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Report Shooto2020#08 ダイキ・ライトイヤー ブログ 田丸匠

【Shooto2020#08】勝負に出で疲弊した田丸匠だが、ダイキ・ライトイヤーをマルセロチンで斬って落とす

【写真】個人的に田丸は天才ではなく工夫と努力の人だと思っている。今回も試合結果の印象ほど楽でなかった内容で、上を取られた時にこのリバーサルを決めたのは本当に日頃の練習の成果ではないだろうか。勝負を決めたマルセロチンがあったのも、このリバーサルがあったからだ (C)MMAPLANET

20日(日)に大阪市淀川区のメルパルクホールOSAKAで、本年度最後のプロ修斗興行=Shooto2020#08が行われた。ここではセミファイナル、田丸匠✖ダイキ・ライトイヤーの一戦をお届けしたい。

8月に環太平洋王座決定戦で安藤達也にKO負けを喫した田丸匠が、3度目のキャリアの仕切り直しへ。その第一歩としてダイキ・ライトイヤーと相対した。

<フェザー級/5分3R>
田丸匠(日本)
Def.2R3分38秒by マルセロチン
ダイキ・ライトイヤー(日本)

左の蹴りを多用する田丸に対し、ダイキ・ライトイヤーも前蹴りを見せる。蹴りの距離と思いきや左ジャブを伸ばすダイキ・ライトイヤーは田丸の前足の上下を使い分ける蹴りを見つつ、前に出る。

と、田丸は後ろ回し蹴りを狙い、かわしたダイキ・ライトイヤーが左ハイを狙う。田丸が蹴りのフェイクから飛び込んで組みにいくが、直ぐに体を入れかえたダイキ・ライトイヤーが上腕を顔の押し付け押し込んでいく。

田丸もすぐに左に回りヒザを見せて離れると、右ボディから右の蹴り、さらに左ミドルを狙う。捌いて右を見せつつ左の蹴りをダイキ・ライトイヤーが放ち、田丸は急ぎ間合を外す。

ライトコンタクトの騙し合いのなか、田丸が低い姿勢で入りシングルレッグへ。バックに回ろうとしたダイキ・ライトイヤーをスラムのようにテイクダウンする。ダイキ・ライトイヤーがハイガードから三角絞めに入ると、田丸は持ち上げてスラムし、腕を抜いて担ぎパス。

頭を押して立ち上がったダイキ・ライトイヤーだが、田丸はヒザをついた状態でアンクルピックでもう一度倒すと足を束ねた状態でギロチンに入る。

背中をマットにつけて防御したダイキ・ライトイヤーに対し、田丸はハーフからマウントへ移行する。

殴られて下を向いたダイキ・ライトイヤーにRNCを仕掛けた田丸は、ロールして仰向けになり──残り時間が少ないことから全力で絞めあげる。

背中が反れ、かなりタイトにチョークが入るがダイキ・ライトイヤーはタイムにラウンド終了まで耐えきった。

2R、田丸は右の蹴りをブロックしたダイキ・ライトイヤーが、続いて右の狙われたところでスピニングバックフィストを放ったのか、背中を向ける。田丸は距離を潰していたが、打ちどころが悪かったのか、なぜか後退する。

田丸は直後にダブルレッグを決めるも、下からのエルボーに受け動きが止まっている。あるいは初回の絞めでスタミナをロスしたのか、とにかく動きが落ちた田丸がダイキ・ライトイヤーをケージに押し込み、右足を両足で束ねる。

足を抜いてバックに回ろうとしたダイキ・ライトイヤーが、右腕を腰に回した田丸が前方に落として上を取り切る。立ち上がったダイキ・ライトイヤーは左腕を差して逆に田丸をケージに押し込む。そのままクラッチして、払い腰で田丸を投げ切る。

サイドで抑えられた田丸は、足を絡ませて足関節を狙いつつ、ボディロックに捕えてダイキ・ライトイヤーの左側に頭をぬき、起き上ってリバーサル。ケージを背にダイキ・ライトイヤーが立ち上がろうとすると、先に体を起こした田丸ががぶり頭を固める。

さらに上体を起こして左腕をダイキ・ライトイヤーの首の下に入れ、ハーフからクローズドに組みつつマルセロチンを完成させる。前転ができないダイキ・ライトイヤーは観念してタップした。


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J-CAGE Report Shooto2020#08 ダイキ・ライトイヤー ブログ 田丸匠

【Shooto2020#08】「30歳でピークに。もうソロソロ形にしないと」──田丸匠、ダイキ・ライトイヤー戦へ

【写真】もうソロソロという気持ちは、勝利と共に固まっていく (C)MMAPLANET

20日(日)、大阪市淀川区のメルパルクホールOSAKAでTTFC09と二部制興行でプロ修斗公式戦Shooto2020#08が開催される。

メインで田中有✖キャプテン☆アフリカの環太平洋ライト級王座決戦が組まれ、ティーンエイジ・センセーション=西川大和の大阪初進出など注目カードが組まれるなか、田丸匠がダイキ・ライトイヤーと対戦する。

8月に安藤達也に敗れ、バンタム級タイトル戦線で後退を強いられた田丸は、臨機応変&柔軟MMAをより強固なモノにするために一歩踏み出す。


──群雄割拠の修斗バンタム級、2020年最終興行の大阪大会でダイキ・ライトイヤー戦です。

「自分の思っていた道筋とは違います。でも格闘技で強くなることを目的にしているので……この前の試合は負けたのですが、バンタム級になってあれだけ前に出ることができたのは自信にもなりました。バンタム級でも前に出ることができることを確認できました。

これで下がっても、前に出ても、積極的でも消極的でもという選択肢がある中で焦らず、中間が取れるとまた一つ進めるのかというのが見えたので。格闘技で強くなるという目的だと、外れていないと考えています」

──前に出ることが確認できたということは、これまでは出なかったのでなくて、出られなかったということですか。

「僕としては前に出て、打ち合って倒せる選手は格好良いとは思っています。でも、そういう才能はなくて、相手のない技術に自分の持っている技術を合わせて戦ってきました。それが下がりながら、後だしジャンケンのようなファイトだったんです」

──後の先ですね。

「それが自分よりフィジカルのある相手と戦う時のスタイルでした。でも最近は前に出ても倒せるし、見えて来たんです。まぁ、貰っちゃったんですけど(苦笑)。調子に乗ってしまいました」

──自分を倒した安藤達也選手が、DEEPからやって来た大塚隆史選手に敗れました。

「どうしたのって思いました。最後はアクシデントだと思いますけど、その前に普通にカットしろよって。安藤選手は凄く才能のある選手ですし、同じ修斗で戦っている仲間が負けて悔しかったです。でも大塚選手がDEEPで戦っていたとかいうのは関係ないです」

──『田丸、誰?』って言われていましたね(笑)。

「でも、1階級下の選手ですね──とか言っていて。知ってるじゃないって(笑)。とにかく僕は明日の試合のことを考えます。自分のスタイルが確立していく試合にしたいんです」

──というのは?

「今24歳で、30歳の時にピークを迎えるために骨組みを完成させたいんです。このままだと中途半端になってしまいそうで。MMAは中途半端さが強さに通じるのかもしれないですけど、自分の勝ちパターンを見つけたいです」

──そういうなかでライトイヤー選手の印象は?

「良いお父さんって感じです。前に挨拶をしたことがって、お子さんと一緒にいて。凄く可愛い子で、その時のダイキ・ライトイヤー選手の顔がやさしいお父さんで……、あの時の表情が凄く印象に残っているんです。

格闘技的にいえばオールラウンダーのベテランで、要領が良い。でも一発はないし、強い部分は少ないです──ディフェンシブな選手。だからKO、一本で勝つことが最低条件です。そのためにも安藤選手と戦った時のように勝負を焦らないことが大切だと思っています。倒しに行くとき……詰将棋の最後の展開で隙を作らない。そういう練習でやってきました」

──24歳、同世代に野瀬翔選手、野尻定由選手、22歳の箕輪ひろば選手がONEで勝ち、23歳の宇田悠斗選手、20歳の平良達郎選手に安芸柊斗選手とさらに若い選手が台頭してきています。

「皆地方だし、嬉しいことです。結局、経験値だと思う瞬間が来ると思います。だから、溜めておいて欲しいです。僕はライリー・ドゥトロに負けて、色々と勉強させてもらうと同時に精神的にかなりしんどい時を過ごしたので。

僕や石井逸人、青井人選手は下がいなかったですからね。でも修斗に限らず、同い年に若松(佑弥)選手もいますし、ここから再スタートのつもりで戦います。

実力云々でなく……そろそろ、形にしていかないといけないと思っています。ケージの中で勝った人間が正義なので、練習でできることを試合でしっかりと出すことができる……ことが確信できる試合にしたいです」

──押忍、試合前日にありがとうございました。

「ハイ。勝って、うどんを食べて岐阜に戻ります(笑)」

■Shooto2020#08対戦カード

<環太平洋ライト級王座決戦/5分3R>
田中有(日本)
キャプテン☆アフリカ(日本)

<フェザー級/5分3R>
田丸匠(日本)
ダイキ・ライトイヤー(日本)

<フライ級/5分3R>
田上こゆる(日本)
永井美自戒(日本)

<キック55キロ契約/3分3R>
有井渚海(日本)
内藤啓人(日本)

<キック60キロ契約/3分3R>
基山幹太(日本)
龍翔((日本)

<73キロ契約/5分2R>
林RICE陽太(日本)
西川大和(日本)

<51キロ契約/5分2R>
中村未来(日本)
古澤みゆき(日本)

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J-CAGE News Shooto2020#07 Shooto2020#08 ダイキ・ライトイヤー ブログ マッチョ“ザ”バタフライ 田丸匠 黒澤亮平

【Shooto2020#07&#08】11月23日に黒澤亮平✖マッチョ・ザ・バタフライ、12月20日は田丸✖ライトイヤー

【写真】修斗はここにきて、何だかんだといっても潰し合いができる選手が揃ってい。 (C)KEISUKE TAKAZAWA & MMAPLANET

Sustainより、10月31日(土)に23日(月・祝)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2020#07、1日(日)に12月20日(月・祝)に存続が決まった大阪市の淀川区にある大阪メルパルクホールで開かれるShooto2020#08の追加カードが発表されている。

後楽園ホール大会はフライ級=黒澤亮平✖マッチョ・ザ・バタフライ、メルパルクホール大会はフェザー級の田丸匠✖ダイキ・ライトイヤーが明らかとなった。


ONEストロー級戦線に内藤のび太、猿田洋祐、箕輪ひろばという歴代王者とタイトルコンテンダーの澤田龍人を送り出している修斗ストロー級において、一時期の体調不良による戦線離脱がなければ黒澤は、その名をここに並べていても決しておかしくない実力者だ。

かつてや空手バカ一代の主人公で、大山倍達のモデルとした空手家・飛鳥拳の中で修斗ストロー級の頂点に立った黒澤は、その世界奪取から2年半のブランク後に本名に戻し復帰を果たした。昨年9月の本田良介戦をスプリットで落としたものの復帰後は3勝1敗、勝った試合は全てフィニッシュしている。

対するマッチョ・ザ・バタフライは地元大阪の試合で3年近く結果が出ない時を過ごし、昨年6月にギロチンで一本勝ちして以来──1年5カ月ぶりの試合となる。総合力は黒澤というのは否定できないが、マッチョ・ザ・バタフライはハマれば一本というギロチンへのプロセスを考え、磨いてこの一戦に臨みたい。王者・箕輪がONE参戦を決めたなか、この試合の勝者が9月のランキング上位対決で飯野タテオを倒した猿丸ジュンジ、7月の大阪大会で小巻洋平から一本勝ちしている本田良介らとのストロー級頂点争いに加わることになる。

黒澤✖マッチョ・バタフライが組まれた後楽園ホール大会で、大塚隆史と対戦する安藤達也との環太平洋王座決定戦で敗れてから4カ月、田丸は再起戦に臨む。対するライトイヤーは悪夢の4連敗(※2つのドローを挟み)から抜け出し、昨年と今年で4連勝と右肩上がりで調子を上げており、MMA通算戦績も4勝7敗から8勝7敗を白星先行まで持ち直している。

天才と異名を持つ一方で、地方のジムの限られた環境で最大限のサポートと工夫で、そのスタイルを確立してきた田丸。その田丸と戦績的には対照的なキャリアを積んできたライトイヤーだが、その実──この2人のマッチアップは雑草✖雑草、草魂の激突といえよう。

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Bu et Sports de combat Interview ブログ 安藤達也 岩﨑達也 田丸匠

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。安藤達也✖田丸匠 「究極の一挙動へ」

【写真】田丸は良い打撃を持っているが、その蹴りに左ストレートを合わされて敗れた(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──安藤達也✖田丸匠とは?!


──田丸選手が三日月のような蹴りを当てて、良いペースで戦っているように見えたのですが、正面のパンチの届く距離での打撃戦で、その蹴りの後に左ストレートを被弾しダウン。そのままパウンドでTKO負けとなりました。

「田丸選手は勿体ない試合でした。実は3年ほど前ですが、彼が稽古に来たことが1度あったんです。あのう……打撃が致命的にダメな人って、MMAファイターのなかにもいるんです。相手を痛めつけることができない人というのが。打ってもただ手を出しているだけで、蹴ってもただ足を出しているだけで倒せない。それでも正しい打ち方をしている。そういう人って……手の施しようがないんです」

──……。

「田丸君はまるっきり逆なんです。全ての蹴りもパンチも痛い、相手が嫌な打撃ができます。それはハッキリいってクオリティの高い練習をしているとか、そういう問題ではありません。きっと地方にいても、彼に合った練習ができているのだと思います。ただし、その練習には隙があるものです。安藤選手には合わされるべくして、合わされています。

田丸選手の打撃はいくらでも良くなります。ミドルにしても中足で蹴っています。中段も上段も蹴っている。全て嫌な攻撃です」

──確かに蹴りがよく入っていました。

「変な蹴りなんですけど、この距離だと安藤選手はもらってしまう。そういう序盤でした。嫌なタイミングで蹴ることができています。セオリーで受け返しという練習をしている選手には、嫌な攻撃になります。この攻撃を練習で育んでいで来たのなら、彼の練習環境の良さです。田丸君のオリジナルです」

──右の前蹴りから右の追い突きという動きもありました。

「あの追い突きは、ただ出しているだけですね。蹴りとパンチのコンビネーションがあると、間を創ることができます。そういう動きなんです。ただし、田丸君はこの直後に組みにいっている。う~ん、田丸君は引き出しが多過ぎるのでしょうね。グラップリングに自信があるのはレスリングでなく、下になった時かと思います。だから下をチョイスしてしまっている。わりと呑気にガードポジションを選択してしまう。あのう、田丸君はそれだけ寝技は強いのですか。今、MMAで下で勝てる人は本当に組み技が強いないといけない。

それこそ青木真也選手や田中路教選手を相手にして、下になっても勝てるぐらいでないとMMAで無暗に下を選択するのは良い流れではないです」

──MMAファイターで、そこまで下が主武器になる選手は日本には存在しないかと……。

「であるなら……追い突きのあとに離れるべきだしたね。入り方としては、前蹴りから追い突きは良い攻撃です。打撃で相手を仕留めていくには。でも組んじゃうんと間はなくなるのだから。モノゴトとは試合だけでなく、全てに先々のことを考えているのか──ということですよね」

──そこに関しては、きっと打撃で間を取ったら組んで倒す。MMA的に良い流れを作ろうとしているのではないでしょうか。

「う~ん、それで組んで下になり仕留めることができない。それが良い流れになるとは思えないです。だって、打撃で倒せる試合ですよ」

──えっ、そこまでなのですか。

「ハイ。右の中足の後に左ストレートを打たれて倒れるまで、良かったのは田丸君です。下ができるのは良いことです、MMAを戦ううえで。でも、あの局面で下になるかもしれない選択をする必要はなかった。逆に伺いたいのですが、安藤選手と戦う時に打撃で戦うのか、下になるのか、どちらの方が良いと考えていますか」

──打撃とレスリングのMMAの王道で戦うと、分が悪いので距離を取って打撃を入れ、組んでいくのはありだったと思います。下になって極めることができなくても、スクランブルでスタンドには戻ることができているので。

「う~む、この試合だけを見ると打撃は優位で、組みは不利。そして下になって、またスタンドに戻るなら、組んで下になって立つということは余分に感じてしまいます。私には……」

──打撃だけで……組みを見せての打撃、そして初回ではなく終盤になり、安藤選手がスタミナをなくしてからだと下の選択もあったかと思います。もちろん、そこまでのスコアの計算も必要になってきますか。

「つまりは、そこです。今、高島さんが言われたのは終盤で疲れた時に田丸君が下になると、安藤選手は嫌だということだと思います。でも、あの展開で組んで、下になるのは安藤選手にとっては嬉しい展開だったはずです」

──それが田丸選手のMMAというのもありますが、そこまで打撃で優位に立てるとは多くの人間が思っていなかったと思います。ただ、彼自身は打撃だけでも負けないとは言っていました。そういう風に思われているからこそ、打撃で真正面に立ち過ぎたのかと。

「序盤の打撃戦を見ていると、打撃に徹していれば良かったのにと私は思いました。あの距離と、そこから離れて出入りがあれば。詰めてやられるというのは、先の先がとれてないからです。先の先がとれないのに、先に動くとやられます」

──本来はもっと打って、離れて、組んで、離れてという戦いが持ち味の選手です。が、田丸は正攻法じゃない、掛け逃げで真っ向勝負ができないという声に反発したかったかと。

「田丸は正攻法じゃない? 真っ向勝負できない……誰が言っていることに対して、彼は反発したかったのでしょうか」

──それはこれまでの試合を見た周囲の声かと。

「周囲というのはチーム内部ですか?」

──チーム内部のことは分からないですが、中継や大会関係者からはそういう風に言われることはあったかと思います。

「そういうことであれば、それぐらいの関係にある人間のいうことに反発してもしょうがないのに……。そんな声は気にする必要はないです。それを見返したい気持ちで、詰め過ぎたのであれば勿体ない」

──私も彼に対する軸が乱れる、逃げじゃないのかという意見を拾い過ぎて影響が出てしまったのであれば、申し訳ないと実は試合後に感じていました……。

「いやいやそんな記事に書かれていることとなんて、気にしていてはダメですよ。苦言でも自分に必要だと思うモノは耳に残して、他のことは気にするなと。ホントに自分の意識にベクトルが向かっていると、記事にしても人の意見にしても必要ないモノは切り捨てます。

ただし、田丸君の打撃が良いと言ってもあくまでタメや重心移動を利用した運動力学に沿ったものでエネルギー、つまり質量があがる打撃ではありません。

運動力学に沿った打撃だとリーチやタイミングといった相対的な要因に左右されるので、戦況は有利になったり不利になったりします」

──そこは繰り返し、武術的な観点で見るMMAで岩﨑さんが指摘されてきた部分ですね。

「具体的に言うと、田丸君は前蹴りに安藤選手の左ストレートを合わされたわけですが、それは前蹴りの質量が低いから、安藤選手の間になったということなのです。逆をいえば、ただ漫然と動作するのではなく、相手に対し先をとる、間を制すことを理解し質量の高い前蹴りを蹴れば、あの左ストレートをもらうことは絶対にありません。つまり、彼の打撃は質量を伴った打撃ではないということなのです。

田丸選手は今、何歳ですか?」

──24歳です。

「競技でタイトルを取りたい、海外で通用したい──その想いを持ち、遂行するのは本人次第です。そこではなく、安藤選手との試合で僕が彼から見えた技術的な要素、そして人間的要素は限りなく伸びます。殴ることができて、蹴ることができている。1.5倍、スピードにしても早くなり、今の1.5倍の打撃になれば……。例えば、あの前の試合でKO勝ちした黒澤亮平選手のワンツー、あれはフックのフォローまでありました。

あの動きこそ、セイサンという型で要求する究極の一挙動というヤツです。それも『いぃち』ではなく『イチ』というぐらい短い。田丸君の攻撃は一挙動ではないですよね。全てにタメを使っていて、全てに重心移動を使っています。そういう攻撃は相手が返してこない……相手が受けに回っているなら、やっつけることができます。

ただし、これから安藤選手や強い選手と戦っていくためには、打撃を伸ばさないといけない。究極の一挙動へ『イチ』で動けるように。どこの誰かが言っているようなことは気にしないで。評価が低いなんて、そんなのは……土曜日の修斗の大会が、格闘技として体をなしているのは田丸君と安藤選手の試合があったから。それぐらいだと私は思いましたよ。今回の試合でできた打撃、これは確実に1.5倍は良くなる。

そうなればもっと良くなるということで──でも、もっと良くなるとか差っ引いてもケージの中であの突き、蹴りができる選手はそうは見ないです。彼の評価が良くないのであれば、それを言っている人に『じゃあ、彼より良い選手は誰なの?』と聞きたいです。田丸君はもっと強くなれます」

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Interview J-CAGE Shooto2020#05 ブログ 安藤達也 田丸匠

【Shooto2020#05】新環太平洋バンタム級チャンピオン、安藤達也「Road to ONEに出たいッス!!」

【写真】伝統のベルトを肩にかける安藤達也(C)KEISUKE TKAZAWA/MMAPLANET

1日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されたShooto2020#05で、田丸匠を破り安藤達也が環太平洋バンタム級のベルトを手にした。

左ストレートからパウンドアウト、2度目の挑戦で晴れてチャンピオンとなった安藤にその心境とこれからについて尋ねた。


──率直な今の気持ちをお願いします。

「メチャクチャ嬉しいです。格闘技をやってきて、いつも死生観ではないですけど、これで終わって良いと思って戦ってきたので。今回もネガティブな感じに、これで負けたら引退するとかは考えていなかったですけど、勝負することを課題としていました。

でも、かなり立ちあがりは動きが悪くて……。そこで勝負ができたので自分のなかで自信になりました」

──個人的な話ですが、安藤選手を初めてインタビューさせてもらったのが2015年。GRANDSLAM02で芦田崇宏選手にキャリア3戦目で勝利した直後で……。正直、初戴冠までこれほど時間が掛かるとは思っていませんでした。

「そうッスねぇ(苦笑)。僕……フリーになってから、格闘技って個人競技だけど、団体競技なんだと改めて実感するようになったんです。個人力はもちろん大切なのですが、チーム力が結構出る。たくさんの人が僕のことを支えてくれているので、こうやってベルトを獲れたことが嬉しいです。

そういう人たちに感謝の言葉を、これで伝えることができると思います」

──試合内容としては田丸選手の右の三日月蹴りなども有効で、パンチでもかなり真っ向勝負的な試合展開になりました。

「プレッシャーを掛けられましたね。ただ、さっきも言ったように立ちあがりは僕の動きがメチャクチャ悪かったです。いつものようにジャブを差して、距離が取れると思っていたのですが……最初はボンヤリしたような展開になってしまいました。

でも四つ組みになった時に『これはいける』と感じました。前に(佐藤)将光さんと試合をさせてもらった時には、隙がなくて『この人、ヤバい』って思ったんです。でも、今日は行けると思ったし、左が当たって田丸選手がグシャっとなったのを見て、もう何も考えずに仕留めに行きました」

──環太平洋王者となりましたが、暫定世界王者と世紀世界王者がいます。

「世界戦には興味があります。岡田さんのことはリスペクトをしているけど、ドローだったしまた戦いたい。将光さんには、負けているので当然もう1度戦いたいです。そういう気持ちなのですが、バンタム級ではコンディションを作るのが難しいというのはあって……。

だいぶ上手くやれるようになったのですが、12キロ……13キロぐらい落としているので、終盤は感覚練習が主になってしまうというのはあります。それでもフリーだから、自分で選択して練習はできていて、スパーリングも入れるようにしているのですが……そこは受け入れてくれる方々に感謝しています」

──ただ体重を落とすことが中心になってしまうと。ではフェザー級に戻すことも考えているのでしょうか。

「それはまだ終わったばかりなので、断言はできないです。修斗でベルトを持たせてもらうということは、僕は僕なのですが修斗を背負っていかないといけない。やっぱり感謝もしていますし、そういった意味で皆が見たいマッチメイクなら、やっていきたいです。

そのうえで正直に言わせてもらうとONEに興味があります。水抜きなしの65.8キロ、バンタム級で戦ってみたいです」

──では修斗の世界チャンピオンになるのが一番クリアではないですか。

「ただ、佐藤選手はONEで戦っているし……」

──岡田選手も、できれば違うステージで戦いたいという風です。

「それにコロナのこともあるので。修斗も色々と考えてくれているようですけど……。でも、4月のようにROAD TO ONEがあるなら、出たい。ROAD TO ONEにで出たいッス!!」

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J-CAGE Report Shooto2020#05 ブログ 安藤達也 田丸匠

【Shooto2020#05】右を当ててダウンを奪った安藤が田丸をパウンドアウト=新環太平洋バンタム級王者に

【写真】環太平洋バンタム級チャンピオン、安藤達也誕生(C)KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET

<修斗環太平洋バンタム級王座決定戦/5分5R>
安藤達也(日本)
Def.1R3分23秒by TKO
田丸匠(日本)

右ミドルを蹴る田丸に対し、一気に距離を詰めた安藤がケージに押し込む。離れた安藤に対し、パンチを見せて組んだ田丸はヒザ蹴り。小外でテイクダウン狙った田丸から上を取った安藤が肩固めを仕掛けつつマウントへ。ロールからスクランブルの田丸が足関をしかけつつスクランブルでスタンドに戻る。クリンチの攻防にブレイクが掛かり、安藤の左に田丸が右を当てる。

正面での打撃戦でミドルを入れた田丸に対し、安藤が右クロスでダウンを奪う。鉄槌の猛攻を受ける田丸の足関節を潰した安藤は、背中を向けたところでパンチを続けレフェリーが試合をストップ。安藤が環太平洋のベルトをその腰に巻いた。


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Interview J-CAGE Shooto2020#05 ブログ 安藤達也 岡田遼 田丸匠

【Shooto2020#05】環太平洋バンタム級王座決定戦の行方を──暫定世界チャンピオン岡田遼に尋ねる

【写真】別件取材中に思いつきで勝利予想をしてもらうことになったのだが、それは岡田からは『土曜日の試合はめっちゃ楽しみです』と言葉が聞かれたからだった (C)SUSTAIN

8月1日(土)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2020#05で環太平洋バンタム級王座を賭け安藤達也と田丸匠が戦う。

群雄割拠の修斗バンタム級戦線も、頂点が留守にしている間の生き残り合戦の末にかなり趨勢が判明してきた。そんななか5月に暫定世界王座に就いた岡田遼に、王座決定戦の予想をしてもらった。


──安藤達也選手と田丸匠選手の環太平洋王座決定戦、ズバリ勝利者予想をお願いします。

「安藤ですっ!!」

──! 即答でしたが、その理由を教えてください。

「クソジジイ同盟として、クソガキが勝つとは言えないです(笑)」

──アハハハハ、乗っていただきありがとうございます。で、本音は?

「う~ん、それは難しいですねぇ。田丸君ってパワー系に弱いイメージがあります。ライリー・ドゥトロとの試合を見てみると……まぁ、あの時は減量が常識外だったのでまた違うのかもしれないですが、パワー系に弱いままだと……安藤達也のパワーはえげつないですから。

安藤君はキレーにやらずに、本能の赴くまに野性味タップリにラフなぐらいでやった方が良いと思います。凄く、安藤寄りですけど(笑)。そうなると安藤有利だと思います。

ただMMAPLAETの田丸匠インタビューを読んで、彼のMMA論っていうのはちょっと僕に近いというか……シンパシーを感じます。全然、有りだと思っています」

──でも見た感じの試合展開は違いますよね。

「距離の取り方も、下になることも思い切った選択をしているとは思うのですが、見映えが悪くなってしまいますよね。そこは何とかした方が良いのですが、彼が自分で考えてやっていることなので。そういった創意工夫ができるのがMMAの良いところです。田丸君が弱者でもできるMMAをやっているのは僕と同じです」

──「クソジジイと一緒にするな」と言ってきたらどうしますか。

「アハハハハ。いや、だって彼は何も言ってないじゃないですか(笑)。思いっきりの仮定の話で……(笑)。それに、そういう元気な若者が出てこないと困りますよ」

──安藤選手とはドローとはいえ、一度戦いました。そういう意味でも、田丸選手と戦うことを考えることはありますか。

「それは全然考えていないです。彼とやりたくないってことじゃなく、別に戦っても良いのですが……。ただ僕はクソジジイだから、もうそんなに長い間MMAができる時間は残されていないんです。だから、できれば田丸と交わることがないMMA人生を今後は進んでいければなっていうのはあります」


         
■Sooto2020#05対戦カード

<修斗女子スーパーアトム級王座決定戦/5分3R>
黒部三奈(日本)
杉本恵(日本)

<修斗環太平洋バンタム級王座決定戦/5分5R>
安藤達也(日本)
田丸匠(日本)

<フライ級/5分3R>
木内“SKINNY ZOMBIE”崇雅(日本)
黒澤亮平(日本)

<インフィニティLバンタム級/5分2R>
小野島恒太(日本)
石井 逸人(日本)

<ウェルター級/5分2R>
宮路智之(日本)
飯田健夫(日本)

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J-CAGE News Shooto2020#05 ブログ 安藤達也 杉本恵 田丸匠 黒部三奈

【Shooto2020#05】タイトル戦出場の黒部三奈✖杉本恵、安藤達也✖田丸匠は前日計量で問題なしっ!!

【写真】ゴールド&ピンクの修斗初の女子チャンピオンベルトを手に杉本と黒部(C)MMAPLANET

31日(金)、明日8月1日(土)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2020#05の計量が品川区の修斗ジム東京で行われた。


今大会における前日計量は、5試合の中からメインとコ・メインで組まれている修斗女子スーパーアトム級王座決定戦と修斗環太平洋バンタム級王座決定戦に出場する4選手のみが参加し、他の6選手は通常体重よりも1階級上のクラスで当日計量を経て戦うことになっている。

前日計量自体も対戦相手のセコンドが体重を確認するという従来の形式は用いられず、4選手が15分刻みで別々に体重を測り個々に計量、撮影のときだけ顔を合わせるという接触をなるべく減らすスタイルが採られた。2つのタイトル戦に出場する黒部三奈、杉本恵、安藤達也、田丸匠の計量結果は以下の通りだ。

<修斗女子スーパーアトム級王座決定戦/5分3R>
黒部三奈:50.0キロ
杉本恵:49.8キロ

<修斗環太平洋バンタム級王座決定戦/5分5R>
安藤達也:61.1キロ
田丸匠:61.2キロ


             
■ SHOOTO2020#05対戦カード

<修斗女子スーパーアトム級王座決定戦/5分3R>
黒部三奈(日本)
杉本恵(日本)

<修斗環太平洋バンタム級王座決定戦/5分5R>
安藤達也(日本)
田丸匠(日本)

<フライ級/5分3R>
木内“SKINNY ZOMBIE”崇雅(日本)
黒澤亮平(日本)

<インフィニティLバンタム級/5分2R>
小野島恒太(日本)
石井 逸人(日本)

<ウェルター級/5分2R>
宮路智之(日本)
飯田健夫(日本)

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Interview J-CAGE Shooto2020#05 ブログ 安藤達也 田丸匠

【Shooto2020#05】環太平洋バンタム級王座へ、田丸匠─02─「安藤も岡田もクソジジイですよ」

【写真】田丸の発言は自信でも、意地でもなく──仲間との信頼感からくるように感じられる (C)MMAPLANET

8月1日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2020#05で安藤達也と修斗環太平洋バンタム級王座を賭けて対戦する田丸匠インタビュー後編。

MMAを戦うようになった時には、既に目の前に現代MMAという戦い方が存在していた。世界の頂点への計り知れない道程を考え、とにかく強い選手と触れる必要があると考える田丸は、安藤には勝って当然のような歯に衣着せぬ物言いだった。

田丸のMMAワールド、有言実行できるか。

<田丸匠インタビューPart.01はコチラから>


──MMAで戦ううえで、最初からその考え方だったのですか。同じような考えの選手は周囲にいましたか。

「いないと思います(笑)。ただし、ウチの道場では最初からもらうなっていう風に教わってきたんです。ボクシングを見ても、ムエタイでも上にいく選手は貰っていないからって。ディフェンスが上手くなってダメージを負わない選手がチャンピオンになるし、長い間防衛するって言われてきました。

それとMMAを戦う上で苦手を作るなと。ただし、相手の苦手なところで戦え。そのために苦手な部分を作らない。寝技が十分じゃないと思えば、キックボクシングをやれば良いという風で。ずっと指導してもらってきた、さかもとひろしトレーナーもそういう考えだし、ドミニク・クルーズが好きでずっと見てきたので。

殴り合うことが男らしく戦うというのであれば、僕のなかで男らしく戦うということはないです。良い試合はしたいです。でも、それは殴り合うことではないです」

──そんな殴られないスタイルで、安藤選手との戦いを制圧していくと。

「でも軸を保つ練習はしてきました(笑)。見た目が悪くないように戦おうと、ちょっとだけ(笑)。とはいっても、これまでやってきたことをそこまで崩すことはないですし、大丈夫だと思います。相手が弱いとか強いということでなく、相手の攻撃は受けない。それができて、自由度が高いのが僕の武器だと思っています」

──それこそMMAだと?

「それがMMAの面白いところじゃんっていうのは思っています。殴ってテイクダウンしてというという強い人の戦いだけじゃMMAは面白くないです」

──まさに安藤選手はボックス&レスリング、強さの象徴MMAスタイルです。

「まぁ、相手の強いところで戦うつもりはないです。でも……う~ん……」

──どうしましたか。

「安藤選手の強いところがパンチだったとしても、パンチで勝負してもやられる気はしないですし。テイクダウンされても、だから何って気がします。テイクダウンされても僕には寝技があるし。下からスイープしちゃえば良いぐらいの気持ちでいます。リスクは……最初にパンチを被弾することだけ。

本当のところを言うと、僕のスタイルには絶対的な欠点があるんです。ただし、その欠点をつけるだけのモノが安藤選手にはないです。例えばUFCの選手を見ていると、今の僕じゃ全く戦えない。だから、そういう部分を強くしていく作業が今の僕には必要で」

──バンタム級ではUFCは諦めてというような発言がゴング格闘技のインタビューでありましたね。

「えっ、そんなこと言っちゃっていましたか(苦笑)。いや、でもUFCで戦いたいです。今は全く敵わないから、力をつけて……。UFCでチャンピオンになりたいという気持ちでいないと、到達点は低くなると思うんです。UFCは他とは全く違います。そのためには、これで生活できるようにならないと難しいですし。これからのことは本当に分からないですけど、30歳ぐらいまでにUFCで戦えるようになるためにも、今は自分の力量を測りたいです。

安藤選手にまず勝ってからですけど、これからどうなるのかは……」

──暫定王者の岡田遼選手も同じような悩みを持っているようですね。でも、スタイルは違うといえども5教科7科目の男とMMA論については似ているような気もしますが。

「岡田選手に挑戦できるなら、早くやらせてほしいです。とにかくチャンピオンになりたいのと、時間が掛かるなら他団体で強いヤツに触れたいということなので。

でも岡田遼には『クソガキ』って言われましたからね(笑)。僕ってクソガキって言われがちなんです。夜叉坊さんのことが好きでインスタグラムとか見させてもらっているんですけど、『安藤、ガンバレ。あのクソガキ、潰してこい』って書いてあって……。またクソガキって言われたわぁって(笑)。

まぁ、でも僕からすると夜叉坊さんはともかく──安藤も岡田も30歳なんですよ。なら24歳のクソガキからすると、安藤も岡田もクソジジイですよ」

──なるほど、以前東京で一緒に練習した田中路教選手も30歳になるので伝えておきます(笑)。

「あっ、いや田中さんは違います……。田中さんは意識が日本の選手と別です。田中選手は日本の選手のなかでは特別だから、そんな風には言えないです。井上魅津希選手とか、佐藤天選手とかこの状況で米国にいることを選択できる。そういう選手は絶対に意識が違うんです。

だから田中選手は違うとしても、30歳にクソガキって言われるなら、僕からすればあの人たちはクソジジイですよ」

──もう、こちらが言わせているような感じですが……クソジジイいただきます(笑)。そして安藤選手との試合、田丸匠のMMAを堪能させてもらいたいと思っています。

「ありがとうございます。本当はどっちもデキた方が良いことは分かっています。真っ向勝負も上手く戦うのも。何よりも、一つ一つの基礎ステータスを上げていくことも欠かせません。でも、僕は今の自分の環境を顧みて、自分に適した戦いをするだけです」

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Interview J-CAGE Shooto2020#05 ブログ 安藤達也 田丸匠

【Shooto2020#05】環太平洋バンタム級王座へ、田丸匠─01─「自信でなく、当然勝つということで」

【写真】既に頬がこけ始めた田丸。体重は順調に落ちているそうだ(C)MMAPLANET

8月1日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2020#05で安藤達也と田丸匠が環太平洋バンタム級王座を賭けて対戦する。

バンタム級転向以降、3連勝。10勝1敗1分という戦績を誇る田丸は、岐阜県瑞穂市のナセール・ド・ソルで磨き上げた独特なスタイルが勝負にいかないという指摘を受けることがある。そんな指摘に反論する田丸はMMAだから安藤に勝てる。喧嘩なら勝てないと断言した。


■世界王座に挑戦できるなら、僕は佐藤さんでも岡田さんでも構わない

──宜しくお願いします。

「お疲れ様です。宜しくお願いします」

──アレッ、声に張りがないですね。減量疲れですか。

「いえ、そんなことないです。ただ塩抜きを始めているからもしれないですね。バンタム級でも、何だかんだと水抜きはあるのですが、今回は緊急事態宣言期間に太ったというのはあります」

──あぁ、やはり練習に影響はでましたか。

「ハイ、対人練習はジムが1カ月ぐらいは閉まっていたのでできかったですし。その間は走る量を増やしていたぐらいでした」

──最近、お隣の愛知県は感染者数が増えていて不安はないですか。

「そうですねぇ。岐阜でも僕らの住んでいるのとは違うところで感染者が出てき始めていて。僕らのところは少ないので、自分が感染するよりも感染源になってしまうことを考えると、皆に迷惑をかけてしまうので怖いという気持ちはあります。

でも、いつまでも怖がってばかりいても前に進むことができないですしね。ワクチンが早々に創られることもないと思いますし。できることで、前に進まないと……。それに昨日(※取材は28日の火曜日に行われた)は坂本(一弘)さんが名古屋まで来てくれて、PCR検査を僕とセコンドと……それから北岡さんの大会に出る選手もしてもらって。ここまでしてくれるんだから、ちゃんとやらないといけないと思いました。

感染者が増える前に僕を応援するためにチケットを買ってくれた人たちもいて、それから増えてしまったから『無理しないでください。東京に行けなくてもしょうがないので』って伝えて……。それでも東京まで応援に来てくれる人もいますし、とにかく僕は戦って勝つだけ……ベルトを獲らないといけないです」

──首都圏でいえばプロ練習は続けているというジムも多かったです。

「ナセール・ド・ソルでいえば出稽古は禁止になっています。ただ、僕の練習は全く変わっていないです。僕は試合前に出稽古をするタイプでもなかったですし、ジムの仲間に支えられて、助けてもらっているので。

体重が落ちるのも早くて、もう65キロぐらいしかないのでコディション的にも大丈夫だと思います」

──1月に藤井伸樹選手に勝って、次は安藤選手だという予想はありましたか。

「全くなかったです(笑)。手塚(基伸)選手と思っていました。安藤さんが環太平洋王座にもう一度挑むということに驚きましたし」

──環太平洋王座……、田丸選手は答え辛いと思いますが、ぶっちゃけてどのような価値観を見出していますか。

「アハハハハ。ホント、言い辛いです(笑)。ぶっちゃけ、自分が目指しているのは世界のベルトです。いえば世界王座への挑戦者決定戦で。ただし、現状として正規王者の佐藤将光がいて、暫定王者の岡田遼がいる。2人がどうなっていくのか。時間が掛かるなら挑戦者決定戦でもないよなって。正直、この状況は歪だと思います」

──ONEと契約するなら、王座返上すべきだと?

「ハイ。そう思います。佐藤さんがやり玉にあがることが多いですけど、佐藤さん自身も返上を考えたことがあると思います。でも現実として持っているままで、なら暫定王者の岡田さんに挑戦することになるのか。佐藤さんと岡田さんがやったあとで、僕が暫定王座とか絡むのか……。まぁ、分からないです。でも世界王座に挑戦できるなら、僕は佐藤さんでも岡田さんでも構わないんです。ただ世界王座に挑戦したいだけで」

──事実上、新型コロナウィルス感染拡大で海外渡航がままならない状況では、佐藤選手が修斗で防衛戦を行うという選択肢が生まれないとは限らないとか考えてしまいますね。

「それもあるんですよね……。でも何とかならんかなって。世界王座に挑戦できる日がなかなか来ないのなら、環太平洋王座の防衛をしていくことになるのか。でも、もう24歳だし、どんどん強い相手と戦うためには修斗と他団体を行き来できるようにならないとダメかなとか考えます」

──そこまで考えていますか!! 実際、このところ修斗は暫定世界王座があることで、各階級に3人のチャンピオンがいるのかという状況です。

「前田(吉朗)選手と福田(龍彌)選手のことですか。福田選手は強いと思いますけど……」

──でも唐突ですよね。タイトルが掛かっていなくても、前田選手越えはしたいでしょうし。

「う~ん、強さの象徴ですからね……ベルトは。でも、海外から見ると、どのベルトも同じだと思います」

──安藤選手との試合を控えて、そこまで次のことが話題になるというのは……。

「自信があるということじゃないんです。当然勝つということで。客観的に考えても、一発貰わなければ負けない。そう思っています」

カウンターが当たる距離を試合のなかでセッティングしているのが分からんの?

──劣性に見えがち田丸匠スタイルですが、本人は全くブレることがないですね。

「猿田戦ぐらいから、そんな風に思うようになりました。とりあえず、負けていないので。ダメージを与えているのは、僕だから大丈夫だと思って戦っています。ただ魚井戦の時は、ちょっと分からんかったですね。あまり冷静でなく、行かないと勝てないと思っていました。対して藤井戦は2Rで、『これは勝つ』と確信して戦っていました」

──それなのに見ている方は、ポイントを失っているかもしれないように見える。非常に興味深いです。

「人がどう見ているのかっていうのは、自分も気になってはいます。あとから中継の実況とか見ていると『あぁ、こんな風に僕が劣性に見えるのか』って思いましたし」

──田丸選手は軟体動物みたいので、ドンと軸がある方が強く見えがちです。

「分かります。ドンとしている選手の回りを動くと、こっちが当ててダメージも与えているのに、向こうがペースを握っていると思われるようですし。

僕は本当に喧嘩が強くないんです。だから駆け引きとかタイミング、騙すのが上手くて勝ってこられたので」

──MMAであっても拳の届かないところに居続けると、逃げ得ているという風に言われがちです。

「それは……僕は納得していないです。『逃げているって何?』って思います。掛け逃げとか言われることが多いですけど、本当に逃げていたら攻撃なんて当たらないし、ああいう仕掛けってテイクダウンを取られるリスクがあるなかで選択して戦っているのに、逃げているとか言うなよって。そうじゃないだけどなって……思います。

逃げていて勝てることなんてないですよ。カウンターが当たる距離を試合のなかでセッティングしているのが分からんの?って。だってMMAですよ、喧嘩じゃないし、殴り合って勝つ必要はないじゃないですか。

僕、喧嘩だったらMMAをやらないです。MMAは色々と工夫して戦うことができる。僕自身、この戦い方の利点も弱点も熟知して戦っているんです。喧嘩だったら、僕は勝てないですから」

──渋谷で安藤選手と肩がぶつかって、喧嘩になると勝ち目はない?(笑)

「そうなるのが、怖いから渋谷に行きません(笑)。怖いですよ、あんなの……」

──では金津園で肩がぶつかると?(爆)

「アハハハ、勘弁してくださいよ。それはもう『僕が奢ります』としか言えないです(苦笑)。でも、安藤選手とは昔、少し話をしたことがあって、気が合う感じはしたんです。好きな感じの人だと思って……その安藤選手と試合をしないといけないので……別にぶっ倒してやろうとか思わないですけど、勝たせてもらいます」

──ぶっ倒そうとは思わない?

「思わないです。フライ級の時は減量でたまったイライラとかストレスを相手にぶつけてやろうっていうのはあったのですが、バンタム級になってからはそういうのはないですし。MMAなんだから拳が届く位置に立ち続けて殴り勝つとかっていう考え自体が、僕にはありえないです」

<この項、続く>