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【RIZIN LANDMARK08】RIZIN初陣で瀧澤謙太に勝利、野瀬翔平「圧倒してフィニッシュすることは想定内」

【写真】強い選手と戦い続けてきた野瀬にとって、この勝利は当たり前というのが陣営の考えだった(C)RIZIN FF

2月24日(土)、佐賀県佐賀市のSAGAアリーナで開催されたRIZIN LANDMARK08で野瀬翔平が瀧澤謙太に2RTKO勝利を収め、RIZIN初参戦を勝利で飾った。
Text by Takumi Nakamura

Road to UFCを見てきたファンにとっては納得の、RIZINファンにとっては衝撃のTKO勝利にはどんな技術と戦略があったのか。野瀬本人の言葉とともに紐解いていきたい。


――――2月のRIZIN LANDMARK 8 in SAGAでは瀧澤謙太選手に2RTKO勝利でした。試合後の周囲の反響はいかがでしたか。

「試合後は『今まで野瀬のことを知らなかったけど、こんな強い選手がいるんだ』という声が多くてうれしかったですね」

――野瀬選手のRoad to UFCでの試合を見ている人たちは野瀬選手の強さを知っている。一方でRIZINファンにはまだその強さが知られていなかった。試合前のその評価はどう受け止めていましたか。

「対戦カードが発表された時、RIZIN常連の瀧澤選手がRIZIN初参戦のよく知らない選手とやるみたいな感じで、瀧澤選手が勝って当然という予想が多かったんですよ。正直『分かってないな。俺が勝つから見てろよ』って悔しさはありましたね」

――改めて今年最初の試合としてなぜRIZINを選んだのですか。

「弘中(邦佳)先生とも話をして、今年はUFCにアタックするのではなく団体問わずに強い選手と戦って経験を積む1年にしようと思っていたんですね。そのタイミングでRIZIN佐賀大会があるということで、RIZINは国内のビッグイベントでもあるし、出ることを決めました」

――UFCへのチャレンジには一旦区切りをつけたということでしょうか。

「2年連続でRoad to UFCを勝ち抜けなかったので、今年もまた3度目のチャレンジというのは考えていなかったです。それよりもちゃんと試合経験を積んで強くならないといけないなと。やっぱり2年連続でチャンスを逃してしまって、僕としてはチャンスが遠ざかったと思っているし、2回ダメだったヤツが3回目お願いしますは都合がよすぎると思いました。だったらちゃんと強くなって、また野瀬はUFCに行くんじゃないか?と言われるくらい成長してからチャレンジしようと思いました」

――またUFCを目指すにしても、今はキャリアの転換期でもあったわけですね。

「はい。今年は再出発の一年だと思っています」

――さて今回の瀧澤戦はどのような作戦を立てていたのですか。

「打撃の時間をなくして、組む時間を長くすれば勝てるだろうと思っていました。そのうえで瀧澤選手は蹴りを多用するので蹴りをキャッチする、もしくは奇麗にテイクダウンできなくても組みついてケージまで押し込む。それを考えて練習していました」

――クリンチする時間を長くするイメージですか。

「そうですね。もっと言えば打撃が出せない距離、くっついている時間、0(ゼロ)距離の時間を長くすることですね」

――瀧澤はテイクダウンディフェンスも意識する一方、思い切り蹴ったり、倒されるリスクよりも打撃でダメージを与えることを優先するタイプです。そこは警戒していましたか。

「はい。蹴りの距離が遠いし、ストレートやヒザ蹴りのカウンターも上手い。あとで試合映像を見返しても、何度か危ない部分があったと思います。ただ相手の打撃を怖がって中途半端に距離を取ると、もっと瀧澤選手ペースになるので、そこは打撃を怖がらずに密着する。それがさっきの0距離という感覚ですね」

――0.5すらも与えないと。

「はい。0距離、密着ですね」

――そして遠い間合いでは野瀬も積極的に打撃を出していた印象です。それを出さないと組めないという考えだったのですか。

「そうですね。瀧澤選手は経験値もあるし、いきなりテイクダウンに行っても切られると思ったんです。だからスタンドで『こいつもしかしたら打ち合ってくるかも』と思わせる打撃を出してから組むことを意識していました」

――最初にダブルレッグに入ったとき、瀧澤選手もヒザを合わせてきましたが、そのまま組んでリフトしてからテイクダウンしました。

「あれはポイントもずれていたし、僕のダブルレッグの方が速くてリフトもできたんで、組んでしまえばこっちのもんだと思いました」

――ああいった場面は中途半端に組みついた方がヒザをもらってしまうものなのでしょうか。

「きっとあそこで僕が躊躇してテイクダウンのスピードが遅くなっていたら、逆に危なかったと思います。ただあのあとすぐに腕十字にいっちゃったのは僕の悪い癖ですね(苦笑)。本当はもっとしっかりトップキープすべきだったと思うし、あれは反省点の一つです」

――結果的にスタンドに戻されましたが、最初にテイクダウンに成功したことで、次も組めば倒せるという手ごたえはありましたか。

「一度逃げられたのはミスでしたが、同じことを繰り返せばテイクダウンはとれると思っていたので焦りはなかったです」

――そして瀧澤選手の前蹴りをさばいてダブルレッグで尻餅をつかせ、立ち上がった瀧澤選手をバックコントロールしてグラウンドに持ち込みました。ここからはバックキープしてラウンドを終える展開でした。あれは野瀬選手が得意な形ですか。

「相手を寝かせる。背中を向けて立とうとしたらバックをとる。足を四の字クラッチする。これはもう僕の得意な形ですね」

――バックを取ってからシングルの四の字ロック、いわゆる“おたつロック”でキープする形でした。

「もしあそこから瀧澤選手が向き合ってきたらツイスターや前回極めたアームロックが狙えるのですが、瀧澤選手はバックをとられた状態で向き合おうとしなかったんです。事前の映像を見ていたのか感覚なのかは分からないですが。だからサブミッションは難しかったんですけど、逆にバックコントロールし放題なので、これだったら殴ろうと思って、途中から殴る方にシフトしました」

――1R終盤に右足で瀧澤選手の右腕をひっかけてバックキープしていましたよね。あれは練習でもやっていたのですか。

「あれも僕の得意な形で、柔術やグラップリングの練習でもよく使うんですよ。確かゴードン・ライアンが使っていたのを真似して、それを弘中先生や荒牧(誠)先生と改良した感じですね」

――世代的にはBJ・ペンがジョー・スティーブンソンにRNCを極めた時のものだ!と思って興奮してしまいました(笑)。一貫して1Rは自分のやりたいことが出来たラウンドだったのではないですか。

「はい。インターバル中も『同じことを繰り返せばいい。ただ相手は入り際の一発を狙ってくるから、そこだけは気をつけろよ』という指示でした」

――ただ2Rもその入り際で右ストレートやヒザ蹴りを被弾しました。

「そうなんですよ(苦笑)。ヒザ蹴りを腕で受けたんですけど、テイクダウンにいこうとして頭を下げていたら危なかったし、一発の当て勘やそこに持っていくまでのフェイントのかけ方は本当に上手いなと思いました」

――ただ野瀬選手も左ストレートからダブルレッグで組みついて、1Rと同じようにバックコントロールからのテイクダウン、おたつロックでのバックキープという展開になりました。ここで瀧澤選手向き合おうとしたところで、首を右腕・右ワキで抱えていましたよね。いわゆるエクセキューショナーチョークですが、あれは練習でも極めているのですか。

「四の字ロック(おたつロック)から向き合おうとする選手にはあれでタップを取れるんですよ。瀧澤選手にも狙ってみたのですが、首の位置だったり胴の長さだったり、体系的なところもあって極まらなそうな感じだったんですね。それでキープの方に移行しようと思いました」

――腕ごとひっかけるバックキープはゴードン・ライアンがきっかけとのことでしたが、エクセキューショナーチョークも何かきっかけがあったのですか。

「これは練習でやってみて思いついた技ですね。ちょうどRoad to UFCで鶴屋怜選手もやっていたので、四の字ロックを使う人はあの形に行き着くんだなと思いました」

――その後の展開にもつながりますが、あそこからマウントにも移行できるし、仮に一本とれなかったとしても、次に展開できるキープの形ですよね。

「はい。この試合もあそこから僕がマウントを取って、相手にとって致命傷になるヒジを落とせたので、あの(エクセキューショナーチョークの)プレッシャーがフィニッシュにつながったと思います」

――こうして野瀬選手のお話を聞いていると、サブミッションのアプローチがあるからこそ、相手の動きが止まる→殴りやすいという展開だったことが分かります。

「僕もそう思います。瀧澤選手はかなり僕のサブミッションを警戒していたので、それで殴りやすかったですし、逆に僕が殴りに固執していたら立たれたり逃げられていたと思います」

――あとはフィニッシュ前に落として縦ヒジですが、あれは見ていてもえぐかったです。ルール的にOKとはいえ、ガンガンいっていましたね。

「前日のルールミーティングでも耳のラインまでだったら縦ヒジもOKと言われて、エグいルールだなとは思いつつ、自分に使える場面が巡ってきたので、そこはフルに使わせてもらいました」

――試合を終えてのチームとしての感想はいかがでしたか。

「大舞台でも練習でやったことを練習通りに出来たことは褒めてもらいました」

――戦前の下馬評はあったにせよ、自分の実力を出せればしっかりフィニッシュできるという自信はありましたか。

「はい。このくらい圧倒してフィニッシュすることは想定内だったので、驚きでもアップセットでもないです。それと同時に先生たちからは『これをもっと強い相手にできなきゃだめだぞ』とも言われました」

――Road to UFCで培ってきたものはRIZINのトップ選手と比べてもそん色ないものだという自負もありますか。

「僕は日本での知名度がないかもしれないですが、Road to UFCでは強い選手たちと戦ってきたので、そこで経験値が足りないとか、そういうことは一切ないと思っています」

――今後も国内ではRIZINで戦うことになると思います。次戦へ向けた意気込みをいただけますか。

「日本国内で一番強い選手と試合を組んでもらえる舞台がRIZINだと思うので、是非またオファーをいただきたいと思います。今回下馬評を覆す試合が出来たので、次はもっと強い相手に同じような試合・勝ち方をして、皆さんをもっともっと驚かせたいです」

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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC FPI06 キック ゴードン・ライアン ニッキー・ロドリゲス ペドロ・マリーニョ メイソン・ファウラー

【UFC FPI06】本戦でマリーニョを動かせ、延長でポイント奪取から肩固め。ファウラー快勝

<215ポンド契約/8分1R>
メイソン・ファウラー(米国)
Def.ExR3分14秒by 肩固め
ペドロ・マリーニョ(ブラジル)

頭の取り合いから、軽くダブルレッグを狙ったマリーニョ。続いてアームドラッグを狙い、足払いを仕掛ける。場外際から中央に戻された両者、直後にマリーニョが小外刈りでテイクダウンを奪い、下になったファウラーのニーシールド・レッグロックを潰す。パス狙いのマリーニョに対し、ファウラーはラバーガードをセットしつつ足を跨がれるとオモプラッタへ。マリーニョはここ即反応して腕を抜き、ファウラーもニーシールドを取り直す。

重厚な一戦は、ファウラーが尻を引いてスタンドに戻り仕切り直しに。残り5分30秒から立ちレスの展開が続き、マリーニョは再び小外刈りでファウラーを転がす。ここはグラウンドにいかず、立ち上がったファウラーの押し込みをいなすマリーニョに「アクション」の声が掛かる。頭をとりにいく動きがスラッピングに、足払いはローキックに近くなり両両者が熱くなっている。マリーニョは飛びつき十字、跳びつきギロチンを仕掛ける。

とレフェリーが「スラッピング、キックはするな」と両者に注意が入る。マリーニョが三度、小外刈りを決めるも立ち技が続く。両者にアクションが入り、マリーニョがジャンピンガードからハーフも場外際となりマット中央&スタンドで再開される。再び引き込み、背中をつけたマリーニョ。今度はマリーニョが下のままで、センターでリスタートに。しかし残り45秒──クローズドガードのマリーニョに対し、フォウラーが足関節を仕掛ける。逆にマリーニョも足関節を狙うと、ファウラーがロールしながらヒザを抜いて時間となった。

延長戦、すぐにシングルレッグでテイクダウンしたマリーニョだが、3秒間グラウンドでコントロールできずポイントはない。逆にシングルでテイクダウンのファウラーは、ギロチンを防いでテイクダウンの2Pを獲得。サイドで抑えたファウラーは、しっかりと抑ええるとダースを仕掛けつつ上四方へ。背中をつけたままに腕を通さないマリーニョは、足を戻す。ここからファウラーはパス&マウント奪取で6-0とリードを広げる。

肩固めでフィニッシュ狙いのファウラーが、2度目のセット&スライドも極め切れない。ここで場外際から中央で再開となり、ファウラーは十分の形となりタップを奪う。FPIで5連勝のファウラーは「ずっとゴードン・ライアンを戦いたいと思っていたけど、今はニッキー・ロドリゲスと試合がしたい」と話した。


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F1 JT・トレス MMA MMAPLANET o YouTube   ウィリアム・タケット グラント・ボクダノフ ゴードン・ライアン ジオゴ・ヘイス ジョセフ・チェン ダンテ・リオン ダヴィ・ハモス 世羅智茂 岩本健汰 森戸新士

【Fight&Life & ADCC Asia & Oceania Trial】ADCC予選へ、森戸新士「家族や仲間の存在が自分の力に」

【写真】競技として柔術とグラップリングは別モノであると思いますが、グラップリングを修めようといういう姿勢は生き方として柔術家だと感じます(C)MMAPLANET

現在発売中のFight&Life#99で11月25日(土・現地時間)にシンガポールはジュロンイースト・スポーツセンターで開催されるADCCアジア&オセニア予選に出場する森戸新士のインタビューが掲載されている。

岩国と広島に柔術道場を持つ。経営&指導でありながら、毎月のように道着&ノーギ、プロ&アマ・トーナメントに数多く出場する森戸にとってADCC出場の意義と、柔術家として取り組みを尋ねた同インタビューを全文掲載したい。


──昨日の全日本柔術選手権、ライト級と無差別級で3位でした。

「階級別も無差別も初めて試合をした大浦マイケ選手、グラント・ボクダノフ選手に準決勝で負けてしまいました。マイケ選手は茶帯で勝ちまくっていた選手で、自分の形を創る前に崩されてしまいした。素直に完敗でしたので悔しくて、やり返したい気持ちでいっぱいです(苦笑)」

──無差別の準決勝はポイントを取り合って同点でレフェリー判定負けだったと。マイケ選手もグラント選手も年下です。国内において下の世代が上がってきたことに関しては、どのように捉えていますか。

「そういう年齢になってきたな、と(笑)。僕が黒帯になったのが2018年、あの時には『やっと黒帯の強い選手を倒しにいける』と思っていました。思ったことを実現してきて、今は茶帯から上がってきた強い選手を倒す立場になった。でも今回は倒されたから、やり返したいです」

──それにしても1週間前にグラジエイターで暫定王座決定戦を戦い、世羅智茂選手を破って王者になったばかりでした。ケージ・グラップリングと畳の道着、もう完全に別モノかと。強行スケジュールで、どちらに比重を置いていたのですか。

「今回はノーギの方でした。ただ普段からノーギの試合前でも道着の指導をしていますし。そのままスパーにも加わっているので、どちらも練習しています。ただフォーカスしていたのはノーギですね。道着の方は3、4回ほど練習しただけでした。なので全日本は出場するかどうか迷ったんですけど、これでは来年のムンジアルで勝てないと思い知らされたので、出て良かったです」

──たまたまグラップリングの試合が前だったから、比重を置いていたのでしょうか。

「今回はタイトル戦で、世羅さんにはノーギで1度負けているので。ちゃんと取り返しておきたいというのがありました」

──4-2でしっかりと確実に勝った。そういう印象の試合でした。

「ルール的に上の取り合いになると分かっていましたし、そのつもりで準備もしていました。しっかりと勝てたことは良かったです」

──それにしてもグラジエイター、FINISHというグラップリングのプロマッチ、プロ柔術でもKITとART。そして全日本やアジア、全日本ノーギともの凄い数の試合に出場していますね。

「基本的には月に1度は試合をしていると思います。でも僕は試合が終わると、もう過去のことになっちゃうんです(笑)。次のことしか考えないので」

──現役生活と指導者生活、これだけ試合に出ていてなお、バランスが取れているのですね。

「基本、オファーがあったら断らないようにしています。呼ばれているうちが華なので。大きな舞台で活躍したいですし、その過程でもあるので数もこなしていきたいです」

──そういうなかで旅費、出場費を払うトーナメントと足代が出てファイトマネーのあるプロの試合では、捉え方は違ってきますか。

「試合は始まれば同じなので、あまり違いとかは考えないです。エントリー費用で1万円払うのも経験値を積んで、実績を創るためです。それにトーナメントは試合数が多くて、その分練習で取り組んできたモノを試せて成長できます。勿論、ファイトマネーが少しでも多い方が良いですけどね(笑)。それにプロの試合は旅費の負担がないのも助かります。そこに呼んでもらえていることが、有難いです。そういう舞台で戦うと名前も売れますし、ジムの宣伝にもなるので。プロマッチは相手が強い人しかいないのも良い点です」

──森戸選手はいつ頃からグラップリングの試合に出て、ADCCを目指すようになったのですか。

「初めてグラップリングの試合に出たのは2019年のADCCアジア・オセニア予選でした。岩本健汰選手が66キロ級で代表になった時です。僕は77キロ級に出場し2回戦でラクラン・ジャイルスに内ヒールで負けました」

──ラクランはその年の世界大会では無差別級で3位になるなど、足関節で旋風を巻き起こしたグラップラーですし、初のグラップリングでは致し方ない結果かと。

「あの時は柔術の練習の時に道着の上だけ脱いで藤田(善弘。藤田柔術代表)先生とチョロッとやっただけで出ていました。で足関を創られて、逃げ方も分からず足首とヒザを少し鳴らされてタップしました」

──なぜ予選に出ようと?

「当時はまだ会社員で、仕事をしながらでも選手として活躍したいともがいていた時期で、大きな大会は全て出ようとしていました。それで、取りあえず出てみようと。振り返れば、まぁ……どうやって勝つつもりだったんだろうとは思います。同時にそれぐらいのマインドを持っていないと、ああいう舞台には出ていなかったでしょうし。僕は試合に出て、課題に直面して直していくようにしているので」

──柔術では禁止されている内ヒールで敗れて、これは別モノだから構わないという気持ちには?

「ならなかったです。あの後のラクランの活躍も見て、自分もグラップリングを頑張ろうというきっかけになりました」

──別モノだという考えにはならなかったということですね。

「別モノという考えもあると思います。ただADCCの入賞者を見ても柔術家が多かったです。コブリーニャ、ダヴィ・ハモス、2連覇のJT・トレスと。柔術家がADCCルールに対応するために練習をして結果を残している。つまり柔術はグラップリングで生きているということじゃないですか」

──ハイ。

「グラップリングを戦う上でも柔術の練習が無駄になるとは思わないので、それほど分けて考えることはないです。ただし、グラップリングに特化して練習した方がADCCでは結果を残せるとは思っています。ムンジアルとADCCの両方を狙うよりも、どちらかに集中した方が成果は出しやすい。それでもミカ・ガルバォン、ジオゴ・ヘイス、ファブリシオ・アンドレだとか、ルオトロ兄弟もそうですが、両方で活躍している柔術家も多くて。僕が目指したいのはそういう選手です」

──まさにその言葉通りの活躍を国内ではできています。両競技に出る利点はどこにあると考えていますか。

「利点……利点というか、両方とも楽しいです。道着もアジアの前に集中して練習していると、掘り下げる分だけ新しい技術が見つかって。その時は道着にハマります。でもノーギの大会前はレスリングもそうだし、新しい技術にハマります。一方に集中した方が、競技者としては上達すると思いますが、両方とも楽しいから、今のところは両方で頑張りたいという気持ちです」

──コンペティションに出る理由も楽しいからでしょうか。

「そこに対する取り組みも、ですね。もちろん、試合だから精神的に負担もあります。ただ挑戦していること自体は楽しいです」

──楽しめなくなる。それも競技者生活の一面ではあります。

「注目が集まり過ぎると、そうなるんじゃないでしょうか。マイナー競技だから、楽しめているのかもしれないです。ただゴードン・ライアンが楽しめているとは思えないですね(笑)。ウィリアム・タケットも『試合に出ることはストレスだから、ずっと競技者をやっていこうとは思っていない』と言っていました。弟のアンドリューは、ただ楽しいって感じですけど(笑)」

──なるほどぉ。これは絶対的に否定していることではなくて──。森戸選手が全日本柔術の週末に子供さんの運動会に行かれていたことは、正直驚きました。

「日程的に可能であれば、どんな大きな大会前でも娘の運動会には行きますっ!! 」

──かつかつに体重を落とすわけでないですし。そういえば、MMAでも計量後に運動会に駆けつけている選手もいました。

「僕は減量を余りしないのですが、そりゃあ娘の運動会は大切です。むしろ、そこから活力を得ないといけない。そのために日々を頑張っているので」

──昭和親父として、頭が下がります(苦笑)。

「競技を続けることは当然、楽しいだけではないです。今の僕は道場経営で生活を成り立たせているので、自分の実績も今後の経営に関係してきます。何より応援してくれる家族、生徒さんやスポンサーさん達の生活も僕が活躍することで豊かになってほしいし、自分の心も豊かになれるので競技を頑張りたいです」

──今年は1月にジョセフ・チェンに完敗を喫しました。自らの努力を否定されかねない敗北だったかと思うのですが、心を豊かにするのとは真逆で絶望感を持つことは?

「自分がジョセフの域まで達していないだけで、でも強くなっている実感があります。これだけ強い人がいるのだから、もっと頑張ろうという気持ちになりました。強い選手と肌を合わせられて良かったと思います。戦う舞台が世界になると、ああいう選手が揃っているので。現にジョセフはノーギだと過去一で強かった。ジョセフ・レベルの選手がADCCの世界大会に出る。そういう選手と日本で試合ができて、差も分かりました。そこをどう埋めていくのかという過程に今はいます」

──あの試合以降、森戸選手のグラップリングは技術的に変化しました。ラクランの足関から始まったグラップリング挑戦ですが、この競技自体に技術変遷が見られます。

「今では足関は必須科目です。主流の技術が代わり、その技術を修得していく過程はやはり楽しいです。強くなることが実感できるので」

──その成果を発揮する舞台が、 11月25日のADCCアジア・オセアニア予選です。

「ADCC世界大会は僕の目標とする大会の一つです。招待選手でもない僕は、そこに出るには予選で勝つしかない。もちろん、そこに賭ける想いはあります。そのために練習をしているので」

──その練習環境としては広島&岩国だと、首都圏のコンペ練習がある道場とはまた違ってきます。首都圏ではMMAファイターのプロ練習に参加する選手もいますし。

「練習環境の差はどう見てもあります。でも僕はこのジムを自分で起ち上げて、通ってくれる生徒さん、出稽古で来てくれる練習仲間──皆で強くなっていこうという気持ちでやっています。取り組み方次第で、練習環境の差は埋めていける。結果を残して、ソレを示していきたいという想いでやっています」

──アジア・オセニアニア予選、豪州、あるいは中央アジアからどのような選手が出てくるのか分からないですが、前回優勝の岩本健汰選手が優勝候補一番手だと思われます。東京やB-Teamで練習する岩本選手を相手にして、今の言葉を実践できるのか。大勝負ですね。

「う~ん、ADCCルールの実力でいえば向うの方が全然上です。ジョゼフに勝ち、ウィリアム、ダンテ・リオンという世界のトップと張り合える選手との試合を見ても、岩本選手はめっちゃ強いです(笑)。でも、そこに挑んでナンボなんで。やるからにはもちろん、自分の持っているモノを全部出して勝ちに行きたいです」

──岩本健汰になくて、森戸新士にある長所とは?

「柔術の極め。岩本選手もスクランブルが強いですけど、自分も意外と得意なので、そこで驚かせることもないことはない。そういうところでチャンスを創りたいです。僕はコロナの時に米軍基地での指導という仕事を失って、あの時に柔術を教えていた生徒さんの助けがあって、家族と生き抜くことができました」

──……。

「LEOSを創る前、結婚をする前、子供が生まれる前は自分のことしか考えていなかったです。今は柔術だと試合会場に仲間と一緒に行き、プログレスとか自分だけの試合でもセコンドで仲間が来てくれます。試合直前まで支えてくれて、応援してくれる家族や仲間の存在は、明らかに自分の力になっています」

──圧倒的な実力差があるケースを抜きにして、競り合った時にその想いが森戸選手のエネルギーになりそうですね。

「より一層負けられないという気持ちが大きくなります。試合前も娘の写真を見て……だから運動会にも行くし(笑)。奥さんから娘が『頑張ってねぇ』と言っている動画が送られてきます。道場の皆のメッセージを読んで、動画を見ると良い感じで緊張が取れて『やるぞ』と気持ちを切り替えることができるし。そんな皆のためにも頑張りたいです」

──では改めてADCCアジア・オセニア予選に向けて、意気込みの程をお願いします。

「ADCCアジア・オセアニア予選はレベルも凄く上がっていて、メンバー的にも過酷なモノになると思います。インターバルも短く体力的にも厳しいです。勝ち上がれば勝ち上がるほど厳しい状況になりますが、一つひとつ勝ち進んで──代表権を掴み取りたいと思います」

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CJJW2023#02 Level-G MMA MMAPLANET o UFC YouTube YUKI エステヴァン・マルチネス エライアス・アンダーソン ガブリエル・ソウザ ゲイリー・トノン コンバット柔術 ゴードン・ライアン デミアン・アンダーソン ファブリシオ・アンドレイ マニー・ヴァスケス リチャード・アラルコン 海外 高橋SUBMISSION雄己

【CJJW2023#02】高橋Submission雄己の大冒険「ここに入ってみて。ここで見つけて、日本の皆に伝えたい」

【写真】Viva メヒコな高橋サブ (C)YUKI SUBMISSION TAKAHASHI

30日(日・現地時間)メキシコのビーチリゾート地であるプラヤ・デル・カルメンのポリフォルム・プラヤ・デル・カルメンで行われるCombat Jiu-Jitsu Worlds2023 The Bantamweights。同大会に高橋Submission雄己が出場する。

国内ではプロデューサーとしてグラップリングの普及に努め、現役グラップラーとしては海外での試合に挑む。メキシコ入りした高橋をインタビュー、このチャレンジの意義を尋ねた。


──今、カンクンは朝の10時半かと思いますが、長旅や時差の影響はありませんか。(※取材は29日に行われた)

「着いてから24時間ぐらい爆睡していたので、朝起きてから動きの確認やストレッチをして体をほぐしています。メキシコは治安が心配だったのですが、特に何もなく過ごせています」

――宿泊しているホテルで、試合も行われる感じでしょうか。

「それが良く分かっていないんですよ(笑)。僕らは他の出場選手たちよりも1日早く到着して、本来は今日の午後に皆が集まってくるのでスタッフもそれほどいなくて。エディ(ブラボー)も同じホテルだと思うのですが、まだ会っていないです」

――では前日計量でなく、当日計量なのですか。

「ハイ。僕にとって当日計量の61.2キロは丁度良いです。さすがに前日計量の61.2キロでUFCファイターみたいな減量をされると、体格が違いすぎるので」

――まさか1人でメキシコへ?

「いえ僕や須藤(拓真)選手の練習パートナーで、エクストリーム・エビナの橋本敦貴君にセコンドで来てもらっています」

――グラップリングを普及させるプロデューサー活動を行う高橋選手ですが、グラップラーとして今回のコンバット柔術ワールズに出場に関して、どのような気持ちで取り組んできましたか。

「僕も60キロぐらいの体重で、70キロから落としてきた選手とレスリングをやってADCCルールで勝つのは難しいので。61.2キロというADCCにはない階級でやるうえで、ちょっと特殊なルールですが今回のコンバット柔術、EBIとかPolarisというところのタイトルは1つは欲しくて、キャリアの中で狙っていかないといけないタイトルだと思ってきました。

イベントとしてCJJWは格好良くて、Level-Gでもこういう空気感を創っていきたいというのがあるのですが、選手としては勝っていかないといけないところです」

――66キロでは小さい選手が、色々な大会でインパクトを残していくとADCCでも60キロ級が創設されるのではという期待は?

「そこもなくはなさそうですよね。女子の軽い階級ができたじゃないですか」

――55キロ級ですね。

「ADCCでもLAオープンとか、大きな大会では60キロ以下級が男子にもあるので。世界大会でやってくれても、おかしくはないと思っています」

――ところで今大会、トーナメント枠などが全く情報がないのですが、高橋選手は既に初戦の相手など分かっているのですか。

「まだ知らされてないんですよ。EBIでも前日計量の時にブラケットが発表されたので、1日前がデフォルトかもしれないです(※初戦がルカス・カントに決定。勝てばドリアン・オリヴァレズ×マニュエル・プリエゴと対戦)」

――現状、今回のトーナメントで気になっている相手は誰になりますか。ここに勝てば、優勝が近づくという相手は。

「皆、面倒くさい一芸を持っている感はあるのですが、極めが強そうなのはガブリエル・ダフロン。対戦すると極め合いになって極まらず、OTになるのは嫌ですね。あとはMMAをやっていたマニー・ヴァスケス。MMAファイターとしてトップから掌底が強いので、ボトムから崩し辛かったから苦戦するかなと(※ダフロンとヴァスケスともに高橋と逆側の山で、順当に勝てばこの両者が準々決勝で戦う)。

それにドリアン・オリヴァレズも気になるし。今成さんは、自分がヒールで勝ったから『なんにもない。すぐに取れる。大したことない』というけど(笑)……エライアス・アンダーソン(※欠場)、それにリチャード・アラルコン(※両者が順当に勝ち上がれば準決勝で対戦)。2人のチャンピオン経験者は気になります」

――掌底があることで、高橋選手がMMAを戦っていたことは強みになるでしょうか。

「ゲームメイクするうえで掌底にアレルギーを持っていないのは良かったと思います。ただ掌底はパウンドとは違った効力があるかと思います。音と衝撃で視界を遮られたり……まぁコンバット柔術は初めてなので正確には分からないのですが、MMAをやってきたことで『こんなものだろう』ということは分かるので。ボトムの時間を創れるのは、そこが想像がつくことが大きいと思います」

――高橋選手がトップで掌底を落とすことは?

「それはしっかり練習してきました。デラヒーバなりリバース・デラヒーバなり、一本巻かれると難しい。腰で為を創って打たないと強い掌底は打てないですが、為を創るとどちらかに崩される恐れがあります。打てる瞬間はだいぶ限られる。それでも掌底とパスと足関節を組み合わせて、トップの時間は創っていこうと思います」

――トーナメント前ですが、今後のフィールドで考えるとADCCでも66キロでは勝てなくても、60キロなら強いという選手は米国、ブラジルにはわんさか存在しているかと。

「マイキー(ムスメシ)とか、その筆頭じゃないかと思います。自分の見積もりでは(ジエゴ)パト(オリヴェイラ)、ガブリエル・ソウザ、デミアン・アンダーソンが61.2キロの世界の一軍クラスだと思います。今回出てきているメンバーは、そこより一枚落ちる第2グループのトップで。自分がいるのも、そこぐらいだと」

――今、名前が挙がった一軍の選手たちは奇しくも道着で結果を残している選手ばかりですね。

「そこは考えていないです。IBJJFの試合でなく、ノーギのサブオンリーの試合を見て強い。ゲイリー・トノン、ゴードン・ライアンというノーギだけで強い人が出てきた裏で、道着で強い人がノーギで弱くなったわけではないということだと思います。道着が強い人はノーギも強い。でも専業のノーギの人が出てきたということで」

――そこに確実に世界の頂がある。それを垣間見る、高橋Submission雄己の大冒険ですね。

「それこそ、地球の裏側に来ていますしね(笑)。でも、今は普通に試合前の憂鬱があるだけですけどね(苦笑)」

――世界のグラップリングは若い力の台頭が著しいです。そのなかで、高橋選手が海外で戦うことで日本も新しい時代に来たことを示したいということはありますか。

「そこはあります。ただ日本人では岩本(健汰)選手が一番、世界と戦っていると思います。その活躍を皆が視て、また本人も発信していることで、77キロの戦い方が世界標準のように受け取られている部分があると思うんです。足関は極まらず、トップを取ってパスをして削らないと勝てないという風な感じで。足関が極まってこないようになっているのは事実ですが、体の大きさで使う技術が違うのが格闘技じゃないですか。

僕らの体重でゴリゴリやっても、そんなに削ることはできないと思います。だから、僕がやることは違ってくる。ファブリシオ・アンドレイが、エステヴァン・マルチネスを15分間攻めたててパスできていない。なら僕らがやらないといけないことは、上のクラスのトップ戦線とは違うこと。だから、ここに入ってやってみて――感じたことを日本に持ち帰る。軽量級の僕らが練習でやらないといけないことを、一つここで見つけて皆に伝えたいです」

■視聴方法(予定)
7月31日(日・日本時間)
午前8時~UFC FIGHT PASS

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MMA MMAPLANET o UFC UFC FPI04 YouTube ガブリエル・アウジェス クレイグ・ジョーンズ ゴードン・ライアン ジャンカルロ・ボドニ ニッキー・ライアン ニック・ロドリゲス ハイサム・リダ ホベルト・アブレウ ルーズベルト・ソウザ ロベルト・ヒメネス ヴァグネウ・ホシャ

【UFC FPI04】立ちレス強制終了ルール適用UFCファイトパス招待TにB-TEAM移籍のハイサム・リダが出場

【写真】2021年のハイサム旋風を再び巻き起こすことができるか!! (C)SATOSHI NARITA

9日(木・現地時間)、東部時間の午後9時よりUFCファイトパスにて、グラップリング大会UFCファイトパス・インビテーショナル(FPI)04が配信される。
Text Isamu Horiuchi

強豪選手を集めたシングルマッチと優勝賞金3万ドル(※約430万円)が掛かった8人トーナメントを同時開催するこの大会は、トーナメントは本戦8分、メインカードのシングルマッチは本戦20分のサブミッション・オンリールールで争われる。

本戦で決着がつかなかった場合には、攻撃側と防御側に分かれて極めとエスケープの速さを競うEBI形式のオーバータイム(OT)で勝敗を決める。


UFC FPIルールの特徴は、立ち技の攻防が続くことを防止するための「ゲットダウン」ルールが採用されている点にある。スタンドの攻防が1分間続いた場合にはレフェリーが強制的にブレイクし、選手はバタフライガード(下の選手は双差しで相手の背中で手を組む)の上下に分かれて、(選択権はコイントスで決められる)寝技から攻防が開始されることとなる。

さらに、寝技の攻防で膠着を誘発する選手には積極的に警告やペナルティ(1回につき、OTにおいて自らのエスケープ時間を1分間加算される)が与えられ、選手たちは常に組技でのアクションを促されることとなる。

今回のトーナメントの参加選手は以下の通りだ。

ハイサム・リダ(ガーナ)
ダン・マナスー(米国)
フィリッピ・アンドリュー(ブラジル)
ヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)
ガブリエル・アウジェス(ブラジル)
ヒョードル・ニコロフ(ロシア)
ニック・ロドリゲス(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)

日本のファンにとって嬉しい知らせは、昨年12月のUFC FPI03に続いてのハイサム・リダのエントリーだ。米国移住後、デトロイトのアセンブリー柔術を拠点としてメジャーグラップリング大会で活躍をしてきたハイサム。昨年のADCC世界大会最重量級1回戦では、超大物ホベルト・アブレウからわずか75秒で腕十字を極めてみせ、世界にその恐るべき潜在能力を知らしめた。

が、2回戦ではルーズベルト・ソウザのテイクダウンに敗れ、また無差別級では階級下のジャンカルロ・ボドニにガードをパスされ、完全制圧された上で腕を極められてしまう等、発展途上な側面が露呈してしまったことは否めない。前述のFPI 03においても、やはり階級下のパトリック・ガウジオの三角絞めの前に初戦敗退となってしまった。

そんなハイサムは、今年4月末にデトロイトを離れてテキサスのB-Teamに移籍することを決意。「負けが続いて、自分の戦いをみんなに知られてしまっていることが分かった。新しい技術を身に付けなければいけないと思った。そのためにここ以上の場所はない。僕の弱点、やるべきことは自分でも分かっている。突然強くなるはずもないから、多くのドリルやスパーリングを重ねてゆくよ」とハイサムは語る。

実際、クレイグ・ジョーンズ、ニック・ロドリゲス、ニッキー・ライアンといった世界最高峰のグラップラーが所属するB-Teamは、これまでハイサムの大きな課題であった各要素──テイクダウン、足関節、柔術ファンダメンタル=パスガードの攻防──に優れた選手たちが集い、特に足関節とパスガードの技術においては世界最先端を行く集団だ。

重量級として突出した瞬発力とダイナミックな極めを持つハイサムが、真のコンプリート・グラップラーとなるためにはまさに最善の選択だろう。

持ち前の明るい性格であっという間にチームに溶けこみ、また道場前に駐車した自分の車を荒らす泥棒を追いかけ、素手で取り押さえるという経験までしたというハイサムは、今回が移籍後初戦となる。本人も語るように、わずか数ヶ月の練習で全てが劇的に変わるものではないだろうが、ガーナ生まれの少年が、日本~デトロイト~テキサスと移動し世界の頂点を目指す旅の新章の幕開けとして、今大会は注目だ。

そしてこのトーナメントには、ハイサムを受け入れたB-Teamの重量級エース、ニック・ロドリゲスもエントリーしている。ハイサムの加入について「僕と同体格で、同じように高い身体能力を持ったパートナーが得られて最高さ。ハイサムは自分のエゴを試合では勝つために上手く使うけど、練習ではシャットダウンし、いつも笑っているんだ」と大歓迎の様子だ。

前回大会で世界最強のグラップラー、ゴードン・ライアン相手にOTに持ち込み、eエスケープタイム時間差で敗れたもののチョークを極めかける場面を作ったロドリゲスが本命であることは間違いない。

チーム加入前、練習に訪れたハイサムとのスパーリング動画が公開されているが、そこでは──あくまでお互い、勝ち負けではなく技術の向上を目指した手合わせにおいて──ロドリゲスがボディロックからパス、マウントを奪い上からの三角で極めているシーンがある。今回ハイサムとの同門対決が実現した場合、お互い手の内を知り尽くしているからこそ、当時よりさらにステージの上がった攻防を期待したいところだ。

さらに直前になって、ペドロ・ホシャに代わりロベルト・ヒメネスがエントリーされたこともこのトーナメントの期待感を増している。どのポジションからもダイナミックに極めを狙いにゆくヒメネスと、同様のスタイルを最重量級で実践するハイサムの対戦が実現すれば、好勝負となることは必至だ。

他にも世界王者レベルのグラップラーたちが続々と名を連ねるこのトーナメントでは、ジョン・ダナハー門下の22歳の巨漢ジョン・マナスー、10th Planetセントペテルスブルグ支部のヒョードル・ニコラスといった新顔の戦いぶりにも注目だ。

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
6月30日(金・日本時間)
午前10時00分~UFC FIGHT PASS

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CJJW2023#01 MMA MMAPLANET o UNRIVALED UNRIVALED02 YouTube アンドリュー・タケット カレイオ・ロメロ コンバット柔術 ゴードン・ライアン デイヴィス・アソーリ

Overlooked【CJJW2023#01】アンドリュー・タケット、掌底有りでも快進撃。脅威の紫帯アソーリに完勝

諸事情で見逃した試合を月末にお伝えする──帳尻合わせ試合レポート。ここでは26日(日・現地時間)、メキシコはキンタナ・ロー州プラヤ・デル・カルメンのポリフォルム・プラヤ・デル・カルメンで開催されたCombat Jiu-Jitsu World Welterweightからアンドリュー・タケットの初戦~準決勝までの3試合をお届けしたい。

Unrivaled02で、その実力のほどを見せつけたスーパーティンエイジャーが、来日時に公言していたようにコンバット柔術ワールドに出場。初戦の相手はMMAで2勝2敗の黒帯柔術家ニコラス・ウィリーだ。


<ウェルター級T1回戦/10分1R>
アンドリュー・タケット(米国)
Def.2分28秒 by RNC
ニコラス・ウィリー(米国)

ダブルレッグでテイクダウンを奪ったタケットは、足を捌いて掌底を落としパスの圧力を高める。足を捌かれると同時にウィリーが腹ばいになりシングルレッグへ、タケットはがぶって立ち上がると試合はマットに中央に戻される。頭を抱えたままの大内刈りは失敗したタケットが、続くシングルを逆にウィリーにがぶられる。スナップダウンの際に、頭を抜いたタケットが直後にダブルレッグでテイクダウンを奪うと、掌底を入れてパスへ。背中を見せたウィリーをボディトライアングルに捕え、後方から叩いていく。

フリーズからマット中央に試合が移動し、タケットは右腕をアゴの上から押し付けてRNグリップ──タップを奪った。期待通りの強さを見せたタケットは、準々決勝でOTのエスケープタイムでブルーノ・カネッティを破ったボビー・エモンズと相対することとなった。

<ウェルター級T準々決勝/10分1R>
アンドリュー・タケット(米国)
Def.1分28秒 by RNC
ボビー・エモンズ(米国)

ナイスガイ・サブミッションを主催するBJJ黒帯のエモンズは、スタンドでがぶられそうになり引き込む。そこからのスイープを防いだタケットが、左の掌底を落とすとエモンズが立ち上がる。すぐに引き込みバタフライガードを取ろうとしたエモンズだが、タケットは足を捌いて左右の掌底を見せる。エモンズが一瞬、上体を起こした隙を見逃さず驚速のパスからバックに回ったタケットはボディトライアングル→掌底、右手でリストをコントロールし左腕を喉下に滑り込ませる。そのままRNCを完成させて2試合連続で一本勝ちを決めた。

続くクォーターファイナル第2試合でマイキー・ゴンザレスを62秒、ストレートフットロック(EBIではストレートアンクルロックと呼ばれている)で一蹴したデイヴィス・アソーリが、タケットと準決勝で戦うことになった。

<ウェルター級T準々決勝/10分1R>
アンドリュー・タケット(米国)
Def.2分19秒 by RNC
デイヴィス・アソーリ(ノルウェイ)

初戦ではカレイオ・ロメロをスタンディングのRNCで破り、上記にあるように準々決勝でアキレス腱固めと共に一本勝ちのアソーリはアフリカ系ノルウェイ人選手で、ニューウェイブ柔術の紫帯、昨年のノーギワールズではブロンズメダルを獲得している。

今年の1月に練習でゴードン・ライアンを絞め落とし、そのことをゴードン自身がSNSで発信したことで、アソーリはその名がより知れ渡った。そのアソーリ、まずタケットのダブルレッグをスプロールし、続くシングルもかわすと逆にシングルレッグを狙っていく。これをすかしたタケットががぶると、取られた首を支点に背負いで投げるなど、アソーリがフィジカルの強さを序盤から見せる。

すぐにスタンドに戻った両者、タケットはシングルで飛び込んで足を取ると即ボディロック、そしてバックに回り前転も、アソーリは素早く反応して50/50を取りに行く。ここでタケットは迷うことなく掌底を打ち下ろし、足を抜いて平手ではなくしっかりと手の付け根の固い部分をアソーリの顔面に打ち込む。

ストレートフットロックを狙い、腹ばいになったアソーリに掌底を続けるタケットは、足を抜かれると、担ぎパスからバックを制し、四の字フック──と同時にRNCをセットして、笑顔で決勝進出を決めた。

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JT・トレス MMA MMAPLANET o ONE UNRIVALED UNRIVALED02 WNO18 ゴードン・ライアン ジャンカルロ・ボドニ ニック・ロドリゲス ペドロ・マリーニョ

【WNO18】Unraivaledの同時刻、米国ではニッキー・ロッド×プレギーサ、ボドニがLH級王座挑戦

【写真】ボドニのグラップリングは、今一番見逃せない。まさに格闘を想わせるグラップリングだ(C)SATOSHI NARITA

25日(土・現地時間)、日本時間で26日のUNRIVALED02とか重なった時刻にWNO18が開催中だ。

メインでは因縁のゴードン・ライアン×フィリッピ・ペナが組まれる予定だったが、大会2日前にゴードンの体調不良で、ニック・ロドリゲスの代替出場が決まり、30分のヘビー級王座決定戦が組まれることとなった。

コメインではライトヘビー級王者ペドロ・マリーニョに、現代グラップリングの完成形ことジャンカルロ・ボドニが挑む一戦。さらにJT・トレスがWNO初出場──マジット・ヘイジと対戦する。

現在のグラップリング界も盛り上がりに多いに寄与したWNOだが、ONEに人材を吸い上げられたことは否定できない。それでも米国がホームの強味、ワンマッチ制プロ・グラップリングイベントでナンバーワンの座は譲らない、そんな意気込みが感じられる注目のカードが並んでいる。

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LFA MMA MMAPLANET o UFC UFN217 アブドゥル・ラザク アラン・ナシメント ウマル・ヌルマゴメドフ カーロス・ヘルナンデス キック ケトレン・ヴィエイラ コンバット柔術 ゴードン・ライアン ショーン・ストリックランド ジミー・フリック ジャビッド・バシャラット ダニエル・アルゲータ ダン・イゲ デイヴィソン・フィゲイレド デミアン・マイア ナソーディン・イマボフ ハオーニ・バルセロス ブラジリアン柔術 プリシーラ・カショエイラ マテウス・メンドンサ マンド・グティエレス ライカ ロマン・コピロフ

【UFN217】燃え尽き症候群からの復活。組み技でエンタメするフリック「カビブ・マイア・ミックス!!」

【写真】1年以上体を動かさなかった影響はあるのか。それともエンタメ・グラップリングは健在か(C)MMAPLANET

14日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFN217:UFN on ESPN+75「Stricklandr vs Imavov」でジミー・フリックスが、2年1カ月振りにカムバックする。

(C)LFA

2020年7月、コロナ禍から最スタートを切ったLFAで、見事な流れのなかで肩固めを極めてフライ級王者となったフリックは、9月のコンテンダーシリーズでも肩固めを極めてUFCとの契約を勝ち取った

そして、オクタゴン初陣となったコディー・ダーデン戦では左ハイをキャッチされ、そのまま跳びつき三角を極めた。グラップリングでエンタメできるフリックだが、なんと2戦目が決まっていながら、突然の引退を発表してMMAを去った。

あれから1年7カ月、ついに戦いの場に戻ってきたフリックをインタビュー。突然の引退と復帰の理由、そして独特のグラップリングについて尋ねた。


(C)Zuffa/UFC

──昨年4月、5月に試合が決まっていながら引退発言をしてUFCから去ったジミーが、今回カムバックしたことが非常に嬉しいです。

あのLFAフライ級のベルトを賭けて戦ったマンド・グティエレス戦、コンテンダーシリーズのネイト・スミス戦、そしてUFC初陣となったコディー・ダーデン戦の素晴らしい極めがまた見られるのかと思うと。そもそも、なぜジミーは引退を決意したのでしょうか。

「今も説明することは難しいんだけど、自分の人生を見つめ直すと戦う情熱を失ってしまったんだよ。ずっと以前に結婚して、10歳と5歳の子供もいる。フルタイムジョブに就きながらフルタイム・ファイターのように練習していた。ちょっと、その状況に疲れてしまって、このスポーツからフェイドアウトしたいと思うようになったんだ。

もうジムでのトレーニングもこりごり、練習もしたくなくなった。そして家族と同じ時間を過ごしたいと考えるようになったんだ。引退したことは全く後悔していないし、1年8カ月経ってまた戻ってきたということだよ」

──UFCファイターになろうとしている日本人選手たちは、UFCと契約するとファイトマネーとスポンサーマネーで生活ができるようになると思って懸命に練習しているので、それはショッキングな話です。

「例えばだよ、今週の土曜日の試合で負けたりしたら、税金や諸々を引かれて僕が手にできるのは6000ドルだ。たったそれだけなんだ。妻と子供がいて、数カ月に1度の試合でこれだけの収入ではとてもやっていけない。

UFCデビュー戦では5万ドルのボーナスも手にしたけど、それでもフルタイムジョブが必要だった。MMAに専念しようにも、家族がいるからそれは無理な話だよ。だから、このスポーツへのパッションを失ったんだ」

──この間、趣味としても練習をすることはなかったのですか。

「ノー、ランニングすらしなかったよ。全てを辞めたんだ。17歳から15年近くずっとやってきて、休むことが必要だと思っていた。18歳でMMAを始めて、アマチュアで7勝0敗。プロでは16勝5敗、キックとムエタイ、それにグラップリングも戦ってきた。やりたいことをやってきた結果だし、ずっと戦ってきたことも1度リタイアしたことも何も悔いはない」

──MMAは引退しても、柔術を続ける。そういう感じの選手は日本にも多いですが、全く格闘技を断ち切ってしまったのですね。

「いずれは柔術をやろうとか考えるようになったかもしれないけど、引退を決めた時は、何もやる気はなかったよ。柔術もしたくなかった」

──また戦いたいと思ったのは?

「去年の7月かな。ドラッグテストにパスして、UFCに戻って来ることにしたんだ。5週間前に仕事も辞めた。スポンサーマネーで生活が保障されるようになったから、フルタイム・ファイターとして今はやっていける。人生を変えることができたんだ。

凄くハッピーだし、今も僕がフライ級でベストの1人だと証明したい。パッションを取り戻したいし、UFCが戻ることに合意してくれて嬉しかったよ。今回の試合では、父がコーナーに就くんだ。5年振りだよ、父がコーナーにいるのは。色々なことが、また元通りになってきた。

フライ級は過去最高に盛り上がっている。このタイミングでカムバックできたのも幸運だ。僕の試合の1週間後には世界タイトル戦、デイヴィソン・フィゲイレドとブランド・モレノ04がある。この場で戦っていること、自分の力を皆に披露できることに胸が躍る気分だよ」

──今も寝技には厳しい目があるなかで、ジミーのレスリング&柔術=グラップリングはエンターテイメントファイトになるものでした。その再現は可能でしょうか。

「僕は自分のスタイルをカビブ&マイア・ミックスと呼んでいる。カビブのレスリングでグラウンドに持ち込み、デミアン・マイアの柔術で仕留める。それがジミー・ブリック・フリックスのグラップリングだ。土曜日の夜には、しっかりと僕の戦いを皆に見てもらうよ」

──ジミーは柔術とレスリング、どちらがベースだったのですか。

「3歳の時にレスリングを始めた。17歳までレスリング漬けだった。5度の州ランナーアップ、ナショナル、それにワールドでも戦ってきた。世界中でレッスルした。それからブラジリアン柔術を習い、2012年に黒帯になった。僕のようにレスリングと柔術を使いこなす選手は他にいないよ」

──グラップラーとして、ADCCワールズでライアン・ゴードン、ルオトロ兄弟が魅せるグラップリングで組み技競技の新しい見方を示しました。米国のファンのグラップリングに対する見方は変わって来ると思いますか。

「そう願っているよ。でも、僕は日本で戦いたいと思っている。僕は寝技の選手だし、そういう試合をするうえで最高のファンは日本のファンだと知っているから。グラウンドの攻防を固唾を飲んで見守ってくれるのは、日本のファンだけだ。僕が試合をするのに、最も適しているのは日本だよ。

ただ米国のファンもプログラップリングのショーが増え、UFC FIGHT PASSで視聴できるようになったから変わってはきているよ。僕もオープンハンドのスラップリングが認められたグラップリングの試合に出てみたい」

──おおコンバット柔術ですか。

「そう、コンバット柔術だ。エディ・ブラボーは僕にとって最高の戦いの場を作ってくれたよ。絶対にコンバット柔術を戦うよ。できれば、自分より重い相手と戦って、自分の柔術を試してみたいんだ。サブオンリーだと、30ポンドや40ポンド重い相手でも構わない。さすがに200ポンドの相手戦うようなオールドスクールのやり方は難しいだろう。それでも、少しでも大きな相手をぶっ壊す。そんな戦いにチャレンジしたいんだ。

コンバット柔術なら、自分の階級で戦いたい。グラップリングならゴードン・ライアンでも構わない。自分の柔術がどれだけのモノが試すんだ。柔術が好きでたまらないから」

──もちろん、今はチャールス・ジョンソンに集中しないといけないです。

「コンテンダーシリーズ、UFCのデビュー戦で見せたような試合をチャールス・ジョンソンを相手に再現したい。と同時に打撃の上手い彼を相手に、僕の立ち技を見せたい。誰も僕の打撃を軽視させないようにするために。とにかく相手の心を折る。そういう戦いにするつもりだ」

──カビブ・マイア・ミックスを実行するなら、ジョンソンが得意にする首相撲やヒザ蹴りには要注意が必要ですね。

「経験豊かなストライカーだからね。でも考え過ぎずに、テイクダウンを狙う前に打撃で突破口を開こうかと考えている。そして打撃と組み技も混ぜて戦い、僕のMMAファイターとしての能力を皆に見てほしいと思っている」

──ジミー、今日はありがとうございました。最後に日本のファンに一言お願いします。

「まずインタビューをしてくれてありがとう。そして日本ファン、グラップリングを愛する皆、ジミー・ブリックス・フリックに注目してほしい。ブラジリアン柔術黒帯の僕は、16の勝利のうち一本勝ちは14回だ。アマ7戦は、全ての相手をサブミットしてきた。6試合が初回だった。フライング・トライアングル、腕十字、肩固め、全ての位置で柔術を使って戦うから、しっかりと僕の試合を見てほしい」

■視聴方法(予定)
1月15日(日・日本時間)
午前6 時00分~UFC FIGHT PASS

■UFN217対戦カード

<ミドル級/5分5R>
ショーン・ストリックランド(米国)
ナソーディン・イマボフ(フランス)

<フェザー級/5分3R>
ダン・イゲ(米国)
デイモン・ジャクソン(米国)

<ミドル級/5分3R>
プナヘラ・ソリアーノ(米国)
ロマン・コピロフ(ロシア)

<女子バンタム級/5分3R>
ケトレン・ヴィエイラ(ブラジル)
ラケル・ペニントン(米国)

<バンタム級/5分3R>
ウマル・ヌルマゴメドフ(ロシア)
ハオーニ・バルセロス(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
アブドゥル・ラザク(米国)
クラウジオ・ヒベイロ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
マテウス・レンベツキ(ポーランド)
ニック・フィオーリ(米国)

<バンタム級/5分3R>
マテウス・メンドンサ(ブラジル)
ジャビッド・バシャラット(英国)

<フライ級/5分3R>
アラン・ナシメント(ブラジル)
カーロス・ヘルナンデス(米国)

<フェザー級/5分3R>
ダニエル・アルゲータ(米国)
ニック・アギーレ(米国)

<フライ級/5分3R>
ジミー・フリック(米国)
チャールス・ジョンソン(米国)

<女子フライ級/5分3R>
プリシーラ・カショエイラ(ブラジル)
シジャラー・ユーバンクス(米国)

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o   アンドレ・ガルバォン ゴードン・ライアン

お蔵入り厳禁【ADCC2022】ゴードン・ライアン、スーパーファイトでガルバォンを圧倒。RNCを極める

【写真】ゴードンの圧倒的な強さを引き出しのは、ガルバォンの頑張りだった(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。最終回は――お蔵入り厳禁、アンドレ・ガルバォンとゴードン・ライアンのスーパーファイト・タイトルマッチの模様をお伝えしたい。


大会の目玉であるスーパーファイトは、2013年にブラウリオ・エスティマを下しスーパーファイト王座に就いて以来、3度防衛に成功しているアンドレ・ガルバォンと、前回大会の階級別と無差別を完全制覇し、今回も最重量級を圧勝したゴードン・ライアンの一戦だ。

ガルバォンは当初引退を宣言していたが、王冠とマントを纏う傲慢不遜な「キング」を名乗るゴードン──グラップリングというマイナースポーツで名を売るためには何が必要かと考え、このキャラクター創造に至ったと自ら語っている──は、SNSを用いてガルバォンや門下生たちへの挑発を開始。両者の仲は険悪化し、昨年の2月のWNO大会後にはゴードンがガルバォンに張り手を浴びせ、あわや乱闘勃発かという騒ぎにまで発展した。

ゴードンはその後、長年悩まされていた胃腸不全の悪化のため競技からの無期限撤退の発表を余儀なくされた。が、ADCC大会の統括モー・ジャズム紹介の医師のおかげで症状が改善して復活。片や「下らない遺恨は忘れよう。僕はゴードンを許す」と宣言したガルバォンの方も、引退を撤回し対戦を決意。ついに両者の一戦が実現の運びとなった。

なおガルバォンは、今回の大会前に受けたインタビューにて「僕はゴードンのSNS攻撃の罠に嵌り、精神がダークサイドに堕ちてしまっていた。毎日何時間もスマートフォンを眺めて夜も眠れなくなり、神の道から離れてしまっていた」と告白している。

競技者のメンタルをリアルに蝕む、SNS時代ならではのストーリー展開を経て──事前の予想は圧倒的にゴードン有利で、勝負論的な興味は薄いと思われた──この試合は「グラップリング史上最大の注目を集める戦い」と呼ばれるものとなった。

<スーパーファイト/20分1R>
ゴードン・ライアン(米国)
Def.16分4秒 by RNC
アンドレ・ガルバォン(ブラジル)

超巨大スクリーンに作り込まれた煽りビデオが流され、ド派手な火花が舞うなかレニー・ハートのコール(残念ながら段取りにミスがありタイミングがずれてしまっていたが)で入場した両者。

さらにブルース・バッファーが改めて両者の名をコールし、最高潮の盛り上がりのなかで試合は開始された。

握手を交わした後、気合十分のガルバォンはまるで相撲の突っ張りのようにゴードンの胸を押す。さらに──以前もらった張り手のお返しと言わんばかりに──ゴードンの顔に右の掌打。ゴードンは苦笑し、ガルバォンはレフェリーから注意を受けた。

その後ハンドファイティングが続いた後、ガルバォンがダブルレッグに入ると、ゴードンは抵抗せずあっさり倒れる。

座ったゴードンは、すぐにガルバォンの股間に両足を入れて開かせ、右足を抱えて引き寄せると、そのまま足を絡めて外ヒール狙いへ。

しかしガルバォンはすぐに反応し、ゴードンの足を押し下げながら勢いよくスピンし、支点をずらして足を抜いてみせた。

次にゴードンはガルバォンの右足にハーフで絡み、逆に左足に外掛け。が、ガルバォンはゴードンの左足を両手で掴んで勢いよく足を抜く。階級別の準決勝、決勝と相手がいくらエスケープを試みてもまったく離れなかったゴードンの足の絡みから、ガルバォンは2度逃れてみせた。

再びシッティングで近づいたゴードンは、ガルバォンの右足を引き寄せて絡めると、左かかとを掴んで後ろに倒す。

スクランブルを試みるガルバォンだが、一歩先をゆくゴードンは立ち上がってガルの右足をホールドして崩し、すぐに背後に付いてボディロックを取った。

すぐに立ち上がるガルバォン、ゴードンはその足を払ってグラウンドに。

上を取りに来るゴードンをガルバォンはバタブライで跳ね上げるが、ゴードンはバランスキープ。上の体勢を確立した。足関節だけではなく、スクランブルの攻防でも動きに隙がないのがゴードンだ。

ガルバォンは下からゴードンの体を浮かせて左足を引き出すが、ゴードンはバランスを保って足を抜く。立ち上がったゴードンの右足にガルバォンが浅いデラヒーバを作ると、ゴードンは低く体を預け、ガルバォンの右足を押し下げ、さらに左足に体重をかけて潰してゆく。ハーフの体勢になったガルバォンは、左足のシールドとスティッフアームでその侵攻に耐える。

その後、ガルバォンはなんとか距離を作ろうとするが、ゴードンはそれを許さず巨体でじっくり圧力をかけていった。

6分経過時点、ガルバォンはバタフライに戻すことに成功。が、ゴードンはすかさずボディロックを作って体重をかけてガルバォンの腰を固定。その後ゴードンは自らの腰を上げて改めてガルバォンの左足に体重をかけ、右足を押し下げる形で侵攻を再開した。

やがてハーフに入ったゴードンは、ガルバォンの腕のフレームを突破し、胸を合わせることに成功。さらに左ワキを取るゴードン。が、ガルバォンもここは差し返す。

慌てず騒がずじっくりとプレッシャーをかけてゆくゴードンは、再び左ワキを差して攻め上がる。枕を取りガルバォンの首を巨大な上半身で圧迫するゴードンは、やがて絡まれた右足を抜くが、次の瞬間ガルバォンは動いてまたハーフに戻してみせた。

残り11分。胸を合わせたゴードンは、ワキを制しガルバォンの上半身を完全に殺した状態でじっくりと体重をかけてゆく。やがて右足をヒザまで抜いたゴードンは、いつでもマウントを取れる状態に。が、ここで一度動きを止め、加点時間帯の開始を待ってからマウントに移行し、3点を先制した。

ガルバォンは下からなんとか体をずらすが、ゴードンはそれに乗じてバックを奪い、完全にガルバォンの体を潰した上で襷のグリップを作りさらに3点追加。さらにガルバォンの体を起こして、ボディトライアングルに移行した。その右手はガルバォンの右腕を制している。

こうして完全コントロールを奪ったゴードンは、そこからじっくりとチョークを狙う。諦めないガルバォンはなんとか体を動かすが、サイドが変わるたびに足のフックを入れ替えてゴードンは点を重ねてゆく。

やがてゴードンは自らの左足でガルバォンの左腕を完全に固定。さらに右腕でガルバォンの右腕も制すると、残った左腕で無防備になったガルバォンの顔面を圧迫するが、ガルバォンは意地でも首を開けようとしない。ゴードンはさらに右腕のホールドを解いて、両腕を使って片腕のガルバォンのディフェンスを崩しにかかる。

完全に余裕のある表情のゴードンは、アゴの上からの絞めやネッククランク等を試みるが、ガルバォンは諦めずに耐え続ける。ガルバォンは何とか体をずらそうとするが、ゴードンはそれを許さない。

やがてゴードンは、右腕の手首の細い部分を利用して首にねじ込む。たまらず仰向けになって最後の抵抗を試みるガルバォンだが腕が深く入ってしまい、残り4分の時点でとうとうタップした。

技を解いて座ったゴードンは、優しい微笑みを浮かべてガルバォンに握手を求め、それに応じたガルバォンにハグ。さらに首を抱き合い語り合う両者を、場内は暖かい歓声で称えた。

勝ち名乗りを受けた後、ガルバォンの手を上げてみせるゴードン。両者の3年越しの長い戦い──特にガルバォンにとっては精神を削られた辛い戦い──は、ついに終焉を迎えた。

大方の予想通りゴードンの完勝に終わったこの試合。が、地上最強最強のグラップラー、ゴードン・ライアンの無類の強さ、動きの隙のなさが、──足関節だけでなく、スクランブル、パスガード、コントロール、極めと多彩な局面において──存分に堪能できるものとなった。それを引き出したのは、ゴードンの足狙いを凌ぎ、不利な体勢に追い込まれても抵抗を続けたガルバォンの不屈の闘志に他ならない。

試合後、ケニー・フロリアンから勝利者インタビューを受けたゴードンは「俺はアンドレのことを悪く思ったことなんて一度もなかったさ。まあちょっとした揉め事や言い合いがあっただけだよ。リスペクトしているし、俺は彼の半分もタイトルを持っていない。彼の最後の相手として、そのレガシーの一部に加われるなら光栄だ。だからサンキュー、アンドレ!」と、今までガルバォンにしてきた数々の酷すぎる仕打ちはいったい何だったのか、とツッコミたくなるようにコメントした。

さらに胃腸の調子について尋ねられると「だいたい70パーセントくらいかな。前よりはいいけど、100パーセントとは言えないよ」と語ったゴードンは、99キロ超級での戦いについて尋ねられると「調子は良かったよ。ポイントはエネルギーの使い方だった。フレッシュなアンドレとの試合が、ハードでフィジカルなものになることは分かっていたからね。階級別の準決勝決勝は合計3分くらいで終えることができたから、ゲームプランをうまく実行できたよ」と振り返った。

続いて次の目標について聞かれると「今回はいい試合ができたけど、でもパーフェクトではなかった。全試合サブミッションは取れなかったからね。それに俺は、フィリぺのこともボコボコにしなくてはならないんだ。だからファンが求めて、主催者のモーが同意してくれるなら…今から20-30分くらい奴にウォームアップする時間をやるし、俺は(奴と違って)これ以上の金を請求したりしない。だからフェリペよ、やるぞ! 今からだ。もうファッキンな言い訳はなしだ!」と、──今回最大のライバルと目されながら、準決勝敗退に終わった──フィリッピ・ペナを挑発。スーパーファイトと無差別級の両方を制し、ADCC至上初の快挙を達成してなお貪欲に戦いを求める姿勢を見せた。

一方敗れたガルバォンは以下のように話した。

「みんなありがとう。試合に向けてすごくいい準備ができたよ。今回は16週間と長めに準備期間を取ったんだ。でも練習開始して4週間のところでヒザの靭帯と半月板と損傷してしまった。それから出来る限りの治療をして試合に臨んだよ。まだヒザは少しぐらついていたし、キャンプ中もヒザが悪いからガードの練習ができなかった。

だから、この試合で唯一なってはいけないのは下になることだと分かってはいた。ゴードンはプレッシャーも強いし、力もすごく強い。ゴードンは今、全盛期だ。片や僕は39歳で、04年からADCCに参加しているんだ(04年に予選に初参加、本戦出場は07年から)。いや、言い訳はしない。この試合を受けたのは僕だし、いい試合が出来ると思っていた。

しかし残念ながら怪我が少し障害となってしまった。でも、生徒たちはみんなサポートしてくれたよ。彼らの多くが試合をするべきじゃないと言ってくれたけど、僕は一度試合を受けた以上は、やるべきだと答えたんだ。僕は、前回大会のペナとの試合のときにこれが最後だと言った。でも僕の最後の試合がいつなのかを知っているのは、神だけなんだ。神が僕をこのマットに戻してくださった。それには理由があるはずだ。

ゴードンとは試合前にいろいろあったけど、あれは僕も悪かった。僕はあの頃、人生においてとてもダークなプレイスにいたから。でも、この試合に向けて王者らしく準備することができた。ATOSにいる多くの王者たちとともにね。試合はベストを尽くしたけど、ゴードンはリーチも長かったし、でかくて強かった。ゴードンおめでとう。これからも幸運を祈るよ。

みんなありがとう。そして僕もここを去る前に…、まだこれができるんだ! (と、6本指を立てて、合計6度のADCC優勝&スーパーファイト勝利のサインを作ってみせた)。僕は、ゴードンとさっきここで話すことができて本当に嬉しいよ。ものごとは、こうあるべきなんだ。邪悪さに対して邪悪さで応じてはいけないんだ。主よ、感謝します。人生において、僕に教えてくださった全てのことに対して」

一時はゴードンのSNS攻撃に精神を蝕まれ道を踏み外しかけたレジェンドは、自分を取り戻して最強最大の敵に堂々と挑み、そして敗れることで大いなる赦しを得たかのようだった。

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お蔵入り厳禁【ADCC2022】無差別級 古豪ユーリ・シモエスがスタンド磨いてオープンクラスを制す

【写真】いうとルオトロ兄弟や一部の新世代が特別で。シモエスの勝ち方こそ、ザADCC。ただしジェネラルに理解を求めることは難しい古典的グラップリングだ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第22回は――お蔵入り厳禁、無差別級決勝戦の模様をお伝えしたい。


88キロ以下級の体格で快進撃を見せた19歳タイ・ルオトロを、ニコラス・メレガリが激闘の末にレフェリー判定で制して決勝進出を決めた無差別級。もう一つの準決勝を戦ったのは、ベテランのユーリ・シモエスとサイボーグことホベルト・アブレウだった。

シモエスは1回戦、前回大会の無差別級で重量級を次々と足関節で仕留める大活躍を見せたラクラン・ジャイルスと対戦。ジャイルスの下からの仕掛けに対し、腰を引いて丁寧に潰して延長に持ち込み――ペナルティを承知で引き込んだジャイルスの仕掛けを潰し続けて勝利した。

猛威を振るった技術はすぐに研究されるという、競技における技術進化の必然を改めて確認させられたジャイエルスの敗退だった。

シモエスの2回戦の相手は、最重量級準優勝を果たしたニック・ロドリゲス。両者は昨年3月のWNO大会でも対戦しており、その時は引き込んで下を選択したシモエスは、ロドリゲスにボディロックを作られパスを許して完敗している。その教訓を生かしてか、今回シモエスは気迫を全面に出してのスタンドレスリングでの勝負を選択。本戦、延長と両者決定的な場面こそ作れなかったものの、積極性で勝って勝ったシモエスがレフェリー判定を制してリベンジを果たした。

迎えた準決勝でシモエスを待っていたのは、やはり最重量級のサイボーグことホベルト・アブレウ。サイボーグは前戦にてヴィクトー・ウゴの巨体を足払いで崩してから引き倒し、ワキをすくって上を奪取する形でテイクダウンポイントを獲得して制しての準決勝進出だ。

ちなみにそのウゴの初戦の相手は、最軽量級のファブリシオ・アンドレイだった。この最重量級vs最軽量級の超体重差対決にて、序盤はダックアンダーからのテイクダウンを許す場面もあったウゴだが、終盤ファブリシオの側転パスに乗じて上を奪取。巨体を浴びせての肩固めで勝利した。

2013年の無差別級を制したサイボーグと、2015年の88キロ以下級、2017年の99キロ以下級を制覇したシモエス。ADCCレジェンド対決となった準決勝は、スタンドレスリングでお互い譲らぬ展開に。

が、気力&スタミナともに充実したシモエスが延長戦でダブルレッグを決め、2-0で改良した。こうしてシモエスは決勝進出。前日の99キロ以下級の二回戦にて、微妙なレフェリー判定の末に苦杯を舐めさせられたニコラス・メレガリ相手にリベンジのチャンスを得たのだった。

<無差別級決勝/20分1R・延長10分x2R>
ユーリ・シモエス(ブラジル)
本戦0-0 マイナスポイント1-2
ニコラス・メレガリ(ブラジル)

試合開始直後、気合十分のシモエスが前進。跳びついてメレガリの首を取って崩しにかかり、さらに勢いよく足を飛ばす。さらに前に出るシモエスは、右のフック掌打のような勢いでメレガリの頭に手を伸ばして、レフェリーから注意を受けた。

3分弱経過した時点で、シモエスは素早い小内刈りからのシングルに入り、メレガリの右足を抱える。片足立ちでそれを堪えたメレガリは、落ち着いた表情で引き込んでハーフガードに。まだ後半の加点時間帯に入っていないので、通常のADCCルールの試合ならば問題ない判断だ。

しかし決勝戦は引き込みのマイナスポイントは最初から付いてしまう。ここを失念していたのか、メレガリは引き込まずとも、シモエスのテイクダウンに身を任せる形で倒れれば無失点で下のポジションを取れただけに、なんともマイナスポイントとなった。

その後は上からパスを試みるシモエスと、下から足を効かせるメレガリの攻防が続く。6分少々経過したところで、立ち上がったシモエスの左足にデラヒーバで絡んだメレガリは、内側からシモエスの右足をすくって体勢を崩してからシットアップ。

見事に上のポジションを取ってみせたが、まだ加点時間帯ではないのでポイントは得られず。自ら引き込んでスイープを決めたのにポイントで負けているというのは、おそらくADCCの決勝以外ではあり得ない状況だろう。

とまれ、ここからはメレガリがトップから攻めるターンに。しきりに右のニースライスでプレッシャーをかけていったメレガリは、やがてハーフで胸を合わせてシモエスを抑え込み、枕を作ることに成功した。

そこから足を抜きにかかるメレガリ。シモエスは腕のフレームと足を利かせて一度距離を作ることに成功したが、メレガリはすぐに体重をかけてシモエスの体を二つ折りにし、後転を余儀なくさせて再びハーフ上のポジションに入った。

加点時間開始が近づいたところで、一旦上体を起こしてニースライスを試みるメレガリ。が、シモエスは左のニーシールドで防ぎ、さらにかついで来るメレガリの体を足で勢いよく押し返して立ち上がってみせた。ここでちょうど10分が経過し、加点時間帯が開始。シモエスはマイナスポイント一つ分有利な形で、得意分野であるスタンドからのリスタートに持ち込んだことになる。

ここから試合はスタンドレスリングの攻防に。シモエスは前に出て、腰高のメレガリの右足を取っては押してゆく。そのたびに片足立ちで耐えて、やがて足を振りほどくメレガリ。テイクダウンこそされないものの、展開が作れないまま時間が過ぎていった。

残り6分少々の時点で、このままでは埒が明かないと見たかメレガリが引き込み、2つ目のマイナスポイントを受けることに。得意のオープンガードから仕掛けたいメレガリだが、このままリードを保てば勝てるシモエスは低い姿勢で対応。浅く片足担ぎの形を作るなどしてメレガリの攻撃を防いでゆく。

その後もシモエスは腰を引いてメレガリに足を深く絡ませず、たまに立ち上がって横に動き、またニースライスを仕掛けてマイナスポイントを回避する。メレガリはたまにシモエスの片足を引き寄せるが、その度にシモエスはすぐに立ち上がって距離を取る。メレガリとしては思うように形が作れないなか、時間が過ぎていった。

残り1分。シモエスは低く入る両足担ぎと片足担ぎでメレガリに攻撃をさせない。メレガリがシッティングを試みると、すかさず上半身を浴びせて潰すシモエス。終了寸前にシモエスに一つマイナスポイントが入るが、時すでに遅し。

結局マイナスポイントが1つ少なかったシモエスが、階級別2回戦のリベンジを果たすとともに、2015年の88キロ以下級、2017年の99キロ以下級に続いて3階級制覇を果たした。メレガリとしては、序盤に犯した痛恨のミステイク──ADCC決勝戦のみ適用されるルールへの対応を間違えて引き込み、マイナスポイントをもらってしまったこと──が、最後まで響いた形となった。

戦前は大きく注目されていなかったベテラン、シモエスが執念の優勝。戦いぶりは決して派手ではなく、実際無差別級の4試合は全て僅差のポイントかレフェリー判定での勝利だ。しかし相手が誰であれ常に前に出続けた、その気迫とコンディショニングの充実ぶりは際立っていた。

またスタンドレスリングではニック・ロドリゲスにすらテイクダウンを許さず、トップでは安定したベースを保ち相手の仕掛けを遮断し、下になってもメレガリのプレッシャーに耐え、パスを許さずにスタンドに戻る粘り強さを見せる等、ポジショニングの全ての面で強さを発揮したことも勝因だろう。

次回大会のスーパーファイトで当たるゴードン・ライアンには、過去4戦4敗と圧倒的に分の悪いシモエス。彼らの初対決は、16年のEBI 6準決勝だ。その前年のADCCで世界の頂点に輝いていたシモエスは、当時まだ線の細かった若手のゴードンにOTでチョークを極められ、まさかの敗退を喫している。ゴードン・ライアンに初のジャイアントキリングを許し、大ブレイクのきっかけを作ったのがシモエスというわけだ。

そのシモエスは、今や世界最強のグラップラーの名を欲しいままにするゴードンにどう挑むのか。両者の力関係が完全に入れ替わった現在、6年前の番狂わせとは比較にならないほどの世紀の大アップセットを、気迫のファイターシモエスは起こすことができるだろうか。

なお、3位決定戦はサイボーグが棄権したため、タイ・ルオトロが3位に。前回大会にて若干16歳で66キロ以下級に参戦し、ブルーノ・フラザト、パブロ・マントヴァーニという同門の先輩二人を倒して4位入賞したのに続いて、19歳の今回は88キロ以下級の体格で無差別級銅メダル。2大会続けての快挙達成となった。

■無差別級リザルト
優勝 ユーリ・シモエス(ブラジル)
準優勝 ニコラス・メレガリ(ブラジル)
3位 タイ・ルオトロ(米国)

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