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【Special】WithコロナのJ-MMA─04─パンクラス坂本靖統括本部長<後編>「イバラの道ですが……」

【写真】9月が無観客、10月大会はガイドラインに則して客入れを行うという発表が、今回の取材後に酒井代表より発表があった(C)MMAPLANET

COVID19のパンデミック、地球はニューノーマルの時代を迎えた。日本でも4月と5月の緊急事態宣言を経て、6月から経済活動が再開も、事態が終息することはない。

MMA界はかつてない状況のなかを生き抜く努力をしている。MMAPLANETでは各MMA大会の主要人物に新型コロナウィルス感染に関しての現状とこれからを尋ねた。

最終回はパンクラス、坂本靖統括本部長インタビュー後編をお送りしたい。団体関係者として、魂の叫びが聞こえた……。

<坂本靖インタビューPart.01はコチラから>

──本格的な感染拡大から半年が過ぎ、正直なところ格闘技関係者のなかにも新型コロナウィルスは何でもない、自分は大丈夫だという空気の人もいます。

「いますね。だから会場ではマスクだとか消毒とか、できることは徹底していただきます。パンクラスは1度、当日に大会が中止になりました。そこで大会に関わる誰もが、より慎重になってくれることを願います」

──しかし、無観客にするとどのように利益を搾り出すのか本当に頭が痛いかと。今は共生時代でGO to トラベルまでしているわけですし。野球もサッカーも、コンサートも5000人枠を取っ払って、館内50パーセントという風に移行しつつあります。

「時代に逆行していますよね。イバラの道だと思います。本当に厳しいですよ。それでも選手だけでなく、中止になった大会の業者さんが、こちらのことを考えて請求も割引いてくださったり、色々と温かみを感じています。

そうやって毎日を過ごしてきたのですが、良い意味でも悪い意味でも話題になってしまったので、『大会を当日に中止したパンクラスです。これからは、こういう形で大会を行っていきます』という説明をして、協賛金を集めたり、映像ビジネスをしっかりと考えないといけないです」

──検査費用だけでもかさみます。多くのプロモーションでは試合数を減らす傾向にあるなかで、パンクラスは試合数が多いです。

「それは考えます。ホントに。試合数が多いとリスクも高まります。9月、10月と大会を重ねることで、その辺りも協議していくことになるかと思います。

そして検査体制がPCRなどで一斉とならない限り、まずは抗体ということだと過去に感染していた選手、関係者の数は増加する一方になるはずです。そのために自己申告書というモノを9月27日の大会から提出していただこうと思っています。

医療関係者に尋ねても1度感染した人は2度目はないのか。感染してから、どれだけ経過すれば他の人と接触しても良いのか。抗体があって抗原検査で陰性になるのか……それらの臨床データも揃っていないというのが実情でした。現状(インタビュー時点で)、ようやく60日というデータが出たばかりで。

ではパンクラスでは過去の感染者に関しては感染日から70日が経過した選手にオファーを出す方向になりました。でも試合の1週間前にはPCR検査をしてもらい、陰性なら良いと。加えて、当日に抗原検査をする(※LAMP法検査採用で、この辺りの状況も変更されることが予想される)」

──欧米や多くの国と違い、PCR検査が広まっていないことが何をするにもネックとなるかと。

「もう愚痴になりますけど、こういうことを一つのスポーツの大会主催者が考えることなのか……、国や自治体のガイドラインがないのかとは思います」

──仰る通りだと思います。年間、○十万以上の健康保険を支払っている。それで一度もPCRを保険で受けることができないのかと私も心底思います。私が住んでいる区では、中学生まで医療費を保険がカバーしてもらえる地域ではありますが。

「PCRも保険適用で受けるようにすると区長さんが発言してくれただけ、素晴らしい区だと思いますよ」

──ただし、繰り返ししないと現状は検査を受けた時点で陰性か陽性でしかない。ここは変わりないというジレンマはありますが、子供たちや老人が一度は受けることができる──とりあえずは医療従事者や老人介護の仕事をしている方からですが、進んで行って欲しいです。それでも、これほどコロナに関する対処で国や都、行政の決まり事がないのは、どうしたものかと……。

「抗原検査で陰性が出た。保健所からは公共交通機関を使って帰宅させてはいけないという指示がありました」

──ハイ。

「タクシーもダメです。分かります、そこは。では、どう対処すれば良いのか。歩いて帰るのですか? 今後、地方から来ている選手で陽性が出たら……どうなるのか。どうすれば良いかと尋ねると、『それは自分たちで考えてください』とう返答だったんです……」

──いやいやいや。

「……。じゃぁ、どうすれば良いんだと。私たちがそれを決める。私たちは医療従事者でもなく、感染予防のプロでもない。でも、私たちが自分で決めて動かないといけない。レンタカーなのか、主催者が予防して送っていくのか。だから、先ほど申したように、これは団体が考えて解決できる質の問題なのかと……」

──その域を完全に越えた社会事象です。

「経済活動再開、三密を避けて自分で自分の身を守る。それは理解できます。ただし、感染が起こった場合のガイドラインはなく、『自分たちで考えて』と言われてしまうのか……と」

──MMA界という限定した社会においてもパンクラスだけでなく、業界全体の問題です。ただし検査に関してだけでも、足並みを揃えようという動きには至っていないです。

「足並みを揃えたいですね。ただし、コロナで世界が一つになるということはなく、自分の国だけ守ろうとしている。それが国家であり、言ってしまうと団体にも当てはまります。それが人間の性なのかと……。

ただし、この状況だからこそ選手の好意を凄く感じます。『いざ、鎌倉』ではないですが、特に地方の選手から温かい声が聞かれて……。それも人間の良さで、やってきた良かったと……思えました」

■Pancrase318対戦カード

<暫定ライト級KOP決定戦/5分3R>
林源平(日本)
雑賀ヤン坊達也(日本)

<フェザー級次期挑戦者決定戦/5分3R>
中島太一(日本)
堀江圭功(日本)

<ウェルター級/5分3R>
高木健太(日本)
菊入正行(日本)

<ストロー級/5分3R>
前山哲兵(日本)
尾崎龍紀(日本)

<ライト級/5分3R>
葛西和希(日本)
小川道的(日本)

<フェザー級/5分3R>
小森真誉(日本)
林優作(日本)

<ストロー級/5分3R>
永井美自戒(日本)
リトル(日本)

<ネオブラッドTミドル級決勝/5分3R>
荒井勇二(日本)
廣野雄大(日本)

<ネオブラッドTライト級決勝/5分3R>
中田大貴(日本)
狩野優(日本)

<ネオブラッドTフェザー級2回戦/5分3R>
岩本達彦(日本)
齋藤拓矢(日本)

<ネオブラッドTバンタム級準決勝/5分3R>
宮島夢都希(日本)
修我(日本)

<ネオブラッドTバンタム級2回戦/5分3R>
井村塁(日本)
田中ハヤトスネ夫(日本)

<ネオブラッドTフライ級2回戦/5分3R>
谷村愛翔(日本)
梅川毒一郎(日本)

<ネオブラッドTストロー級準決勝/5分3R>
谷村泰嘉(日本)
大貴(日本)

<ミドル級/5分3R>
内藤由良(日本)
村元佑成(日本)

<フェザー級/5分3R>
風間敏臣(日本)
上田厚志(日本)

<バンタム級/5分3R>
工藤修久(日本)
粥川吏稀(日本)

<フライ級/5分3R>
川北晏生(日本)
橋上壮馬(日本)
             

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【Special】WithコロナのJ-MMA─04─パンクラス坂本靖統括本部長「会場の外のテントで抗原検査を」

【写真】ミスターパンクラス愛こと坂本靖氏が、しっかりと話をしてくれた(C)MMAPLANET

COVID19のパンデミック、地球はニューノーマルの時代を迎えた。日本でも4月と5月の緊急事態宣言を経て、6月から経済活動が再開も、事態が終息することはない。

MMA界はかつてない状況のなかを生き抜く努力をしている。MMAPLANETでは各MMA大会の主要人物に新型コロナウィルス感染に関しての現状とこれからを尋ねた。

4人目は──8月23日に大会当日の検査で陽性者が出たために、開場の10分前にイベント中止としたパンクラスから、坂本靖統括本部長に27日(日)の次回大会での予防対策に関して話を訊いた。


──8月23日、坂本さんは大会当日中止の当事者になってしまいました。そして、現場の混乱を経験した数少ない格闘技関係者です。

「とにかく中にいるお客さん、選手、セコンドを一刻も早く会場の外に出てもらわないといけない。そこが一番でした。起こってしまったのだから、冷静になろうと言い聞かせていました」

──今、日本のMMA大会では大会前日に抗原検査、それ以前に抗体検査やPCR検査、もしくは当日の検温のみという大会もあります。そのなかで、大会当日の検査というは開催に向けては非常にリスクの高い手段です。先日までに結果を出して、あとは何も起こらないで──というのが、現状のスポーツ界の興行の打ち方です。

「こんなことをしでかして、格好つけるなと思われるでしょうが、やはり当日の検査で無症状の感染者を見つけたい、選手とお客さんを守るために当日のギリギリのところで検査をするのが一番だという判断なんです」

──そしてイベントが中止になった。これが続くと、興行会社として死活問題です。9月大会は無観客、当日計量フォーマットを採り入れることになりました。

「無観客に関していえば、もう一度フラットに見直して徹底しようということですね。選手を守る、お客さんを守るために中止にした。英断という風に言われれば格好良い話になっていますが、大会ができなかったという大きな事実が残っています。

ならば新型コロナウィルスというものに、もう一度フラットに向き合って大会前、大会当日、大会後のケアを見直す。そのなかで、無観客でやることになりました」

──それらの決定は、どのようなメンバーで話し合われ実施されることになったのですか。

「酒井、ドクターが3名、パンクラス役員で話し合うなかで、医療コーディネイターの方を紹介していただき、色々と相談に乗ってもらっています」

──医療コーディネイター?

「ハイ。『倍返しだ!!』で有名な某ドラマなども収録が延びたり、放送を中断したりしたことがあるじゃないですか」

──ハイ。

「映画やTV業界でも、そういう医療コーディネイターの人達が感染リスクを考え、撮影などの進め方のアドバイスをしているんです。パンクラスもそういう方に加わってもらって、色々と進めてきました。あとはドクターから水抜き減量は絶対的に免疫力が落ちて、感染リスクを高めるので考え直しましょうと。そんな風に提案があり、話し合うような形ですね」

──厳しい言い方になってしまいますが、既に当日計量は行われてきました。要はライバル団体との違いを出すことが必要だったのでしょうか。

「当日計量と1階級上のクラスにすべきだという意見は、パンクラスでも以前からったんです。ただし、我々はユニファイドに拘りたい。米国では今も前日計量が行われている。そこを追求したいという部分があったのですが、試合の中身がユニファイドであれば、選手の安全を考えて前日計量に拘る理由はなかったはずです」

──その通りですね。では検査に関しては、次回大会からはどのようにしていこうと考えられていますか。

「当日に抗原検査をします」

──感染拡大予防のために陽性者が出たら大会を開けないという同じ轍を踏まないために、どのようなに前回のことを教訓にできているのでしょうか。

「前回の失敗は会場のなかで、ケージ脇で検査をしたことです。陽性者の人を会場内にいれてしまった。なぜ、そんなことをしてしまったのか。そこには感染者はいないだろうという楽観的な考えがあったことは、今となっては否定しようがないです。

次回大会はセコンドも1名だけで、マネージャーやライセンス保持者も会場に来ることはできないです。選手とセコンドの2名が会場に入る前に、会場の外のテントで抗原検査をします。

なおかつテントやテントの外に人が集まってしまうと同じになりますから、ネオブラ、プレリミ、メインで入り時間を分け、かつ赤コーナーと青コーナーを分ける。

そして、時間厳守で他の時間帯では検査は受けられないようにするということですね。都内や近郊の選手に限られてしまいますが、会場には車で来ていただき、駐車場を選手に開放して車の中で検査まで待機してもらいます。もちろん、テントの前で多少は待つようなことがあれば手指消毒、マスク装着、ソーシャルディスタンスは徹底してもらいます」

<この項、続く>