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【UFC】Road To UFC シーズン3出場選手発表!

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UFCとの契約を争う「Road To UFC シーズン3」の出場選手が発表されました。今年は5月18日、19日に上海のUFCパフォーマンス・インスティチュートにて開催され、トーナメントの無い階級のワンマッチも行われます。

【フェザー級】
原口伸(BRAVE)
安藤達也(フリー)
河名マスト(ロータス世田谷)

【バンタム級】
野瀬翔平(マスタージャパン福岡)
小崎連(リバーサルジム久喜WINGS)
中西透暉鷹(ISHITSUNA MMA)

【フライ級】
松井斗輝(THE BLACKBELT JAPAN)

【女子ストロー級】
本野美樹(AACC)

【非トーナメント戦】
雑賀“ヤン坊”達也(DOBUITA)

各大会のチャンピオン、チャンピオン経験者、若手の有望株がズラッと並ぶラインナップ。今年は誰がUFCとの契約を掴むのか。詳細は追って!
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45 AB Black Combat Brave CF DEEP GFC Gladiator Grachan LFA MMA MMAPLANET NavE o ONE RIZIN Road to UFC Road to UFC2024 TOP FC UAEW UFC アリ・モタメド イ・チャンホ イ・ミンヒョク ソ・ユダン ダールミス・チャウパスゥイ チェ・ドンフン チーニョーシーユエ パンクラス パン・ジェヒョク ホン・ジュンヨン ムハンマド・サロハイディノフ ユ・スヨン ロン・チュウ 中村倫也 伊藤盛一郎 加マーク納 原口伸 安藤達也 小崎連 工藤諒司 本野美樹 松井斗輝 松嶋こよみ 河名マスト 海外 福田龍彌 若松佑弥 藤沢彰博 透暉鷹 野瀬翔平 鶴屋怜

【Road to UFC2024】松井、小崎、透暉鷹、野瀬、安藤、河名、原口、本野。MMAPLANET調べRTU出場選手

【写真】(C)MMAPLANET

5月18日(土・現地時間)&19日(日・同)に中国は上海のUFC PIで開催されるRoad to UFC2024。UFCから正式発表がないが、選手及びマネージメント関連から確認が取れている日本人出場選手と対戦相手を纏めてみた。
Text by Manabu Takashima

アジアでは唯一のUFCへの公式ルート=Road to UFC。しかし、選手の選考基準は曖昧で、3度目の開催を迎える今回も多くの出場希望選手がやきもきしてきた。3月31日を選考の〆とする。4月3日が中国のビザ取得のためにタイムリミット。選ばれた選手はビザ取得のため即連絡が入るが、選考に漏れた選手は連絡がないことで不出場を意味する──などなど、今年も情報が錯そうしまくっていた。

また本来UFCはカードの正式発表等のリリースは通常はなく、選手やマネージメントの自己発信に任されている。対して日本国内はプロモーションとメディアのなかでオフィシャル発表を待つという慣例が存在している。Road to UFC出場メンバーの公式発表がなかなか行われないのは、ビザ取得など選手の顔触れが変更されることなども考慮されているという話も伝わってくるが、そのような状況下で選手個人や出場していた団体が公にするケースも出てきた。ここではソースが明らかでない選手を除き、MMAPLANETが選手及びマネージメントに出場の確約があることの確認を取れた選手について言及したい。


【フライ級】
松井斗輝
対戦相手ルエル・パナレス

Grachanでデビューしンクラスでキャリアを積んできたTHE BLACKBELT JAPAN所属の松井が、昨年の鶴屋怜に続き同ジムよりも出場権を得た。キャリア6勝1敗の24歳、伊藤盛一郎や福田龍彌が選外となったことを考えると、このレコードと若さは今のUFCが欲しているゾーンにいるということだろう。

(C)BRAVE CF

松井の対戦相手はフィリピンのルエル・パナレスだ。

レコードは松井と同じく6勝1敗。松井が初めて海外で戦うのに対し、パナレスはUAEWでUAE、BRAVE CFでバーレーンとインドネシアでの試合を経験してきた。ゴリゴリのテイクダウン・ファイター=ムハンマド・サロハイディノフとの敗北から再起戦がUFCを賭けた戦い。スタイル的に初戦以降の対戦相手、つまりは他の出場選手が気になるところだ。

そのフライ級では日本でも一部で猛烈に注目されていたチェ・ドンフンの出場も決まった。

韓国のDouble GFCフライ級王者で、GLADIATORフライ級王座決定トーナメント準決勝出場を決めていたチェ・ドンフンもUFC行きを賭けた戦いにステップアップ。

堅実な戦いができるフィニッシャーの初戦の相手は、前回の準優勝者チーニョーシーユエだ。

エンボー・ファイトクラブ出身、UFC PI所属の中国MMA界のエリートコースを行くチーニョーシーユエと、韓国海軍出身のイケメン=これは興味深い顔合わせとなる。

【バンタム級】
透暉鷹
対戦相手キム・キュソン

小崎連
対戦相手ダールミス・チャウパスゥイ

野瀬翔平
対戦相手ユ・スヨン

Road to UFC出場を狙い、フェザー級からバンタム級に落とした透暉鷹は、昨年のクリスマスイブに河村康博を初回肩固めで斬って落とし、パンクラス二階級制覇を果たした。

大手エージェントとの契約もなく、所属ジムの代表がコーチング修行で得た人脈からの出場権獲得。透暉鷹の意思の強さと周囲の向上心と合致しての挑戦となる。

透暉鷹の初戦の相手は、韓国のキム・キュソンだ。母国ではTOP FC、そして日本、ONEでキャリアを積んできた元Evolve MMAファイターだ。キャリア12勝5敗でHEATで加マーク納、春日井たけし、TOP FCでNavE、ONEで藤沢彰博、若松佑弥と日本人選手との対戦も多い。×日本勢の戦績は3勝2敗で透暉鷹としては、当然遅れを取ることはできない

そんなキム・キュソン、一番最近の試合で魔のNAIZA FCでカザフスタン人選手に勝っているのが不気味だ。

意外というと失礼だが、小崎の選出には驚かされた。KROSS X OVERとDEEPで活躍中の小崎は戦績6勝0敗2分で、フィニッシュが5つの22歳。

彼もまたUFCが求めるゾーンのファイターといえる。

その小崎と相対するのは、昨年の準決勝でイ・チャンホに敗れたダールミス・チャウパスゥイ。とはいえ、イ・チャンホを序盤は圧倒したテイクダウン能力の高さは、小崎が未経験の世界といえる。カザフスタン国境ウィグル出身のフィジカルモンスター超えなるか──小崎のフレッシュさに期待だ。

小崎以上のサプライズは3年連続出場となった野瀬だろう。

これまで準決、初戦敗退も2月のRIZIN LANDMARKで改めて国内バンタム級のトップクラスである強さを見せつけた野瀬。

対するは一時はDEEP、Black Combatとアジア3カ国のバンタム級を制したユ・スヨンだ。UFC行きが掛かっていなくとも、興味深いマッチアップといえるタフファイト。当然、野瀬としてはグラウンドに持ち込めば、勝機が増す。その一方で、ユ・スヨンもれっきとした柔術黒帯で、しっかりとMMAに適合した寝技を持つ。それでも野瀬としては組み技勝負、いかに自分の庭に持ち込み、その庭での力比べとなる。

【フェザー級】
安藤達也
対戦相手チュウ・カンチエ

河名マスト
対戦相手ソン・ヨンジェ

原口伸
対戦相手ホン・ジュンヨン

(C)ONE

昨年3月のONE FFのアリ・モタメド戦の逆転勝利もチャトリCEOに評価されず、昨年のRoad to UFCのオファーを蹴っても安藤のONE本戦出場はならなかった。

この間、コンテンダーシリーズからのオファーもあった安藤が、34歳にして最後の挑戦に挑む。

その行く手を阻もうとするのは中国のチュウ・カンチエだ。レコードは18勝4敗の28歳。中国国内でしか試合をしておらず、実力を推し量るのが困難な相手だ。昨年7月に20秒で勝利している韓国のイ・ミンヒョクはパン・ジェヒョクにスプリット判定負け、工藤諒司にも判定負けをしているファイターで、中国人ファイターはもう強くて当たり前という想いで戦う必要がある。

デビュー戦、LFA、GLADIATORフェザー級王座決定トーナメントと躓く度に力をつけてきた河名マストも、いよいよ盟友・中村倫也の背中が見えていた。

特にパン・ジェヒョクとの連戦で競り負けから、完勝と河名は自身のポテンシャルを最大限に使うことができるようになった。対するソン・ヨンジェは6勝0敗5つのKO勝ちと1つの一本勝ちを誇るフィニッシャーだ。全て試合をAngel’s FCで戦い、バンタム級とフェザー級の王座を獲得している。

豪腕ファイターのソン・ヨンジェだが、一時期4年近いブランクもあり、ここ2試合は秒殺で組み力に関しては判断材料が少ない。ともあれ一発で試合を終らせる力を持つソン・ヨンジェを相手に、河名がいかにオアシスに突っ走れるのかに勝負は掛かってくるだろう。

また前回のライト級決勝でロン・チュウに敗れ、キャリア初黒星を喫した原口伸も、ビザ取得ギリギリの段階でオファーがきた。Road to UFCファイナルに敗れた後は、そのまま本戦出場という交渉もあった原口だが、適正体重のフェザー級での出場は今後のことを考えると──それでも簡単ではないが、好判断と思われる。

対する対戦相手のホン・ジュンヨンは2022年の初戦で松嶋こよみに接戦の末敗れている選手だ。その後はマーシー・グローブTVとインドネシア人ファイターを破り、Angel’s FCライト級王座を奪取──も、現状の力は測定が難しい。とはいえ簡単な相手でないことは明らかで、松嶋戦でも見せた様にタフファイトになった時の心の強さを原口は凌駕しなければならない。

【女子ストロー級】
本野美樹
対戦相手フォン・フェイアール

今年からライト級でなく女子ストロー級が実施されることとなり、日韓有数の女子ファイターに声がかかるなか、日本では出場を固辞する選手もあったようだが、本野美樹のチャレンジが決定した。

準々決勝で戦うフォン・フェイアールは、本野ともにフン・シャオカンに敗れている。未確認情報だがフォン・フェイアールを含め4選手が出場するという中国人女子選手、その中の一人にフン・シャオカンも含まれているという。

つまり本野とフォンにとって、Road to UFCはRoad to フン・シャオカンへのリベンジでもある。またかつてパンクラスに参戦経験のある韓国のソ・ユダンも出場し、中国のシー・ミン戦が決まっている。

現状、8人の日本人選手出場。今年はワンマッチも1日に4試合組まれるという話もあり、この他にも日本人選手の出場もあるかもしれない──中国、インド、タイ、インドネシア、そしてついにあるのか中央アジア勢の参戦等々、オフィシャル・アナウンスを待ちたい。

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45 AB Gladiator Gladiator Challenger Series01 LFA MMA MMAPLANET o Road to UFC Special UFC UFC298 YouTube   アライジャ・ジョンズ パン・ジェヒョク 中村倫也 森戸新士 河名マスト

【Special】河名マスト「強くなる……試合の準備をしておくだけ」&中村倫也「治癒を待つ」─03─

【写真】取材をした時──1カ月以上前の右拳と、今の拳の状態は相当に違っています (C)MMAPLANET

2月16日のGLADIATOR CHALLENGER SERIES01でパン・ジェヒョクを破ってGLADIATORフェザー級のベルトを巻いた河名マストと、同17日(土・現地時間)のUFC298でオクタゴン2戦目=カルロス・ヴェラを下した中村倫也の対談、最終回。
Text by Manabu Takashima

お蔵入り厳禁。カルロス・ヴェラ戦で思うように戦えない時、中村倫也は何を思っていたのか。そして右拳の骨折からの復帰と、河名マストの今後とは? ファイターの凄まじさを改めて思い知ることとなった言葉が続いた。

<中村倫也&河名マスト対談Part.02はコチラから>


──確かにギロチンのセットアップをじっくりするのもヴェラの特徴でした。

中村 自分がレスラーなので、テイクダウンを誘っておいてギロチンを仕掛けてくる。足関よりも、そっちを気にしていました。

──それにしてもディープハーフへの対応など、しっかりとできていました。倫也選手は自分が使わない技も動画などを見て研究するのでしょうか。

中村 そうですね、試合映像もチェックしますし。足を抜く時にカーフスライサーを取られないようにするとか。外掛けの対処は頭にありました。でもヴェラも要所で、足を金網に引っかけていて細かい反則をしているんですよ。アレには腹が立っていました(笑)。

──ところで今もギブスが見られますが、拳のケガをしたのはどのタイミングだったのでしょうか。

中村 3Rの初っ端ですね。なので、パウンドに関するとそれまではケガは関係ないです。当たらなかった時に、どういうリアクションがあるのかとか考えていました。そうですね、今回のパウンドのイメージは……パウンドは上体を剥がさないと打てないので、相手を放す。

──そうすると、スクランブルに持ち込まれないですか。

中村 ハイ。放す……離れるのですが、相手と自分の距離がS極とN極が反響しあっているぐらいのイメージで。引っ付いていると殴れないけど、反響しあっているぐらいの距離でないと立たれるので。殴られた相手が嫌がって動いてできるスペースは、自分のモノ。そのイメージをずっと刷り込んでいました。刷り込んでいたんですけど……。

河名 フフフフフ。

──マスト選手が笑っていますが。思ったようにいかなかった、と。

中村 原因の一つはカフェインの摂り過ぎもあると疑っています。

──えっ?

中村 とにかく頭に血が上りやすかったです。フワッと1テンションを上げようとすると、3、4、5と上がってしまうような感覚がありました。加えて、アリーナにあるエネルギーが影響してしまって自分の感情をコントロールすることが難しかったです。

──少しワイルドになっていました。試合中は上手くいかないことで、粗くなっていたのかと思っていたのですが……カフェインですか。

中村 上手くいかなかったから雑になったというのもあります。でも、テンションが上がってしまっていた方がずっと大きな原因ですね。その状態でブーイングが聞こえるようになってきて……。

河名 (笑)。

中村 「うわぁ。皆、お金を払って観に来てくれているのに。時間を無駄にしちゃっている。皆の時間を無駄にしている。俺は悪者だ」みたいな意識が、表面に出てきてしまって。

──そんなに皆のことを考えてくれるなら、MMAファイターでなく政治家になって欲しいです(笑)。驚きました。そこでファンのことを考えているなんて。

中村 そうなると「どうにかしなきゃ」みたいになって。その結果、行ったらダメなのに頭から行ってしまったり……そんな瞬間もありました。でも、やっぱり観に来てくれた人のことは想ってしまいますよ。

──マスト選手は?

河名 想わないです。

中村 いや、それはない。絶対に食らうから(笑)。

──いや、マスト選手は森戸新士選手とグラップリングの試合をした時に、「5分2R、空調の音が聞こえるような試合をする」と宣言していますから。

河名 そうです。お客さんの時間を無駄にしているとか、それは考えないです。

中村 それが考えちゃうんだって(笑)。「この時間をどうにかしないと」ってなっていると、拳が折れた。もう「もっとつまらない試合になること確定!! 皆、本当にゴメン」みたいになりました。「確定だけど、俺、勝たないといけないから。もっとつまらない選択をし続けないといけない」という自分を受け入れることが、本当にしんどくて……。

──久しぶりに使わせて頂きますが、「モノが違います」ね。中村倫也は──。

中村 そんな風になっていると、三角がきて。「おい、おい、おい。こんなこと、考えている場合じゃない」って(笑)。

──「ファンのために」という発言はいくらでも聞かれますが、プロモーターへの配慮でなくお客さんのことをそこまで考える選手が果たして存在しているのか。逆に中村倫也が理解不能です。

河名 そのギリギリのところで、皆のことを考えられる……今回はアクシデントもあったけど、それができる倫也だから皆が応援したくなる。そこはあります。求めているモノが高いから。

──自分が指導者なら、ファンなんて芋だと思ってとか言ってしまうはずです。いやぁ、理想が高いです。高過ぎる。

中村 本来は戦う理由は自分にあるべきです。今回は外に、自分の心が動かされ過ぎました。会場がAPEXだと、ああいう風になっていないのと思うので。ちょっと勉強になりました。髙谷さんは『岡見(勇信)はあのブーイングが続いても、シカトできるんだからスゲェよなぁ』と言っていました。でも、それで乱れないのは凄い。考えさせられましたね、髙谷さんは笑っていましてけど。

──アハハハ。でも、それだけ自分に集中できる岡見選手の凄さの一端ですね。ともあれ2人揃って勝利しましたが、倫也選手はしばらく休まないといけないですね。

中村 ハイ。経過は良いのですが、折れた面が揃わないとダメで。中指を引っ張って、面を合わせているんです。

完全に拳が折れていた状態で、勝ち名乗りを受ける。左腕で良かった(C)Zuffa/UFC

──折れた瞬間の感覚は?

中村 バキっと折れて、拳を握ろうとすると凹ッと拳頭と甲の間にもう一つ関節ができたのかって思うぐらい膨らんでいて。「あぁ、これか!」と。そしたら折れたところから血が流れてきたのか、生温かくてヌルとってしてきて。そうしたら、感覚が無くなりました。ただ痛いとかではなくて、「これは折れているな」と。

──ダウンしても自分の形まで持って行けばと挽回したり、拳がそんな風になってもファンのことまで気に掛けてしまうとか。凄まじいです。

河名 いえ、そんな凄いことでは(苦笑)。

中村 傷もこのまま我慢して、ひっつけばまた離れることは0パーセントになると言われていますし。それまで本当にちょっとした衝撃も与えてはダメなので、何もできない状況ですけど。

──一人遊びもできない?(笑)

中村 ダメですね(笑)。

河名 いや……そこはサウスポーなので、大丈夫なはずです(笑)。

中村 ハハハハハハ。ハイ、そうですね。厳密にいえば利き手ではないので、大丈夫です。

──中学の時に小指を脱臼して、薬指と束ねて固定されていたのでOKマークみたいな形で中指、人差し指、親指でやっているヤツもいました。

中村 それ、高島さん自身じゃないですか(笑)。

──アハハハハ、妙にディティールがハッキリしていましたか(笑)。ただ、利き腕でないとしても本当に不便ですよね。

中村 この状態で、腕を振るだけでもポキッとずれるかもしれないです。だからコップの水をこぼさないで歩くぐらいのイメージで生活をしています。今は全然体は動かせないです。でも、焦りもない。これまでの自分なら焦っていただろうけど、今はできることをやろうと。瞑想や呼吸トレーニング、ゆっくりと四股を踏んだり──ですね。

──でもボルトを入れたりしないということですね。

中村 ハイ、自然治癒にしました。だから、『そんことできるのか』って拳をやったことがある選手たちから、注目されています(笑)。

河名 この治癒の仕方はどうなるのか。画期的なんじゃないかと思います。

中村 だから、次は……今年の9月か10月にはできる……できると思っています。「今年は厳しい」という人もいますが、しっかりと揃っているので骨ができれば──。1カ月間固定し、1カ月間リハビリをする。そこから練習を徐々に始めると、4カ月ぐらいすれば試合はできる。それまでは本当に慎重に生活をします。

──とはいえ倫也選手は9月、10月の話ができる状況にあります。一方で、マスト選手の方は……。

河名 見えない未来です(笑)。

中村 Road to UFCがあれば、5月に試合だよね。一発目が。

──いつ頃に出場の有無は分かるのでしょうか。

河名 全く分からないです。4月には決まるとはなっているようなのですが。

中村 そうなるとタイトですね。

河名 引っ掛かれば、試合期間とかもう全てを受け入れるので──それで、良しです。引っ掛からなければGLADIATORからLFAのルートができたので(※LFAフェザー級王者で、2022年8月に敗れた)アライジャ・ジョンズの首を獲りに行こうかと思います。

中村 そうなったとしたら、アライジャ・ジョンズは2年間でこんなに変わるのかっていうことを味わうと思いますよ。

──基準がハッキリしていないですし、本当にUFCは大変です。そのような状態だから、言ってみれば「Road to UFCに出られるよ」詐欺も横行していますし、『話してみるよ』レベルの話に皆がすがってしまうような感じで。

これからの──これからも専大レスリング部同期コンビに期待大

中村 それ、聞きます!!

河名 でも待つだけです。ここは本当に自分のコントロールできる部分ではないので。強くなる……試合の準備をしておくだけです。

──人事を尽くして天命を待つ、マスト選手。そして……。

中村 治癒を待つ、自分です(笑)。

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【Special】河名マスト&中村倫也、2/16 GCS01&2/17 UFC298を振り返る─02─「7の集中力」(マスト)

【写真】取材はまだ冬の装いが必要な下北で行われたものです (C)MMAPLANET

2月16日のGLADIATOR CHALLENGER SERIES01でパン・ジェヒョクを破ってGLADIATORフェザー級のベルトを巻いた河名マストと、同17日(土・現地時間)のUFC298でオクタゴン2戦目=カルロス・ヴェラを下した中村倫也の対談、第2弾。
Text by Manabu Takashima

お蔵入り厳禁。技術と精神の交差点──That’s MMAというファイトを自ら、そして盟友の考察を踏まえて振り返りたい。

<中村倫也&河名マスト対談Part.01はコチラから>


──河名ポジション(笑)。和製マッド・リンドランドかランディ・クートゥアーか。いずれにせよ、グレコローマンレスラーの強味が出るポジションですね。

河名 そこがオアシスなんです。

中村 オアシス(笑)。MMAは砂漠の中でいかにオアシスを見つけることができるのか。自分にとって良い場所を如何に創るのかという勝負ですからね(笑)。

──初回はピンチを脱し、自分のペースに持って来ることもできました。ただ、そこからどうなるかは分からない。2Rはどのように戦おうと思っていましたか。

河名 初回は取られたとは思いました。でも、前の試合では創ることができなかった自分の形……オアシスに辿り着けたので、自分としては行けるという気持ちでした。ポジティブな気持ちで臨めました。

中村 まだ10分あるなかで貰う怖さと比較すると、あの短時間でフィニッシュが近いというところまで創り直すことができたことによるパン・ジェヒョクへのプレッシャーの方が上回ったんじゃないかと。僕も「良しッ!!」となりました。

──結果的に2R以降、パン・ジェヒョクの質量が下がりました。

河名 これは僕の想像ですけど、フィニッシュできる選手ではないので初回にフィニッシュができそうだったのに反撃された。そこに不安を感じてしまうようになったんだと思います。彼がフィニッシュをしてきた選手なら、その感覚があるのであんな風になっていなかったんじゃないかと。彼の戦略にもKOがなかった。でも、初回に倒せるかもというシーンが訪れたことでパン・ジェヒョクが自分のペースを乱したんじゃないかと。

──なるほぉ。本当に勝負の綾とはどこにあるのか、分からないものですね。そして2Rは河名選手が圧倒しました。

河名 クリンチの攻防が続かず、ボディロックテイクダウンで倒せたことが大きかったです。前回の試合ではケージを上手く使われたので八隅さんからも「頭を中に入れて、ケージから離れろ」と言われてきた組手がハマりました。ちゃんとフォールが取れる、背中をつけさせて殴る。動いてきたら自分も動いて、常に安全な場所にいるということが徹底できました。

──3Rはボディロック以前に、ダブルレッグでクリーンテイクダウンを奪うことができました。

中村 僕は3Rばかりか、2Rの中盤でもう勝利を確信できました。

──そうなのですね!! さすがの信頼感です。私は勝つならテイクダウン後、フィニッシュとか狙われなくて抑え込み続けろ──と思っていました(笑)。スタンドに戻されるな、と。

河名 入りの時点ではとにかく何としても、もう1回倒す。そういうつもりでテイクダウンに入りました。2Rの攻撃が効いていたので、パン・ジェヒョクは手首を掴むだとか身を守る動きしかしてこなかったです。スクランブルに来る動作がなかったので、そこは安心して戦えました。あとは「時間よ、過ぎろっ!!」と。

中村 アハハハ。僕的にはサイドバックで削って、最後は仕留めたいのかなっていう感じで視ていました。

河名 仕留められるというプランは僕にはなかったのですが、3Rに入る前に八隅さんから「取るなら肩固めかバックチョーク」という指示はありました。パウンドでTKOできるとは思っていなかったです。

──あれだけ殴っていても!!

河名 そこは自分への不安よりも、パン・ジェヒョクの頑丈さへの不安が上回っていた感じです。

──最後はアレクサンドル・カレリンかという俵返しも見られました。

中村 アレはもう印象付けですよね。あれで背中を見せたパン・ジェヒョクは、心が折れてしまっていましたね。

──そんな河名選手の激勝を見終え、水抜きに入ったであろう中村選手。気持ちは上がりましたか。

中村 12月の試合で打撃は大丈夫だという風に覚悟を持てたとはいえ、その怖さを乗り越えて自分を出す……。格闘家の誰もが目指していて、一番難しいことをやってのけましたよね。マストもマイクで言っていたように「自分を信じてやりきることができた」という姿に力を貰えました。

──良い話ですが、中村倫也には「そんなもん気にせず、寝ていてくれ。他人のことを気にする余裕があって良いのか」という気持ちもあります(笑)。

中村 アハハハハハ。それはそうなんです。試合の1カ月前の自分が、試合直前の自分がこうなっていると分かれば怒っていたと思います。でも、あの時の自分って……なんだろう、自分の選択を信じるだけで。そこに不安を感じると、試合にモロにでてしまうんです。

──凄くリアルです。

中村 もう起きている自分を認める。ここで「寝ないといけない」という風に自分の行動にネガティブになると、試合の動きに影響を与えます。もう自分のやることは全肯定しないといけない時間帯ですね。だからセコンドの中村京一郎と2人で大騒ぎして、喜んでいました。

ただ最初にライブ配信を視始めた瞬間、ヘンリー(三上大智)の相手が急所を抑えているところだったんです。解説が「3度目は……」とか言っていて、「えっ、3回目なの? どんな試合」って(笑)。

──ハハハハハ。では改めて河名選手、パン・ジェヒョクに勝ってどのような気持ちでしたか。

河名 素直に安心、ですね。通過点という認識ではいたのですが、そのチェックポイントを通らないと次には向かえないので。ただ、あの晩は眠れなかったです。勝った興奮とかではなくて、本当に疲れて体が強張ってしまって……。まだスタートラインにすら立っていないのに、こんなにしんどいのって(苦笑)。

──難敵でした。個人的に中村選手がデビュー3戦目でアリアンドロ・カエタノと戦ったような。ただUFCばかりかRoad to UFCも出る権利を得ることは非常に大切ですが、しっかりと力をつけておかないと……上手く立ち回っても、ここから上手く生き残れるのですかという想いもあるので、本当に素晴らしい勝利でした。

河名 ありがとうございます。倫也もそうですけど、UFCで戦っている連中ってどんな想いでやっているのかとか色々と勝ってからも考えました。それで1日空けて倫也の試合があって。試合の時には一晩寝て、友人3人と勝利を祈りながら視ていました(笑)。

──ピンチがあったわけではなく、ほぼ一方的に攻めているようで仕留めきれない面倒な相手でした。結果、マスト選手とパン・ジェヒョク戦のようにディティールが覚えきれていないです。

中村 アハハハハ。

──MMAとグラップリングは違います。ただし、グラップリングにパンチがなくてもグラップリングで有効な技は、グラップリングでの対処方法を知っておかないとMMAは戦えない。同時にカルロス・ヴェラの足関節のエントリーは、グラップリングのように絶対にカカトを抱えに行くのではなくて、やはり殴られないようにという頭がある入りだったかと。上も下も思い切ることができない。そんな歯がゆさを勝手ながら感じてしまって。

中村 ハハハハハ。

──でも倫也選手のカカトが浮くと、ハッとなる。

中村 戦っていて……自分のテーマとしては、とにかく上になったらキープして殴り続ける。8月の試合は隙間を埋めて、そこからゲームを創ろうとしたのですが。やっぱりダメージを与えないとフィニッシュに繋がらないので、そこを見直して──。自分は空間ができても重心をコントロールするのはデキる方なので、その隙間から殴ってダメージを蓄積させる。そして隙間を増やして、どんどん殴る。そういうプランでした。でも……う~ん、体の分厚さという面で体力差がありました。

河名 手足が太いわけじゃないのに、胴骨だけ異常に太い(笑)。力が強いんですよね、そういう選手は。

中村 髙谷(裕之)さんも「あの胸毛は力が強いぞ」って、鼻をクンクンして(笑)。

河名 アハハハハハ。匂いで判別する(笑)。

中村 案の定、強かったです。ATTに行った時に思ったのですが、僕らが知らなくても強いヤツはゴロゴロいる。レスリングの世界でもそうですけど……。だからヴェラのような相手は、練習では思い切りパウンドが打てないので極められてしまいます。そういう感じの相手でした。同時にチームの雰囲気として勝って当たり前、次のために1Rから2Rに終わらせるという雰囲気もありました。そんな雰囲気で迎えてしまったのも、良くなかったです。

──それは取材をさせてもらっている我々の方にも、「今回は勝つでしょう」という空気を纏っていることがあるかと思います。

中村 そこも含めて、打撃の展開になるという予想が偏っていたので、終わらせられるチャンスでピッと体が反応するところまで持って行けなかったです。反省して、改善していきたいと思っています。

河名 もっと打撃の交換があると思っていたのですが、あっさりと寝技の展開になりましたね。相手が寝技にそれだけ自信があったのか。こうなると、ちょっと違う集中力……8や9とかの集中力ではなくて、どこで来るか分からない相手の仕掛けをカットし続けないといけない7ぐらいの集中力をずっと保つ必要がある。そういう集中力が必要な試合でした。

(C)Zuffa/UFC

7の集中力を持続する。

それには、そのポジション……組手に集中力を使う必要があって、バンバン殴れるモノではないですし。パウンドを打つために9、10の集中力を使うと、4に落ちる時間ができるので。

中村 結果として、確かにそういうこともあったかもしれないです。やりにくいというのはMMAPLANETのインタビューで、ヴェラのチームメイトであるタン・リーが言っていた通りです(笑)。

ただ本当にボトムから足関節の展開になるとは思っていなかったです。そこに対する準備は相手が代わったことを差し引いてもなかった。

──逆にそれであれだけ対応できたのですね。

中村 そこは体が覚えていました。野瀬(翔平)選手、風間(敏臣)選手と戦う時に練習してきたことが、たまたま生きました。

──テコンドーと50/50柔術の選手なので、足関節も十分にあり得たかと。

中村 それよりもギロチンでくるかと思っていました。

<この項、続く>


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【Special】Fight&Life#89から。未来予想図──2022年1月に河名マストと中村倫也が語っていたこと

【写真】変わった? 変わっていない? ちなみに2022年1月に生まれた赤ちゃんは、今は2年2カ月です(C)MMAPLANET

MMAPLANETで第一弾の記事がアップされたばかりの中村倫也×河名マスト対談。記事中で触れられたた2022年1月Fight & Life#89掲載用のインタビューで、その出会いから──今を予言するかのような将来が語られていた。
Text by Manabu Takashima

2月2カ月前にUFCを目指す両者が、何を話していたのか。改めて、今、このタイミングでMMAデビューイヤーを終えた2人の話に目を通して欲しい。


──専修大学の同級生から、まるで別ルートでMMAに辿り着いた中村倫也選手と河名マスト選手です。キッズからレスリングで活躍していた2 人ですし、出会いはもっと早かったのでしょうか。

中村 小学5年生の時に全国大会の1回戦で当たったのが、マストと最初の出会いですね(笑)。

──アハハハハ。そんな昔から!!

中村 小4の時にマストが26キロ級で優勝して、僕は28キロで…。

河名 3位だったんだよね。

──そんな風に相手のことを認識できていたのですね。で、2人が出会った時の試合結果は?

河名 ポイントは忘れましたが、僕が負けました。

中村 7-4です!!

河名 凄い、覚えているんだ。

──ドヤ顔ですね(笑)。

中村 あの試合は凄く覚えています。試合前から『あの子はチャンピオンだから』って意識していたら、小学生のくせしてヘッドギアをして、ボロボロのテーピングで巻いていて。『絶対強いじゃん!! 無理、無理』って(笑)。最初怖すぎてテイクダウン狙ったら、がぶり返しをポーンって合わされて。『クソ強い。ボコられる』って思いました。あの試合は勝てたことが凄く嬉しくて、終わってから映像を何度も見返していました。

河名 よぉ覚えとるわ(笑)。僕は負けたことしか覚えていなかったです。優勝した年に父親に火がついてしまって、『家にマット敷くぞ』みたいな状態になって。家でも練習していたのに負けて、相当に悔しかったです。あの年、倫也は優勝して。小6の時にはまた戦っているんです。今度は2-3で負けました。

──その時点でお互いをライバル視していましたか。

中村 マストが広島で、僕が埼玉だからブロックが違っていて年に1回、あっても2回ぐらいなのでそうでもなかったです。ただ全日本になると、来るなというのはありました。

──その関係は中学になっても継続していたのですか。

河名 中学になると当たり前に僕が負けるようになっていました。

中村 マストは中学の時は一旦、燃え尽き症候群になっていた時期で。

河名 どっちかという陸上に力を入れていて、レスリングはもういいやってなっていました。

中村 体育館で少し話して、陸上の方に行くんだと思っていました。

河名 倫也は中2で全国2位、中三で優勝していて。「やっぱり強いな。俺はコソコソやっていよう』って思って見ていました(笑)。

──でもレスリングに戻ったのは?

河名 高校で陸上かレスリングどちらかにしようと考えている時に、インターハイが石垣島であるのを知って、団体戦ならイケると思ってレスリング部に入ったんです。

中村 動機が不純すぎ(笑)。そのくせしてJOC杯(カデット)と国体で、ちゃっかり2位になっているんですよ。

──しっかりと結果を残していたということですね。

河名 倫也はJOC杯(同)優勝で、世界カデットで2位ですからね。

──高校での対戦は?

河名 僕がグレコで倫也はフリーだったので、もう当たることはなかったです。戦ったのは小学生の時の2度だけですね。

──そして大学で一緒になったと。グレコとフリーだと、練習をすることもないのですか。

中村 大学によっては完全に別々ですけど、専修大はどっちがどっちでやっても良いという空気でした。フリーの選手もグレコの練習をした方が良いし、逆も然りで。コーチがそういう感じで、僕もそう思ってやっていました。マストもめちゃくちゃフリーの練習をしていましたよ。

河名 グレコはガチガチで真面目にやらないといけないですけど、フリーだと遊び感覚でできたので。

中村 僕もフリーでは負けられないけど、グレコは別にそんなことなく、ただ思い切りやれば良いので楽しかったです。それこそフリーでポイントを失うと、ガヤが飛んできて大変なことになるので(笑)。

──寮生活だったと思いますが、練習以外での交流というのは?

中村 練習が終わって一緒にお好み焼きを焼いて食べたり。マストは広島なんで実家からプレートを持ってきて、ソバとか入れて焼いてくれるんですよ。

──やっぱり広島風なのですね。

河名 そこはやっぱり、拘っていました。

──私は関西なので……。

中村 ダメです!! その会話は。もう1年の時から、さんざっぱら論争になっていたので(笑)。あとは牡蠣が送られてきたり。練習後に牡蠣パーティもしましたね。

河名 それでノロウィルスで下痢になって(笑)。

──アハハハ。日本のトップレスラーも、大学生をしていたのですね。

河名 休みの時は一緒に渋谷に行ったりしていましたよ。でも、倫也はすぐに奇行に走るんですよ。内容は下品過ぎて言えませんが……。

中村 骨盤底筋群……インナーを鍛えまくった成果だから、皆に披露したくて(笑)。

河名 僕も◯◯見ました。しょっちゅう見せているので(笑)。別に酒を飲んでいなくてもやるんです。

──アハハハ。モノが違いますね。ところで一つ伺いたかったことがあるのですが、大会に向け複数名が寮の中で減量するわけじゃないですか。どのような空気になるのですか。

河名 機嫌が悪くなる先輩もいたので、そこは気を付けていました。

中村 レスリングの減量は練習で1.5キロ落として、500グラム食べる。10日間続けると、10キロ落ちる。そんな感じだったんです。

──えっ? 

中村 僕はハイパーダイエットとハイパーリカバリーっていうのがあるのを格闘技雑誌で知って。向うのサイトをチェックしたりして、浸透圧とか勉強しましたね。塩抜き、水抜きをやってみると『これはめっちゃ楽に体重が落ちるぞ』って(笑)。

河名 僕らも減量の仕方を倫也に教えてもらっていました。当時から倫也がMMAに進むつもりだっていうことは皆が知っていたし。でもレスリングでもヒーローみたいで、コイツはずっと上に突き進むんだろうと皆が思っていました。リーダー気質というか、ついていきたくなる人間だったんです。で、ついてくと◯◯を見せられる(笑)。

──アハハハハ。マスト選手は良い感じ話術が優れていますね。それにしても倫也選手は大学の同期からも、そのように思われていたと。

河名 倫也は2年でインカレと全日本大学フリー選手権の両方で優勝して。大学って高校から入ってきた1年の時と卒業する前の4年の時って、全くフィジカルが違うんです。普通の高校王者だと勝ち抜けないです。全日本王者の高橋(侑希)選手に全日本選抜で勝ったり、その時点でもう日本のトップクラスでした。

中村 でも3年、4年とケガをしてどっちも欠場していますからね。逆にマストは4年でインカレと全日本大学グレコ選手権で優勝しているんです。僕のことをああいう風に言ってくれますけど、マストこそ大きなケガをせず、コツコツやって力をつけてチームの皆が喜ぶ勝ちを収めていました。だって大学3年の時に倉本(一真。現MMAファイターで2014年の全日本優勝)さんをリオ五輪の最終予選でぶっ倒しているんですよ。『ここまで来てんのか』って。

河名 あそこで俺も五輪って言って良いんだと思って。

──倫也選手は、もっと早く五輪を目標にしていたのですか。

中村 僕は五輪よりもUFCでした。必死で五輪に行きたい人間からすると『何言ってるんだ!』って反感を買っていたと思います。でも、それがなんだって。何が悪いんだって。

河名 倫也の取り組みを見ている人間なら、そういうことは思わないです。練習だけでなく、私生活でもそこを真っ直ぐ目指していることが伝わって来ていたので。誰も何も言わないし、本当に応援したいという風に大学の皆はなっていました。

──では一昨年の4月にMMAに転向した時は、マスト選手は『ついに』という感じだったのでしょうか。

河名 「やっとか。現実になって良かった。倫也のやりたいことができる」ぐらいで。そういえば倫也は入寮の時にベンソン・ヘンダーソンのフィギアを持っていました(笑)。

中村 あとアンデウソン・シウバの等身大のパネルですね(笑)。

河名 そんなだから、倫也がどれだけレスリングで成功しても、最終的にはMMAに行くと思っていました。

──では昨年、マスト選手がMMAに転向すると知った時、倫也選手はどう思われましたか。

中村 「勧めないぞ。この世界は」って思いました(笑)。僕自身が壁にぶち当たっている時だったんで。TRIBEさんのプロ練習で背中を伸ばされて、『あぁ』とか言っていた頃で。もう泣きながら電車に乗っていた時期だったので、『ホントに?』って。ただ自分が我がままを貫き通していたので反対はしなかったです。

河名 倫也の場合は根っからのMMAファイターが、レスリングも強かったということだったと思います。

中村 それはケガをした期間のおかげです。その間はレスリングを離れて、体の使い方とか凄く勉強していたんです。皆が言われたままにウェイトとかやっている時に。

河名 とにかく大きくなれみたいなフィジカルだったもんね。

中村 その間、僕はUFCや米国の練習を研究して、機能回復系のジムに行ったり。だからケガから復帰した時には新しい動きができて、新しい技が使えるようになる。そういうことを繰り替えてしていたので、MMAでも自分を落とし込めるようになっていました。

──その辺りはプロ初戦を左ハイでKO勝ちの倫也選手と、右ハイから流血TKO負けになったマスト選手で明暗が分かれました。

河名 やっぱ、こうなるかって(笑)。もちろん勝つつもりで戦いましたけど、こうなるなと……。倫也のあの勝ち方は20数年間のMMAへの愛が形になったと思いました。

中村 あぁ、確かに。でもマストにはマストの強くなり方があります。レスリングの時と同じでケガがなくて、練習を続けて強くなる。もう4試合もしていますからね。ランデルマンに負けたあとの、ミルコみたいなペースです(笑)。

──例えが(笑)。そしてマスト選手は、EXFIGHTで狩野優戦が決まりました。組み技を合わせると10月から5カ月連続の実戦です。

倫也 ヤバいよ、ソレ。前の試合の打ち上げでマストも「ちょっと休む、さすがに」って言っていたんです。で、家に戻ると『EXFIGHTのオファーが来てしまった』ってメッセージが入っていて。でも、徐々に思い切り打撃が出せるようになっていますしね。本当に試合をする度に成長しているんです、マストは。

──一方、倫也選手は4月にLDHのPOUNDSTORM出場が確定しています。髙谷さんは最高に厳しい相手を用意したいと……。

中村 僕もそのつもりです。何も決まっていませんが勝手なことを言わせて貰えば、UFCに行くためのフィーダーショーで一番強いチャンピオンとやりたい。そしてPOUNDSTROM後にコンテンダーシリーズに出て、UFCとの契約を取りたいです。そこで取れなくても、インパクトは残せると思うので最長でも再来年にはUFCへ行きます。

──再来年ですか、来年ではなくて。

中村 そこでこけると、もう一回順番を持つことになるので……その覚悟を持って挑みます。でも最短だと9月ですっ!!

──今の言葉を聞いて、マスト選手はどう思われますか。

河名 倫也なら、やっちゃうんだろうなって思います。それが倫也らしさなんで(笑)。

中村 言っちゃたぁ(笑)。

──マスト選手もUFCが目標と公言しています。

河名 期間で言うと、最速で再来年を目標にしています。そこまでに国内のフェザー級のトップ、パンクラス、DEEP、修斗のチャンピオン・クラスに勝てるようになっていたい。団体に拘りはないですけど、そうなっていないといけないです。

中村 マストは『コイツを食ったかぁ』という風に勝つときが来て、そのまま一気に行っちゃうと思います。

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45 AB Gladiator Gladiator Challenger Series01 MMA MMAPLANET o Special UFC UFC298 YouTube   パン・ジェヒョク ボクシング 中村倫也 河名マスト

【Special】河名マスト&中村倫也、2/16 GCS01&2/17 UFC298を振り返る─01─「あっ、ヤバい」(倫也)

【写真】遠近法です(C)MMAPLANET

2月16日、会場非公開で開催されたGLADIATOR CHALLENGER SERIES01でパン・ジェヒョクを破ってGLADIATORフェザー級のベルトを巻いた河名マスト。同17日(土・現地時間)、カリフォルニア州アナハイムのホンダ・センターで行われたUFC298でオクタゴン2戦目=カルロス・ヴェラを下した中村倫也。
Text by Manabu Takashima

それぞれのレスリング人生を歩み、それぞれのMMA道を生きる両者。専修大学同期レスラーコンビが互いの──そして自身の試合を振り返った。


──個人的に倫也選手とマスト選手を同時に取材というのは、2022年1月のFight&Lifeの対談以来になります。

中村 あぁEXFIGHTでやったインタビューですよね。

──そのEXFIGHTという固有名詞を倫也選手の記事で使うことが許されるようになり感無量です(笑)。

河名 アハハハハハ。

中村 本当に皆さんのご理解があって。ご迷惑をお掛けしてばかりなのに、本当にありがとうございます。

──ハハハハ。今回は日本時間で2月16日にマスト選手の試合があり、18日に倫也選手の試合がカリフォルニアであった。計量前日だったと思いますが、倫也選手はマスト選手の試合の方はチェックされたのでしょうか。

中村 夜中にライブで視ていました。結構、時差ボケが酷くて……午前1時半ぐらいから「今日も眠れねぇな」っていう風になっていて。そのまま3時ぐらいになって、あと3時間もすれば水抜きが始まるかっていう時だったんですけど、「もう寝れないんだからしょうがない」っていう気持ちでYouTubeの配信を視ることにしました(笑)。

──本来はしっかりと睡眠をとっている時間だったと。

倫也 ハイ。起きて水抜きをしながら、ディレイでチェックしようと思っていました。で3時ぐらいになっても眠れないのと同時に、『マスト、これから試合か』ってなるとソワソワしてしまって(笑)。なら、もう良いやと思って起きてチェックしました。そうしたらヘンリー(三上大智)の急所蹴りがいきなり映って(笑)。

マスト アハハハハハ。

──戦前の予想はどのようなモノだったのでしょうか。

倫也 勝つ。前回の試合と違って初見ではないので、何度もぶつかるなかでマストが上回っていくというのは、何となく分かっていました。ポイント、ポイントを押さえて勝つことができるとは思っていましたね。

──マスト選手も9月、12月の試合を経て自信は深めているようでした。

河名 ハイ。戦略でいうと前回は足を触ってテイクダウンを狙うとディフェンスされたので、今回は触ったらドライブする。そして背中から落として倒すということでした。レスリングでいえば4Pのテイクダウンを取るという算段です。パン・ジェヒョクにKOパンチはないと踏んで、勇気をもって選択した戦略でした(笑)。

──すると……。

中村 ストレートを打ち抜かれた時、ハッとしました。正面からドンと打たれるシーンはあったのですが、あそこは横から抜かれていたので『あっ、ヤバい』ってなり、凄く怖かったです。

──あの後のGLADIATORの3月3日大会のストップを見ていると、あの試合も止められていても致し方ないかと思いました。

河名 負けた選手が試合後に不満顔を浮かべている時って、あれで止められた時なんでしょうね。一応、意識があるけど殴られ続けているっていう。

──立ち上がった時に、背中を向けたまま殴られた。あそこもストップがあるのかというシーンでした。

中村 色々なことが頭をよぎりました。頑張ってくれるんだろうけど、このまま殴られる試合は視たくないとか。ここから行くんだったら、1分間マジで貰わずに組みつけとか。同時に思いましたね。

河名 あの前に同じ形でワンツーを貰っていて。アレと同じで、入ってつこうとしたら『エッ?』ってなりました。

中村 あぁ、なるほど。

河名 ただ追い打ちがパンチでなく、浴びせ倒しのように倒されたのは助かりました。あそこでもう一発、スコンと貰っていたら本当に終わっていたと思います。背中を向けたのは、相手の片手をワキの下にもってきたかったかたです。

──ウィザーにとろうと。

河名 ハイ。触って、ケージの近くでオーバーフックの態勢に持ち込む。本能的にそう動いていました。片手で殴られるのは仕方ないと。僕は向き合う方が怖かったです。

──結果、正対してオーバーでなくアンダーフックでパン・ジェヒョクの動きを止めることができたかと。

河名 ハイ。とにかくケージに救いを求めていました。あのまま殴られ続けていたので。ただ触っていれば組みには戻せる。力は出ないけど、意識はあったので何とかなる──そんな心理状態でした。

──その言葉通り、シングルレッグで組み直してボディロックでテイクダウンを奪いました。

河名 櫓投げを仕掛けて、投げられまいと戻ってきたところを投げる。相撲でいうと呼び戻し、仏壇返しですね。

──あそこで流れが変わりました。

中村 あの時、真っ直ぐに地面を押すことができていて……パン・ジェヒョクをケージに運ぶときに、ヒザがブレることなく力を真っ直ぐに伝えることができていた。そこで大丈夫だとは思ったんです。にしても、あそこまで反撃するのかって(笑)。あれで『おお、良し良し』と(笑)。

──その後のパウンドから肩固め、マウントへ。パン・ジェヒョクがスクランブルに持ち込もうとすると、オーバーフックで浴びせてからのクリンチアッパー。あのオーバーフックのダーティーボクシングが強力で。会場内では凄い音が響き渡っていました。

河名 これまでクラッチを組んで固めるということに徹底していたのを、パン・ジェヒョクが僕の手を一本取ってくるという組手だったので──顔が空くと殴ろうと思っていました。あえて胸と胸の間に空間を創っていつでも動けるようにして、尚且つ殴れるように。そこはずっと練習をしていて、あの形になると八隅(孝平)さんは『河名ポジション』って叫んでいます(笑)。

中村 アハハハハ。

<この項、続く>



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45 Gladiator Gladiator025 MMA MMAPLANET o チハヤフル・ズッキーニョス 河名マスト 石田拓穂

【Gladiator025】石田のプレスにケージを背負わされるも――チハヤフルが左一発で逆転KO勝ち

【写真】強烈なチハヤフルの左で完全に石田の意識が飛んでいる(C)MMAPLANET

<フェザー級/5分3R>
チハヤフル・ズッキーニョス(日本)
Def.1R0分53秒 by KO
石田拓穂(日本)

サウスポーのチハヤフルは右手を伸ばしながら左インローを当てる。石田がプレスをかけてチハヤフルにケージを背負わせた。チハヤフルは左ストレートから左インローへ。しかし石田のプレスが強く、右ハイからパンチの連打に繋げる。完全にケージを背負ったチハヤフルだが、左フックのカウンター一閃! 前のめりに倒れた石田に追撃のパウンド連打を浴びせて、レフェリーストップを呼び込んだ。

試合後マイクを握ったチハヤフルは「結構しんどい年末年始を過ごしました。でも、やるしかないと思って――言いたいことが飛んでしまいました(苦笑)。これから河名選手へのリベンジを目指します!」とアピールする。「まだ早いよ!」と声をかける解説席の河名マストに、チハヤフルは「チャンスがあればお願いします」と伝えた。河名は「気持ちだけ受け取っておきます」と語っている。


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45 Gladiator MMA MMAPLANET o Road to UFC UFC パン・ジェヒョク 河名マスト

【Gladiator CS01】河名マスト、1Rのピンチを乗り越えて2・3Rで逆転!判定勝利で王座戴冠

<Gladiatorフェザー級選手権試合/5分3R>
[挑戦者]河名マスト(日本)
Def.3-0:29-28.29-28.29-28.
[王者]パン・ジェヒョク(韓国)

いきなりジェヒョクがワンツー、ジャブで距離を取る。河名は右カーフ、左フックから前に出る。ジェヒョクは距離を取って、ジャブを顔とボディに振ってワンツー。バックステップからジャブを当て、右カーフを蹴る。

河名はダブルレッグでテイクダウンを狙うが、ジェヒョクはケージに身体を預けて立ち上がる。河名が投げでテイクダウンを狙うが、ジェヒョクはすぐ脇を差して立ち上がる。そのまま河名をケージに押し込んでヒジを入れた。

河名はパンチのプレッシャーをかけてシングルレッグに入るが、今度はジェヒョクは小手を巻いて投げを狙い、立ち上がって正対する。距離が離れると河名は左ハイ、ジェヒョクはワンツー、右ストレートを当ててダウンを奪う。河名は背中を見せて立ち上がり、距離を取って離れるが、やや足に力が入っていないか。

それでも河名がシングルレッグで組んで、ジェヒョクをケージに押し込む。四つ組みになると河名がヒザ蹴りから投げでテイクダウンして一気にサイドポジションへ。肩固めを狙うが、ジェヒョクは左腕を差して身体を起こす。河名はそれを小手に巻いてパンチを連打する。

2R、河名はワンツー、左ストレートを当ててダブルレッグからテイクダウンを奪う。サイドで抑え込む河名は細かく鉄槌を落とし、亀になるジェヒョクのボディにヒザ蹴りを入れ、コントロールする。

河名は左手で脇の下からジェヒョクの右手を持って、ジェヒョクの動きを止めて、右手でパンチとヒジを入れる。立ち上がろうとするジェヒョクを寝かせて殴る河名。ジェヒョクが正対して蹴り上げを狙うが、河名は足を振ってパンチを落とし。亀になるジェヒョクにパンチをまとめた。

3R、河名が歩くようなワンツーで前に出て、右腕を差してジェヒョクをケージに押し込む。距離を取るジェヒョクに河名はバックブローを見せる。距離が離れると河名が左フック、ジェヒョクの右ストレートにダブルレッグを合わせてテイクダウンする。

ハーフガードのジェヒョクは左腕を差して体を起こそうとするが、河名は右腕を深く入れて寝かせる。上体を起こしてパンチとヒジを落とす河名。ジェヒョクが亀になるとバックコントロールからパンチを入れ、攻め続ける。

最後は河名が俵返しのようにジェヒョクを豪快に投げ捨て、パンチを連打した。1Rを落とした河名だったが、2・3Rはレスリング力を活かした試合運びでジェヒョクを攻め続け、判定勝利でベルトを巻いた。

試合後、河名は「まず一つ、ベルトを獲っちゃいましたー!相手の元気があるときは厳しい展開になると思っていて、2Rでクリーンテイクダウンできていける、やるしかないと思って戦いました。マイ・ライフ・イズ・リベンジ。僕はRoad to UFCに出たいです。毎日が勝負ですが、今日は勝負をかけないといけない時間に勝負できました。ありがとうございました」と語った。


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45 AB Gladiator Gladiator Challenger Series01 MMA MMAPLANET o Progress RIZIN Road to UFC UFC YouTube アン・ジェヨン グラント・ボクダノフ チェ・ドンフン チハヤフル・ズッキーニョス チャンネル パンクラス パン・ジェヒョク ユン・ダウォン ライカ 三上ヘンリー大智 和田教良 大嶋聡承 河名マスト 竹内稔 竹本啓哉 透暉鷹

【Gladiator CS01】河名マストの挑戦を受けるパン・ジェヒョク「仮面を被っています。もっと危ないヤツ」

【写真】嫌われているのか──と思うほど、無口なパン・ジェヒョク。まさにKorean Quiet Warrior (C)MMAPLANET

本日16日(金)、GLADIATORの新しい試みGLADIATOR CHALLENGER SERIES01「Bang vs Kawana Ⅱ」が開催される。無観客&配信に特化した大会のメインでGLADIATORフライ級王者パン・ジェヒョクが、河名マストの挑戦を受ける。
Text by Manabu Takashima

昨年6月に一度は倒した相手の挑戦を受けるチャンピオンが、自身がどこで、どのような環境で戦うのかをしっかりと見極めていた。そこがパン・ジェヒョクというファイターのクレバーさ。直径7メートルから6.15メートルになる今回の戦いは、アウトストライカー&ディフェンシブレスラーの彼をどのように変えるのか。その言葉から探ってみたい。


──2月16日、河名選手の挑戦を受けて初防戦を行うことが決まりました。このオファーが届いた時は、どのような気持ちでしたか(※取材は1月18日に行われた)。

「9月にチャンピオンになった後、2カ月後から試合をしたいと思っていましたが、この時期に試合ができることはちょうど良いと思いました。個人的には同じ相手と戦うことは好きではないですが、GLADIATORは河名選手をプッシュしているんだなと思いました」

──つまり河名選手のための選手権試合だと?

「そこまでは思わないですけど、河名選手はGLADIATORでたくさん戦っていますし団体が彼を認めているんだなと」

──河名選手もそうですが、この時期にベルトが欲しいと思っている日本人選手の多くがRoad to UFCを狙っています。ベルトを巻いているパン・ジェヒョク選手は今後のキャリアをどのように考えているのでしょうか。

「RIZINで戦いたいと思っていますが、実現していません。当然Road to UFCやUFCという話があれば良いですし、GLADIATORのタイトルホルダーとして他の団体に挑戦したい気持ちです」

──そのためにも大切な初防衛戦となりますが、改めて河名選手の印象を教えていただけますか。

「前に戦った選手はワンディメンションなレスラーでしたが、それからどんどん打撃が上手くなってウェルラウンダーになっていると思います」

──河名選手はパン・ジェヒョク選手に対して、前回の試合後に腰が柔らかくてテイクダウン防御力が高い。苦手なタイプの選手だと言っていました。

「しっかりと自分のことを評価してもらって、感謝します。パンクラスでもワンディメンションな透暉鷹選手と戦った時も、自分をテイクダウンするのに苦労していました。あの時も圧を掛けて、彼を苦しめることができました。自分自身でも、レスリングはそこそこできると思っています」

──ところで河名選手の12月の試合もチェックされたと思いますが、どのような感想を持ちましたか。

「9月のユン・ダウォン戦を見ても、パンチにパワーを乗せることができるようになってきたと思います。12月のチハヤフル・ズッキーニョス戦は打撃を自信を持っているように感じました。ただ彼が打撃を怖がらなくなっているのであれば、打撃戦にも応じてくるでしょう。そうなると、カウンターを決める場面も増えますね」

──やはりパン・ジェヒョク戦の打撃は、カウンターが一番の武器だと。

「自分の打撃は2つの武器があります。カウンターと、プレッシャーをかけて攻め続けること。この2つの攻撃パターンで攻めようと思います」

──パン・ジェヒョク選手の打撃の圧。河名選手のレスリングの圧。そこが鍵を握りそうなファイトです。

「河名選手が打撃戦が構わなくなっているように、自分もレスリングになっても大丈夫だと思えるだけ練習をしています。次の試合では防御だけでなく、攻めるレスリングを見せることができると思います。それだけ練習してきましたし、だからこそ打撃、レスリングだけでなく柔術も含め全局面で戦えるので河名選手もしっかりと気を付けて戦うことをおススメします」

──今回、無観客での試合になりますが、そのような環境をどのように思っていますか。

「またパンクラスの時の話になってしまいますが、背が高い選手と戦った時(亀井晨介戦)に自分のヒットには会場は静かなままで、相手の拳が届いただけで大きな声援が挙がっていました。あの環境は審判の判断を誤らせると思います。だから無観客は自分にとって有利に働くと思います。

それにジムで練習している時のような楽な気持ちで戦えるんじゃないかと思って、楽しみにしています。ケージが少し小さくなることもポジティブに考えています。本来は広さを使ったファイトを得意としていますが、ケージが小さくなるなら、それだけ圧力がかけやすくなるのでインファイトもしやすくなりますね」

──ところで、自分が韓国人選手をインタビューした時には『男として──』という様な威勢の良い言葉が聞かれることが多いのですが、パン・ジェヒョク選手はいつも本当に落ち着いた返答ですね。

「まだ仮面を被っています(笑)。本当はもっと危ないヤツだと思いますが、試合前は冷静でいたいです。それに日本のファンの人達も、そういうキャラは望んでいないと思います。ファンの皆さんの志向に合わせています(微笑)」

■視聴方法(予定)
2月16日(金)
午後6時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル

■ Gladiator CS01計量結果

<Gladiatorフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]パン・ジェヒョク:65.75キロ
[挑戦者]河名マスト:65.65キロ

<Progressフォークスタイルグラップリング・フェザー級王座決定戦/5分3R>
竹本啓哉:65.8キロ
竹内稔:65.4キロ

<ミドル級/5分3R>
三上ヘンリー大智:84.2キロ
アン・ジェヨン:84.1キロ

<Progressフォークスタイルグラップリング88キロ契約/5分2R>
グラント・ボクダノフ:84.0キロ
大嶋聡承:86.0キロ

<Gladiatorフライ級王座決定T準々決勝/5分3R>
和田教良:57.0キロ
チェ・ドンフン:56.6キロ

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【Gladiator CS01】ラスト侍に訊く、剣道とMMA。三上ヘンリー大智─02─「打って勝つな、勝って打て」

【写真】計量台でポージング。剣道、武道について話してもらいましたが、ヘンリーはプロフェッショナルMMAファイターです (C)MMAPLANET

16日(金)、配信に特化して開催されるGLADIATOR CHALLENGER SERIES01「Bang vs Kawana Ⅱ」で、アン・ジェヨンと対戦する三上ヘンリー大智インタビュー後編。
Text by Manabu Takashima

高校、大学と剣道で活躍した三上は、その剣道家生活で体に摺り込まれた武の理が、MMAで生きると断言した。表面上の動き、そして内面。武道でありながら競技のある武器術と、無手のコンバットスポーツであるMMAの共通点とは──。

目の前の相手に勝つ競技を戦いながら、戦いの本質がその身にある三上ヘンリー大智──彼以外のMMAは決して口にできないであろう──数々の心理が聞かれた。

<三上ヘンリー大智インタビューPart.01はコチラから>


――個人的にヘンリー選手に以前から伺いたかったことなのですが、剣道がMMAに生きることはあるのでしょうか。

「メチャクチャあります」

――おお。ぜひとも詳しくお聞かせください。素手と武器術は間合いから違ってくると思いますし、どのようにMMAに落としこむことができるのか。同じ剣術でも、前後運動だけのフェンシングよりも、剣道の方がリンクするのではないかと。それぐらいの感覚でしかないので、とても興味深いです。

「色々な要素があり過ぎて、伝えることは難しいのですが……。重量級という立場で言わせてもらうと、剣道は無差別なので凄くすばしっこいヤツ、大きくて一発はあるけどノソソノしたヤツとやろうがルールは全て同じです。状況も全て同じです。そのなかで三本勝負なので、パワーで押せないというのがあります。

スピードに対応しないといけない。小さい人と稽古しているときも、その速さについていかないといけないんです。そうなると大きかろうが、小さかろうが足さばきは必然の要素になってきます。だからいわゆるキックボクサーのゆっさゆっさした動きにはならないんですよ。

前後移動、左右移動ともに重心を一定にして、上下させるのは相手の攻撃を避けるにしても、攻撃を当てるにしても、技の起こりがなかなか見えないので。僕に関して言うと『ここで当たる』という場所に留まらない。『ここには当たらないだろう』という時に当たる。そのような動きが可能になると思います。

あと……一番大きい所は間合いなのかと思います。剣道をやっている時に口を酸っぱくして言われたのが、『打って勝つな、勝って打て』ということなんです。その部分での間合いとか気構え、相手の起こりを捕らえることだとか。あるいはわざと起こりを見せて、相手を誘って打つとか。その辺りの心理的な駆け引きに関して言うと、他のスポーツ……例えばボクシングと違ってダメージを受けずに訓練ができるので、何度失敗してもその訓練ができるのが剣道の特徴ですね。

ボクシングだと打たれ、ディフェンス力がついてくるじゃないですか。でも、その時には打たれ弱くなってしまうかもしれない。でも剣道はそういうことなしで、模擬戦を何度でもできる。そこが違ってくるのかと」

――武道は競技化すると勝利を目的とした技術が発展し、結果スポーツとしてフィジカルの優れた者が有利になります。ただ竹刀があり、防具があることで剣術ではないですが、剣道として武道性は残りやすいのでしょうか。

「自分のなかでは……『これは、そうなんじゃないかな』ということがあります。対人競技で相手と、体の中心が近ければ近いほどパワーの勝負になる。それが離れれば離れるほど、技術の勝負になる。だから弓道は的を狙うものですけど、体格とか関係ないじゃないですか。弓を弾く力は必要でも、的の中心を射るという点においては体の大きさは関係ない。

剣道よりも槍の方が間合いが遠いから、より技術の勝負になる。剣道には鍔迫り合いという近距離での間合いでいなしたりとかするから。空手の場合は競技化すると、突きの距離になるので、竹刀がある剣道とは理屈が変わってくる。そうなってくると、空手は技術の側面が失われるのかもしれないですね。

最初から組んでいる武道、競技は話が違ってくるとは思いますけど。剣道は一つ棒を持つことで、武術の本質に触れられる。でも剣道をやっている時は、そんなことは全然考えていなかったです。振りのスピードとか、足を速く動かした方が勝てるだろうと思っていて」

――つまり西洋スポーツ化した思考だったのですね。

「ハイ。でも剣道を離れてMMAを始めると、『ヘンリーって、こういうところが凄いね』と指摘された動きは、剣道の動きで。意識をしていなかったのですが、そこで初めて『剣道のこういうところが生きるんだ』って気づいたんです。それこそ無意識に摺りこまれていたんでしょうね」

――剣道の動きよりも、剣道の理がMMAに生きる?

「その通りですね。だから組み技でも生きるんですよ。剣道は面を取りたかったら、小手を攻めろというのがあって。小手を取りたかったら、面を攻めろと。それは柔術も同じで。腕十字を取りたかったら、三角を見せて腕十字だとか。マウントを取りたかったら、腕を攻めに行くとか。

ボクシングもそうで。ジャブを見せて、ボディとか。虚実――そこらへんが全て、つながっているんじゃないですかね」

――虚実を織り交ぜた動きが、体に摺りこまれている。そこがMMAで有利に働く?

「それはあると思います。それは自分に剣道を指導してくれた先生のおかげです。高校の時(東海大学付属第四高等学校※現東海大学付属札幌高等学校)の古川和男先生が、その場で勝つための剣道を教えているような先生だったら、こういうような考え方には恐らくなっていなかったと思います。

『こういう風に打て』、『こうやれ』、『ああやれ』という指導だったら、こうやったら当たるというので終わってしまって表面上のことしか理解できていなかった。『勝って打て』──意味分かんねぇってなるんですけど、悩みながらやっていくなかで自分の心に刻まれたんじゃないかなって。それが先生の指導力の賜物だと思います」

──自分の間になっているから、勝っていると。

「ハイ。打つから勝つのではなくて。そういう内面的なこともありますし、さきほど話した足さばきや重心のこともあります。私はエレベーターがあるところは階段でなくエレベーターに乗るようにしています。坂道は重心移動として平気なのですが、階段は本来の重心移動ではないので気持ち悪くて。もう、そういう体になっているのだと思います。

表面的には他にも相手のスピードについてくために、足さばきは磨かれました。それと私は特殊で、中段から上段にスタイルを変えたんですよ。中段と上段って足の向きが逆なので、だからスイッチを使える側面もあって。そこは凄く大きかったかなって思います。

あと中段だと剣先が触れて、『ここなら攻められる』という風に勝負ができるのですが、上段の場合は竹刀同士の触れずに間合いを測らなければならなくて。本当に空間を目で見て、心で認識しないといけないんです。『今、勝っているのか』、『打って良いのか』ということを。そこもMMAに凄く生きています」

──実は以前からヘンリー選手の剣道の動画を見せてもらっていて。とにかく長身を生かして上段の構えから面を打って勝つ。その踏込みなどがMMAに生きるのかどうか、そこが気になっていたのですが……ここまで深い話を聞かせていただけるとは。

「勝つまでの行程が色々とあって、良いのを打ったなというのは相手の気を殺しているというか──間合いを盗んでいる。何よりも自分が攻めている状態で打っています。自分が攻められている状態で打っても一本にならないですし、相手に防がれます。MMAも同じなんじゃないかと」

──まさに武術的な重心の話ですね。

「ハイ、心のバランスです。同じことをしても、守っている時は全く通じないです」

──いや、参りました。それほどまで武の理を理解しているMMAファイターはいないかと。

「でも世界のトップレベルの選手って、スポーツをやっていてもそこに行き着いていると思います。メイウェザーとかも。海外の人達からは、日本の武術は凄いと思われがちですけどトップに行く人は押しなべて皆、同じようなエリア……ゾーンに足を踏みいれていると思います」

──押忍、本当に興味深い話をありがとうございます。今回の試合を終えると、ヘンリー選手はどのようなキャリアアップを考えているのでしょうか。

「そうですね、やるからにはトップを目指していきたいです。今はたまたま格闘技に心血を注いでいる状態なのですが、皆が『努力は実を結ばない』とか考えがちになります。でも私の中では……変な風に聞こえるかもしれないですけど、来世まで自分の努力や頑張ったことは引き継がれると思っています。現役選手生活が輝かしいキャリアにならなかったとしても、そこは諦めずに絶対に来世で花が咲くぐらいの勢いでMMAを頑張っていきたいと思っています。

目指すところは……名前を出して良いか分からないけど、UFCチャンピオンになること。でも、それが叶わなくても自分のやっていることに誇りを持ちたいと思うので、とにかく目の前の一戦・一戦を全力で戦うだけです」

──自分のやっていることに誇りを持つためには、ケージのなかから何を見せないといけないでしょうか。

「う~ん、そこはもう勝手に出てくるものだと思っていて。自分で表さないといけないと考えた時点で、なんか嘘になっちゃうかなって。自分が表現したいから、表現することって本当に自分の本質なのかなって思うんですよ。さっき、前回の試合で無意識になったと話したようにアレが自分を表せている。無意識の状態で、何も考えずに勝手に出てきたものが自分自身だし──。

一つ言えることは、相手に敬意を払うこと。勝っても負けても、相手に敬意を払うこと。多分、自分と同じだけ努力をしているだろうし、負けたくてケージの中に入っていく人はいないと思うから。勝っても負けての相手に敬意を払うこと。そこだけなのかと。勝った後の立ち振る舞い、負けた後の立ち振る舞いに自分のMMA道が出てくるのかなって思いますね」


■視聴方法(予定)
2月16日(金)
午後6時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル

■ Gladiator CS01計量結果

<Gladiatorフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]パン・ジェヒョク:65.75キロ
[挑戦者]河名マスト:65.65キロ

<Progressフォークスタイルグラップリング・フェザー級王座決定戦/5分3R>
竹本啓哉:65.8キロ
竹内稔:65.4キロ

<ミドル級/5分3R>
三上ヘンリー大智:84.2キロ
アン・ジェヨン:84.1キロ

<Progressフォークスタイルグラップリング88キロ契約/5分2R>
グラント・ボクダノフ:84.0キロ
大嶋聡承:86.0キロ

<Gladiatorフライ級王座決定T準々決勝/5分3R>
和田教良:57.0キロ
チェ・ドンフン:56.6キロ

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