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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:10月 ウスマン×チマエフ「スタンドのバックキープは山の五合目」

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2023年10月の一番──10月21日に行われたUFC294でのカマル・ウスマン×カムザット・チマエフ戦について語らおう。

――取材がギリギリになって申し訳ありません!10月の一番として、水垣さんにはUFN228でのカマル・ウスマン×カムザット・チマエフを選んでいただきました。

「まずチマエフはまだ底を見せ切れていないというか、ギルバート・バーンズ戦で大分見えていた部分もあったけど、最終的には競り勝った。では本来の階級は下だけど、ウスマン相手にチマエフの実力がどうなのかを見たいという興味がありました。あとはテイクダウンされないウスマンと最強のテイクダウン技術を持つチマエフが戦ったらどうなるのかなという好奇心もありましたね」

――いざ蓋を開けたらチマエフが開始早々テイクダウンしてバックを取るという衝撃的な展開でした。

「あれはビビりましたね(笑)。改めて見直すとチマエフがテイクダウンしてバックを取るまで1分くらいなんですよ。あの攻めの速さは尋常じゃないです。ただ2Rになるとチマエフがテイクダウンにいけなくなるんですよ。少し休みながら戦っているようにも見えて、もしかしたら1Rにテイクダウンとバックは取っていたけど、あの攻防のなかで『今までの相手とは違う』という感覚があったのかもしれないですね」

――意図したものかどうかは分からないですが、1Rと2Rのチマエフは別人のようでした。

「そこがまだチマエフの分からないところなんですよ。スタミナが切れてしまったのか、あえてそうしたのか。3Rに入ると何度かテイクダウンに成功しているし、結局チマエフの全貌が分からない(笑)」

――3Rはウスマンのパンチも当たりだしたので、このままウスマンが前に出て、チマエフが弱気になると思ったんです。そうしたら打撃でも打ち返していましたよね。

「それはバーンズ戦でも感じたことで、僕はチマエフは試合終盤の競り合いになったら弱気になるタイプだと思っていたんですよ。でもバーンズ戦はそういう競り合いでも勝負強さを見せたんですよね。今回も2Rを見終わって、3Rはこのままウスマンの流れるになるかなと思っていたら、最後はチマエフが盛り返して勝っている。2試合連続ちゃんと競り勝っているわけだから勝負弱くはないと思うんですけど、1Rの圧倒ぶりからすると、もっと圧勝できる気もするじゃないですか。でも最終的に接戦になってしまっているので『結局、チマエフどうなの?』と思われてしまいますよね」

――そんな謎多きチマエフではありますが、シングルレッグからテイクダウンしてバックコントロールという流れは素晴らしかったです。ここ最近のロシアや中央アジア出身の選手が得意にしているムーブです。

「シングルレッグ、テイクダウン、相手が立ってきたらバックキープ、仮に立たれてもスタンドでバックをとる、そこからテイクダウン……この流れが完全に出来上がっていますよね。チマエフはハビブ軍団とは別チームなので指導者やトレーナーが同じということはないと思うんですけど、あの地域のレスリング系の選手の技術体系や動きが似ているというのは不思議な部分ではあります。これは推測ですけど“組み伏せて殴る”ことを突き詰めていくと、バックコントロールに行きつくんじゃないですかな、と」

――スクランブルの攻防が増えて、組みの展開で選手が立つという選択をするようになった。グラウンドで両足をフックする柔術的なバックコントロールよりも、レスリング的な足をフックしないバックコントロールの時間が長くなっていることも影響していると思います。

「その方が殴りやすいというのもあるでしょうね。あとは立たれるリスクもあるけれど、スタンドでバックについていればOKという感覚もあると思うんですよ。立たれて正対されるのはダメだけど、バックについていれば仕切り直しできるみたいな」

――スタンドのバックキープがイーブンではなく有利な状況ということですね。

「山登りでも五合目にベースキャンプを置いて、登山途中に天候が悪くなったら一旦ベースキャンプに引き返すじゃないですか。そのベースキャンプがスタンドのバックキープというか。テイクダウンして完全にバックコントロールするのがベストだけど、その攻防で自分が下になる・立たれて距離を取られるリスクがあるなら、立たせてバックキープする方がいい。スタンドのバックキープは6:4で有利だけど、正対されたら4:6で不利になる。だから6:4で有利でいられるところまで戻されることはよしとする感覚なんだと思います」

――なるほど。“立たれた”ではなく“立たせた”という見方もできる、と。そう考えるとポジショニングの概念も選手のファイトスタイルや技術によって変わってきますね。

「もちろんスタンドのバックキープからテイクダウンする&組み伏せる技術ありきですが、彼らにとってはグラウンドのポジションキープよりも体力の消耗も少ないんだと思います。そこまで展開に幅を持たせることが出来たら体力的にも精神的にも余裕を持てますよね」

――逆にショートノーティスで出場が決まって、本来はウェルター級ながら、ミドル級のチマエフとあれだけ出来たウスマンの強さも再確認しました。

「チマエフのテイクダウンを切って、捌くところは捌いてましたからね。UFCは試合中にテイクダウンの成功率が出るじゃないですか。確かにテイクダウンを取られてはいるんですけど、防いでいると言えば防いでいる。その数字は『あれだけチマエフのテイクダウンを防いだウスマンはすごい!』なのか『結果的にウスマンからテイクダウンを取っているチマエフはすごい!』なのか。チマエフが未知数な部分を残している分、どっちなんだろうなと思ってしまいますね(笑)。もちろんウスマンをテイクダウンするチマエフの能力はすごいですんですけど」

――チマエフは前回の試合が13戦目ですし、まだまだ伸びしろはありそうですね。UFC自体も完成された選手が集まるというより、UFCで戦っていくなかでキャリアを積んで伸びていく選手たちが増えそうです。

「例えばDWCS(Dana White’s Contender Series)から無敗のまま上がってくる選手もいますけど、正直『えっ?』と思うような選手もいるんですよ(笑)。でも今のUFCはそれもありというか。戦績がいい選手を30~40選手くらい集めて、その中にダイヤの原石が1人いればいいという考えで、昔と比べるとふるいのかけ方が変わってきているんだと思います。とりあえず戦績がいい選手を数で集めて、UFNのアンダーカードで削って行くみたいな」

――以前は他のプロモーションで勝ち上がった選手がUFCを目指していましたが、今はUFCというプロモーション自体がもう一つ大きなふるいを持ったイメージですよね。それがRoad to UFCやDWCSでもあると思いますし。

「とりあえず履歴書を送って、書類選考は通過みたいな(笑)」

――まずはバイトから始まって正社員まで険しい道のりが続く、と(笑)。言い方を変えれば間口が広がった分、UFCに引っかかる可能性やチャンスは増えましたよね。

「まだDWCSに日本人が出る機会は少ないですけど、木下憂朔選手の例もありますからね。ただそれは他の国にも言えることで、アジア圏でも色んな国から選手が出てきているじゃないですか。来年はUFCとしてインドから選手を育成するプログラムをスタートさせるという記事も見ましたし、Road to UFCに出ている選手たちも1年間で急成長していますからね」

――UAE Warriorsに参戦中の藤田大和選手を取材したのですが「国全体でMMAが盛り上がっている空気を感じるので、これからすごい選手が出てくる可能性もあると思います」と話していました。

「UAEWやBRAVE CFを経由してUFCに出る選手たちは一味違いますよ。あとはムハマド・モカエフのようにIMMAFに出ている選手たちは、アマチュアだけどめちゃくちゃレベルが高いところで試合をしてきているから、先ほどとは逆で『この強さでこの戦績?』と驚くような選手も出てきますよね。MMAという競技の発展という意味では、そういった動向も見ていきたいと思います」

――もしかしたら数年後にインドやUAEがMMA大国になっているかもしれない。そんな言葉で今月の一番を締めさせていただきます!

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DJ.taiki MMA MMAPLANET o Special UFC UFN UFN228 ハナ・ゴールディ フランキー・エドガー ヴァネッサ・デモパウロス 大沢ケンジ 水垣偉弥 魅津希

【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:9月魅津希×ゴールディ「練習してきたことを試合で出せるセンス」

【写真】オクタゴンで、しっかりと勝てる。素晴らしいことだ(C)Zuffa/LCC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2023年9月の一番──9月23日に行われたUFN228:UFN on ESPN+86「Fiziev vs Gamrot」での魅津希×ハナ・ゴールディ戦について語らおう。


――今回水垣さんにはUFN228での魅津希×ハナ・ゴールディを選んでいただきました。

「魅津希選手は約3年のブランクがあって復帰戦が組まれて、UFCなので相手のレベルも高いですし、大変な状況だったと思うんですけど、本当にいい勝ち方をしたと思います。UFCにおいて日本人がなかなか勝てないという状況が続いている中で、同じ日本人としてうれしい勝利でしたね」

――僕も試合を見ていて、ブランクを感じないほど序盤から身体が動いていたと思いました。

「すごく動きが良かったですよね」

――それだけ準備が出来ていたということでしょうか。

「UFC PIも利用してリハビリに向けたサポートをしっかり受けることが出来たのが大きいんじゃないですかね」

――結果的に時間をかけて治療、リハビリ、練習したうえで復帰したことがよかったのかもしれませんね。

「特に彼女の場合は小さい頃から格闘技をやっていて、年齢と比較して競技生活が長いと思うんですよ。それで細かい怪我も多かっただろうし、一度しっかり休んで怪我を治すことが出来たのは、これからに向けても大きなことだったと思います」

――技術的な部分についても聞かせてください。1Rはテイクダウンを狙うゴールディを首相撲でコントロールしたり、組みの攻防にイニシアチブをとっていました。

「あの首相撲もそうですし、自分殻をワキを差してゴールディにケージを背負わせたり、レスリング力がかなり向上しているなと思いました。下になる場面は2Rに1回あったぐらいで、あの時もすぐにスクランブルを仕掛けて、立ち上がっているんですよ。それまでの魅津希選手は打撃が出来て寝技も強いタイプで、テイクダウンされると下から勝負することを選択することが多かったと思うんです。でも今回は下になっても立つ、上を取り返すという意識が強くなっていて、MMAファイターとしての進化を感じました。ただ怪我を治して元の状態に戻って復帰するのではなく、それにプラスアルファで自分に足りなかった部分を補ってきたんだなと思いました」

――フィニッシュを狙う印象が強かった魅津希選手のMMAファイターとしての進化が見られた試合ですね。

「そうですね。やはりこういう戦い方ができると判定を拾いやすくなるので、判定も拾えてフィニッシュも狙える。それが出来るようになるんじゃないかなと思います」

――判定はジャッジ3名が29-28ながら、どのラウンドにポイントを付けるかがばらつきました。これについてはいかがでしょうか。

「僕は30-27でもいいかなと思いました。強いて言うなら2Rに一度グラウンドで上を取られましたけど、逆に上を取り返していますし、僕は完勝と言っていい試合内容だったと思います」

――今回の試合に限らず、魅津希選手のファイターとしての長所はどこでしょうか。

(C)Zuffa/UFC

「すごくファイトIQが高い選手だと思います。

スタンドでは細かいフェイントをかけるのが上手いですし、抑えるべきところをしっかり抑えて戦っている。ちゃんと相手を研究して戦って、試合を作ることが出来ますよね。唯一懸念していたのが、先ほどのグラウンドで下になった時にスクランブルを仕掛けるのではなく落ちついてしまうところだったので、そこはまさに改善されつつあると思います。

あとはフィジカルですね。今回の対戦相手はめちゃくちゃゴツくて、ちょっと力負けするんじゃないかと思っていたんです。そういう相手にも力負けしていなかったことも進化の一つですよね。あと僕は村田夏南子選手の存在も大きいと思っていて、村田選手のレスリングとフィジカルは世界に通用するものですし、一緒に練習していることがかなりプラスになっていると思います」

――これまでNYのセラ・ロンゴ・ファイトチームで練習していた魅津希選手ですが、この1年は日本を練習の拠点とし、山﨑剛代表のリバーサルジム新宿 Me,Weをべースに村田選手、CUTEで上田将勝さんと練習していたそうです。

「基本的に山﨑さんのもとで練習しつつ、村田選手と対人練習して、上田さんから細かいレスリング技術を教わって、そういう取り組みが出た試合だと思います。あと僕が『月刊、水垣偉弥のこの一番』に選んだ一番の理由でもあるんですけど、練習でやってきたことをちゃんと3年ぶりの試合でも出せるというところですね。それは彼女が持っているセンスであり、試合勘の良さなのかなと思います。

どれだけ練習で出来ていても、無鉄砲にいくだけだったら試合で出せないと思うんですよ。しかも魅津希選手の場合は新しい技術を学んだうえでの試合で、本番で今までやってこなかったことを出すのは簡単ではないし、それを3年ぶりの試合で一発で出してくるところはさすがだなと思いました」

――それも一つの才能であり、センスですよね。

「一言でそう言ってしまうと、乱暴ではあるんですけど、試合になった時に落ちついて戦えるメンタルなのか。普通は練習で出来ていても試合で出せない選手の方が多いと思うんですよ。でもそれが出来てしまう、しかも復帰戦で出来てしまうというのは………やっぱりセンスなのかな(笑)。いずれにしても魅津希選手の中で、動きの感覚みたいなものがあるのだと思います」

――ちなみに魅津希選手の2週間後に復帰した村田選手の試合(ヴァネッサ・デモパウロスに判定負け)はどう見ましたか。

「僕は率直に試合を見終わったときに判定負けしたと思いました。最近のUFCの傾向としてトップを取っていてもキープだけでは評価されない。もう少しトップを取ったところで殴って攻勢を印象付けていたら判定も違っていたと思います。実際に3Rはそれが出来ていたと思うし、2Rはデモパウロスのガードポジションからの攻めの方が村田選手のトップキープよりジャッジの印象がよかったですよね。ただこれは技術的に劣っていたわけではないし、試合中の意識を変えればいいだけだと思うんですよ。

あとは先ほどの魅津希選手とは逆で、村田選手のステップワークやフェイントのかけ方が魅津希選手とそっくりだったんですよ。お互いにお互いが足りないところを補い合っていて、この」2人はすごくいいチームだなと思います」

――まだ練習を始めて1年とは思えないほど息が合っていますよね。

「はい。今回2人に事前にインタビューさせてもらったのですが、その時もすごくいい雰囲気だったので、今後どういった形になるかは分かりませんが、一緒に切磋琢磨して強くなって欲しいです」

――2人はこのままラスベガスに残って一緒に練習するとのことです。

「2人ともUFCでトップを狙えるポテンシャルを持っていると思うので、これからの2人の活躍には期待しています」

――ちなみに水垣選手は海外で長期合宿を行ったことはあるのですか。

「僕はジェフ・カランのジムに一カ月間半ほど行ったのが最長ですね。DJ.taikiさんとマキシモ・ブランコと相部屋という強烈なメンバーでした(笑)」

――日本と米国の練習環境、水垣選手はどのようにお考えですか。

「どちらを拠点に置くかは人それぞれだと思うのですが、僕の場合は日本の慣れた環境で練習する方が合っていましたね。海外で練習すると、良くも悪くも格闘技しかやることがないので、それがストレスになっちゃうので。あとは日本で出来ないなら海外でやるしかないと思っていたのですが、フランキー・エドガーの練習を見たときに、彼は自分で各分野の専門のジムに足を運んで練習してたんですよ。

マーク・ヘンリーに打撃を教わって、ヘンゾ・グレイシーのジムで組み技をやって、大学でレスリングをやって、ヒカルド・アルメイダのジムでMMAのスパーをやって、と。米国の選手がみんなメガジムで練習しているわけではないですし、エドガーの練習スタイルを見たときに、これだったら日本でもできることがあると思って、僕は日本で練習することを選びました。もし僕が米国で練習するなら、日本と米国を行き来せずに完全に米国に住んで拠点を変えます」

――日本と米国どちらがいいというわけではなく、自分に何が必要かを見極めて、取捨選択することが必要ということですね。

「そう思います。僕は自分に何が足りなくて、どこでそれを学べばいいかを考えることも才能やセンスだと思っていて、魅津希選手はそこも優れていると思います。試合で何をやるかだけでなく、試合に向けて何をやるか、試合のためにどんな準備をするか。自分の練習環境をどう整えるのか、どう普段のスケジュールや試合前のスケジュールを組み立てるのか。そういう部分まで意識して練習をすることが求められると思いますね」

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MMA MMAPLANET o UFN UFN228 キック マテウス・ガムロ ラファエル・フィジエフ

【UFN228】異種格闘技戦は思わぬ結末。打ち=フィジエフの負傷で組=ガムロがTKO勝利

<ライト級/5分5R>
マテウス・ガムロ(ポーランド)
Def.2R2分03秒by TKO
ラファエル・フィジエフ(アゼルバイジャン)

いつものサウスポーではなく、オーソドックに構えるガムロ。ジャブを突いて右のカーフキックを蹴る。フィジエフも構えをスイッチしつつ、ジャブ・左フックを狙う。

ガムロは変わらずオーソドックスに構えてワンツー。フィジエフはガムロがパンチ飛び込んでくところに左ボディを交えたパンチのコンビネーションを見せる。

さらにフィジエフが強烈なワンツー。ガムロが低いシングルレッグで組み付いて、取った左足を高々と持ち上げるがガムロは倒れない。

試合がスタンドに戻ると、お互いに遠い間合いで左ミドルを蹴り合い、フィジエフのカーフキックでガムロの足が流れる。残り10秒、ガムロがダブルレッグに入って左足を持ち上げるが、フィジエフは倒れない。

それを追いかけるようにダブルレッグ・シングルレッグに入ったガムロだが、ここもフィジエフはテイクダウンを緩さなった。

2R、構えをサウスポーに戻すガムロ。フィジエフが右ミドルを蹴ると、それをキャッチしてシングレッグでテイクダウンを狙う。

簡単には倒れないフィジエフだったが、ガムロもしつこくテイクダウンを狙い、スタンドでバックを奪う。そこからケージ際での攻防となり、ガムロがシングルレッグでフィジエフをケージに押し込む。

ここで両者の距離が離れるとフィジエフがジャブと右ミドル。この右ミドルでフィジエフが左膝を負傷し、そのまま後方に倒れる。ガムロが追撃のパンチを落とそうとしたところで、レフェリーが試合を止めた。

フィジエフはチームメイトの肩を借りてケージをあとにし、勝ったガムロはシャーウス・オリベイラとの対戦をアピールした。


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MMA MMAPLANET o UFN UFN228 キック ダン・イゲ ブライス・ミッチェル

【UFN228】イゲのパンチで流血も、ミッチェルがTD&コントロールで3-0判定勝ち

<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
Def.3-0:30-27.29-28.29-28.
ダン・イゲ(米国)

サウスポーのミッチェルが距離を詰める。イゲは左ジャブ、ミッチェルが右サイドキックを繰り出す。イゲが右ストレートで飛び込み、さらに左フックがミッチェルの顔面を捕えた。フェイントからワンツー、左フック、スイッチして左ストレートとイゲがパンチで攻める。ミッチェルのシングルレッグを切ったイゲが足を抜いてスタンドに戻った。イゲのパンチを受けてミッチェルの鼻の辺りから出血が見られる。ミッチェルは前後のステップから左ストレートを見せたあと、シングルレッグで入った。ダブルレッグに切り替えてドライブするも、バックを狙われたイゲが立ち上がって離れる。

ミッチェルがイゲの左フックをかわし、再びシングルレッグで組みつく。そしてバックを狙いながらボディロックでイゲに背中を着かせた。マウントを奪ったミッチェルは右腕を差し入れて肩固めを狙うかと思われたが、反転して逃れようとするイゲにパウンドを落としていった。

2R、イゲがプレスをかける。ガードを固めながら左ジャブを当てたイゲが、左右フックを振りながら前に出た。ここでもカウンターで組みついたミッチェルがダブルレッグでケージに押し込んでいくも、イゲが体勢を入れ替えて来ると、ミッチェルが離れる。イゲはサウスポーにスイッチして左スイングをミッチェルの顔面に叩き込む。ミッチェルの右目が大きく腫れあがり、ドクターチェックが入った。再開後、イゲがボディロックからグラウンドに持ち込む。ミッチェルはハーフガードから戻し、さらに亀になりながら立ち上がる。

スタンドに戻るとイゲのプレスが続く。ミッチェルもシングルレッグで飛び込むも、テイクダウンを奪うことができない。しかしここでイゲが左を放ったところにボディロックで組みつき、小外刈りでクリーンテイクダウンに成功する。起き上がるイゲのバックを奪ったミッチェルが、右足を差し入れつつ右手を首に回していく。さらにバックマウントを奪取し、イゲの体を伸ばした。仰向けになったイゲに対し、ミッチェルが肩固めで絞め上げていくも、極まりは浅いか。ミッチェルはクラッチを解いてパンチを浴びせた。

最終回、開始直前にドクターチェックは入る。ミッチェルの右目は完全にふさがっている―――。ラウンドが始まると、ミッチェルが左ミドルからニータップで組みつき、逃げるイゲのバックへ。イゲがトップに回るもミッチェルは足を離さず、四の字フックで固めた。クラッチを外そうとするイゲからマウントを奪ったミッチェルに対し、イゲは背中を見せて立ち上がる。しかし付いていったミッチェルはバックをキープし、左右の足をかけて揺さぶる。イゲがスイッチしようとすると、ミッチェルがリフトしてグラウンドに持ち込む。イゲはスクランブルへ。ミッチェルはイゲの左腕をキムラで抱えている。腕を抜いたイゲがミッチェルの両足を畳んでマウントを狙い、ミッチェルが背中を向けたところで試合終了のホーンが鳴った。

右目が腫れながらもテイクダウン&グラウンドコントロールで優位に立ったミッチェルが、ユナニマス判定勝利を収めた。


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MMA MMAPLANET o UFN UFN228 シャルル・ジョーダン ヒカルド・ラモス

【UFN228】濃厚なグラウンド&スクランブルの攻防の末、ジョーダンがギロチンを極める

<フェザー級/5分3R>
シャルル・ジョーダン(カナダ)
Def.1R3分12秒by ギロチンチョーク
ヒカルド・ラモス(ブラジル)

サウスポーのジョーダンが左ミドル。ラモスは右の前蹴り・右ミドルを返す。ジャブを伸ばすラモスにジョーダンが左ストレート。この左ストレートから右アッパーを突き上げる。

ラモスがシングルレッグで組みつき、テイクダウンを奪う。首を抱えてギロチンを狙うジョーダン。一度はパスガードをを許すが、ハーフガードに戻す。さらにジョーダンは腰を切ってニーシールド、下からアームロックを狙う。

ここからジョーダンが脇をくぐろうとすると、ラモスは前転してツイスターのような形へ。立ちあがろうとするジョーダンを寝かせるラモスだったが、ここでジョーダンがカウンターのギロチン。これががっちりと極まり、ジョーダンがラモスからタップを奪った。


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MMA MMAPLANET o UFN UFN228 ダニエル・アルゲータ

【UFN228】カウンター&テイクダウンがハマッたジョンズ。アルゲータをユナニマスで下す

<バンタム級/5分3R>
マイルス・ジョンズ(米国)
Def.30-27.30-27.29-28.
ダニエル・アルゲータ(米国)

サウスポーのアルゲータに対し、アルゲータが低い体勢で距離を詰める。アルゲータの蹴りにジョンズが右を合わせた。アルゲータは低空シングルレッグからドライブし、ボディロックで押し込んでいく。左に揺さぶりマットに手を着かせたアルゲータは、立ち上がるジョンズのバックに乗ってRNCへ。スタンドのままバックマウントをキープするアルゲータが、左腕を首に巻きつけて後方に倒れた。しかし耐えたジョンズが反転して立ち上がる。

スタンドに戻ると、アルゲータがインから左を突き刺す。ジョンズも左拳を押し付けてから右を振るう。組んだアルゲータがボディロックで切り返されるも、ジョンズの首を抱えて引き込んだ。ジョンズが首を抜いて立ち上がった。残り30秒で互いにパンチを振るい合うも、決定的なパンチはなかった。

2R、アルゲータが距離を詰める。右でジョンズのアゴを跳ね上げたが、ジョンズが組みついた。1Rと同様ギロチンで抱えて引き込んがアルゲータだが、極めることはできない。クラッチを解いたアルゲータが右腕を差し上げてハーフネルソンからリバーサルを狙う。しかし頭を抜いたジョンズがパウンドを連打。アルゲータが立ち上がり、正対して左ヒザを突き上げた。離れたジョンズを追うアルゲータに、ジョンズが右のカウンターを浴びせる。

アルゲータは右ロー、パンチからテイクダウンへ。またもバックを狙うも、ここはジョンズがディフェンスして離れる。ケージ中央では左→右、右→左のコンビネーションを見せるジョンズだが、アルゲータにシングルレッグで組まれた。アルゲータもギロチンで捕えられてしまうが、ジョンズのクラッチを切ってケージに押し込む。ヒザを打ち込んで離れたアルゲータの顔面に、ジョンズの左フックがヒットする。残り20秒でジョンズのパンチを受けたアルゲータがグラつく。距離を詰めたアルゲータにシングルレッグで組みついたジョンズだが、アルゲータも押し返した。

最終回、アルゲータもガードを固めて低い体勢から飛び込む。そこにジョンズが左右連打を合わせた。スタンスを大きく構え、飛び込んでくるアルゲータにパンチを合わせる作戦に切り替えたか。ジョンズの右インローでアルゲータの右足が流れる。アルゲータもジョンズの右フックにインから左ストレートを合わせる。ジョンズがサークリングしながら左フックのカウンターを当てると、アルゲータがマットに手を着いた。アルゲータはすぐに立ち上がって、ジョンズを追い続ける。

右フックを振ってからシングルレッグで入ったジョンズだが、アルゲータがスプロールからクルスフィックスへ。ジョンズが前に振り落とすとアルゲータは腕十字を狙ったが、ここはジョンズが立ち上がった。スタンドに戻ると再びシングルレッグで入るジョンズ。アルゲータは左腕でジョンズの首を抱える。ジョンズが頭を入れ替えると、今度は右腕で捕えた。ジョンズは背中を着かせるも、アルゲータに首を抱えられたままだ。アルゲータが絞り上げていくとジョンズが頭を抜いた。アルゲータはスクランブルへ。しかしジョンズがガブって立ち上がり、距離を取って試合終了のホーンを待った。

ジャッジ2名がフルマークをつける裁定で、ジョンズのユナニマスの勝利を収めた。


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MMA MMAPLANET o UFC UFN UFN228 キック ジェイク・コレアー モハメド・ウスマン

【UFN228】ウスマン弟がジャブの差し合いで勝り、3RのTD&トップキープで試合を決める

<ヘビー級/5分3R>
モハメド・ウスマン(ナイジェリア)
Def.3-0:30-27.29-28.29-28
ジェイク・コレアー(米国)

ジャブを突くウスマン。コレアーはガードを上げて右のカーフキックを蹴る。コレアーはサウスポーにスイッチして左ミドルから左ストレート。これでウスマンがバランスを崩す。

ウスマンがダブルレッグに入ろうとするとコレアーは右アッパーを合わせる。組みの展開になると、コレアーはスタンドの肩固めを狙いつつ、腕のロックが外れるとウスマンをケージに押し込んでヒザ蹴りとヒジ打ちを狙う。

距離が離れるとジャブを突くコレアー。ウスマンもジャブを返しながら、右のオーバーフックを狙う。コレアーは細かくジャブを突きながら、ウスマンが前に出て来ると左ヒジと左ヒザ蹴り、右カーフキックを蹴る。

変わらずウスマンが右フックを狙うが、コレアーはジャブと左ミドル・左のヒザ蹴り。ウスマンのジャブとヒジを被弾するも、プレッシャーをかけてジャブを当てる。

2R、コレアーは右カーフ・ロー。ウスマンはジャブを返して右オーバーフック。コレアーはその右に合わせて組み付き、首相撲に持ち込む。これをウスマンが突き放そうとしたところででアイポークとなってしまい、コレアーにインターバルが与えられて試合が再開された。

ガードを上げて右ロー・カーフを蹴り分けるコレアー。ここもウスマンは右フックを狙うが当たらない。ジャブの差し合いではコレアーが優位に立ち、右ストレートから左フック。距離が詰まると首相撲からヒザ蹴りを突き上げる。

距離が開くと再びジャブの差し合いになり、ここからウスマンのジャブが当たり始める。コレアーもワンツー、左アッパーを突き上げるが、クリーンヒットはない。

3R、ジャブで前に出るコレアーが右のカーフキックと右ストレート。ウスマンはコレアーのジャブに右フックをかぶせる。ジャブ、ワンツーのコレアー。

ウスマンはジャブに合わせて組み付き、コレアーをケージに押し込む。ここからウスマンはシングルレッグに入り、コレアーの身体を持ち上げてテイクダウンする。

ハーフガードで上になったウスマン。コレアーはウスマンの脇を差して立とうとするが、ウスマンはそれを寝かせてパスガード。自らハーフガードに戻るようにトップキープして、細かくパンチを落とす。

コレアーのニーシールドを潰してアームロックを狙うウスマン。コレアーは背中を見せつつ、前転してアームロックを狙うが、試合は終了。ウスマンが判定勝利でUFC3連勝を飾った。


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MMA MMAPLANET o UFN UFN228 キック ハナ・ゴールディ 魅津希

【UFN228】魅津希がゴールディのTDを切り返して打撃で優位に。3年ぶりのオクタゴンで判定勝ち

<女子ストロー級/5分3R>
魅津希(日本)
Def.3-0:29-28.29-28.29-28.
ハナ・ゴールディ(米国)

ガードを固めるゴールディのパンチに対し、魅津希が左右にステップを踏みながら右ストレートをカウンターで合わせる。左前蹴りから右ストレート、距離が近くなると首相撲に持ち込んだ魅津希は、右腕を差し上げてケージへ押し込んでいく。四つからヒザで削る魅津希が、ゴールディをケージに押し込みながら左腕も差し上げた。すぐにゴールディも右腕を差し返す。ゴールディが差し返すも、すぐに戻した魅津希が揺さぶったが倒れず。ここで魅津希が離れた。

ゴールディが右カーフキックを当てる。魅津希は右を伸ばす。ゴールディの右がクリーンヒットした。左ミドルからワンツーを見せる魅津希は、ゴールディの右ローの蹴り足をキャッチした。しかしゴールディが組んで首相撲へ。魅津希が内側を取ってヒザを突き上げる。ゴールディが左腕を差し上げてケージに押し込むも、ここは魅津希が耐えた。

2R、ケージ中央でゴールディが左ローを見せる。魅津希のワンツーがゴールディの顔面を捕えた。ゴールディはシングルレッグへ。スプロールした魅津希がバックを狙うもゴールディが右腕を差し上げてクラッチした。テイクダウンに来たゴールディに対し、反対に魅津希が足をかけてクリーンテイクダウンを奪う。足を上げてくるゴールディに対してパスを仕掛けた魅津希だが、スクランブルからガブられてしまう。それでもケージに押し込んでいく魅津希が、ギロチンを狙うゴールディのクラッチを切った。

四つの展開からグラウンドに持ち込んだのはゴールディだ。魅津希はハールガードで守りながら、ガードに戻してスクランブルへ。立ち上がったゴールディが四つからヒザを突き上げると、魅津希もヒザを返す。ケージに押し込まれながら魅津希がウィザーから四つに戻したものの、再びゴールディにケージへ押し込まれてしまう。ここでゴールディのテイクダウンを切り返した魅津希が背中を着かせ。スクランブルから魅津希がガブり、ボディにヒザを打ち込んでいった。

最終回。低く構える魅津希が左インローを放つ。ゴールディの右が当たる。魅津希も右クロスを返した。さらに左フックをヒットさせるも、ゴールディがプレスをかけてくる。魅津希の右をかわしたゴールディがダブルレッグからドライブした。テイクダウンを防いだ魅津希がケージ中央で左ジャブ、右フックを当てていく。さらに左ボディから左フックへのコンビネーションを見せる。ようやく3Rに打撃のリズムを取り戻してきたか。ここでゴールディが組んでドライブした。左足を差し入れ、両腕を差し上げた魅津希がケージから離れる。ゴールディはすぐにシングルで入ってドライブしたが、魅津希が組み返した。ゴールディがカンヌキで魅津希を離さない。魅津希はケージ中央へ押し返し、左ヒジを打ち込む。残り1分で再び四つの状態に戻った両者だが、魅津希が離れた。ゴールディのシングルレッグを切ってはパンチを打ち込む魅津希が、残り30秒でケージに押し込みながらパンチを連打した。

裁定はジャッジ3者とも29-28で魅津希の勝利を指示。魅津希は「3年ぶりの試合で怖さもあった。もっと良いパフォーマンスを見せたい」と語った。


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【UFN228】展望──世界最高峰の異種格闘技戦。打=ラファエル・フィジエフ✖組=マテウス・ガムロ

【写真】UFCで戦うストライカー、そしてグラップラーがどういうストライカーであり、グラップラーなのか堪能して震えたい (C) Zuffa/UFC

23日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC ApexにてUFN228:UFN on ESPN+86「Fiziev vs Gamrot」が行われる。
Text by Isamu Horiuchi

その名称の通り、本大会のメインはライト級6位のラファエル・フィジエフと7位のマテウス・ガムロによるサバイバル戦だ。


フィジエフはカザフスタン生まれで、育ちはキルギス。現在は父親の地であるアゼルバイジャン国籍を有すストライカーだ。そのキルギスで11歳の頃からはじめたムエタイで国際的な活躍を見せ、2017年にはバンコクのムエタイエクストリーム大会にて、当時ルンピニースタジアムスーパーウェルター級王座を返上したばかりのヨドパヤック・シッソンピーノンからKO勝利を収めるなどの実績を挙げている。

同時に韓国のRoad FCなどMMAでも活躍し、プロ5戦全勝の戦績をもって2019年からUFC参戦。初戦は敗れたもののその後連勝を重ね、昨年9月には元ライト級王者のハファエル・ドス・アンジョスと5R戦で対決、最終Rに左フックをスマッシュヒットさせてKO勝利を挙げた。

続いて今年3月には当時ランキング3位のジャスティン・ゲイジーと3R戦で激突。事前の期待を裏切らないMMA最高レベルの打撃戦にて序盤は互角以上に渡り合ったものの、最終Rに失速してジャブやアッパーを被弾、0-2で惜敗している。

対するガムロはポーランド出身のグラップラー。10歳の頃に始めたレスリングではポーランドのジュニアナショナルチームの一員として国際的に活躍し、2012年にMMAデビュー。2016年5月にはフランスの寝技師マンスール・ベルナウイを倒してプロ11戦無敗のままKSWライト級王座に就いた。

(C)KSW

2018年12月にはクレベル・コイケとのフェザー級王座決定戦に臨み、クレベルの下からの仕掛けを完封して判定勝利して二冠王に輝いている。

ちなみにグラップリングにおいてもADCCヨーロッパ大会では複数回優勝を果たし、2019年にはADCC世界大会にも出場するも、初戦で3位入賞したゲイリー・トノンにチョークで敗れている。

KSWでノーマン・パークとの因縁に蹴りをつけ、コロナ禍の2020年10月からUFCに参戦開始。フィジエフと初戦は惜敗したもののその後連勝を重ねてランキング入りし、昨年10月の6位のベニール・ダリューシュ戦に臨んだ。1Rはポジションが目まぐるしく入れ替わるハイレベルグラップリング戦にて優位に立ったガムロだが、2Rから戦法を変えたダリーシュにテイクダウンを切られ、3Rに左ストレートでダウンを奪われ判定0-3で敗れた。

ガムロはその後、今年3月には僅か10日前のオファーを受けてランキング10位のジェイリン・ターナー戦に望んだ。ライト級屈指の長身ストライカーの繰り出す打撃を捌いてテイクダウンを何度も決め、2-1と判定は割れはしたもの実質完勝した。

現在ちょうど似たような立場にある──ともにランキングを上げてきたところで、上位勢の壁に跳ね返されてからの復活を狙う──両者の対決のきっかけは、実はSNS上で生まれている。5月末にフィジエフがツイッター(現X)上にて「8月に俺のダンスパートナーになるやつはいないか?」と英語で投稿したところ、それに真っ先に反応して「9月に5Rでやろう」と書いたのがガムロだったのだ。

フィジエフも早速応じて「9月でもいいぞ、兄弟よ。でも俺は3Rで疲れてしまうんだ。なぜ5Rを望む? 俺たちは友人だろ?」とユーモアある返答を返す。そこでガムロは「俺たち2人はメインイベント(=5R制)に出る資格があるし、ファンも25分間テクニカルヴァイオレンスを楽しむ資格があるじゃないか」と返し、熱心なファンたちが喜ぶ中で両者の対戦の機運が盛り上がり、実現に至ったのだ。

中央アジアと東欧出身の両者が、SNSで互いに母国語ではない英語を用いて対戦の契機を作ってしまうところに、21世紀のMMAの現実がある。ちなみにフィジエフの投稿に対して、実は以前フィジエフに敗れたヘナート・モイカノも「ぜひリマッチをやりたい」と反応をしたのだが、フィジエフがこちらに興味を示すことはなかった……。

そんな両者の対決は、誰もが考えるように典型的な「ストライカー対グラップラー」の構図となるのか。つまり、重心が低く腰の重いストライカー、フィジエフの強烈な打撃をガムロがいかにかいくぐってテイクダウンに入るか、逆に強力なレスリング系グラップラー、ガムロの多彩かつ執拗なテイクダウンをフィジエフがいかに凌いでスタンド戦に持ち込むかが鍵となる。

実際フィジエフも「この試合で、ガムロのようなエリートレスラーのテイクダウンを自分が止められるのかどうか、ぜひ知りたいと思う。今回のキャンプの焦点もそこに置いたよ。さらに、もし100回倒されても、101回立ち上がることをテーマとしてやってきたよ」と、──よく考えると立ち上がる回数は1回余計に多いのだが──力強いコメントをしている。

その際特に注目したいのは、フィジエフの蹴りの使い方だ。卓越したスピードを活かし左右からの強力な打撃を繰り出すフィジエフだが、特にオーソドックスからの右足の蹴りはミドル、ハイ、前蹴りとどれも抜群のキレを誇り予測が困難だ。これを警戒してガードが下がり気味となった相手に放つ左フックの威力は凄まじく、モイカノやドス・アンジョスを1発で沈めている。

前回のターナー戦では蹴りのタイミングを見切ってのテイクダウンを見事に決めたガムロ。パンチからテイクダウンにつなげる動きも得意としており、「フィジエフとの打撃の交換も恐れない」と自信をのぞかせている。

グラップリングMMAから、KSW後期にはジャブを多用するタッチキックボクシング的なMMAにスタイルチェンジをし、UFCでは原点回帰といえるグラップル勝負に戻ったガムロは、組むと見せて間合いを外す術も有している。とはいえ、フィジエフの蹴りはこれまで戦ってきたどの相手によりもはるかに速く鋭く強烈だ。そんなフィジエフの蹴りにいかに対処するのか、着目したい。

もう一つのポイントは、上述のSNSでのやりとりでも触れられていた通りフィジエフのスタミナだ。瞬発系ストライカーのフィジエフは、はじめての5R戦となったドス・アンジョス戦では4Rに動きが落ち、それまでは許さなかったテイクダウンを取られる場面があった。

5R早々に凄まじい爆発力を発揮して圧巻のKO勝利を収めたものの、もし最終R中盤まで試合がもつれ込んだ時、同じ動きができたかは分からない。そして前戦でのゲイジー戦でも、フィジエフは最終3Rに失速。それまでもらわなかったパンチを被弾し、最後は焦って前に出て強引に振った左フックをゲイジーに見切られてテイクダウンを許したことで、──実際にはきわめて接戦だったものの──「完敗」という印象を大きくしてしまった。

対するガムロはスタミナに絶対の自信を持ち、そのテイクダウン力は試合後半においても簡単には落ちないと見ていいだろう。切られても執拗に手を変え、品を変えテイクダウンを試み、組み伏せるのがその真骨頂だ。試合が長引いてフィジエフのスピードが落ちてくれば、それだけガムロが自分の得意なフィールド=グラウンドに試合を持ち込むチャンスは大きくなる。

また、フィジエフが蹴りを警戒させてのパンチを得意とするように、ガムロもテイクダウンを警戒させての強烈な右の一撃を持っている。

もっともフィジエフもそのへんは百も承知のはず。「前回のゲイジー戦では、自分の感情をコントロールすることを学んだよ。あの試合では、ファンをもっと沸かせたいという気持ちに任せて戦ってしまった」と語るフィジエフは、より冷静かつ計算づくに、そしてスタミナにも留意してガムロを攻略しにかかることだろう。

極上のストライカーとグラップラーの両者によるMMAならではの──最高峰のせめぎ合いを堪能したい。

■視聴方法(予定)
9月24日(日・日本時間)
午前5時~UFC FIGHT PASS
午前4時30分~U-NEXT

■UFN228対戦カード

<ライト級/5分3R>
ラファエル・フィジエフ(アゼルバイジャン)
マテウス・ガムロ(ポーランド)

<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
ダン・イゲ(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
マリナ・ロドリゲス(ブラジル)
ミッシェレ・ウォーターソン・ゴメス(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ブライアン・バトル(米国)
AJ・フレッチャー(米国)

<フェザー級/5分3R>
シャルル・ジョーダン(カナダ)
ヒカルド・ラモス(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
マイルス・ジョンズ(米国)
ダニエル・アルゲータ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
アンドレ・フィアーリョ(ポルトガル)

<ミドル級/5分3R>
ジェイコブ・マルクーン(豪州)
コディ・ブランデージ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ジェイク・コレアー(米国)
モハメド・ウスマン(ナイジェリア)

<女子ストロー級/5分3R>
井上魅津希(日本)
ハナ・ゴールディ(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
モンセラート・レンドン(メキシコ)
タミレス・ヴィダウ(ブラジル)

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【UFN228】37カ月振りの実戦=ゴールディと対戦、魅津希「Me,WeでMMAの楽しさを教わることができた」

【写真】この笑顔、何としてもオクタゴンのなかで見たい(C)MMAPLANET

23日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC Apexで開催されるUFN228:UFN on ESPN+86「Fiziev vs Gamrot」で魅津希が、2020年8月以来となる実戦に復帰する。
Text by Manabu Takashima

前十字靭帯の手術からリカバリー、長期離脱となった魅津希は欠場期間中に20代最後の年に突入した。決して短くないブランク、UFCでは1勝1敗、パフォーマンスで周囲を納得させるファイトが不可欠な彼女は、過去にないほど恐れと緊張を感じていた。

その裏で思わぬ長期滞在となった里帰りで、東京での練習を経験しかけがえのない仲間を得た。そんな魅津希のUFCカムバック戦前の心境とは。


──定期的に試合をしていた時と、3年振りとなった今回で何か気持ちの部分で違いはありますか。

「昔は……若い頃は怖さがなかったのですが、大人になるとそこが違いますね」

──魅津希選手が「若い頃」と振り返っていることを、違和感なく聞くことができるようになってきました。

「そうなんですよ。そうなると1戦、1戦の重みが理解できる年になってきたというか。3年振りで勝たないといけないのですが……まぁ勝つんですけど、楽しみという気持ちより緊張と怖さの方が多いです。緊張しています」

──それは年齢なのか、ブランクが要因になっているのか。どちらだと考えていますか。

「3年は長いですね。そこまで自分で意識をしていなかったのですが、試合が決まった時に『もう3年も経ったんだ』と実感しました。でも、こうやって試合のことを考えると緊張してきますね(苦笑)」

──実は過去一で表情が堅いと感じていました。

「年ですね(苦笑)。年を取りました」

──それは違うかと(笑)。ただ27歳から29歳という期間でブランクができたのは事実です。

「そうですね、リカバリーに1年掛って。そこからまだケガをすることが怖くて、練習という練習が思うようにできなくて」

──昨年、タイに行く前にインタビューをさせていただいた際には、もう少し早く復帰戦を戦いたいという希望を持っていました。

「そこは体調よりも、試合が組まれなかったからです」

──UFCもなかなか日本人選手の試合を組まないという時期が長かったです。社会人、いわばファイターは個人事業主で、自分が必要とされていないと感じると非常につらいモノがあります。そんな風に関じることはなかったですか。

「だから契約はあっても、UFCがどう思うのかは自分が出す成果次第ですよね」

──試合がないなら、他で戦いたいという気持ちは?

「それはないです。結果、この試合が決まったわけですし。決まる前から、ある程度は準備をしてきました。でもいざ決まると、対策練習もそうだし課題の強化にもより力が入りましたね」

──この間、タイ以外では日本で練習しており、以前と比べて強化できたところはありますか。

「組みの部分は、ちょっと力を入れようかと思っていて。Me,WeとCUTEで上田将勝さんとも練習させていただいていて。上田さんはグラップリングが強くて、大まかなことではなくて細かいところを修正して強化できたと思います」

──この間、村田夏南子選手と行動をともにしてきました。

「NYで初めて会って、タイにも2人に行って一緒に過ごすことが多くなりました。それだけ練習も積んで来て、言ってみれば絆が深まりました。

本当は夏南子ちゃんと一緒にベガスに行って最後の調整をしたいのですが、まだビザが取れていないので自分の方が先に行くかもしれないです。ただ、本当は夏南子ちゃんと一緒に行きたいです(※取材は6日に行われた)。夏南子ちゃんが2週間後に試合なので、そのまま私も残ります。夏南子ちゃんのビザが間に合えば、セコンドに就いてほしいですし、私も彼女のセコンドに就きます」

──そのまま米国に拠点を戻す予定ですか。

「PIがあるので試合後は、ベガスでケアをゆっくりとしようと思います。それから試合がすぐに決まるようならベガスに残ります。そこに時間が掛るようだと、時期は決めていないですけどフラッと日本に戻ってくる予定です」

──ではNYではなく、日本ベースで?

「う~ん、セラ・ロンゴは女子選手がいなくて。男子もバンタムから上が多いから、行っても体格差があるので。そうなるとNYに戻ってもどうなのかっていうのはあります。なので他のジムを見るのも良いかと考えています。でも米国で練習したいとは思っています」

──そんななか対戦相手のハンナ・ゴールディにはどのような印象を持っていますか。

「ガタイが大きいですよね。グラップリングの試合にも出て、一本勝ちもしています。そこも含めて対策練習と、自分のスキルアップをしてきました」

──彼女はUFCでは1勝2敗ですが、この3年間で女子MMAのレベルアップは半端ないように感じます。

「前々からUFCで活躍している選手が年を重ねて、敗北が増えています。対照的に新しい選手がスキルもついていて、レベルアップしている中に入っていくので、ちょっと出遅れている感はしています(笑)。

でも、その中にせっかく入っていくので、やりたいことをやりたいという感じです。とにかく対戦相手はフィジカルが凄いですね。組みが強いパワー系で。でもパンチに関しては、そのパワーを伝えきれていない。凄い体をしていますが……。組みの方は得意技もあるでしょうし、ハマらないように気を付けないといけないです。相手が好きなことをしてきたら遮断して、自分の好きなことができるように実行する。そういう風に持って行かないといけないです」

──どの局面でも付き合うことは、もうない?

「遮断したいのですが、付き合っちゃうと思います(笑)。付き合わないように指摘されてきて、自分では付き合っていないつもりでも傍から見ると付き合っているように見えるようで。だから頭ではつき合わないで、自分の好きなことをやろうとはしていても、そうなっているということだし。そうならないように戦います」

──ブランクを経て、UFCファイターとして目標はどこに置いているのでしょうか。

「ブランクがあろうがなかろうが、相手は気を使ってくれないので。そこがあるからどうこうでなくて、今の自分がどれだけ通用するか。そういう想いは最初から持っていました。どこまで自分が行けるのか。契約更新ができたら成功だし、できなかったら自分がやってきたことが間違っていたことになります。今はやるべきことをやっているので、次の試合で出したいですね」

──ところで昨年の夏にインタビューをさせてもらった際に、ケガ前の自分には戻れないと言われていた一言が心に残っています。

「言っていましたっけ? ケガ前と比較すると……それまで東京のジムで練習をしたこともなかったのですが、Me,Weでは山﨑(剛代表)さんを初め色々な人にお世話になってきました。そのおかげで最近までなかった……MMAの楽しさを教わることができた気がします。以前は傍から見て近寄りがたい雰囲気があったようで」

練習仲間のファイトギアを懸命に消毒する魅津希

──豊橋時代は、絶対にそうだったと思います(笑)。

「私自身はそんなオーラを出しているつもりはなかったです。でも、近寄りがたい、接し辛いというのはあったみたいです。今では、ここで皆が仲良くしてくれて。私のことを分かってくれました(笑)。初めて東京の人達と交流が持てた、この1年でした。そして夏南子ちゃんの試合が2週間後にあるので、しっかりと勝って繋げたいです。もちろん3年振りの復帰戦でインパクトは残したいのですが、そこは判定でも良いので──お世話になっている人の期待に応えたい。まずは1勝を挙げたいです」

■視聴方法(予定)
9月24日(日・日本時間)
午前5時~UFC FIGHT PASS
午前4時30分~U-NEXT

■UFN228対戦カード

<ライト級/5分3R>
ラファエル・フィジエフ(アゼルバイジャン)
マテウス・ガムロ(ポーランド)

<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
ダン・イゲ(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
マリナ・ロドリゲス(ブラジル)
ミッシェレ・ウォーターソン・ゴメス(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ブライアン・バトル(米国)
AJ・フレッチャー(米国)

<フェザー級/5分3R>
シャルル・ジョーダン(カナダ)
ヒカルド・ラモス(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
マイルス・ジョンズ(米国)
ダニエル・アルゲータ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
アンドレ・フィアーリョ(ポルトガル)

<ミドル級/5分3R>
ジェイコブ・マルクーン(豪州)
コディ・ブランデージ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ジェイク・コレアー(米国)
モハメド・ウスマン(ナイジェリア)

<女子ストロー級/5分3R>
井上魅津希(日本)
ハナ・ゴールディ(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
モンセラート・レンドン(メキシコ)
タミレス・ヴィダウ(ブラジル)

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