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45 AB MMA MMAPLANET o Road to ADCC UFC UFC300 WNO22 YouTube アデーレ・フォーナリノ アマンダ・アレキン アンディ・ムラサキ アンドリュー・タケット ウィリアム・タケット ケイド・ルオトロ ジエゴ・パト・オリヴェイラ ジョセフ・チェン ダンテ・リオン トミー・ランガカー ニック・ロドリゲス ヴィクトー・ウゴ 岩本健汰

【WNO22】ミカ・ガルバォンに挑戦、岩本健汰─02─「これからのことは一切考えていない。どうでも良い」

【写真】この試合後のことは考えていない。ルックスもどうでも良い。そんな岩本健汰でした(C)MMAPLANET

9日(金・現地時間)、カリフォルニア州コスタメサはOCフェアー&イベントセンター内ザ・ハンガーで開催されるWNO22「Rodriguez vs Hugo」で、ミカ・ガルバォンの持つWNOウェルター級王者に挑戦する岩本健汰インタビュー後編。
Text by Manabu Takashima

柔術の神の子への挑戦が降ってわいたように巡ってきた岩本は、この完全無欠のグラップラーを相手に勝つには「どうすれば良いんだ」と笑う。が、インタビューを進めていくと笑顔の裏にADCC世界大会イヤーでありながら、全てを賭ける気持ちがヒシヒシと伝わってきた。

ワールドステージで戦う岩本、その覚悟のほどを知って欲しい。

<岩本健汰インタビューPart.01はコチラから>


──とはいえウィリアム・タケットをパスしまくったという状況も、WNOだとパスもポイントにならないので極めを防げる選手は、IBJJFルールのように絶対にパスを許さないという姿勢では望んでいないかもしれないです。

「そこもあるかもしれないですね」

──グラップリングといってもサブオンリーのWNO、ポイントがありスクランブルが欠かせないADCC、ポイント制のIBJJFノーギとルールの違いが戦いをまるで変えるものかと、と。いくら技術は共通でも。

「WNOルールだと確かにミカは強いなって。どうやったら勝てるのか。まぁ全力でやるしかないですね(笑)」

──結果、ベストを尽くすと。とはいえ、どのルールでも防御力が絶対かと思うのですか。

「サブミッションエスケープは、僕は得意な方だと思います。なので、そこは気にせずに戦うことができるのですが、エスケープは印象点を悪くするので。だから入らせない。入られたら、すぐにカウンターでいくというマインドで行くしかないですね」

──ドロドロになってきたら、チャンスが増えるのか。

「う~ん、ドロドロ……そうっすね。ミカってヨーロピアンに出ていますよね」

──ハイ。ミドル級決勝でアンディ・ムラサキを腕十字で破り優勝しています。

「ヨーロピアンって、ドーピング検査ないんですかね?」

──あっ、そこですか。

「そうなんですよ。WNOはチェックはないですけど、ヨーロピアンに出ていたら抜けている可能性がある」

──そうしたら、使い続けている岩本選手の方が有利だと。

「ハイ(笑)」

──アハハハハハ。勘弁してください。

「でも本当にミカには、以前のようなパワーがない可能性はあります」

──なるほどです。そこは当日の楽しみとして、岩本選手は今回もB-Teamで調整をしてきました。

「ハイ、香港でのセミナーが終わってそのまま来ました。ニッキーやクレイグが不在だったのですが、まだ名前がないB-Teamのメンバーがめちゃくちゃ強いです。めっちゃ強い。ここでやっていることが、自分のバロメーターになります。初めて来た時から比べると、強くなっていると思います。でも回りも強くなっているし、紫帯でもメチャクチャ強い人もいて。ほぼ無名で強い人が、結構います。ここで練習をしていると、力がつきます」

──これはまるで別件なのですが、ケイド・ルオトロとトミー・ランガカーの日本での試合は視聴されましたか。

「ハイ。ケイドが圧勝しましたね、凄い試合でした。ケイドは凄いです。本当に世界一だと思います」

──実はこの試合が決まるまで、岩本選手の位置関係としてアンドリュー・タケットやジョセフ・チェンとのライバルストーリーが綴られていくことが楽しみでした。ただミカと戦うことで、岩本選手の存在がケイド、ミカというところにやってきたのかと。

「ここで勝てば、そうです」

──それがまさに今大会でのタイトル挑戦に表れているのかと。メインがニッキー・ロッド✖ヴィクトー・ウゴ。他にダンテ・リオン✖ディエゴ・パト、タイナン・ダルプラ✖オリヴィエ・タザ、ジェイコブ・カウチ✖セブ・ロッドという面々の中に日本人グラップラーが出場する。それこそUFC300で日本人ファイターがタイトルに挑戦する……NBAやMLBのオールスターに日本人プレイヤーが出場するようなもので、グラップリング界での快挙かと。

「まぁ……それは難しいことじゃないと思います。勝たないと意味がないので」

──ただし一部のグラップラーしか出場できないイベントです。それだけケンタ・イワモトは世界で評価されていることかと。

「そうですね。知名度的に僕が高いから、選ばれたというのはあるかもしれないです」

──ここでインパクトを残せば、今後のレギュラー参戦もあるのかと期待が膨らみます。

「きっと僕は良い試合ができることを期待されているんだと思います。攻防が多い、スクランブルが多い試合。ミカと相性が良い試合になると思われているのかと。でも、この試合に限らず……ですけど、一つひとつの試合が一つの終わりと心得ているので」

──というと?

「むしろ、この試合が僕にとって最後の戦いだという感覚です。もう後のことは考えていない」

──つまり今回の試合はRoad to ADCC世界大会ではないと。

「ハイ。キャリアとかこれからのことは一切考えていないです。これが最後だと思ってやっています。帰りのチケットも買っていないです。試合までのことしか、考えていないので。そこしか見ていない。カリフォルニアから戻ることは今、頭にないです。とにかくミカとの試合に集中しています。終わってからのことは、どうでも良い。米国から帰国するチケットもキャンセルできるやつを買って、こっちに来ているので」

──凄まじい覚悟のうえでのミカへの挑戦ですね。

「もう、この試合で終わりです。それからのことは一切、考えていないです」

──押忍。そんな岩本選手を応援している人々に一言お願いします。

「うん……えぇと……。勝つことしか考えていないです」

──痺れる想いを持つ岩本選手ですが、最後に一つスミマセン。気になったことがあります。

「えっ、何ですか」

──岩本選手、インタビューの受け答えは英語の方が上手くないですか。あのFLOに挙がっているインタビューとか、凄く流暢で。

「アハハハハ、そんなことないですよ。英語より日本語の方が……多分、大丈夫です。今日は……最近、日本語を使っていないので。もうカタコトになって、表現力がないなって自分でも思っていました(笑)。本当に日本語をしゃべったのが、久しぶりだったので申し訳ないなって(笑)。言葉が上手く回らなかったです」

──それだけ動きは上がっていると、期待しています。

「ハイ。ありがとうございます。口はこうでも、体は動くので。そして日本語、勉強しなおします(笑)」

■視聴方法(予定)
2月10日(日・日本時間)
午前11時00分~Flo Grappling

■ WNO22対戦カード

<ヘビー級/15分1R>
ニック・ロドリゲス(米国)
ヴィクトー・ウゴ(ブラジル)

<WNOウェルター級選手権試合/15分1R>
[王者]ミカ・ガルバォン(ブラジル)
[挑戦者]岩本健汰(日本)

<WNO級ライト選手権試合/15分1R>
[王者]ダンテ・リオン(カナダ)
[挑戦者]ジエゴ・パト・オリヴェイラ(ブラジル)※フェザー級王者

<女子フライ級/15分1R>
アマンダ・アレキン(米国)
アデーレ・フォーナリノ(豪州)

<ミドル級/15分1R>
タイナン・デルプラ(ブラジル)
オリヴィエ・タザ(カナダ)

<ミドル級/15分1R>
ジェイコブ・カウチ(米国)
セバスチャン・ロドリゲス(米国)

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45 MMA MMAPLANET o Progress Road to ADCC Special UFC YouTube 世羅智茂 山田海南江 松嶋こよみ 森戸新士 海外 菊入正行

【Special】J-Grappling2023─2024、世羅智茂─02─「ルールを理解せず単純に技術だけ学ぼうとすると…」

【写真】カルペディエム青山で松嶋こよみや菊入正行らJ-MMAのトップと練習をしている (C)MMAPLANET

J-Grappling 2023-2024、世羅智茂インタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

2023年、海外のトーナメントに出場する一方で、世羅はProgressフォークスタイル・グラップリングのウェルター級暫定王座決定戦に挑み、森戸新士に敗れている。日本国内ではADCCルールの試合経験を積むことができないなか、世羅にとってプログレスで戦った意味とは。そして11月、77キロ級で3位入賞を果たしたADCCアジア&オセアニア予選を振り返る。全ては2024年世界大会のために――これが世羅のRoad to ADCCだ。

<世羅智茂インタビューPart.01はコチラから>


――年末のADCCアジア&オセアニア予選を目標としていた世羅選手にとって、グラジエイターで行われたプログレスのトーナメントは、どのような意味を持っていたのでしょうか。決勝で森戸新士選手に敗れていますが……。

「決勝で負けたというのは、やっぱり悔しいです。試合内容も、勝つための実力を十分に練ることができていませんでしたね。まだまだ準備不足だなって感じました」

――森戸選手もADCCを目指し、スタンドレスリングを強化していました。その意味では両者にとってADCC前哨戦といえる試合だったかもしれません。

「そうですね。ADCC予選でも当たる可能性はありましたし。あとプログレスのルールはADCCにもマッチしていて、このルールで日本トップレベルの選手と対戦できる機会も少ないと思うんですよ。その点では、ADCC予選の前にプログレスルールで対戦できていた意味は大きいです」

――ADCCで勝つためには、ADCCルールはもちろんスタンドレスリングが重要視されるルールの試合経験を増やしたほうが良いですか。

「数をこなしたほうが良いかどうかは分からないですけど、一度は経験しておいたほうが良いとは思います。どうしても柔術がベースにあって、下のポジションになっても良いという意識でいると負ける可能性は高くなりますから」

――同じく11月のADCC予選に出場した山田海南江選手は、試合前のインタビューで練習環境についても触れていました。女子の場合、ADCCルールの練習ができる環境は少ない。そのため、自分の中で試合時間とルールを考えながら練習していたと。

「あぁ、確かにそれは難しいですね。練習相手もADCCルールを意識してくれないと――たとえばスパーで相手が簡単に下になっていると、噛み合わない部分は出て来ます。日本国内ならMMAファイターと練習をしたほうが、ADCCに近いかもしれないです。MMAの選手は簡単には下にならないし、テイクダウンされてもすぐに立ち上がるので」

――世羅選手もロータスをはじめ、MMAファイターとグラップリングの練習することは多いですね。

「はい。今は週1でロータスに行かせてもらっているのと、カルペディエム青山でも週3でグラップリングの練習をしていて、そこにMMAファイターの方たちが来てくれています。そこでスタンドレスリングの練習はできていますね」

――ではADCC予選の日を迎えた段階で、ご自身が目指していたスタンドレスリングのレベルに達していたのでしょうか。

「いえ、良くて半分のレベルというところでした。ちょっとずつレスリングの理屈は分かってきていました。レスリングのルールから理解すると分かりやすいですね。ルールを理解せず単純に技術だけ学ぼうとすると、しっくりと来なくて。柔術の感覚のままレスリングを学ぶと難しいですよ。それはどの競技に対しても言えることでしょうけど――レスリングの技術というのは、そのルールの中で最適化されているものじゃないですか。

まずレスリングは互いに動かされるルールで、動かないとパッシブを取られてしまう。下がって場外に出ると、相手に1ポイントが与えられる。選手は前に出るしかないルールです。そのルールの下で生まれている技術だからこそ、まずルールを理解することで技術の理屈も分かってきました。ただ、それでも自分の理想からすると、半分ぐらいのレベルにしか達していなかったとは思います」

――その状態は予選に挑むにあたって、不安要素にはなりませんでしたか。

「不安要素に……なっていましたね(苦笑)。実際、準決勝戦はスタンドレスリングで劣勢になり、それが判定に響いてしまいました。そこで自分の弱い部分が出てしまったな、という気持ちはあります。

ADCCで勝つためには体力、フィジカル面も重要で。予選はオープントーナメントなので、77キロ級とか50人以上が参加していました。すると優勝するためには5~6試合しないといけなくて、必然的に体力が必要になってきますよね。1回戦からエコに試合を運べていたら体力も温存できていたとは思いますけど……」

――結果、6試合で世羅選手がポイントを失うことはありませんでした。それはエコな戦いではなかったということでしょうか。

「ADCCはポイントが入りにくいんですよ。一瞬パスされたりバックを奪われても、カウントが入る前に立ち上がったりするとか――ギリギリのところを抑えていると失点はなくせます。危ない場面は結構ありましたが、寸前のところで止められたという感じですね。

3回戦では前半にシライ・ソウフィにマウントを奪取されるも

3回戦ではポイントが入らない時間に、マウントまで取られていました。

『やべぇ!』とは思いながら、まだポイントは入らないので落ち着いて戦えたんです。結果は加点時間に僕がバックを取って勝てたので。まぁ、ギリギリでした(苦笑)。

バックを取るなど5-0で準々決勝へ進んだ

できるだけ1回戦や2回戦は、サクッと極めて勝ちたいです。

実際、他の1回戦は一本勝ちが多くて。オープン参加なので記念受験のような選手もいるとは思いますね。やはりレベルの差が大きい試合がありました。それが3回戦~4回戦になると、極めるのは難しくなる。だから1~2回戦は極めて、体力を温存したかったです」

――なるほど。

「あと予選は決勝以外、試合時間が6分なので一つのポイントで決まってしまいます。加点時間——残り3分で一度2ポイントでも取られてしまうと、自分がポイントを取り返すのは本当に難しいです。先ほど言った3回戦で、マウントを取られたのが加点時間だったらキツかったと思います。ただでさえポイントが入りにくいADCCなので」

――今回の予選では3位に入賞するも、世界大会出場権を獲得できませんでした。その結果については、どのように考えていますか。

「もちろん結果は満足できないです。でも一応、3位入賞というのは――ベストではないけれど形にはなったという感じですね。それは素直に良かったなと思います。

海外へ行くたびにクラスの指導を休むことになり、他のスタッフに代行してもらうなかで3位に入ったのは、最低限の結果を残すことができました。そこはメダルがあると無いとでは大きく違うので。そして自分の力が、ある程度通じることが分かったのも収穫でした。

こういうトーナメントって組まれ方次第で順位が大きく変わるんですよね。77キロ級は優勝した岩本君以外、おそらくベスト4やベスト8ぐらいは組まれ方で変わってきます。そのなかで3位入賞できたのは大きいと思ってはいます」

――一方、再び世界大会を目指すうえで自身に足りないものは何でしょうか。

「まだスタンドレスリングは伸びしろがあると思うので、強化していきます。それよりも全体的に、平均値を上げていきたいですね。スタンドレスリングに寄りすぎても難しいと思うんですよ。レスリングが強いだけで勝てるわけではなく、パスガードやポジショニング、サブミッションなど全ての要素を高めていかないと勝てない。

MMAも全ての要素が強くないとUFCでは勝てない、と言われるじゃないですか。MMAの頂点がUFCなら、グラップリングの頂点はADCCで。MMAでいえばDJのように、グラップリングにおいて全ての要素で強くならないといけないです」

――世界大会は8月17&18日に米国ラスベガスで開催予定です。その前にアジア&オセアニア予選の2ndラウンドが行われるという話もありますが、開催されれば出場しますか。

「予選は各地区で2回行われていますからね。もう一回、予選はあると思っています。その中で再び、1つしかない世界大会出場権を争う。また過酷なトーナメントになりますが、やるしかないです」


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ADCC2022 JT・トレス MMA MMAPLANET o ONE Road to ADCC   ケイド・ルオトロ ゲイリー・トノン コナー・マクレガー コール・アバテ ジョゼ・アルド タイナン・ダウプラ タイ・ルオトロ ニッキー・ライアン 堀内勇 高橋SUBMISSION雄己

【ADCC2022】高橋サブ&堀内勇がADCCを深掘り─02─。77キロ級、柔術の神の子とADCCルール王

【写真】巧さは強さなのか。そして強さは巧さにどう対抗するのか(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING& SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第2弾は66キロの米国勢から、77キロ級の2人の優勝候補の対照的なスタイルについて話を続けてもらった。

<高橋Submission雄己&堀内勇、ADCC深堀対談Part.01はコチラから>


──話を蒸し返すと、ONEでトップグラップラーのグラップリングが頻繁に視られるようになるのは嬉しいのですが、それでもADCC欠場はやはり勘弁してくださいと気持ちになります。

堀内 やっぱりマイキーは個性が際立っていますからね。最近も『僕はピザとパスタしか食べない』なんてことを言いだして。朝はアサイーを食べて、毎日同じピザを食べているという話で。毎日ピザを食べて世界一になるって、ダイエット界や栄養学界の常識を覆しているんじゃないかって。

高橋 アハハハハ。

堀内 そういう彼が抜けるのは残念ですが、今大会はファブシリオ・アンドレイとかベイビーシャークなど、新しい力を知るきっかけになりますね。

──きっと勝てないという意見もありますが、そうなると『ちゃんと負けろよ』と思ってしまうんですよね。バトンタッチしてくださいって。ただ、チャトリはADCCで優勝した人間全員とサインするぐらいのつもりでいるんじゃないかと思います。マイキー不出場はさておき、他に66キロで注目すべき選手は?

高橋 ONEへの恨み節に関しては、ルールが違うから良いじゃないかなって。そりゃあ見たかったですけど、別競技といって良いほど違う。まぁサブオンリーのレフ判も納得できるルールではあるし、ソレはソレ。コレはコレじゃないでしょうか。

──じゃあRoad to ADCCに出るなよって……ってまだ恨み節が続いてしまいます。

高橋 それは……確かに(笑)。でも、やった相手がジオですからね。66キロ級で注目したい他の選手は、ゲイリー・トノンですかね。なんか期待値が高いです。66キロ級に落としてきて体が大きいから、細かい技術はさておき、立ち技も強いだろうし、極め力でいえば抜けている気がします。

あとトノンと同様に米国勢だと、コール・アバテは注目ですね。

優勝候補とまでは言えないですが、若くてそれなりに66キロ級のなかではデカい。伸びしろの多さも期待して、コールがどんなもんなのか凄く気になりますね。

堀内 僕もコール・アバテは楽しみにしています。17歳で、最年少です。

ベイビーシャークは20歳なのに子供に見えて、コール・アバテは17歳なのにやたらと落ち着いていて。態度も凄く偉そうだし(笑)。ただ戦い方は兄弟子のタイナン・ダウプラを彷彿させるというか。もの凄く圧力がある戦い方で、極めも正確でガチッと入る。力強くて楽しみです。

なんかお父さんが結構熱心で、子供の頃からやっていたようですね。そのお父さんがガレージで、『我々は過去のADCCの66キロ級の試合は全て見た』とか言っているんですよ(笑)。そうとうにお父さんが賭けているというのが伝わってきました。

高橋 僕もコールは期待で。後は敢えて名前を出すなら、イーサン・クレリンステンですかね。

堀内 トライスタージムでフィラス・ザハビの下で学び、その後はザハビの師匠格といえるジョン・ダナハーの指導を受けた選手ですね。

高橋 結局、ブラジル✖米国の様相になっていて、ADCCルールにおいてはブラジルが育んできた柔術スタイルが優る。そう思います。

──では77キロに移らせていただきます。世界中の誰もが見たい選手と、試合は別に見たくないけど勝てる選手。そのどちらが強いのか。

高橋 その通りですね(笑)。

堀内 見たい選手がミカ・ガルバォンで。この対談を万が一、あまり柔術に興味がない人が読んでくださっているとしたら、ミカ・ガルバォンの凄さってどういう風に伝えることができるんだろうって考えました。

──ありがたい限りです。

堀内 そして思い出したのが、コナー・マクレガーの言ったことだったんです。マクレガーがジョゼ・アルドを倒した時、「精度とタイミングはパワーとスピードを打ち負かす」という素晴らしい言葉を残しています。つまり精度とタイミングを持っている人間は、パワーとスピードがない。でもミカ・ガルバォンはその4つの全てを持っている。

──おおっ!!

堀内 柔術家に良く見られる、問答無用の重厚な圧力。ベースが強くて、プレスがもの凄く強い。

1度体重を掛けられたら、対戦相手はもうどうにもならない。ああいうファンダメンタルの柔術の圧力がありながら、反応速度が素晴らしく良い。相手の体に一瞬に反応して、素晴らしい体捌きで技を決めます。精度もスバ抜けて高い。それを全て持っているのは、ズルいんじゃないかっていうぐらいで(笑)。

他の人にはない。ちょっと人間離れしたモノを見ることができる。そんな喜びをミカの試合からは感じます。

──反応の良さは、道着でモダン柔術の攻防になった時も際立つようにも感じます。

堀内 タイ・ルオトロとは2度試合をして、ノーギでは競り負けて、道着だとボコボコにしている。それを見ても分かるように、ミカが柔術の神の子たる所以、強さが最も出てくるのは道着の試合ですよね。道着があって滑ることなく、相手がなかなか逃げられないので。ノーギだとタイのようにバランスの良い選手は、そこを凌ぎ切って自分のペースに持ち込むこともできないことはない。そしてノーギのなかでもサブオンリーの方が、ADCCより適しているんじゃいかと思います。

──それは?

堀内 やはり圧倒的なレスリング力があるとは、言えないので。そうなった時に、同じノーギでもADCCルールの権化のJT・トレスと戦うとどうなるのか。試合は別に見たくないと言われたJTとミカは対照的な2人なので、本当に興味深いです。

高橋 そうですね、ミカはレスだとたまに転がされている場面を見ますよね。しかも77キロ級だと身体的な圧力は他の選手より劣るような気がします。本当に堀内さんの見立て通りだと思います。

──JTの強さはともかく、彼の試合のどこを楽しめば良いでしょうか。

高橋 トーナメント全体の見方として、誰がJTを倒すのか。それで良いと思います。ディフェンディング・チャンピオンだし、何が凄いってルールへの対応力。

組み技の質量、技量は皆が高いレベルで拮抗している。そこでJTが勝ち抜き続けているのは、勝負どころを見極め、自分だけでなく相手の特性を理解している試合運びの上手さがあるからで。ここは受けて、ここでは2Pを取るという判断と実行力がともに正確です。そこが絶対王者たる所以で。

対抗馬としてスタイル的にも対照的なのが、ミカですよね。ミカを筆頭に、誰がJTを打ち破るのか。JTはちょっと可哀そうですけどヒール的な見方をしてもらうのが楽しいのではないかと思います。JTを優勝させたら、つまらなくなるぞ──みたいな(笑)。

──JT・トレス=北の湖ですね。

堀内 アハハハハ。

──ルールもポイントも違いますが、ルールを研究し抜いて、ルールに合った技を駆使してギリギリで勝つ。それってフィロソフィーとしては、完全にIBJJF柔術の強い人のソレではないでしょうか。そうなると、JTとの競り合いに負けないのは、同じフィロソフィーの持ち主──IBJJFルールに強い柔術家なのかと。JTは柔術では準決勝ぐらいで勝ち切れなくなることが多い印象がありますし。

高橋 確かに、ホントにそうですね。

堀内 FLOGRAPPLINGが77キロ級出場の各選手の練習風景を追っているカウントダウン映像を流していたのですが、そこで主要メンバーがお互いの印象を話しているんです。だいたい皆がJTに関しては、高橋選手が言ったように隙の無さ、ルールを知り尽くした戦い方だと言っています。

そのなかでケイド・ルオトロはATOSの後輩で「JTのことは尊敬している。JTは隙が無くてペースを掴むのに長けている。でも俺はそのペースを乱すことができる手が、いくつかあるんだ」って話しているんです。ケイドは凄く動きますから、JTの不動のペースを乱すよう、色々と仕掛けてくるのかと。特にスタンドが注目です。あと、もう一人はニッキー……ニッキー・ライアンでねす。

<この項、続く>

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ABEMA MIKE MMA MMAPLANET o ONE ONE Championship ONE X ONE131 Road to ADCC WNO09 WNO10 WNO12 エステファン・マルチネス ガブリエル・ソウザ キック ジオ・マルチネス ジュニー・オカシオ ボクシング マイキー・ムスメシ リチャード・アラルコン ルーカス・ピニェーロ 今成正和

【ONE131】ONEが攻める!! 4月22日、地上最強柔術家&グラップラー=マイキー・ムスメシ✖今成正和決定

【写真】ファンメンタル、モダン、レッグロッカー、マイキーはどの顔で今成と相対するのか──楽しみ過ぎる一戦(C)FLOGRAPPLING&MMAPLANET

31日(木・現地時間)、26日(土・同)に10周年記念大会=ONE Xを終えたばかりのONE Championshipが公式SNSで4月22日(金・同)に開催されるONE131「Reloaded」でマイキー・ムスメシ✖今成正和のサブミッション・グラップリング戦を組むことを発表している。

MMA、ムエタイ、キックボクシングに次ぐONEにとって第4の軸となるサブミッション・グラップリングで、超注目カードが組まれた。


2017年から2年連続ムンジアルのライトフェザー級を制し、2019年とパンデミックで中止となった2020年を経て2021年にはルースター級優勝、現状4連覇中で道着柔術世界最強の名を欲しいままにしているマイキーは、その2021年にはノーギ・グラップリングをロックオンした。

1月にWNO07でマルセロ・コーヘンを腕ひしぎ腕固めで一蹴すると、5月のWNO09におけるルーカス・ピニェーロ戦、さらに6月のWNO10でジュニー・オカシオ戦、3カ月連続となる7月には後半ポイント有りのRoad to ADCCでジオ・マルチネスを撃破し、ノーギへの対応力の凄まじい高さを見せつけた。

9月のWNO Championshipではライト級トーナメントに出場し、ガブリエル・ソウザのノースサウスチョークに下るも、翌10月WNO12ではリチャード・アラルコンを秒殺してWNOバンタム級チャンピオンの座に就いている。

そして12月に上記にあるムンジアル4連覇目を達成するや、今年に入り1月にはノーギワールズ王者エステファン・マルチネスを3-0で下しWNOバンタム級王座初防衛と、マイキーは誰にも止められない破竹の勢いを見せている。

そのマイキー、本来は今月25日のWNO14でジオ・マルチネスの挑戦を受ける予定だったが、祖母を亡くし欠場しONE初陣を迎えることとなった。

ベリンボロがクラブライド~トラックポジションでトップもバックも奪取できるモダン柔術の使い手、現代競技柔術最先端の旗手という印象の強いマイキーだが、その実──彼は競技大会直前以外の期間はオールドスクールといっても良い、クローズドガード、パスガード、バックテイクにチョークという根幹部を重視したファンダメンタル柔術の精度を上げることに費やしている。

そんな軸があってモダン、ノーギになっても足関節を使いこなすことがデキる万能がグラップラーだ。一方イマナリロールで世界に名を知らしめる今成も現代レッグロックを習得し、代名詞である足関をアップデートしている。

さらにいえば道着柔術でムンジアルに挑戦している頃からガードを取っての三角、腕十字、スイープを得意としていた。ただし、トップからポジションニング、ガードでの防御能力の高さでいえばこれはもうマイキーが今成を上回るとしか書き記しようがない。

とはいえ、この試合はケージで行われる。リングMMA時代からマットと違い、ロープや金網があることで動きが窮屈になる位置と、そこでの動きを今成は熟知している。そしてケージ際に持ち込む術も持つ。

マイキーがそれ以上回転できない場所で、ヒールの攻防が見られれば今成にも勝機が生まれるが、果たして……。

(C)FLOGRAPPLING

一方マイキーには足関節へのカウンターのベリンボロがあり、足関節にしてもワキの下で足首を取るのではなく、首の付け根と鎖骨の上=ネックピットで利して極めるマイキーロックなる仕掛けある。

マイキーが有利なことを承知のうえで、今成が勝ちに行くグラップリングを展開できるのか──軽量級だからこそのダイナミズムを両者に期待したいケージ・サブミッション・グラップリング戦だ。

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BJJ BET02 MIKE MMA Road to ADCC ウィリアム・タケット ブログ ホウジマール・トキーニョ

【BJJ BET02】壊し屋ホウジマール・トキーニョが、2年振りの表舞台。1回戦でタケットと対戦

【写真】やらかすことは良くないが、やらかせるぐらいの力が残っていることに期待(C)

8月1日(日・現地時間)ブラジルのサンパウロにて大型プロ柔術・グラップリングイベントBJJ BET02「Who’s Next」が行われ、Flograpplingにて中継される。ワンマッチと8人参加の88キロ級のノーギトーナメントで攻勢される今大会だが、新旧バラエティに富んだグラップラーが参戦するトーナメントの1回戦で米国の新鋭ウィリアム・タケット✖ホウジマール・トキーニョという一戦が組まれている。

かつて凄まじい極め力でグラップリングとMMAの両世界で恐れられたホウジマール・トキーニョの参戦──彼が勝ち進めば、現在進行形のグラップリングワールドでは見ることのできない夢の顔合わせが実現することとなる。



ダナファー・デススクワッドの開催を宣言したジョン・ダナハーが、トランジッション化した足関節システムを構築する以前から組み技、MMAを追って来たファンが、最も胸を躍らせるのがトキーニョの参戦だろう。そのトキーニョと戦うのは、同トーナメント唯一の米国人であるタケットは、今年3月に黒帯を取得したばかりの20歳。北米グラップリング界を代表するニュースターの1人だ。積極的に動きを作り、上下から極めを狙ってゆく戦い方を身上とする。

(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

とはいえ3月のF2W 166でマニュエル・ヒバマーをヒールで秒殺する等、新春は活躍していたものの、ここ数ヶ月は世界のトップ・オブ・トップスとの対戦が続き4連敗と苦戦を強いられている。

特に先月のRoad to ADCC大会では、クレイグ・ジョーンズの代打としてルーカス・バルボーザと対戦したが、テイクダウンを奪われた後、ボディロックで動きを封じてから胸を合わせてくるバルボーザの侵攻を止められず、なんと0-34という大差の敗戦を喫してしまっている。

対するトキーニョは41歳。無造作に相手の懐に入って高々とリフトしてしまう怪力と、外ヒールやそこから変化するヒザ十字等を中心とした強烈無比な極めで恐れられた選手だ。2011年のADCC世界大会では3試合連続でヒールで相手を秒殺し、決勝こそアンドレ・ガルバォンに敗れたものの世界にその名を轟かせた。

2008年から参戦していたUFCにおいてもその極めは猛威を振るっていたが、最大の欠点は精神のコントロールが効かないこと。相手のタップ後も技を離さないことが重なり、また検査にて規定値を大きく上回る濃度のテスタトロンが検出される等の問題もあり、2013年に契約解除されている。

その後WSOFに転出して王者となるが、ここでもジェイク・シールズ相手に目突きを繰り返したうえ、キムラロックでタップを奪った後も技を解かず、タイトル剥奪&契約解除された。

その後は2016年にPolaris 3でゲイリー・トノン、2018年にKasai pro 3でクレイグ・ジョーンズ、2019年にはワールド柔術フェスティバルでゴードン・ライアンといった新世代の足関節技師たちとノーギグラップリングで試合するが、トノンには押され気味の引き分け、ジョーンズ相手には減量失敗でほとんど動けず防御に徹し、ライアンにはバックを奪われてコントロールされての判定負けを喫している。

今回2年ぶりに表舞台に姿を現すトキーニョ。当日どのような肉体的&精神的コンディションで臨むのかも未知数だが、41歳という年齢や近年の戦いぶりを考ると、現代グラップリングの最先端を行くタケットとの戦いは厳しいものとなりそうだ。

が、もし一瞬でもその往年の強さが発揮されるなら、会場が興奮の坩堝と化すことは間違いないだろう。

■視聴方法(予定)
8月2日(月・日本時間)
午前5時00分~FLOGRAPPLING

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MMA ONE Road to ADCC ウィリアム・タケット クレイグ・ジョーンズ ルーカス・バルボーザ

【Road to ADCC】えげつないバルボーサの加点殺法でタケットを返り討ち、改めてクレイグ戦呼びかける

【写真】20分間、特にポイントの入る後半10分にこれをやられ続けるとそれは苦しい(C)CLAYTON JONES/ROAD TO ADCC

17日(土・現地時間)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンでRoad to ADCCが開催された。来年開催予定のノーギグラップリングの祭典=ADCC世界大会への前哨戦として位置付けられたワンマッチ大会は、注目の対戦が並んだ。
Text by Isamu Horiuchi

Road to ADCCプレビュー最終回は、クレイグ・ジョーンズとの注目の対戦を負傷欠場で逃したルーカス・バルボーザが、ポイントルールの特徴を生かした足を戻させて、得点加算方式のえげつない試合を代役ウィリアム・タケットにやってのけた一戦を振り返りたい。

<88キロ級/20分1R>
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
Def. 34-0
ウィリアム・タケット(米国)

当初バルボーザと対戦予定だったクレイグ・ジョーンズの手の負傷により、実現したこの試合。昨年バルボーザに抑え込まれ完敗したタケットとしては、進歩を見せてリベンジを果たしたいところだ。開始時から引き込むとペナルティを取られることもあり、まずは両者ともスタンドレスリングで戦う。

アトスの代名詞である、相手の首をつかんで押さえつける動きを多用して前に出るバルボーザは、4分過ぎにダブルレッグに入り豪快にテイクダウンに成功した。クローズドガードを取ったタケットがやがてガードを開くと、バルボーザは低く入ってボディロックへ。

強大な上半身でタケットの腰を固定したまま片足を越えようとするが、距離を作られる。その後もバルボーザは低い体勢からの侵攻を試みるものの、タケットは足を利かせ腕でフレームを作り、または掌で口を塞ぐという手段で守っている。

やがて蹴って距離を取ることに成功したタケットは、再びバルボーザが入ってくるところに、インバーテッドの形から左足を掴んで足を絡めることに成功。ヒールを嫌がって背中を向けたバルボーザのバックを狙うが、反転を許し正対される。

前回の対戦ではバルボーザのボディロックパスを許したタケットだが、ここまでは譲らず渡り合っている。

低く入ったバルボーザは、再びボディロックへ。タケットはラバーガードのロンドンの形で自らの右ヒザ裏を通してグリップを組み、バルボーザの体を押し戻そうとするが、動かざること山の如し。

やがてタケットがグリップを解くと、すかさずバルボーザはその左足を跨いでハーフで胸を合わせたのだった。

最重要ディフェンスラインをついに超えられて動きを封じられたタケットは、足の力を抜いてマットに投げ出してバルボーザのパスを誘う。いったんそれに乗ったバルボーザはサイドに出るが、残り約30秒で加点時間帯ということを悟ってか、タケットの上半身をがっちり固めたまま再びハーフの中に入った。

相手を抑えたら動かさない、自分も無駄な動きはしない。見る者には優しくないが、優れて合理的な戦い方だ。

そして加点時間帯が始まると、バルボーザは絡まれている左足を抜いてサイドに出て3点。胸を合わせられて動けないタケットに、さらにニーオンザベリーの体勢を作って加点する。その後サイドに戻ったバルボーザは、あえて一度ハーフの中に入ってからパスし、マウントへ。

こうして上半身のロックは解かないまま、バルボーザはどんどん点を重ねていった。

17点を失った後、タケットはやっとインバーテッドから距離を作ることに成功。一旦離れたバルボーザだが、再び低く入ってボディロックを作った。

その後は同じことの繰り返し。バルボーザが上半身のプレッシャーでタケットの動きを封じたまま、試合終了までパス、マウント、ニーオンザベリー等で加点を続けていき、実に34-0というスコアで勝利した。

動きたいタケットにそれを許さず完勝したバルボーザは「良い気分だ。クレイグ、俺はいつでもいい、今からやろうぜ。ウィリアムはタフキッドだけど、クレイグと同じ戦い方をするから準備に問題はなかったよ。俺は88キロのほうが速く動けるし、スタミナも全然あるし、よりテクニックを使えるから気に入ったよ。本当はフィニッシュしたくて、ノースサウスチョークやキムラ、ヘッド&アームのカタグルマ(肩固めの間違いか?)を狙ったけど、ウィリアムはすり抜けるのが上手かったんだ」と、欠場したクレイグ・ジョーンズとの対戦を呼びかけた。

見ていてあまり面白いとは言い難いバルボーザの戦い方だが、きわめて強力にして打開が困難な壁を相手にジョーンズはどう動きを作るのか、傷が癒え次第、対照的なスタイルの両者の対戦に期待したい。


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MMA ONE Road to ADCC ケイド・ルオトロ ロベルト・ヒメネス

【Road to ADCC】20歳のラミレス、18歳のケイド・ルオトロとのノンストップファイトをRNCで制す

【写真】ダイナミックなノンストップアクションが見られたヒメネス✖ルオトロは大会ベストバウトといって良い試合だった(C)CLAYTON JONES/ROAD TO ADCC

17日(土・現地時間)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンでRoad to ADCCが開催された。来年開催予定のノーギグラップリングの祭典=ADCC世界大会への前哨戦として位置付けられたワンマッチ大会は、注目の対戦が並んだ。
Text by Isamu Horiuchi

Road to ADCCプレビュー第4回は1歳8のケイド・ルオトロ、20歳のロベルト・ヒメネス──グラップリング界の未来が、繰り広げたノンストップアクションの模様をお届けしたい。

<88キロ級/20分1R>
ロベルト・ヒメネス (米国)
Def. 14分04秒by RNC
ケイド・ルオトロ(米国)

アンドリュー・ウィルツィの代打として急遽出場を決めたケイド。実は前回の試合以降はコスタリカでサーフィンをしていたとのこと。

試合開始後、体格に勝るヒメネスは積極的に前に出て、ダックアンダーを仕掛け、飛び込んでのテイクダウンを狙う。が、ケイドは回りながらうまく捌いてゆく。さらに前に出るヒメネスに対し、それまで下がっていたケイドはカウンターのダブルレッグを仕掛ける。見事なタイミングで倒されたヒメネスだが、すぐにバタブライガードから腕を伸ばして距離を取り、立とうとする。

ケイドがそれを押し倒し、それでもヒメネスが立ちにきたところで飛び上がって旋回──ファーサイドにあるヒメネスの左腕にアームバーを仕掛けた。

うつ伏せで極めにきたケイドに、一瞬腕を伸ばされかけたヒメネスだが、なんとか抜くとそのまま体重をかけてパスに成功する。ケイドはすぐに足を絡めてリバースハーフを作ると、そのまま起き上がってリバーサルしマウントを取って見せた。

ならばとヒメネスも下から動き続け、やがて腕を伸ばして距離を取り、マウントから脱出しつつ立ち上がる。そのままケイドのバックに回ったヒメネスに対し、ケイドは豪快にダイブして前転、上を取り返して見せた。ここまでわずか3分、18歳のケイドと20歳のヒメネスというグラップリング界の未来を担う二人が、一瞬で優劣が入れ替わるノンストップのとんでもない攻防を展開している。

右ヒザを前に出してパスのプレッシャーをかけるケイドに対し、ヒメネスは下から回転してケイドの右足をキャッチする。

ケイドが動いて逃れると、ヒメネスは再び下から回転して右にヒザ十字を仕掛けるが、ケイドはこれも脱出した。

足関節に難があると見られたヒメネスだが、自ら積極的にその攻防を挑んでいる。立ち上がったケイドは、またしても右ヒザからパスのプレッシャーをかけるが、ヒメネスはインバーテッドで対応する。ケイドはヒメネスの左足を捌いて左にパスを決める。ヒメネスはすかさず動いて隙間を作って起き上がると、ケイドのバックを狙う。そうはさせじとスクランブルするケイドだが、ボディロックを取ったヒメネスが押し倒して上になる。左のデラヒーバでケイドが絡むもの、ヒメネスは右ヒザを押し下げてパスに成功する。

なおも下から動くケイドだが、ヒメネスはノースサウスに移行した。体重が軽い上に、急遽出場を決めたケイドは激しく動く序盤でコンディショニングの差が出てきたか。

ヒメネスはケイドの右腕をワキに抱えて腕十字を狙う。ケイドはすかさず起き上がり、腕を抜きながら上に。クローズドガードを取ったヒメネスは、ケイドの両ワキを差して背中でグリップすると、体をずらしてのバック狙いへ。この動きは、ケイドの兄タイがヒメネスにやられたパターンだ。バックを譲られるのを嫌がったケイドが下になると、ヒメネスはマウントを奪った。

一度ここからノースサウスに移行したヒメネスが、再びマウントに入るその瞬間、ケイドは体を翻してリバーサルに成功する。ワキを差されながらも強引に左ヒザを入れてパスを狙うケイドだが、さすがに強引過ぎる。

ヒメネスはまたしても体をずらしてバックに回り、上を取り返した。

中盤、ケイドが防戦を強いられる場面が目立っている。いったんサイドに付いたヒメネスだが、ケイドのバギーチョークを警戒してか再びノースサウスに入る。ここで試合は10分を経過して加点時間帯に。諦めずに動き続けるケイドがスクランブルを試みてうつ伏せになるも、読み切っていたヒメネスはすかさずバックテイク&4の字フックで固めて3点を先取した。

さらに右足でケイドの右腕をトラップしたヒメネスは、それでも懸命に守ろうとするケイドの首に右の手首をこじ入れると、RNCを完成させタップを奪ってみせた。

最後は前回と同じ技で敗れてしまったケイドだが、序盤ヒメネスを極めかけて、さらにマウントも奪った動きは驚愕のもの。77キロで同体格の相手に、しっかりと調整した上で戦えば、ケイドもまた来年の世界大会では台風の目になることは間違いないと思えるほどの輝きだった。

そんなケイドの序盤の猛攻を凌いで攻め返し、後半には力の差を見せつけたヒメネス。現代的な目まぐるしいスクランブルの攻防や足関節技に対応するだけでなく、懐の深いクローズドガードからのバック取りという、柔術家ならではの武器をここぞというところで使うあたりが心憎い。

ヒメネスは試合後「勝って嬉しいよ。まだ修正すべき細部はいろいろあるけど、ステイポジティブに行きたいね。僕はルオトロ兄弟からは、いろいろなインスピレーションを得てきたんだ。僕がまだ黄色帯の頃に、年下の彼らはもうスポンサーを得ていたりね。今日もあのテイクダウンには驚いたよ」とケイドを称えた。

さらに「僕はブルース・リーのフィロソフィーに心酔しているんだ。つまり、スタイルを持たないこと。リーの教えの通りに、僕自身の戦い方、僕自身の表現法を探すこと。それこそが僕のミッションさ。ところでFlograpplingはカナビス(大麻)のスポンサーシップを得ないのかい? ロックオート(現在Flograpplingをスポンサーしている車の部品会社)って僕は良く知らないんだよ」と、自由な魂の持ち主ならではのコメント(ちなみに彼はマリファナを薬草の一つとしてとらえ、もはや吸うことはなく、それら薬草を、チンキ剤として服用したりお茶にして飲んだり野菜のように食べたりする形で摂取しているとのこと)。

類い稀なる才能に恵まれた若き柔術家の自分探しの旅路が、今後どこに向かい、来年のADCC本戦でどのように花開くのか──非常に楽しみだ。

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MIKE MMA ONE Road to ADCC カイナン・デュアルチ マテウス・ジニス

【Road to ADCC】カイナン・デュアルチ、2分03秒──クローバーリーフでマテウス・ジニスを一蹴

【写真】日本ではクロスヒール、米国ではレッグレイスやクローバーリーフと呼ばれているフィニッシュ (C)CLAYTON JONES/ROAD TO ADCC

17日(土・現地時間)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンでRoad to ADCCが開催された。来年開催予定のノーギグラップリングの祭典=ADCC世界大会への前哨戦として位置付けられたワンマッチ大会は、注目の対戦が並んだ。
Text by Isamu Horiuchi

Road to ADCCプレビュー第3回はメインイベント、ADCCのチャンプチャンプ対決=カイナン・デュアルチ✖マテウス・ジニスの一戦の模様をお届けしたい。

<無差別級/20分1R>
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
Def.2分03秒 by クローバーリーフ
マテウス・ジニス(ブラジル)

試合開始後、デュアルチがジニスの首に手をかけて軽く引くと、大きくバランスを崩す。前日の軽量では8キロほどの差だが、それ以上に両者にはパワー差があるようだ。

前に出るデュアルチは、ジニスのシングルをあっさり防ぐと、またしても首を押し下げて崩し、そこから小外刈りにテイクダウン。本来下になりたくないはずのジニスだが、あっさり上を許してしまった。

(C)MIKE CALIMBAS

さらに左足をステップアウトしてリバースハーフを作ったデュアルチは、下になりつつインサイドサンカクをセットする。

ここからジニスの右足を巻き込んだクローバーリーフ──いわゆるクロスヒールホールドの形で左足をキャッチ。RNグリップから右の掌でかかとを掴んで捻り上げると、ジニスはタップした。

わずか2分03秒で圧勝したデュアルチは試合後に「もう少し自分の柔術を見せることができればとは思ったけど、極めるチャンスがきたからね。本当はパスも狙いたかったんだけどね。マテウスは、体重差にもかかわらず試合を受けてくれて感謝しているよ。僕はこれまでヒーフルックを2度極められていて、自分の弱点が分かっていたからそこを重点的に練習してきたんだ。今まではギとノーギを並行してやってきたけど、最近はノーギに集中しているんだ」と語った。

来年の世界大会無差別級の優勝候補最右翼と見られるデュアルチ。2019年の前回大会では中量級のラクラン・ジャイルスに、また昨年はサイボーグことホベルト・アブレウにヒールフックを取られたことから、しっかりと対策をしてきたようだ。立ち技も強く、トップからもボトムからも戦うことができて、さらに足関節等極めの力もあるこの23歳を誰が止めるかが、来年の本戦の見所になりそうだ。

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MMA ONE Road to ADCC ダンテ・リオン ニッキー・ライアン

【Road to ADCC】ADCCで頂点に立つために進化。ニッキーがレスリングアップ&パスでリオン下す

【写真】レスリングアップからリバーサル、そしてパスというのはADCCで最高のポイントアウトといえる。ここがあることで、足関節等もさらに仕掛けやすくなるだろう (C)CLAYTON JONES/ROAD TO ADCC

17日(土・現地時間)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンでRoad to ADCCが開催された。来年開催予定のノーギグラップリングの祭典=ADCC世界大会への前哨戦として位置付けられたワンマッチ大会は、注目の対戦が並んだ。
Text by Isamu Horiuchi

Road to ADCCプレビュー第2回は、後半はポイント有りのADCCで勝てるよう進化の過程にあるニッキー・ライアンとダンテ・リオンの一戦の模様をお届けしたい。

<175ポンド契約/20分1R>
ニッキー・ライアン(米国)
Def. 5-0
ダンテ・リオン(カナダ)

前回のヒカルド・アウメイダ戦においてスタンドレスリングで勝負したニッキーは今回も積極的に前に出ては、リオンの首に手をかけていなしにゆく。

そしてダブルレッグテイクダウンを仕掛けるが、リオンががぶって体重をかけるとニッキーは頭を抜く。

約3分経過時点で、ニッキーが再び飛び込んでダブルへ。リオンは倒されながらもすぐにオモプラッタを狙うが、ニッキーが正対して防いでクローズドの中へ。

すぐに立ち上がったニッキーは、リオンのガードを開かせると、左足を狙って足を絡めて倒れ込むが、リオンは落ち着いて絡みを外しながら立ち上がった。

右ヒザを前にパスのプレッシャーをかけるリオンに対し、ニッキーは内掛けで右足に絡むと内回りを狙うが距離を取られる。

リオンが再び前にプレッシャーをかけ、ニッキーは後転するように前に崩すと、その刹那、立ち上がってダブルへ移行し見事にテイクダウンを決める。上になったニッキーは再び倒れ込んで50/50&内ヒールを狙うが、ここもリオンは距離を取って立ち上がった。

ニッキーは、スタンドレスリングとガードからのレスリングアップという、まさに最近の試合で試してきた動きでリオンと堂々勝負している。対するリオンの方も、ニッキーの足関節にしっかりと対処。両者との進化が窺える攻防だ。

もともと得意のシッティングガードを取ったニッキーに対して、リオンはヒザを入れての侵攻を試みるが、巧みな腕のフレームと左ヒザのシールドに阻まれて攻め込めない。やがて左手のフレームで距離を取ったニッキーが、瞬時にシットアップしてダブルへ。またもや見事にレッスルアップして上を取ってみせた。

三たび上になったニッキーは、今度は足を狙わずに横にパスを狙うが、リオンは対応してデラヒーバガードに。やがてリオンが距離を取って立つと、ニッキーは座り込む。加点時間帯に入る前にスイープを取らせて下になろうという考えだったのかもしれないが、自ら座ったことは明らかだったのでニッキーに引き込みのペナルティが与えられた。

試合は10分を経過して加点が開始。シッティングのニッキーは、再びリオンを前に崩してからのダブルレッグを仕掛ける。が、これまであまり抵抗せずに倒されていたリオンが踏ん張る。それでも前に出たニッキーはリオンの背中を付けさせるが、動きが止まらないうちにリオンは振りほどいて立ち、両者は場外となりブレイクが掛った。

再開後、逆にリオンが右にシングルを仕掛けるが、ニッキーは距離を取る。今度はニッキーがダブルへ。尻餅をつかされたリオンだが、ここでも勢いが止まらないうちに距離を取り、場外際で立ち上がる。

再びスタンドに戻った両者。ニッキーはまたしてもダブルに入る。深く入ってクラッチを組んだニッキーは今度はゆっくり倒して勢いを作らせず、ついに上を取ることに成功した。

倒すと同時に、ニッキーはハーフ&ボディロックの状態と取る。腰を固められたリオンは足を使って浮かそうとするが、ニッキーはすかさず右足を超えてサイドに。テイクダウンとパスガードのあまりに見事な融合を見せたニッキーが、5-0とリードした。

さらに上四方から逆側のサイドに回ったニッキーは、右腕でリオンの顔面を圧迫する。嫌がったリオンが上体を起こしたところで、すかさずバックを狙うという理詰めの攻めを見せるニッキー。対してリオンもすぐに動いて、下のリオンと上のニッキーがお互いにバックを狙い合うような格好にとなり、揃って距離を取り立ち上がった。

残り6分でスタンドに戻るが、ここで右足をひきずりはじめたニッキーは、二つ目のペナルティを承知ですぐに座り込んでシッティングガードへ。

リオンは右ヒザから侵攻を試みるが、ニッキーの強固なニーシールドと左腕のフレーム阻まれ、形を作れない。先ほどまで何度も下からのレスリングアップを決めたニッキーは、足の負傷を受けて防戦に徹している。

怪我をしてなおかつ鉄壁のガードを見せるニッキーの前に、リオンは攻撃の糸口を見出せないまま時間が過ぎてゆく。最後は足を狙って自ら倒れ込んだリオンだが、この分野の専門家のニッキーは難なく防御して試合終了。

立ち上がって勝ち名乗りを受けたニッキーは、歩くのも困難で、師ダナハーらセコンドに肩を借りて試合場を去った。

放送席でインタビューを受けたニッキーは「上になろうとして、自分のかかとが尻に食い込むような形になったんだけど、その時スプロールされて外側に異変を感じたんだ。右ヒザさ。試合内容自体はすごくハッピーだよ。前の2戦では、僕がジムでやってきたことのほんの一部しか見せられなかったけど、今回はそれが見せられた。途中で怪我してしまったのは残念だけどね。怪我してからはもうレッスルアップできないと分かったから、防御に徹して、足を狙うくらいしかなかったんだ。でもADCCルールでは、僕の新しいスタイルはすごく有効だと思う」と語った。

実際、負傷するまでは強豪リオンに凄まじい強さを見せつけたニッキー。今回の試合で見せた進化の意味は大きい。以前は完全に下派だった彼が、スタンドレスリングとレスリングアップの二つを徹底強化。引き込みがマイナスになるルールにおいてスタンドで相手と渡り合う力と、上から膠着を試みる相手への強力なカウンターの手段を手に入れたことになる。

また、途中で見せたダブルレッグとボディロックパスの融合や、パスを決めてから相手に逃げ道を作っておいてバックを狙う動き等も、きわめて理詰めの素晴らしい展開だった。何より負傷して新しい武器が使えなくなった後は、以前からの強みであるシッティングガードを用いて鉄壁の防御は見事なばかり。

もし今後も大怪我等をすることなく進化を続けるようなら、世界最強の兄ゴードン以上に完成された組技師──師のジョン・ダナハーが言うところの「スーパーグラップラー」──へと成長する可能性さえ感じさせたニッキー・ライアン。負傷が癒えた後の、この20歳の若者のさらなる戦いに目が離せない。

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MMA Road to ADCC   ジオ・マルチネス ブログ マイキー・ムスメシ

【Road to ADCC】ノーギでの進化が止まらないムスメシが、ジオに快勝も切れまくり!!

【写真】試合内容には満足も、ジオ・マルチネスとのやり取りに憤慨していたマイキー──試合中の冷静さとまるで別人のようだった(C)ROAD TO ADCC

17日(土・現地時間)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンでRoad to ADCCが開催された。来年開催予定のノーギグラップリングの祭典=ADCC世界大会への前哨戦として位置付けられた、豪華きわまりないワンマッチ大会。
Text by Isamu Horiuchi

プレビュー第1回は、ノーギに専念して数ヶ月で急激な進化を続けるマイキー・ムスメシを、10th planet柔術軽量級エースのジオ・マルチネスが迎え撃った注目の一戦の模様をレポートしたい。

<66キロ級/20分1R>
マイキー・ムスメシ(米国)
Def. 6-0
ジオ・マルチネス(米国)

試合場に上がった両者。戦前から「尊敬する友人のジオと戦えて光栄だ」と友好的な態度を崩さなかったムスメシが握手を求めるが、「マットに上がったら友人だとは思わない。そもそもあいつはいつも偽善的に微笑んでいて気に入らない」と戦闘モードを取っていたマルチネスはそれを無視した。

試合開始。引き込むとペナルティを受けるルールだけに、ムスメシは頭を付けてのスタンドレスリングに挑む。が、体格に勝るマルチネスは前進して左で脇を差すと、体落としでテイクダウン。あっさりと倒されたムスメシだが、加点時間対開始前なので失点はなし。なおかつ引き込みのペナルティも取られずに下になることに成功したとも言える。

オープンガードをとったムスメシに対して、右にパスを仕掛けるマルチネス。エビで反応したムスメシは、すぐにマルチネスの右腕を両手で抱えると、あっという間に旋回して足をこじ入れてファーサイドのアームバーに。回転して逃れようとするジオだが、その腕は完全に伸ばされてしまっている。強烈に極まっているように見えるがタップしないマルチネスは、強引に立ち上がりながら腕を引き抜いた。

逃げられたムスメシは、すぐに下からマルチネスの右足に足を絡めて崩すと、左足にトーホールド狙い。さらに内ヒールに移行して極めにゆくが、マルチネスは腰を引いて支点のニーラインをクリアして危機を回避、上に戻った。ここまで3分足らずだが、ノーギの練習に専念して5カ月のムスメシが恐るべき仕掛けのタイトさを見せつけている。

その後もムスメシは積極的に下から足を絡めては極めを狙う。が、この攻防は熟知しているマルチネスも防御しては足を取り返す展開に。ムスメシは内回りや外回りを狙うが、マルチネスは距離を取ってポジションは取らせない。ダブルガード状態で足を取り合うなか、何やらマルチネスがムスメシに話しかけ、ムスメシも応じている。

ムスメシは、2019年の世界柔術決勝でホドネイ・バルボーザを秒殺した強烈なストレートフットロックのグリップも用いて、内ヒール、外ヒールと積極的に仕掛け、また回転してのバックも狙ってゆく。このムスメシのノンストップ・アタックに対して、マルチネスは守勢になりながらも、最初の腕十字以降は危ない場面に追い込まれることはまま時間が過ぎていった。

残り4分半になったとところで、ダブルガードの攻防では押され気味だったマルチネスが立ち、右のニースライスを狙って前に体重をかけてゆく。するとムスメシは後転するようにマルチネスを前に崩してから、すかさずベリンボロへ。ここでついにマルチネスの背後に回ってクラブライドに持ち込んだムスメシは、ヒザをついたマルチネスの背中に登る。

足を一本フックされたマルチネスは回転して正対を試みるが、ムスメシはタイトにマルチネスの背中に密着。やがて襷掛けのグリップを作ったムスメシは、もう一本の足も入れてフックを完成。残り3分のところで先制の3点を奪った。

その後もマルチネスは動き続けるが、ムスメシは背中から離れない。一瞬マルチネスは体を捻って正対したかに見えたが、ムスメシがバックに付き直すとさらに3点が追加される。さらにマルチネスはムスメシを背に乗せたまま立ち上がって落とそうとするが、ムスメシの密着は解けず。仕方なくマルチネスはダイブするように前転してのスクランブルを狙うが、ムスメシは背中から離れず。そのままムスメシがチョークを狙い、マルチネスが守る中で試合が終了した。

フックを解いたムスメシと向かい合ったマルチネスは、握手をしながらなにやら声をかける。ムスメシはそれに対して不満げに言い返し、さらにマルチネスのセコンドのエディ・ブラボーに挨拶する際にも、なにやら訴えかけていた。

放送席で勝利者インタビューを受けたムスメシは、怒りが収まらない様子で「僕は同じ黒帯としてジオのことをすごく尊敬していたのに、今日のマットでのあの態度には失望したよ。なんて品格がないんだ。試合前には僕がポルトガル語を話すことを馬鹿にして、僕がブラジル人みたいだとか、他の文化にリスペクトを表することを嘲笑った。あんな奴が黒帯だなんて、信じられないよ! いくら柔術のスキルが高くても、黒帯の資格なんかない!」とまくし立てる。

さらに試合中のやりとりについて聞かれると「僕は試合中は何も話してないよ。ただ奴がさんざんこっちを罵り続けたんだ。なんてアマチュアな態度だ! だから試合後に奴に言ってやったんだ。『僕は試合に勝つことにこだわりなんかない。僕らは次の世代に模範を示すためにやってるいんだ』ってね。奴の振る舞いは本当に馬鹿げている」とその興奮は止まらない。

さらに試合展開について聞かれると「それは満足しているよ。僕にとってビッグチャレンジだったからね。レスリングをやらなくてはならないから、今までで一番大変だと分かっていたんだ。でもなんとかしたよ(笑)。序盤の腕十字は極まったと思ったんだけどね。ジオの柔術自体はインクレディブルだよ。若い頃からファンだったんだ。いつも応援していた。なのに変わってしまった。もう自分のフォロワーへの受けしか考えていないんだろうね。柔術のスキルはすごくリスペクトするけど、人間としてはゼロ・リスペクトだ。僕は下の帯の選手達が、この試合での彼の振る舞いを見ているってことが我慢ならないんだ。ありえないよ。こんな態度をジムで取ったら出入り禁止にされるべきだよ。トーナメントでも同じだ」と、結局マルチネスへの怒りを蒸し返してしまった。

そんなムスメシは最後に今後の展望について聞かれて「みんな、僕は来年のADCCに出る資格があるかい? 興奮しちゃってすまない。この5カ月、僕は文字通り1日も休まずに練習してきたんだ。そしてものすごく上達している。まだまだ課題はすごくたくさんあるけどね」と、前向きに語った。

一方、言われ放題のマルチネスも「いったいなんであんなに怒るんだ?」と驚きを隠せない様子だったが、さすがに黒帯失格とまで言われると「試合後には一緒にピザでも食うのもいいかなと思っていたけど、もうイヤだ。奴はフェイクスマイルの奥にある本性をさらけ出したな。だいたい奴はこれまで何回所属を変えているんだよ。俺の師匠はずっとエディで変わらない。そういうことだ」とグラップリングとは関係のないところで中傷しあうようになってしまった……。

両者の遺恨についてはさておき、ノーギに本格的に取り組んで半年と経っていないムスメシは、強豪マルチネスにも快勝。序盤にタイトな腕十字を極めかけた上、足の取り合いや回転してのバックの取り合いといったマルチネスの得意分野でも試合を支配し、至高の柔術ファンダメンタルとノーギの技術の融合がますます進んでいることを見せつけた。

同時にスタンディングレスリングや、ノーギにおいて極めきる技術等、さらなる向上の余地も見えたこの試合。本人が「これが達成できたら、僕はもうハッピーに死ねるよ」とすら語る最後の目標=来年のADCC世界大会制覇に向け、天才児の急速な進化を現在進行形で目の当たりにできる我々の幸運は、まだまだ続いてくれそうだ。


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