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【PJJC2022】橋本知之、ライトフェザー級でも3位獲得。優勝は橋本を下した、メイハン・マキニ

6日(水・現地時間)から10日(日・同)まで、フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナにて、パン柔術選手権が行われた。世界の強豪が集結し、6月の世界大会の行方を占う上でもきわめて重要なこの大会。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第1回は、世界一に最も近い日本人選手、橋本知之が出場したライトフェザー級の模様を、橋本の戦いぶりを中心に紹介したい。


<ライトフェザー級準々決勝/10分1R>
橋本知之(日本)
Def.2-2 アドバンテージ1-0
ペドロ・クレメンチ(ブラジル)

橋本は、初日に行われるはずだった初戦を対戦相手のジュニー・オカシオが欠場したために不戦勝。2日目のクレメンチとの準々決勝が今大会初登場となった。

両者引き込みから、橋本はすぐに左足にベリンボロを仕掛ける。マットに背中を付けるクレメンチに対し、クラブライドからサイドに付きかける橋本。クレメンチが後転して逃げようとしたところで、橋本はファーサイドの腕十字狙いへ。右腕を伸ばされかけたクレメンチはうつ伏せになって耐え、やがて腕を抜くことに成功。が、ここで橋本にアドバンテージが一つ入った。

さらに橋本はベリンボロで追撃を試みるが、ここでブレイク。両者にダブルガードのペナルティが与えられてスタンド再開となった。極め切ることはできなかった橋本だが、強豪相手に見事な先制攻撃で先行してみせた。

再開後、橋本はシッティングからクレメンチの右足にウェイターガードで絡む。さらに下に潜り込んだ橋本は後転してするようにクレメンチを崩し、ズボンの後ろを取って上を狙う、が、クレメンチはズボンをひきさげられながらも立ち上がり、ブレイクに。

再開後、再び左足に絡んだ橋本は、そのまま外回転でクレメンチを崩して上になることに成功。2点を獲得した。が、下になったクレメンチはすぐに強烈なカラードラッグを仕掛けて上を取り返し、ポイント2-2に。クレメンチはそのまま橋本の足を捌いてのパスを狙うが、橋本はインヴァーテッドで対応して戻した。

その後も橋本が下でオープンガードを取る展開が続く。アドバンテージ1つ負けているクレメンチは、橋本のスイープに耐えつつ足を捌こうとするが、高い柔軟性を誇る橋本の足と両腕のフレームを超えられないまま時間が過ぎていった。

終盤、橋本の右足に足関節を仕掛けるクレメンチ。極まらないと見るやさらにその足を流しにかかるが橋本は許さず、時間切れ。

先制攻撃でリードを奪った橋本が、その後も得意のオープンガードで相手にペースを取らせずに快勝。国際大会常連のクレメンチに対して、改めて世界トップレベルの実力を見せつけた。

<ライトフェザー級準決勝/10分1R>
メイハン・マキニ(ブラジル)
Def.0-0 アドバンテージ1-0
橋本知之(日本)

準決勝で橋本を待っていたのは、強力なトップゲームを誇る優勝候補の新鋭メイハン・マキニ。初日にいきなり実現したジエゴ・ヘイスとの大一番において、スイープで先制後、延々と展開された50/50シーソーゲームで最後に上をキープして勝利。二日目の準々決勝はケヴィン・カラスコに上から圧力をかけて背後に回ると、ギチョークで2分足らずで一本勝ち。消耗度は前戦で10分戦った橋本より少なそうだ。

試合開始後両者引き込むが、マキニはすぐに上を選択してアドバンテージ1を獲得。トップのマキニとボトムの橋本、お互いが強い面をぶつけ合う展開となった。

下から左足に絡もうとする橋本だが、マキニは絡んでくる右足を押さえつけて足を抜いて距離を取る。さすがのバランスと捌きだ。シッティングから近づく橋本に対し、マキニはその体を二つ折りにするように両足首を上から押さえつけ、マットと橋本の背中の間に体を入れてのバック狙い。マキニじゃ右手で橋本の帯の背中を取って起き上がりながら、左足をレッグドラッグの形に流して掴む。

強烈に橋本の体を引きつけて浮かせてから、再びバックを狙うマキニ。が、橋本は背中をマットに付けて距離を取って凌いでみせた。

橋本は下からマキニの左足をアキレスグリップで捉え、立ち上がったメイハンのバランスを崩しにかかる。が。マキニはここも強靭なバランスを発揮すると、橋本の両足を押し下げて左にパス狙い。橋本も柔軟な体を利用したインヴァーテッドで防ぐと正対してみせた。ここまでで2分半。お互い譲らずに持ち味を発揮した攻防だが、橋本の方が守勢を余儀なくされているのは否めない。

その後も橋本はシッティングで近づき、またラッソーや内掛けガードからの攻撃を試みるが、マキニはバランスを保って上から圧力をかけ、また絡んでくる橋本の足を捌きつつ左右にパスを仕掛けてゆく。そのたびに橋本もガードワークで対抗。世界最高峰のマキニのトップからの攻撃に対し、ニアパスまで持っていかれることなく見事に防いでみせている橋本だが、アドバン1つリードされている状況で反撃の緒をなかなか掴めないまま時間が過ぎていった。

後半に入り、橋本はウェイターガードから潜り込んで後転するようにマキニのバランスを崩す。が、マキニはすぐに体勢を立て直して足を抜いて離れることに成功した。

残り2分。距離を取り気味のマキニに対し橋本がシッティングで近づいて左足に絡むと、マキニはカウンターで飛び込んでのバック狙い。それはエビで凌いだ橋本だが、またしても崩せずに距離を取られてしまった。

さらに橋本は左足に絡んでベリンボロを狙うが、ここもバランスを保つマキニ。ならばとウェイターで潜り込んでマキニの体勢を崩しかけた橋本だが、マキニは右腕をポストして巧みにポジションキープし、離れることに成功。それでも追いすがる橋本だが、時間切れ。

圧倒的なトップゲームを誇るマキニ相手によく渡り合い、改めて世界トップの実力を示した橋本だが、崩しきることはできず。結局、最初の上選択のアドバンテージを守り抜かれる形での惜敗となった。

試合後の動画で橋本は、初戦のクレメンチ戦で力を使い過ぎたこともあり、30分ほどのインターバルで臨んだこの試合では、当初計画していたように序盤から攻撃姿勢に入ることはできなかったと明かした。さらに国際大会の舞台で世界のトップと肌を合わせることで、6月の世界大会に向けて具体的な肉体的・技術的改善点が見えてきたと語った。

現状では、6月は本来のルースター級での参戦に心が傾きかけている様子の橋本。ライトフェザー級の最高峰でこの堂々たる戦い、そして試合後の冷静かつ前向きな本人の姿勢からすると、日本人男子初の黒帯世界王者誕生の可能性は、十分にあると見て良さそうだ。

さて、橋本に勝利したマキニを決勝で待っていたのは、ルーカス・ピニェーロ。準決勝で優勝候補のイアゴ・ジョルジからテイクダウンでリードを奪うと、最後はうつ伏せになってのフットロックで一本勝ちして決勝進出を果たしている。

マキニはノーギでも活躍するピニェーロのテイクダウン狙いをことごとく切ると、やがて引き込んだピニェーロの足を捌いてパスガードに成功、さらにマウントで7-0とリードを広げた。一度ピニェーロにガードに戻され、終盤残り15秒ほどで無理せずスイープを許して2点を失ったマキニだが、結局そのままガードをキープ。7-2で完勝してパン大会制覇を果たした。

【ライトフェザー級リザルト】
優勝 メイハン・マキニ(ブラジル)
準優勝 ルーカス・ピニェーロ(ブラジル)
3位 橋本知之(日本)、イアゴ・ジョルジ(ブラジル)

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MMA MMAPLANET WJJC2021 ケヴィン・カラスコ ブラジリアン柔術 丹羽飛龍 加古拓渡

【WJJC2021】レポート&インタビュー。丹羽飛龍「黒帯1年目でインパクトを残すには実力が足りない」

【写真】トップのポイントが入らない──柔術の結果論でなく、過程を重視した得点方式に敗れた感もある飛龍。改めて奥深い競技だ(C)SATOSHI NARITA

2021年12月9日(木・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text by Satoshi Narita

レポート第10弾、茶帯ルースター級に参戦した丹羽飛龍の決勝戦と──黒帯での将来を見据えた、試合後のインタビューをお届けしたい。


<ルースター級決勝/8分1R>
マテウス・ヴィラサ(ブラジル)
Def. 2-0
丹羽飛龍(日本)

連続一本勝利で勝ち上がってきた飛龍、決勝の相手はAres BJJ所属のマテウス・ヴィラサだ。

序盤、飛龍はダブルガードからベリンボロを狙うが凌がれ、ヴィラサをクローズドガードに捕らえたところで上になったヴィラサに2ポイントが入る。

その後、クローズドを解除した飛龍は左足へのアンダーフックデラヒーバから潜り込み、ウェイターガードからバックを狙う。執拗にバックを狙う飛龍は一連のアタックで3つのアドバンテージを獲得する。

さらにハーフマウントにヴィラサを捕らえると肩固めを仕掛けてアドバンテージを追加──残り3分、相手をスタックしてプレッシャーをかける飛龍だが、守勢に立つヴィラサも柔軟なガードでポジションを与えることは巧みに回避する。

残り1分、50/50で上からヴィラサの左足をフットロックのグリップで抱えていた飛龍は身を翻して右足へのトーホールドに切り替え、最後のアタックに望みをかけるが、ヴィラサは回転してエスケープしタイムアップ。

最終的に8つのアドバンテージを得た飛龍だが、序盤の2ポイントを返すことができず、あと一歩のところで優勝を逃した。

前回の2019年大会では紫帯3位。優勝は逃したとはいえ、茶帯というよりハイレベルなトーナメントで一段高い表彰台に上った丹羽飛龍に、今回の戦いを振り返ってもらった。

ーー1回戦はシード、初戦(準々決勝)と準決勝は一本勝ちで快調に勝ち上がりました。

「『全試合一本で行くように』とギィ(・メンデス)から言われていたし、自分もそのイメージだったので、決勝は負けちゃったんですけど、初戦と準決勝は1〜2分で極められたのは良かったです。初めてのムンジアルだった前回(2019年)は初戦しか極められなくて、けっこうヘロヘロになりながら試合して、加古拓渡さんと試合したケヴィン・カラスコに準決勝で僅差で負けちゃったんですけど、今回は体力的にも余裕を残して決勝に行けました。

そのために練習でも“極める練習”をするようにギィに言われていたんです。練習内容がAOJの中で僕だけ特殊だったというか、茶帯ルースターは僕とココ(・イズツ)君だけで、同じ体重の選手と練習する機会があまりなかったので、ムンジアルの2週間前まではフェザーやライトの大きな人とガンガン練習して、2週間を切ってからは紫帯や青帯のジュブナイルを極める練習ばかりしていました。ポジションを取ったあとに極める練習と、ガードから一気に極める練習の2パターンに取り組んで」

ーーその練習が生きたわけですね。

「作戦通りに運べました。体力を温存しながら勝ち進んでいけるように、初戦はフットロックやトーホールドを狙う予定でしたし、実際に試合で足関を極めたのは初めてだったと思います。今まで足を狙いにいくことがあまりなく、トーホールドとかは茶帯でAOJに戻ってきてから本格的に練習し始めたので、最初は全然使えなくて。パンナムでも1、2回戦は足関で勝つプランだったけどうまくいきませんでした。でも、ムンジアルの1、2カ月前から練習で極まるようになって『試合でも使える』という気持ちになれたと思います」

ーー決勝のマテウス・ヴィラサ戦では、序盤で取られたスイープのポイントを返せずに0-2で敗退でした。中盤でバック狙いから上になった飛龍選手にポイントが入らない、とセコンドのギィたちが猛抗議をしていましたね。

「ギィはそう言ってくれていたんですけど、ポイントが入らないのが正しいみたいです。一度バックを狙ってワンフックまで入れたので下ではなくなったので、上を取ってもポイントが入らなかった感じで。ただ、結局極められなかったのが悪かったと思っています。

試合後にギィとも話したんですけど、『タイナン(・ダウプラ)たちのレベルになると、試合で何が起こっても極められる。ヒリュウも優勝するレベルにはいるけれど、そこが足りていない』と言われました。

実際にそうだと思います。メンデス兄弟やタイナン、ジョナタ(・アウベス)なら何が起こっても逆転していると思うし。紫帯で初めてパンナムに出た時の準決勝の相手で、その時はパスもマウントも取って三角で極めたんですけど、今回はツメが甘かったです」

ーー改めて、茶帯での準優勝という結果についてはどう思いますか。

「うれしくないわけではないけれど、やっぱり悔しい気持ちのほうが強いです。黒帯1年目でインパクトを残せる強さになるためには、今回のメンバーなら優勝していないとダメでした。タイナンみたいに黒帯でいきなり優勝するにはまだまだ実力が足りないと感じた2位でした。でも、メダルを獲れないで終わったわけではないので、来年こそは優勝したいです」

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MMA WJJC2021 ケヴィン・カラスコ ブラジリアン柔術 加古拓渡

【WJJC2021】レポート加古拓渡、常に自己最高を目指した柔術家のラスト・ムンジアル

【写真】加古は敗戦後、帯を畳に置き座して一礼した(C)NARITA SATOSHI

8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi

2年半ぶりに開催された、道着着用柔術の世界最高峰の大舞台。レポート第2弾はライトフェザー級に挑んだベテラン=加古拓渡のラストムンジアルの模様をレポートしたい。


<ライトフェザー級1回戦/10分1R>
ケヴィン・カラスコ(米国)
Def. 1分03秒by 腕十字
加古拓渡(日本)

競技柔術が大きな変革期を迎えたゼロ年代後半、いち早くその技術を吸収し「日本のベリンボロ・マスター」と呼ばれた加古の相手は13歳年下、22歳のケヴィン・カラスコは昨年のパン大会の茶帯の部を制し、師匠のケイシーニョことオズワウド・モイジーニョから黒帯を与えられた新鋭だ。

試合開始と同時に引き込む加古だが、同時にカラスコも足を左足を飛ばしており、これがテイクダウンと判定され2点が宣告された。

片襟の加古に対して、カラスコは素早く左に回ってのパスを仕掛ける。上四方につかれたかに見えた加古だが、ここはヒザを入れて隙間を作り体勢を戻す。するとカラスコは、左手で加古の右のズボンを掴んで大きな動作のレッグドラッグへ。

カラスコはそのままサイドに回ると、間髪入れず腕十字を仕掛ける。

完全に右腕を伸ばされながらもなんとか動いて脱出を試みる加古だが、腰を浮かせたカラスコに強烈に極められてしまい万事休す。僅か1分3秒の出来事だった。

敗れた加古は、試合後自らのSNSにて10年に及ぶムンジアル挑戦からの撤退を表明した。

日本における競技柔術新時代を牽引し、2016年には優勝したパウロ・ミヤオの失格もあったが、ライトフェザー級で3位を獲得。ライトヘビー級で戦うための過酷な減量、ムンジアル出場ポイントを得るために豪州遠征など、競技柔術家として自己ベストを目指す姿勢を貫き、その名を柔術史に刻んだ。

今回も最後まで妥協せず勝利の可能性が最も大きいライトフェザー級に出場した加古拓渡。新鋭に真っ向勝負を挑んだ上での潔くも見事な散り際だった。

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