カテゴリー
ABEMA ADCC2022 MMA MMAPLANET o アシュリー・ウィリアムス ジオゴ・ヘイス リチャード・アラルコン 今成正和

【ADCC2022】66キロ級1回戦。ベイビーシャークはウェールズの実力者アシュリー・ウィリアムスに快勝

【写真】1回戦、優勝するまでのスタミナ配分をしているかのようにも見えたベイビーシャークだった(C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第7 回──今回から66キロ級の戦い、まずはジオゴ・ヘイスの1回戦の模様をお伝えしたい。


<66キロ級1回戦/10分1R>
ジオゴ・ヘイス(ブラジル)
Def. 2-0
アシュリー・ウィリアムス(英国)

第1回南米予選を制して優勝候補の一人に挙げられるベイビーシャークことジオゴ・ヘイスの初戦の相手は、ウェールズ出身のアシュリー・ウィリアムス。英国のプログラップリングイベントPolarisでは、今成正和やイサン・クレリンステン、リチャード・アラルコン、パウロ・ミヤオらに勝利した実績を持つ技巧派だ。

試合開始後、スタンドでお互い積極的に仕掛け合う両者。ウィリアムスがアームドラッグを試みると、ジオゴも素早く距離を詰めてウィリアムスの右足を抱えてドライブするが、ここは場外ブレイクとなった。

2分過ぎ、ウィリアムスは左足にシングルを仕掛けるが、ジオゴが反応。次の瞬間ウィリアムスは倒れ込みながら右足を絡めてヒール狙い。が、ジオゴは落ち着いてその足を押し下げ、引き抜いてみせた。上になったジオゴは素早い動きでトレアナパスやニースライス、またルオトロ兄弟のように足を踏みつけてのパスを狙うが、ウィリアムスは迅速に対処する。

ならばとジオゴは座ってウィリアムスの右足をヒザで固定し低くプレッシャーをかけ、その後再び立ってレッグドラッグ狙いを見せるが、ウィリアムスはここも対応。ジオゴと違って戦前優勝候補に挙げられていなかったウィリアムスだが、ジオゴの多彩かつスピーディーなパス攻撃に的確に対処するそのガードワークは一級品だ。

そのまま時間が過ぎ、加点開始5秒前のところでジオゴが座ってダブルガードに。そこからウィリアムスの左足を掴んだジオゴは、すばやく対角線に引き出すと、方向を変えて自らの右ワキに抱えてアウトサイドヒールを仕掛ける。

極まらないと見るやジオゴが強烈なストレートフットロックへ。エスティマロックの形で強烈に足首を曲げられているウィリアムスだが、冷静な表情は変わらない。さらにジオゴはトーホールドも狙うが、ここもウィリアムスが素早く回転して凌いだ。

残り2分、ここまでディフェンスの場面の多いウィリアムスがシットアップして上を選択。左でニースライスパスを狙う。が、それをニーシールドで防いだジオゴはハーフから後転するような形を作って下から煽ると、ウィリアムスの股をくぐってから、左足を抱えて勢い良く起き上がった。

テイクダウンデフェンスの姿勢を余儀なくされたウィリアムスは、自ら引き込みを選択する。3秒間押さえ込まれる前に体勢を変えることができればノーポイントなので、上半身を起こして離れようとするウィリアムス。しかしジオゴはガードの中から低くタイトに上半身を密着させ、ボディロックのグリップを完成。ウィリアムスの上半身こそ起きているものの、その状態を固定したジオゴが2点を獲得した。

痛恨の失点となったウイリアムスは、残り40秒のところでスイッチを仕掛けてスクランブルで離れることに成功させてテイクダウンを仕掛けるが、ジオゴは冷静に腰を引いて対処した。

最後まで挽回を試みて前に出るウィリアムスだが、巧みにいなし続けたジオゴがすくい投げで切り返したところで試合終了。優勝候補ジオゴ・ヘイスが初戦を突破した。

2-0と僅差ではあったが、スタンドレスリングでもダブルガードからの足関節の攻防でも主導権を握っていたのはジオゴの方。ウィリアムスが上を選択するとすかさず体勢を入れ替え、ポイント獲得までポジションを固めてみせた技量&ゲームメイクの上手さも光った。そして最初から最後までハイペースで戦い続け、まったく息を乱していないそのスタミナも出色だ。

派手さはないが、ルールを熟知し技術的にも全ての局面で穴がなく、なおかつ抜群のコンディショニング誇るジエゴ・ヘイスが、順当かつ危なげなく2回戦進出を決めた。

The post 【ADCC2022】66キロ級1回戦。ベイビーシャークはウェールズの実力者アシュリー・ウィリアムスに快勝 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ADCC2022 JT・トレス MMA MMAPLANET o カイナン・デュアルチ ケイド・ルオトロ ゴードン・ライアン ジオゴ・ヘイス ジャンカルロ・ボドニ ハイサム・リダ ホベルト・アブレウ ユーリ・シモエス 岩本健汰

【ADCC2022】66キロはジオゴ・ヘイス, 77キロはケイド。88キロがボドニ。KINGはゴードン・ライアン!!

【写真】タイが初日に姿を消すというなか、ケイドがADCC最年少世界王者に (C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて2022 ADCC World Championshipが開催された。

イベントの規模、試合レベル共に四半世紀を迎えようかというADCC世界大会の歴史において、また他のグラップリング・イベントと比較しても、過去最高のグラップリング・イベントとなった今大会。

そんななか日本でも特に注目された66キロ級ではジオゴ・ヘイスが優勝。77キロ級ではケイド・ルオトロがミカ・ガルバォンを足関節で下し頂点に。

88キロはノーマークだったといっても良いジャンカルロ・ボドニが、これが新時代のグラップリングだという戦い方を続けた。

結果、決勝でルーカス・バルボーサをRNCで仕留め優勝している。

99キロ級はカイナン・デュアルチ、99キロ超級はゴードン・ライアンがゴールドを獲得、ゴードンはスーパーファイトも制し文字通りグラップリング界のKINGに君臨。無差別級では古豪ユーリ・シモエスが復活を遂げる勝利を挙げている。

日本から出場した岩本健汰は初戦でJT・トレスと対戦し、非ポイントの時間帯から積極的に攻めるという戦い方を選択する。

岩本のテイクダウン狙いに序盤の5分間は倒れていたJTは5分以降と延長戦では、切ってバックを伺うという展開で大善戦の岩本をレフ判定でくだした。

ハイサム・リダは初戦でホベルト・アブレウを腕十字で破るジャイアントキリングを達成するも2回戦敗退。それでも多くの新しい力の台頭の象徴──その一員であることを大いに印象づけている。

※ADCCの詳細レポートは後日、掲載となります。


The post 【ADCC2022】66キロはジオゴ・ヘイス, 77キロはケイド。88キロがボドニ。KINGはゴードン・ライアン!! first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ADCC2022 MMA MMAPLANET o ONE WNO Championships   ガブリエル・ソウザ コナー・マクレガー ジオゴ・ヘイス ジオ・マルチネス ファブリシオ・アンドレイ マイキー・ムスメシ メイソン・ファウラー 堀内勇 高橋SUBMISSION雄己

【ADCC2022】ADCCを深掘り─01─/高橋Sub&堀内勇。66キロ級はレス&柔術力でファブシリオ&ジオゴ

【写真】22歳のファブシリオ・アンドレイと比較すると20歳のベイビーシャークの童顔ぶりが凄まじい(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第1弾は天才2人を中心に66キロ級について語ってもらった。


――昨年のWNO Championshipsに続き、1年振りに高橋選手と堀内さんに、グラップリング大会の見所を語ってもらうことになりました。まずはADCC世界大会、、まずは66キロ級からお願いします。

堀内 自分は予習でFight&Lifeの高橋選手のADCC2022ガイドを読ませていただいて、さすがの見立てというか。ファブリシオ・アンドレイのことを分かっていなかったのですが、記事を読んでチェックしてみたら『これはレスリングが強いわ』と(笑)。ADCCのルールを考えた時に、ファブリシオが本命というのは反論のしようがないと思いました。

だからこそ、僕はファブシリオのチームメイトでもあるベイビーシャークことと、ジオゴ・ヘイスに注目したいと思います。

──体のバネが異様にありますよね。

堀内 そこを頭に入れてMMAPLANETの読者の方には、彼の動画でのインタビューを見て欲しいのですが、本当に童顔なんです。中学生ぐらいにしか見えなくて、声変わりもしていない(笑)。ミカ・ガルバォンも含め、ファブシリオとジオゴ・ヘイスは同門なんですが、ミカが「米国のファミレスで食事をした時に、ジオゴ・ヘイスにキッズ・メニューが渡された」と話していて。

高橋 アハハハハハ。

堀内 今回の66キロ級はマイキーがいなくなったことで、強い選手はブラジルの若い選手に集約されたような状態ですけど、ジオゴ・ヘイスの可愛らしいキャラを認知していただければと。試合に関していうと南米予選の1回目の方を視ましたが、準決勝の同門対決でファブリシオに足関節で勝っています。でも、アレはいつも取ったり、取られたりしている延長戦上にあるものかと思いました。

それより決勝のジエゴ・パト戦、世界最高のガードプレイヤーのパトを相手に後半の加点時間帯のレスリング合戦になると、体力とレスリングの圧力でベイビーシャークの方が上回ってきて。反応が悪くなったパトからバックを奪いかけて優勢勝ちしました。

あの試合を見て、パトは再戦が実現しても正直勝てないと思いました。コレをやられると防ぎようがない。ADCCに必要なレスリングの消耗戦での強さをこの子は持っていますね。ADCCのレスリングってテイクダウンをされても、亀になって3秒過ぎればテイクダウンが無効になります。だからなかなかテイクダウンポイントが入らず、永遠にレスリングが続きます。

そういう風な展開になると、ファブシリオとジオゴがもう1度戦うとファブリシオが勝つかなというのは、正直なところですけど。でも、この強豪揃いのなかで決勝を勝ち上がってくることを考えると、ひょっとしてジオゴの方が強いかも。そういう見立てをしました。

高橋 トーナメント表が出ていないなかで、ワンツートップはファブリシオとジオゴだと思います。

──ファブリシオも体のバネが尋常ではないですね。

高橋 ジオゴがファブシリオからヒールで勝ったものの、試合で極められたモノって凄く残るから、2度同じモノは食らわないだろうというところで──僕はファブシリオかと。ポラリスで66キロ級のファブシリオが、88キロ級のメイソン・ファウラーをレスリングで吹っ飛ばしているのを見て、その強さは絶対だという想いを持っています。

いずれにせよ、ファブリシオとジオゴが一番の注目株です。全然、関係ないんですけどポラリスの時、ジオゴが隣の部屋でした(笑)。部屋を出るときに十字を切っていて、敬虔なクリスチャンなんだと。

──ファブシリオ・アンドレイのレスリング、裸の柔道のような技もありますよね。小内刈りからシングルレッグとか、大腰で投げた試合を見ました。あの背中からドンと落とせる柔道技はテイクダウンポイントを取り辛いADCCでも有効でないかと思いました。

高橋 立ち技のポイントになると、シングルレッグで引き倒したり、ダブルレッグでガチッと入るよりも柔道的な投げのほうが抑え込みっぽくなるので、ポイントになりやすい。そうなるとさらにファブリシオの線が濃くなりますね。

──この2人以外に名前を挙げるなら、道着世界一のパトと言いたいのですが、南米予選の決勝後にムンジアルの準決勝でジオゴと戦った試合を見て、道着を有効利用して最後は50/50でパトが勝ちました。柔術だから何も間違っていないです。と同時に、あの勝ち方を見て、ADCCでパトがジオゴに勝つことはないと感じました。

高橋 そうですね。パトはガブリエル・ソウザとやった試合が印象的で。切って、倒れないところを見せていますが、それでもゴリゴリに立ち技が強いファブリシオやジオゴに勝つ手札はないと感じました。消耗戦のレスリングとなると、攻め手の少なさが原因となってギリギリのところで勝てないと思います。

堀内 下手をするとレスリングが強い選手と当たって、ベスト4前に敗退ということもあるかと。

──道着柔術の世界のトップで、そっちが本職という気持ちが少しでもあると、諦めて引き込んで負けという展開も有り得るかと。

堀内 南米予選の決勝で、パトがボロボロに疲れた状態でバックを許すと、ベイビーシャークが離れたんです。『最大のチャンスで離れた。何をやっているんだ』という意見があるなかで、ジオゴは『あの場面ではパトに背中をつけてガードをプレーさせたくなかった』と振り返っていました。先ほど言いましたが、ADCCルールだと亀でヒザをつき3秒が過ぎるとテイクダウンにならない。

──なるほど、スクランブルゲームでなく引き込み選択できるということですね。

堀内 ハイ。3秒間、パトが亀で耐えると彼は減点無しでガードを選択できるようになります。でも、ジオゴはそれをさせなかった。そこにはミカのお父さん、メルキ・ガルバォンの指示もあったかと思います。あんな風に最後の手段までそうやって周到に封じ込まれると、下派の選手は厳しいですね。

高橋 パトはソウザとの試合でも、なんだかんだと減点なしで下を取りました。下になるとガンガン攻めて、レフェリー判定で勝ちました。ジオゴ・ヘイスのようなトップゲームの強い選手が、パトにガードは取らせたくないというのは逆に幻想が膨らみますね。

──66キロの見所を話してもらううえで、最初に堀内さんが言われたマイキー・ムスメシの不出場。これはもう本音をいえば「ONE、要らんことするなよ」と。

高橋 アハハハハ。

堀内 盲腸の手術をするから欠場といっても、その翌週にONEでサブミッション・グラップリングの世界王座決定戦に出場するわけですよね……。

高橋 出場して欲しかったですけど、正直なところルール的に勝てないと僕は思っています。

──マイキーにすら、極め幻想は持てないですか。

高橋 それはWNOでソウザが打ち破った感はあるじゃないですか。マイキーのレスリングって、ジオ・マルチネスにぶん投げられているんで(笑)。

堀内 ただマイキーがジョー・ローガンのポッドキャストに出て『僕は3回、コロナで陽性になった(笑)』と言っていたんですよ。きっとソウザ戦の前はコロナだったんじゃないかなって(笑)。

高橋 病み上がりでガードのリテンションを仕切るスタミナがなくて、削り切られたと。

──いずれにせよ、マイキーは今回の欠場といい、ONEで5万ドルのボーナスで泣いている姿といい、ちょっとガッカリ感があります。5万ドルって、いうたら普通に働いていたら1年間で手にデキる額で。それで柔術世界一が泣くなよって。

高橋 マイキーともあろうお方が(笑)。コナー・マクレガーが飲み食いして一晩で使っちゃいそうな額ですからね。業界IQでいえば同じところにいる人間が、そこで泣くなと(笑)。

<この項、続く>

The post 【ADCC2022】ADCCを深掘り─01─/高橋Sub&堀内勇。66キロ級はレス&柔術力でファブシリオ&ジオゴ first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o WJJC2022   イアゴ・ジョルジ ジオゴ・ヘイス ジュニー・オカシオ ブラジリアン柔術 メイハン・マキニ 嶋田裕太

【WJJC2022】メイハン・マキニ初制覇のライトフェザー級で、負傷を抱えた嶋田裕太はイアゴに一本負け

【写真】トーナメントウィークに負傷。今回の2試合で、今後に向けて何を得られたのかが大切だ(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われた、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text Isamu Horiuchi

レビュー第2回は、NYのマルセロ・ガウッシア道場で長期修行を行なっている嶋田裕太の戦いぶりを中心にライトフェザー級の模様をレポートしたい。


<ライトフェザー級1回戦/10分1R>
嶋田裕太(日本)
4-4 アドバンテージ4-2
ジュニー・オカシオ(米国)

まずは引き込み合う両者。お互い相手を掴まずに座ってしまい2度ペナルティを受けた後、嶋田は前に出て一瞬座ってから上を選択することで、アドバンテージを獲得した。

オカシオは嶋田の右足首に絡むが、嶋田は崩れない。ならばとクローズドガードを作ったオカシオは横回転で崩しにかかる。ここも嶋田はスプロールしてバランスをキープする。ガードを閉じているオカシオを持ち上げた嶋田は、左足を押し下げてから胸を合わせにかかるが、オカシオが対処してクローズドに戻る。

その後オカシオはガードを開いて足狙いも見せるが、ここも嶋田は回転して対処してみせた。ラッソーを作ったオカシオは、嶋田の右足を内側から抱えて回転すると、さらにベリンボロに移行を狙う。腰を切って抑え込もうとする嶋田だが、ここでオカシオはその勢いを使って回転して上に。

距離を取って立とうとする嶋田だが、オカシオはその背中を取りながら上になり、2点先制した。そのままサイドで嶋田を抑えたオカシオは、ニーオンザベリーさらに2点追加。嶋田は残り6分ほどのところで4点差をつけられてしまう。

嶋田はエビの動きでオカシオのヒザから逃れるが、ここで嶋田が苦しそうな様子をしたことで、レフェリーが一旦試合を中断。ワキ腹を抑えている嶋田だが、少々のやりとりの後で試合は再開された。

サイドに付いているオカシオは左腕で枕を取ると、嶋田の襟を引きつける。嶋田が足を戻そうとしたところで上からダイブしてのベリンボロ狙いへ。嶋田がマットに背中を付けて守ると、その左足にストレートフットロックを仕掛けてゆく。

それを防いだ嶋田が立とうとすると、オカシオはすかさず背中に回り、嶋田の襟を右で取ってコントロールする。嶋田は動いて体をずらそうとするが、襟を掴んでいるオカシオは巧みに背中に張り続け、キープしていった。

残り4分。それでも動き続けた嶋田は、なんとか距離を作ってクローズに戻すことに成功すうr。ここでオカシオのラペルをその右腕に巻きつけた嶋田は、下から腕十字一閃。うつ伏せになりながら極めにゆき、腕を伸ばし切ったかに見えたが、オカシオは回転して嶋田の体を跨いで脱出。

が、嶋田はその勢いで上になることに成功し、アドバンテージを獲得するとともに2点を返してみせた。さらにサイドを狙う嶋田だが、オカシオはスクランブルして上の体勢に。この動きはスイープではなくリバーサルとみなされ、得点は与えられなかった。

残り約3分で2点リードを許している嶋田。が、アドバンテージでは2つリードしている。シッティングからオカシオの右足に道着を通して掴んだ嶋田は、殿下の宝刀シングルレッグへ。距離を取ってがぶるオカシオだが、グリップをキープしている嶋田は再び勢いをつけてスクランブルから立ち上がる。そのままシングルにつなげる。粘るオカシオをついに倒し切って2点獲得。残り2分半にて逆転に成功した。

一度ガードを閉じたオカシオは、ラッソーに移行する。嶋田はワキを締めて守る。オカシオは回転して煽るが、嶋田はヒジをうまく使って腰を引いて防御する。その後も嶋田は終了まで上をキープし切り、アドバンテージ2つのリードを守り抜いた。

伏兵オカシオに先制点を許し、さらに中断を余儀なくされる状況に追い込まれた嶋田だが、執念の逆転勝利。勝負所で磨き抜いたシッティングからのレッスルアップを決め、最後はミヤオやソドレといった世界屈指のオープンガードプレイヤー達と凌ぎを削ってきた経験を活かして守り切った。

こうして苦境を克服した嶋田は、初日のヤマであるイアゴ・ジョルジ戦に駒を進めた。

<ライトフェザー級2回戦/10分1R>
イアゴ・ジョルジ(ブラジル)
Def.5分43秒 by 襟絞め
嶋田裕太(日本)

嶋田が前に出ると、ジョルジはすぐに引き込む。続いて左でラッソーを作ったジョルジは、そのグリップで強烈に引きつけて嶋田を左に崩してのスイープ。見事に2点を先制してみせた。

上を取ったジョルジは、左右に動いてのパスの猛攻へ。サイドに付けかけられた嶋田は、アドバンテージを一つ献上するもなんとか左足に絡んでみせた。

が、ジョルジはすぐにその左足でニースライスへ。ここも戻す嶋田だが、またしてもアドバンテージを取られてしまう。さらにジョルジは侵攻を続け、ついにヒザを抜いてパスに成功。開始僅か1分半で、点差を5-0と広げた。

サイドについたジョルジは、あえて左足を動かして隙間を作り、半ば意図的に嶋田がそこに絡むことを許してから、再びニースライスへ。さらに逆サイドに飛んでパスを決めて、8-0とリードを広げた。

その後ジョルジは、再び嶋田に一旦足を絡ませてから抜いてみせ、さらにニーオンザベリーも決めて13-0とすると、嶋田の襟首を右手で掴んで上体を起こさせてバックに付き、両足フックを入れて17-0とリードを広げる。ここから送り襟絞めに入ると、嶋田がタップ。5分43秒、一方的に嶋田を攻め続けたジョルジの完勝に終わった。

試合終了後もダメージでなかなか立てなかった嶋田。試合直前の練習で脇腹を負傷してしまっていたとのこと。今回は自分の力を出しきれずに終わってしまったが、その状況でマットに上がり、一回戦を逆転勝利した経験は必ずや今後の糧になるだろう。

嶋田を倒したジョルジは、次戦も突破して最終日へ。準決勝にて優勝候補のメイハン・マキニとのリベンジ戦に臨んだ。が、マキニはスタンドでは小内、小外でジョルジを倒し、上からは凄まじいスピードのトレアナパスを2度決め、最後は腕十字。僅か2分半、恐るべき強さを見せつけた末に圧勝して決勝進出した。

もう一方の山は、予想通り前年度覇者のパトことジエゴ・オリヴェイラとジエゴ・ヘイスの両者が勝ち上がった。この準決勝は、残り1分で50/50を作って上を取ったオリヴェイラがトップを守り切って作戦勝ち。

かくて決勝はマキニ×オリヴェイラ、昨年も死闘を繰り広げた両者の再戦となった。今年からオリヴェイラがドリームアートに移籍したため、同門同士の世界一決定戦だ。

上攻めのマキニと、下攻めのオリヴェイラ。凄まじいスピードと技のキレを持つ両者は、昨年に続いて互いに一歩も譲らない世界最高峰の凌ぎ合いを展開した。スコアは全くの同点、割れるかと思われたレフェリー判定は意外にもユナニマスでマキニを支持。21歳の新世界王者が誕生した。

マキニとオリヴェイラとヘイス──恐るべき強さを誇る新世代がライトフェザー級を席巻している。

そのとてつもなく高い頂に、今回の試練を戦い抜いた嶋田はいかに挑んでゆくのだろうか。

【リザルト・ライトフェザー級】
優勝 メイハン・マキニ(ブラジル)
準優勝 ジエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
3位 ジオゴ・ヘイス(ブラジル)、イアゴ・ジョルジ(ブラジル)

The post 【WJJC2022】メイハン・マキニ初制覇のライトフェザー級で、負傷を抱えた嶋田裕太はイアゴに一本負け first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o WJJC2022 アレクサンドロ・ソドレ イアゴ・ジョルジ ジオゴ・ヘイス ブラジリアン柔術 マラチ・エドモンド メイハン・マキニ ルーカス・ピニェーロ 今成正和 嶋田裕太 橋本知之

【WJJC2022】嶋田裕太の茨の道=ライトフェザー級。オカシオ,イアゴ&昨年準優勝者撃破で表彰台&三強戦

【写真】嶋田のハーフ、レッスルアップ、スイープはワールドクラスだ(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われる、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text by Isamu Horiuchi

プレビュー第2回は、NYのマルセロ・ガウッシア道場で長期修行を続ける嶋田裕太が出場するライトフェザー級の見どころを紹介したい。


強豪揃いのこの階級だが、他の選手から頭一つ抜けた優勝候補と呼べる選手が3人いる。まずは前回優勝のパトことジエゴ・オリヴェイラ。

続いてそのパトと昨年の準決勝で大死闘を演じ、4月のパン大会で優勝を遂げたメイハン・マキニ。3人目は、ADCCブラジル予選にてノーギながらパトを下したジオゴ・ヘイスだ。

ヘイスとマキニは昨年のワールドプロ予選で対戦。この時はヘイスが競り勝ちそのまま本戦優勝を果たしているが、4月のパン大会での再戦時には、50/50シーソー戦の末に12-10でマキニが勝利し、その後も優勝を果たしている。パトが23歳、マキニは21歳、そしてヘイスに至ってはまだ20歳になったばかり。すでに圧倒的な若き力により席巻されているのがこの階級の現状だ。

この3人に加え、昨年の世界大会で組み合わせに恵まれたこともあり決勝進出を果たした米国のマラチ・エドモンドも出場。そして19年の世界大会優勝者の一人である──この時は前人未到の同門4人によるクローズアウトだった──イアゴ・ジョルジ、4月のパンナムにてそのジョルジにストレートフットロックを極めて準優勝を果たしたルーカス・ピニェーロら強力ベテラン勢もエントリーしている。

このような過酷なトーナメントに挑む嶋田は、4月のパン大会以来の試合となる。同大会ではひとつ上のフェザー級にエントリーし、一回戦を順当勝ちした後、僅か10分少々のインターバルで過去2連敗を喫している強豪アレクサンドロ・ソドレと対戦。最初の上選択をアドバンテージと判定してもらえない不運もあり惜敗したが、シッティングガードからの鋭い仕掛けからシングルに移行して倒し切る等、その動きが世界最高峰に十分通じるところまで来ていることが見て取れる内容だった。

(C)FLOGRAPPLING

今回の嶋田の一回戦の相手は、ユニティ柔術のエドウィン・オカシオに決まった。

ジュニーの愛称でWNO等ノーギグラップリングの大会での活躍し、ジオ・マルティネスや今成正和等のビッグネームから勝利を挙げている。シッティングガードから足を絡めてのヒールフックを最も得意とするが、今大会はそれが禁止された道着着用ルール。この分野の頂点を目指す嶋田としては負けられない相手だろう。ちなみにオカシオは4月のパン大会にもエントリーし、初戦で橋本知之と戦う予定だったが欠場している。

次に嶋田を待っているのは、第5シードのイアゴ・ジョルジだ。

2019年には前述したクローズアウトでの世界制覇を含め、メジャー5大会全制覇という偉業を成し遂げた経験を持つ世界的超強豪だ。近年マキニ&ヘイスの超新星2人には連敗を喫しているが、その実力は健在だ。強烈なパスガードの持ち主のジョルジに対し、やはり上攻めを得意とする──同時にシッティングからのレッスルアップにも一段と磨きがかかっている──嶋田がいかに自分のペースで試合を運べるか。

今から9年前、2013年のブラジレイロ紫帯ライトフェザー級決勝で、ジョルジに勝利している嶋田だが、茶帯以降は対戦がなくても実績という点でリードを許している感は否めない。翌日の準決勝進出=世界のメダル獲得に向けて、最初にして最大の山場がこの試合となりそうだ。

このジョルジを倒せて、はじめて準々決勝に進める嶋田に立ちはだかる可能性が高いのは、昨年準優勝のマラチ・エドモンド。楽な相手であるはずはないが、エドモンドは黒帯での試合経験がまだ少なく、4月のパン大会でもルーカス・ピニェーロにチョークで完敗している。ジョルジに比べれば与し易いと言えるかもしれない。

ここも超えることができた場合、翌日の準決勝で嶋田を迎え撃つのはおそらくメイハン・マキニ、そしてさらに決勝で当たるのはパトことジエゴ・オリヴェイラとジオゴ・ヘイスの勝者だろう。つまり最終日には、現在この階級を席巻する真のトップの3人のうちの2人との連戦が嶋田を待っていることとなる。

頂点への道のりは目眩がするほど険しいが、4月の見事な戦いぶりから判断する限り、最終日に世界最高峰と渡り合う嶋田の勇姿を我々が見られる可能性は大いにあるだろう。

The post 【WJJC2022】嶋田裕太の茨の道=ライトフェザー級。オカシオ,イアゴ&昨年準優勝者撃破で表彰台&三強戦 first appeared on MMAPLANET.