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【ONE FN03】越えろ、Do Sportsの壁。ケイド・ルオトロ「サンビストはTDもレッグロックもできる」

【写真】ケイド・ルオトロがONEを舞台にグラップリングの歴史を変えることができるか(C)SATOSHI NARITA

22日(土・現地時間)、マレーシアはクアラルンプールのアシアタ・アリーナで開催されるONE Fight Night03「Lineker vs Andrade」でONEサブミッショングラップリング世界ライト級王座決定戦が組まれ、ケイド・ルオトロがウアリ・クルジェフと対戦する。

ケイドといえば9月に行われたADCC2022の77キロ級で4試合連続一本勝ちを飾り、19歳9カ月という最年少ADCC世界王者に輝いたばかり。今、最も注目されているグラップラーだ。

ADCCは前半がサブオンリー、後半からポイントという特殊なルールセットとなっているが、ONEはケージ使用のサブオンリーで極めが重視される。とはいえ、先のライト級王座決定戦=マイキー・ムスメシ✖クレベル・ソウザ戦のようにテイクダウンの攻防はスルーできるルールになっている。投げ、抑え、スクランブルというのはグラップリング競技の醍醐味の一つであり、ADCCでも勝負の行方を分けるキー・ファクターであった。

ルールの違いが、試合展開の違いを生むのは当然。それでもケイドの唯一無二のゴールは対戦相手を仕留めること。ルールによってプロセスが変化するが、ケイド自身はサンビストであり柔道家のクルジェフとの対戦を楽しみにしている。その理由こそ、グラップリングを見る側にとっても楽しめる要素となっている。

グラップリング=Do Sportsという壁を破るべき、世界最高のグラップラーの組み技、柔術論に注視してほしい。


──ADCCで世界一に輝いたグラップラーの多くが、暫らくは競技会から離れるかと思いますが(※88キロ級優勝のジャンカルロ・ボドニは10月23日開催のEBI=エディ・ブラボー・インビテーショナルに出場)、ケイドは10月23日にクアランプールで、ONEチャンピオンシップのサークルケージでサブミッショングラップリング世界ライト級王座を賭けてウアリ・クルジェフと対戦します。

「今回の対戦相手はサンボと柔道出身で、上半身への攻めが強力だ。うん、凄く楽しみだよ。サンビストはテイクダウンが強くて、レッグロックに秀でている。興味深いよ。テイクダウンとレッグロックって、ADCCのメイン・スタイルだからね」

──確かにその通りですね。

「ADCCにレスリングは必須だよ。レスリングを避けているようでは、絶対に勝てない。でもADCCに出ているレスラーの弱点はレッグロックなんだよ。サンビストは違うだろう? テイクダウンもレッグロックも強いクルジェフと、僕の戦いがどうなるのか。想像するだけでも、ワクワクしてくるよ」

──ムエタイやキックボクシング、MMAを見に来ているファンの前でのサブオンリーファイト、観客を満足させることを意識するとタップを奪うことが絶対です。そのような戦いを心掛けることで、ケイドはサブミッション・ファイターとして進化するのでしょうか。

「イエス、絶対的にね。ONEでの試合はサブミッションにフォーカスしている。ただし前回のシンヤ・アオキとの試合は、そこを意識する余りにミスが多かった。サブミッションを仕掛けすぎると、対戦相手のディフェンスへの意識は高まる。だから、あの試合は極めそこなってしまったんだ。僕はサブミッションに気持ちがいき過ぎていた。フィニッシュすることが、自分の役目だと思っていたんだ。決して僕自身のためじゃなくて、柔術のために必要だと考え過ぎていた」

──柔術のために? それはどういうことでしょうか。

「柔術は普及にもの凄く時間が掛かるスポーツだ。普通の人が視て楽しむことは、とても難しい。世界最高峰の黒帯の世界大会で、どれだけ退屈な試合が続くか。一般の人が見たら、10分間何も動きがない。ずっと同じことをしていると思われる。それが柔術の最高峰の戦いなんだ。

でもONEで戦う時はムエタイやMMAというエキサイティングなマーシャルアーツと見比べられる状況にあることを忘れてはいけない。だからこそ、次の試合でも必ずフィニッシュを狙うよ」

──観客がエキサイトするのは、サブオンリーかポイント制か、議論の余地があるかと思います。サブミッション決着は、ファンの求めるところでしょう。ただポイントがあれば、どちらが優勢なのか可視化できるという良さもあります。それにサブオンリーでは引き込みにより、テイクダウンの攻防がなくなることも多いです。

「テイクダウンの攻防がなくなるのは、僕の戦い方じゃない。僕はテイクダウンして、パス。そしてサブミットする。誰と対戦しても戦い方は変わらないよ。作戦も同じだ。テイクダウンが強い相手とレスリングで勝負する。そういう風に戦うことが、エキサイティングなんだ。そして素早くサブミッションを仕掛ける。もちろん、上手くいくかどうかは分からない。でも、僕のゴールは常にサブミッションだよ」

──柔術はポイントを取れば守って勝てます。ケイドは優勢でも、フィニッシュを狙うのですね。

「柔術ではサブミッションの前のポジションが重視される。そこがちょっと僕と違うところで。僕はポジションよりも、先にサブミッションを仕掛ける。ポジショニングを重視過ぎると、その先にあるサブミットするという意識が希薄になるからね。そして、守りのファイトになってしまう。

同様にサブミッションを意識し過ぎると、さっきも言ったように、相手が防御一辺倒になってしまって結果的には、エキサイティングな試合にならない」

──やはりグラップリングを観賞用スポーツとするのはハードルが高そうです。

「結果としてサブミットすれば良いんだよ。ただし、一つの技にトライしてタップを奪えないなら、違う技を仕掛けなければならない。ADCCでもノーポイントの時間帯からテイクダウンを取ってフィニッシュを狙った。でも一本を奪えないなら、ガードを取っても構わない。一つの技に拘ると、ポイント制だろうがサブオンリーだろうが、退屈な試合になってしまうんだ。

ミカ(ガルバォン)のガードからのアタックは同じことが繰り返されて退屈な試合になってしまう。僕はそういう戦いはしない。ミカがガードに固執すると、エキサイティングな試合にはならない。ガードが上手く機能しないなら、レッスルアップしてスタンドでレスリングをすれば良い。そういう風に戦い方を変えることで、グラップリングはエキサイティングなスポーツとして普及できるよ」

※ADCCを制した4試合、ステロイド・フリーの大会で「ナチュラルなのは僕とタイ(ルオトロ)、ロベルト・ヒメネスの3人だけ」(※注インタビュー中のケイドの発言)という爆発力とアイソメトリック・ストレングスの違い。2回戦のヒメネス戦、準決勝のPJ・パーチ戦、そして決勝のミカ・ガルバォン戦とJT・トレス論が聞かれたケイド・ルオトロのインタビューは、10月28日発売のFight & Life#93に掲載されます。

■放送予定
10月1日(土・日本時間)
午前9時00分~ ABEMA格闘チャンネル

■ONE Fight Night03対戦カード

<ONE世界バンタム級(※65.8キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] ジョン・リネケル(ブラジル)
[挑戦者] ファブリシオ・アンドラジ(ブラジル)

<ONEムエタイ世界ライト級王座決定戦/3分5R>
レギン・アーセル(オランダ)
シンサムット・クリンミー(タイ)

<ムエタイ・フライ級ワールドGP決勝戦/3分3R>
スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)
パンパヤック・ジットムアンノン(タイ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
キム・ジェウン(韓国)
シャミル・ガサノフ(ロシア)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ジャレミー・ミアド(フィリピン)
ダニエル・ウィリアムス(豪州)

<ONEサブミッショングラップリング世界ライト級(※77.1キロ)王座決定戦/12分1R>
ケイド・ルオトロ(米国)
ウアリ・クルジェフ(ロシア)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
アミール・ナセリ(イラン)
内藤大樹(日本)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
エイサー・テン・パウ(米国)
メヂ・ザッツプッツ(アルジェリア)

<女子ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
リー・ビヴィンス(米国)
ノエル・グホンジョン(フランス)

<キックボクシング・ヘビー級ワールドGP補欠戦/3分3R>
ラーデ・オバチッチ(セルビア)
ジヤンニス・ストフォリディス(ギリシャ)

ONE162「Zhan vs Di Bella」

2022年10月21日(金・現地時間)
マレーシア クアラルンプール
アシアタ・アリーナ
ONE162「Zhan vs Di Bella」

■放送予定
10月21日(金・日本時間)
午後8時~ ABEMA格闘チャンネル

■対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ) 選手権試合/3分5R>
チャン・ペイミエン(中国)
ジョン・ディベラ(カナダ)

<キック・ライト級/3分3R>
ニキー・ホルツケン(オランダ)
イスラム・ムルタザエフ(ロシア)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
リース・マクラーレン(豪州)
ウインジソン・ハモス(ブラジル)

<キック・フライ級/3分3R>
シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)
ムハマド・ブゥタサ(オランダ)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
アレックス・シウバ(ブラジル)
グスタボ・バラルト(キューバ)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
ジミー・ビエノ(フランス)
ニクラス・ラーセン(デンマーク)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
レアンドロ・イッサ(ブラジル)
アルテム・ビュラク(ロシア)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
エコ・ロニ・サプトラ(インドネシア)
ヨッカイカー・フェアテックス(タイ)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
チョーファー・トー・センティアノーイ(中国)
デニス・ピューリック(ボスニアヘルツェゴビナ)

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【ONE FC03】ケイド・ルオトロがワールドクラスのサンビスト&柔道家クルジェフとライト級王座決定戦

【写真】今最も旬のグラップラーが、抜群のタイミングで絶妙な相手と世界戦を戦う (C)SATOSHI NARITA

1日(土・現地時間)、ONE Championshipが10月22日(土・同)にマレーシアはクアラルンプールのアシアタ・アリーナで開催するONE Fight Night03でケイド・ルオトロがウアリ・クルジェフとONEサブミッショングラップリング世界ライト級王座決定戦を戦うことを発表している。

2年11カ月振りとなるマレーシア大会、そして北米向けイベントに関しては既にONE世界ミドル級選手権試合=王者ライニア・デリダー×挑戦者シャミル・アブデュラエフ、ONE世界バンタム級選手権試合=王者ジョン・リネケル×挑戦者ファブリシオ・アンドラジという2つの世界戦が組まれることが明らかとなっていたが、ここに2階級目の組み技世界タイトル戦が加えられた。


5月のONE初戦で青木真也から判定勝ち。9月のADCC世界大会でラクラン・ディアスを腕十字、ロベルト・ヒメネスを内ヒール、PJ・パーチを腕十字、そして柔術の神の子ミカ・ガルバォンを内ヒールで下し77キロ級を制したケイドは、今一番勢いがあり旬のグラップラーといえる。

先週土曜日のONE FN02ではマイキー・ムスメシがクレベル・ソウザを判定で下し、フライ級のベルトを巻くなど──本格的にワンマッチ&サブオンリー&ケージグラップリングをイベントの軸に加えたONEにあっても、極めという部分においてケイドほどMMAファンや立ち技ファンの支持が得られる存在はいないだろう。

対するクルジェフは33歳のロシア人サンビストであり柔道家だ。クルジェフはサンボでは2011年と2012年、そして2019年と74キロで3度世界選手権を制しており、双子の弟のアリ・クルジェフは2013年の世界銅メダリスト、2017年は欧州選手権を制したサンビストでもある。

そのクルジェフは柔道でも、グランドスラムの73キロ級で優勝経験があり、グランプリ大会も同様に金メダルを1つ、銅メダルを3個獲得している。ケイドにとってもONEにとっても、クルジェフがワールドクラスのサンビスト兼柔道家という点において特色のあるマッチアップになる。

先のフライ級王座決定戦はマイキーとクレベル・ソウザともにIBJJF柔術のトップ同士であり、攻めることが前提のコンバットスポーツにおいて唯一といってよいほど守ること(※逃げることではない)が評価されるIBJJF柔術を勝つ抜く術が身についている。関節を狙う、攻めるという部分でも身を守る感覚が浸透しており、関節技を狙うマイキー、パスを狙うソウザと共に──実は相手の領域に踏み込んだ仕掛けは少なかった。柔術を知り抜いているが故に、水と油ように触れても交わらない攻防に終始し──よりルールセットに準じた戦いをしたマイキーが順当に勝者になった一戦だった。

その点、今回のケイドの相手クルジェフはサンボと柔道とトップアスリートであり、ケイドの領域で戦うとなると攻めるなら攻める、守るなら守るという風に掛け逃げ風のファイトにはならないはずだ。

そしてONEがケージのなかで行うサブミッショングラップリングは──最終的にはこのルールを用いる限りブラジリアン柔術を習得している選手が圧倒的に有利になるが──決してノーギ柔術ではなく、あらゆるスタイルの組み技格闘家がしのぎを削る場として世にアピールすることができる。

ずばりケイドが圧倒的に有利な王座決定戦といえるが、柔道家の投げと抑え、相手が立ち上がっても攻防が継続されるルールでサンビストの極めが如何に強力なのか。そんな組み技浪漫が可視化できる一戦だ。

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【ADCC2022】高橋サブ&堀内勇がADCCを深掘り─03─。77キロ級、トップ4の力有り?! 岩本健汰

【写真】組み合わせは次第、力はベスト4に肉薄しているか──岩本健汰(C)HUYNH NGUYEN

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第3弾は77キロのJT・トレスの対抗馬から、日本から出場する岩本健汰について話を続けてもらった。

<高橋Submission雄己&堀内勇、ADCC深堀対談Part.02はコチラから>


──おお、ニッキー・ライアンですか。

堀内 ダンテ・リオン戦でケガをして、その後にもう一度ヒザをやったようで。本当に復帰直後で、100パーセントとはいえないのでしょうが、「この2、3年レスリングを強化してきて、レスリングには本当に自信がある。ハンド・ファイティング、立ち技で相手を疲れさせることが重要だ。僕はJTと戦っても、レスリングで疲れさせることができて、もしかしたらレッスルアップもできるんじゃないか」という風に言っていました。

一方でミカの方は「JT、強いねぇ。1回戦でも決勝でも戦うのが楽しみだよぉ(笑)」っていう感じなんです(笑)。皆、それぞれがJT対策を練っているようです」

──ニッキーとJTが対戦して……ハンド・ファイティング、つまり組手争いをするということですよね。それが10分とか延長戦まで続くと思うと……。

堀内 アハハハハ。「加点でない時間帯は疲れさせる」と言っていたので、あとからチェックして最初の5分は早送りで良いかと思います(笑)。

高橋 アハハハハ。やっぱりケイドとニッキーかと思います。JTの嫌なことができそうなのは、ケイド。かき回してくれそうです。あとニッキーはB-TEAMのYouTubeとか視ていると、めちゃくちゃレスが強くなっていますね。ADCCルール的にレスリングの地力でJTに勝つこともあり得るかと。ミカ以外の対抗馬は僕もケイドとニッキーかなという感じです。

そういうなかでルーカス・レプリが欠場という残念な情報を見ました。

──レプリは実戦の感がどれだけ戻っているのかというのがあったのですが、残念です。JTのADCCの勝ち方でルールを理解して纏めてくる。それはIBJJF的フィロソフィーだという部分、実は岩本健汰選手に話題が進まないかと振りでした。

堀内 そういうことだったのですか(笑)。

──優勝、JT越えが現実的な話題かどうかは、さておいて日本からたった1人の出場選手で、B-TEAMで鍛えて本戦に挑む岩本選手に言及して欲しかったです。

高橋 う~ん……。

堀内 僕がスッと岩本選手の名前が優勝候補やそこに勝つというところで出てこなかったのは、やはり岩本選手と世界のトップの試合を見ていないからであって期待をしていないということは絶対にないです。

ツイッターを見せていただくと、B-TEAMで指導を代行したり、本当に凄いことだと思います。あのトップどころに短期間でそこまで認められて。ベン・エディにも勝っていますし。

高橋 地力は間違いなく、トップレベルに追随しています。僕も身をもって岩本さんの強さをロータスの練習で知っているけど、如何せん比較対象となるJTやミカと肌を合わせたわけでないので、肌感覚物差しでは話せない。そうなると過去の試合を見て、客観的な分析からルールに合う部分を揃えて勝敗予想をしていきたいですけど、こっちの物差しで測ろうとすると岩本さんの試合データがなかなかなくて、比べることが難しい状況です。

──となると、過去の実績で評価してしまうのが世の常ですね。それとアジア&オセニア予選の優勝者が、過去にどういうリザルトだったのかが判断材料になってしまいます。

高橋 ただB-TEAMで認められていて、組み技のレベルとしてトップグループに追随している。あとスタイル・マッチアップを考えると岩本さんはサブオンリーでなく、ADCCルール向きです。この条件でいうと、ベスト4候補のニッキーと練習して認められている。しかもニッキーに立ち技を教えていたりしています。そうなるとスタイルはADCCにバッチリ合っていて、組み技のレベルでトップに追随しているという理屈だと、ベスト4に食い込んでくる候補として挙げても良いのかもしれないとは思います。

──ベスト4候補というのは、ベスト4に入る力の持ち主ということですね。ただし、組み合わせで次第で、それこそ初戦でJT、ミカ、ケイド、ニッキーと当たることもあります。

堀内 アジア&オセアニア予選の優勝者は第1シードか第2シードに当てられる印象が強いです(苦笑)。

高橋 そこを乗り越えても、消耗するだろうし不利になってきますね。

──ではトーナメント枠を取っ払って16人の枠のなかで順位をつけるとすれば、現在の岩本選手は何位になると思われますか。

高橋 ベスト4はあると思います。

──堀内さんは?

堀内 僕は……そこは分からないです。でも、本当に期待しています。最後にエントリーされたマジット・ヘイジとかには勝って欲しいです。他の選手もトミー・ランガカー、オリヴィエ・タザ、ウィリアム・タケット、先に名前が出ていてもおかしくないロベルト・ヒメネス、ラクラン・ジャイルズ、ダヴィ・ハモス、ヘナート・カヌート、PJ・パーチ、アンディ・ヴェレラは少し落ちるかもしれないですけど。

──言うて石井慧選手にSUGで勝っていますし。

堀内 それだけ凄い選手しか、いないってことなんですよね。

高橋 俺、今挙がった中の選手だったらヴェレラ、バーチ、タケット、なんならラクランだと岩本さんが勝つかなって思っています。ただ、そこと1回戦で当たることがないんですよね。でもフラットに見たら、それぐらいの強さを岩本さんは持っていると思います。

──ならADCCだけでなく、世界のプロ・グラップリングの場に挑戦する姿も見たいですね。

高橋 ただしADCCルール向きというのは有ると思います。ルール云々でなく、組み技全体の総合力という部分では、岩本さんはトップレベルにいるんじゃないかと……いて欲しいという希望的観測はあります。触れてみて、凄く強いと思うから。岩本さんがボコボコにされたら、そのレベルってどうなんだって──となってしまうので。

堀内 ブラジル、そして米国ばかりだったころに北欧からランガカー、エスペン・マティエセン、豪州からラクランとクレイグ・ジョーンズが出てきたように、極東から岩本選手がバーンと来たら、本当に夢がありますよね。

──この場で、このメンバーと戦って、勝負論まで語ることができる日本人グラップラーが過去にいたのかということですし。

高橋 本当にそうですよね。

<この項、続く>

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JJ Globo PJ・パーチ Report WNO08 ニッキー・ライアン ブログ

【WHO08】ニッキー・ライアン、重厚さ増した組みでBJ・パーチに「なぜか」スプリット勝利

4月30日(金・現地時間)、テキサス州オースチンのJWマリオットで、限定有観客大会として開催されたWNO 08。

レビュー第4回は若手の台頭が目立つグラップリング界にあって忘れてはならないニッキー・ライアンが、10thPlanetのPJ・バーチを相手に見せた重厚な一戦の模様をお届けしたい。
Text by Isamu Horiuchi


<175ポンド/15分1R>
ニッキー・ライアン(米国)
Def. 2-1
PJ・バーチ(米国)

当初「自分はいつも下から足関節を極めて勝つから、今回はできる限りそうせずにレスリングで勝負したい」と語っていたニッキー。すぐに座ると、バーチの右足に両足を絡めて崩しながら左足を取って立ち上がり、シングルレッグ狙いに。バーチはすかさずキムラロックのグリップから後方へ投げてカウンター。その動きについていってバックを取りかけるニッキー。だがバーチもすかさずスクランブルで振りほどいて距離を取ってみせた。

再び座ったニッキー。今度はバーチの右足を取ってのシットアップを狙うが、バーチはすかさず距離をとって回避。バーチは改めて右ヒザを前に出してのパスを狙おうとするが、ニッキーがそこにすかさず足を絡めてゆくと、距離を取ることを余儀なくされる。

その後もニッキーが下から足を絡めて仕掛けてゆき、バーチがそのたびに回避する展開が続く。バーチの方はニッキーのヒザと腕のフレームに阻まれてほとんどパスを仕掛けられない。ニッキーはバーチが立つと常に足でコネクションを作って崩し続け、逆にバーチが低く攻めようとすると鉄壁のシールドとフレームで距離を取る。そして常にニッキーはバーチに正対してそのセンターを取り続けている。

途中、ニッキーが下からバーチの左腕を肩にかけて伸ばしかける場面を作るが、バーチは距離を取って回避。またニッキーは下からバーチの右ヒザを抱えて立ち上がってシングルレッグで上を取りかけるが、D1レスリングベースを持つバーチはそのたびにスクランブルに成功した。

残り時間が少なくなっていくが、バーチはニッキーのシールドとフレームを超えられない。逆にニッキーの方も下から足を取りに行くものの、バーチに早めに距離を取られていい場面を作れない状況が続くなか、試合は終了した。

ジャッジは2-1でニッキーを支持。フィニッシュに迫る場面こそ両者ともなかったものの、ニッキーが常に相手のセンターを取って試合を支配し、何度かバーチを崩して上を取りかけ、さらに一度バーチの左腕を伸ばす体勢まで作ったことを考えると、割れたのが意外な判定だった。

試合後勝者は「こちらのテイクダウンに対する彼(バーチ)の反応が予想以上に良かったんだ。キムラロックを狙ってくるのは分かっていたんだけど。僕は練習では相手を抑え込めるんだけど、彼のことは抑えこめなかった。正直この試合の出来には満足できないよ。僕の最悪のパフォーマンスの一つだったと思う。サブミットできなかったし、脅かす場面すらも作れなかった。今後はもっと抑え込みを強くしないと」と語った。

確かに今回派手な勝ち方はできなかったものの、それは得意技に頼らず、試合を通して課題を克服しようとした結果。強豪を相手に目先の勝利だけでなく将来まで見据えた戦いをし、完勝してなお反省する19歳の未来は、明るい。

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JJ Globo PJ・パーチ Preview WNO08 イサン・クレリンステン ケイド・ルオトロ ニッキー・ライアン ブログ

【WNO08】ダナハー軍のニッキー・ライン&クレリンステンが、10thPlanet&ATOS勢と組技の宴

【写真】1年半前のADCCでは66キロ級でシェーン・ヒルテイラーに勝利のニッキー・ライアン。今回の試合は175ポンド契約、実に79.37キロだ!!(C)SATOSHI NARITA

30日(金・現地時間)、テキサス州オースチンのJWマリオットで、制限を設けた有観客大会として開催されるWNO 08。

純粋にプログラップリングイベントとしてプレリミアム感を醸し出し、注目のカードが数多く見られる同大会──ここではダナハー軍団と10thPlanet、ATOSの精鋭がぶつかる2試合の見所を紹介したい。
Text by Isamu Horiuchi


<ノーギ/15分1R>
ニッキー・ライアン(米国)
PJバーチ(米国)

現在世界最強のノーギグラップラー、ゴードン・ライアンを兄に持つニッキーは、現在19歳。ダナハー軍団らしくシッティングガードからの足関節を中心とした多彩な仕掛けを持つ。2018年にQUINTET 3 で所英男を、Polaris 8で今成正和をチョークで下し、日本のファンにもその実力を知らしめた。

また2019年のADCC世界大会では、1回戦で柔術世界王者シェーン・ヒルテイラーに僅差の勝利を挙げている(続く準々決勝でパウロ・ミヤオに惜敗)。

対するPJ・バーチは、ハイスクール&カレッジのレスリングを経験した後、ブギーマンことリッチー・マルチネスの道場で10th planet系の技術を身につけて頭角を現した。そして2018年のQUINTET03において、柔術レジェンドのヴィトー・シャオリン・ヒベイロから内回りでバックを奪い、腕十字で一本勝ち。世界を驚かせた。

今年に入ってからもジョン・コムズを内ヒールで仕留める等、高い極め力を誇るバーチ。だがこれまでダナハー軍相手には分が悪く、ゴードン・ライアンにはチョークで、オリバー・タザには内ヒール、そしてイサン・クレリンステンにはEBI式オーバータイムで敗れている。

バーチが所属する10th planet柔術の総帥エディ・ブラボーは、自らが創設したEBIで大活躍したダナハー軍の足関節を中心としたシステムを常に絶賛。徹底的に研究した上で自らの技術体系に取り入れていることを認めている。当然その打倒法の探究にも余念がないはずだ。今回バーチは、どのような方法で精緻きわまりなく──かつ急激に大きくなっているニッキーのシッティングガードに対抗するのだろうか見ものだ。

<ノーギ/15分1R>
イサン・クレリンステン(カナダ)
ケイド・ルオトロ(米国)

クレリンステンはカナダのモントリオール出身の27才。メガジムとして有名なトライスタージムにて名伯楽フィラス・ザハビの下で柔術を学び、やがてザハビの師匠であるダナハー門下に加わった。

2020年末に共に黒帯昇格したチームメイトのニッキー・ライアン同様、シッディングガードからの仕掛けを中心に試合を組み立てる技師だ。

対する18歳のケイド・ルオトロは、双子の兄弟であるタイとともに幼少時から注目を浴びていた次世代グラップラー。タイ同様にトップからダイナミックに動きノンストップにパスを仕掛け続ける戦いを身上とする。

この両者は昨年のWNO大会で一度当たっており、その時はしきりに下から足を絡めて足関節を狙うクレリンステンが、二度にわたってスイープからマウントを奪取する等、ポジション争いでも明らかに優位に立った。

が、判定では意外にも3人ともケイドを支持。サブミッションの仕掛けを最大重視するという指針のもとで、ケイドの下からのアームロック狙いや終盤に仕掛けたエスティマロックが評価された形となった。

当然のように多くの異論が出たこの判定を機に、WNOは判定基準を見直すことに。ポジションの優劣を評価に組み入れつつ、サブミッションは深く入ったもののみを大きく扱うという形に変更された上で、今回の再戦となる。

今回も「下攻めのクレリンステン対上攻めのケイド」という構図は変わらないだろう。前回苦戦を強いられたケイドが、絡んでくるクレリンステンの足をいかにさばいて突破してゆくかが見どころだ。

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