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【DEEP JEWELS39】須田萌里戦、53日前の本野美樹─01─「打撃は前よりもビビらなくなった」

【写真】溌剌という言葉が本当に当てはまるベガスでの本野だ(C)TSP

23日(水・祝)、東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP JEWELS30のコメインで須田萌里と対戦する本野美樹。

元ストロー級暫定チャンピオンは9月の1カ月間をABEMAの海外武者修行プログラムに参加し、ラスベガスのシンジケートMMAで練習をしてきた。須田戦が決まっていたという水野だが、キャリア3年で7勝3敗というMMA歴の彼女が同プロジェクトに申し込んだ理由とは。そして──ベガスで何を掴んだのか。現地を離れる前日に行っていたインタビュー、本野がベガスで見つけたMMAファイターとしての生き方とは。


──今、どのような場所でインタビューを受けていただいているのでしょうか。

「UFC世界バンタム級チャンピオンのアルジャメイン・ステーリング選手のラスベガスの自宅です。アルジャメインは先週、NYに戻ったのですが、ここに泊まらせてもらっています」

──今回、ABEMA海外武者修行プロジェクトに申し込み、シンジケートMMAで約1カ月に渡り、練習をしてきました。偏見かもしれないですけど、AACC所属の本野さんがABEMAのプロジェクトで海外で練習をするというのが意外でした。このプロジェクト参加選手はルーキー的な選手が多いのですが、本野選手は既にDEEP JEWELSで暫定ストロー級のベルトを巻いていましたし。

「この企画をツイッターで見て、試合も組まれていなかったので直感的に海外で練習したいと思って、その日の練習の時に阿部(裕之)さんに伝えました。そして、すぐにABEMAに連絡してもらいました。正直、海外で戦いたいとか思っていたわけでもなかったです。ただ去年、田中路教さんが日本に帰国していた時にグランドスラムの練習で会って、練習への取り組みとかMMAへの姿勢を見て、自分の向き合い方と全然違っていると感じました。

本当に尊敬できて。田中選手は普段は海外で練習しているのを知って、その時から海外で練習したいと興味を持つようになっていました」

──田中選手に関していえば人生を賭けているのではなくて、人生を捨てているぐらいの取り組みです(笑)。

「アハハハハ。でも、スタート地点から違うような気がしました。だから武者修行プロジェクトに応募したのは海外で試合をしたいというよりも、海外のMMAに興味を持ったからです。どれぐらいの強さなのかを知りたいと思って。直感と海外の技術が進んでいると聞いていたので、その技術を学びたいと思いました」

──伊澤星花選手に敗れてから、キャリアの積み方など立ち位置が難しい状況になっているなど考えたことはなかったでしょうか。そもそも伊澤選手が何者か世に知れわたる前にプロ2戦目の選手と戦うことはベルトを持つ者として、どのように思っていたのでしょうか。

「ストロー級で戦う相手が本当にいなくて。伊澤選手のことは試合を見て、強いと思っていました。あの時はボクシングを習い始めたばかりだったので、それを試したくて。試合を組んでもらえるなら、誰とでも戦いたいと思っていました」

──タイトルマッチで挑戦を受ける時は、心構えは違っていましたか。

「全然違いました。初戦は舐めていたわけでもないですが、打撃を試したいという気持ちで戦って本当に打撃しか使わなかったです。そこもあって、2戦目は負けるわけにはいかないので自分の得意な組み技を使って、最初にペースを掴もうという作戦でした。でも、伊澤選手のペースに巻き込まれて腕十字でアッサリと負けてしまいました……」

──組み技主体の選手同士の対戦は、組み技力で試合の大勢が決まってしまうという印象がMMAでは強いです。伊澤選手との2連戦を終えて、MMAファイターとして完成度を高めたいという気持ちには?

「ストライカーと試合をするのとは全然違っていました。自分の得意なところが伊澤選手は得意で、自分より極めが上手でした。勝つポイントを見つけることが難しかったです。そういう相手とこれからも戦っていかないといけないのですが、最近は……ベガスに来てからもそうでしたけど、外国人選手と練習すると打撃でも手足が長いし、日本と同じような打撃をしていたら通用しない、圧されてしまいます。

なら彼女たちよりもスピードを速く、動きを増やしてみようとか。少しずつ考えながら……ようやくですけど、デキるようになったかもしれないです」

──そのベガスでの練習も、もうほとんど終了したタイミングだと聞いています。

「ハイ、選手練習は今日終わって。明日の一般のキックボクシングに出て終わりです」

──約1カ月の練習で、一番ガツンと来るものは何でしたか。

「正直、グラップリングに関しては細かい技術を教えてもらったのですが、今直ぐに使うことは難しいので日本に帰国して反復練習をしようと考えています。打撃は……日本にいた時はジャブならジャブと単発で終わっていたのが、こっちの選手はパン、パン、パンと連続で重たい形で来て、蹴りも多いので最初は戸惑いました。ただ練習しているうちに慣れてきて、打撃は前よりもビビらなくなったと思います。

日本では打ち合うということを練習でやっていなかったのですが、少し打ち合いがデキるようになったり、フェイントのバリエーションが増えました。打撃の部分では成長できているというのは感じられています」

──日本では男子とも練習をしていたのですか。

「グランドスラムではMMAスパーを男の選手ともやらせてもらっていました」

──なるほど。いやAACC女子部だと選手の特性上、打撃が続くというMMAスパーにはならないのかと……。

「ジムが広いので、下がりたいだけ下がることができます。だから組みたくて組めないという状況にはなりました。シンジケートで練習すると、皆、下がらないです。そこが日本と考え方、取り組み方が違うというのはありました」

──一発当てると、『この野郎』とより強くなることは?

「最初から強かったです(笑)。でも強く来てくれる分、こっちも強くできてやりやすい。試合のような練習ができました」

──アンジェラ・ヒルとのスパー映像を見せてもらったのですが、凄く溌剌としているように見えました。

「アハハハ。なんかこっちに来て練習していると、自分より強い選手がたくさんいて。考えてやらないとボコボコにされます。

強い選手とやっている練習は、凄く楽しくできました。環境的にも自分に向いているのかと思いました。たくさん考えてできるので、楽しいです」

<この項、続く>

■視聴方法(水・祝)
11月23日(日)
午前11時30分~SPWN PPV
午前11時30分~ニコニコ生放送

■ DEEP JEWELS39対戦カード

<バンタム級/5分3R>
東よう子(日本)
ダイヤモンドローズ・ザ・ロケット(タイ)

<49キロ契約/5分3R>
本野美樹(日本)
須田萌里(日本)

<フライ級/5分2R>
ミッコ・ニルバーナ(日本)
NØRI(日本)

<フライ/5分2R>
栗山葵(日本)
藤田翔子(日本)

<ストロー級/5分2R>
長野美香(日本)
松田亜莉紗(日本)

<ストロー級/5分2R>
ARAMI(日本)
万智(日本)

<バンタム級/5分2R>
熊谷麻理奈(日本)
細谷ちーこ(日本)

<54キロ契約/5分2R>
MANA(日本)
谷山瞳(日本)

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MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN36 アンジェラ・ヒル ヴィルナ・ジャンジローバ

【UFC ESPN36】テイクダウンとサブミッションで優位に立ったジャンジローバがヒルに逆転を許さず

<女子ストロー級/5分3R>
ヴィルナ・ジャンジローバ(ブラジル)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27.
アンジェラ・ヒル(米国)

低く構えるヒル、ジャンジローバがボディロックで組むがすぐに離れた。ヒルは左フック、相手が出て来るところに左ジャブを合わせる。ケージ中央で組みついたジャンジローバがボディロックで相手をケージに押し込んだ。ヒルが差し込んできた左足を取って潜ったジャンジローバが、右足も抑えてヒールを狙う。ヒルは苦悶の表情を浮かべる。ヒルが上半身を起こすと、ヒザ十字に切り替えたジャンジローバだが、ヒルがトップへ。

スクランブルから立ち上がったジャンジローバをケージに押し込むヒル。ジャンジローバは再び足を狙うが、ここはヒルが左腕を差し込み、ケージに押し込んでいく。しかしジャンジローバもケージ中央まで押し戻した。残り1分で離れたジャンジローバが、ワンツーを打ち込む。ヒルも右ストレートを伸ばし、左ジャブで相手の前進を止めた。そして組みついたヒルがグラウンドに持ち込んで初回を終えた。

2R、互いに左ジャブを突く。ヒルは頭を振りながら距離を詰める。ジャンジローバはステップを使いながらワンツーを打ち込んだ。ヒルが距離を詰めたところで組みついたジャンジローバが、ケージに詰めながらパンチを放った。しかし振りが大きくなっているジャンジローバに組みついたヒルがケージに押し込む。押し返したジャンジローバが離れるも、ヒルの左右フックをもらってしまう。組みついてケージに押し込んだヒルが、首相撲からヒザを突き刺した。

ジャンジローバは離れてパンチを繰り出すが、疲れが見られる。それでもダブルレッグからテイクダウンを奪ったジャンジローバ。ハーフガードのヒルはジャンジローバの左腕を抑える。相手のクラッチを切ったジャンジローバが抑え込みつつパスを狙う。そしてパスから相手の左腕を取ったジャンジローバが腕十字を狙う。鉄槌を落としながらクラッチを切ろうと試みるジャンジローバだったが、ヒルが起き上がり、右ヒザでジャンジローバの顔面を抑え、腕十字を潰していったところで2R終了のホーンが鳴った。

最終回、左ジャブを当てたのはヒルだ。さらに距離を詰めて右を当てる。ヒルの左をもらってバランスを崩したジャンジローバ。シングルレッグで組みつき、ヒルをケージに押し込み、ハイクラッチからテイクダウンを奪った。ヒルは下から左足をかけていくも、ジャンジローバはパスへ。スクランブルに持ち込んだヒルのバックを狙う。立ち上がったヒルに右足を差し込んだジャンジローバが、再びグラウンドに持ち込んだ。

下からエルボーを打ち込むヒル、ジャンジローバはトップをキープする。ハーフガードでケージ際に下がったヒルをコントロールし、半身になった相手からバックマウントを奪ったジャンジローバ。しかしヒルはトップに回り、足を上げて来るジャンジローバを潰していったが、逆転とはならなかった。

裁定はジャッジ3者ともフルマークでジャンジローバへ。勝者は「ランキング10位以内の選手と戦いたい」とアピールした。


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News UFC UFN ESPN+35 UFN177 アンジェラ・ヒル アンドレア・リー ブログ ミッシェレ・ウォーターソン ロクサン・モダフェリ ロッキー・マルチネス

【UFN177】計量終了 DEEPメガトン王者マルチネス、身長差10センチ&10勝10決着ののロマノフとUFC初陣

【写真】公称で身長差は10センチ。マルチネス、勝てば人気が出そうな絵面だ (C)Zuffa/UFC

11日(金・現地時間)、12日(土・同)にネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFN177:UFN on ESPN+35「Waterson vs Hill」の計量が行われた。

COVID19下で初めて行われたUFC249でカーラ・エスパルザに敗れたミッシェレ・ウォーターソンが、その翌週に攻勢に見えたクラウディア・ガデーリャ戦でスプリット判定負けを喫したアンジェラ・ヒルと戦う女子ストロー級がメインの今大会。

出場24選手に計量オーバーがなく、大会当日を迎えることとなった。


7月12日から12月12日まで24週で25大会を開くUFC、次週のAPEX大会を終えると9月27日にからは再び場所をファイトアイランドに移すことになっている。この連戦では谷間のような大会があるのも事実だが、それだけに試合結果によっては頭一つ抜け出すことが可能だ。

そんな性格を持つ今大会にDEEPメガトン王者のロッキー・マルチネスがオクタゴンデビューを果たす。地元グアムのロコ・プロモーションPXCでヘビー級王者に君臨し、アジア太平洋のヘビー級の頂点からRIZINも経験したマルチネスは、同じくUFC初戦となるモルドバのアレクサンドル・ロマノフと戦う。

アンコ型の体格とは対照的に、素早いハンドスピードと真っ向勝負が持ち味のマルチネスは、10勝0敗のフィニッシャー=ロマノフ戦の結果と内容によってはロイ・ネルソン的な人気を得ることもありうる。チームメイトのトレヴィン・ジョーンズが逆転KOでUFC初勝利を飾ったのに続けるか──注目だ。

■UFN177計量結果

<女子ストロー級/5分5R>
ミッシェレ・ウォーターソン: 115ポンド(52.16キロ)
アンジェラ・ヒル: 115.5ポンド(52.38キロ)

<ライト級/5分3R>
カーマ・ワーシー: 155.5ポンド(70.53キロ)
オットマン・アザイタル: 156ポンド(70.76キロ)

<女子フライ級/5分3R>
アンドレア・リー: 125.5ポンド(56.92キロ)
ロクサン・モダフェリ: 125ポンド(56.7キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
エド・ハーマン: 205.5ポンド(93.21キロ)
マイク・ロドリゲス: 205.5ポンド(93.21キロ)

<ライト級/5分3R>
アラン・パトリッキ: 156ポンド(70.76キロ)
ボビー・グリーン: 156ポンド(70.76キロ)

<フェザー級/5分3R>
ビリー・クゥアンティロ: 145.5ポンド(66.0キロ)
カイル・ネルソン: 145.5ポンド(66.0キロ)

<女子バンタム級/5分3R>
ジュリア・アヴィラ: 135ポンド(61.24キロ)
シジャラー・ユーバンクス: 135ポンド(61.24キロ)

<ライト級/5分3R>
ルーズベルト・ロバーツ: 155.5ポンド(70.53キロ)
ケビン・クルーム: 154.5ポンド(70.08キロ)

<ヘビー級/5分3R>
アレクサンドル・ロマノフ: 261ポンド(118.38キロ)
ロッキー・マルチネス: 258.5ポンド(117.25キロ)

<165ポンド契約/5分3R>
ブロック・ウェーヴァー: 164ポンド(74.38キロ)
ジェイリン・ターナー: 163.5ポンド(74.16キロ)

<ウェルター級/5分3R>
ブライアン・バルベレナ: 170ポンド(77.11キロ)
アンソニー・アイヴィー: 169.5ポンド(76.88キロ)

<女子フライ級/5分3R>
サビーナ・マゾ: 125.5ポンド(56.92キロ)
ジャスティーン・キッシュ: 125.5ポンド(56.92キロ)

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Bu et Sports de combat Interview UFC アンジェラ・ヒル クラウジア・ガデーリャ ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ガデーリャ✖ヒル=質量✖機動力

【写真】質量と機動力、質量もMMAを戦ううえで一つの要素であり、全てでは決していない(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──クラウジア・ガデーリャ✖アンジェラ・ヒルとは?!


──今回は女子ストロー級の一戦です。

「あのう……この試合なんですが、あれはどういう判定なんでしょうか? この裁定は全く理解不能です。フルマークでアンジェラ・ヒルの勝ちです」

──初回はテイクダウンがあったので、カデーリャという見方は成り立つかもしれません。ラウンドマストで最終回もジャッジがどう判断するのか──なかにはガデーリャという人もいるかもしれない。でも、普通はヒルで……試合を通してなら判断するなら絶対的にヒルだったかと思います。

「この試合でいえば、もうカデーリャの方が強いんです。強いのは。でも、彼女は横着してしまっていました。正直、ヒルの方は打撃のレベルはホントに高くないです。でもね、彼女が偉いのはずっと動いていることです。止まらないですよ。常に距離をとって、そこで動き続けている。ガデーリャは、ああいうヒルの懸命なファイトを見習わなければいけないです。カデーリャは楽をして勝とうとし過ぎていました」

──コロナウィルス感染問題で、練習環境をなかなか作れなかったのか。いつもはもっと、ガンガン攻める選手です。それが動けず、横着するようなファイトになってしまったのかもしれないです。

「それはあったかもしれないですね。ただ、どういう状況であれガデーリャは動いていなかった。対して、ヒルは動き続けていた。そしてガデーリャの素晴らしい一発よりも、間断なく動いている攻撃の方が見えにくいということが、この試合から分かります。

ガデーリャは2Rに左フックを被弾してダウンをしましたが、あの時は見えていなかったです。質量がずっと高いのはガデーリャで、ヒルの動きはパタパタしたモノでした。実はああいう動きでなんとかするタイプは、私個人としては好きではないです。でも、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるという理屈で、回転数が高くなっているからガデーリャも被弾してしまいました。1発目は避けても、2、3、4と続くからどこかで貰ってしまいます。

ケージに押し込むシーンやテイクダウンなどはガデーリャでしたが、そこもスタミナが切れないよう彼女を慎重というか、横着にさせた点かと思います。そしてヒルも押し込まれた状態が続いた。あそこで動く練習をしないとは考えられないのですが……」

──確実に押し込まれた状態で押し返すか、もしくは体を入れ替える……回す練習はしているはずです。ただし、それをすると自分も疲れる。逆にガデーリャに押し込ませて体力を削り、ヒルはケージを背負ってエネルギーをセーブしていたことも十分に考えられます。

「あぁ、正に足し算と引き算があるMMAならでは攻防ですね。この試合は特にガデーリャの方が実力は上なので、ヒルが動き続けるために組まれると体力をセーブする対応に留めるということですね。う~ん……、そもそも論になってしまいますが……にしても今回はなぜ、この試合を取り上げたのですか?」

──あぁ、実はですね、もう既に岩﨑さんが全てを返答されているのですが、本来この両者で格闘家として強いのはガデーリャだと私は思っています。

「ハイ、それはどうだと思います」

──そして、私はアンジェラ・ヒルのスタイル……動き続けて、パンチで倒すのではなくて、パンチを当てて勝つタッチ・キックボクシングMMAが嫌いなんです。

「私もそういう試合は好きじゃないですねぇ(笑)」

──まだ、打撃を散らしてテイクダウンから寝技で勝負というのは分かります。でも、ただ打撃を散らすだけ。それは戦いなのか……と。

「まさに仰る通りですッ」

──ただし、MMAはコレが許される。こんな試合が許される競技格闘技はMMAだけだと思います。そして、この試合はあれだけ圧力、一発のあるガデーリャをそういうファイトで封じ込めた。判定負けはしましたが、岩﨑さんも言われているようにMMAとして、ヒルは勝っていた。その面白さがMMAにあるので、間や質量がどうだったのかを知りたかったのです。

「なるほどですねぇ(笑)。確かに強いのはクラウジア・ガデーリャで、それでもアンジェラ・ヒルが試合は勝っていた。意味不明な判定負けになりましたが、ヒルが絶対に勝っていました。まぁ、それもMMAではままあることですが……それにしても、この判定はおかしいです。

3Rになるとヒルが疲れました。でもガデーリャは、そこでも攻めなかった。そんななかヒルのローキックは良かったです。でも効かすことができているのも、自分で理解できているのかは分かりません。ヒルはパターンで練習しているのか、パタパタしている。逆にガデーリャは殴る実感が拳(けん)にあります。

中国武術に『意』という言葉がありますが、中国では意識と意は明確に違うモノとされています。意識は考えることで、意は本能……本能の発動のようなもので。例えばヘンリー・セフードのパンチ、蹴りには『意』があります。対して、ドミニク・クルーズは5Rをマネージメントして勝ちます。ただし、それは達人技です。彼だからできる戦いですが、武術的な意はないんです。

これはドミニクがそうだというのではなく、漫然な動きというのは格闘技の試合のなかにおいてもいくらでも見ることができます。練習でも漫然とシャドーをするのと、左で顔面を叩く、右で顔面を叩く──その実感を持って練習している人と、そうでない人の差は出てきます。それが日々の積み重ねなので。

と同時に、いくら意があってもコンディションというモノに左右されます。ガデーリャとヒルもそうで……いくら質量が良くても、それを動かす機動力がなければ格闘技の試合では勝てないです。質量が高くても、機動力に負けることはあります。つまり質量の高さを生かす戦術を立てないと競技では勝てない。私もここで質量、質量って言っていますけど、質量も格闘技の試合を戦ううえでは、一つの側面に過ぎないのです。

この試合は質量も間もガデーリャです。だけど、活かしきれていない。そこで機動力に負けてしまった。まぁ、試合結果としてはガデーリャが勝ったから、何とも意味の分からない裁定なのですけど(笑)。私もよく『ジャッジの善意を期待して戦ってはいけない』とは口にしているのですが、今回のこの裁定は意味が分からないです。クソボールでフォアボールだと思って一塁に向かって動き始めたら、ストライク!!って審判が言って、三振にさせられたようなものです……ヒルにとっては。

と同時に判定云々でなく、改めて理解できたのはMMAの攻撃とは回転数を無暗に上げられない。その側面が見えたことですね。

掴みがない、顔面殴打がないフルコンタクト空手、組み技がないキックボクシング、あるいは打撃のないレスリングという戦いは、攻撃する側がその回転を上げやすいです。左から右、右から左、上から下、下から上、外から中、中から外という風に間断なく回転を上げることができます。ワンツーからワンツースリー、ポンっというように。

ところがMMAはワンツー、ワンツースリーからポンっというリズムで勢いをつけていっても、その間に組みつかれることがあります。組みにしても、組みのテンポでは打撃で間隙をつかれます。そういう戦いは、やはり練習が難しいです」

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Report UFC UFC ESPN08 アンジェラ・ヒル クラウジア・ガデーリャ ブログ

【UFC ESPN08】譲らぬ両者、カデーリャがスプリット判定でヒルに勝利しエスパルザ戦を要求

<女子ストロー級/5分3R>
クラウジア・ガデーリャ(ブラジル)
Def.2-1:29-28.29-28.28-29
アンジェラ・ヒル(米国)

左ジャブを伸ばすヒル、右を見せて組んでいくガデーリャ。切ったヒルが右オーバーハンド、ガデーリャが右を返す。リーチアドバンテージのあるヒルが近づき、ヒザを入れる。ガデーリャは右ボディフック、左ジャブ、ヒルが左を当てる。互角の立ち上がりから、ヒルが左ロングをガードの上から当てる。ガデーリャが組んでケージに押し込み両ワキを差す。

ヒルが左を差し返し、小外掛けを耐える展開が続く。3度目のトライ、残り80秒でテイクダウンからサイドを取ったガデーリャが枕でプレッシャーを与える。ケージ際に移動したヒルがケージを蹴りに掛かるが、ガデーリャはニーインベリーから鉄槌を落とす。シングルに来たヒルに対し、腹固めから殴ったガデーリャは最終的に立ち上がられたが、ラウンドを取った。

2R、ヒルのジャブにワンツーを返すガデーリャ。アッパーを放ったヒルは、右を被弾する。ジャブで右目じりをカットしたガデーリャは、右ストレートを被弾してダウン。ヒルはスタンドで待ち受けるとガデーリャが左フックを打ち込む。シングルから逃れたヒルは、左ジャブから右ストレートをヒットさせる。ガデーリャは組むがヒザを受けて、胸を合わせた状態で崩される。そのまま体を入れ替えたヒルはシングルへ。耐えたガデーリャは、体を入れ替えようとするとヒルが離れた。

ヒルはパンチを当てて移動するが、左に右を合わされる。ガデーリャはジャブでヒルのバランスを崩させるも、ボディフックを被弾。フェイントから右を打つヒル、右から左、そしてハイを繰り出しポイントを五分に戻した。

最終回、ジャブから右を打ち合う両者。ガデーリャがテイクダウンのフェイクからフック、ヒルが近距離でエルボーを繰り出す。ジャブが当たる距離で戦うヒルだが、ローを蹴られ体がよれるシーンも。近距離ではヒルがアッパー、ガデーリャが左を当てる。左ハイ、左ストレートのコンビを見せたヒルが、踏み込んで縦ヒジを入れる。さらにジャブを当てるなど、手数で上回るヒルはガデーリャの前進に右を合わせる。

左フックにも右を合わせられたガデーリャは、左ミドルを蹴られ自分の距離で戦えない。それでもヒルの踏み込みに左のカウンターを決めたガデーリャが、右ストレートも届かせる。残り1分、勝負の時間帯でガデーリャが組みつく。入れ替えたアンジェラ、ガデーリャは右エルボーを当てて離れると右ストレートをヒットする。最後の10秒でヒルは勢いのある蹴り、カデーリャもパンチを振るいタイムアップに。

甲乙つけるのが難しい最終回、ジャッジは2人がガデーリャを支持しスプリット判定勝ちを手にするとカーラ・エスパルザ戦をアピールした。