級王座防衛戦!!

【写真】今や岩本、アンドリュー・タケット、ジョセフ・チェン絡みのグラップリングは、どれも超楽しみでならない (C)MMAPLANET

6日(土・現地時間)、ニューヨーク州ホーポージにある10th Planet ロングアイランド道場にて、SOGI(Submission Only Grappling Invitational)主催の「Cinco de Mayo: Iwamoto vs Krikorian」 が行われる。
Text by Isamu Horiuchi

イベント名にあるように、この大会のメインには岩本健汰が出場し、強豪キース・クリコリアン相手に自身の保持する同団体ウェルター級タイトルの防衛戦を行う。グラップリングの本場北米の大会において、日本人選手の試合がメインイベントとしてフィーチャーされるのは、2013年6月9日に行われたMetamrois02のクロン・グレイシー✖青木真也以来、実に9年11カ月振りの快挙。

さらにイベント名に日本人選手の名前が入るのは前例にないことだ。誇張抜きに、日本グラップリング界における歴史的快挙と呼べるこの試合の見所を紹介したい。


SOGIは、2019年から10th Planet ロングアイランド支部が母体となって開催されているグラップリングイベント。一流選手を招待した階級別の王座決定トーナメントやスーパーファイト、一般の参加者向けの初心者や中級者の部の試合も行っている。10th Planet支部だけあり、ルールは当然総帥エディ・ブラボーが発案したEBIルール(本戦はサブミッション・オンリーで、決着がつかない場合はオーバータイム=OT)が採用され、本戦の試合時間は10分だ。

ちなみに今回の大会名のCinco de Mayoとはスペイン語で5月5日を意味し、1862年にメキシコ軍が侵略を試みたフランス軍を撃退したことを祝う日だが、メキシコ本国よりも米国在住のメキシカンの間で重視されているようだ。もっともこの大会が行われるのは現地の5月6日であり、このようなアバウトな大会名の付け方も面白い。

さて、岩本は昨年のADCC世界大会77キロ以下級に出場。2連覇中の優勝候補筆頭だったJT・トレスと初戦で当たり、延長レフェリー判定で敗れたものの、シングルレッグで最初にテイクダウンを奪ったことでその存在を世界に知らしめたのは記憶に新しいところだ。

この大健闘から3ヶ月後の12月、岩本はSOGI主催の大会のウェルター級16人トーナメントに出場。他に有名選手がいなかったこともあり、4試合ともトップゲームで圧倒的な強さを見せて優勝を飾った。初戦と決勝戦は相手に粘られてOTに持ちこまれたものの、どちらもまず相手の攻撃からエスケープを果たした後、自分の攻撃のターンでバックからのチョークを決めて勝利し、SOGI同級王座に就いた。単身本場で戦い、自らの腕一つで名を為す。まさに唯一無二の日本人ノーギグラップラーが岩本健汰だ。

相手のクリコリアンは、ブギーマンことリッチー・マルティネスが率いる10th Planet サンディエゴ所属の軽量級トップグラップラー。昨年のADCC世界大会に向けた東海岸予選では、66キロ以下級準決勝でジアニ・グリッポにチョークで一本勝ちを収める等6試合を勝ち抜くも、決勝でコール・アバテに0-10で敗戦。

続く西海岸予選では、決勝でジョシュ・シスネロスを内ヒールで仕留めて7試合を勝ち抜いて世界大会出場を決めた。世界大会では、3位入賞したパトことディエゴ・オリヴェイラにストレートレッグロックを極められて初戦敗退としている。

そのクリコリアンは、今年3月のSOGI大会にて12月に岩本と決勝で戦ったアンドリュー・ソラノとワンマッチで対戦。引き込んで得意のニーシールドを作ると、下から足を取って崩し、3分少々でバックからのチョークを極めてみせて今大会における岩本への挑戦権を得た。

大会メインイベントに相応しい、世界レベルのグラップラー同士の好カードとなったこの試合。両者とも全局面で優れた技術を持つ万能型選手だが、戦い方は少し異なる。かつて岩本は下からの足関節狙いを主体に試合を組み立てていたが、現在は上からの攻撃を重視する。

日本でMMA選手たちと練習して強化したテイクダウンに加え、テキサス州のBチームにてトップゲームの最新技術をアップデート。上から左右に角度を付けて動き、重いプレッシャーをかけ続けて相手の足を疲弊させ、最終的に上半身を制する術に磨きをかけた。こうして相手を制圧する戦いが、現在の岩本の形だろう。

対するクリコリアンも、もともとレスリング出身だけあって立ちの攻防を恐れず挑む選手。スナップダウンやアームドラッグ、シングルを積極的に狙う場面もしばしばだ。が、引き込みがマイナスにならない状況では自ら下になり、ニーシールド等から積極的に相手の足を狙ってゆくことが多い。前述のADCC西海岸予選でも、7勝のうち3勝は内ヒールによるものだ。

体格に勝る岩本からテイクダウンを奪うのが難しいと見た場合、クリコリアンの方から引き込んでくる可能性は大いにある。その時には、岩本がそのトップゲームをもってクリコリアンのガードワーク、あるいはシールド&フレームを突破できるかが最大の見所となる。

ここで特筆すべきは、ADCC西海岸予選準決勝における、クリコリアン対デミアン・アンダーソンの試合内容だ。岩本が学んだBチームの主要メンバーの一人であるアンダーソン相手に引き込んで足を効かせたクリコリアンは、左右に動いて足を捌きにかかるアンダーソンにパスを許さず、下から足を絡めて得意の足関節で攻撃、最後には崩し切って迅速のバックテイクを決めて快勝したのだ。

果たして岩本は、最先端のパスガードの使い手をも凌駕するクリコリアンの足を捌き切り、制圧することはできるのか。もし今回、クリコリアンを完全に押さえ込むかバックを制する場面が見られたならば、それは岩本が世界の頂点にさらに近づく大いなる一歩と考えていいだろう。

その上さらに岩本が本戦で一本を奪うようなことがあれば、階級差こそあれ快挙と言える。ノーギの本戦10分間にて、世界トップグラップラーを極めるのは至難の業だからだ。逆の言い方をすれば、万能型ハイレベルグラップラー同士によるこの試合、どちらが優勢に進めようが試合がOTにもつれ込む可能性は大いにある。

もしそうなれば、昨年11月にSOS(サブミッション・オンリー・シリーズ)のミドル級トーナメント出場した際に、決勝で自分より遥かに体格で勝る相手を本戦で圧倒しながら極めきれずにOTで敗れた岩本より、おそらく常日頃からOTの研究をし、現にエステヴァン・マルティネスのような強豪にOTで勝利したこともあるクリコリアンの方が有利という見方もできる。

そう考えると今回の岩本には、OTを避けるためどこかで普段の自分のスタイルを崩し、極めを狙いにゆくという選択もあるのかもしれない。以前足関節師として鳴らしていただけに、それを試みるスキルも十分に持っている。

本人がどのような戦い方を選ぶにせよ、岩本にとってこの試合は昨年のADCC本戦のJT戦、昨年末のノーギ・ワールズと今年2月のUnrivaled02におけるタケット兄弟戦に続き、世界レベルのノーギグラップラーと真っ向勝負する貴重な機会となる。

グラップリング未発展の日本を拠点に、道無き道を一人行く勇敢な若者がさらにステップアップするための大きな糧となることを祈りつつ、この試合を見届けたい。

■視聴方法(予定)
5月7日(日・日本時間)
午前7時00~FLO GRAPPLING

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o UFC   アマンダ・ヌネス ガブリエル・ソウザ ケネディ・マシエル ジオゴ・ヘイス ジョシュ・シスネロス ディエゴ・オリヴェイラ ファブリシオ・アンドレイ マイキー・ムスメシ

【ADCC2022】66キロ級決勝 失点0で優勝。最軽量級世界一はベイビーシャーク=ジオゴ・ヘイス

【写真】全試合一本という派手な勝ち方ではないが、失点0も胸を張ることができる優勝だ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第11 回は66キロ級決勝戦=ジオゴ・ヘイス×ガブリエル・ソウザ戦の模様をお伝えしたい。

ADCCルールに見事に合わせた戦いぶりで決勝進出を果たしたジオゴの相手は、昨年のWNOチャンピオンシップでマイキー・ムスメシからパスを奪って準優勝に輝いたガブリエル・ソウザだ。

ソウザは1回戦、以前ノーギでファブリシオ・アンドレイを肩固めで仕留めるなど、強烈な極めを持つフアン・アルバランカと対戦。

序盤強烈にギロチンで絞め上げられ、落ちたと勘違いしたレフェリーに試合を止められて一度は負けを宣せられた。が、抗議が実り試合は再開。終盤にスクランブル合戦を制して2点を奪取し、アルバランカが動いたところでバックを奪って5-0で勝利した。

2回戦は、初戦でAJ・アガザームに勝利したジェレミー・スキナーと対戦。開始早々にパスを奪ったソウザは、そのまま上から攻め続けて、最後はマウンテッド・トライアングルで圧勝した。

準決勝のソウザの相手は、昨年ノーギで3度当たってことごとく惜敗している天敵のパトことディエゴ・オリヴェイラ。パトは1回戦で北米予選王者のキース・クレコリアンをストレートレッグロックで極めて、道着を脱いでも極めの強さを見せつけた。

そのパトは2回戦で、前回優勝のケネディ・マシエルとのマッチアップに挑んだ。

深くタイトに組んだ外掛けから、ヒールのようにかかとをワキに引っ掛けず、上腕で足首をすくう形でヒザを捻るZロックを極め、絶好調で準決勝に上がってきた。

そして迎えた準決勝──ソウザは延長戦のレスリング勝負に持ち込んでパトを疲弊させ、レフェリー判定で勝利。ジエゴと同じく、ADCC世界大会初出場にして決勝進出を決めたのだった。


<66キロ以下級決勝/20分1R>
ジオゴ・ヘイス(ブラジル)
Def.3-0
ガブリエル・ソウザ(ブラジル)

両者の立ちの攻防がしばし続くと、客席から「ベイビー・シャーク・ドゥ・ドゥ・ドゥ・ドゥ~🎵」とがなりたてる輩が現れる。このベイビーシャーク・ソングは言うまでもなく童顔のジオゴのニックネームの元ネタであり、ここ数年幼児に大人気の歌だ。

そこで実況解説陣も「5歳以下のファンはみんなベイビーシャークを応援しているはずさ」「僕の6歳の息子も全選手のなかで彼が一番のお気に入りなんだ」とコメント。初出場の若手ブラジル人同士、北米の観客にはなかなか感情移入しにくい試合でも楽しみ方はある。

2分半経過した頃、ジオゴが素早く小内からドライブしてテイクダウンに成功。加点時間前なので無理せず下になったソウザが内ヒールを仕掛けると、回転して逃れるジオゴ。それに乗じてソウザが上を取ると、ジオゴも下にステイし、得意の右に絡むハーフを作った。

やがてジオゴがクローズドから左足に絡んで崩すと、両者足関節の取り合いに。どちらも極めさせず、やがて勝者はスタンドに戻った。

6分経過時に、ソウザがアームドラッグへ。すぐに反応したジオゴが逆にカウンターのドラッグ返しからバックに回る。

襷を取り、足を一本入れるジオゴ。しかしソウザも動き続け、体をずらして正対して立つことに成功する。ここで下になったジオゴは、立たずに下から左足に絡む。加点時間帯前なので、無理にスクランブルを仕掛けなくても良いという考えのようだ。

その後ジオゴは下から足を狙い、ソウザが対応する展開が続く。ジオゴがトーホールドを仕掛けると、ソウザが回転して逃げて上下が入れ替わる。やがてダブルガードからお互い足を狙い合う状態となり、試合は10分を経過。加点時間帯に入った。

しばらくすると両者とも立ち上がる。様子見段階は終わり、世界一の座を賭けた本格的なポイント戦がここから開始だ。

お互い譲らない攻防が続くなか、ジオゴが一瞬のアームドラッグから小内につなげてソウザを倒す。本戦と違いすぐに距離を取り、背中を向けて立とうとするソウザ。ジオゴすぐその背後に回る。

ソウザの背中に登ってシングルフックと襷掛けを作るジオゴが、両足フックを狙う。何とか手で足を振り払うソウザだが、ジオゴは襷を双差しに切り替えてソウザのワキを開けさせ、ついにフックを入れて3ポイントを先制した。

残り7分で大きなビハインドを背負ってしまったソウザは再び手を使ってジオゴのフックを解除すると、腰を上げて頭を下げてジオゴを落としにかかる。頭で倒立するような状態でしばらく粘っていたジオゴだが、無理せず下に。得意の右に絡むハーフを作った。先制点を奪った以上、あとは失点せず戦ってゆけばいい。

ジオゴのハーフの前に攻め手を作れないソウザは、一旦離れてのパス狙いへ。が、ジオゴは柔らかい動きで対応。逆に下からソウザの左足に絡んで崩しては、足狙いを見せる。

深い50/50を作ったジオゴは、内ヒールを仕掛ける。特に極める必要はなく、相手に防御を余儀なくさせ時間を稼ぐのにきわめて有効な手だ。ソウザは立ち上がって組まれた足を押し下げて解除するが、ジオゴはインバーテッドからまたしても足を絡めてゆく。

その後、ソウザは横に回ってのパスや上から飛び込んでのバック狙いを見せるが、その度にジオゴは下から柔らかい動きで危なげなく対処を続けた。終盤も足と両腕のフレーム使ってソウザにパスのチャンスを与えないジオゴは、残り数秒のところで距離を取って素早く立ち上がる。ここでソウザも万事休すと悟ったか、最後の追撃はせず。弱冠20歳のジオゴ・ヘイスが初出場初優勝の快挙を成し遂げた。

ケニー・フロリアンから勝利者インタビューを受けたジオゴは、童顔の見た目よりさらに幼い声で(たまに指摘されることだが、ジオゴの英語はUFC女子バンタム&フェザー級王者アマンダ・ヌネスのそれをぐっと拙く少年ぽくした印象だ)、「最高の気分さ。夢がかなったよ。ここまでの道のりは楽じゃなかった。僕たちはみんな身を練習に捧げてきたんだ。チームメイトのファブリシオやミカ、そして師匠のメルキ・ガルバォンがいなければ僕はここにいない、彼なしに優勝など不可能だったんだ。全てを僕らに捧げてくれた」と語った。

その後メルキがマットに登場して、ジオゴとハグ。愛弟子の快挙に感涙にむせぶ師の横で、ジオゴは「この人は僕の父であり、友人であり、コーチであり、師匠だ」と改めて想いを語り、感動のエンディングとなった。

今大会の4試合、一切の失点をせず、ことごとく後半のレスリング、スクランブルの攻防で差を付けて勝ち切ったジオゴ。テイクダウンされてもポイントを許さず立ち上がり、徐々に相手を疲弊させてゆくレスリングの持久力で上回った形だ。

そんな戦い方を可能にしたのは、柔らかい動きで体力を消耗せずに、相手に得点を奪う隙を与えない優れたガードワーク、そして各局面で不要なリスクを犯さず、試合に勝つための最適な方法を選び取ることのできる高いファイトIQがあるからこそだ。

世界最高峰の選手が集ったこの最軽量級にて、ADCCルールで勝つためのスキルを、技術的にも精神的にも最も高いレベルで持ち合わせていたのが、ジオゴ・ヘイスだったといえるだろう。

なお3位決定戦は、延長までもつれ込んだ末、パトことディエゴ・オリヴェイラがジョシュ・シスネロスからペナルティ1差で勝利。こちらも初出場でのメダル獲得となった。

66キロ級リザルト
優勝 ジオゴ・ヘイス(ブラジル)
準優勝 ガブリエル・ソウザ(ブラジル)
3位 ディエゴ・パト・オリヴェイラ(ブラジル)

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o   ゲイリー・トノン ジオゴ・ヘイス ジョシュ・シスネロス ブログ

【ADCC2022】66キロ級準決勝 赤子鮫、シスネロスとのアブダビ流レスリングマッチを制し決勝へ

【写真】大会前の予想よりも、レスリング力が上がっていたベイビーシャーク。盟友アンドレイ戦、この準決勝でも立ちレスの成長は顕著だった(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第10 回は66キロ級の準決勝=ジオゴ・ヘイス×ジョシュ・シスネロスの一戦の模様をお伝えしたい。


2回戦で親友ファブリシオ・アンドレイとの大一番を制したジオゴの準決勝の相手は、米国の新鋭ジョシュ・シスネロス。

一回戦では、別人のように筋肉が肥大したイサン・クレリンステンと対戦し、延長でマウントを奪取。最後は後ろ三角絞めの体勢から腕を伸ばして一本勝ちを収めている。

シスネロスは2回戦で初戦でゲイリー・トノンからスクランブルでバックを奪い、最後のヒールも凌ぎ切って殊勲の星を挙げたサム・マクナリーと対戦。

ダイブしての三角絞めから腕を伸ばす等見せ場を作った末、延長レフェリー判定で激戦を制して準決勝進出を決めている。

<66キロ級準決勝/10分1R>
ジオゴ・ヘイス(ブラジル)
Def. 2-0
ジョシュ・シスネロス(米国)

スタンドでフェイントをかけ、足を飛ばし合う両者。2分半経過時点で、ジオゴがフェイントからシスネロスの左ワキをくぐる。正対しようとするシスネロスにボディロックし、小外掛けからジオゴが浴びせ倒して上になった。

一旦シスネロスのクローズドガードに入ったジオゴだが、すぐに立ちあがる。シスネロスは下から足を掴んでのスイープを試みるが、ジオゴは距離を取る。

さらにスタンドの攻防が続き、シスネロスが素早くシングルに入りジオゴの左足を捕獲。振りほどこうとするジオゴだが、シスネロスは許さず距離を詰めて上になる。時計を見て加点時間帯に入っていないことを確認したジオゴは、無理せず下にステイ、右足に絡んでゆく。

やがて試合は加点時間帯に。下から足を狙ったが防がれたジオゴは、シッティングから素早く右足を抱えてのレッスルアップを狙うが、シスネロス距離が距離を取り、両者はスタンドに戻った。

加点時間帯になってから初めてのスタンドの攻防、一つのテイクダウンが勝敗を左右する状況下だ。手四つを組んだ両者が頭を付け合うなか、素早く飛びこんだジオゴ。深く入ってのニータップでシスネロスを豪快に倒すと、すぐさま三点で体重をかけてスクランブルを許さずにポジションを固定し、大きな2点を先制してみせた。

一度はクローズドガードを取ったシスネロスは、それを開けて右にハーフで絡む。さらに下からジオゴの足に絡むが、ジオゴは立ちあがって対処する。次はまた右に絡むシスネロスだが、ジオゴはその手を押し下げて防御する。残り1分40秒の時点で、このままでは埒が明かないと踏んだかシスネロスは立ち上がった。

スタンドからテイクダウンを仕掛けるシスネロスだが、ジオゴは距離を取り防ぎ、逆に距離を詰めて四つの体勢に。ここから足を飛ばすシスネロスだが、ジオゴのバランスは崩れない。次にシスネロスはシュートインを試みるが、ジオゴは安定したフットワークで防ぐ。

残り20秒。シスネロスは素早くシングルに入ってジオゴの右足を取るが、ジオゴは側転するように抜き、逆にテイクダウン狙いを仕掛けてゆく。結局、最後までスタンドでシスネロスに付け入る隙を与えなかったジオゴが2-0で勝利した。

これまでの2試合同様、加点時間帯におけるレスリング・スクランブルの攻防を制したジオゴの勝利。全局面で高い技術を持つ上に、不要なリスクを犯さず体力も消耗しない試合運びで、要所でポイントを取りきるレスリング力に優れている。ADCCルールに対する抜群の適性と、童顔に似合わない高いファイトIQを再び見せつけた20歳が、初出場にして決勝進出を果たした。

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MIKE MMA ONE ONE Championship WNO Championships   ガブリエル・ソウザ ケイド・ルオトロ コール・アバテ ジオ・マルチネス ジョシュ・シスネロス デミアン・アンダーソン マイキー・ムスメシ

【WNO Championships】レポート─01─波乱続出、ライト級準々決勝~準決。ファイナルはソウザ✖ケイド

【写真】準決勝でアバテを下し、ドヤ顔のソウザ(C)CLAYTONE JONES/FLOGRAPPLING

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されたWho’s Number One Championships。ライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメント──は2021年グラップリング界の最大のイベントとなった。

WNO Championshipsレビュー、第1回はライト級準決勝までの痕跡を辿りたい。
Text by Isamu Horiuchi


ライト階級は1回戦から波乱続出となった。まず、優勝候補大本命と思われたマイキー・ムスメシが、当初は補欠扱いだったガブリエル・ソウザにまさかの一本負け(別稿で詳述)。

(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

さらに、準決勝におけるムスメシとの因縁の再戦が期待されていたジオ・マルチネスまでも1回戦敗退。

土壇場で代打出場が決まったAOJの16歳、コール・アバテと対戦したマルチネスは、序盤から素早く力強いアバテの下からの足関節の仕掛けに防戦を強いられる。さらに上から強引に腕を取りに行ったところで、体をずらされてバックを許してしまった。結局最後までアバテの足狙いに手を焼き、攻め手を見つけられないままマルチネスは判定0-3で完敗した。

(C)CLAYTONE JONES/FLOGRAPPLING

かくて伏兵同士の顔合わせとなった準決勝では、ソウザとアバテが一進一退の攻防を展開。

前半はアバテが下からの足関節の仕掛けでペースを握る。が、後半はパターンを読んだソウザが徐々に上からのプレッシャーを強める展開に。結局、途中内ヒールを深く入れる場面も作ったソウザが、スプリット2-1で判定をものにして決勝進出した。が、15分間を通して攻勢に出る場面が多かったのはアバテの方だっただけに、異論を唱える声も多く聞かれたジャッジングだった。

(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

もう一方のブラケットの1回戦では、ムスメシ本人が最大のライバルとして名前を挙げていたケイド・ルオトロが、今年のアブダビ・ワールドプロ大会覇者であるパトことディエゴ・オリヴェイラと対戦。

序盤にパトの下からの迅速の抱え十字で腕を伸ばされかける場面もあったものの、その後は持ち前のノンストップ・パス攻勢で徐々にパトを削ってゆく。残り2分でついにインヴァーテッドガードを突破してパスに成功したケイドは、すぐにダースチョークを仕掛け、鮮やかな一本勝ちを収めた。

(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

もう一つの1回戦は、やはり注目株のジョシュ・シスネロスが代打出場のデミアン・アンダーソンと相対した。

下から足を絡めてくるアンダーソンの仕掛けを、素早い反応のダースチョーク狙いで切り返したシスネロスは、うつ伏せで耐えるアンダーソンのバックへ。そのまま右腕をとって腕十字を極め、2分弱で会心の勝利。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

続く準決勝──ケイドとシスネロスによる注目の新世代対決──では、残念なアクシデントが起きてしまう。

シングルを仕掛けたシスネロスに対し、ケイドがスピード感溢れるカニバサミで切り返すと、シスネロスは不自然な形で崩れてしまう。ここでレフェリーは即座に試合をストップすると、倒れこんだシスネロスが痛みに絶叫し、それを見ているケイドも頭をかかえてしまう状況となった。

スロー再生を見ると、シスネロスが重心をかけた右足のヒザ下に、横から勢いよくケイドの上半身がぶつかっている。これにより、右ヒザが曲がらない方向に大きな力が一瞬でかかってしまったようだ。やがて立ち上がり歩けるようになったシスネロスだが、負傷棄権によりケイドが決勝に進出。本命のムスメシ、新星アバテを倒したガブリエル・ソウザと決勝を争うことになった。

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MIKE MMA WNO Championships ケイド・ルオトロ ケネディ・マシエル コール・アベート ジョシュ・シスネロス デミアン・アンダーソン ブログ マイキー・ムスメシ 堀内勇 高橋サブミッション雄己

【WNO Championships】高橋サブミッション&堀内勇がWNOを深掘り。ライト級本命はマイキー

【写真】プロシューターでありながら、グラップリングが本職の高橋サブミッション雄己とMMAPLANETグラップリング・ライターの堀内勇氏。こんなに楽しいグラップリング論は、そうそうない(C)HIDEYA WADA & ISAMU HORIUCHI

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されるWho’s Number One Championships。男子ではライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメントが同大会では行われる。

世界のベストグラップラー、新進気鋭の若い選手が一堂に会す大会。その中から3階級を日本のグラップリングをネクストステージに引き上げようという高橋サブミッション雄己、そしてMMAPLANETでグラップリングシーンを執筆中の堀内勇氏に水先案内人となってもらった。


──誠に勝手ながら、この興味深いトーナメントですが、5階級のうちから3階級にピックして話していただこうかと。

高橋 そのつもりといいますか、女子2階級は予習する時間がなかったです(笑)。

堀内 正直、僕も女子はどうすれば良いのか分からないので……オッズがあれば、なんとかなるかと思っていたぐらいでして(苦笑)。

──外れるのは女子2階級になりますか。ヘビー級でギャビ、ストロー級でエレクトリックチェアーを使わせると男女通してナンバーワンかと思われるグレース・ガンドラムなど興味深い選手も出場していますが。

高橋 確かに10th Planet柔術で括れば一番完成度が高く、グラップリングとして成立させているのはグレースですね。そこは楽しみなんですが、いかんせん男子3階級と比べると、興味深さで差は出てしまいます。

──今大会はそれだけの面子が揃っているということですね。では、男子ライト級から見所をお願いします。

高橋 道着での強さは当然として、ここ数カ月のノーギの活躍を見てマイキーが優勝候補だと思います。そもそもルースターやライトフェザー級の選手なので、体重が足らないのか。そこだけですね、不安要素は。マイキーに肉薄するかと思っていたケネディ・マシエルが欠場になってしまったのが、残念です。

──ケネディがマイキーに肉薄するという予想は、どのような理由からだったのでしょうか。

高橋 体格差と、マイキーは下から攻めると思うので取り切れなかった場合はWNO判定では上の人に付きがちなので、もしかしたらというのがあるかと思っていました。

堀内 もうケネディは居なくなってしまっていたので、頭から抜け落ちていましたが、絶対にマイキーが中心になると思っています。そこで個人的に面白いとおもっていたのが、ケイド・ルオトロがダナハー門下だったイーサン・クレリステンと戦い、足関節を全てベリンボロに切り返し、最後はダースで勝ったじゃないですか。

(C)CLAYTON JONES

マイキーも最近、足関節で勝っている。

じゃあケイドのベリンボロはマイキーに通じるのか。それを考えていたら、高橋選手が「足の掛け方によってベリンボロが掛けやすくなったり、掛けにくくなる」ということを言われていて……。ならマイキーの足関節というのは、カウンターのベリンボロに対する再カウンターになっているのかと。

高橋 そこ、自分が足関全盛期論といって自論を唱えているところなんですけど。全盛期があるからにはそこに至る黎明期があり、過渡期があり、成長期がある。黎明期と僕がしているのが、ダナハーとかエディ・カミングスがサドルロックで逆足を抱えて内ヒールをギュッとやっていた頃がなんです。

──!!

高橋 過渡期にあたるのは、それが皆に流布してきた時代。クレイグ・ジョーンズやニッキー・ライアンが座り込んでバタフライガードからサドルでバンバンと取る選手が増えてきた時期です。

(C)MIKE CALIMBAS

その次に出てきた流れとして、サドルロックとか外掛け外ヒールにベリンボロでカウンター。

クレイグ・ジョーンズがカイナン・デュアルチに破れたりしている。こないだもタイ・ルオトロとクレイグの試合がありましたが、足関節もベリオンボロの攻防にならなかったです。

堀内 あの時、クレイグが足関節に出なくて。

高橋 自分もその残念さを感じつつ、クレイグはベリンボロを驚異に感じているんだと思ったんです。

堀内 ああなるほど、ミドル級の話になってしまいますが、クレイグは『足関はいつもやっていてつまらないから、今日は違うことをやった』と言っていましたが、高橋選手の見立てでは返されることを経験して、一歩上を行ったということですね。

それにしてもダナハー流が足関黎明期とは。僕らオールドファンからすると、黎明期の足関節技師というと佐藤ルミナ……いや藤原組長とかになっちゃいますよ。

──確かにダナハーとサドルは、我々にとっては新時代の幕開けでしたからね。

堀内 それを黎明期と捉える、高橋選手のその感性が最先端ですね。

高橋 いえ、僕はそれ以前を知らないだけなので……。

──その最先端の見立てでいくと、ベリンボロを察知して足関節を仕掛けない。となると、また新しい潮流が出てくるということですね。

高橋 サドルを組みたい人達もクレイグや立ち技をしたり、ニッキー・ライアンがレッスルアップからリバーサルという風にトップゲームを考えて始めている。そこが新しい潮流になるのか……。ただ足関節軸でいうと、サドルや外掛けをするから反転されてベリンボロの形にハマるので、それをしないと良いということでマイキーはKガードからの50/50を使っているのかと。

──そこが堀内さんの言われた足関節へのカウンターのベリンボロを封じ込める再カウンターだということですね。結果、ミスなく守れる人が勝つということでしょうか。

高橋 その節は得にWNO判定だとあるかもしれないですね。

──ここまでのお話で、実はマイキーが最先端かということになるかと思うのですが、ライト級の対抗馬は誰になるでしょうか。

(C)F2W

高橋 マシエルに2勝1敗で勝ち越ししているジョシュア・シスネロスです。

若さも相まって、もっとノビシロがあるなら面白いかと思います。しかも彼、パン柔術では道着でパウロ・ミヤオに勝っていますよね。メチャクチャ上質な道着有りの柔術で勝てて、ノーギでもADCC準優勝のマシエルに勝つ。シスネロスには期待したいです。

堀内 僕もシスネロス推しです。マシエルとの試合でも最初の試合は逆転負けこそしたもの、その前にはニーカットパスからワキをすくって腕を取ってクルスフィックスに持っていき、そこからキムラをほとんど極めかけていたし、最後の最後に大逆転負けするまでシスネロスが圧倒していました。2試合目はマシエルが上から攻めたのですが、シスネロスがキムラをまた取りかけていた──自力でマシエルに優っていました。

──WNOはこれまでワンマッチでしたが、今回は2日間のトーナメントです。その辺りのマネージメント能力も問われるのではないでしょうか。そういうなかでマイキーが、ジオ・マルチネスに対して意識過剰といえる感情的な態度を取っているのは気になります。自爆すらしてしまいそうな、ヒステリックさを感じました。

堀内 丁寧な話し方の中に狂気を孕んでいるように見えました。トーナメント前にも「僕はブレイキング・メカニズムを徹底的に解剖してきた。ジオ・マルチネスとの試合で僕はダークサイドに入って、今はその真っ只中にいる。昔と違って、壊すことは全く躊躇しない」とか言っているんですよ。

──怖い……。いずれにせよ、ライト級は本命がマイキーで、対抗がケイド・ルオトロとシスネロスといったところでしょうか。

堀内 あとイーサン・クレリステンの欠場で代役出場になるデミアン・アンダーソン、ダナハーの紫帯ですが、結構強いです。先月、コンバット柔術バンタム級王者のリチャード・アラルコンをキムラで倒して、ガブリエル・ソウザにもエメラルドシティ・グラップリングで内ヒールで勝っています。決勝はジアニ・グリッポに負けたのですが、オーバータイムでほとんど互角でした。紫帯とは思えない選手なので、大穴としては面白いです。

──コール・アベートもそういう意味では楽しみでないですか。

堀内 メンデス兄弟みたいな、いかにもAOJ的な柔術で、普通に凄く強いです。15歳、どんどん若い選手が出てきていますね。

高橋 それでも、僕はブレイキング・モードのマイキーが凄く楽しみですね(笑)。

<この項続く>

堀内勇Profile

高校1年の時に少林寺流空手をはじめ、94年硬式空手世界大会出場。
1998年、留学先のカリフォルニア州にてペドロ・カウバーリョ・ブラジリアン柔術道場に入門。タカ・クノウ、マックス増沢、前田桂(stArt JAPAN共同設立者)、杉内勇らとともに在米日本人組技集団チーム・グラエロを結成する。
色帯時代のジェフ・グローバー、ビル・クーパー、ハレック・グレイシー、ナム・ファン等と対戦経験あり。本人によると「ナムに塩漬け負け以外は全部秒殺負けです」とのこと。
2004年、LAのアマMMA大会The Last Drawで一本勝ち。
空手&ブラジリアン柔術黒帯。

■WNO Championships出場選手

【ヘビー級】
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
メイソン・ファウラー(米国)
オーランド・サンチェス(米国)
カイル・ベーム(米国)
ティム・スプリッグス(米国)
ルイス・パンザ(ブラジル)
テックス・ジョンソン(米国)
ハイサム・リダ(ガーナ)

【ミドル級】
タイ・ルオトロ(米国)
ウィリアム・タケット(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)
ジョン・ブランク(米国)、
ダンテ・リオン(カナダ)
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
ジェイコブ・カウチ(米国)
オリバー・タザ(カナダ)

【ライト級】
マイキー・ムスメシ(米国)
ケイド・ルオトロ(米国)
ジオ・マルチネス(米国)
ディエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
コール・アベート(米国)
デミアン・アンダーソン(米国)
ジョシュア・シスネロス(米国)
ガブリエル・ソウザ(ブラジル)

【女子ストロー級】
マイサ・バストス(ブラジル)
ダニエル・ケリー(米国)
ジェッサ・カーン(米国)
アマンダ・アレキン(米国)
グレース・ガンドラム(米国)
アレックス・グエン(米国)
ジェシカ・クラン(米国)
タミー・ムスメシ(米国)

【女子ヘビー級】
ギャビ・ガルシア(ブラジル)
ハファエラ・ゲイジス(ブラジル)
エリン・ハープ(米国)
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ(ブラジル)
エリザベス・クレイ(米国)
アマンダ・ローウェン(米国)
ケンドール・リユージング(米国)
アマンダ・レヴィ(米国)

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F2W166 JJ Globo Report ジョシュ・シスネロス ブログ ルーカス・ピニェーロ

【F2W166】オールドスクール? 1周回って、新鮮&最新鋭=ジョシュ・シスネロスがピニェーロにレフ判定勝ち

【写真】パス→バックテイク。逆に新鮮な柔術を使い手シスネロス(C)F2W

13日(土・現地時間)、プロ柔術大会Fight to Win 166が開催された。今年7度目となったこの大会、今回もレジェンドからグラップリングの未来を担う超新星まで、北米在住の注目グラップラーが多数登場し、激闘を繰り広げた。
Text by Isamu Horiuchi

今回はダブルガードゲームをしない──現代柔術家=ジョシュ・シスネロスが、日本柔術界軽量級トップ選手のライバル=ルーカス・ピニェーロとの激闘をフィーチャーしたい。

<道着/10分1R>
ジョシュ・シスネロス(米国)
Def. 3-0
ルーカス・ピニェーロ(ブラジル)

しばしスタンドで襟を取り合った両者。やがてピニェーロが引き込むが、瞬時に反応したシスネロスはすかさず右膝を入れてニースライスの体勢に。そのまま前にプレッシャーをかけたシスネロスは、潜るような形になったピニェーロの左脇を抱えて掬い上げての極め狙いへ。

さらにシスネロスがその左腕をキムラグリップに取ると、危機に陥ったピニェーロはスクランブルを試みる。と、その動きに乗じてシスネロスは素早くバックに。ピニェーロは立ち上がったが、煤ネロスは背後から見事に4の字ロックを完成させてみせた。

ピニェーロは、その4の字ロックを片手で外しながら体を揺さぶる。シスネロスはピニェーロの左足を抱えての締めを狙うが、ピニェーロは頭をずらしてシスネロスを前に落とすことに成功。と、次の瞬間逆襲のバック狙いへ。が、シスネロスは素早く前転し、さらに横回転でスクランブルしてピニェーロのガードの中に入ったのだった。ここまで僅か1分。軽量級の世界的実力者二人による、スピード溢れる見応え十分の攻防だ。

やがてシスネロスがピニェーロを抱えて立ち上がると、ピニェーロはガードを解いて素早く着地し、ルールで許されているスラムを巧みに回避してみせた。

試合は再びスタンドに。ピニェーロは素早いシングルからダブルの連携を見せるが、レスリング経験のあるシスネロスは倒れず。ならばとピニェーロはクローズドガードに引き込んでみせた。右膝を入れるシスネロスは、そのままニースライスを狙うが、ピニェーロのガードは開かない。

やがて自らガードを開けたピニェーロは、シスネロスのラペルを引き出してその右膝の裏に通して掴むと、このグリップを用いて前に崩して上を奪取。が、下になったシスネロスもすぐにピニェーロの体を引き付けると、右膝に乗せて後転してすぐにスイープを返す。が、ピニェーロも動きを止めずにスクランブルで再び上になり立ち上がる。シスネロスは下になりながらも、50/50を作ってみせた。ここまでで試合時間の約半分が経過。上からも下からも強い両者が、積極的に仕掛け守り合う一進一退の展開だ。

ピニェーロは、シスネロスの右足をストレートフットロックのグリップで抱えて、倒れ込む。対するシスネロスは逆にトーホールド狙いに。しばし足関節合戦が続いたが、お互い極めには至らない。

残り2分半ほどのところで、足の絡みを解除して立ち上がる両者。同時にピニェーロはシスネロスの右足を取ってのシングルレッグへ。が、左足一本でそれを堪えたシスネロスは隅返しでピニェーロを舞わせる。ピニェーロもすぐにスクランブルで体勢を立て直すと、シスネロスはそこにすかさず三角狙いへ。これまた見事な仕掛けだったが、ピニェーロもすぐに頭を抜いて危機回避した。

ラッソーを作るシスネロスに対し、ピニェーロは低くプレッシャーをかけながら、右に回ってのパス狙い。が、シスネロスは距離を作ってガードを保つ。ピニェーロは左足を取ってストレートフットロックを狙うと、シスネロスは立つ。残り僅かのところで、シスネロスが逆にトーホールド狙いを見せたところで時間切れとなった。

判定は3-0でシスネロスに。両者が存分に持ち味を発揮した熱闘だったが、シスネロスの序盤のパス狙い&腕狙いからの鮮やかなバックテイク、後半のシングルを切り返しての隅返しと三角狙い等の攻撃を考慮すれば妥当な判定だろう。

多くの軽量級強豪選手のように外回り&内回りを中心に試合を組み立てるのではなく、全方面からダイナミックに仕掛けて極めを狙っていった20歳のシスネロス。その戦いは、確かに軽量級柔術の未来を感じさせるものだった。


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F2W166 JJ Globo Preview ウィリアム・タケット ガブリエル・アルメイダ ジョシュ・シスネロス ブログ マニュエル・ヒバマー ラファエル・ロバトJr ルーカス・ピニェーロ

【F2W166】無敗で引退、Bellator世界ミドル級王者ラファエル・ロバトJr参戦。日本勢の好敵手ピニェーロも

【写真】MMA引退後も積極的に組み技の試合に出ているムンジアル王者ロバトJr (C)BELLATOR

13日(土・現地時間)、プロ柔術大会Fight to Win 166が開催され、Flo Grapplingにて中継される。北米在住の大物グラップラーを多数参戦させるこのイベント、早くも今年7度目となる。
Text by Isamu Horiuchi

そんなF2Wの上位3試合、MMA世界王者からの柔術回帰、驚異の20歳と日本軽量級トップ柔術家のライバルの対戦などの見所を探りたい。


<ノーギ/10分1R>
マニュエル・ヒバマー(ブラジル)
ウィリアム・タケット(米国)

19歳のタケットは、茶帯にしてすでにワールドクラスの実力を持つノーギグラップラー。昨年の躍進はすさまじく、怪力の足関節師テックス・ジョンソンを肩固めで仕留め、また2019、2020年とパン大会を制しているフィリッピ・アンドリューズをヒールで極めている。さらにミディアムヘビー級世界王者ルーカス・バルボーザともレフェリー判定の接戦を演じてみせた。

今年1月のF2W160ではジョン・コムズと対戦。両者積極的に極めを狙い合う激闘の末に2-1で勝利している。

対する27歳のヒバマーは、2019年ノーギワールズミディアムヘビー級王者。先日ギャビ・ガルシアとの頂上決戦を制して柔術界の新女王に輝いたナチアリ・ディ・ジェススの彼氏でもある。

今年2月のF2W164ではダンテ・リオンと対戦。気迫を前面に出して攻めてくるリオンを相手にカウンター戦術をとったヒバマーは、テイクダウンをギロチンで切り返した動きが評価されて2-1で判定勝利を収めている。

上からも下からも積極的に極めを狙ってゆく戦いを信条とするタケットと、強固なバランスを武器に待ちの姿勢で戦うことが多いヒバマー。対照的なスタイルのぶつかり合いが興味深いメインイベントだ。

<道着/7分1R>
ルーカス・ピニェーロ(ブラジル)
ジョシュ・シスネロス(米国)

アトス所属のピニェーロは、2010年代後半から最軽量級のトップ戦線で戦ってきた選手。2016年のパン大会の準決勝では芝本幸司を下し、決勝ではマイキー・ムスメシからパスガードを奪って追い詰めた末、準優勝に輝いた。以降も橋本知之、吉岡崇人といった日本のトップ勢と世界の舞台で凌ぎを削り続けている。

近年特に勝率を上げているピニェーロは、2019年のF2W128ではジョアオ・ミヤオに勝利し、2020年にはイアゴ・ガマらを倒してパンノーギ大会を制覇。さらに今年のAJPブラジル・ナショナル・プロ大会でもクレベル・ソウザらを制して優勝。今年の世界柔術最軽量級の優勝候補の一人と言えるまで存在感を増してきている。

対する米国カリフォルニア出身のシスネロスは、2000年5月生まれの20歳。ジアニ・グリッポ(1992年生まれ)、アイザック・ドーダーライン(1992年生まれ)、シェーン・ヒルテイラー(1995年生まれ)、マイキー・ムスメシ(1996年生まれ)らに続き、米国柔術界軽量級の未来を背負ってゆくとみられる逸材だ。

12歳の頃、クレバー・ルシアーノの黒帯にしてプロスケーターのトム・ノックス門下で柔術を学びはじめ、才能を開花。色帯時代からディエゴ・パト・オリヴェイラらと激しい戦いを繰り広げており、2019年にはノーギ・ワールズ(ライトフェザー級)の茶帯の部を制している。

昨年8月に黒帯を取得すると、同年のパン大会ライトフェザー級でパウロ・ミヤオやペドロ・ディアズを倒して優勝。アメリカンナショナルズではアイザック・ドーダーラインにも競り勝ってフェザー級を制している。

レスリングの経験もあるシスネロスは、上からも下からも戦える万能型柔術家。昨年のパウロ戦では、自らテイクダウンを仕掛けて上を選択。下からオモプラッタを仕掛けてパウロの左腕を伸ばしかけて上を取る等、互角以上に渡り合った。さらに終盤にはパウロの足を捌いてのトレアナ・パスで見せ場まで作り、全方面で強さを見せての勝利だった。

最軽量級の雄ピニェーロ相手に、やや体格に勝る米国柔術界の未来がどのような戦いを見せるのか。普段のIBJJF大会では見られないだけに楽しみな顔合わせだ。

<道着/7分1R>
ラファエル・ロバトJr(米国)
ガブリエル・アウメイダ(ブラジル)

現在37歳のロバトJrは、07年に世界柔術ウルトラヘビー級を制し、BJ・ペンに続き米国人で2人目の黒帯で世界王者と輝いた大ベテランだ。以降も道着着用、ノーギの両方のルールで世界の重量級のトップ戦線で活躍してきた。

2014年にはMMAデビューを果たし、2019年6月にはゲガール・ムサシに競り勝って10戦全勝の戦績でベラトール世界ミドル級王座に輝いた。が、健康上の理由(後に本人が海綿状血管腫だと明かした)によりそのベルトを防衛することなく返上。以後MMAでは試合をしていない。

MMAで活躍中もノーギの試合に出ていたロバトJrは、昨年のMMA活動停止後も組み技大会への出場は続けており、今年に入ってもダラス・オープンのヘビー級を制している。まさに柔術界の鉄人だ。

対する28歳のアウメイダは、レオジーニョとヒカルジーニョのヴィエイラ兄弟の弟子。18年に黒帯取得し、翌年のヨーロピアン大会で世界王者ルーカス・バルボーザのパスガードを凌ぎ、50/50からのスイープで下す大殊勲を挙げている。さらに昨年のF2W 152では、レジェンドのホムロ・バハウと道着着用ルールで対戦。スパイダーガードで絡んでくるバハウの足を一瞬で捌いてパスガードを奪い、勝利した。

今年1月のF2W 160でのノーギ戦では、ペドロ・マリーニョの強烈なギロチンに脅かされ、高々と抱え上げられてのテイクダウンも取られて判定0-3で完敗したアウメイダ。が、今回はその本領を発揮できる道着着用ルールだ。

バハウに続いて、またしてもアウメイダがレジェンド超えを達成するのか、それとも、柔術で現代MMAのメジャー王座奪取という偉業を成し遂げた鉄人が健在を見せつけるのか、注目の新旧対決だ。

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