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【WJJC2022】ルースター級=マイキーとマルファシーニが欠場。橋本知之に好機到来も道のりは平坦でなく

【写真】2013年のカイオ・テハを除くと、9大会を制してきた二強がいないムンジアルだが、それでも強豪揃い(C)SATOSHI NARITA

6月2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われる。
Text by Isamu Horiuchi

年に1度、道着着用柔術の世界一を決めるこの大会のプレビュー第1回は、橋本知之の世界初制覇への期待が高まる最軽量ルースター級の見所を紹介したい。


今回の最軽量級で特筆すべきは、10度世界王者に輝いたブルーノ・マルファシーニと、昨年末、突如として道着着用に復活して圧倒的な強さで優勝を果たしたマイキー・ムスメシの両者がともにエントリーしていないことだ。

頭抜けた実績&実力を持つ二者が抜けたことで、今まで彼らの軍門に下ってきた選手たちに初優勝への希望が大きく開けることとなった。

当然それは、2010年代後半から最軽量級のトップ戦線で戦い続けている橋本知之にも言える。今年4月のパン大会では、筋量が増したこともあり減量のストレスを避けてあえて一階級上のライトフェザー級に参戦した橋本。

初戦の強豪ペドロ・クレメンチに快勝すると準決勝で世界最強の一角、メイハン・マキニと対戦を迎えた。下から崩しきれず、開始時の上選択によるアドバンテージ差で敗れたものの、強力無比なトップゲームを誇るマキニにニアパスさえも許さず、世界トップの実力を改めて知らしめる内容だった。

今回第5シードの橋本の1回戦の相手は、第9シードの米国人ケヴィン・マーティンコフスキー。国際的には無名の選手で、先日のナッシュヴィル・オープンで黒帯としてはじめてIBJJF系の大会で優勝を果たしている。橋本としてはあまり体力を使いすぎずに確実に勝利を掴みたいところだ。

続く準々決勝は従来までは翌日に行われていたが、今大会では黒帯初日に組み込まれている。ここで橋本を待っているのは、おそらく第3シードのベベトことカルロス・アルベルトだろう。19年のヨーロピアンでは芝本幸司と対戦し、巧みな試合運びで競り勝った選手だ。さらに今年のパン大会では、優勝候補筆頭のタリソン・ソアレスと決勝で対戦すると、スクランブルにおけるソアレスの動きが場外逃避と判断されたことで得たリードを守り切り、優勝を果たしている。

幸運に恵まれたことは否めないが、上からはソアレスのズボンを巧みにコントロールしてパスのプレッシャーをかけ、下からは長い足を活かしたラッソーを駆使して渡り合っての勝利だった。

世界制覇を目指す橋本にとって、初日にまず超えなくてはならない難敵がこのアルベルトということになる。トップ、ボトム共に高い技量を持つ両者の戦いだが、アルベルトは序盤にトップを選択することもあまり厭わないだけに、いかに橋本が下から崩すかがポイントとなるのではないか。

橋本が無事にここを突破した場合、翌日の準決勝で橋本を待っているのはおそらく第2シードのホドネイ・バルボーザと第7シードのジョナス・アンドラージの勝者になることが予想される。

橋本はバルボーザには2019年のヨーロピアンの決勝で、アンドラージには昨年末の世界大会の準々決勝で敗れている。が、バルボーザ戦は今後を見据えてあえて上攻めを選択して戦った末の僅差の敗戦であり、アンドラージ戦は終盤まで橋本が試合をリードし勝利が見えていたにもかかわらず、終了45秒前にまさかの膠着ペナルティを受け逆転されるという不運な負け方だった。

両試合とも地力で橋本が劣っていたようには見えず、今回どちらが上がってきても、雪辱を果たす良い機会と言えそうだ。

もう一方のブロックを勝ち上がって決勝に進出するのは、第1シードのタリソン・ソアレスか、あるいは第4シードにして今年のブラジレイロを制した新鋭のホドリゴ・オリヴェイラになるか。あるいは第6シードのクレベル・ソウザという目もあるだろう。

橋本は20年のヨーロピアンの準決勝にてソウザと対戦し、競り勝って前年の雪辱を果たした。さらにソアレスとの初対決となった決勝戦では、三角絞めを完全にロックオンしで場外逃避を誘い、一本勝ちに等しい形で優勝を果たしている。決勝で当たる3人は全て世界トップクラスの超難敵だが、橋本の勝機は決して小さいものではない。

今回、順調に減量が進んでおり調子も良いという橋本。技術面、肉体面、精神面とどれも充実した状態で臨む今回の世界大会は、日本人男子黒帯初の世界制覇という偉業に向け、これまでで最大のチャンスとなる。

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【WJJC2022】今や神階級=最大激戦区と化したルースター級。橋本知之と6人の強敵!!

【写真】とんでもない神階級となったルースター級で、この3者とも本命とはならない (C)MMAPLANET

8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われる。
Text by Isamu Horiuchi

通常は毎年初夏に開催されるムンジアルだが、昨年はコロナ禍により中止。今年度もこの時期まで延期された末の開幕となった。実に2年半ぶりに実現する、道着着用柔術の世界の頂点を争う大舞台。その見所を、まずは最軽量ルースター級から紹介したい。

日本のグラップリング界にとって最大の注目は、2017年と2018年に2年連続で世界大会3位入賞を果たしている橋本知之の出場だ。近年、世界一に最も近い日本人の座にあり続けている橋本は世界の柔術が一時停止陥る直前──昨年1月のヨーロピアン大会に参戦時に、これまで以上に徹底的にボトムポジションを狙い、勝利に拘った戦いを展開した。


準決勝で前年の世界柔術で敗れたクレベル・ソウザに競り勝つと、決勝では世界10連覇のスーパー王者ブルーノ・マルファシーニを下して勝ち上がってきた超新星タリソン・ソアレスが彼を待ち受けていた。何度もソアレスの担ぎパスに合わせて三角絞めを完全にロックオンした橋本は、タップするくらいならと場外逃避を選んだソアレスから、一本勝ちに等しい値千金の勝利を収めてみせた。

こうして、昨年早々パン大会や世界大会の優勝候補に躍り出た橋本だが、前述したようにコロナ禍によってこれらの大会は中止となってしまう。

その間はQUINTETやFinishといった国内のノーギ大会に参戦。2階級上の森戸新士からはレフェリー判定勝ちを収め、今成正和は極めきれなかったものの終始圧倒してのドロー、そしてMMAファイターの和田竜光からはヒールで一本勝ちと、階級が上の選手を相手に確かすぎる力を見せつけている。

とはいえ、この実力固辞も他の大半の日本の格闘家と同様に橋本もこの2年間、IBJJFの国際大会のような競り合う試合からは遠ざかっていることになる。

先月下旬からから米国入りし、師カイオ・テハの下で試合に向けてハードな練習を積んできている橋本。現地から本人がアップした動画においては、強豪ひしめくこの最高峰の舞台にいて自分の実力が一番とは思わないと言いつつも、稀代の戦術家テハから各強豪選手用の対策を授かり、誰に対しても勝機はあると見ているというメッセージを発信している。

テハというスーパーセコンドの支援を受け、約2年ぶりに、世界の超強豪たちを相手にギリギリの凌ぎ合いを臨む橋本の戦いに刮目したい。

だがその橋本の前には、恐るべき世界の超強豪たちが立ちはだかっている。第一に名前を挙げるべきは、前人未到の10度世界制覇を達成したブルーノ・マルファシーニだろう。橋本とは2017年、2018年の世界大会で対戦し、ガードを取らせてなお超人的な反応速度と、複数の動きを一瞬でこなす驚愕の身体操作でそれを突破、一本勝ちを収めている。

2019年の世界大会準決勝ではマイキー・ムスメシに、2020年のヨーロピアン準決勝ではタリソン・ソアレスに競り負けてしまったマルファシーニ。長年築き上げた不敗神話こそ崩れてしまったが、どちらの試合も、終盤に相手のなりふり構わない膠着戦法に捕まって逃げ切られた形の敗戦であり、柔術の地力で相手に引けを取った姿はまだ見せていない。

一時はMMA転向を試み、柔術からの引退を発表していた35歳の元王者が、今なお全盛期に匹敵する身体能力を保持しているかどうか、世界が注目するところだろう。

もう一人の大注目選手は、上述の通り19年の世界大会のこの階級にてマルファシーニを攻略し、17-18年のライトフェザー級と合わせて3年連続優勝&2階級制覇を成し遂げたマイキー・ムスメシだ。

アドバンテージ一つを奪って相手を出し抜くポイントゲームが展開されがちな軽量級において、きわめてタイトなトップゲームとガードからの極めという、柔術ファンダメンタルの強さにおいて抜きんでた強さを誇る。

道着着用の柔術で頂点を極めたムスメシは、今年に入って最後の目標であるADCC世界大会制覇に向けてノーギに本格転向。瞬く間に凄まじい精度の足関節技を習得して、ジュニー・オカシオやジオ・マルティネスといったノーギのトップ選手たちを圧倒してきた。

普段は柔らかい物腰の持ち主でありながら、マルティネス戦後には突然怒りを爆発させ、周囲を呆然とさせるほどの過剰さで相手を罵ってみせたそのギャップのインパクトもあいまって、一躍グラップリングシーンの最注目選手となった。

そうして優勝本命と思われた9月のWNOチャンピオンシップでは、ガブリエル・ソウザにパスを許しまさかの一本負けしたムスメシ。が、後にコロナに感染していたことが判明。翌月の復帰戦では、自らのワキの下ではなく首の窪みを使って相手を極めるオリジナル足関節技「マイキーロック」を炸裂させて鮮烈に復活、あっさりとシーンの主役の座を取り戻し、WNOバンタム級王座を奪取している。

ここ半年ほどムスメシはノーギの練習に専念してというが、一瞬のミスが命取りになるこの世界最高峰の舞台において、どこまで道着着用への対応力が戻っているのか。

また、もともとは橋本同様にカイオ・テハ門下だったムスメシだが、今回はデイジー・フレッシュことペディゴ・サブミッション・ファイティング所属としての出場となる。元チームメイト対決が実現した際、元弟子のことを誰よりもよく知るテハが、どのような策を橋本に授けるかも見ものとなる。

そのほか、昨年のヨーロピアン準決勝で打倒マルファシーニに成功したタリソン・ソアレスや、そのチームメイトにして、今年のアブダビ・ワールドプロを制したジョナス・アンドレイジも優勝の有力候補だ。

さらに今年のパン大会決勝でイアゴ・ガマを倒して初優勝を遂げたシセロ・リヴィオ・ヒベイロ、2018、2019年と2年連続世界柔術準優勝の座に輝き、19年のヨーロピアン決勝にて橋本に競り勝って制したホドネイ・バルボーザも参戦するというルースター級は、いつの間にかムンジアルでも最大激戦区となった感もある。

上記の面々が順当に勝ち上がると想定すると、橋本は初日を突破して日曜日を迎えると準々決勝でジョナス・アンドレイジ、準決勝でムスメシとのマッチアップが待っている。他方、別の山の2回戦でヒベイロ✖ホドネイが当たり、マルファシーニ✖タリソンの再戦が実現するのが濃厚だ。

これはもう7人の総当たり戦が見たくなる──本命不在、超強豪がひしめく凄まじい顔ぶれによる世界一決定戦が、いよいよ幕を開ける──。

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