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Interview Special シャノン・ウィラチャイ ファビオ・ピンカ ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:8月─その弐─ウィラチャイ×ピンカ「ウィラチャイ勝利は救い」

【写真】このスピニングバックフィストが当たるのもMMAならでは (C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年8月の一番、第3 弾は21日に中継されたONE No Surrender IIIからシャノン・ウィラチャイ✖ファビオ・ピンカの一戦を語らおう。


──8月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目は?

「シャノン・ウィラチャイ✖ファビオ・ピンカです。正直、競技レベルでいえばそんなに高くないですよ。でも、十分に楽しめました」

──どういう部分で、ですか。

「ウィラチャイがテイクダウンを切られ、でもスピニングバックフィストが当たるとか。MMAなんだよって部分ですね」

──本来、MMAはMMAでラジャのチャンピオンだったから勝てることはない。それがフランス人でアレだけムエタイに挑戦し、そして2年間MMAの練習をしてきたという情報でどれだけ、ムエタイをMMAで見せてくれるのかという部分で幻想が持てました。

「そうなんですよね。でも、これはMMAだから本来はピンカがどこまでやれるかという見方をすべきなんです。ラジャのチャンピオンだからって、MMAで即通用することはないので。いわばMMAファイターが勝って当然なわけで」

──そこをONEという磁場が、狂わせてしまったのかと。

「そういうことですね。ファビオ・ピンカはムエタイでは最高峰ではなかった。でもヨーロッパで一番という見方はできました。外国人がタイの国技に挑戦する。そういう美学を持っていますが、ムエタイではないといえばムエタイではない。

それにMMAをやり込んだという部分では、ムエタイ選手の中ではランバー・ソムデートM16が一番だったと思います。ちょっと異常なぐらいできていました。植松さんが一緒だったというのもありましたけど。やっぱり一番MMAができていたムエタイの選手はランバーです。そして、ランバーと比較するとピンカは打撃も、倒された時もまるでできていなかったです」

──ウィラチャイが踏ん張ったともいえる試合でした。

「ウィラチャイは僕に負けてから4連敗中でしたけど、中堅以下として安定はしている選手です。そんなに弱くないんです。それなのにテイクダウンを仕掛けて、切られていたのは最高でした(笑)。

でも、そうやってテイクダウンが切れたから、ウィラチャイのスピニングバックフィストでピンカはダウンしたのかもしれない。それがMMAの妙ですよね。確かにペースを握っていたのはピンカです。でも2度ダウンをしていますからね」

──裁定結果は、スプリットでした。

「怖いです。リングジェネラルシップを取ったということですけど……あれは、ムエタイでも負けです。2度もダウンしていたら、勝ちはあり得ないです。

この試合でピンカを楽しめるという部分は削げてしまいました。かといってウィラチャイが凄くアップするわけでもなかった。MMAなのにジェネラルシップを取られてしまうし。結果、『あぁあピンカ、ウィラチャイに負けちゃって』という試合になってしまいました。

ただし、MMAとしてあの試合でウィラチャイが勝ったのは救いでした。そこに尽きます。組みがあるから、あのパンチも当たる。組みが合って小さいグローブでやると、こういうことが起こる。ムエタイの実績が、そのままMMAで通じるならMMAなんてやる必要がなくなってしまいますよ」

──その通りですね。そういう意味ではハイキックを空振りしてピンカがバランスを崩しましたが、ムエタイならレフェリーが間に入って安全に立つことができます。でも、MMAはそうじゃなかった。

「つまりは完全に別競技。そこ挑戦したピンカはこれまで練習していたとしても、パニックに陥ってしまったかもしれないです。なんせデビュー戦ですから」

──そうなると、打撃をどう効かすという部分よりも、そういうMMAとしてやるべきことができているのかという部分で、次のピンカの試合を楽しめるかと。

「それなのにムエタイの評価で、ピンカをMMAで高く見積もっちゃダメってことです」

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Interview ONE ONE110 No Surrender III ファビオ・ピンカ ブログ 中原由貴 山田哲也 松嶋こよみ 高橋遼伍

【ONE】ムエタイ好き?=松嶋こよみに訊く、Road to ONE─01─「意外と僕と戦いたいという声がなかった」

【写真】解説後のインタビューも恒例になっていた(C)ABEMA

21日(金・現地時間)にABEMAで中継されたONE110「No Surrender III」のゲスト解説を務めた松嶋こよみ。

ムエタイに興味があるのは、解説中の言葉からも伝わってて来た。そんな松嶋にRoad to ONEという大会について、他のフェザー級選手が出場しない状況について尋ねた。


──いつも通り、解説でも大人しい松嶋選手でした。清野・大沢コンビの間に入っていくのは難しかったですか(笑)。

「そうですね、あれだけ話しているとなかなか入ることはできなかったです。しっかりと話してくださっているので(笑)」

──ムエタイの試合の方が言葉も多かったと思うのですが、松嶋選手はムエタイもチェックされているのですか。

「ONEでやっているムエタイは比較的見ています。キックボクシングよりムエタイをチェックしていますね。ムエタイはMMAに使える技術があると思うので、参考にするためにも見るようにしています」

──ペトロシアンの試合も見ないですか。あのカウンターや下がりながら打つパンチは参考になるかと思っていたのですが。

「キックはMMAグローブを使わないことが多いので、大きなグローブの試合はもう追わなくて良いかという風になっています。8オンスとかだと、もう別ですよね。ムエタイは逆にMMAグローブでなくても、好きで動画とかで挙がっているタイの試合も、ちょこちょこチェックしていました。

結局、首相撲ってまだ掘れる場所じゃないですか。そういうところは試合を見て、自分なりでも勉強していった方が良いかと思っています。試合ではそれほど使っていないのですが、練習では使うようにしています」

──首相撲の指導を受けることもあるのですか。

「それこそマモルさんに教えてもらったり、スパーリングのなかで自分で組んでヒジを使ったりして試しています」

──マモル選手はある意味、MMAファイターが首相撲を習うには最高の指導者かもしれないですね。MMA目線で首相撲を見るという点においても。

「首相撲は全てマモルさんに教わっています」

──ただ、めちゃくちゃ教えてくれることが多かったりしませんか(笑)。

「話に熱が入ると、もの凄い情報量になるので、全てを記憶に留めることは難しいです(苦笑)」

──ではファビオ・ピンカのMMAデビュー戦は見たいと思っていた部分が見られなかったのではないですか。

「余り良いようにムエタイをMMAに落とし込めていないというか、MMAはあまりできていなかったですね。残念でした」

──ただムエタイが凄いからといってMMAで勝つって、難しいことじゃないですか。

「それはそうなんですけどね(笑)。期待してしまっていたということですよね。ウィラチャイはMMAができる選手ですし。判定基準としてもローをいくら効かせていても、ダウン一つが仇になる。そういうMMAらしさは出ていました。

ピンカはがMMAの距離で戦えていなかったですし、ムエタイだったらあのスピニングバックフィストは被弾しなかったと思います。ムエタイだと、あの技を貰ったことすらないんじゃないかと。でも、ウィラチャイはムエタイでは勝てないけど、MMAなら勝てる。ウィラチャイとしては頑張って良い試合をしました。

初回にバランスを崩したときも、MMAを戦うならどういうつもりか分からない立ち方をして、殴られていました。柔術を練習しているとかインタビューで言っていたのに、どうなんだろうって。もう少し楽な相手と初戦は戦わせてあげたかったというのはありますけど、ピンカがどういう試合をしたかったのか、分からなかったです」

──ONEが活動再開し、解説という立場で大会を見てどのような気分でしたか。

「MMAが少ないのは寂しかったですね。ムエタイも面白いし、良い試合でした。でも僕はMMAファイターなので、MMAで締めて欲しいという気持ちはあります」

──解説中に10月のシンガポール大会に触れ、ゲイリー・トノンかタン・リーと戦いたいという発言がありましたが、9月10日のRoad to ONEという大会が行われることについてはどう思っているのでしょうか。

「それこそ意外と、僕と戦いたいという声がなかったですね。もっと同じ階級の選手が『松嶋とやりたい』と想ってくれているものだと思っていました。

僕はランク2位にいて、2月の試合が終わってからトノン、タン・リーという選手を念頭にずっと練習してきているので……そのつもりでいるというのはあるのですが、それこそランキングに入っていない人から『戦いたい』と言われても良いと思っています。どうなんでしょうかね?」

──ONEと契約していて、海外の大会に出られる見込みがないのであれば、私は中原由貴選手と高橋遼伍選手、そして山田哲也選手は松嶋選手と戦いたいと発言があっても良いと思います。そうすると国内にいて、フェザー級版の猿田洋祐✖内藤のび太が見られたので。

「まぁ、やりたいとアピールすることすらできない理由があるのかもしれないですけど……」

──松嶋選手から『やろうぜ』ということは?

「過去に負けている相手だったり、僕の方がランキングが下なら言うと思います。でも何か一つでも間違えるとぶっ飛ばされるのはタン・リーだと思うし、少しでも気を抜けば足首を捻られるのはトノンだという感覚でいます。

その2人に負けて、ランキングが僕より下の選手に自分の方からやろうという気にはなれなかったです。」

──このインタビューを読んで、『なら、やろうぜ』という声が挙がるとどうしますか。

「本気で僕をブッ飛ばすつもりでいるなら、僕がこれを言ったから声を挙げるっていうのも変じゃないですか。そういう気持ちもない選手よりも、僕がやりたいのはタン・リーとトノンです」

──ただし、いつタン・リーやトノンとできる日はまるで見えないです。

「ここからまた試合がない状況が何カ月も続けば、もうやるしかないです。やりたいと思われて、名前が挙がるのであればやると思います。

中原選手も高橋選手も強いです。僕が一方的に勝てる試合でないことは重々承知しています。ばかりか負ける可能性がある相手だと思っています。ただ僕は世界戦で負けたけど、前回の試合に勝って次にステップを踏める状況になっていると思います。

負けて試合ができていない状況の2人なので、なら2人で先にやってほしいという気持ちでいるのは、ダメなんですかね。なんで、その2人がRoad to ONEという場所で戦わないんだろうっていう話にならないですか?」

──そして勝った方が、『松嶋、テメェ俺と戦え』とアピールするものだと。

「そう思っています。それも僕の我儘な部分かもしれないですけど、江藤さんが青木さんと戦うのもアミール・カーンに一本勝ちしているからこそ、楽しみな部分も生まれる。そういうことだろうと……」

<この項、続く>

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ONE ONE110 No Surrender III Report シャノン・ウィラチャイ ファビオ・ピンカ ブログ

【ONE110 No Surrender III】That’s MMA!!! ピンカがバック拳でダウンし、ウィラチャイに判定負け

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
シャノン・ウィラチャイ(タイ)
Def. judgment
ファビオ・ピンカ(フランス)

注目のピンカのMMA初陣。距離を取って回るピンカが、まず右のミドルを蹴る。関節蹴りを見せたウィラチャイが圧力を受けてコーナーに追い込まれる。ウィラチャイが蹴り足をキャッチしてクリンチへ。ロープを背負って耐えていたピンカは小外掛けをで倒されそうになるが、ロープにワキをかけて耐える。

レフェリーは見過ごし、ブレイクに。打撃の間合いでローを入れるピンカ、間合を外したウィラチャイの右フックに左を被せていく。右から左のローを蹴ったピンカがプレッシャーを掛け、ローに右を合わせる。ピンカは左アウトサイド、ローに再び右を繰り出す。残り50秒、ウィラチャイが右ジャブを当てるが構わずローを続ける。前足のアウトサイド―でウィラチャイの体が流れるようになる。左ハイでバランスを崩したピンカに対し、左を入れたウィラチャイがパウンドを連打。ピンカは時間に救われた。

2R、初回終盤の攻防がどのように影響を与えるか。右ロー、左ローを3発入れたピンカに対し、ウィラチャイはカットせず組みにも行かない。コーナーに詰まったウィラチャイに右を当て、自ら組んだピンカは体を入れ替えられるとエルボーを2発入れて離れる。スイッチから前に出たウィラチャイに右を当て、右ミドルを入れたピンカはハイをかわした直後に左を放つも──直後にバックブローを被弾してダウンを喫する。

パウンドを受けながら立ち上がったピンカはヒザを顔面に受け、距離を取り直す。フックの打ち合いでも、ヒザを貰ったウィラチャイがフックを返す。一旦距離を取り直したウィラチャイはローを受けて下がる。ピンカはワンツーを入れ、下がるウィラチャイにローを蹴り込む。左ミドルハイ、前蹴りからハイ、ラウンド終了となりウィラチャイが試合をリードした。

最終回、ローの蹴り合いからピンカが左フックを振るう。距離を取るウィラチャイはローをキャッチできず、ローが急所に入ったとアピールする。インターバル後、強烈なインローを入れたピンカは前に出てきたウィラチャイだが、すぐに間合いを取り直す。左ミドルに右フックを合わせていったウィラチャイは、ローを蹴られて回るのみの状態に。

組まれてもパンチで離れ、ローを蹴るピンカは前に出てくるところで左を当て、ローからハイを蹴り込む。ピンカはダブルレッグを切り、距離を詰めると左を当てる。スピニングバックフィストを空振りとなったピンカは、残り10秒でスピニングバックキック。さらにローを入れてタイムアップに。

攻めている時間は圧倒的に多かったピンカだが、初回のパウンド、2Rのバックブローでのダウンを喫しているのは大きい。結果、ウィラチャイが判定勝ちとなった。


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News ONE ONE110 No Surrender III シャノン・ウィラチャイ ファビオ・ピンカ ブログ

【ONE110 No Surrender III】最終計量結果 ファビオ・ピンカ、ウィラチャイ共に問題なくパス

【写真】ムエタイ界のビッグネームのデビュー戦の相手となる、現在4連敗中のウィラチャイ。ここで遅れを取るようなことがあれば、中途半端は笑いを取るパフォーマーで終わってしまう。どちらかといえば、正念場は彼の方だ(C)MMAPLANET

21日(金・現地時間)に中継される無観客大会=ONE110「No Surrender III」の計量及びハイドレーション結果が発表された。

ONEでは水抜き禁止、北米MMAより実質1階級の体重が上限となり、ハイドレーション・テストが試合の2日前と前日に行われている。体重はリミット+500グラム、ハイドレーションは1.0250以下という規定が設けられており、1日でもパスできないと試合当日の朝に再計量が必要になっている。


MMAデビュー戦でシャノン・ウィラチャイと対戦する──今大会再注目といっても過言でないファビオ・ピンカは体重は規定通り、ハイドレーションの数値もかなり低めでパス。No Surrender大会で2人目の日本人選手となるLittle Tigerはアトム級でもリミットから2.85キロも軽く、体格面のハンデを技術で切り崩せるか注目したい。

■ONE No Surrender III計量結果

※赤字の選手の名前をクリックすると、インタビューページに移動します。

<ムエタイ・バンタム級T準決勝/3分3R>
センマニー・クロンスアンプルリゾート:65.3キロ/1.0247
クラップタム・ソーチョーピャッウータイ:64.8キロ/1.0031

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
モンコルペット・ペッティンディーアカデミー:60.85キロ/1.0148
ソク・ティー:60.7キロ/1.0018

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
シャノン・ウィラチャイ:69.55キロ/1.0233
ファビオ・ピンカ:70.3キロ/1.0074

<ムエタイ・女子ストロー級/3分3R>
ワンダーガール・フェアテックス:56.5キロ/1.0237
ブルック・ファレル:56.7キロ/1.0156

<ムエタイ・女子アトム級/3分3R>
マリー・ルーメット:51.6キロ/1.0023
Little Tiger:49.35キロ/1. 0112

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ベン・ロイル:69.9キロ/1.0027
クインティン・トーマス:69.75キロ/1.0070

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Interview ONE ONE110 No Surrender III シャノン・ウィラチャイ ファビオ・ピンカ ブログ

【ONE110 No Surrender III】非タイ人ラジャ王者、ファビオ・ピンカがMMAデビュー「MMAに集中」

【写真】ついにファビオ・ピンカの雄姿をMMAで視ることができる (C)Zuffa/UFC

21日(金・現地時間)に中継されるONE110「No Surrender III」。先週に続きタイはバンコクのインパクトアリーナで収録された6試合中2試合がMMAで、ついにファビオ・ピンカがMMAデビューを迎える。

タイ人以外で7人目のラジャダムナンの頂点に立ち、WBCムエタイでウェルター級とスーパーライト級で世界王座獲得、ISKAでは世界ウェルター級王座、米国のLion Fight、ユーラシアのKombat Leagueと世界中で結果を残してきた最強・仏製ナックモエに、MMA初戦=シャノン・ウィチャイ戦に向けての心境を語ってもらった。


──MMA初戦でウィラチャイと戦います。今の気持ちを教えてください。

「良い感じだよ。この試合のためにハードなトレーニングをしてきたし、MMAデビューを彼と戦えて嬉しい」

──この試合に向けて、どこでMMAの練習をしてきたのでしょうか。

「半年間、タイガームエタイでトレーニングをしてきた。2月にタイにやってきて、COVID19のパンデミックが起きてからもずっとプーケットに留まっていた。だから、このタイミングで試合をすることができたんだ」

──母国フランスは一時期大変な状況でした。

「僕の家族は大丈夫だけど、ロックダウンにより経済的な影響は皆が受けている。まぁ、僕は大丈夫だけど」

──ところで欧州で最高のムエタイファイターのファビオが、なぜMMA転向を決めたのでしょうか。

「もうムエタイは20年もやってきた。ファイトを続けるモチベーションを保つためには、新しいチャレンジをする時がきたんだ。知らない技術を習得したかったし、MMAのトレーニングは本当に楽しいよ」

──いつ頃、MMAの転向を本格的に決意したのですか。

「もう3、4年ぐらい前だよ。スネーク・ジムでMMAの練習を開始し、2年前からはMMAに専念してきた」

──寝技があるのは当然ですが、間合いなどスタンドでもムエタイとMMAは別物だと思います。

「そうだね、打撃をキックボクシングに近づける必要があった。ムエタイは相手の正面に立って、足を使って動くということはそれほどないからね。キックボクシング的な動きを採り入れることは難しいことではなかったよ。頭を切り替えれば、動きもアジャストできる」

──ムエタイのトップファイターがMMAに挑戦するときには、常に首相撲がどれだけMMAで使えるのかが興味深いです。

「MMAファイターは首相撲を使いこなせていないから、そこは僕の武器になるね。まだMMA選手のヒジやヒザはムエタイほど完成されていない。タイ・クリンチは僕にとっても大きな武器になる」

──去年の12月にユン・チャンミンと戦う予定でしたが、負傷して戦えなかったです。

「凄く残念だった。でもケガはこの仕事の一部だ。ケガをしてしまったら家に戻って少しでも早く治すこと、より強くなるためにね」

──ところでONE Super Seriesは世界トップクラスのムエタイ選手と契約しています。ファビオ自身もSuper Seriesの立ち上げとなった1昨年4月のマニラ大会でノンオー・ガイヤーンハーダオと戦っています。今後、ムエタイとMMAを並行して戦っていくことは?

「今は本当にMMAに集中している。そうだね……世界タイトルに挑戦できるなら、ムエタイも戦うよ。それは確かだ。でも今は一歩ずつMMAで強くなりたいと思っている。そしてONEでフェザー級王者になりたいんだ」

──アンディ・サワーやサゲッダーオらがMMAにトライし、キックやムエタイ時代のような華々しい成果を挙げることはできていません。その理由はどこにあると考えていますか。

「他の選手のことは分からないよ。ただし、100パーセント集中していればMMAでもやっていけるはずだ。そうだね……この件に関しては、まず僕の試合を見てもらいたい。口で話してもしょうがない。僕の戦いを見てもらってから、話そう(笑)」

──了解しました。寝技で戦う準備はできていますか。

「100パーセントできているよ。立ち技も寝技も自信があると断言する」

──対戦相手のウィラチャイは既にMMAで15戦しており、青木真也選手などトップファイターとも戦っています。

「彼のMMAの経験値は、僕よりも上だよ。でもファイトゲーム全体で見ると、僕は120戦以上戦ってきた。MMAデビュー戦といえども、これまでの戦いが僕を助けてくれることは間違いない」

──この試合はリングで行われます。打撃とグラップリングのミックス度合いを考えると、ケージとは違ってくることが予想できます。

「僕はケージで戦ったことがないからね(笑)。MMAだからケージで戦いたかったよ」

──では小さなMMAグローブで戦うことで、何か注意すべき点はありますか。

「MMAグローブはワンショットでKOできる。ムエタイだとワンパンチでダウンを奪っても、相手は立ち上がってくる。MMAでは、それで終わりだ」

──ファビオ、今日はありがとうございました。日本のMMAファン、そしてムエタイファンもファビオのMMA初戦を視ることを楽しみにしていると思います。彼らへメッセージをお願いできますか。

「皆に僕の技術を見て欲しい。最高の試合になるよう全力を尽くすよ。MMAでムエタイの強さを証明するためにね」

■ONE110「No Surrender III」対戦カード

<ムエタイ・バンタム級T準決勝/3分3R>
センマニー・クロンスアンプルリゾート(タイ)
クラップタム・ソーチョーピャッウータイ(タイ)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
モンコルペット・ペッティンディーアカデミー(タイ)
ソク・ティー(カンボジア)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
シャノン・ウィラチャイ(タイ)
ファビオ・ピンカ(フランス)

<ムエタイ・女子ストロー級/3分3R>
ワンダーガール・フェアテックス(タイ)
ブルック・ファレル(豪州)

<ムエタイ・女子アトム級/3分3R>
マリー・ルーメット(エストニア)
Little Tiger(日本)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ベン・ロイル(英国)
クインティン・トーマス(米国)

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News ONE ONE110 No Surrender II ONE110 No Surrender III シャノン・ウィラチャイ ファビオ・ピンカ ブログ ポンシリ・ミートサティート 藤沢彰博

【ONE110 No Surrender II & III】14日に藤沢彰博、21日にフランス最強ムエタイ戦士ピンカのMMA初陣

【写真】ついにファビオ・ピンカがMMAを戦う (C)ONE

3日(月・現地時間)、ONEより14日(金・同)と21日(金・同)に配信されるONE Surrender II及びIIIの対戦カードが発表された。

ONEでは7月31日(金・同)にタイのバンコクはインパクト・アリーナで無観客大会=ONE110「No Surrender I」のライブ中継が行われたが、それら6試合の前に12試合が収録されており、この両日に配信される。

両日揃って6試合の配信となり、両中継でMMAは2試合ずつ見られる。


まず14日のNo Surrender IIではバンコク在住の日本人選手=藤沢彰博が、59.5キロ契約マッチでポンシリ・ミートサティートと対戦。藤沢は本来フライ級で戦っているが、ストロー級のポンシリとの対戦に合わせてキャッチ戦となった。

この試合まで藤沢は3連敗中でONEでの戦績は2勝3敗、なぜかマニラやクアラルンプール大会で試合が組まれてきたが、ホーム・バンコク大会は初出場だけに無観客とはいえ地元で星を五分にしたい。この日の中継では藤沢✖ポンシリ以外に、ヨッカイカー・フェアテックス✖ジョン・シンクのONE初陣同時のタイ✖英国フライ級対決が組まれている。

21日のSurrender IIIでは、あのファビオ・ピンカがついにMMAデビューを迎える。ピンカは昨年12月のKL大会のユン・チャンミン戦でMMA初戦を行う予定だったが、負傷欠場に。そのピンカはMMAデビューを目指し、今年の2月からタイガームエタイで練習していたことでパンデミック後も母国フランスに戻らず、タイで練習をしてきた。

タイ人以外で7人目のラジャダムナン(※ウェルター級)の頂点に立ち、WBCムエタイでウェルター級とスーパーライト級で世界王座獲得、ISKAでも世界ウェルター級王座、米国のLion Fight、ユーラシアのKombat Leagueと世界中で結果を残してきた最強・仏製ナックモエ、そのデビュー戦の相手はシャノン・ウィチャイだ。

2018年7月の青木真也戦から現状4連敗中のウィラチャイとはいえMMAの戦い方、特にグラップリング面の経験値はピンカを大きく上回る。ONE Super Seriesがスタートした2018年4月のマニラ大会でノンオー・ガイヤーンハーダオに判定負けを喫しているピンカだが、この頃には既にMMA転向を決めフランスのスネークジムでトレーニングを開始していた。

以来、柔術とレスリングもしっかりと積んできたピンカにとっても、初戦がウィラチャイというのは決して楽でない。とはいえ、ここを軽くクリアするようなことがあれば一気にトップ戦線入りとなる。

またNo Surrender IIIでもプーケットトップチーム所属の英国人ファイターのベン・ロイル✖タイガームエタイ所属の米国人クインティン・トーマスというフェザー級の一戦も見られる。トーマスは2017年のIMMAF=アマMMAの世界王者で、プロはまで2戦目だがアマ時代に14勝2敗というレコードを残している。パンデミック下のバンコク・シリーズは、ONEと契約できる大きなチャンスを彼ら在タイ人ファイターにもたらしており、高いモチベーションから好パフォーマンスを生んで欲しいものだ。

なおSurrender IIIではリトルタイガーが、ムエタイ女子アトム級で マリー・ルーメット と対戦している。既にこれらの大会は結果がでてしまっているが、MMAPLANETでは事前に対戦カードを入手し、試合前の藤沢とピンカのインタビューを行っており、ファイトウィークに掲載する予定だ。