カテゴリー
DEEP DEEP Osaka Impact2023#01 MMA MMAPLANET o キック サダエ☆マヌーフ サダエ・マヌーフ ボクシング 修斗 古瀬美月 村上彩 橋本知之 須田萌里

【DEEP OSAKA IMPACT2023#01】サダエ☆マヌーフ戦へ、村上彩─01─「試合で殴られるのは怖くない」

【写真】クソ真面目な受け答えに、芯の強さが感じられた(C)SHOJIRO KAMEIKE

4月2日(日)、大阪市の住吉区民センター大ホールで行われるDEEP Osaka Impact2023#01で、村上彩がサダエ☆マヌーフと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

2020年にプロMMAデビューした村上は、初戦で須田萌里を判定で下したあと、3連続一本勝ちの成績を収める。しかし昨年9月には、須田との再戦で敗れた。とはいえ、村上もまたベースである柔術の技術以上の、MMAファイターとしての進化を見せていた。その村上に柔術からMMAに至った道のりと、進化のきっかけについて訊いた。


――今週末に大阪でサダエ・マヌーフ選手との対戦を控える村上選手です。村上選手といえば「柔術黒帯コスプレファイター」というキャッチフレーズがついていますが、コスプレイヤーは職業なのでしょうか。

「アハハハ、コスプレは趣味です。でも私のコスプレを楽しみにしてくれている人たちがいて、私自身もやっていて楽しいので、コスプレは続けていこうと思っています(笑)」

――なるほど。MMAPLANETでは初めてのインタビューとなります。まずは格闘技歴から教えてください。

「2012年ぐらいから地元の徳島柔術で柔術を始めました。その頃、アクション系の映画を観に行ったんですよ。昔からジャッキー・チェンが好きだったし、戦うことってカッコイイなと思って。ジャッキー・チェンって少林寺の映画(『少林寺木人拳』)に出ていたじゃないですか。だから空手や合気道の道場を見に行ってみると大会は型が多くて、スパーリングも組み手の試合もなかったんですね。それで友達から『近くに柔術の道場がある』と聞いて見学に行ったら、最初からスパーリングをさせてくれて。楽しかったので、すぐ入会しました」

――当時の徳島柔術といえば、現カルペディエムの橋本知之選手がいた頃ですか。

「橋本さんと一緒に練習していました。橋本さんは当時、紫帯だったかな? 橋本さん以外も、選手志向の人が多かったですね。私も入会した次の日から毎日通っていました」

――徳島柔術に入会した当時、柔術については何か知っていましたか。

「全然知らなかったです。周りに格闘技をやっている人もいましたけど、私は見たこともなくて。ボクシング――あぁ殴るスポーツねっていうレベルでしたね(苦笑)。徳島柔術では紫帯まで昇格したあと、私も仕事でやりたいことがあって上京しました。最初は職場が近い川越のドランゴンズデンに入会して、代表の澤田真琴さんから黒帯を頂いています」

――MMAを始めたのは、上京してからですか。

「はい。ドラゴンズデンに通っていた頃、たまにキックボクシングクラスにも出て、何回か試合に出ていました。でも、その時点ではMMAをやろうと思っていなかったです。黒帯に昇格したあと、MMAの練習もしている女性柔術家から誘われて試合を観に行ったあと、私自身もMMAを始めることになりました」

――なるほど。格闘技を始める前は、何かスポーツをやっていたのでしょうか。

「学生の頃に水泳や陸上をやっていました。子供の頃には少しだけ柔道もやっていましたけど、どのスポーツも長年やっていたわけではないです」

――そこで柔術からMMAに至るまで、格闘技が最も長く続いているわけですね。

「柔術って、たくさん技があるじゃないですか。他のスポーツよりも自分だけの技をつくって、自由に動くことができるのが良いと思いました。自分で考えて、いろんな技を組み合わせたりとか。MMAも、それ以上に技術の幅がある競技ですよね。いろんなタイプのMMAファイターがいて、自分のスタイルを自身でつくっていけるところが好きです」

――ただ、柔術時代の実績からいえば、柔術に専念したいとは思いませんでしたか。

「2018年に茶帯で全日本とアジア選手権で優勝していて、その前の2017年にヨーロピアンの紫帯で優勝した時は、みんな褒めてくれました。ただ、黒帯を頂いたことで満足してしまったのかもしれないですね。その頃にMMAを始めていたので、柔術の練習に専念できていませんでした。黒帯でも全日本に出たけど、負けている試合のほうが多いかもしれないです。柔術は何歳になってもできるものだから、今はMMAをやろうと決めました。でも、MMAでも柔術の練習は大切じゃないですか。だから今でも週1~2回は必ず、カルペディエムで柔術の練習をしています」

――村上選手がアマチュアMMAの試合に出始めたのが2020年、ちょうどコロナ禍の時期でした。

「そうでしたね。だからジムでも練習ができない頃で。プロに昇格するまでは、ほとんどMMAの練習をやっていなかったです。柔術の練習ばかりで」

――確かに、プロデビュー戦となった2020年10月の須田萌里戦は、「柔術家がMMAをやっている」という印象が強かったです。

「当時はまだ月イチで女子の練習会に参加させてもらっていたのと、ちょっと打撃の練習をやっていたぐらいでした。修斗GYM東京で本格的にMMAの練習を始めたのも、プロデビューしたあたりで。ただ、その状態でもプロで試合をしてみて良かったです。

アマチュアで経験を積んでから、プロデビューという流れも良いとは思います。アマチュアで土台を創ることも大切ですよ。でもアマチュアで創った土台って、所詮はアマチュアレベルじゃないですか。それよりもハードなところに飛び込んで、その状況に慣れてしまえば大丈夫だと思うので」

――それは日本MMAのアマチュアルールと、アマチュア女子MMAの競技人口に関する問題でもありますよね。競技人口が少ないなか、パウンドなしのルールで経験を積み続けることが良いのかどうか。

「はい、女子だからっていう部分は大きいですよね。私としては、できるだけハードな状況で試合をしたほうが、早く成長できると思います」

――プロデビュー戦では須田選手に判定勝ちし、以降は3連続一本勝ちを収めました。この頃になるとMMAに慣れてきたのでしょうか。

「うーん、どうなんですかね……。そこまで打撃ができるようになっていたわけじゃないし、まだまだ柔術に頼っていた頃でした。ただ、試合で殴られるのは怖くなくなりました。練習で殴られるのは怖いんですよ。でも試合は怖くない。なぜかは分からないんですけどね(笑)。古瀬美月さんとの試合(2021年12月、腕十字で勝利)はフックでダウンしたのと、顔面にヒザをもらいましたが、痛くはなかったです。『打撃はもらっても良い』と思えるようになって、試合では冷静に戦えるようになったことは大きいと思います」

――3連続の一本勝ち後、須田選手との再戦で敗れました。その内容と結果については、今はどのように捉えていますか。

「相手のほうが練習を頑張っていたんだと思います。私は初戦と同じようにやったら勝てると思っていたところもあって。自分の詰めの甘さが敗因でした」

――あの試合は、須田選手の成長がうかがえた試合でした。同時に、村上選手も「MMAを戦う柔術家」から、MMAファイターに変化してきた内容だったと思います。

「柔術だと襟や袖とか引くところが多いですけど、グラップリングやMMAだと頭しか引くところがないですよね。でも下になると相手の頭は遠い。だとしたら、足から崩せば良いと思いました。それをカルペディエムのノーギクラスで教えてもらっていて。私のなかでも、その展開がしっくり来たのでMMAでも使うようになりました」

<この項、続く>

The post 【DEEP OSAKA IMPACT2023#01】サダエ☆マヌーフ戦へ、村上彩─01─「試合で殴られるのは怖くない」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
KIWAMI MMA MMAPLANET o ONE UNRIVALED UNRIVALED02 YouTube コンバット柔術 今成正和 修斗 手塚基伸 橋本知之 猿田洋祐 石黒翔也

【KIWAMI01】手塚基伸と5分1Rの短期決戦、石黒翔也─01─「ポイントで勝つことは考えていない」

【写真】5分──サブオンリー&OTだとSUG。KIWAMIはポイントがあるので、白黒はつくが10分や15分とはある意味、別モノの組み技が見られそうだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

19日(日)に千葉市美浜区の幕張メッセ国際展示場8ホールで開催される極~KIWAMI~で石黒翔也が手塚基伸と対戦する。
Text by Shojiro Kameika

2021年にJBJJF全日本選手権の黒帯ライトフェザー級を制した石黒は、以降ノーギの練習を増やして昨年1月にはコンバット柔術で今成正和を下している

さらには今年2月に行われたUnrivaled02で、元ONE世界ストロー級王者の猿田洋祐を相手ヒザ十字で一本勝ちを収めた。そして今回も再びMMAファイターとノーギで対戦する石黒が、まずはルールの観点から自身のグラップリングについて語ってくれた。


――手塚選手との試合を控える石黒選手です。ここ最近はコンバット柔術も含めてノーギの試合出場が増えていますが、ギとノーギではファイトスタイルも異なっているのでしょうか。

「はい、スタイルは違いますね。まず柔術はギが掴めるので、ギを掴んだ状態からのテクニックが多くなります。ノーギだと掴むところがないし、掴んでも滑るので、そのぶん関節自体をコントロールしないといけなくなるんですよ。自分の場合だと柔術ではガードが得意なので、そこが大きく変わっていまいます。でも、最近ノーギを練習するようになって、ノーギのスタイルが柔術のほうに生かされるようになってきています。そこがすごく面白いですね」

――猿田選手とは2019年の柔術修斗杯(当時は茶帯)で対戦し、ポイントで敗れています。その時から時間も経っているのですが、ギとノーギでは試合展開も大きく変わったのではないかと思いました。

「そうなんです。柔術では、よくデラヒーバやリバース・デラヒーバを使っています。でもノーギでは、リバース・デラヒーバはまだしも、デラヒーバはグリップが無いぶん難しいです。そこで前回の試合は、練習ではよくやっているんですけど――柔術の試合では1回も使ったことがないディープハーフで、潜って足を取りに行きました」

――石黒選手といえば、柔術の試合ではガードポジションを整えてからスイープ→パスを仕掛けるという印象がありました。

「前回のルールは、ほぼサブオンリーだったんですよね。ポイントはあるけど、ポイントを取りに行くと不利になるような感じで。僕の中ではサブオンリーと考えて試合に臨みました。だからと柔術のように、上を取ってからアタックという攻め方はしなかったんです」

――それがマイナス6ポイントに繋がるのですね。

「1回引き込んだ時、相手が全くアタックしてきませんでした。自分としては、『もうマイナス100ポイントになってもいいや』と思って、どれだけマイナスポイントが入っても気にしなかったです。どんな展開になってもサブミッションを極めることを考えていましたから。相手が何を仕掛けてきても大丈夫、と考えていたんですよね。ただ、思いのほか相手が後ろに下がって、攻めて来なくて……それは想定外でした。

でも逆に、そうなると相手のほうが攻めることができなくなります。そこで僕のほうがディープハーフというリスクを負って攻めていきました。ディープハーフって、ノーギだとリスクのあるポジションなんです。密着しすぎて、キムラなど腕関節を取られやすいポジションでもあるので。僕としては、ディープハーフを使って相手との距離を詰め、サブミッションを取りにいく練習はしていました。そういう意味では、自分が考えていたとおりの展開と結果になりましたね」

――想定どおりだったのですか!

「ディフェンシブな相手に対してディープハーフを狙うという練習はしていました。相手が下がってしまうと、遠いほうの足は取れなくなりますよね。でも反対に近くの足に対してディープハーフで潜ってから、足を取りにいく練習をしていたんです。

それがMMAファイターとノーギで対戦するうえでの作戦で。今、MMAでもディープハーフを使う選手が多いじゃないですか。足関節も流行ってきて、見ているとメチャクチャ面白いです」

――するとディープハーフに持ち込められれば……という狙いだったのですね。

「そうです。でも次の極は外掛けが禁止なんですよね。先日の試合ではディープハーフで外から足を掛けていったので、一瞬だけ外掛けになる形でした。去年のムンジアルで、橋本知之さんの試合でもあったように、そこは審判がどう取るかという部分でもあります。ただ僕としては何がアウトで何がOKかは分かっているし、ギリギリなゾーンは自分の得意なところでもありますから、そこでも攻めていきたいです」

――極はSBJJFのスポーツ柔術ルールを採用した、ポイントのあるグラップリングです。その点ではサブオンリーと考えて挑んだフィニッシュの猿田戦とは、また戦い方も異なってきますか。

「変わらないです。次もポイントで勝つ気はなく、極める気マンマンなんですよ。ただ、試合時間が5分と短くて。しかも相手の手塚基伸選手も強いじゃないですか。強い相手を5分で極めるというのは――猿田戦も5分少しで、ようやく極めることができました。次の試合でも極めることは難しいかもしれないけど、極めに至るまでに良いポジションを取っているはずです。だからポイントゲームになったとしても、勝つことはできるんじゃないかとは思っています。

でもポイントで勝つことは全く考えていないですけどね。展開としては、まず僕が下になると思います。相手はMMA選手なので、上を取るのは強いでしょう。そこで僕が下になってから仕掛けて、相手がどう対応してくるか。足関節を警戒して下になってくるかもしれないし、そうなったら僕が上からアタックするか――というふうに考えています」

――IBJJFやADCC、最近のサブオンリーと比較しても、5分1Rはなかなか短いですね。

「5分は柔術だと白帯ですよ(苦笑)。相手は守りも固いと思うし、MMAでは潜ってくる選手じゃないですか。それを僕が崩していくしかないような気もします。ルール的には5分間、上と下が入れ替わり続けるシーソーゲームになる可能性もありますけど、そこで僕が極めて大会を盛り上げたいです」

<この項、続く>

The post 【KIWAMI01】手塚基伸と5分1Rの短期決戦、石黒翔也─01─「ポイントで勝つことは考えていない」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ADCC OCEANIA AND ASIAN TRIALS 2022 MMA MMAPLANET o UFC 世羅智茂 岩本健汰 橋本知之 海外 青木真也

【ADCC2022】ADCC予選出場、世羅智茂─02─「予選で優勝した強い選手が出る。正しい世界大会の形」

【写真】2020年4月17日。この状況下、ケージのなかでグラップリングを戦っていた。そして今も戦い続けている(C)SHOJIRO KAMEIKA

19日(日)、豪州ニューサウスウェールズのスタンホープ・ガーデンズで開催される『ADCC OCEANIA AND ASIAN TRIALS 2022』の77キロ級に出場する、世羅智茂インタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

近年、グラップリング界は大きく変化してきた。その変化を世羅はどのように捉え、いかに勝つことを考えてきたのか。現在のグラップリング界と、自身の成長を語る。

<世羅智茂インタビューPart.01はコチラから>


――カルペディエムと世界、という意味では先日のムンジアル……橋本知之選手の試合結果については、どのように感じていますか。

「結果は残念でしたが、橋本には『お疲れ様です』と言いたいです。彼は日本を代表して戦ってくれました。普段から彼が頑張っている姿を見てきたので、そういう姿を称えたいです。

結果については、言い方が難しいですけど……運が悪かったのかなって。柔術には、いくつも曖昧が部分はあります。僕としては、柔術のルールが現状に追いついていないのかな、と考えています。

橋本が反則を取られてしまったのは、踵を出した形のフットロックですよね。内ヒールと同じような効果のフットロックですけど、僕も昔は反則だと認識していました。でも最近の傾向を見たら、OKっぽい流れになっていたんですよ。

国内でも海外でも、あの形で決まっている試合を見ていましたし、反対にあの形で反則を取られているのは見たことがなかったです。だから、もう黙認されている技だと認識していました。

昔の技術だと、ああやって踵を出す極め方はしていなかったと思います。でも足関節の技術が発達してきて……それこそグラップリングやMMAの技術が進歩してきたことが関係しているのかもしれないですね。特にグラップリングの技術が変わって、それが柔術に流れてきて柔術家も使い始められたりとか。結果、互いの技術が上がってきて、ああいうグレーゾーンといえる際どい技術が生まれた。みんなが何となく『良いのかなぁ』と何となく考えていて、今回は橋本が反則を取られてしまった。それは――彼には申し訳ないけど――運が悪かったとしか言えないんです」

――なるほど。今回のADCCオセアニア&アジア予選は、出場選手リストは公表されていますが、まだトーナメント表は発表されていません。

「出場選手リストはチェックしています。でも海外の選手については、ほとんど知らないんですよね。知っているのは日本の岩本(健汰)君ぐらいで(苦笑)」

――2019年の前回大会は66キロ級で出場しています(準々決勝で敗退)。今回77キロ級に出場する理由を教えてください。

「単純に、もう66キロに下げて戦うことはできないからです。体重を落とすことはできます。でも減量で弱っている状態で1日5~6回勝って優勝というのは、そこまで体力と集中力がもたないかなと思います。であれば、相手は大きくなるけど減量なしで77キロ級に出たほうが……。結局、どちらに出てもキツいと思うんですよ。それなら減量なしで77キロ級に出たほうが良いのかなと考えました」

――ちなみに、世羅選手はグラップリングでいえばポイント制とサブオンリー、どちらが自分に合っていると思いますか。

「どちらかといえば、ポイント制です。僕の中では、IBJJFのポイントルールが一番向いているんじゃないかなと思っています。強いグラップラーは基本的に何でもできると思うんです。そうなると、みんなレベルが高くて、なかなかフィニッシュまでは繋げられない。

そのためにサブオンリーで極めるのは、かなり難しいです。サブオンリーの試合をやるのは大好きですけど(苦笑)。だから勝つことを考えれば、IBJJFのポイントルールで、ギリギリのポイントで勝つほうが向いているのかなと思っています」

――かつて腕十字が世羅選手の代名詞であった時代を考えると、サブオンリーと答えると思っていました。

「それ、よく言われます(笑)。極めが強いんでしょ、って。全然そんなことないんですけど、戦い方は変わってきたと思います」

――なぜ戦い方が変わってきたのでしょうか。

「戦う相手のレベルが上がってきたからですね。今振り返ってみると、京都で活動していた頃は、対戦相手とのレベル差があったから、ガンガン極めに行っていたと思うんですよね。でも東京に来てから対戦相手のレベルも高くなって、なかなか圧倒して勝つことが難しくなってきました。そうすると、自然とポイント差やアドバン差で勝つようになって……もう極め一辺倒ではダメだなって考えるようになったんです」

――以前は極めるために10分フルスロットルで動いていましたからね。

「今はもう無理です(笑)。しっかりとポジションを固める技術も身についてきました。先日の全日本選手権でも、マウント取ってからずっと固めたりとか。マウントになったらルーチは取られないので。それはサブオンリーのグラップリングだと意味がないんですけど、柔術であれば別にリードしていれば関係ないですから」

――前大会から3年、その間に青木真也戦や岩本健汰戦など、プロ興行内でのケージグラップリングも経験してきました。その経験は自身にどのような影響を与えていますか。

「グラップラーは全部できなきゃいけないな、と思いました。グラップリングって多種多様なルールがあることで、いろんなタイプの選手が活躍できる場が多いのは良い点だと思います。反対に……柔術はIBJJFのルールがあるけど、グラップリングはルールが統一されていないから、やる側としては難しいです。グラップリングの中でも、どのルールを自分のメインに持ってくるのか。サブオンリーをメインにするなら、そのための戦い方があります。

ノーギ・ワールドは柔術のように細かいポイントを意識した戦い方が必要になるし、ADCCでは立ちレスの強さが重要になってきます。だからグラップラーは全てのレベルが高くなきゃいけないんですよね。今のMMA、UFCの選手のように」

――そのグラップリング界のなかでADCCは、世羅選手にとってどのような位置づけにあるのでしょうか。

「世界一のグラップリング大会ですよね。一番大きいのは、ちゃんと予選を行っているということなんです。レスリングや柔道って、必ず各地で予選が行われるじゃないですか。その予選で優勝した強い選手が世界大会に出る。それが正しい世界大会の形だと思うんです。

何より、2年に1回というのが良いですよね。毎年やっていると、それだけチャンピオンが生まれて、チャンピオンの価値が薄まっていく気がします。4年に1回のオリンピックが最大のスポーツイベントになっているのが象徴的だと思いますし。ADCCも2年に1回というのが、その価値を高めている。そのぶんチャンスは少ないですが、挑戦したい大会です。

今回の予選は、自分の中でキツいトーナメントになると認識しています。でもADCCという最大のグラップリング大会に出るための大会ですから、キツいのも当然です。そのなかで、全力で代表を勝ち取りに行きます」

■視聴方法(予定)
6月19日(日・日本時間)
午前8時00分~Flo Grappling

The post 【ADCC2022】ADCC予選出場、世羅智茂─02─「予選で優勝した強い選手が出る。正しい世界大会の形」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o WJJC2022   カルロス・アルベルト タリソン・ソアレス ブラジリアン柔術 橋本知之

【WJJC2022】ルースター級準々決勝で橋本知之はアオキ・ロックで失格に。優勝はタリソン・ソアレス

【写真】橋本は失格に納得がいかず、抗議をした(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi

年に一回、道着着用柔術の世界一を決めるこの大会のレビュー第1回は、世界初制覇の期待がかかった橋本知之の戦いを中心に、最軽量ルースター級の模様を報告したい。


<ルースター級1回戦/10分1R>
橋本知之(日本)
Def. 3分11秒 by襟絞め
ケヴィン・マーティンコフスキー(米国)

両者引き込みによるダブルガード状態から、マーティンコフスキーが上を選択してアドバンテージを得る。橋本はすぐに相手の左足にデラヒーバで絡みベリンボロへ。座り込んで防ぐマーティンコフスキーに対し、2回転目で背中に手を回した橋本はそのまま上になり、2点を先取した。

マーティンコフスキーが右足に絡んでくると、立ち上がった橋本。そこから前方にダイブするようにして右足を抜きながら左脇を差して上半身を制すると、完全に右足を抜いてパスに成功し5-0とした。

左腕で枕を取って胸を合わせて完全に相手を制している橋本は、やがて左手で相手の襟を掴んで引き寄せる。さらに橋本が左足で相手の頭をステップオーバーして締め上げると、すぐにマーティンコフスキーがタップ。わずか3分23秒での完勝だった。得意のボトムからの攻撃はもちろん、トップからの見事な体捌きによるパス、コントロール、そして極めと寝技の全局面で力を見せつけた橋本は、ほとんど消耗のない良い状態で初日のヤマ、カルロス・アルベルトとの準決勝に駒を進めた。

<ルースター級準々決勝/10分1R>
カルロス・アルベルト(ブラジル)
DQ 6分35秒
橋本知之(日本)

立ちでフェイントをかけ合った後、両者ともに前に飛び込んでから引き込み合う。アルベルトがすぐに上になってアドバンテージ獲得と思いきや、審判はこれをテイクダウンかスイープかは分からないが2点と判断した。

不可解な判定で先制点を許してしまった橋本は、アルベルトの襟と左足首を掴んで引き寄せ、尻餅を付けさせる。さらに左にベリンボロで回転してからシットアップして2-2の同点に。が、アルベルトも橋本の足首に絡んで浮かせると、すぐにシットアップで上を取り返して4-2と再リードした。

立ち上がったアルベルトに対し、橋本は左足を下から掴む。前に飛び込んできたアルベルトの左足に強烈なストレートフットロック。さらに回転した橋本は、アルベルトの左足を掴みながら勢いよく起き上がって4-4と追いついた。

上になった橋本は一旦立ち上がる。が、下から橋本の両足のズボンを掴んだアルベルトがシットアップ。上を取り返して6-4と再びリードした。

ならばと橋本は右にラッソーで絡むと、やがて片襟片袖に移行してアルベルトを引きつける。ここでアルベルトが尻餅をつくとすかさず立ち上がって上を取り返して6-6に追いついた。ここまでで試合時間の半分が経過。

橋本の左腕にラッソーで絡んだアルベルトは、橋本が腰を上げると右足にデラヒーバを作る。対する橋本は腰を引いて下がり、アルベルトの絡んでくる足を解除。さらに下がって距離を作った橋本は、すかさずそこに頭を潜り込ませるようにして上からのバック取りを仕掛ける。アルベルトも反応するが、一歩先んじた橋本はズボンを掴んで尻を出させることに成功。それでも距離を取ったアルベルトに対し、橋本は右足を取ってストレートフットロックへ。

すると、ここでレフェリーが試合をストップ。ストレートフットロックで締め上げている際、動いて防ごうとしたアルベルトのかかとが抜けかけた状態になったことで、内ヒールのような膝の靭帯への攻撃とみなされたようだ。いわゆるアオキ・ロックにレフェリーが橋本の反則を指摘すると、勝利を確信したアルベルトは思わず微笑みながらガッツポーズを作った。

橋本はレフェリーに抗議をするも認められず、6分35秒で反則負けを宣せられた。こうして橋本の世界初制覇の夢は、きわめて不運な形で潰えてしまったのだった。

終了時のスコアは6-6の五分だったが、前半お互い下になった時に攻撃を仕掛ける展開が続いた後、橋本がトップからも攻勢に転じて試合の流れを引き寄せはじめた矢先だっただけに、なおさらやりきれない結末だ。

試合後、橋本はSNSで「あの足関節技はここ数年流行っているもの。今回も他の選手たちが同じ技を使っていたのに、なぜ自分だけ失格にされるのか」、「あの技が反則になり得るということ自体が初耳。たとえ今回からルール改正が行われていたにしても、そのことは告知されていない」、「レフェリーに抗議したところ、最初から(アルベルトの)踵が出ていたからと説明を受けた。しかし動画で見直しても、最初は踵が入っていて後から抜けている。レフェリーは最初から見ていたわけではなく、相手のセコンドの指摘を受けてから状況を確認し、言いなりになった」等と不満の気持ちを綴った。

あの形から締め上げると、それが足首だけでなくヒザの靭帯を圧迫しかねない(=反則)のは事実だ。とはいえストレートフットロックからカカトが抜けた場合にレフェリーが流すということが過去になかったわけでもない。

IBJJFの足関節の定義として、ヒザが外側に捻られる攻撃はストレートフットロックでも反則となる。トーホールドでもヒザがもう片方のヒザの側に圧が掛かる場合は認められるが、逆側は反則だ。

今回、橋本が仕掛けたアオキ・ロックはヒザを外側に捻るモノで明確に反則といえる。と同時にIBJJFの審判団のなかでも「明確な反則だが、見極めが難しい」という意見がある。それは下を向け仕掛けているときなど、その状態に入っているかどうかの見極めが難しいということを意味している。

アオキ・ロックは反則か合法かの見極めが難しいということではない。と同時にカカトが抜けた状態で、捻りを加えれば反則というが、動きの中で攻撃者の意図しない危険が生まれてしまうのは、他の技にも見られる。よって、今回のケースはレフェリーも一瞬で反則負けとはしていない点にも注視しないといけない。

とはいえ橋本は、この状態が反則という認識がなく、他の試合でも見られたと指摘している。どれだけの選手にその認識がなかったのか。また、他のどれほどの試合でこの攻撃をレフェリーが見逃していたのか。

ここはIBJJFは競技会運営団体ではなく、競技管理団体として、ルール変更の徹底的な告知と審判の理解を深める活動が不足していると指摘されても致し方ない。見極めが難しい攻撃であるなら、詳細なルール上の規定・指導があって然るべきだ。

ましてや抗議に対して、レフェリーの不明瞭な説明でコトが収まることはあってはならない。これまで積み上げてきた努力が、曖昧さの犠牲になるようでは、アスリートはたまったものではない。

それでも橋本自身は、今大会の戦いには大きな手応えがあった模様だ。取り組みを改善したことで上達を実感できた、これからさらに強くなるし、そんな自分が楽しみだと前向きな姿勢を見せている。

なお、反則勝ちで橋本戦をクリアしたアルベルトは、翌日の準決勝でホドネイ・バルボーザと対戦。得意のハーフガードに引き込んだバルボーザに対し、両腕を伸ばして襟を掴んで立ち上がる形でその攻撃を無効化し、最初の8分間でお互い3回警告をもらってスタンドから再開。ここでバルボーザの引き込みに合わせて飛び込んで2点獲得。ほとんど攻防をせずに頭脳戦で勝利した。

決勝はそのアルベルトと、もう一つの山を順当に勝ち上がった第一シードのタリソン・ソアレスによる4月のパン大会決勝の再戦に。まず上を選択したアルベルトだが、ソアレスはラッソーから横に崩す見事なスイープで2点を取ると、そのまま上をキープして勝利。ソアレスは不運な裁定に泣いたパン大会の雪辱を果たすとともに、青帯から黒帯まで全ての帯で世界大会優勝という偉業を果たした。

試合後ソアレスは、今回は試合前にAOJでキャンプを張り、ギィ・メンデス師範の指導を受けた成果が出たと喜びの弁。特に今まではスイープ合戦をしがちだったが、今回は上からパスを狙ってプレッシャーをかけ続けた、これまではいろんな選択肢で迷うことも多かったが、ギィ師範のおかげで自分を信じることができたと語った。

若き新世界王者ソアレスをはじめ、トップ選手たちが日々進化を続けるルースター級。

今回は予測不能な形での敗退となりながらも、新たな自信とモチベーションを得た橋本が、今後彼らといかに対峙してゆくか、大いなる期待とともに見届けたい。

【ルースター級リザルト】
優勝 タリソン・ソアレス(ブラジル)
準優勝 カルロス・アルベルト(ブラジル)
3位 クレベル・ソウザ(ブラジル)、ホドネイ・バルボーザ(ブラジル)

The post 【WJJC2022】ルースター級準々決勝で橋本知之はアオキ・ロックで失格に。優勝はタリソン・ソアレス first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o WJJC2022 カルロス・アルベルト ブラジリアン柔術 ブルーノ・マルファシーニ マイキー・ムスメシ 橋本知之

【WJJC2022】世界に立ち向かう日本の柔術家 橋本知之─02─ 「優勝し、シェアできる存在に」

【写真】結果として、彼を揺り動かしているのは柔術への想い。柔術愛なんだと(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われている。
Text by Shojiro Kameike

ルースター級にエントリーしている橋本知之が試合直前に語ってくれた世界で戦う意識と、柔術家として世界一になることとは? 本人によるルースター級トーナメントの分析も含め──必読だ。

<橋本知之インタビューPart.01はコチラから>


――ご自身の中で、昨年から今年のムンジアルまでの間、どのような部分が成長してきたと思いますか。

「技術的にはトップからのアタックとか。ボトムからのアタックのバリエーションも増えましたし、クオリティも上がったと思います。それ以上に、まず練習の取り組み方がだいぶ良くなってきました。昔から世界一を目指して取り組んでいたんですけど、まだ楽しさ優先だったというか」

――……それは意外です。

「楽しいのが一番、というのは変わらないんです。それが今は楽しいことと、世界一になるために突き詰めることが、自分の中でシンクロしてきたというか。昔は突き詰めることと、楽しむということが若干ズレていたんですよ。今はその部分を考えて取り組むことが楽しくなってきていて、そこは変わった気がします」

――これまでは、世界一になるための練習はツライものだという気持ちが先行しすぎていたのでしょうか。

「強くなるためにはツライ練習をしないといけない、という根性論みたいなものが自分の中にもあって。それは違うなっていうことに気づくことができました。米国でも世界大会前のファンとキャンプとかは、メッチャ根性論なんですよ。本当にキツイ練習で。それを何回もやっていると『これが本当に正しい練習なのかな?』という疑問が浮かんできて。ただ、トップ選手でも選手によって練習内容は違いますし。

あとは他競技のトップアスリートはどんな練習をしているんだろうか、と思って本を読みました。すると強度の高い練習だけが良いわけではない、ということをトップアスリートなら普通に理解していることだったんですよね。強度よりも効率が大事だと。考えてみれば当たり前のことなんですけど、その意識が低かったなと思って。

そこから効率を考えて練習するようになりました。あとは無理をしすぎると故障も増えるし、故障が多いと練習も楽しくなくなるんですよね。だから最近は常に良いコンディションで練習をして、どんどん上手くなっているように感じています。だから楽しいです」

――それもキャリアを重ねていかないと分からないことかもしれませんね。

「そうですね。そう思います」

――では今回のトーナメントについて触れていただきたいのですが、マイキー・ムスメシとブルーノ・マルファシーニがエントリーしていない点は、どう考えていますか。

「マイキーは最近、ADDCやグラップリングに集中しているので、今回出ないのは仕方ないのかなと思います。ブルーノに関しては……出てほしかったですね。マイキーには負けちゃいましたけど、そのパフォーマンスを見るかぎりは、今もルースターでベストに近い選手だと思いますし。そうやって強い選手が出ているほうが、注目度も高いので。

これで僕が優勝できたとしても、マイキーとブルーノが出ていたら結果は違っていただろうなって、みんな思うでしょうから。世界大会という名前であれば、みんな出ているほうが良いですよね」

――……。

「もちろん肩書は大事です。世界大会で優勝すれば世界一という肩書きは得られるし、生きていくうえでその肩書きを使うことはできます。でも……本当の価値があるのは、ちゃんと自分の柔術が強いということであって。ブルーノはグラップリングをやっているわけじゃないし、コンディションも悪くなさそうなので、出てほしかったですけど。

でもブルーノは、もう10回優勝していますからね(苦笑)。今出ている選手にはほとんど勝っているか、あるいは新しい世代の選手なので、ブルーノにとってはそれほどモチベーションが上がらないのは仕方ないかもしれないです」

――そのなかで、今回のトーナメント表が発表された時の印象は?

「強い選手がバランス良く分かれているので、フェアな組み合わせだなと思いました。まず2回戦のベベト(カルロス・アルベルト)はレベルが高い選手ですよね。パンでもタリソン(・ソアレス)に勝って優勝していますし。メチャクチャ段違いにレベルが高いっていうわけじゃないですけど、全体的なレベルが高いので。

そこで僕がベベトに勝ったら、次はジョナスでしょうね。ジョナスはディフェンシブな選手で固い試合をするので、難しい相手なんですよ。怖さはないけど、ちゃんと勝つのが大変な相手です。でも一回対戦して、相手がどういうことをしてくるかは分かっているので。対策もしてきていますし、実際に戦ってみて、いろいろ試していきたいですね。

決勝の相手はタリソンになると思うんですけど、新しい世代で強い選手たちもいるので、どうなるか」

――詳しい解説、ありがとうございます。では最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

「日々の練習の中で、自分が工夫しながら取り組んでいることがあります。それは技術的にも、フィジカル的にも。その結果、世界大会で優勝できたら、自分の取り組み方も説得力を持って日本でシェアできる。そうやって日本の人たちの力になれますよね。

日本国内には世界トップの選手がいないし、英語も得意ではないから情報も少ないと思うんです。それは世界で戦ううえでは、すごく不利じゃないですか。自分が世界大会で優勝することによって、そうやってシェアできる存在になれればと思っています。もちろん自分が楽しみたいという気持ちもありますし、頑張ります」

■黒帯ルースター級放送予定
6月5日(日・日本時間)
午前3時00分~ FLOGRAPPLING

The post 【WJJC2022】世界に立ち向かう日本の柔術家 橋本知之─02─ 「優勝し、シェアできる存在に」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o UFC WJJC2022 ブラジリアン柔術 橋本知之 筋トレ

【WJJC2022】世界に立ち向かう日本の柔術家 橋本知之─01─ 「昨年はカイオの指示に身を委ね過ぎた」

【写真】現地入りしてから取材を受けてもらい感謝の限りです(C)SHOJIRO KAMEIKE

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われている。
Text by Shojiro Kameike

4日(土・同)からはアダルト黒帯のトーナメントがスタートするが、ルースター級には日本から橋本知之がエントリー。今年4月のパン大会ではライトフェザー級で3位を獲得した橋本が、そのパン大会から現在までの変化を語ってくれた。


――現地入りしてから試合直前にインタビューを受けていただき、ありがとうございます。日本時間では6月3日の0時、ロスは6月2日の朝8時です。6月4日の試合に向け、減量も順調に進んでいるのでしょうか。

「日本を発つ時が59キロ半ばで、今は58キロぐらいです。ルースターが道衣込みで57.5キロなので、道衣なしで56.2~56.3キロぐらいまで落とします」

――今年のパン選手権はルースター級ではなくライトフェザー級で出場し、3位となりました。そのなかで筋量も増えていたそうですが、それは意識的に増やしていたのでしょうか? それとも練習していて自然と増えていたのですか。

「ライトフェザー級に出る時は、食事や筋トレで意識的に増やしていました。ライトフェザー級だと自分は、身長は低いほうではないですけど、サイズは小さいので」

――ライトフェザー級で戦うための体づくりを行った結果だったのですね。

「はい、そうです」

――ということは、ムンジアルもライトフェザー級でエントリーする予定だったのですか。

「それは迷っていました。自分としてはルースターかライトフェザー、どちらでもよかったです。それでパン選手権はライトフェザー級で出場してみて、どんな感じなのかを試してみようと。あとはパンからワールドまで減量が続くと、ストレスになってしまうので。だから、そんなにコンスタントに減量したくなかった。その2つが、パンはライトフェザー級に出た理由でした」

――そのパン選手権で3位入賞となりました。橋本選手にとって、手応えのある3位だったのか、何か新しい発見がある3位だったのか。

「3位という順位については、世界大会に出るためにはポイントが必要なので、そのポイントを獲得できたという意味では良かったです。あとはライトフェザー級のトップ選手とも試合ができたし、どんな感じなのかはチェックできたので。そのうえで、世界大会まで2カ月でライトフェザー級の体を作って出場するよりは、ルースター級のほうがクオリティの高い状態で試合をすることができるのかな、と思いました。どちらかといえば、という感じなんですけど」

――試合内容、技術面はライトフェザー級で感じた内容を、ルースター級で出場する世界大会までの2カ月間で修正してきたのでしょうか。

「そうですね。たとえばパン大会の1回戦(ライトフェザー級準決勝でペドロ・クレメンチにアドバンテージ差で勝利)は、自分の中で早く極めようという意識が強すぎたんです。それで力みすぎて、初戦なのに消耗してしまいました。それはシンプルなミスじゃないですか。だから気を付ければ修正できる。

普段の練習から――もちろんリラックスしすぎるのは良くないですけど、力みすぎないように練習していくとか。もちろん技術的な部分で修正すべきところは山ほどあるし、そこは突き詰めればキリがないので、世界大会に向けて完成しきったという感覚は今もないです。でもその時その時で、試合に向けてスタイルを作って戦ってきたという感じですね」

――それは実際に試合、特に世界レベルの選手とのトーナメント戦を経験しないと分からないことですよね。

「試合をイメージして練習していても、実際に試合をしてみるとギャップがあったり、自分のイメージと合っていないこともありますからね。そこは自分のイメージが正しいのかどうか確かめるためにも、ある程度は定期的に出たほうが良いなと思いました」

――パン大会はムンジアルの2カ月前に行われます。そのためムンジアルの前哨戦の意味合いも強くなるでしょうし。

「世界大会に向けて、全試合でベストなパフォーマンスを出そうとしている感じはありますよね。でも、世界大会は特別なものですけど、そこで優勝したからって全てがメチャクチャ変わるっていうわけでもないので」

――えっ!? どういうことでしょうか。

「世界大会で優勝したら、大きなプロの大会に呼ばれたりとか。そうやって続いていくものなので」

――ここ十数年で大きく環境が変わりましたよね。柔術でもグラップリングでもプロの大会が増え、UFCファイトパスなどインターネットを通じて世界中に配信されたりと。

「まず競技人口が増えました。子供の頃から柔術をやっている選手は、昔からいたと思うんです。でもその人数が違うし、子供の頃からしている練習のクオリティが高くなっていますよね。その結果、10代の頃から強い選手が出てきていて。どんどん競技レベルは上がっているし、それは良いことだと思います」

――なるほど。試合の話に戻ると、パン大会の初戦で早く極めようと意識したのは、昨年の世界大会の結果も影響しているのでしょうか。昨年は準々決勝のジョナス・アンドラージ戦で、残り45秒で膠着のペナルティが入り敗れました。

「うーん……いや、パン大会の初戦は、トータルで見て僕のほうが上だと思っていたので。だから『ちゃんと差を見せつけよう』という意識が強すぎた結果で、昨年の負けと違うんですよね。昨年の反省点としては、カイオ(・テハ)がセコンドに就いてくれていたんですけど、僕がカイオの指示に身を委ねすぎたというか」

――というと?

「自分自身でその時の状況を細かく考えていなかったんです。もっと動けという指示もなかったし、このまま対処していれば良いかなと考えていたら反則のルーチが入ったので……。それは予想外ではあったんですけど、自分自身でそのシチュエーションを理解していれば、もうちょっと上手く戦えたのかなと。もちろん簡単なことではないですが、もうちょっと戦い方はあったかなと、今は思います」

<この項、続く>

■WJJC2022 黒帯ルースター級放送予定
6月5日(日・日本時間)
午前3時00分~ FLOGRAPPLING

The post 【WJJC2022】世界に立ち向かう日本の柔術家 橋本知之─01─ 「昨年はカイオの指示に身を委ね過ぎた」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o WJJC2022 アレクサンドロ・ソドレ イアゴ・ジョルジ ジオゴ・ヘイス ブラジリアン柔術 マラチ・エドモンド メイハン・マキニ ルーカス・ピニェーロ 今成正和 嶋田裕太 橋本知之

【WJJC2022】嶋田裕太の茨の道=ライトフェザー級。オカシオ,イアゴ&昨年準優勝者撃破で表彰台&三強戦

【写真】嶋田のハーフ、レッスルアップ、スイープはワールドクラスだ(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われる、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text by Isamu Horiuchi

プレビュー第2回は、NYのマルセロ・ガウッシア道場で長期修行を続ける嶋田裕太が出場するライトフェザー級の見どころを紹介したい。


強豪揃いのこの階級だが、他の選手から頭一つ抜けた優勝候補と呼べる選手が3人いる。まずは前回優勝のパトことジエゴ・オリヴェイラ。

続いてそのパトと昨年の準決勝で大死闘を演じ、4月のパン大会で優勝を遂げたメイハン・マキニ。3人目は、ADCCブラジル予選にてノーギながらパトを下したジオゴ・ヘイスだ。

ヘイスとマキニは昨年のワールドプロ予選で対戦。この時はヘイスが競り勝ちそのまま本戦優勝を果たしているが、4月のパン大会での再戦時には、50/50シーソー戦の末に12-10でマキニが勝利し、その後も優勝を果たしている。パトが23歳、マキニは21歳、そしてヘイスに至ってはまだ20歳になったばかり。すでに圧倒的な若き力により席巻されているのがこの階級の現状だ。

この3人に加え、昨年の世界大会で組み合わせに恵まれたこともあり決勝進出を果たした米国のマラチ・エドモンドも出場。そして19年の世界大会優勝者の一人である──この時は前人未到の同門4人によるクローズアウトだった──イアゴ・ジョルジ、4月のパンナムにてそのジョルジにストレートフットロックを極めて準優勝を果たしたルーカス・ピニェーロら強力ベテラン勢もエントリーしている。

このような過酷なトーナメントに挑む嶋田は、4月のパン大会以来の試合となる。同大会ではひとつ上のフェザー級にエントリーし、一回戦を順当勝ちした後、僅か10分少々のインターバルで過去2連敗を喫している強豪アレクサンドロ・ソドレと対戦。最初の上選択をアドバンテージと判定してもらえない不運もあり惜敗したが、シッティングガードからの鋭い仕掛けからシングルに移行して倒し切る等、その動きが世界最高峰に十分通じるところまで来ていることが見て取れる内容だった。

(C)FLOGRAPPLING

今回の嶋田の一回戦の相手は、ユニティ柔術のエドウィン・オカシオに決まった。

ジュニーの愛称でWNO等ノーギグラップリングの大会での活躍し、ジオ・マルティネスや今成正和等のビッグネームから勝利を挙げている。シッティングガードから足を絡めてのヒールフックを最も得意とするが、今大会はそれが禁止された道着着用ルール。この分野の頂点を目指す嶋田としては負けられない相手だろう。ちなみにオカシオは4月のパン大会にもエントリーし、初戦で橋本知之と戦う予定だったが欠場している。

次に嶋田を待っているのは、第5シードのイアゴ・ジョルジだ。

2019年には前述したクローズアウトでの世界制覇を含め、メジャー5大会全制覇という偉業を成し遂げた経験を持つ世界的超強豪だ。近年マキニ&ヘイスの超新星2人には連敗を喫しているが、その実力は健在だ。強烈なパスガードの持ち主のジョルジに対し、やはり上攻めを得意とする──同時にシッティングからのレッスルアップにも一段と磨きがかかっている──嶋田がいかに自分のペースで試合を運べるか。

今から9年前、2013年のブラジレイロ紫帯ライトフェザー級決勝で、ジョルジに勝利している嶋田だが、茶帯以降は対戦がなくても実績という点でリードを許している感は否めない。翌日の準決勝進出=世界のメダル獲得に向けて、最初にして最大の山場がこの試合となりそうだ。

このジョルジを倒せて、はじめて準々決勝に進める嶋田に立ちはだかる可能性が高いのは、昨年準優勝のマラチ・エドモンド。楽な相手であるはずはないが、エドモンドは黒帯での試合経験がまだ少なく、4月のパン大会でもルーカス・ピニェーロにチョークで完敗している。ジョルジに比べれば与し易いと言えるかもしれない。

ここも超えることができた場合、翌日の準決勝で嶋田を迎え撃つのはおそらくメイハン・マキニ、そしてさらに決勝で当たるのはパトことジエゴ・オリヴェイラとジオゴ・ヘイスの勝者だろう。つまり最終日には、現在この階級を席巻する真のトップの3人のうちの2人との連戦が嶋田を待っていることとなる。

頂点への道のりは目眩がするほど険しいが、4月の見事な戦いぶりから判断する限り、最終日に世界最高峰と渡り合う嶋田の勇姿を我々が見られる可能性は大いにあるだろう。

The post 【WJJC2022】嶋田裕太の茨の道=ライトフェザー級。オカシオ,イアゴ&昨年準優勝者撃破で表彰台&三強戦 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o WJJC2022 YUKI カルロス・アルベルト タリソン・ソアレス ブラジリアン柔術 ブルーノ・マルファシーニ マイキー・ムスメシ メイハン・マキニ 橋本知之

【WJJC2022】ルースター級=マイキーとマルファシーニが欠場。橋本知之に好機到来も道のりは平坦でなく

【写真】2013年のカイオ・テハを除くと、9大会を制してきた二強がいないムンジアルだが、それでも強豪揃い(C)SATOSHI NARITA

6月2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われる。
Text by Isamu Horiuchi

年に1度、道着着用柔術の世界一を決めるこの大会のプレビュー第1回は、橋本知之の世界初制覇への期待が高まる最軽量ルースター級の見所を紹介したい。


今回の最軽量級で特筆すべきは、10度世界王者に輝いたブルーノ・マルファシーニと、昨年末、突如として道着着用に復活して圧倒的な強さで優勝を果たしたマイキー・ムスメシの両者がともにエントリーしていないことだ。

頭抜けた実績&実力を持つ二者が抜けたことで、今まで彼らの軍門に下ってきた選手たちに初優勝への希望が大きく開けることとなった。

当然それは、2010年代後半から最軽量級のトップ戦線で戦い続けている橋本知之にも言える。今年4月のパン大会では、筋量が増したこともあり減量のストレスを避けてあえて一階級上のライトフェザー級に参戦した橋本。

初戦の強豪ペドロ・クレメンチに快勝すると準決勝で世界最強の一角、メイハン・マキニと対戦を迎えた。下から崩しきれず、開始時の上選択によるアドバンテージ差で敗れたものの、強力無比なトップゲームを誇るマキニにニアパスさえも許さず、世界トップの実力を改めて知らしめる内容だった。

今回第5シードの橋本の1回戦の相手は、第9シードの米国人ケヴィン・マーティンコフスキー。国際的には無名の選手で、先日のナッシュヴィル・オープンで黒帯としてはじめてIBJJF系の大会で優勝を果たしている。橋本としてはあまり体力を使いすぎずに確実に勝利を掴みたいところだ。

続く準々決勝は従来までは翌日に行われていたが、今大会では黒帯初日に組み込まれている。ここで橋本を待っているのは、おそらく第3シードのベベトことカルロス・アルベルトだろう。19年のヨーロピアンでは芝本幸司と対戦し、巧みな試合運びで競り勝った選手だ。さらに今年のパン大会では、優勝候補筆頭のタリソン・ソアレスと決勝で対戦すると、スクランブルにおけるソアレスの動きが場外逃避と判断されたことで得たリードを守り切り、優勝を果たしている。

幸運に恵まれたことは否めないが、上からはソアレスのズボンを巧みにコントロールしてパスのプレッシャーをかけ、下からは長い足を活かしたラッソーを駆使して渡り合っての勝利だった。

世界制覇を目指す橋本にとって、初日にまず超えなくてはならない難敵がこのアルベルトということになる。トップ、ボトム共に高い技量を持つ両者の戦いだが、アルベルトは序盤にトップを選択することもあまり厭わないだけに、いかに橋本が下から崩すかがポイントとなるのではないか。

橋本が無事にここを突破した場合、翌日の準決勝で橋本を待っているのはおそらく第2シードのホドネイ・バルボーザと第7シードのジョナス・アンドラージの勝者になることが予想される。

橋本はバルボーザには2019年のヨーロピアンの決勝で、アンドラージには昨年末の世界大会の準々決勝で敗れている。が、バルボーザ戦は今後を見据えてあえて上攻めを選択して戦った末の僅差の敗戦であり、アンドラージ戦は終盤まで橋本が試合をリードし勝利が見えていたにもかかわらず、終了45秒前にまさかの膠着ペナルティを受け逆転されるという不運な負け方だった。

両試合とも地力で橋本が劣っていたようには見えず、今回どちらが上がってきても、雪辱を果たす良い機会と言えそうだ。

もう一方のブロックを勝ち上がって決勝に進出するのは、第1シードのタリソン・ソアレスか、あるいは第4シードにして今年のブラジレイロを制した新鋭のホドリゴ・オリヴェイラになるか。あるいは第6シードのクレベル・ソウザという目もあるだろう。

橋本は20年のヨーロピアンの準決勝にてソウザと対戦し、競り勝って前年の雪辱を果たした。さらにソアレスとの初対決となった決勝戦では、三角絞めを完全にロックオンしで場外逃避を誘い、一本勝ちに等しい形で優勝を果たしている。決勝で当たる3人は全て世界トップクラスの超難敵だが、橋本の勝機は決して小さいものではない。

今回、順調に減量が進んでおり調子も良いという橋本。技術面、肉体面、精神面とどれも充実した状態で臨む今回の世界大会は、日本人男子黒帯初の世界制覇という偉業に向け、これまでで最大のチャンスとなる。

The post 【WJJC2022】ルースター級=マイキーとマルファシーニが欠場。橋本知之に好機到来も道のりは平坦でなく first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o PJJC2022   ケヴィン・カラスコ ジュニー・オカシオ メイハン・マキニ ルーカス・ピニェーロ 橋本知之

【PJJC2022】橋本知之、ライトフェザー級でも3位獲得。優勝は橋本を下した、メイハン・マキニ

6日(水・現地時間)から10日(日・同)まで、フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナにて、パン柔術選手権が行われた。世界の強豪が集結し、6月の世界大会の行方を占う上でもきわめて重要なこの大会。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第1回は、世界一に最も近い日本人選手、橋本知之が出場したライトフェザー級の模様を、橋本の戦いぶりを中心に紹介したい。


<ライトフェザー級準々決勝/10分1R>
橋本知之(日本)
Def.2-2 アドバンテージ1-0
ペドロ・クレメンチ(ブラジル)

橋本は、初日に行われるはずだった初戦を対戦相手のジュニー・オカシオが欠場したために不戦勝。2日目のクレメンチとの準々決勝が今大会初登場となった。

両者引き込みから、橋本はすぐに左足にベリンボロを仕掛ける。マットに背中を付けるクレメンチに対し、クラブライドからサイドに付きかける橋本。クレメンチが後転して逃げようとしたところで、橋本はファーサイドの腕十字狙いへ。右腕を伸ばされかけたクレメンチはうつ伏せになって耐え、やがて腕を抜くことに成功。が、ここで橋本にアドバンテージが一つ入った。

さらに橋本はベリンボロで追撃を試みるが、ここでブレイク。両者にダブルガードのペナルティが与えられてスタンド再開となった。極め切ることはできなかった橋本だが、強豪相手に見事な先制攻撃で先行してみせた。

再開後、橋本はシッティングからクレメンチの右足にウェイターガードで絡む。さらに下に潜り込んだ橋本は後転してするようにクレメンチを崩し、ズボンの後ろを取って上を狙う、が、クレメンチはズボンをひきさげられながらも立ち上がり、ブレイクに。

再開後、再び左足に絡んだ橋本は、そのまま外回転でクレメンチを崩して上になることに成功。2点を獲得した。が、下になったクレメンチはすぐに強烈なカラードラッグを仕掛けて上を取り返し、ポイント2-2に。クレメンチはそのまま橋本の足を捌いてのパスを狙うが、橋本はインヴァーテッドで対応して戻した。

その後も橋本が下でオープンガードを取る展開が続く。アドバンテージ1つ負けているクレメンチは、橋本のスイープに耐えつつ足を捌こうとするが、高い柔軟性を誇る橋本の足と両腕のフレームを超えられないまま時間が過ぎていった。

終盤、橋本の右足に足関節を仕掛けるクレメンチ。極まらないと見るやさらにその足を流しにかかるが橋本は許さず、時間切れ。

先制攻撃でリードを奪った橋本が、その後も得意のオープンガードで相手にペースを取らせずに快勝。国際大会常連のクレメンチに対して、改めて世界トップレベルの実力を見せつけた。

<ライトフェザー級準決勝/10分1R>
メイハン・マキニ(ブラジル)
Def.0-0 アドバンテージ1-0
橋本知之(日本)

準決勝で橋本を待っていたのは、強力なトップゲームを誇る優勝候補の新鋭メイハン・マキニ。初日にいきなり実現したジエゴ・ヘイスとの大一番において、スイープで先制後、延々と展開された50/50シーソーゲームで最後に上をキープして勝利。二日目の準々決勝はケヴィン・カラスコに上から圧力をかけて背後に回ると、ギチョークで2分足らずで一本勝ち。消耗度は前戦で10分戦った橋本より少なそうだ。

試合開始後両者引き込むが、マキニはすぐに上を選択してアドバンテージ1を獲得。トップのマキニとボトムの橋本、お互いが強い面をぶつけ合う展開となった。

下から左足に絡もうとする橋本だが、マキニは絡んでくる右足を押さえつけて足を抜いて距離を取る。さすがのバランスと捌きだ。シッティングから近づく橋本に対し、マキニはその体を二つ折りにするように両足首を上から押さえつけ、マットと橋本の背中の間に体を入れてのバック狙い。マキニじゃ右手で橋本の帯の背中を取って起き上がりながら、左足をレッグドラッグの形に流して掴む。

強烈に橋本の体を引きつけて浮かせてから、再びバックを狙うマキニ。が、橋本は背中をマットに付けて距離を取って凌いでみせた。

橋本は下からマキニの左足をアキレスグリップで捉え、立ち上がったメイハンのバランスを崩しにかかる。が。マキニはここも強靭なバランスを発揮すると、橋本の両足を押し下げて左にパス狙い。橋本も柔軟な体を利用したインヴァーテッドで防ぐと正対してみせた。ここまでで2分半。お互い譲らずに持ち味を発揮した攻防だが、橋本の方が守勢を余儀なくされているのは否めない。

その後も橋本はシッティングで近づき、またラッソーや内掛けガードからの攻撃を試みるが、マキニはバランスを保って上から圧力をかけ、また絡んでくる橋本の足を捌きつつ左右にパスを仕掛けてゆく。そのたびに橋本もガードワークで対抗。世界最高峰のマキニのトップからの攻撃に対し、ニアパスまで持っていかれることなく見事に防いでみせている橋本だが、アドバン1つリードされている状況で反撃の緒をなかなか掴めないまま時間が過ぎていった。

後半に入り、橋本はウェイターガードから潜り込んで後転するようにマキニのバランスを崩す。が、マキニはすぐに体勢を立て直して足を抜いて離れることに成功した。

残り2分。距離を取り気味のマキニに対し橋本がシッティングで近づいて左足に絡むと、マキニはカウンターで飛び込んでのバック狙い。それはエビで凌いだ橋本だが、またしても崩せずに距離を取られてしまった。

さらに橋本は左足に絡んでベリンボロを狙うが、ここもバランスを保つマキニ。ならばとウェイターで潜り込んでマキニの体勢を崩しかけた橋本だが、マキニは右腕をポストして巧みにポジションキープし、離れることに成功。それでも追いすがる橋本だが、時間切れ。

圧倒的なトップゲームを誇るマキニ相手によく渡り合い、改めて世界トップの実力を示した橋本だが、崩しきることはできず。結局、最初の上選択のアドバンテージを守り抜かれる形での惜敗となった。

試合後の動画で橋本は、初戦のクレメンチ戦で力を使い過ぎたこともあり、30分ほどのインターバルで臨んだこの試合では、当初計画していたように序盤から攻撃姿勢に入ることはできなかったと明かした。さらに国際大会の舞台で世界のトップと肌を合わせることで、6月の世界大会に向けて具体的な肉体的・技術的改善点が見えてきたと語った。

現状では、6月は本来のルースター級での参戦に心が傾きかけている様子の橋本。ライトフェザー級の最高峰でこの堂々たる戦い、そして試合後の冷静かつ前向きな本人の姿勢からすると、日本人男子初の黒帯世界王者誕生の可能性は、十分にあると見て良さそうだ。

さて、橋本に勝利したマキニを決勝で待っていたのは、ルーカス・ピニェーロ。準決勝で優勝候補のイアゴ・ジョルジからテイクダウンでリードを奪うと、最後はうつ伏せになってのフットロックで一本勝ちして決勝進出を果たしている。

マキニはノーギでも活躍するピニェーロのテイクダウン狙いをことごとく切ると、やがて引き込んだピニェーロの足を捌いてパスガードに成功、さらにマウントで7-0とリードを広げた。一度ピニェーロにガードに戻され、終盤残り15秒ほどで無理せずスイープを許して2点を失ったマキニだが、結局そのままガードをキープ。7-2で完勝してパン大会制覇を果たした。

【ライトフェザー級リザルト】
優勝 メイハン・マキニ(ブラジル)
準優勝 ルーカス・ピニェーロ(ブラジル)
3位 橋本知之(日本)、イアゴ・ジョルジ(ブラジル)

The post 【PJJC2022】橋本知之、ライトフェザー級でも3位獲得。優勝は橋本を下した、メイハン・マキニ first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o PJJC2022 アンディ・ムラサキ アンデウソン・ムニス エリキ・ムニス クレイグ・ジョーンズ グーテンベルギ・ペレイラ ジョナタ・アウヴェス タイナン・ダウプラ タリソン・ソアレス ダンテ・リオン ディヴォンテ・ジョンソン ブルーノ・マルファシーニ ペドロ・マリーニョ ホベルト・アブレウ リーヴァイ・ジョーンズレアリー レアンドロ・ロ ロベルト・ヒメネス 嶋田裕太 橋本知之

【PJJC2022】パン柔術見所。ライト級のムラサキ✖アウヴェス。ミドル級はダウプラ、ヒメネスらに注目

【写真】昨年のパンナムは8ファイナル敗退だったアンディ・ムラサキ。今年はどうなる?!(C)EUG

フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナで6日(水・現地時間)から、IBJJFパン柔術選手権が10日(日・同)の日程で始まっている。

世界の強豪が集結し、6月の世界大会の行方を占う上でもきわめて重要なこのパン柔術。プレビュー最終回は橋本知之が出場するライトフェザー級、嶋田裕太が出場するフェザー級以外について考察したい。


【ルースター級】
本命は2020年のヨーロピアンでブルーノ・マルファシーニ越えを果たし(その年は惜しくも決勝で橋本知之に敗れたものの)、今年のヨーロピアンで優勝を果たしているタリソン・ソアレスか。ソアレスと決勝で対峙する有力候補としては、2019年のヨーロピアンで芝本幸司に快勝したカルロス・アルベルトが挙げられるだろう。

(C)EUG

【ライト級】

この大会2連覇中、AOJのジョナタ・アウヴェスがエントリー。昨年のEUG2のトーナメント決勝にて、柔術の神の子ことミカ・ガルバォンと対戦し、一度トップを取ったら這いつくばってでもキープする執念の戦いぶりでリードを守り切って優勝した姿が印象深い。

そして別ブロックには、ティーン時代を日本で過ごし、昨年のEUG1で世界的黒帯を3タテして衝撃の黒帯デビューを果たしたアトスのアンディ・ムラサキがいる。

23歳のアウヴェスと22歳のムラサキは今年のLAオープンの決勝でも対戦し、この時は8-8のアドヴァンテージ差でアウヴェスが勝利している。柔術界の未来を背負う新世代のライバル対決が、今回決勝でまた見られる可能性は高そうだ。

(C)SATOSHI NARITA

【ミドル級】

大本命は、昨年の世界大会初出場にて初優勝を果たしたタイナン・ダウプラ。鍛え上げたフィジカルを武器に、万力のオープンガードで相手をたちどころにスイープして上を取ると、問答無用の圧力で相手のガードを潰して極めまで持ってゆく戦い方は圧巻だ。

(C)FLOGRAPPLING

そのミドル級、ダウプラの初戦が要・注目だ。

1回戦シードのダウプラが初戦で当たる可能性が高いのが、WNO等のノーギシーンでも目覚ましい活躍を見せるロベルト・ヒメネスだ。見事なバックグラブの技術とどこからでも極めを狙うダイナミックな戦いを身上とするヒメネスが、ダウプラの盤石の戦いぶりを崩せるか、注目したい。

ここをダウプラが順当に勝ち上がれば、おそらく準決勝で当たるのはホナウド・ジュニオール。昨年はパン大会、世界大会とどちらもダウプラの軍門を下っているだけに、雪辱に向ける気持ちは強いだろう。

もう一つのブロックにも強豪選手が散見されるが、ダウプラとの決勝を期待したいのは豪州出身のリーヴァイ・ジョーンズレアリー。抜群の切れ味のベリンボロ・ゲームの持ち主で、以前絶対王者ルーカス・レプリの必殺ニースライス・パスを凌駕してみせて世界を驚かせた。レアリーのベリンボロは、ベリンボロを世界に広めたメンデス兄弟を師に仰ぐダウプラにどこまで通用するのだろうか。

【ミディアムヘビー級】

最大のビッグネームは、階級世界制覇のレジェンド、レアンドロ・ロ。ユニティのムリーロ・サンタナ門下に入ったロと、別ブロックにいる師のサンタナによるクローズアウトが実現するかどうかが注目だ。

この二人を止める候補としては、メンデス兄弟の弟子にして昨年の茶帯世界王者マテウス・ホドリゲスや、昨年のF2W 166でダンテ・リオンに勝利する等ノーギで活躍するマニュエル・ヒバマーらが挙げられる。

【ヘビー級】
第1シードはポーランド出身、今年のヨーロピアン王者のアダム・ワルジンスキ。準々決勝では2019年のADCC世界王者にして、世界柔術でも二度3位入賞しているマテウス・ディニズと当たる可能性が大きく、この対戦がトーナメント序盤の大きなヤマとなりそうだ。

別ブロックでは、素晴らしい切れ味のヒールやギロチンを武器にノーギシーンで活躍し、1月のWNOではクレイグ・ジョーンズを破る殊勲の星を挙げたペドロ・マリーニョがエントリー、道着着用での戦い方も注目だ。

【スーパーヘビー級】
昨年の世界柔術初出場初優勝を果たしたエリキ・ムニスが大本命。長いリーリを活かしたスパイダーガードはまさに難攻不落、別ブロックにいる兄のアンデウソン・ムニスとともにクローズアウトを狙う。

が、アンデウソンのブロックには、エリキと昨年の世界大会決勝を争い僅差で敗れたフィリッペ・アンドリューや、そのアンドリューに道着着用の世界大会では敗れたものの、ノーギ・ワールズではアナコンダ・チョークで一本勝ちを収めて優勝したディヴォンテ・ジョンソン等の有力選手が控えている。

(C)SATOSHI NARITA

【ウルトラヘビー級】

最大のビッグネームは、サイボーグことホベルト・アブレウ。13年にADCC世界大会無差別級を制し、昨年もノーギ・ワールズで優勝する等その強さは健在だ。ノーギ専門家というイメージが強いが。その必殺のトルネードスイープは、道着着用にてグリップを確保することで威力が増すはずだ。準々決勝で当たる、昨年サウスアメリカンを完全制覇しているワラス・コスタとの試合がまずはヤマとなりそうだ。

もう一つのブロックには、強靭なベースを誇り、昨年、今年とワールドプロ大会を2連覇しているグーテンベルギ・ペレイラがいる。ちなみにペレイラとコスタは今年のグランドスラム・ロンドンの決勝でも当たり、僅差でコスタに凱歌が上がっており、今回の決勝で再戦が実現する可能性は大いにあるだろう。

The post 【PJJC2022】パン柔術見所。ライト級のムラサキ✖アウヴェス。ミドル級はダウプラ、ヒメネスらに注目 first appeared on MMAPLANET.