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ACA111 Interview Special アブドゥルアジス・アブドゥルバクヘヴァ タイガー・サルナフスキー ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:9月─その壱─アブドゥルバクヘヴァ×サルナフスキー「ロシア同士」

【写真】新ACAライト級王者となったアブドゥルバクヘヴァ(C) ACA

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年9月の一番、第一弾は19日に行われたACA111からアブドゥルアジス・アブドゥルバクヘヴァ✖タイガー・サルナフスキーのACAライト級王座決定戦について語らおう。


──9月度の青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合をお願いします。

「ACAのアブドゥルバクヘヴァ✖サルナフスキーですね」

──おお、ロシア・ライト級最強の座を表す一番です。

「ACAライト級は3強ですね。アリ・バゴフ、エドゥアルド・ヴァルタニャン、アブドゥルバクヘヴァの3人でタイトルが行ったり来たりしていて。バゴフはライト級王座を返上してウェルター級に転向したけど、タイトルを取れなかったから次はどうなるのか」

──バゴフが抜けて、ユーサップ・サイソフをそこに収めたかったような気がします。

「フェザー級チャンピオンから上げてきましたよね。でもACAのライト級ってACB時代にアブドゥルバクヘヴァはバゴフに勝って、ヴァルタニャンを相手に防衛した。そしてバゴフとの2回目に負けた。そういう戦いに入って来られるのか……。フェザー級で圧倒的でもなく、ゴリゴリで勝ってきたのでライト級では分からない部分はありました。

結果、今大会のセミでカザフスタンの選手(アルテム・ラズニコフ)に負けちゃって……。まぁACAとしては痛い敗北だったでしょうね」

──それでいえばサルナフスキーの挑戦は妥当だったのかと。現在のサルナフスキーはちょっと届いてない選手かという気もしていました。

「そうですね。実際にヴァルタニャンに負けているし。でも、このところ盛り返してはきていた」

──ロシア人相手でなく国際戦で連勝し王座決定戦という流れですね。

「37勝8敗で凄いレコードだけど、ADW(※UAEW)でマカコと競い合ったり、Bellator以降はあの頃のような強さはないです」

──だからアブドゥルバクヘヴァが圧勝するかと予想していました。

「それでもサルナフスキーも下がって老獪に戦っていました。やられないように戦って」

──そうしていると2Rにアッパーを当ててアブドゥルバクヘヴァの動きを止めるとう場面も。

「そでもアブドゥルバクヘヴァは下がらない。ジャブを突いて、前に出て。2R終盤にグラつかされたので、さすがに3Rの動きは悪かった。でも前に出るので盛り返してしまう。クリンチをしてヒジを打ったり、そこも上手かったです。離れ際のアッパーも。回復力と早さで、結果的には3Rと4R、最後も取ってしまった。あの前にでる強さは安藤(晃司)みたいですよね」

──UFCがロシアを掘り、ACBの景気が良かったときに一気にロシアの恐怖が世界に広まりました。結果、掘ってしまったが故に強いは強いですが、幻想が現実になったことで落ち着いた感があります。

「僕はそれが面白いですね。もうロシア同士でやってくれた方が、ブラジルや元UFCファイターが混ざってくるのより面白い。ACAに関しては、ですよ」

──ACAになってからは派手な国際戦は減り、加えてコロナ禍で米国やブラジル人ファイターの出場が途絶えました。メディアとしては比較対象がないとファンに浸透し辛くなってしまって。

「あぁ、僕にはそういう感覚はないなぁ。ただタイ人の名前は覚えられるけど、ロシア人の名前は覚えられないですよね(笑)」

──風貌もスキンヘッドか短髪、そして髭がしっかりと生えている。でも試合は高レベルで。皆が強いからガツガツ&ドロドロの展開になる。

「皆が強くて、真っ向勝負。完全にタフファイトで。試合だけでいえば面白いです。スクランブルもUFC並みに見られます。それにピョートル・ヤンやマゴメドシャリポフみたいにACA(※ACB時代も含める)のチャンピオンは、UFCで強さを見せつけているから、UFCをリリースされた選手との国際戦より、ロシア人同士でやっていて構わないと思います。ACAはACAで、ロシア人同士でやっている方が楽しめます」

──コロナ禍でもACAで出ている旧ソ連勢が、台頭してきている感もあります。

「現にライソフに勝ったカザフスタン人がいて、タジキスタンとか、なんとかスタンっていう中央アジアが出てきている。それも楽しいじゃないですか」

──モスクワの大会でも、やけにタジキスタン選手に声援が集まっていました。

「ロシア国内での民族闘争みたいな感じで、盛り上がっている。僕はもうそこが面白いです。政治も絡んでいる感じで(笑)。ロシアを掘ったら、中央アジアが出てきた。アジアといってもヨーロッパ寄りでレスリングが強くて、ボクシングも強い。国威発揚のための格闘技強化……社会主義時代の貯金が中央アジアの格闘技には残っている。そこが出てくるのは楽しみです」

──それがこれからのACAの楽しみ方だと。

「ハイ。それとライト級ではヴァルタニャンです。柔道の香りがして、MMAで内股を決める。ヴァルタニャンがもう1回、タイトルに絡んで来て内股が見たいです(笑)」

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【ACA111】サルナフスキー、中盤優勢もアブドゥルバクヘヴァの圧力に屈しベルトを巻けず

<ACAライト級王座決定戦/5分5R>
アブドゥルアジス・アブドゥルバクヘヴァ(ロシア)
Def.Decision
タイガー・サルナフスキー(ロシア)

ケージに入る前に右足のサポーターを外すように指示を受けたアブドゥルバクヘヴァが、まず左ジャブを伸ばす。サルナフスキーは右ロー、アブドゥルバクヘヴァは飛び込んで左フックを振るっていく。左ローで、奥足=左足を蹴るサルナフスキーはテーピングの巻かれた場所を狙っている。サルフスキーのジャブに右フックを放ったアブドゥルバクヘヴァだが、ミドルを蹴られる。

それでも圧力を高めるアブドゥルバクヘヴァが左フック、サルナフスキーがボディ&左フック、アブドゥルバクヘヴァは右を返して組みつくと、ケージに押し込む。押し返しつつ離れたサルナフスキーは、シングルレッグを切るもケージを押し込まれヒザを蹴り合う。エルボーを打ったアブドゥルバクヘヴァ、そのままサルナフスキーをケージに押し付け大内刈りを見せたところで時間となった。

2R、ジャブの打ち合いから、サルナフスキーがローを蹴りワンツーでオーバーハンドを当てる。近い距離でもボディに右アッパーを入れるなど攻勢のサルナフスキーはボディ、オーバーハンドをヒットさせる。さらに右ボディを入れ、腹と顔に攻撃を散らすサルナフスキーに対し、アブドゥルバクヘヴァもボディを打ち込む。

素早い左ジャブを入れるアブドゥルバクヘヴァだが、サルナフスキーがボディに重い一発を見舞う。ケージ際でのレスリングが続き、アブドゥルバクヘヴァが両ヒザをついてダブルレッグ、シングルで右足を取られたサルナフスキーは足を抜き、右アッパーに続く左フックをクリーンヒットさせた。足下が揺れたアブドゥルバクヘヴァがイーブンに追いつかれたか。

3R、アブドゥルバクヘヴァのダメージが気になるなか、一瞬の交錯で思い切りパンチを振るう。右を見せた直後の左フックが当たるサルナフスキーが右アッパー、右フック、そして右ボディと攻勢に出てワンツーからボディにパンチを連続で入れる。アブドゥルバクヘヴァはダブルレッグを切られると、ボディと頭にパンチを被弾する。

足を使い左右に回るアブドゥルバクヘヴァ、サルナフスキーは腹を効かせ、右ボディをう打ち込む。アブドゥルバクヘヴァのワンツーにも右を当てたサルナフスキーはケージに詰まって左を当て、アブドゥルバクヘヴァは右エルボーを2度打ち込む。さらにケージにサルナフスキーに押し込み、右エルボーを入れ、サルナフスキーは左目尻をカットしている。

4R、右を振るって前に出たアブドゥルバクヘヴァが、シングルレッグでケージに押し込むがテイクダウンは奪えない。エルボー狙いの間からやや距離を取り、その後の打撃戦でもアブドゥルバクヘヴァの勢いが上がる。真っすぐ下がるサルナフスキーを、アブドゥルバクヘヴァは追いかけてワンツーから右を当てシングルへ。これはテイクダウンこそ奪えなかったが、ケージに詰まったのはサルナフスキーで、アブドゥルバクヘヴァはヒジを入れ、離れても攻勢のまま3Rが終わった。

5R、果敢に前に出るアブドゥルバクヘヴァが右をヒットさせる。ダブルレッグで前に出たサルナフスキーは逆にケージに押し込まれ、離れても打撃はアブドゥルバクヘヴァが当て、クリンチでケージにサルナフスキーを押しつける。アブドゥルバクヘヴァがアッパー、サルナフスキーも右を返すが、クリーンヒットはない。押し込みが続くなか、細かい打撃を打っていたアブドゥルバクヘヴァに分があるか。離れるとサルナフスキーもボディアッパーを入れるなど、最後まで抵抗したがジャッジの裁定はアブドゥルバクヘヴァを支持し、アブドゥルバクヘヴァがACAライト級のベルトを腰に巻いた。


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ACA111 other MMA Report アルテム・ラズニコフ ブログ ユーサップ・ライソフ

【ACA111】フック&テイクダウン、怒涛のパス狙いとパウンドでラズニコフがライソフ破る番狂わせ

<ライト級/5分3R>
アルテム・ラズニコフ(カザフスタン)
Def. Decision
ユーサップ・ライソフ(ロシア)

左ジャブを伸ばすライソフ、ラズニコフは右オーバーハンドを放つ。ジャブを見せあった両者、ラズニコフがボディを狙い、続いて左フックを振るう。ライソフのローに組みついたラズニコフがテイクダウン、すぐにスイープ狙いからスクランブルでスタンドに戻る。左ジャブを2発当てたライソフは、そのまま非常にスピードのあるジャブを続け、右ローを蹴る。ラズニコフもジャブを返し、左リードフックもダブルレッグを切られ、ジャブをダブルで被弾する。

距離が遠く大振りのラズニコフに、ライソフが右ストレートをヒット。続けて左を打ちこみ、右前蹴りをボディに突き刺す。素早いジャブ、頭を振って攻撃を被弾しないライソフが右を伸ばし、右ローを蹴る。ライソフの左ハイは空振りも、跳び蹴り、後ろ回し蹴り、さらにカカト落としから、浴びせ蹴りを見せたライソフに対し、ラズニコフが何やら不満をぶつけ初回が終了した。

2R、シングルで大きくライソフを持ち上げて、スラムしたラズニコフ。ギロチンが抜けたライソフはガードを強いられるも、腰を切って腕十字を狙う。察知したラズニコフが怒涛の勢いでパスを狙うも、ライソフがクローズドガードへ。足が割れると、蹴り上げを見せたライソフは、一瞬離れて跳び込んできたラズニコフに対し、後方回転から立ち上がる。

ケージに押し込んでいたラズニコフは、自ら離れると右を届かせる。ライソフは左ロー、ラズニコフは右フックを当てる。ライソフはジャブからボディを入れるが、右が当たり押されたように姿勢を乱す。直後に勢いのある右を当てると、ラズニコフの動きが落ちる。残り1分、左ハイに左を合わせようとしたラズニコフがワンツーを被弾する。続くダブルレッグを切ったラズニコフは、後ろ回し蹴りを2連続でかわし2Rが終わった。

最終回、ラズニコフが左リードフックから右を打ち込み、ライソフの右ローをキャッチしパワフルこの上ないテイクダウンを決める。ヒザ裏に手を回され立ち上がることができないライソフは、ガードを取ってハーフバタフライへ。ラズニコフはパウンドを連打すると、必死に立ち上がったライソフにシングル、さらにバックに回る。前転で逃げようとしたライソフは、バックを譲るも胸を合わせて立ち上がり離れる。

残り2分、ライソフは変わらずローを当て、ラズニコフが右を返す。ジャブから右を当てたライソフだが、カウンターのジャブを受ける。さらに右フックを当てたラズニコフは、テイクダウンのフェイントでライソフに完全に反応させる。ジャブの差し合い、左フックを入れたラズニコフが、ライソフの踏み込みに見事なタイミングでダブルレッグでテイクダウンに成功する。ガードのなからパンチを放ったラズニコフは、タイムアップと同時に勝利を確信しセコンドに担がれケージの中を走り回った。結果、判定勝ちを手にしたラズニコフはセコンドに肩車され、勝利の雄叫びを挙げた。タイトル挑戦が期待されたライソフはよもやの敗北を喫した。


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ACA111 other MMA Preview アブドゥルアジス・アブドゥルバクヘヴァ タイガー・サルナフスキー ブログ ライソフ

【ACA111】ロシアの頂点=ライト級王座を賭け、アブドゥルバクヘヴ✖サルナフスキー。ライソフも要注目!!!!

【写真】ACBから考えると、王座返り咲きを狙うアブドゥルバクヘヴ 。世界でもトップ10に入るであろう猛者だ(C)ACA

19日(土・現地時間)にロシアはモスクワのデュバルエツ・スポルタ・ディナモ・クララツカンでACA111が開催される。

メインはアリ・バゴフが返上したACAライト級王座を賭けてアブドゥルアジス・アブドゥルバクヘヴとタイガー・サルナフスキーが対決する。


どこまでも強さを追及するACAではウェルター級王座に挑戦するバゴフにチャンプ・チャンプ路線など敷くことなくタイトルを返上となり(※9月5日にムラッド・アブデュラエフに敗れタイトル奪取ならず)、そのバゴフにACBライト級王座を奪われた後も連勝中だったアブドゥルバクヘヴとBellatorで活躍したサルナフスキーがベルトを賭けて戦うこととなった。

ACB王座を3度防衛した──この事実だけもアブドゥルバクヘヴの実力のほどが分かるというもの。多彩なテイクダウン、テイクダウンが出来る距離での左リードフックと右ストレート、左右の倒せるパンチを持つアブドゥルバクヘヴは、投げたあとのスクランブルやコントロールにも長けており、中間距離の強さはACAでも群を抜いている。

とはいえ、アブドゥルバクヘヴは真っ向勝負が得意な故に間合いを取られ回られると追い足がないという欠点もある。対するサルナフスキーはベラトール後は中東経由でACB参戦を始め、1勝3敗という苦しいリスタートを強いられた。その後はブラジル人とルーマニア人から連続で勝利し、ACAとの通算では五部の星に戻している。

打撃、テイクダウン、寝技と流れるような動きを見せるウェルラウンダーのサルナフスキーはだが、綺麗な技術を持つ反面タフファイトや流れを断ち切られると脆いという側面を持つ。

ACAの頂点に立つには、ロシア人の猛者を相手に綺麗な試合をやり通すのか、ドロドロのファイトで勝ち切る必要がある。力でいえばアブドゥルバクヘヴ、サルナフスキーとすればその癖のない打撃──ジャブ&ローで削っていくのが良作といえるが……。アブドゥルバクヘヴが圧力で、間を与えないことは十分にありうる。そうなればレスリング&スクランブルではなく思い切って下を取り、そこから極めを勝ち切るぐらいしかサルナフスキーには勝機はない──そんなライト級王座決定戦だ。

そして新王者誕生前にセミで組まれているユーサップ・ライソフ✖アルテム・ラズニコフも見逃せない。

ACBフェザー級王者からライト級に転向し、すぐにでも王座に絡む力を持っていたにもかかわらず3試合の試運転を終えたライソフが、ここで勝利を得れば新チャンピオンへの刺客になることはまず間違いない。

■視聴方法(予定)
9月19日(日・日本時間)、
午後11時~ ACA TV

■対戦カード

<ACAライト級王座決定戦/5分5R>
タイガー・サルナフスキー(ロシア)
アブドゥルアジス・アブドゥルバクヘヴァ(ロシア)

<ライト級/5分3R>
ユーサップ・ライソフ(ロシア)
アルテム・ラズニコフ(カザフスタン)

<ライトヘビー級/5分3R>
アシルジャン・バヒッツァヌリ(カザフスタン)
アレクセイ・ブトリン(ロシア)

<フェザー級/5分3R>
ベクルス・スクロフ(タジキスタン)
トゥラル・ラジモフ(アゼルバイジャン)

<フライ級/5分3R>
マンスール・カトゥエフ(ロシア)
アザム・ガフォロフ(タジキスタン)

<ウェルター級/5分3R>
アザマット・アマゴフ(ロシア)
アルセン・スルタノフ(ロシア)

<ライト級/5分3R>
ロムアリ・ナルギエフ(ロシア)
イマナリ・ガムザトカノフ(ロシア)

<ヘビー級/5分3R>
ジョージー・キチジン(カザフスタン)
マルスホン・カムダノフ(タジキスタン)

<ウェルター級/5分3R>
ムラット・タルヤコフ(ロシア)
アインディ・ウマハノフ(ロシア)

<フェザー級/5分3R>
タメルラン・クラエフ(ウクライナ)
ヒュルベルゲン・シャリポフ(カザフスタン)

<ライト級/5分3R>
アルトゥル・ソロヴィエフ(ロシア)
アブバカル・メストエフ(ロシア)

<ライトヘビー級/5分3R>
オレッグ・オレニチェフ(ロシア)
ロマン・グドチキン(ロシア)

<ライトヘビー級/5分3R>
ムラット・グゴフ(ロシア)
アレクセイ・シドレンコ(ロシア)

<ライト級/5分3R>
ミハイル・バラキレフ(ロシア)
メディ・ダカエフ(ロシア)