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MMA MMAPLANET WJJC2021 ブラジリアン柔術 丹羽怜音 橋本知之

【WJJC2021】レポート&インタビュー茶帯ライトフェザー級。丹羽怜音「圧倒的に勝てる強さが」

【写真】ムンジアルの6月開催が決定したため、兄弟は日本への一時帰国を見送ってAOJでのトレーニングを継続するという(C)SATOSHI NARITA

2021年12月9日(木・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text by Satoshi Narita

レポート最終回は、茶帯ルースター級に参戦した丹羽怜音の準々決勝及び準決勝の模様と──これからについて語ったインタビューをお届けしたい。


<茶帯ライトフェザー級準々決勝/8分1R>
丹羽怜音(日本)
Def. 7分31秒by トーホールド
オスカー・エドゥアルド・マリン(ブラジル)

ベスト4をかけた戦いの相手は、アリアンシ・インターナショナルから参戦のオスカー・マリン。開始早々、片襟に手を伸ばして引き込んだ怜音にマリンは足払いを合わせるも不発に終わる。逆に怜音に潜られてバックを狙われるが、トーホールドを仕掛けてアドバンテージ1を獲得する。対する怜音もすぐさま上体を起こして2ポイントを得ると、フックスイープを狙ってもつれたマリンを再び引き込んでクローズドに入れる。

クローズドからマリンの足を難なく掬ってスイープに成功した怜音はマウントも奪取し、ハーフに捕らわれた足を抜いてパスガードの3ポイントも加算。開始2分ほどで11得点とリードを広げる。

その後、ハーフガードの攻防で再びパスに成功した怜音は、デープハーフからスイープを狙うマリンの右足をトーホールドに捕らえ、さらに左足へのヒザ十字を仕掛ける。最終盤、怜音は50/50から上になったマリンの右足を掬うと再度トーホールドをセットし、残り29秒でタップを奪った。

<茶帯ライトフェザー級準決勝/8分1R>
セバスチャン・セルパ(ブラジル)
Def. by 0-0 アドバンテージ2-0
丹羽怜音(日本)

2021年のパンナムを制しているセバスチャン・セルパ(カーウソングレイシーチーム)は怜音が1勝3敗で負け越している相手。序盤、セルパがダブルガードから素早くベリンボロに移行すると、怜音もセルパの両足を抱えることでバックテイクこそ回避するが、背後からしっかり奥襟を取られ、足を抜かれればバックテイクは免れない劣勢に立たされる。

ここから両者とも大きな動きがないまま折り返しの残り4分を過ぎ、防戦一方といえる怜音にペナルティが入るが、その後も態勢は変わらない。

やがて怜音がセルパの左足をフットロックのグリップで抱えるが、足首にプレッシャーをかけることができず、さらに時間が過ぎていく。

残り40秒、ペナルティ1で後がない怜音はフットロックを解除して起死回生のアタックを試みるが、待っていたかのようにセルパが怜音を背後から引き付け、ニアバック、さらにバックチョークの仕掛けで怜音の動きを完全に封じたところでタイムアップに。

最終盤の攻防で2つのアドバンテージを得て勝利したセルパは、決勝で野村優眞から1分55秒、送り襟絞めを奪い、茶帯ライトフェザーの頂点に立った。

目標に掲げていた世界一には届かなかったものの、自身初の表彰台、また茶帯ルースター級準優勝の弟・飛龍とともに初めて兄弟で大舞台の表彰台に上った丹羽怜音は今大会をどう振り返るのか。最後に本人の言葉を紹介する。

ーー初戦、橋本淳選手との日本人対決はレフェリー判定の接戦になりました。

「身体がうまく動かなかったというか、動画を見返してみても止まっちゃっていましたね。でも1回戦が終わってからけっこう休めたので、水や食料を補給して回復して、2回戦からは調子良く動けたと思います」

ーー橋本選手との対戦は初めてで、大会前は「楽しみ」とも話していましたが。

「思ったより柔らかくて、力も強いし、上手い選手でした。AOJにいないタイプというか、橋本知之さんに似ていると思いました。スイープされる感じはなかったけれど攻めづらくて、なかなかパスのアタックにつなげられなかったです」

ーー2回戦については?

「7月のオースティンオープンの決勝で負けた相手で、ミヤオのところで練習しているフィジカルが強い選手です。前回はアドバンテージ1差で負けたんですけど、8分間固められた感じだったので、今回はその敗戦を生かして作戦をしっかり立てて、思い通りに運べたかなと思います。

逆に準々決勝はタリス・ポンテスが来ると思っていたんですけど棄権していて、想定とは違ったものの、余裕を持ってやれました。攻めて極めを狙おうと思って、最後はトーホールドで極めたんですけど、飛龍も言っていたように足関はこっちに来てから重点的に練習していた技の一つだったので、練習通りに出せたことは良かったです」

ーー準決勝は想定通り、怜音選手が負け越しているセバスチャン・セルパが勝ち上がってきました。どんなプランを思い描いていたのですか。

「前回はダブルガードで僕が上になってアドバン1で勝ってたんですけど、なかなかパスできず、最後の1分でスイープされて負けてしまいました。ほかの試合でも最後にスイープして勝つスタイルだったので、ギィとは『ダブルガードで足関を狙いながら攻めて、時間が少なくなってから上にいって、トップキープの時間を短くして勝とう』と話していたんですけど、序盤で失敗してダブルガードから悪い体勢に入ってしまって。

僕が足を離したらバックを取られるプレッシャーがあったし、向こうも足を掴まれているから動けなくて膠着状態になって、フットロックも狙ったんですけど角度を合わせられず、最後、1分を切って上に行こうとしたスキを突かれてバックに付かれてしまいました」

ーー怜音選手はペナルティが1つありましたから、動く以外の選択肢はありませんでした。

「そうですね。今回は最初にミスしてからずっと悪い体勢だったので、内容としては負けた前回のほうが良かったと思います。ダブルガードからいきなり攻められたことに対応できなかったのが敗因です」

ーーとはいえ、ムンジアルという大舞台で初めての表彰台です。

「率直に嬉しいという気持ちもありながら、優勝を狙っていたのでやっぱり悔しいです。ただ、どの階級でもレベルが上がっているし、強豪選手がいる中で勝ち上がれたのは自信になりました。ムンジアルのような大きな大会で勝つためには、小さな大会にたくさん出て経験を積み、圧倒的に勝てる強さが必要だとギィとも話しています。次こそは絶対に優勝したいという気持ちが大きいです」

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MMA MMAPLANET WJJC2021 ケヴィン・カラスコ ブラジリアン柔術 丹羽飛龍 加古拓渡

【WJJC2021】レポート&インタビュー。丹羽飛龍「黒帯1年目でインパクトを残すには実力が足りない」

【写真】トップのポイントが入らない──柔術の結果論でなく、過程を重視した得点方式に敗れた感もある飛龍。改めて奥深い競技だ(C)SATOSHI NARITA

2021年12月9日(木・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text by Satoshi Narita

レポート第10弾、茶帯ルースター級に参戦した丹羽飛龍の決勝戦と──黒帯での将来を見据えた、試合後のインタビューをお届けしたい。


<ルースター級決勝/8分1R>
マテウス・ヴィラサ(ブラジル)
Def. 2-0
丹羽飛龍(日本)

連続一本勝利で勝ち上がってきた飛龍、決勝の相手はAres BJJ所属のマテウス・ヴィラサだ。

序盤、飛龍はダブルガードからベリンボロを狙うが凌がれ、ヴィラサをクローズドガードに捕らえたところで上になったヴィラサに2ポイントが入る。

その後、クローズドを解除した飛龍は左足へのアンダーフックデラヒーバから潜り込み、ウェイターガードからバックを狙う。執拗にバックを狙う飛龍は一連のアタックで3つのアドバンテージを獲得する。

さらにハーフマウントにヴィラサを捕らえると肩固めを仕掛けてアドバンテージを追加──残り3分、相手をスタックしてプレッシャーをかける飛龍だが、守勢に立つヴィラサも柔軟なガードでポジションを与えることは巧みに回避する。

残り1分、50/50で上からヴィラサの左足をフットロックのグリップで抱えていた飛龍は身を翻して右足へのトーホールドに切り替え、最後のアタックに望みをかけるが、ヴィラサは回転してエスケープしタイムアップ。

最終的に8つのアドバンテージを得た飛龍だが、序盤の2ポイントを返すことができず、あと一歩のところで優勝を逃した。

前回の2019年大会では紫帯3位。優勝は逃したとはいえ、茶帯というよりハイレベルなトーナメントで一段高い表彰台に上った丹羽飛龍に、今回の戦いを振り返ってもらった。

ーー1回戦はシード、初戦(準々決勝)と準決勝は一本勝ちで快調に勝ち上がりました。

「『全試合一本で行くように』とギィ(・メンデス)から言われていたし、自分もそのイメージだったので、決勝は負けちゃったんですけど、初戦と準決勝は1〜2分で極められたのは良かったです。初めてのムンジアルだった前回(2019年)は初戦しか極められなくて、けっこうヘロヘロになりながら試合して、加古拓渡さんと試合したケヴィン・カラスコに準決勝で僅差で負けちゃったんですけど、今回は体力的にも余裕を残して決勝に行けました。

そのために練習でも“極める練習”をするようにギィに言われていたんです。練習内容がAOJの中で僕だけ特殊だったというか、茶帯ルースターは僕とココ(・イズツ)君だけで、同じ体重の選手と練習する機会があまりなかったので、ムンジアルの2週間前まではフェザーやライトの大きな人とガンガン練習して、2週間を切ってからは紫帯や青帯のジュブナイルを極める練習ばかりしていました。ポジションを取ったあとに極める練習と、ガードから一気に極める練習の2パターンに取り組んで」

ーーその練習が生きたわけですね。

「作戦通りに運べました。体力を温存しながら勝ち進んでいけるように、初戦はフットロックやトーホールドを狙う予定でしたし、実際に試合で足関を極めたのは初めてだったと思います。今まで足を狙いにいくことがあまりなく、トーホールドとかは茶帯でAOJに戻ってきてから本格的に練習し始めたので、最初は全然使えなくて。パンナムでも1、2回戦は足関で勝つプランだったけどうまくいきませんでした。でも、ムンジアルの1、2カ月前から練習で極まるようになって『試合でも使える』という気持ちになれたと思います」

ーー決勝のマテウス・ヴィラサ戦では、序盤で取られたスイープのポイントを返せずに0-2で敗退でした。中盤でバック狙いから上になった飛龍選手にポイントが入らない、とセコンドのギィたちが猛抗議をしていましたね。

「ギィはそう言ってくれていたんですけど、ポイントが入らないのが正しいみたいです。一度バックを狙ってワンフックまで入れたので下ではなくなったので、上を取ってもポイントが入らなかった感じで。ただ、結局極められなかったのが悪かったと思っています。

試合後にギィとも話したんですけど、『タイナン(・ダウプラ)たちのレベルになると、試合で何が起こっても極められる。ヒリュウも優勝するレベルにはいるけれど、そこが足りていない』と言われました。

実際にそうだと思います。メンデス兄弟やタイナン、ジョナタ(・アウベス)なら何が起こっても逆転していると思うし。紫帯で初めてパンナムに出た時の準決勝の相手で、その時はパスもマウントも取って三角で極めたんですけど、今回はツメが甘かったです」

ーー改めて、茶帯での準優勝という結果についてはどう思いますか。

「うれしくないわけではないけれど、やっぱり悔しい気持ちのほうが強いです。黒帯1年目でインパクトを残せる強さになるためには、今回のメンバーなら優勝していないとダメでした。タイナンみたいに黒帯でいきなり優勝するにはまだまだ実力が足りないと感じた2位でした。でも、メダルを獲れないで終わったわけではないので、来年こそは優勝したいです」

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【WJJC2021】レポート茶帯ライトフェザー級。丹羽怜音のムンジアル──1回戦&準々決勝

【写真】兄弟揃って表彰台を決めた (C)SATOSHI NARITA

2021年12月9日(木・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text by Satoshi Narita

レポート第9弾は丹羽飛龍の兄であり、茶帯ライトフェザー級に参戦した丹羽怜音(AOJ)の初戦と準々決勝の模様をレビューしたい。


<茶帯ライトフェザー級1回戦/8分1R>
丹羽怜音(日本)
Def. by 0-0 レフェリー判定
橋本淳(日本)

自身初の表彰台を目指す怜音、初戦の相手はカルぺディエムの橋本淳──ムンジアルでは珍しくない日本人対決に。

開始早々のダブルガードでお互いにルーチが入ったのち、橋本が引き込みに成功する。橋本は右のウェイターガードを起点にオモプラッタやバックを狙うが、怜音もベースを取って冷静に対処していく。

残り2分を切り、怜音は片袖と右足裾のグリップから体勢を低くしてサイドに回り込み、ニースライスを仕掛けるなどパスのプレッシャーを強める。とはいえ、アドバンテージやポイントにつながる目立った動きはないまま迎えた最終盤──。

やや守勢に回っているように見えた橋本がインバーテッドで怜音を捕らえようとするが、パンツの尻をグリップして怜音が橋本を引き付ける。ここからヒザ十字を狙ったか背中を見せる橋本に覆い被さる形でシートベルトグリップを作り、バックテイクすんでのところでタイムアップに。

両者ともポイント、アドバンテージゼロのままレフェリー判定となり、日本人対決の軍配は怜音に上がった。

<茶帯ライトフェザー級2回戦/8分1R>
丹羽怜音(日本)
Def. by 2-0
ニコラス・ポンセ(チリ)

2回戦の相手はノヴァウニオン所属のニコラス・ポンセ。ダブルガードで下を選び、アドバンテージ1を献上した怜音は、スパイダーラッソーから右のデラヒーバに切り替えると外回転でポンセを崩してクローズドガードを作る。下からループチョークや十字絞めを仕掛けてアタックの手を緩めない怜音は、片襟片袖から再び右のデラヒーバでポンセを崩してスイープに成功する。

残り時間3分を切って上になった怜音に対し、ポンセはワンレッグXから怜音の左足を50/50に捕らえ、さらにラペルを絡めて怜音をリフトし同点へのチャンスを作るがスイープは不発。

トップキープで勝った怜音が2-0で勝利し、表彰台を確定させた。

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MMA MMAPLANET WJJC2021 ブラジリアン柔術 丹羽飛龍

【WJJC2021】レポート茶帯ルースター級。丹羽飛龍のムンジアル──準々決勝&準決勝

【写真】準々決勝、準決勝と危なげなく一本勝ちし決勝進出を決めた(C)SATOSHI NARITA

2021年12月9日(木・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。レポート第8弾は茶帯ルースター級に参戦した丹羽飛龍(AOJ)の決勝までの道のりを辿りたい。
Text by Satoshi Narita


<茶帯ルースター級準々決勝/8分1R>
丹羽飛龍
Def. 1分32秒by フットロック
アントニオ・ヴィラトラ(米国)

2021年のアメリカンナショナル、パンナムを制し、世界一の頂を目指す飛龍は、1回戦はシードで2回戦=準々決勝からの登場となった。初戦の相手はVBros BJJのアントニオ・ヴィラトラ。引き込みに成功した飛龍はすぐさま右足に絡んでベリンボロを狙うが、ヴィラトラも裾をコントロールして許さず。深追いせずに上を取った飛龍に対し、ヴィラトラは左足でラッソーを作るが、ラッソー側へのフェイントから逆サイドにすぐさまジャンプし、ガードを越えた飛龍が再びバックを狙う。これは凌がれた飛龍だが、スクランブルからベリンボロを狙ったヴィラトラの左足を捕らえるとフットロック一閃。一本勝利で準決勝へコマを進めた。

<茶帯ルースター級準決勝/8分1R>
丹羽飛龍(日本)
Def. 2分02秒by 送り襟絞め
ピエール・ピリス(米国)

準決勝の相手はBrazil 021 School of Jiu-Jitsu所属のピエール・ピリス。

開始早々、ダブルガードから右足に絡んでベリンボロを狙う飛雄だが、これはルーチとなりスタンドでの再開に。再びダブルガードとなり、今度はピリスが飛龍の脇を刺して上になりアドバンテージを先取したが、奥襟を掴んでピリスの背後に上った飛龍がスイープ&バックテイクに成功すると、亀の体勢で凌ごうとするピリスを送り襟絞めで絞め上げ、タップを奪った。

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ABEMA Report WJJC2021 ブルーノ・マルファシーニ ブログ マイキー・ムスメシ

【WJJC2021】止まらないマイキー・ムスメシ。マルファシーニに明確な差をつけムンジアル4冠達成

【写真】道着の練習1カ月でムンジアルを制したマイキー。来年はいよいよADCCを獲りに行く(C) SATOSHI NARITA

8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text by Isamu Horiuchi

2年半ぶりに開催された、道着着用柔術の世界最高峰の大舞台。レポート第9回は、橋本知之が頂点を目指したルースター級決勝戦──結局のところ、この2人が相対した──マイキー・ムスメシ✖ブルーノ・マルファシーニの対戦を振り返りたい。


<ルースター級決勝/10分1R>
マイキー・ムスメシ(米国)
Def. 6-0
ブルーノ・マルファシーニ(ブラジル)

強豪ひしめく大激戦区となったこの階級だが、決勝まで辿り着いたのはやはりレジェンド2人だった──前回王者のムスメシは、初戦のカーロス・オリヴェイラ、準決勝の橋本知之を倒したジョナス・アンドラージ戦とどちらも強烈無比なストレート・フットロックで一本勝ちして圧巻の決勝進出を決めた。

対するムンジアル10タイムス王者のマルファシーニは、準々決勝では昨年のヨーロピアンで敗れたタリソン・ソアレスと対戦、下からの仕掛けを上から防ぎ続けてレフェリー判定勝ちを収めた。

そして準決勝では、ホドネイ・バルボーザ相手にやはり上をキープしてアドバンテージ1差での勝利。往年の頭抜けた強さこそ影を潜めているものの、大半が下攻めにこだわる最軽量級において、平然と上を選択してなお崩されないその強靭なベースと身体操作は健在だ。

迎えたファイナル。試合開始すぐにムスメシが引き込むと、マルファシーニも一瞬座るが、すぐに上を取り返し、すかさず右にパスを仕掛ける。この攻撃で横に付きかけたマルファシーニが、最初の上選択と含めて2つのアドバンテージを得た。

下から潜るムスメシに対し、マルファシーニは上からダイブするように足を狙う。マルファシーニの右足とムスメシの左足が絡まった複雑な状態になる。ここからムスメシは、マルファシーニに背を向けるような格好で一瞬上になって2点獲得すると、すぐに体勢を戻し、お互い足を絡めたったまま横向きに。ムスメシはあいかわらずの試合巧者ぶりを見せる。

しばらく同じ体勢が続くが、やがて両者の足の絡みが解けると、ムスメシが素早く動き、両足でマルファシーニの両足を挟みこむ。そのままマルファシーニの尻に付いてのベリンボロ狙を仕掛けるムスメシ。

マルファシーニも逆にムスメシの背後を狙うが、両足を挟み付けている分だけ有利なのはムスメシの方だ。ムスメシは登って体勢を進めると、マルファシーニの首元の襟を取って背後に回り、襷掛けを作る。

マルファシーニはすかさず立ち上がり、ムスメシに右足のフックを作らせずに前に落とそうとするが、しっかりと密着しているムスメシは崩れず。そのままムスメシはマルファシーニをグラウンドに持ち込むと、ついに右足のフックをイン。バックグラブの4点を奪ってみせた。

2008年に宿命のライバル・テハにチョークで一本負けして以来、たとえポイントゲームで出し抜かれることはあっても、決して不利な状況に追い込まれることのなかったマルファシーニ。そんな絶対王者の牙城をムスメシは完全に崩したのだった。

さらに足を四の字にフックして体勢をキープするムスメシに対し、仰向けになったマルファシーニは徐々に体をずらしてゆく。そこからムスメシをリフトするように体勢を起こしたマルファシーニはヒザ立ちに。

これで正対に成功したかと思われたが、足の四の字ロックをキープするムスメシは、右手をマルファシーニの後頭部に回して襟を取り、左手では左膝を掴んでそれ以上の進展を許さない。やがて左腕をさらに深く入れてマルファシーニの左ヒザを抱えたムスメシは、完全に下にならないまま体制を固めた。

逆転を狙いたいマルファシーニだが、ムスメシに固められて動けないまま時間が過ぎてゆく。残り3分を切った時点でペナルティが与えられたムスメシだが、意に介さずポジションを保つ。残り2分近くのところで二つ目のペナルティを宣告されると、ムスメシは動き始める。右手でマルファシーニのラペルを引き出し、左ヒザにこじ入れている左手に渡して体勢を固めてから足の四の字ロックを解除し、クローズドガードに変更した。

ここでインサイドガードとなったマルファシーニだが、自らのラペルで強固に左足を固められているために動けない。残り30秒で立ち上がるも、ムスメシはガードを開かず。マルファシーニはムスメシのガードを押し下げて開かせ、最後にトーホールドを狙うが通じず、試合終了に。

ライトフェザー級2連覇に続き、ルースター級でも2連覇を果たしたムスメシは、勝利と同時に四本の指を伸ばして自らの偉業をアピールした。

絶対王者マルファシーニをポジションで制圧という、過去10数年に誰も達成できなかった偉業を成し遂げての4連覇。今年の春からずっとノーギに専念していたということを考えると、まさに驚愕の強さを見せつけた。

ムスメシは試合後、「ブルーノのようなレジェンドと戦えて光栄だよ。彼の動きは凄く速く、そして精確だった。でも、僕の持っているベリンボロの流れの一つで捉えることができたよ。決勝でもフィニッシュしたかったんだけど、あのクールなボロを決められたから十分だよ。

ここまで8カ月ノーギをやって、1カ月だけギの練習に戻ったら、道着柔術では過去最高のパフォーマンスができた。ノーギの練習が役にたったんだろうね。僕はこれで2つの階級で2度ずつ、4度の王者だ。これはホール・オブ・フェイム(殿堂)に値するよね。アメリカ人として初のIBJJFホール・オブ・フェイムをもらえたら嬉しいね。

次はどうするかな。今回初めて、このルースター級で減量の問題がなかったんだ。だからこの階級にとどまるのも良いし、ライトフェザーでパト(今回ライトフェザー級優勝のジエゴ・オリヴェイラ)とかと戦うのもいいね。僕はすでにライトフェザーも2度獲っているから、別に優勝へのモチベーションはないんだけど、彼らのようなニューモンスターズと戦うことが、僕にとってチャレンジになるからね。

ここのところ毎月のようにWNOで135、145、155パウンドの強豪たちと戦ってきたから、僕のタフネスのレベルも上がったんだよ。それで今回125で戦って素晴らしい戦果が出せた。これが僕の適性体重なんだよ」とコメント。

有り余る才能の持ち主が、日々常人には計り知れぬほどの努力を重ね、試合のたびに驚くべき進化を見せつける──あらゆる面で我々を驚嘆させ続けるこの男は、来年体重差を超えてADCC制覇をも成し遂げてしまうのか。ムンジアルが終わってなお、2022年もマイキー・ムスメシはグラップリング界軽量級の話題を独占し続けるだろう。

【ルースター級リザルト】
優勝:マイキー・ムスメシ(米国)
準優勝:ブルーノ・マルファシーニ(ブラジル)
3位:ジョナス・アンドラージ(ブラジル)、ホドネイ・バルボーザ (ブラジル)

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JJ Globo Report WJJC2021 ジエゴ・パト・オリヴェイラ ブログ メイハン・マキニ

【WJJC2021】ポスト・ミヤオ時代、ユニティのジエゴ・パトがライトフェザー級で頂点引き継ぐ

【写真】嶋田、マキニを倒しての堂々のライトフェザー級の頂点に立ったジエゴ・パト(C)SATOSHI NARITA

8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text by Isamu Horiuchi

道着着用柔術の世界最高峰の大舞台。第8弾は嶋田裕太を破ったジエゴ・パト・オリヴェイラの準決勝と決勝、ライトフェザー級に新時代の幕上げを告げる優勝への道程を振り返りたい。


嶋田との準々決勝で恐るべき実力を見せつけたジエゴ・オリヴェイラは、準決勝ではもう1人の優勝候補と目されていたメイハン・マキニとの大一番に。マキニの凄まじいパス攻撃を耐えて50/50戦に持ち込むと、終盤足の絡みが解けた瞬間にパス狙いから目にも止まらぬ速度のバックテイクへ。マキニに場外逃亡を余儀なくさせて決定的な2ポイントを奪い、事実上の決勝戦を制した。

<ライトフェザー級準々決勝/10分1R>
Def.ジエゴ・パト・オリヴェイラ(ブラジル)
Def.6分06秒by 肩固め
マラカイ・エドモンド(米国)

続く決勝でオリヴェイラを待っていたのは、ほとんどの者にとってノーマークの新鋭、マラカイ・エドモンド。シットアップで上を取ったオリヴェイラは、プレッシャーパスからマウントを奪取し、肩固めを極めて僅か6分少々で圧勝した。オリヴェイラは、ユニティ柔術の先輩であるミヤオ兄弟がマスターに戦いを移した後の、新時代到来を高らかに告げる形で初優勝を遂げた。

【ライトフェザー級リザルド】
優勝:ジエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
準優勝:マラカイ・エドモンド(米国)
3位:メイハン・マキニ(ブラジル)、レネ・ロペス(米国)

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MMA WJJC2021 エドゥアルド・ホキ ブラジリアン柔術 平田孝士朗 海外

【WJJC2021】レポート&インタビュー茶帯フェザー級。平田孝士朗─02─「これからはレスリングを」

【写真】2022年は例年通り6月開催となるムンジアル。茶帯での再チャレンジまであと半年(C)SATOSHI NARITA

9日(木・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。

レポート第7弾は国内茶帯トップとしてフェザー級に参戦した平田孝士朗の戦いぶり=PART02として、準々決勝のレポートとインタビューをお届けしたい。
Text by Satoshi Narita

<平田孝士朗の戦いぶり in ムンジアル=PART01はコチラから>


<茶帯フェザー級準々決勝/8分1R>
エドゥアルド・ホキ(ブラジル)
Def. by 2-0
平田孝士朗(日本)

この試合に勝てば表彰台確定の平田。相手のホキはゴルジーニョが主宰するSTART Jiu-Jitsuの茶帯で、今年のアメリカンナショナルライト級優勝、パン選手権ライト級2位、無差別3位入賞、ワールドノーギでもライト級優勝の実績がある。

試合開始早々、同時引き込みで上を取った平田にアドバンテージが一旦は入るも取り消される。引き込みに成功し、右のシャローラッソー、ラッソーから好機を窺うホキ相手に、平田は蹲踞ベースで距離を詰め、左肩から相手に乗ってプレッシャーをかけるもラッソーのグリップを解除できない。

副審の1人が平田のルーチをアピールする中、残り3分を切り、平田はラッソーとは逆のホキの左裾をグリップして勢いで横へ流すが、瞬時にホキが右のスパイダーフックで平田の体勢を崩し、自ら立ち上がって2ポイントを獲得する。

残り2分半、0-2でリードされた平田は守りに徹するホキを片襟片袖から煽って三角を狙うが、ホキもワキを固く締めて凌ぐ。その後、ホキをクローズドに入れると再び三角を試みるが、頭を抜かれて回避されてしまう。最終盤、スクランブルで起死回生を狙った平田だが、ホキはそれを許さずにタイムアップとなった。

茶帯として初めてのムンジアルで平田は何を感じたのか。大会後に振り返ってもらった。

──準々決勝で戦ったエドゥアルド・ホキは残り2試合を勝ち抜いて優勝し、無差別にも参戦して3位入賞を果たしています。彼との試合はどう振り返りますか。

「成績を残しているだけあって上手な選手だと思いました。パスをさせないことをしっかり意識しながらガードを作ってくるし、スイープできるタイミングで一気に来られた感じで。オモプラッタが上手い選手なので警戒していたんですけど、自分があまり動けず、ルーチが入るようなところで動かせてスイープを狙われた。作戦も上手かったと思います」

──茶帯でのムンジアル挑戦はベスト8で終わりました。

「アブダビもムンジアルも表彰台の一歩手前で落としているので、どんどん経験を積んで、優勝できるように頑張りたいです。これからはレスリングをやりたいと思っているし、シンプルにテクニックをイチから見直したいです」

──レスリングが必要と感じたのは?

「自分がスイープされる時はパンツを持たれてからとか、アブダビの時ならテイクダウン狙いを切り返されたりで……。レスリングは自分のスタイルに合っていると思うし、黒帯の試合を総合的に見ていて、レスリングの攻防がすごく多いと思ったので強化していきたいです」

──ホキは大会後に黒帯に昇格しました。平田選手は?

「遠征に行けたら……ですけど、来年のヨーロピアン、パン、ムンジアルにも茶帯で出たいと思っています。そのためにもとにかく練習をして、海外で結果を残したいです」

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MMA WJJC2021 ブラジリアン柔術 平田孝士朗

【WJJC2021】レポート茶帯フェザー級。平田孝士朗のムンジアル─01─1&2回戦

【写真】2回戦は腕ひしぎ腕固めで一本勝ち──ベスト8入りを決めた(C)SATOSHI NARITA

9日(木・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。

レポート第6弾は国内茶帯トップとしてフェザー級に参戦した平田孝士朗(カルぺディエム)の戦いぶり=PART01として、1&2回の模様をレポートする。

Text by Satoshi Narita


<茶帯フェザー級1回戦/8分1R>
平田孝士朗(日本)
Def. 2-0
ザック・カイナ(米国)

初戦の相手は青帯時代にコパ・ブルテリアで来日経験もあるAOJ所属のザック・カイナ。試合開始後、互いに引き込んでは立ち上がり、3度目に平田が引き込みに成功。左でパンツグリップのデラヒーバフックを作り、カイナの襟を掴もうとするが、カイナも両手で平田の右袖をコントロールしそれを許さない。

やがてカイナの右手が平田の片襟に伸びると、すかさず平田も襟を取り、足を蹴り上げてカイナをリフト。自身も身を翻して立ち上がると、片足でバランスを取るカイナの左足を豪快に刈る。

開始1分で2点を先取し上になった平田は、左のデラヒーバフックを起点にするカイナをトレアナで崩し、ラッソーには低い体勢のパスでプレッシャーをかける。残り3分半でマット中央に戻されると、つま先、裾を取って足のフックを潰す平田に対し、カイナは左のアンダーフックデラヒーバから外回転で平田を強引に崩すが、平田もパンツと左裾の強固なグリップで対処する。

終盤、平田は再び左のアンダーフックデラヒーバを作ろうとするカイナの足を裾グリップで潰してトレアナを連発し、反撃のチャンスを与えることなく試合終了。3年前のコパ・ブルテリアではカイナに絞めで一本負けを喫した平田だが、磐石な試合運びでその借りを返した。

<茶帯フェザー級2回戦/8分1R>
平田孝士朗(日本)
Def. 7分02秒 by 腕ひしぎ腕固め
アリ・ポーラン(米国)

2回戦、平田の相手はBURNS BJJ傘下のジムに所属するマスター世代の茶帯。開始早々の同時引き込みで上を取りアドバンテージを得た平田は、ステップバックして相手のサイドに回りニアパスのアドバンテージも獲得。さらに素早く腰を引き、ポーランのデラヒーバフックを外してサイドへ回り込むと、

亀になった相手に付いてゆきバックテイクを狙う。これは前方に落とされて凌がれたが、パスアタックで3つ目のアドバンテージ。その後もインバーテッドの体勢からポーランを崩し、ベースを取る相手の上体を蹴って立ち上がり2点を獲得する。

下になったポーランは平田の右足に執拗に絡みついてKガード、50/50からアタックを試みるが、平田はスタンドの状態でポーランの右足をトーホールドに捉え、アドバンテージを加算。一方でポーランももつれ際に仕掛けたフットロックでアドバンテージを得る。

その後、ポーランは右のワンレッグXからスイープに成功したが、平田もすぐさまデラヒーバからのオーバーヘッドスイープで上を取り返し4-2に。
残り4分を切り、潜ってきたポーランの足を捌いた平田は、瞬時に身を落としてポーランを上四方で固め、3ポイントを奪取。

マウントへの移行はポーランが転がって逃げたため完遂できなかったものの、マット外、平田が背後から抱きついた格好でパロウが入ると、一連のアタックでアドバンテージ2つが平田に入った。

スタンドでの再開後、引き込んだ相手の背後に回り込んだ平田は、バックは取られまいと身を翻したポーランを三角に捉え、左腕を伸ばしてタップを奪った。

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JJ Globo Report WJJC2021 ジエゴ・オリヴェイラ. ブログ 嶋田裕太

【WJJC2021】嶋田裕太はジエゴ・パト・オリヴェイラのガードゲームに敗北、ベスト8で2021年終戦

【写真】「自分に足りないものと、格上の相手に通用することを確認することができました。さらに強くなってこの場所でもっと試合できるように頑張ります!」と試合後に嶋田からメッセージが入った(C)NARITA SATOSHI

8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi

道着着用柔術の世界最高峰の大舞台。第5弾は嶋田裕太が挑んだライトフェザー級準々決勝の模様をレポートしたい。


<ライトフェザー級準々決勝/10分1R>
ジエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
Def.4-2
嶋田裕太(日本)

すぐに引き込んだオリヴェイラは、得意のラッソーを左右で切り替えながら煽りに来る。対する嶋田は、体勢低く脇を閉めて対処しては左右に動いてのパス狙いへ。が、オリヴェイラのガードを崩すには至らない。

オリヴェイラは内回りで崩してからのシットアップ狙い。しかし嶋田は左腕をマットにポストしてバランスを保った。ならばと左足でデラヒーバを作るオリヴェイラは、そのまま後転してのスイープを狙う。

嶋田はうまくその動きについてゆき上を保つ。さらにオリヴェイラは、嶋田の右足に外から腕を入れてシットアップに。崩されかけた嶋田だが、ここもすぐに上の体勢に戻る。2点の献上は回避した嶋田だが、ここでアドバンテージを一つ先行されてしまった。

オリヴェイラは嶋田のラペルを引き出して、自らの右足に絡める強固なガードを取る。嶋田は機敏なバーピーの動作で低く入り、また左に側転してのパスを狙う──が、オリヴェイラはラペルグリップをキープしたままついてきてガードを保つ。

その後もこの右のグリップが切れない嶋田。対するオリヴェイラは内回りから嶋田の右足を抱えると、そこにラペルを通して固定した上でさらに回転を続ける。

絡まれた右足を嶋田がうまく抜くと、今度はオリヴェイラは嶋田の左足を内側から抱える。そこからオリヴェイラは右のグリップを引きつけながら嶋田を崩して上を取り、2点を先制した。

ここまで卓越した反応とボディバランスで上を保ってきた嶋田だが、ラッソーやラペル等のグリップを用いて、あらゆる方向に回転し次々と仕掛けてくるオリヴェイラの崩しが、とうとうそれを上回った形だ。

ディープハーフの体勢で潜ろうとする嶋田に対して、オリヴェイラは腰を切って足を抜く体勢を作り、アドバンテージを追加する。次の瞬間、嶋田はスクランブルから上を取り返し、2点を取り返してみせた。それでも、まだアドバンテージで2つ下回っている。

残り3分半。嶋田は激しく左右にパスを仕掛けるが、右で片襟を掴んだオリヴェイラは、嶋田の足を下から刈っての切れ味抜群のシザースイープを見せる。体勢を崩された嶋田がすぐに反応して体制を立て直すと、改めて引き込んでみせたオリヴェイラが、3つ目のアドバンテージを獲得した。

このままガードをキープすれば勝てるオリヴェイラは、両側でラッソーを作る。嶋田は右のグリップを引き離すと、左にダイブする形でのパスへ。

オリヴェイラは冷静に対応して正体する。再び自らの右足に嶋田のラペルを絡めたオリヴェイラは、右腕で嶋田の右足を抱えると、そのまま引き付けて崩してシットアップ。

点差を4-2とし、さらになぜか4つ目のアドバンテージも得たのだった。残り時間がなくなってゆくなか、嶋田はなんとかスクランブルを試みるが、オリヴェイラはそれを許さずに試合終了に。

結局ポイントは4-2、アドバンテージは4-0。オリヴェイラの繰り出す迅速かつ変幻自在の下からの攻撃に終始ペースを握られ、ポイントを奪われた嶋田は最後まで反撃の糸口を見出せないままの完敗だった。

結果的に、現時点での世界の頂点を肌で味わうことになった嶋田。NYでのさらなる修行の中で、難攻不落のオリヴェイラの仕掛けをも突破するマルセリーニョ・ガウッシア直伝──至高のトップゲームを磨き、世界の舞台で披露してくれることを期待したい。

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MMA WJJC2021 ジョナス・アンドレイジ ブラジリアン柔術 橋本知之

【WJJC2021】レポート終了45秒前のペナルティ。橋本知之、準々決でジョナス・アンドレイジに惜敗

【写真】これがムンジアル──ということなのか……(C)NARITA SATOSHI

8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi

2年半ぶりに開催された、道着着用柔術の世界最高峰の大舞台。第4回は、橋本知之が世界トップレベルと伍したルースター級に準々決勝の模様をレポートしたい。


<ルースター級準々決勝/10分1R>
ジョナス・アンドレイジ(ブラジル)
Def. by 2-2 アドバンテージ 2-1
橋本知之(日本)

黒帯2日目の幕を開けたのは、群雄割拠のルースター級の優勝候補同士による潰し合い第1ラウンド──昨年のヨーロピアン王者・橋本と、今年のアブダビ・ワールドプロ優勝者のアンドレイジによる準々決勝だ。

お互いに引き込んでダブルガードの状態となった両者。橋本がすぐにベリンボロを仕掛けるが、アンドレイジもすかさず対応して正対し、ややして互いにペナルティが与えられた。

その後もう一度同様の攻防が繰り返されて仕切り直しとなると、またしても引き込む両者だが、ここでアンドレイジが上を選択してアドバンテージを獲得する。

橋本はアンドラージの体を引き付けて一度前に崩すが、アンドレイジが堪えてダブルガードの体制に。ここで橋本はベリンボロのモーションを一度見せておいてからシットアップへ。

うまく上になって2点を先制した。が、アドバンテージはアンドレイジが先行しているため、上になればアンドレイジが逆転するというシーソーが成立したことになる。

左腕で橋本の襟を取ったアンドラージは内回りを仕掛けるが、橋本もすかさず上からのベリンボロのカウンターを合わせる。対応して下に戻るアンドレイジ。橋本のセコンドのカイオ・テハからは「トモ、パーフェクトだ!」という声が飛んだ。

アンドレイジは再び内回りで崩しを試みるが、橋本はうまく距離を作って深く入らせない。戻ったアンドレイジが右でラッソーを作ると、「ブレイク・イット!」というテハの指示に従って、橋本は下がってそのグリップを切りにかかる。

やがてラッソーのフックが外れると、アンドレイジは左に回転しながらの崩しを仕掛ける。橋本が耐えると今度はシットアップを狙うアンドレイジ。が、橋本はここも反応して押し戻した。アンドレイジの激しい仕掛けに、橋本はうまく対応している。

橋本は右で片足担ぎの体勢を作ると、アンドレイジは右足で橋本の足元を借りながらのスイープを仕掛ける。が、ここも橋本が堪えて、両者の体は場外に。試合は中央から再開となった。

残り4分半。相手にスイープを取られても逆転されないように、アドバンテージを取れというテハの指示が飛ぶ中、橋本はダブルアンダーの体勢に。アンドレイジはその右足首を掴んで崩してのシットアップを狙うが、ここも防いだ橋本は右腕をマットにポストし、そのまま右に大きくステップオーバーしてのパス狙いへ。

アンドレイジもすぐにインヴァーテッドで対応して正対。橋本の攻撃はアドバンテージとしては認められなかった。

アンドレイジは再度前に崩してからのシットアップを狙うが、橋本は耐える。ワキを閉めている橋本に対して、アンドレイジはその腕の上から三角絞めのロックを作る。しばらくその形をキープしてから離してレフェリーを見るアンドレイジだが、ここもレフェリーはアドバンテージを入れなかった。

残り時間が少なくなってくる中、橋本はワキを閉め、また必ずどちらかのヒザをアンドレイジの足の間に入れることで強烈な下からの煽りを防いでいる。

なんとかして上を取りたいアンドレイジだが、橋本の守りを崩せないまま時間が過ぎる。そして──残り45秒のところでなんとレフェリーが橋本に膠着のペナルティを宣告。これでアンドレイジに2点が与えられ、ポイントが逆転してしまった。

残り45秒で突如として劣勢に立たされてしまった橋本は、左にパスを仕掛ける。が、アンドレイジは自らの左足を橋本の後頭部から回して左ワキに差し込んで体勢を固定し、そのままリードを守り切った。

難敵アンドレイジを相手に、着実に勝利への道を進んでいたかに見えた橋本だが、終盤のレフェリーの判断で状況が一転──この世界最高峰の戦いにおいて、あの時間から上攻めで再逆転するのはほぼ不可能であることを考えると、なんとも気の毒な敗戦となってしまった。

が、終盤の橋本が守勢に回っていたことも否めず、あのペナルティ自体は不当な判断ではないともいえる。これが競技ブラジリアン柔術最高峰の駆け引き。世界制覇のためには、この強敵を相手にしてなお、明確な差を付けるような実力が必要というのは余りにも過酷な戦場だ。

ともあれ今回、世界最高峰の実力を改めて証明した橋本が、さらに力を増して世界の舞台に戻ってくることを期待してやまない。

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