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【UFC267】計量終了 ピョートル・ヤン人気が高いなかサンドハーゲンは「25分のウォーの準備してきた」

本日 10月30日(土・現地時間)にUAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUFC267「Blachowicz vs Teixeira」の計量が29日(金・同)に行われた。

メインではUFC世界ライトヘビー級王者ヤン・ブラボヴィッチがグローバー・テイシェイラの挑戦を受け、コメインは暫定バンタム級王座決定戦としてピョートル・ヤンとコリー・サンハーゲンが相対する。


ライトヘビー級の頂点で戦う両者は、フェイスオフでバチバチに火花を散らしながら、笑顔で握手をかわした。まず前日に42歳になったチャレンジャーのテイシェイラが、2度目の世界挑戦に向けて「素晴らしい誕生日だ。明日は僕へのプレゼントを手にする。全く疑う余地もないよ」とインタビューに答える。

続いて王者ブラボヴィッチは「明日もこのままチャンピオンでいる。良い試合、凄く良い試合になる」と断言した。

サンドハーゲンは「25分のウォーになる。そのための準備をしてきた」と話し、前王者ヤンには「いつもように戦う。そしてもの凄くエキサイティングな試合になる」という通訳の言葉以前にロシア語で話した時点で、会場のファンから大きな歓声が挙がっていた。

ヤン人気の高さからも分かるように、アブダビではロシア人ファイターの人気が高く、出場選手も多い。今回もロシア人ファイターが9名に加え、ダゲスタン系スウェーデン人選手のカムザット・チマエフがコロナウィルス感染による引退発表→撤回から1年2カ月振りに実戦復帰する。

アジアの大砲リー・ジンリャンと向き合ったチマエフは、笑顔を浮かべながらも挑発しあい、ダナ・ホワイトが懸命に割って入った。

上位カードで最大の注目マッチといっても過言でないダン・フッカーとイスラム・マカチェフの両者は、フェイスオフでも過剰な動きはなく両者が微笑をたたえていた。

フッカー✖マカチェフ戦と同様に楽しみだったプレリミのライト級マッチ=ダミール・イスマグロフ✖マゴメド・ムスタファエフは前者が163.5ポンドと8.5ポンドオーバーでセレモニアル計量すら行われず、試合は中止となっている。

■視聴方法(予定)
10月30日(土・日本時間)
午後11時30分~UFC FIGHT PASS
10月31日(日・日本時間)
午前3時~PPV
午前3時~WOWOWライブ

■UFC267試合結果

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] ヤン・ブラボヴィッチ: 205ポンド(92.99キロ)
[挑戦者]グローバー・テイシェイラ: 205ポンド(92.99キロ)

<UFC世界暫定バンタム級王座決定戦/5分5R>
ピョートル・ヤン: 135ポンド(61.24キロ)
コリー・サンドハーゲン: 135ポンド(61.24キロ)

<ライト級/5分5R>
イスラム・マカチェフ: 155.5ポンド(70.53キロ)
ダン・フッカー: 156ポンド(70.76キロ)

<ヘビー級/5分3R>
アレキサンダー・ヴォルコフ: 263ポンド(119.29キロ)
マルチン・ティブラ: 249ポンド(112.95キロ)

<ウェルター級/5分3R>
リー・ジンリャン: 171ポンド(77.56キロ)
カムザット・チマエフ: 171ポンド(77.56キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
マゴメド・アンカラエフ: 205.5ポンド(93.21キロ)
ヴォルカン・オデズミア: 205.5ポンド(93.21キロ)

<女子ストロー級/5分3R>
アマンダ・ヒーバス: 115.5ポンド(52.38キロ)
ヴィルナ・ジャンジローバ116ポンド(52.62キロ)

<フェザー級/5分3R>
ズベア・トホゴフ: 146ポンド(66.22キロ)
ヒカルド・ラモス: 146ポンド(66.22キロ)

<ミドル級/5分3R>
アルベルト・デュラエフ: 186ポンド(84.37キロ)
ローマン・コピロフ: 186ポンド(84.37キロ)

<ウェルター級/5分3R>
エリゼウ・カポエイラ: 170.5ポンド(77.34キロ)
ブノワ・サンドニ: 171ポンド(77.56キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
ミハウ・オレキシェイジュク: 206ポンド(93.44キロ)
シャミル・ガムザトフ: 206ポンド(93.44キロ)

<フェザー級/5分3R>
マクワン・アミルカーニ: 146ポンド(66.22キロ)
レローン・マーフィー: 146ポンド(66.22キロ)

<ミドル級/5分3R>
フ・ヤオゾン: 186ポンド(84.37キロ)
アンドレ・ペトロスキー: 185.5ポンド(84.14キロ)

<ライト級/5分3R>
ダミール・イスマグロフ: 163.5ポンド(74.16キロ)
マゴメド・ムスタファエフ: 156ポンド(70.76キロ)

<フライ級/5分3R>
タジル・ウランベコフ: 125.5ポンド(56.92キロ)
アラン・ナシメント: 126ポンド(57.15キロ)

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Interview Special アルジャメイン・ステーリング ピョートル・ヤン ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その壱─ステーリング✖ヤン「片ヒザをついてのシングル」

【写真】独特のシングル、そこにいくまでの打撃の組み立て方に工夫が見られたステーリング。反則で王座を失ったピョートル・ヤンはこれまで見たことがない攻撃と防御を駆使して戦っていた (C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年3月の一番、第一弾は3月6日に行われたUFC259 からUFC世界バンタム級選手権試合=アルジャメイン・ステーリング✖ピョートル・ヤン戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年3月の一番、最初の試合をお願いします。

「ハイ、アルジャメイン・ステーリング×ピョートル・ヤンですね。この試合は『アルジャメインがある』って言っていたじゃないですか。で、結果的にアルジャメインだったと(笑)」

──本当に結果的に……でした。

「ただアルジャメインって、ヒザをついた状態からシングルレッグに入るじゃないですか、アレは盲点をついていて面白いと感じました。あの組み方を多用していると、相手は戦い辛いですよね。北米ルールだと、ヒザをキャンバスについている選手にヒザも蹴りも入れることができないから。

水垣さんも、あのヒザつきから組まれたんですけど、アレを身に着けることができれば強力な武器になると思ったんです」

──それは北米ルールならということですよね。

「ハイ。北米ルールだと凄く有効な策だと思います。日本国内では北米ルールを視野に入れている選手が、極端に少なくなっているかもしれないですけど」

──アルジャメインのようにそこから先があれば大丈夫ですが、それがないと打撃戦を避けているという風にとられないでしょうか。

「今のMMA、格闘競技でいうとそうなります。それでも凄く有効なテクニックだし、そこにいくまでもアルジャメインは組み立ても工夫している。そのための打撃も凄く良かったし。

まぁピョートル・ヤンの方が強いとは思うんだけど、その工夫が見られて良かったです」

──反則負けになってしまったのですが、ピョートル・ヤンの方が完全に盛り返していました。

「ピョートル・ヤンは完全に顔を覆う防御が興味深かったです。あれにはムエタイの影響が強いし、まだ倒されてないという強さが出ている戦い方だと思います。

そのうえで大外刈りを決めて。ロシアン・レスリングというか、ロシアン柔道というか……民族格闘技の集合体がサンボというのに通じていて、組み技の集合体を見せていますね」

──そのうえで2人とも妙なリズムの試合だったように感じました。ステーリングにしても、積極的な攻めは序盤に限られ、ピョートル・ヤンは戦い方自体がまるで変わってしまっていました。

「ピョートル・ヤンは練習環境が変わったというのも関係しているかもしれないですね。アルジャメインも5Rということがあったでしょうね。でも、僕はあのぐらいの試合で十分に満足できました。

ピョートル・ヤンのロシアっぽさと、アルジャメインの米国レスリングらしさが見られて。今、UFCでも世界戦で注目されても……アデサニャ×ブラボビッチがそうだったように、試合内容では引っ張ることができていないですよね」

──確かにその通りです。試合自体もペース配分が目立ちます。

「ハイ、だからMMA世界一を決めるっていう盛り上がりは試合内容からは感じられない。疲れないことが前提になっていると、ボクシングっぽいですよ。退屈になっていってしまうからこそ、ルールの改正はあるかもしれないです」

──それにしても青木選手が着眼するのは、他がやらない技術、青木選手も使っていない技術ということでしょうか。

「まさにアルジャメインのヒザをついてからシングルレッグは、そうですね。ONEルールだと、グラウンドでのヒザが認められているので──無理ですよね。向いていない。じゃあONEのルールだと何が向いているのかっていうことは考えています」

──MMAはここまで進化して、ルールに則して勝つ必要がある状態ですし、北米ルール、ONEルール、リング使用かケージ使用、そしてサッカーボール有りなど、MMAという一言では済まされない。そのルールに特化した勝ち方、技術体系ができてきていると思うのですか。

「もう別物です。立ち技だとK-1ルールが、独立したように。ムエタイとK-1は別物で。だからMMAも北米ルール、ONEルールという風に違ったモノになるかと思います。サッカーボールキックの有無もそうだし、ブレイクのタイミング、スクランブルの評価も含めて戦い方も違ってきますしね。RIZINのように背中をつけて良いなら、理屈では引き込んでも良いということですよね」

──それはONEにも当てはまるのではないでしょうか。テイクダウンを重視しないのであれば、引き込みをマイナス評価するべきでないと。

「だからこそ、引き込むという策もありで。ただし、実は一旦下になってすぐに起き上るというのはレスリング、それは北米MMAですよね。だから、そのような理屈の攻撃をガードポジションをとるのではなく、片ヒザをついた状態から組んでいっているアルジャメインが、発想として面白かったです。王道の勝ち方は存在しますが、それだけでない。だからこそ研究の余地が残っている」

──このルールの間を行き来できる選手と、そうでない選手が出てきそうです。

「行き来できない人間はいますね。僕はどっちに向いているというのもない。どっちにしてもない、技術体系なので。性格的にも何が向いていて、何が向いていないのかを見るのは得意なので。それをいじって分析したいですね」

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Report UFC UFC259 アルジャメイン・ステーリング ピョートル・ヤン ブログ

【UFC259】UFC史上初、反則負けでピョートル・ヤンがベルト失い。ステーリングが新バンタム級王者に

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
アルジャメイン・ステーリング(米国)
Def. 4R4分29秒 by DQ
ピョートル・ヤン(ロシア)

一気に距離を詰めて左ミドルを入れたステーリングが、ジャブの中で右ミドルや関節への蹴りを見せる。パンチから組みを見せたステーリングは、直ぐに離れつつ右を振るう。間断なく蹴り、パンチを続けるステーリングは、待ちの姿勢のヤンにヒザ蹴りを入れる。ヤンはローこそ返すが、打撃で前に出ることはなく蹴り足をキャッチしてテイクダウン。

蹴り上げで顔を蹴られ離れたヤンは、続いてスタンドに戻ったステーリングの跳びヒザを被弾する。残り半分でダブルレッグを決めたステーリングが大きな振りの鉄槌を落とす。ヤンはスクランブルから立ち上がりバックへ。胸を合わせてきたところで右を見せ、距離を取ったヤンが右ストレートを打ち込む。後方に倒れてから、起き上ったステーリングだがローでバランスを崩し、蹴り上げで足を振りまわして立ち上がる。

続く組みでワキを差されたステーリングが、なんとカニバサミから足関節を狙う。これを許さずスタンドに戻ったヤンはバックを取り、頭からスラムする。動きが落ちたステーリングはシングルレッグ、ハイクロッチでリバーサルを狙い、スタンドに戻るとスピニングバックフィストを狙ったところで時間となった。

2R、右フックの直後に組み、離れたステーリングが左ハイを狙う。ヤンはハイキックでバランスを崩したステーリングをがぶる。後方に引き込んだステーリングに、ヤンはローを蹴る。ブレイクで立ち上がったステーリングが腹を蹴り、シングルレッグも潰されダブルに移行し起き上り、ケージに詰めて再びダブルへ。

ケージを背にして耐えるヤンは、前方に崩されるもバックを取られないようにすぐに胸を合わせた立ち上がる。執拗にダブルを仕掛け、ヤンを削っていくステーリング。ただし、この攻防は自らの削られる可能性がある。シングルレッグはスネを当てて片足で耐えるヤンにセコンドはハラショーという声を掛ける。

ここからヒザを見せたヤンは、離れたステーリングのスピニングバックエルボーをかわす。それでもステーリングは細かいパンチからエルボーを入れて前に出るが、組み合いでバックに回ったヤンが、スナップダウンで背中から落とし立ち上がるところでバックコントロールに。そのままラウンド終了となった。

3R、打撃戦から組んでヒザを入れるステーリングだが、動きは落ちているか。ヤンは左を伸ばし、組みをがぶってヒザを突き出す。ボディを入れ、オーバーハンドは空振りになったが、テイクダウン狙いを切って離れたヤンは、左から右を当てる。ヤンは左ミドル、ステーリングは右ミドルを返すが、パンチを受けて下がる。ボディからヒザを放つステーリングが、シングルを切られバックから蹴られそうになる。左を当てたヤンは、右ローから組んで大外刈りを決める。

ステーリングが立ち上がるのを待ったヤンは、テイクダウン狙いを切って蹴りを入れる。ステーリングは徹底して組みを続けるも、ヤンは切ってヒザ蹴り。自らの回転拳でバランスを崩したステーリングは、立ち上がっても喉輪で倒される。スタンドで待ったヤンはハイをブロックし、シングルを切ると手をマットにつくステーリングにパンチを入れる。

立ち上がりながらスピニングバックフィストのステーリングは、一発狙いが目立って来る。ローを蹴り合い、右のパンチから組んでバックに回ったヤンが、スクランブルで上を取り時間に。

4R、蹴り足を捕まえ直ぐに倒れたステーリングは、シングルから立ち上がるもボディにパンチを受け、自らのボディを打ち返す。顔を守って腹を殴らせるヤンは、テイクダウンをことごとく切り左ストレートを打ち込む。右ミドルを入れたチャンピオンは、ケージに押し込まれても、右腕を差して押し返す。スピニングバックフィストは空振りにあったが、ステーリングが軸の無い回転系の蹴りやパンチを続ける。

腹を蹴られ、動きがさらに落ちたステーリングは左を被弾し、前に出ても右を打たれる。さらにヤンが左を入れると、ケージ際に下がりアイポークをアピールする。レフェリーは流し、テイクダウン狙いを切ったヤンがヒザを入れる。ステーリングは右ハイを2度見せるが力なく、テイクダウン切られ片ヒザをマットにつく。

ここでヤンは顔面にヒザを突き上げる。全く必要ない反則攻撃で試合が中断する。足を伸ばし、試合再開に消極的なステーリングだが、誰も文句を言うことはできない。

ステーリングは試合に戻ることはできず、試合はまさにアンフィニッシュド・ビジネスという感じでフィニッシュに。結果、ステーリングが反則勝ちで新UFC世界バンタム級チャンピオンに。しかし、ステーリングはベルトを放りだし、しゃがみ込んで涙にくれた。

ここまでの裁定ではステーリングが2票を集めていたということが明らかになったが、この裁定も首をかしげる。いずれにせよ、ヤンは全く必要のなかったUFC史上、初の反則攻撃でベルトを失うこととなった。

そして、ヤンはコーナーに蹴って良いかを尋ね、セコンドがイエスと返答して蹴ったということも明らかに。

勝利者インタビューでも涙のステーリングは「全てを賭けてやってきて、こんな形で終わるなんて、望んでいなかった。一進一退の攻防だけど2つ落としていた。こんなの……続けたかったけど、無理だったんだ。反則の攻撃で……。コーナーが蹴って良いと言った? 続けたかった。最初はハイペースでファンも楽しんでいたはずだ。フ〇ッ〇ン・ブ〇シ〇ト」と何とか言葉をつないだ。


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News UFC UFC259 アスカル・アスカロフ アマンダ・ヌネス アルジャメイン・ステーリング イスラエル・アデサニャ カイラ―・フィリップス カーロス・アルバーグ ケイシー・ケニー ショーン・ブレイディ ジョセフ・ベナビデス ソン・ヤードン トレヴィン・ジョーンズ ドミニク・クルーズ ピョートル・ヤン ブログ マリオ・バウティスタ ミーガン・アンダーソン ヤン・ブラボヴィッチ

【UFC259】計量終了 ジョーンズ、メディッチ、アルバーグ。アーリープレリミも注目カードがズラリ

【写真】上背でアデサニャが、ブラボヴィッチを上回っている?! (C)Zuffa/UFC

6日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFC259「Blachowicz vs Adesanya」の計量が、5日(金・同)に行われた。

UFC世界ライトヘビー級選手権試合=王者 ヤン・ブラボヴィッチ✖チャレンジャーUFC世界ミドル級王者イスラエル・アデサニャ、UFC世界女子フェザー級選手権試合=王者アマンダ・ヌネス✖挑戦者ミーガン・アンダーソン、UFC世界バンタム級選手権試合=王者ピョートル・ヤン✖挑戦者アルジャメイン・ステーリングというトリプルクラウンに加え、メインカードからプレリミまで気になるカードが、並びに並んでいる今大会。


まずアーリー・プレリミの第1試合にトレヴィン・ジョーンズが出場する。

PXCからTOP FC、そしてACAを経てDEEPにも来日したグアムのジョーンズは、昨年に8月に劇的な大逆転KOでチムール・ワリエフという強豪を下しながら、マリファナの服用で勝利を取り消され今回が仕切り直しの一戦となる。

対するマリオ・バウティスタはCombate AmericasやLFAからUFCへステップアップ。コーリー・サンドハーゲンには敗れたものの、元DEEP王者キム・ジンス、元LFA王者マイルズ・ジョンズに勝利している実力者だ。ワリエフ戦同様に苦戦は避けられないジョーンズが、どのような戦いを見せるか。

アーリー・プレリミ第2試合に出場のウロス・メディッチは昨年8月にコンテンダーシリーズで見事なパウンドTKO勝ちを収め、ダナ・ホワイトに見初められたファイターだ。

KINGS MMAでハファエル・コルデイロに師事するセルビア人ファイターのメディッチ、どのようやUFCキャリアのスタートを切るのか。

メディッチと同様に昨年のコンテンダーシリーズから注目のデビューを果たすのが、カーロス・アルバーグだ。

アデサニャのトレーニング・パートナーのアルバーグは、NZのトップ・キックボクシング・プロモーションであるKing Of the Ringの8人制トーナメントを100キロと92キロ級で制している。アデサニャが86キロ級と100キロ級で3度頂点に立っているに続く、マルチ王者がアルバーグだった。

打撃の強さは絶対的。組みは未知数のアルバーグだけに、ハードヒッター=ケネディ・ンゼチェクウとは手の合う顔合わせといえるだろう。

さらにキャリア13勝0敗のショーン・ブレイディと豪州の親子鷹ジェイク・マシューズのウェルター級戦ら、他プロモーションならメインカードでもおかしくないカードがアーリー・プレリミから見られる。

プレリミではドミニク・クルーズ✖ケイシー・ケニー、ソン・ヤードン✖カイラー・フィリップスという2つのバンタム級戦と、ジョセフ・ベナビデス✖アスカル・アスカロフ、ホジェリオ・ボントリン✖カイ・カラフランスのフライ級マッチが組まれているが、アスカロフが今大会唯一の体重オーバーとなり、127ポンド契約マッチとなった。

WEC世代の生き残りベナビデスにとって、厳しくタフなアスケロフと背水の陣で戦うマッチアップだ。

群雄割拠のバンタム級の覇権争い、アデサニャがチャンプ・チャンプを目指すメインイベント。ここで注視したいのはアデサニャの体重がリミットより5ポンド近く軽いということ。ブラボヴィッチはリカバリーが見込まれるため、このライトヘビー級世界戦はパワー&瞬発力✖スピード&タイミングの争いとなりそうだ。

■視聴方法(予定)
3月7日(日・日本時間)
午前8時~UFC FIGHT PASS
正午~PPV
正午~WOWOライブ

■UFC259計量結果

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] ヤン・ブラボヴィッチ: 205ポンド(92.99キロ)
[挑戦者]イスラエル・アデサニャ: 200.5ポンド(90.94キロ)

<UFC世界女子フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者] アマンダ・ヌネス: 145ポンド(65.77キロ)
[挑戦者]ミーガン・アンダーソン: 144.5ポンド(65.54キロ)

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] ピョートル・ヤン: 135ポンド(61.24キロ)
[挑戦者]アルジャメイン・ステーリング: 134.5ポンド(61.0キロ)

<ライト級/5分3R>
イスラム・マカチェフ: 156ポンド(70.76キロ)
ドリュー・ドパー: 156ポンド(70.76キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
チアゴ・マヘタ: 206ポンド(93.44キロ)
アレクサンドル・ラキッチ: 206ポンド(93.44キロ)

<バンタム級/5分3R>
ドミニク・クルーズ: 136ポンド(61.69キロ)
ケイシー・ケニー: 136ポンド(61.69キロ)

<バンタム級/5分3R>
カイラー・フィリップス: 136ポンド(61.69キロ)
ソン・ヤードン: 135.5ポンド(61.46キロ)

<フライ級/5分3R>
ジョセフ・ベナビデス: 125.5ポンド(56.92キロ)
アスカル・アスカロフ: 127ポンド(57.6キロ)

<フライ級/5分3R>
カイ・カラフランス: 125.5ポンド(56.92キロ)
ホジェリオ・ボントリン: 126ポンド(57.15キロ)

<フライ級/5分3R>
ティム・エリオット: 125.5ポンド(56.92キロ)
ジョーダン・エスピノーサ: 126ポンド(57.15キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
カーロス・アルバーグ: 205.5ポンド(93.21キロ)
ケネディ・ンゼチェクウ: 205ポンド(92.99キロ)

<ウェルター級/5分3R>
ショーン・ブレイディ: 170.5ポンド(77.34キロ)
ジェイク・マシューズ: 169.5ポンド(76.88キロ)

<女子ストロー級/5分3R>
リヴィア・ヘナタ・ソーサ: 116ポンド(52.62キロ)
アマンダ・レモス: 116ポンド(52.62キロ)

<ライト級/5分3R>
ウロス・メディッチ: 156ポンド(70.76キロ)
アーロン・クルーズ: 155ポンド(70.31キロ)

<バンタム級/5分3R>
トレヴィン・ジョーンズ: 134.5ポンド(61.0キロ)
マリオ・バウティスタ: 135.5ポンド(61.46キロ)

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Interview Special オレッグ・ボリソフ シャミル・ニカエフ ピョートル・ヤン ブログ マゴメド・マゴメドフ マテウス・マトス ルスタン・カリモフ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:2020年12月─その壱─マゴメドフ×マトス「レブニー的Bellator」

【写真】超ド級レスラーがベラトール・バンタム級戦線で如何に活躍していくのか(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

今月は変則的に番外編からお届けしたが、今回から従来の形式通りに、背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2020年12月の一番、第一弾は10日に行われたBellator254からマゴメド・マゴメドフ✖マテウス・マトスについて語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、最初の試合をお願いします。

「マゴメド・マゴメドフ✖マテウス・マトス戦です。笑っちゃうのがマゴメドフだけでなく、相手のマトスもACBで戦っていた選手なんですよね。ピョートル・ヤンに負けてACBでは2勝1敗とかで」

ピョートル・ヤン✖マゴメド・マゴメドフ(C)ACA

──対するマゴメドフはヤンに勝ってACBバンタム級王者になっています。

「そこ、やっぱり引用しますよね。でもピョートル・ヤンに負けてベルトを失っていることは強調しない」

──それは試合を盛り上げるために、ピョートル・ヤンと1勝1敗、勝ったのは接戦で負けたのは完敗……とはしないですよね(笑)。

オレッグ・ボリソフ(C)ACA

「アハハハ。そしてピョートル・ヤンに勝っているから、バリバリの殴り合いができる選手だと思われていたかもしれないけど、超ド級のレスラーですしね(笑)。ACAとかチェックしていない人は、どんなロシア人が出てきたのかって楽しいだったからもしれないけど、実際は試合が跳ねる系じゃない。

試合内容だとオレッグ・ボリソフやルスタン・カリモフの方が面白い」

──その両名とヤン、マゴメドフでACBバンタム級四強でした。

ルスタン・カリモフ(C)ACA

「ハイ。で、試合でいえばピョートル・ヤン、ボリソフ、カリモフの方が面白いんですよ。ただ試合は跳ねないマゴメドフですけど、ボディクラッチからレスリングは抜群に強いです。襷にしなくて、ボディクラッチが。

エスケープを絶対にさせないし、スクランブルを起こさせない。そういう堅実なレスリングが強い。ヤンとかなんでも強いじゃないですか。UFCの選手ってレスリングだけっていうのはもう見られない。ただし、ここまでレスリングが強い選手はいるのか。

一点突破で何でも強い選手とやってどうなるのだろうかっていうぐらいレスリングは強いですね。ロシアのレスリングでいえば、ブラジル人のACAフェザー級王者のフィリッピ・フロレスが計量オーバーして。そのフロレスにKO負けしたマラット・バラエフ……あのユサップ・ライソフに負けている選手かんですけど、バラエフも打撃に特化しているのに相手がノヴァ・ウニオンのストライカーになると、一気に組みに行ったんです。

ああいう試合を見ていると、ロシア人ってフリースタイル・レスリングやサンボが強いから打ち合えるというのを表していると思います。

まあバラエフは45歳だけど、これから肝になるのはヤングイーグル(※ACAの人材育成大会)出身の選手かと。バラつきがあっても、あそこから抜けてくる選手は強いですよ」

──フライ級王者になったアズマット・カレフォフとか、ヤングイーグル出身ですね。

「あの春日井に勝ったヤツですね。ロシアは篩落としができる。ヤングイーグルで鍛えられた人間が勝ち残ると、やはり強いですよ。でも、そんなレスラーで試合は地味なマゴメドフがマトスと戦うとかっていうのは、ビヨン・レブニー時代のようですね」

──最近の兆候でいえば意外なマッチアップでした。

シャミル・ニカエフ(C)BELLATOR

「ウェルター級のシャミル・ニカエフとか、なんか投入していますしね」

──ニカエフは本来はライト級の選手で、ロシア勢は世界中を侵食しています。そのマゴメドフは、アン・アルタチュラ政権に挑むことになりますが、ベラトールのバンタム級戦線は大晦日に復帰する堀口恭司選手も元チャンピオンで強力なタイトルコンテンダーです(※同取材は12月30日に行われた)。

「堀口選手はケージでも大丈夫ですよね。朝倉海選手は、そこは分からない。堀口選手と朝倉選手が同じ相手10人とやるとアベレージで勝率が高いのは堀口選手だと思います。でも、朝倉選手の方が派手な勝ち方はできる。

だからこそ、この2人の試合は完成度の高さでいえば堀口選手だと思っています。マゴメドフと戦うことを考えても、堀口選手はダリオン・コールドウェルに勝ち、UFC時代にはアリ・バガウティノフに勝っていますからね」

──既に超ド級のレスラーとロシアンに勝っていると。

「堀口選手はラウンドマストでも足が使えて打撃があるから、相性は良いと思います。大晦日にケガ明けでどういう試合ができるのかは見る必要がありますが、堀口選手がマゴメドフやアルタチュラと絡むととても面白いでしょうね。

そこはスコット・コーカーのベラトールですけど、マゴメドフなんてビヨン・レブニー時代のベラトールの面白さでもあるし、興味深いですね(笑)」

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Interview Special UFC ジョゼ・アルド ピョートル・ヤン ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:7月─その壱─ピョートル・ヤン×ジョゼ・アルド「ACA」

【写真】ピョートル・ヤンの戴冠=ACA=ロシアの軽量級の強さ (C) Zuffa / UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年7月の一番、第一弾は12日に行われたUFC251からピョートル・ヤン✖ジョゼ・アルドの一戦を語らおう。


──海外の注目すべき試合は、まま戻ってきたMMA界。2020年7月度の青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合をお願いします。

「ピョートル・ヤン✖ジョゼ・アルドですね。ヤンはUFCでも無敗でチャンピオンになった。これはACAのレベルの高さを証明しましたね。フライ級からフェザー級にかけては、なんだかんだといって強い。

フライ級のアルカル・アルカロフも苦戦はしても負けていないし。ヤンがチャンピオンになって、マゴメドシャリポフがフェザー級であの位置にいるというのは」

──思えばUFCのチャンピオンやトップというファイターは、ここまで輩出しているのはACAぐらいかもしれないですね。

「ロシアのこのあたりは強いですよね」

──今は独立した国も多いですが、サンボでも旧ソ連国家ではロシア語も話せない超強豪の軽量級世界王者などがいました。

「ソビエト連邦という共同体から、独立した国にチャンピオンも散らばり、そこいらの国から出てくる柔道やサンボの世界王者クラスの選手はソ連時代には世界大会に出られないという恐ろしい状況だったわけですし」

──その恐ろしさの末裔が、MMAでも活躍していると。

「それぐらいレベルが高いです。ただし、コンディション的にはACAの時の方が強い」

──そこは科学的要素も含まれているでしょうが、結局は強さの上にそこがあり、互いが使用していた。そこが抜けても彼らは強いということなのでしょうか。

「UFCでは抜いているというか、上手く調整している。誰もが(笑)。でも、強いですよ。アルドのローにも下がらない。構えは変えたけど、押し切っちゃう。あれは普通ならローから上を貰っちゃいます。やっぱり、ヤンもタフです」

──ただしヤンはまだジミー・リベラとジョゼ・アルドしか、トップ10とは戦っていない。この辺りがまた楽しみです。

「マルロン・モラエス、コディ・ガーブラント、それとお縄を頂戴しているTJ・ディラショーが出てきたら……。ディラショーがいない間にモラエスとセフードが潰し合い、その間隙をぬってヤンが世界チャンピオンになった感はありますしね。

そこも含めて、コロナ禍での運というのはあります。アブダビはブラジル人とロシア人だらけだったし。そこはあると思います。と同時にアブダビのような状況にロシアがあるということは、これからもどんどん出てくるでしょうね」

──柔道やボクシングだとロシア勢は重量級もトップを走っていますが、MMAは決してそうではないのも興味深いです。

「ACA自体がウェルター級になるとガクンと落ちます。それでもヤンがガーブラントとかやると……、分からないけどガーブラントとかが勝ってしまいそうですね。だからチャンピオンだけど、もう一周できる。これはもうUFCならでは、です。それだけ層が厚い、UFCに集まっているということですよね」

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Bu et Sports de combat Interview UFC ジョゼ・アルド ピョートル・ヤン ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ピョートル・ヤン✖ジョゼ・アルド

【写真】ヤンはまだ底を見せていない。アルド戦では彼の全容は見えないということは、誰と戦ったも楽しみが増える(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──ピョートル・ヤン✖ジョゼ・アルドとは?!

ジョゼ・アルドですら憎くもない人間と戦い続けることはできない


──ジョゼ・アルドを5Rにパウンドアウトで破ったピョートル・ヤンがバンタム級王者になりました。この試合、初回はヤンが攻勢でした。

「結果から言わせてもらいますと、やはりやる気の問題なんだと思います。アルドは長年ずっとトップを戦ってきて、最高の結果も残してきた。でも、今も収入を得るためなのか、まだやれると証明しようと戦っているのか。それは頭の判断ですが、体が戦いたがっているようには見えなかったです。それでも良いところがあるのはさすがなのですが……、ジョゼ・アルドですら憎くもない人間と戦い続けることはできない。それが人間という生き物なのかと思った次第です。

UFCのPPV大会では数字が取れる名前のある人がずっと上の方で戦っていますが、もうお腹いっぱいになったような選手が少なくないです。これから成り上がってやろうという選手とは、明らかに気持ちは違うのですが……ファンは、ビッグネームが見たいということなのですね。

そういうなかで1Rにアルドがパンチを打とうとしているのですが、彼のパンチが良いのは右ローをしっかりと蹴ることができている時なんです。パンチを打とうとしている時は、エネルギーが小さくなってしまう。ジャブからワンツーなんて、ボクシングをやっていると。アルドがパンチで行こうとする時は、ピョートル・ヤンの間です。ただし、右のカーフキックが入るとアルドの間になります」

──1Rはずっとパンチを被弾し、最終局面でテイクダウンを狙いました。

「不可解ですよね。あの先に何があるのか。蹴れば自分の間になるのに、あそこでテイクダウンにいった。いった先にどのようなビジョンがあるのか。恐らくは、コレというものがないからスクランブルに持ち込まれると自分から下になってしまったのでしょう。

ピョートル・ヤンに関しては、これはヒョードルやヌルマゴメドフにも当てはまるのですが、スタンドの打撃よりパウンドが圧倒的に良いです。スタンドでもショートの右アッパーなどは凄く良かったですが、パウンドの時の質量が一番高いです。もともと重力や引力との関係もあるので、人は上を取った時の方が質量は高いのですが、そうなった時にピョートル・ヤンの質量は最高値です。あのボディで、試合を終わらせることができてしまいそうなぐらい。

でもアルドが2Rに盛り返すというのは、さすがに歴戦の強者ですね。あの局面は、ヤンが腹を攻めなかった。ばかりか、ペースを落としました。そこでアルドの右の蹴りが入った。そうなると間が良くなり、左のボディブローも効き始める。あの局面ではアルドの方がヤンよりも、質量が高かったです」

──前足を蹴られたヤンがサウスポーにスイッチすると、一気に勢いがなくなったように見えました。

「サウスポーになった時は、本気で食いに行こうというのが見えなくなってしまいましたね。蹴りは良かったですけど。だから、あの時はアルドが勝てる、勝機を見いだせたはずなんです。それなのに3Rと4Rは、アルドは何もしなかった──下がるだけで。ビジョンが見えなかったです。反対に2Rを失ったヤンは、何かをしようと前に出てくる。その時にアルドが、ヤンに対して何をやろうとしているのか、それがなくて漠然と戦っているようにしか見えなかったですね。

そうなるとサウスポーでも、ヤンの質量が上がり、間もヤンになっていく。アルドのリアクションはバックステップで外すだけでしたし。だからヤンの回転が上がっていきました」

──最終回、仕留めに行った時のヤンは顔面を殴り、ボディを殴り、ヒザも蹴った。多彩な攻撃を見せていました。

「それはヤンが良いというよりも、アルドがもう終わっていたので。ああなると余裕が持てると思います。あの状況で、打ち返すことができる、あるいはテイクダウンができる人間に対して、あれだけのテクニックを見せることができるのか。この試合のアルドでは、ヤンの力というのは測りかねる部分があるかと私は思います。

いや凄く高い能力の持ち主ですよ、ヤンは。そして冷静です。最後のパウンドは殺すというよりも、レフェリーに止めろよというメッセージを送って殴っているように感じました。この試合もそうだし、もう5Rを戦い切れない選手が多くなっているから、5R制ってどうなんだろうなって感じます。5Rを戦い切る稽古と、気持ちがどれだけ創ることができるのかというのは、このところのUFCでは思うところですね。5Rあることで2Rぐらいは休む選手ができているので」

──日本人としては長丁場に活路を見出したいと思ってしまうのですが……。

「以前、黒崎健時先生が著書で42.195キロを100メートル・ダッシュのつもりでやりきれば必ず勝てるのだ。ただ、それをやる勇気のある人間がいないと言われています」

──物理的に無理だと思ってしまうかと、それは。

「でも、私はそれをやろうとする選手がこれまでも勝ってきたと思います。ジョルジュ・サンピエールにしても、ドミニク・クルーズにしてそうでした。今はあの時の彼らのように仕上げられないのでしょうね。

今後、ピョートル・ヤンがそこまでできるのか。それこそ指導者と選手が、人格の殺し合いをするような稽古でないと5分✖5Rというのは戦いきれないのではないかと思います。それは対人だけでなく、心肺機能を上げる練習にしても。そして、そんな稽古は10何年もできないでしょう」

──GSPやドミニクのようにピョートル・ヤンがなれるかどうかは、練習次第だと?

「ハイ。この試合からだけだとヤンは分からない。このままでコディ・ガーブラントやマルロン・モラエスとやって勝てるのか。ガーブランドはスタンドで、ドミニク・クルーズを効かせることができた選手です。それゆえにTJ・ディラショーにやられてしまったのですが……」

──そのTJ・ディラショーも来年の1月に戻ってくることができます。

「まぁ、UFCのバンタム級は凄いことになっていますね。だからこそアルドと戦った状態のヤンだと、ガーブラントには勝てないような気がします」

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Report UFC UFC251 ジョゼ・アルド ピョートル・ヤン ブログ

【UFC251】ローを効かされ、サウスポーを強いられて尚、アルドをTKO。ヤンが新バンタム級世界王者に

<UFC世界バンタム級王座決定戦/5分5R>>
ピョートル・ヤン(ロシア)
Def.5R3分24秒by TKO
ジョゼ・アルド(ブラジル)

ヤンが左ジャブを伸ばし、アルドもジャブを返す。ボディを互いに打ち合うと、ヤンが左ハイを狙う。ジャブを伸ばすヤンが右オーバーハンドから、返しの左は空振りに。ここでアルドが右ローを蹴るも、直後にワンツーの右ストレートを打ち抜かれる。攻め急ぐことのないヤンはローでバランスを崩されたが、立ち上がってすぐにワンツーを打っていく。左の蹴りのフェイクに続く右ローを空振りしたアルドは、直後の右ハイはしっかりとブロックする。

アルドはジャブから右ロー、ヤンはボディを返す。残り90秒、右を当てたヤンはローで体がよれるも、すぐに右ストレートをヒットさせる。左ミドルを入れたヤン、アルドはテイクダウン狙いから下になり、ヤンが腰を上げた状態から重いパウンドを落とす。ボディを効かせたヤンは顔面にパンチを纏めるとアルドは、蹴り上げでスペースを作りながら、ガードを取ったままラウンド終了を迎えた。

2R、腹を空けたままの構えのアルドが強烈な右ローを蹴り、左ジャブ、再びローを蹴る。構えを変えたヤンは、右ミドルをブロックして左ストレートを伸ばす。右を当てたアルド、ヤンは左ハイ。オーソに戻したヤンは、左ボディを受けて大振りのパンチは空振りに。アルドはここでもローで左足を蹴り、ヤンは2つ蹴られたところでスイッチする。

右手前でもワンツーを伸ばすヤンだが、ボディを打たれる。アルドは右ミドルを入れ、右ストレートを2つ伸ばす。対サウスポーの方が戦いやすいか、アルドは右ボディを打ち込み、プレッシャーを強める。さらに右ハイを蹴っていくアルドは、オーソに戻したヤンに右ロー。ヤンは直ちにサウスポーに戻し、左ストレート、左ハイも最後に右ミドルを蹴ったアルドがラウンドを取り返した。

3R、サウスポーのままのヤンが右ミドルからヒザ蹴りと腹を狙われる。アルドは左リードフックを放ち、圧で上回るようになる。ヤンも左ミドルを蹴り返し、ワンツーで前に出る。右ジャブをヤンが入れると、アルドはボディを狙い、右ボディストレート、左ボディフックを2発入れる。左フック、ボディから右を当てたアルドは腹を殴る。ケージに詰まっていたヤンは、ここで前に出てオーソに。右から左アッパーもローを蹴られる。スイッチした直後にヒザを顔面に届かされそうになったヤンは、強まるアルドのプレッシャーのなかで左フックを振るう。

右ストレート、左ボディフックを入れたアルド、ヤンが左ボディストレートを返す。さらにワンツーで前に出たヤンは、右を被弾してスピニングバックフィストを見せる。ボディから左を当てたヤンに対し、アルドがヒザを返すも右エルボーを被弾する。アルドは動きが落ちてきたか、ヤンがラウンド後半になって盛り返した。

4R、ボディを貰った直後に左を顔面に返したヤンは、クリンチから離れると左ミドルを蹴り込む。アルドはボディ、そして右ストレート、さらに左ボディフックで腹を抉る。ヤンは前に出てクリンチからエルボー、ヒザ蹴りのアルドもヒジを打っていく。左2発からワンツー、ボディを入れたヤンは、アッパーを2つ見せる。アルドはボディを返すも、足払いでバランスを崩すなど中盤を迎えると動きが落ちる。

ボディ、左フックを打ったヤンは、右を当て口を開けたアルドに右ジャブから左ハイを狙う。回るアルドは、走るように間合を外す。追いかけたヤンが左ロー、鼻血を流すアルドは必死に距離を取る。ヤンはボディから右フック、左アッパー。頭を抱えたように動きが止まったアルドの足を取り、軸足を払ってテイクダウンしたヤンが、ガードのなかに収まる。細かいパンチ、ボディから右を打ち込み、エルボー、腰を上げてボディを殴ると、ヤンは勢いのある左のパンチを2つ打ち込み、ラウンドを明確に取った。

最終回、インターバルでどれだけアルドは回復できたか。いきなり左ストレートを打ち抜いたヤンは、ケージ際まで下がったアルドからボディから左アッパーでダウンを奪うとパウンドを纏める。ハーフで抑え、エルボーを入れるヤンが、ハーフのアルドの右腕を殺して抑えパンチとエルボーを落とす。

右腕を制されたままのアルドは、エルボーを受け背中を見せる。キャンバスがすぐに真っ赤に染まるほど流血に見舞われたアルドは、後方からの鉄槌に動けない。レフェリーは試合を止めず、ヤンは左右のパンチ、ヒザを続ける。バックを譲ったままのアルドは右のパンチ、鉄槌、エルボーを受け続け、ついにはレフェリーが試合をストップした。

新UFC世界バンタム級王者に輝いたヤンは、ケージサイドインタビューで「少しハードファイトになることは予想していたけど、ローがきつかった。初回と2Rはプレッシャーを与えて疲れさせ、3Rから攻めるのが作戦だった」と話した。


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News UFC UFC251 アマンダ・ヒーバス アレックス・ヴォルカノフスキー カマル・ウスマン ジョゼ・アルド ピョートル・ヤン ブログ ペイジ・ヴァンザント ホルヘ・マスヴィダル マックス・ホロウェイ レオ・サントス

【UFC251】計量終了 終始笑顔のアマンダ・ヒーバス。マスヴィダルもミステリアス・スマイル!?

【写真】マスクをせずに計量に臨んだマスヴィダル、この笑顔が意味するところは (C)Zuffa/UFC

10日(金・現地時間)、11日(土・同)にUAEはアブダビのヤス島=ファイトアイランドで開催されるUFC251「Usman vs Masvidal」の計量及びフェイスオフが行われた。

3階級の世界戦に出場する選手は全員が問題なくパス。ジョゼ・アルドとバンタム級王座決定戦を戦うピョートル・ヤンはスケールに乗る前に服と一緒にマスクを外し、つけるように指示を受ける。

一方でマック・ホロウェイの挑戦を受ける世界フェザー級王者アレックス・ヴォルカノフスキーと、メインで世界ウェルター級王者カマル・ウスマンに挑戦するホルヘ・マスヴィダルはマスク無しで体重を測った。

そのマスヴィダルは下着を脱いで計量に臨み、指を組み腕を合わせるや満面の笑みを浮かべる。フェイスオフではマスクをつけたマスヴィダルだが、離れるとすぐに外し──ウスマンに何やら呟くようなシーンも見られた。


メインカード出場選手では会見などで、いつも明るさ満点のアマンダ・ヒーバスが大きなマスク着用でも体重計の上で思い切り笑顔を見せていることが分かった。そのヒーバス、ペイジ・ヴァンザントと相対すると鋭い目つきになるものの直後に背筋をピンと伸ばして、周囲にお辞儀するなど、どこまでも好人物ぶりを披露している。

なお女子バンタム級でカロル・ホサと対戦予定だったするヴァネッサ・メーロが 141ポンドと6ポンドのオーバー──30パーセントのファイトマネーのカットで、キャッチウェイト戦へ。またフライ級でジャルガス・ジャマグロフと戦うパウリアン・パイヴァは拝むような仕草をスケールの上で見せたが、3ポンド・オーバーで掌を合わせ周囲に詫び20パーセントの減給となり契約体重戦に臨むこととなった。

■UFC251計量結果

<UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R>
[王者]カマル・ウスマン: 170ポンド(77.11キロ)
[挑戦者]ホルヘ・マスヴィダル: 170ポンド(77.11キロ)

<UFC世界フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ヴォルカノフスキー: 145ポンド(65.77キロ)
[挑戦者]マックス・ホロウェイ: 145ポンド(65.77キロ)

<UFC世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
ピョートル・ヤン: 135ポンド(61.24キロ)
ジョゼ・アルド: 135ポンド(61.24キロ)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドレジ: 115ポンド(52.16キロ)
ローズ・ナマジュナス: 116ポンド(52.62キロ)

<女子フライ級/5分3R>
ペイジ・ヴァンザント: 126ポンド(57.15キロ)
アマンダ・ヒーバス: 126ポンド(57.15キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
ヴォルカン・オデズミア: 205.5ポンド(93.21キロ)
イリー・プロハースカ: 205ポンド(92.99キロ)

<ウェルター級/5分3R>
エリゼウ・カポエイラ: 171ポンド(77.56キロ)
ムスリム・サリコフ: 171ポンド(77.56キロ)

<フェザー級/5分3R>
マクワン・アミルカーニ: 146ポンド(66.22キロ)
ダニー・ヘンリー: 146ポンド(66.22キロ)

<ライト級/5分3R>
レオナルド・サントス: 156ポンド(70.76キロ)
ロマン・ボガトフ: 155.5ポンド(70.53キロ)

<ヘビー級/5分3R>
マルチン・ティブラ: 252ポンド(114.3キロ))
マクシム・グリシン: 223ポンド(101.15キロ)

<フライ級/5分3R>
パウリアン・パイヴァ: 129ポンド(58.51キロ)
ジャルガス・ジャマグロフ: 126ポンド(57.15キロ)

<女子バンタム級/5分3R>
ヴァネッサ・メーロ: 141ポンド(63.95キロ) 136ポンド(61.69キロ)
カロル・ホサ: 141ポンド136ポンド(61.69キロ)

<バンタム級/5分3R>
マーチン・デイ: 136ポンド(61.69キロ)
デイヴィー・グラント: 136ポンド(61.69キロ)

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Interview UFC UFC251 ジョゼ・アルド ピョートル・ヤン ブログ

【UFC251】アルドとバンタム級王座決定戦、ピョートル・ヤン「彼が成長しているようには見えない」

【写真】ヤンという名前は祖父が中国からロシアに移り住み、中国由来であることを会見で話したピョートル・ヤン(C)Zuffa/UFC

8日(水・現地時間)、11日(土・同)にUAEはアブダビのUFCファイトアイランドで開催されるUFC251「USMAN vs Masvidal」のバーチャル・メディアデー2日目が行われた。

ここではジョゼ・アルドとUFC世界バンタム級王座を賭けて戦うピョートル・ヤンの
受け答えを抜粋してお届けしたい(※要約)。


──パンデミック下で、試合に向けてどのようなトレーニングキャンプを行えたのだろうか。

「今はトレーニングについて振り返る時じゃないけど、全て上手くいったよ。トレーニングが十分でなかったとしても、僕のモチベーションは勝利を手にするのに十分だった。キャンプが良かっただけにチャンピオンになるチャンスは大きくなった。

世界中のファイターがパンデミックの影響を受けている。受けていない選手は1人としていない。状況に合わせて、誰もが家でしっかりと体を動かしてきたはずだ。皆が同じ条件だった。そして今、ここで戦う。問題ないよ」

──タイガームエタイの練習で得られたことは?

「初めてタイガームエタイを訪れたのは2014年だった。当時、まだプロで1試合しか戦ったことがなかった。食べ物、マッサージ、気候、凄く雰囲気が気に入って、キャンプに集中できたんだ。またキャンプをタイガームエタイで行いと思うし、新しい環境で練習するのも必要だと思っている」

──UFCタイトルに初挑戦するということで、普段と違う面は?

「ナーバスになり過ぎることはないし、心配もしていない。ただ試合に集中してきたし、それ以外の部分に関しては考えないようにしてきた。他のことは試合が終わってから考える。今は試合のことしか、頭にない」

──この試合はジョゼ・アルドが王座決定戦に出てくるに値しないという声があるけど、アルドのことだけを想定して練習してきたのか。それともアルジャメイン・ステーリングになることもあるという考えはあった?

「対戦相手を決めるのは僕の仕事じゃない。ただ、空位のベルトを賭けて誰とでも戦うつもりだった。マッチメイカーがアルドを選んだ。ならアルドと戦う。彼は偉大な選手だし、レジェンドだよ」

─そのアルドと、どのような戦いをしたい?

「試合展開によるよ。倒せそうならKOを狙う。判定になりそうなら、判定勝ちをする。僕のゴールは勝利で、勝ち方にはこだわらない」

──以前、ノヴァウニオンでトレーニングした経験があるけど、ジョゼ・アルドとの練習がアドバンテージになると思っているかい。

「スパーやグラップリングをジョゼ・アルドとしたことは、素晴らしい経験になっている。でも4年以上も前の話だ。僕はあの時より強くなっている一方で、彼が当時より成長しているようには見えない。

あの練習がアドバンテージになるとは考えていないよ。アルドはボクシングとローでプレッシャーをかける。ずっとその戦い方だった。練習をしたことで僕がアルドを少し理解した。アルドも僕のことが少し分かった。それだけでアドバンテージはないし、何も変わらない。

試合を盛り上げるにはプロモーションが必要だけど、僕らは互いに尊敬しあっている。互いを知っていることが試合に影響を及ぼすこともない。彼のゴールはチャンピオンになることで、僕のゴールも同じ。だから良い試合になるよ」

■UFC251対戦カード

<UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R>
[王者]カマル・ウスマン(ナイジェリア)
[挑戦者]ホルヘ・マスヴィダル(米国)

<UFC世界フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ヴォルカノフスキー(豪州)
[挑戦者]マックス・ホロウェイ(米国)

<UFC世界バンタム級王座決定戦/5分5R>>
ピョートル・ヤン(ロシア)
ジョゼ・アルド(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドレジ(ブラジル)
ローズ・ナマジュナス(米国)

<女子フライ級/5分3R>
ペイジ・ヴァンザント(米国)
アマンダ・ヒーバス(ブラジル)

<ライトヘビー級/5分3R>
ヴォルカン・オデズミア(スイス)
イリー・プロハースカ(チェコ)

<ウェルター級/5分3R>
エリゼウ・カポエイラ(ブラジル)
ムスリム・サリコフ(ロシア)

<フェザー級/5分3R>
マクワン・アミルカーニ(フィンランド)
ダニー・ヘンリー(英国)

<ライト級/5分3R>
レオナルド・サントス(ブラジル)
ロマン・ボガトフ(ロシア)

<ヘビー級/5分3R>
マルチン・ティブラ(ポーランド)
マクシム・グリシン(ロシア)

<フライ級/5分3R>
ザルガス・ズマグロフ(カザフスタン)
ハウリアン・パイヴァ(ブラジル)

<女子バンタム級/5分3R>
ヴァネッサ・メーロ(ブラジル)
カロル・ホサ(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
マーチン・デイ(米国)
デイヴィー・グラント(英国)