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Bu et Sports de combat Interview アレハンドロ・フローレス ハファエル・アウベス ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。アウベス✖フローレス「上、下、外、中」

【写真】ギロチンで敗れたフローレスだが、多角度な打撃は見るべきものがあったという。次戦に注目だ(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──DWTNCS S04 Ep04におけるハファエル・アウベス✖アレハンドロ・フローレスとは?!


打撃だけの競技だと当たり前に発展してくることが、組み技のあるMMAでは発展させることは難しい

──続いてフィジカル・モンスターのハファエル・アウベスとメキシカン・ストライカーのアレハンドロ・フローレスの試合についてお願いします。

「まず開始早々の展開で、アウベスという選手の殺気は凄まじいモノがありました。対してフローレスはひょろっとして、何となく間抜けに見えて。何だコイツ、チャップリンみたいだなって」

──いや、それはただ髭がそういう風に見えるだけじゃないですか(笑)。

「アハハハ。それぐらいアウベスの質量が凄かったんです。アウベスはロンダートンとか試合前からやって、試合でも跳びながら左ミドルを蹴っていましたね。

レは効いたと思いますが、試合の流れでいうと開始してからアッという間に、フローレスが質量をどっこいに持っていくんです。

アウベスは奇抜なことをやりますが、まぁ前に出られない。どっちが良いかというと、断然にフローレスが良かったです」

──なるほど、そういう見方もできるのですね。

「えっ? なぜですか、そう見えなかったですか。そこは武術的な見方はなくても」

──私にはフローレスは圧力に押されて、妙にバタついていたように見えました。

「いや、彼はドッタンバッタン動いて、多角度で攻撃しているんですよ。よく、見てくださいよ!!!!!! 本当にああいう動きを選手にして欲しいと思いました。イチ・ニでなく、イチで上、下、外、中とコンビネーションを見せています。対して、全くアウベスは手が出ていないですから」

──ハイ、アウベスは完全に待ちの状態で一発振りまわして勢いを見せつける。そこにフローレスも圧されて、有効な手立てはなかったように思っていました。

「アウベスは一発だけで、コンビネーションはまるで使えていなかったです。単発で何も繋がらない。あの戦いを見て、待ってないでテイクダウンにいくなりしろよっていう見方にはならないのでしょうか。だって全然、入っていかないんですよ」

──そこもMMAなので、フローレスは逆に組んで疲れさせるような動きが必要だったと思っています。そういうことができる選手が、UFCファイターだと。

「スタミナがないのは──前回、話したマイク・ブリーデンも同じで、連打を使わない。それは連打する稽古をしていないからじゃないですかね。稽古をすれば、それだけスタミナはつくはずです。

対してフローレスは最初こそ何がしたいんだって思って見ていたのですが、よく見ると距離を取りながら、アウトボクシングでパンチも蹴りも良い選手でした」

──有効打はありましたか。

「当たる、当たらないというのは、当たる時は当たります。でも、当たらないからって攻撃を使わなくなるというのは試合ではありえないですよね。コンビネーションを駆使して戦っていれば、どれか当たる。そういう考えで試合に挑む方が良いです」

──なるほど一撃必殺でも、百発百中でなくても。

「あのリーチがあって、下がりながら色々とできる選手は入る必要がないですからね。ただし、ダナ・ホワイトという興行主の前でどういう試合をするのかは個人の選択なのでしょうね。他の団体でもベルトを獲るために勝負に徹しているのを見ますが、コンテンダーシリーズになると──磁場が違ってきてしまうという風にも見えます。

それにフローレスだって隙はあります。でも、アウベスはそこを衝かない。ただ、単発でパンチを振るい、蹴っていくだけで。打ってきたモノに対し、どういう風に処理するのか。例えばローにカウンターを合わせるとか。パンチにテンカオを合わせるとか。そういう動きができる人のことを打撃ができる人だと私は捉えています。

攻撃だけできても、打撃ができるわけではないです。打ち終わりや蹴り終わりに、攻撃を入れる。フローレスは良く動いていましたが、蹴り終わりなどには隙がありました。蹴って止まる、でもアウベスはそこでも前にいかない。

いやアウベスの開始直後の重心の低さと、あの攻撃力は人を殺めかねない勢いがありましたよ。それがどんどん浮いてきて、自分がもっているバネに頼った攻撃だけになっていました。俺はこんなことができるというお披露目会のようで、倒すビジョンは見えなかったです。でも、それがコンテンダーシリーズという場なのかもしれないですね」

──対して敗れたフローレスは武術的な見方だと、質量が上で間も彼のモノだったということでしょうか。

「質量も間もフローレスでした。アウベスは居着いていて。止まっていて何もしない。居着かされているから、質量は当然のようにフローレスが上でアウベスが下です。フローレスのコンビネーションは、MMAという距離のなかでの連打です。中段で外を蹴っておいて、中はストレートを打つ。多角度で来ています。

打撃戦はレベルが上がると、ああいう多角度の攻撃が必要になってきます。左フックから右ローという対角線コンビネーション、右のローから左の前蹴りを入れると外から中、中段の前蹴りから上段の前蹴りは、中から上という具合で。

この打撃だけの競技だと当たり前に発展してくることが、組み技のあるMMAでは発展させることは難しいです。それをフローレスはMMAのなかでやっていた。ギロチンで負けてしまいましたが、フローレスは次も見たい選手ですね」

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DWTNCS S04 Ep04 Report UFC コリン・ハックボディ ジェイミー・ピケット ジェフリー・モリーナ ハファエル・アウベス ブログ

【DWTNCS S04 Ep04】3度目の正直、32歳のピケットがKO勝ちでUFC昇格。今週も4人が契約へ

<ミドル級/5分3R>
ジェイミー・ピケット(米国)
Def.2R0分33秒by TKO
ジョノヴェン・パティ(米国)

サウスポー同士の戦いは、まずピケットが右ジャブを伸ばす。右ローから左ジャブを繰り出すピケットに対して、パティも左ローからフックを振るって前に出る。ピケットはジャブを当て、左に回る。ローとジャブで試合を組み立てるピケットは、ケージを背負うと一気にダブルレッグでテイクダウンを決める。

足首を抑えてパスに成功したピケットは、パティの左足を抱えて抑える。起き上ってケージにピケットを詰めたパティが持ち上げてスラムへ。ギロチンをセットアップしたピケットは力を使って絞めるが、頭を抜かれる。両者スタンドに戻り、打撃戦に。ピケットの打撃はかなり粗くなっており、疲れが見られる。パティはボディフックから前に出てヒザ蹴り、組んでケージに押し込んだところで初回が終わった。

2R、左ジャブから左右のパンチをまとめたピケット。パティがケージまで下がってフックを振るうが、ピケットのパンチの回転はさらに上がる。左右のフック、アッパーを打ちこんだピケット。パティはマウスピースを吐き出しながら、前に出るが左を纏めて受け腰が崩れ落ち、勝負は決した。

ピケットは普段の生活リズムのハードさを振りかえり、母親へ感謝の言葉を述べると「2時間ドライブして、この試合に備えた。このチャンスを逃したくなかった。娘に良い姿を見せたかった。フィニッシュはただ力を使った、前進、前進、また前進だった。ミスター・ホワイト、僕はどんな時でもオファーがあれば戦う」と話した。コンテンダーシリーズ2020年第4週、ダナ・ホワイトの判断は──。

ダナ・ホワイト
「コリン、マウントから速くて美しいフィニッシュを見せた。凄く印象深い勝利だ。こっちに来て、契約しよう。アンソニー・ロメロも非常に楽しみなカナダ人選手だ。8勝0敗、ブリーデンもタフな激しい試合だった。サウスポーのブリーデンを戦えなくした。素晴らしい戦いだった。まだ23歳、いつの日かUFCで見てみたい。でも、今夜じゃない。

モリーナ──彼も23歳だ。全てのラウンドでアグレッシブだった。気持ちの試合でも負けなかった。あの気持ちの強さは、今からでもUFCで戦える。アウベスは強豪にリスクを背負って戦って、こっちに来てくれ。ピケット、22発のパンチでフィニッシュした。3度目のコンテンダーシリーズ、こっちに来いよ。ブラザー!! 契約を交わそう。

シルバも素晴らしい試合をした。2Rで終わっていたのに、3Rは取った。マリーナがあの試合ができたのも、シルバがいたからだ。シルバはまたコンテンダーシリーズで戦ってもらう」

今週の契約は4人、契約を結べなかったマアンソニー・ロメロだが、ポテンシャルの高さは間違いなく──コンテンダーシリーズか、LFAでまたその雄姿を見たいものだ。


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DWTNCS S04 Ep04 Report UFC アレハンドロ・フローレス ハファエル・アウベス ブログ

【DWTNCS S04 Ep04】注目対決はアウベスが、フローレスを完封。ギロチンでタップ奪う

<ライト級/5分3R>
ハファエル・アウベス(ブラジル)
Def.2R2分55秒by ギロチンチョーク
アレハンドロ・フローレス(メキシコ)

入場と同時にロンダートンを見せ、1度目は失敗しもう一度跳び直したアウベス。どう考えもエネルギーの無駄使いに見えたが、試合が始まるとフローレスが左インサイド―を蹴る。左に回るフローレスに左ジャブを伸ばしたアウベスは、飛び込んで鋭い右フックを振るう。さらに左ハイを見せたアルベスに対し、フローレスもローを交えてワンツーを繰り出す。

アウベスはスピニングバックキックを放ち、左ミドルへ。ブロックしたフローレスは遠いレンジでジャブ、ここからステップジャブに転じてアウベスの顔に拳を当てる。左右のフックで前に出るアウベスは、とにかく圧力が高い。エルボーを空振りしたフローレス、姿勢を乱すがすぐに立て直しジャブを伸ばす。アウベスは左ミドルを蹴り──残り1分、組みついたフローレスがケージにアウベスを押しこむが、自らリリースする。アウベスの攻撃の精度は高くないが、左右に回るフローレスはバタつきが感じられた。

2R、飛び込んで左ジャブを当てたフローレスがローから関節蹴り、左リードフックを繰り出す。アウベスの手数は少ないが、ジリジリとケージにフローレスを追い込んでいく。アッパー、ボディを繰り出したフローレスに対し、アウベスは前蹴りから右ローを蹴っていく。さらに左ジャブを当てたアウベスが、スイッチして左ミドルを入れる。

フローレスはアウベスの左フックにダブルレッグを合わせ。背中をつけたアウベスがギロチンに捕えると、フローレスは足を抜く動作の途中で固まりタップした。