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【RIZIN48】キム・スーチョル解剖─02─最強の兄弟子イ・ユンジュン「スーチョルが負ける可能性は…」

【写真】病に倒れ、僅かキャリア13戦11勝2敗で引退を強いられたイ・ユンジュンはスーチョルのまさにブレインだ(C)MMAPLANET

29日(日)、埼玉県のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN48で、キム・スーチョルが井上直樹とRIZINバンタム級王座決定戦を戦う。
Text by Manabu Takashima

RIZINを舞台にその実力を日本のファンに見せつけるスーチョルだが、彼にはイ・ユンジュンという欠かせない兄弟子が存在している。元Road FCバンタム級王者イ・ユンジュンは、KTTからコリアンゾンビMMAを経てRoad Gym Wonju=Team Forceに合流し、若き日のスーチョルと切磋琢磨しあった。

技術的には明らかにスーチョルより優れていたユンジュン。病により絶頂期を迎える前に現役生活から身を引くことになった悲運はファイターは、スーチョルのRIZIN及びRoad FCでの躍進に欠かせないキーパーソンであることは間違いない。

MMAPPLANETではこの兄弟子を現地取材──キム・スーチョル徹底解剖第2弾イ・ユンジュン編をお伝えしたい。


──個人的にイ・ユンジュンこそK-MMA史上、一番のウェルラウンダーだったと思っています。同じバンタム級にはキム・スーチョルがおり、スーチョルはユンジュンと比べる荒くて勢いのある選手でした。そんなスーチョルのことをユンジュンはいつ頃から知っていたのでしょうか。

「もともと2人ともウォンジュ出身なので高校生の時から知っていました。違うジムだったのですが、キム・スーチョルというもの凄く強い子がいるということを聞いていました」

──4歳年下のスーチョルのことを高校生の時から知っていたのですね。

「ハイ、その頃から知っていましたね。彼がジョン・ムンホン代表の下で練習をしていて、自分はゴンクウォンユスル(空拳柔術)を習っていた頃ですね」

──デビューの年も同じですが、ユンジュンがKTTから独立したジョン・チャンソンの指導を受けてRoad FCで戦うようになった時にはスーチョルは、既にONEを舞台に海外でキャリアを積んでいました。やはりジムの力の差というのはあったと思いますが、同じバンタム級で年下の同期のシンガポールにおける活躍をどのように感じていましたか。

「当時、自分はまだRoad FCでデビューしたばかりの選手で、ONEで活躍していたスーチョルは自分よりずっと良い選手、素晴らしい選手だと思っていました」

──ちょっと変わった人間だなとは(笑)。

「まだ親しい仲ではなかったのですが、若いのにハゲているのが印象的でしたね(笑)」

──アハハハ。その後、ユンジュンがRoad FCバンタム級王者になり、スーチョルがONEから戻ってきた時に、日本を凌駕しつつあった韓国のMMAはこの両者が担って行くと感じました。そして、この2人が戦えばどのような試合になるのだろうと。当時、スーチョルのことはライバル視していたのでしょうか。

「スーチョルと戦ったらどうなるのか。そこは、本当に良く考えていました。打撃戦だと自分が少し有利で、レスリングになると互角。なので、かなり面白い試合になるんじゃないかと想像はしていました」

──打撃は自身の方が上というのは、当時のスーチョルは粗かったということでしょうか。

「当時を思い出すと、スーチョルの打撃はテイクダウンを取るための打撃でした。対して自分の打撃はキックボクシングを取り入れたダメージを与える、相手を倒す打撃でした」

──つまりは自分の方が強いと思っていたわけですね(笑)。

「もちろん。あの時はそう思っていました(笑)」

──Road FCではユンジュンがチャンピオン、スーチョルは海外勢と戦い再び国外を目指す。そのような構図だったと記憶していますが、両者が戦うというプランは存在していなかったのでしょうか。

「そうですね、自分ももうジョン・ムンホン代表に弟子入りして一緒に練習をするようになっていましたからね。ジョン代表が2人を戦わせることはないだろうと、スーチョルとも安堵していました。あの時は、もう同じチームのチームメイトでしたからね」

──いつ頃から練習を一緒にするようになっていましたか。

「自分がコリアンゾンビのジムを追い出されたのは、27歳の時でした。アハハハハ。ちょうど10年ぐらい前ですね」

Road FCフェザー級王者チェ・ムギョムとのチャンプ・チャンプでも勝利していたユンジュン

──タイトルを獲得したイ・ギルウ戦(2014年12月)。

そしてフェザー級王者とのスーパーファイト、チェ・ムギョム戦(2015年5月)の頃はもう一緒に練習していた?

「その通りです」

──対戦することがないなら、互いが強くなるために最高のトレーニングパートナーだったわけですね。

「親しいチームメイト。もう兄弟のようでしたね。自分自身、練習一本槍の生き方をしているつもりでしたが、スーチョルは練習一本鎗の上のレベルをいっていました」

──スーチョルの練習量はやはり尋常でなかったのでしょうか。

「あの時の自分の体力、スタミナはスーチョルから遅れを取っていました。スーチョルは練習量が半端でないので、そこは敵わなかったです」

──スーチョルも植毛をして、髪の毛が増えてきたころですね(笑)。

「ハゲているのは、男性ホルモンが溢れ出ているからという話がありますが、キム・スーチョルは確かに男性ホルモンの塊でした(笑)」

──スーチョルのことをハゲといえる人は、そうそういないかと(笑)。

「アハハハハ。血と涙を一緒に流していた仲間ですからね。自分たちはそういう間柄です」

──その後、ユンジュンはMMAを続けられなくなりましたが、アックジョンのジムを仕切るようになりました。その時点で、スーチョルとの練習はどのようになっていったのでしょうか。

「自分がRoad ジム・ロデオを任せるようになった5年前からで。その時から、今も毎週金曜日のプロ練習にスーチョルは来ています」

2016年5月、元UFCファイター=ジョージ・ループに1RTKO勝ちした試合が、ユンジュンにとって最後のMMAに。まだ27歳、これからがピークだったはず……

──ジムを任される前……2017年の終わりにスーチョルは一度、現役から退くことを表明しました。

実際に4年5カ月、MMAの試合に出場しなかったです。自らの意思でなく、病によってMMAが続けられなかったユンジュンからすると、あの引退宣言は複雑ではなかったですか。

「スーチョルをずっと見てきた自分からすると、彼は追い込み方が尋常ではなかったので『こんなことを続けていると、死んでしまう』という想いもあったんです。だからスーチョルが自ら引退を口にして、休息したことは本当に嬉しかったです。

スーチョルは自分から休むことが絶対にない。自分としては休むことに全く異論はなかったので、『しっかりと休め』という風な声を掛けていました」

──ではいずれガムバックすることは、既に分かっていた?

「もちろんです」

──その後も練習を続けてきたユンジュンですが、かつてしのぎを削っていた頃と、今のスーチョルの力量を比較してもらないでしょうか。

「自分は引退した人間です。選手でない立場なので、昔のスーチョルが懐かしいです。あの頃のスーチョルは獣のような荒いファイターでした。あのワイルドな一面が、魅力的でした。技術面では今の方がずっと上です。でも、自分としてはあの頃のスーチョルが懐かしいですね」

──成熟したという風に捉えることができるかと思います。荒々しかったスーチョルと、成熟したスーチョル。MMAファイターとして、どちらの方が強いですか。

「曖昧な答えになりますが、今のスーチョルの方が強いと断言できます」

──では奥さんと出会い、結婚して父親になったスーチョルのことを人としてどのように思っていますか。

「本当に大人になりました。もう人としては、スーチョルの方が先輩のようです。自分は子供が生まれたばかりですが、彼は子供をしっかりと育てています。家庭人として自分の先輩ですが、若かった頃も今もMMAへの情熱は一切変わりないです」

──3週間後に井上直樹選手と王座決定戦を戦うスーチョルとは、対策練習などをしているのでしょうか。

「普段と余り変わらないのですが、グラップリングに重きを置いて練習をしています。井上選手は全てにおいて優れた選手ですが、打撃やレスリング、そしてダーティーボクシングではスーチョルが圧倒できるはずです。それでも寝技では、一発で逆転される可能性は残っています。その可能性を無くすために、寝技のパーセンテージを高めた感じですね」

去年の10月、Road FCグローバルTで優勝したスーチョルを支えたユンジュン。その兄弟子にマスクを取って欲しいとリクエストすると、なぜかスーチョルが自らの口を手で覆ってしまう(笑)

──スーチョルのベルト奪取を信じて疑わない口振りですね。

「その通りです。井上選手は素晴らしいウェルラウンダーです。でも総合的に判断して、スーチョルが一枚上だと思います」

──一番のアドバンテージはどこだと思っていますか。

「スーチョルも自分と同じように自信を持っていると思いますが、クリンチをした時のダーティーボクシングがずば抜けて強いです。首相撲でヒザ、ボディアッパーで削ると、もう井上選手は思うように動けなくなるでしょう。そうさせることにスーチョルは秀でています。クリンチ、首相撲での打撃を使えば勝てます」

──世界最高峰で戦うイ・チャンホ、Road to UFCで最高峰を目指すユ・スヨンら韓国人バンタム級ファイターと比較して、スーチョルの実力はいかほどのモノだと思っていますか。

「イ・チャンホ選手も、ユ・スヨン選手も凄く成長しています。目に見えて強くなっている──良い選手だと思っています。ただ、完成度の高さではスーチョルに及ばないです。彼らに対してスーチョルは完成しています。鋼鉄のような硬いファイターになりかけています。そういう部分でもスーチョルの方が少し上だと思っています」

──ズバリ、試合の行方を占ってもらえますか。

「井上選手は凄くしつこい選手です。スーチョルが負ける可能性としては先ほども言いましたが、ラッキーパンチか一発逆転のサブミッションでしょう。この2つが現実とならなければスーチョルが判定勝ち、もしくは最終回にフィニッシュすることになるでしょう」


■RIZIN48視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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