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【Special】バンタオ・ムエタイ&MMA、ジョージ・ヒックマンに訊くプーケットの利点「宿泊、食事が安い」

【写真】アトランタでジュカォン・カルネイロやブライアン・スタンらとトレーニングをしていたジョージ・ヒックマン。2014年の大晦日、つまりDEEP DREAMで長倉立尚と対戦している(C)MMAPLANET

タイ、プーケット。タイガームエタイ&MMA。世界中からMMAファイターが集まるメガジムには、現在トライアウトに合格した本田良介が所属している。そのタイガーのヘッドコーチから独立しバンタオ・ムエタイ&MMAを興したのが米国人ジョージ・ヒックマンだ。
Text by Manabu Takashima

なぜヒックマンはジム&フィットネス街道といっても過言でないシャロンの街を後にし、バンタオにタイガームエタイに勝るとも劣らないメガジムを創り、活動することとなったのか。タイのMMAの将来を見据えて、話を訊いた。


──凄い設備ですね。タイのどのジムよりも大きくて。ところでジョージのバンタオ・ムエタイ&MMAでの肩書は何になるのでしょうか。

「MMAコーチで、ジムの共同オーナーの一人でもあるよ」

──既にヘッドコーチとしてタイガームエタイで成功を収めていたのに、なぜバンタオMMAに合流したのでしょうか。

「僕自身、アレックス・シールド、弟のフランクはタイで10年近く生活してきた。自分たちのジムをやろうってシリアスではなく、口にするようになってきたんだ。自分たちの意志で全てを運営したくてね。でも、本当に真剣なモノではなかった。転機になったのは、コロナ禍だ。コロナ禍になって……あれって僕らの歴史でも、とても奇妙な時間になっただろう? 人々に考える時間を与えることになったんだ。そしてジムを閉めたり、開けたりということを繰り返していて……世界中、どうなるのか分かっていなかった。

で、何に投資すれば良いのか、そこを探る時間を与えてくれたんだ。色々な物件を見て回る時間ができた。コロナで新しいジムを成功にさせることができる時間ができたんだよ」

──タイガームエタイとは違う、何かを加えたかったのですか。

「そうだね、タイガームエタイで色々と経験を積み、コネクションもできた。誰かのためでなく、自分たちのパッションを全て反映させることがバンタオではできている。自分が愛していることが根底にある仕事ができるのって、本当にラッキーだろう。十分な施設だけども、今も拡張工事をしている。設備はワールドクラスだし、コーチ陣も同様にワールドクラスだ。素晴しいチームでやっていけて、凄く幸運だよ」

──ファイトビジネスは実は、あまりロイヤリティのあるモノではないです。選手たちは簡単にジムを移っていきます。ただジョージがバンタオを創ると、アレックスやトップノイという生徒や仲間も一緒に移ってきましたね。このビジネスでファイターとの人間関係はどれだけ大切だと考えていますか。

「とても重要だよ。ファイティングはバスケットボールとか、そういうモノをプレーするのとは違う。僕と弟はレスリングと共に大人になったけど、ファイティングもレスリングと似ていてコーチと選手は密接な関係にある。実際、家族よりも長い時間を共にするわけだし。

一緒に旅をして……ファイターとコーチはとても近い関係だ。コーチとしては、選手は一人一人が違う性格をしていて誰一人として同じことを教えることはない。試合の準備も違いがあるし、試合前の困難さもそれぞれだ。人一倍ストレスを抱える者もいる。コーチは人として、彼らの一部になる必要もあるんだよ」

──近年、MMAの状況も違ってきて5年、いや3、4年前までは誰もが最高の設備があり、最高のコーチがいる米国で練習しようとしていましたが、今はこのプーケットにはジム・ビジネスを成功させるのに優位な点があります。プーケットでジム・ビジネスを行う利点を教えてください。

「僕らのジムだけでなく、他の全てのジムに世界中から人々が集まっている。正直、そんな人達がプーケットにやってくるためには航空運賃が、もっとも高いコストになる。でも宿泊、食事に掛かる必要はそこを差し引いても安い。それに僕らのジムではレスリング、柔術、MMA、ムエタイと全てを一カ所で学ぶことできる。ここやジムに裏に宿泊施設も揃っているしね。

米国でも一部の大きなジムではそれが可能だ。でも、僕がアトランタに住んでいた時は朝に一つのジムへ行き。お昼には違う場所へ移動していた。対して、ここだとジムの直ぐ近くステイして、ビーチもすぐそこにある。バイクで行き来できる範囲で、2つの違うビーチもある。練習に必要な全てが整っていて、ファイター特有のストレスをここでは感じることがない。練習に集中して、ビーチでリカバリーする。それがタイでの練習の良いところだよ」

──タイガームエタイのあったシャロンはファイティングジムだけでなく、ストレングスコンディショニングジム、ヘルシーフードレストランと全てが整っています。フィジカル街のようになっていますが、なぜジョージはバンタオを選んだのですか。

「正直を言えば、シャロンで色々な場所を見て回ったよ。そうしたらアレックスが『なんで、バンタオでジムを開かないんだ?』って言ってきたんだ。あの時、弟はTUFのコーチで米国にいて……僕はアレックスに『ありえない。バンタオに行くことは絶対にない』と言っていたんだけど、ここにワイフと子供達と一緒に2週間弱ステイしてみた。ビーチやレストランを友人に案内してもらった。そして、すぐにバンタオが大好きになったんだ。

それからロケーションを探すようになって、ここ以外にも候補地はあった。でも、ここが見つかったんだ。実はアレックスとコーナーマンとして米国に行っていて、戻って来てからここで隔離されていたんだ。なんだか、運命的だろう?」

──バンタオの成功を見て、他のジムも続こうとしなかったですか。

「いくつか、ムエタイのジムがこの辺りにもあるよ。でも、僕らのジムより小さい。本当に近しい友人も『そんなところにジムを出して、どうするつもりだ』って言っていたよ。そんな時も僕は『皆がやっているところからは遠い。でも、実際に見てみたら僕らがここを選んだ理由が分かるはずだ』って自信たっぷりに答えていた。幸運にも上手くいったね(笑)」

──自分たち訪問者にとって、バンタオがシャロンより良いのは空港が近いことです。

「イエス。ジムから20分で悪くない。なによりサリムビーチとバンタオビーチの間にある。以前はビーチまで15分や20分ドライブしていたけど、今はその必要もなくなった」

──プーケットには多くのジムがありますが、タイ人選手がほとんど見当たりません。タイにMMAが根付けば、この国はMMAの強豪国になると思っているのですが……。プーケットも外国人ファイターばかりで、今もタイのMMAファイターはまだ成長していないです。

「なれるよ、でも今じゃない。タイでMMAはまだ歴史が浅いスポーツだ。でも、ムエタイからMMAに転向する人間も増えてくる。10年前に初めて来た時より、ずっと成長している。あの頃はMMAといっても分かってもらえないから、説明が必要だった。ONE Championshipがタイにやってきて、MMAはずっと知られるようになった。それでも、ずっとやってきたムエタイからMMAに転じるのを恐れているんだ。

僕らはキッズクラスを始めるし、もう少しすればタイ人ファイターも成長するに違いない。柔術やレスリングを彼らに教えることが楽しみでならない。将来、ムエタイからMMAに転じるファイターが増える……そこに一番、情熱を注いでいるんだよ。ビッグネームのコーナーについて、一緒に練習することも素晴らしいことだけど、若い選手がキャリアの最初から前に進むところを見ていく……タイのMMAが発展することに、最も情熱を燃やしているんだよ」

──ムエタイは最近まで賭けの対象で、低所得者層が夢中になっていました。それがONEもそうですが、賭けの対象でなくスポーツエンターテイメントとして発展し、ムエタイの選手が良いお金を稼ぐようになってきました。そこはムエタイからMMAへの転向を鈍化させる要因になっていないでしょうか。

「そうだね。ムエタイでお金を稼ぐことができるようになってきた。ONE Championshipやラジャダムナン・ワールドシリーズで。MMAファイターがここにきてMMAのためにムエタイのトレーニングをするだけなく、色々なオプションがある。タイの俳優や女優がムエタイの練習をしている。ムエタイの大会も観戦するようになった。より認知度は上がっている。僕の友人であるタイ人の俳優もムエタイやMMAにハマっているしね。このスポーツは注目されているし、これからもっとそうなるだろう」

──タイ人ファイターはワールドベストになれる可能性を秘めていますか。

「もちろんだ。当然レスリングやグラップリングを知り、ムエタイのMMAに少しアレンジする必要があるけど、ムエタイとMMAって実は凄く似ていることを多くの人が理解していない。ムエタイのコーチも、タイ・クリンチ(首相撲)は凄くグレコローマン・レスリングに似ていると言っていた。確かに別競技だけど、柔術やレスリングに通じるところはムエタイにはあるよ。クリンチへの理解度の高さが、成功を保証することになる」

──今若い選手が経験を積めるフィーダーショーはタイに存在しているのですか。

「いくつか小さなプロモーションはあるよ。以前のフルメタル・ドージョーのようにね。今はファイトサーカスと名前を変えたけど。日本のスモールショーにも選手を送りたい。DEEPで戦う米国人選手も今、バンタオで練習しているよ」

──もしジョージが日本のMMAに送り込みたい選手がいれば、名前を教えてもらえますか。

「トップノイだね。もう日本に行っているけど。何人か、注目の若い選手がいるから彼らを日本に連れて行きたい。小さな団体から、RIZINを狙わせたい。コーチとして、日本への旅は大好きだ。美しい国で、食事も美味しい。良いビールとウイスキーもあるしね(笑)」

──最後に日本のMMAファンに呼びかけをお願いします。

「色々なファイターと、色々な団体の試合のために何度も日本を訪れている。日本で戦ったこともある。日本のMMAは巨大だ。余り日本人ファイターはやって来ていないけど、それほど長旅でもない。僕は日本を訪れるのも、ファンと交流することも大好きだ。何も恐れることなくも日本人ファイターには、もっともっとバンタオにトレーニングに来て欲しい。アリガトゴザイマス。イイネ」

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45 AB MMA MMAPLANET o ONE Special WNO22 YouTube デミアン・マイア ブラック マーシオ・クロマド レアンドロ・ロ 岩本健汰

【Special】岩本健汰が挑戦するミカ・ガルバォンを知ってもらうため、Fight&Lifeインタビューを再掲載

【写真】このところ話題性でルオトロ兄弟の遅れをとっているが、実力的には遜色ない──はず(C)SATOSHI NARITA

9日(金・現地時間)、カリフォルニア州コスタメサで開催されるWNO22「Rodriguez vs Hugo」で自らの持つウェルター級王座の防衛戦で岩本健汰と対戦するミカ・ガルバォン。
Text by Manabu Takashima

ここでは、ミカ・ガルバォンが何者かを知ってもらうために、2022年4月に発売されたFIGHT & LIFE#90から、彼が柔術を始めた時からムンジアル優勝→陽性で王座剥奪までの柔術家&グラップラー人生を振り返り、また彼の柔術&グラップリング観を話してもらったインタビューを再掲載する。

岩本が挑む世界最強のグラップラー=ミカ・ガルバォンとは?


――柔術の神の子ミカ・ガルバォンに初インタビュー。嬉しい限りです。

「こちらこそ、日本のマガジンでインタビューされる機会を貰えて感謝しているよ。マナウスと日本なんて、本当に別世界だと感じていたから。僕のことを注目してくれるなんて思いもしなかったんだ」

――パンデミック後、IBJJF軸の柔術界は動きを止め、代わってプロ・グラップリングとプロ柔術が台頭しました。茶帯から黒帯を巻くようになったミカはこの間、ノーギと道着で大活躍しています。

「コロナ・パンデミックが起ったとき、多くの柔術家がトレーニングをストップした。でも、僕は逆転の発想でこの期間にしっかりと練習して、差をつけようと思ったんだ。9人か10人、アカデミーから出ることなく、練習に集中し、外の世界と接触しないようにしていた。そうすることで、僕らは練習できる環境を維持し続けたんだ」

――強くなるためにそこまで貪欲だったのですね。

「気が狂ったように練習に集中していたよ(笑)」

――だからこそ、コンディションという面でもミカは他の選手をリードできたのですね。そんなミカは柔術とルタリーブリという2つのブラジル産格闘技の黒帯です。それにしても柔術とルタリーブリが犬猿の仲だった頃を知っている身とすれば、隔世の感があります。

「父は柔術三段の黒帯で、ルタリーブリでもブラックベルトを巻いている。僕からすると柔術とルタリーブリの抗争をしていた時代を知らないんだ。ただ、ここマナウスでの両者の関係はリオデジャネイロと比較にならないぐらい険悪だったと聞いている。何しろ、死人に出るほどだったんだ」

――あってはならないことですね。いくら自分たちのスタイルが大切でも柔術もルタリーブリも世間から認められない集団になってしまう。

「その通りだよ。でも僕が生まれる少し前、ルタリーブリはウゴ・デュアルチやエウジェニオ・タデウからアレッシャンドリ・ペケーニョやマーシオ・クロマド達に世代交代があり、彼らが柔術に歩み寄ったことで時代は変わったんだ。そしてマナウスでは2010年代に入り、柔術とルタリーブリは協力関係を組織として構築した。それ以来、柔術家がルタリーブリ、ルタリーブリの選手が柔術のトーナメントに出場するようになった。マーシャルアーツの根底にある尊敬、名誉、友情、情熱を浸透させるのに競技間のライバル心なんて全く必要ないからね」

――19歳のミカの言葉を当時の柔術家、ルタリーブリ選手に教えてあげたいですね。

「アハハハハ。アカデミーを襲って、路上で乱闘をする。それが何を生むんだって思うよ」

――ミカは柔術とルタリーブリ、どちらから練習を始めたのですか。

「柔術だよ。2歳の時に初めて道着の袖に腕を通した。ずっと柔術を戦っていて、10歳ぐらいの時からルタリーブリを始めたんだ。17歳でルタリーブリの黒帯になり、18歳で柔術でも黒帯になれた」

――ルタリーブリを練習した利点はどこにあると考えていますか。

「米国に比べると、ブラジルは今でもノーギ・グラップリングのトーナメントは少ない。米国では日常的になっているけど、やはりブラジルは道着へのこだわりは強い。そんな間に米国のグラップリングはどんどん進化している。ブラジルから米国に行くと、本当に驚かされた。でも、僕にはルタリーブリの経験があったから、今のサブオンリーの潮流に乗り遅れることがなかったんだ。なんせ僕はルタリーブリ・ファイターでもあるからね(笑)」

――その通りですね(笑)。

「柔術だけをやっていると、ほとんどトップを取ることがないという選手もいる。でもノーギでは上になることが大切だ。と同時にノーギを経験すると、道着での動きが本当に良くなるんだ。道着とノーギを経験することは、どちらの競技にも役立つよ。ノーギを経験すると、動きがシャープになるよ」

――柔術界ではノーギも柔術という意見が聞かれます。

「イエス」

――ではノーギ柔術とルタリーブリの違い何なのでしょうか。

「違いはないよ。今、柔術家のなかでもレッグロックは常識になった。でも、ルタリーブリには20年前から存在していた。今、グラップリングが盛んになっているけど、僕らはルタリーブリがずっとあったからね(笑)。そうだね、違いは――ルタリーブリは道着のズボンを履くこと。ノーギ柔術はショーツで戦う。それだけかな」

――セルフディフェンスが柔術の根幹だという意見もありますし、今も柔術のトップファイターは、MMAに転向する傾向はあります。

「スポーツとして見ても、いくつかストリートで有効な点は見られるよ。それにファイターだったら、それがスポーツであっても、自分の身は自分で守れないといけないと思っている。セルフディフェンスの基本ぐらいは知っておかないと。マーシャルアーチストとして、自分を守れないなんて恥ずべきことだから」

――そういう想いはあると。

「そうだね。使わないに限る。でも、その術は知っておくべきだよ。あとMMAに柔術を生かすなら、それ用の練習が必要だ。どういう状況で柔術の技術が有効なのか、しっかりと把握しなければならない。ただ柔術の練習をしていても、MMAには使えない。殴られるのがオチだ。デミアン・マイアが良い例だよ。しっかりとアジャストして、柔術をMMAに落とし込んでいた。逆にIBJJFのワールドのような最高のトーナメントで優勝を目指すなら、競技柔術に集中しないと。他のことをしながら勝てるほど甘くないよ」

――では競技柔術内でもオールドスクール柔術とモダン柔術が存在します。これだけ試合展開、技術が変化したスポーツは我々の年代も柔術とMMAだけではないでしょうか。

「ベーシックとファンダメンタル、この2つは柔術に欠かせない。だから柔術を始めた時には基礎、土台を習うんだ。腕十字、ベリンボロでなく道着を掴んだ時から、どういう風にプレッシャーを与え、どこが正しいポジションなのかを覚える必要がある。黒帯になって勝てない、上手くいかないという時に基本に立ち返ることができる。そのために基礎、土台を学ぶ必要があるんだ。僕自身、オールドスクールの柔術から学び始めた。どこのポジションにいても、シンプルかつ使いやすい動きを選択しているよ。それにどのスタイルだろうが、どんな考えを持っていようが、しっかりと練習をしないと技術は使いこなせない。とにかくトレーニングすることだよ」

──これまた至極、真っ当かつシンプルな真実ですね。

「以前、マイキー(ムスメシ)とも基本が大切、打ち込みをどれくらい練習しているのかという話題になったんだ。僕は1時間だと答えた。マイキーは『おお、良いね。僕はファイブだ』って言うんだ。つまり5時間だよ(笑)。4度の世界王者が、これだけ基本を大切にしている。多くの人が強い相手とのスパーリングをすれば良い練習だと思い込んでいるけど、決してそうじゃない」

──ミカは凄い頻度で試合に出ていますが、試合前と試合のないときでは練習内容は違ってきますか。

「確かに僕は試合数が多いよね(笑)。ただし試合前も自分が強くなることに重点を置いて、試合に勝つという練習はしていない。試合がない時の方がペースは緩やかになるけど、練習内容は変わらないかな」

──なるほど。ミカは道着柔術、サブオンリー、ノーギのポイント戦とあらゆるルールの試合に出ていますが、一番重視しているのはどのルールの試合になるのでしょうか。

「それが可能かどうか分からないけど、道着でもノーギでも世界の頂点に立ちたい。でも僕はルールを理解し、試合タイムも頭に入れて自分の動きができるにしている。そうだね──今年の目標はIBJJFのムンジアルでの優勝とADCC世界大会の優勝だよ。簡単じゃないことは分かっているけど、これまで通り道着もノーギも並行して2つの世界を狙いたい」

──それを口にデキて、周囲も期待できる。まさに柔術の神の子です。ではムンジアルとアブダビのトーナメントで、それぞれ最大のライバルは誰になるでしょうか。

「誰か特定の選手の名前は思い当たらない。ムンジアルとADCCはタフな相手しかいないから(笑)。ADCCは特にトライアルの優勝者を中心に16人の選手しか出場できない。タフでない相手を見つけることが難しいよ」

──確かにその通りですね。それにしてもADCCブラジル予選では5試合連続で一本勝ちでした。

「ノーギの試合では過去最高のキャンプができて、人生で一番状態が良かったんだ(笑)。自分のなかでも、ちょっと違うミカ・ガルバォンがいたような感じだった(笑)」

──それでいて昨年のEUGの道着77キロ級Tでは2021年のムンジアル・ミドル級世界王者となるタイナン・ダルプラをまだ茶帯だったミカは破っています。去年から今年にかけてタイナンが喫した唯一の黒星です。両者の再戦があるのか。とても楽しみです。

「タイナンはノーギはやらないから、あるとすればムンジアルかな。僕らは右も左も攻めることができて、どちらが得意ということがない。だから凄くエキサイティングな試合になるんだよね」

──道着柔術では4月30日に予定さているBJJ STARSの8人制トーナメントではレジェンド=レアンドロ・ロとの対戦が実現することも期待されています。

「子供の頃、シセロ・コスタのところで一緒だったことがあるんだ。当時からロは僕にとって憧れの存在だった。8年、9年が過ぎて彼と戦うことができる場所から辿り着くことができた。トーナメントの山が別だから、僕ができることは一生懸命に練習して、まずはファイナルまで勝ち上がることだよ」

──ところでONEがトップグラップラーと契約し、ワンマッチ形式で得られる対価が上がってきています。その一方でトーナメントに彼らが出場し続けることはあるのか。現状、プロとしてプロモーションと契約することをどのように捉えていますか。

「たしか僕のマネージャーも彼らからの接触があったんだ。でも、僕はまだその時期じゃないと思っている。ONEのようなビッグプロモーションでMMAと一緒に試合が組まれるのはグラップリングが一段階ステップが上がった表れだと思う。ノーギは道着よりも一般の人に理解されやすいだろうし。そんな試合を視るのは僕も楽しみだよ。僕らの世代は幸運にも他の仕事をしなくても柔術で生活ができるようになった。練習と指導をして生きていける。だから、まだMMAイベントのなかで、ワンマッチで戦うよりも、あらゆるルールのトーナメントに出場して、強くなりたいと思っている」

──柔術の神の子が、柔術の神と呼ばれる日がやってくるのは、そう遠くなさそうです。最後に日本のファンに一言お願いします。

「とにかく日本の雑誌にインタビューしてもらい、僕の人生を日本の人とシェアすることがデキて感激しているよ。皆がこれから僕の試合を見てくれると嬉しいね」


■視聴方法(予定)
2月10日(土・日本時間)
午前11時00分~Flo Grappling

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【比較】餓狼伝説2 KO集【PS2NEOGEO・SFC】

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NEOGEO→SFCの餓狼伝説2・SPECIALの移植度を調べてみました。再生リスト
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00:00 テリー・ボガード
00:20 アンディ・ボガード
00:41 ジョー東
01:02 ビッグ・ベア
01:22 山田十平衛
01:42 チン・シンザン
02:02 キム・カッファン
02:22 不知火舞
02:41 ビリー・カーン
03:01 アクセル・ホーク
03:20 ローレンス・ブラッド
03:41 ヴォルフガング・クラウザー KOポーズ1
04:01 ヴォルフガング・クラウザー KOポーズ2

#餓狼伝説2
#FATALFULY2
#ko

©SNK 1992
©TAKARA 1993

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【Special】J-MMA2023─2024、Road to UFC決勝へ。原口伸「全然、負ける気はしないです」

【写真】既に計量を終えている両者。ロン・チュウはかなり戻してきそうな体をしており、当日はフィジカルの差は出てきそうだ (C)Zuffa/UFC

2024年も早くも1カ月が過ぎ、MMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、こらからの1年について話してもらった。
Text by Manabu Takashima

J-MMA2023-2024、第十九弾はRoad to UFCライト級ファイナルを控える原口伸に話を訊いた。

3日(土・現地時間)にネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるRoad to UFC2023 Finalでロン・チュウと対戦する原口は、いわばレスリング一本槍のMMAスタイルを今回の決勝まで全うすると断言。MMAファイターとしての底上げは、UFCとの契約後であることを明らかとした。

なおRoad to UFCバンタム級決勝はシャオ・ロンの負傷欠場で不成立、フェザー級はリー・カイウェンが4.5ポンドのリミットオーバーとなっている。

■2023年原口伸戦績

2月12日 Grachan59 X BRAVE FIGHT27
〇 1R3分57秒 by TKO 小谷直之(日本)

5月28日 Road to UFC2023Ep04
〇 2R1分25秒 by TKO ウィンドリス・パティリマ(インドネシア)

8月27日 Road to UFC2023Ep06
○ 3-0 パク・ジェヒョン(韓国)


──昨年の今頃はGrachanライト級王座防衛戦の準備をしていたかと思います。あの時、1年後にUFCとの契約まで一歩のところにいる自分を想像できていましたか(※取材は16日に行われた)。

「Road to UFCに出ることを目指していましたけど、声も掛かっていない状況で。気持ちとしてはあやふやな感じでした。現実味がなかった、それが本当のところですね」

──対して決勝を控えるだけとなった今の心境を教えてください。

「Road to UFC出場が決まった時から、心のどこかで優勝するもんだと思い、普段の生活から練習への取り組みができていました。なので、ようやく来たかというぐらいの感覚です」

──10月にお兄さんの央選手と対談をさせていただいた時、試合に向けての練習に関して悩みがあって病んでいるという発言もありました(笑)。

「あっ、でも次の日にはケロッとしていました(笑)」

──アハハハ、何なのですか。それは(笑)。

「気楽にはやれてなかったですね(苦笑)。今から思うと、色々と背負ってしまってやりたいこととデキていることが噛み合っていなかったです。僕は完璧主義みたいなところがあると思うので、上手くいかないとモヤモヤしてしまうということはあります」

──12月9日に当初は予定されていた決勝戦ですが、その1カ月少し前に韓国で央選手がRoad FCのグローバルT決勝をキム・スーチョルと戦いました。敗れはしましたが、あの激闘を傍で見て何か得ることはできましたか。

「兄貴という一番近い存在が、キム・スーチョルというメチャクチャ強い相手と対峙する。その緊張感はセコンドでも、味わうことができました。キム・スーチョル選手は普段はニコニコしていて凄く良い感じの人なのですが、試合になると殺気に溢れていて。MMAファイターになって初めて、怖いと感じました。アレを感じ取れたことは良かったです。

その怖いと感じた選手に向かっていく──アニキの覚悟が見えました。あそこは自分が見習わないといけない部分ですね。そこは決勝戦に向けて、良い経験になりました」

──同時になかなか日程がハッキリせず、2カ月ズレたことをどのように捉えていますか。

「僕にとってはプラスです。一番大きなことは開催地が上海からラスベガスになったことですね。米国はホームではないですけど、アウェイでもない。中立の場所なので」

──十数時間の飛行機の旅、時差もある。それでもベガスの方が良いと。

「ラスベガスと聞いて、『良しッ!』ってなりました。ラスベガスはMMAのメッカですし、意識しないところでテンションが上がっていたと思います。経験という部分では相手の方がずっとあって。だからこそ、この2カ月という時間は少しでも詰めることができたと思いますし」

──対戦相手のロン・チュウですが、準々決勝と準決勝の試合を見返して思っていた以上に手強い選手だと思うようになりました。

「Road to UFCから見るようになって1回戦は強烈なKO勝ちをして、強さを見せて準決勝は判定で手堅く勝っていた。最初は韓国人選手をマークしていたのですが、ロン・チュウの方が全然強いですね(苦笑)。

それでも全然、負ける気はしないです。なんか燃えていますね」

──テイクダウン対策は徹底してくると思います。

「得意なのはバレていますよね。すぐに行ってダメなら、我慢するのも手かと思っています。打撃戦につき合うということではなくて、動いてタイミングをずらしてテイクダウンへの意識が薄まった時に一気に狙う。切られて、そのまま続けるとそこは防がれるので、そういう風に戦おうかと考えていますし、練習もしています。

ただし自分のテイクダウンは初速なんかは、普通のMMAファイターと違うと思っています。だから、基本は切られないと考えています。でも相手が準備をしているところで仕掛けると切られます。準決勝では、相手が準備しているのに仕掛けて切られたので……言ってみれば、プレッシャーをかけても仕掛けない。そこで相手が出てきたところで、仕掛けるとかタイミングに変化を持たせようと思います」

──組んで倒しても、立たれる。だから、組みは淡泊になり打撃戦が多くなるのも今のMMAです。組み技は疲れるという意識を持っていますか。

「疲れます。でも、自分の武器なので。最後は離れると死ぬぐらいの意識でやっています。それでも無理から打撃をするよりも、組んでいる方が……そうですね、体力的には疲れますが、気持ちは一切折れないです。そこで相手が嫌がるような素振りを見せれば、また元気になりますし」

──UFCでは準決勝の動きだと、切られるだけでなくパウンドを打たれるかと思います。今回はその辺りも意識することはありますか。

「次の試合はトーナメントの決勝ですし、今持っている強さをぶつけます。勝ちに徹するというか、全てをぶつけて戦います。そうなると、これまでやってきた打撃の展開になることもあるだろうし、結果的にそうなれば先を見越していることになるかもしれないですね。理想は倒して殴る。でも、パウンドでは隙間ができてスクランブルに持ち込まれるので、エルボーとか密着して打つ方向で考えています。

テイクダウン後の相手の処理が上手いと、テイクダウンから後の勝負になります。テイクダウンは取れるので。意識は倒した後、そこから何をやるのかは3パターンほど用意していて、そのうちのどれかを当てはめる。相手の動きとかでなく、そこにはめ込みます」

──契約することがデフォルトとして、2024年はどのような活動をしていこうと考えていますか。

「それこそUFCを契約した後は、MMA選手として完成度を上げていきたいです。だから契約した後は、少し時間を空けるかもしれないですね。UFCデビューは夏から秋、その前に海外で練習もしてみたいです。トーナメント中は勝つ事に集中してきたので、終わればMMAを楽しめる時間も創りたいと思っています。幸い、今回の試合でビザも取れ、アッチで練習する障害はなくなったので米国──キルクリフFCとかで練習したいですね。また、しっかりと考えますけど、MMAを……知らない世界を味わいたいです」

──そのためにもロン・チュウ戦、クリアしてください。

「ハイ。一部では厳しいとか言われているようですけど、僕は勝つことしか考えていないです。そうやって自分を信じ込んでいるので、それを当日にしっかりと見せることができれば……と思っています」


■視聴方法(予定)
2月4日(日・日本時間)
午後1時30分~UFC FIGHT PASS
午後1時15分~U-NEXT

■Road to UFC2023 Final計量結果

<Road to UFCライト級T決勝/5分3R>
ロン・チュウ: 156ポンド(70.76キロ)
原口伸: 155.5ポンド(70.53キロ)

<Road to UFCフェザー級決勝/5分3R>
リー・カイウェン: 149.5ポンド( 67.81キロ)
イー・チャア: 145.5ポンド(66.0キロ)

<Road to UFCフライ級決勝/5分3R>
鶴屋怜: 125.5ポンド(56.92キロ)
チーニョーシーユエ: 125.5ポンド(56.92キロ)

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45 MMA MMAPLANET MMAとフィジカル o ONE Special UFC YouTube   ライカ 体組成 鈴木陽一

【Special】『MMAで世界を目指す』第3回:鈴木陽一ALIVE代表「体組成とフィジカルのバランス」─02─

【写真】2009年の段階で鈴木社長はすでに、MMAではなく柔術で戦っていた杉江アマゾン大輔とフィジカルトレーニングに取り組んでいた(C) SHOJIRO KAMEIKE

世界的なスポーツとなったMMAで勝つために、フィジカル強化は不可欠となった。MMAPLANETでは「MMAに必要なフィジカルとは?」というテーマについて、総合格闘技道場ALIVEを運営する鈴木社長=鈴木陽一代表が各ジャンルの専門家とともに、MMAとフィジカルについて考えていく連載企画をスタート。MMAとフィジカルについて考える連載第3回目は、MMAに必要な体組成とフィジカル――さらにジュニア世代のMMAについて考える。
Text by Shojiro Kameike

<連載第3回「体組成とフィジカルのバランス」Part.1はコチラ


――この10~20年間でMMAや柔術、グラップリングでもトレーニング内容は大きく変化してきました。

鈴木 以前はフィジカルといえば、スパーリングの中で培うものでした。しかし今は、たとえばスパーリングをやるためのフィジカルトレーニングがある。体組成も単なる減量ではなくフレーム=骨格に合った筋肉量や体脂肪率を探す。そういった面でも、だいぶ科学的になりましたね。あと体組成を考える場合、MMAはキャリアの中で――野球やサッカーでいうとポジションを変更できることは大きいと思いますよ。

納土 確かにそうですね。

鈴木 野球でいうと中学、高校、大学とピッチャーで鳴らしていた選手が、プロになってからヒジを壊してバッターに転向する。MMAの場合は、その転向が短期間で可能なわけです。二十代はストライカーだったけど三十代になったらグラップラー、というケースがありえる。すると体組成的にもフィジカルトレーニングの内容を変えていかないといけません。

たとえば十代、二十代の時にストライカーの場合はビジョントレーニング(動体視力のトレーニング)や200メートルダッシュ、SAQ(スピード、アジリティ、クイックネス)のトレーニングを行う。三十代になったら柔術とかで、手順を踏んだ寝技を覚えたりとか。そうして瞬発系より持久系のトレーニングに移行していきます。

アライブでは杉江アマゾン大輔がそうでしたね。先日、ウチの道場生から懐かしい話をされたんですよ。私が20年前に杉江アマゾン大輔と坂道ダッシュをやったり、ハートレートモニターを付けて心拍数を測ったりしていたことが雑誌で紹介されていたこととか。

当時のSAQトレーニング風景。柔術界では珍しかった(C)SHOJIRO KAMEIKE

――当時のアマゾン選手はMMAでなく柔術に集中しており、柔術家の中でもラダートレーニングを取り入れたりしていたのは珍しかったです。

鈴木 杉江の場合はラダーと坂道ダッシュといったトレーニング内容が、400メートルダッシュに変わったりしていました。年齢的なフィジカルの変化は、MMAでは十分にありえます。逆に言うと、同じトレーニングをしていてはダメなんですよ。若い頃はウェイトトレーニングをバリバリやっていて、キャリアの終盤に階級を落とすというのは、実は理にかなっている面もあるわけです。

MMAの場合、実施されている階級の体重幅が大きい。そのために無理に筋肉量を増やしたりとか、無理な減量をする場合がある。やはりトレーナーと選手本人が、体脂肪計などを利用しながら体組成を考えないといけないと思いますよ。

あとMMAは下のポジションになることがある競技です。筋肉量という意味のフィジカルにおいては、ベンチプレスとかレッグプレスなどを行う。また、組み合うのでローイングなど、ウェイトトレーニングで自分の限界値を上げていく必要がありますね。

――テイクダウンされた選手が、ボトムからスクランブルに持ち込むためには重要です。

鈴木 そうです。バランス感覚、調整力を持ったうえでプッシュ力とローイングの力を鍛えるためには、ウェイトトレーニングしながらのレスリングトレーニングが必要になります。他のフィジカルトレーニングは400メートルダッシュや器械体操など、自分の体重をコントロールできるものを基準にしたほうが分かりやすいですね。

納土 そもそも減量自体が、身体への影響を考えると良くない行為です。特に過度な減量は腎機能に大きな影響を及ぼしてしまいますから。人体の成長よりも、内臓に障害を及ぼしてしまいます。

ちなみに減量に関する効果を調べてみたところ、2022年のMMAでUFCファイターのうち616人のデータを集めた研究結果があります。その結果によると公式計量前の72時間以内に総体重の7パーセントを落とし、計量後から試合までに総体重の10パーセントが増加しているそうです。あくまで統計的には――ですが、この期間と体重幅は腎機能に影響を及ぼすと思います。

鈴木 筋肉と内臓は、脱水が体重の4パーセントが起きた場合、24時間ほどで筋肉と内臓に水分が戻ると言われています。しかし脳と脊髄に水分が戻るには、48時間は掛かるそうです。それがMMAの場合平均7パーセントということは、計量の24時間後の試合時には脳か脊髄に水分が足りない。となると、頭部への攻撃が効きやすい状態にあるわけです。そのためにも体組成を考慮し、減量時の脱水は4パーセント以内に収めたいところですよね。

理想としては、通常時は体脂肪率が低い状態でいてほしいです。ライト級のファイターであれば、通常は74~75キロぐらいで練習し、計量は汗や排泄物などを中心に脱水を4パーセントまでに抑える。試合の時も戻すのは5キロくらいですか。

――ハイドレーションテストを導入したONEの階級制と計量システムは、その点を考慮したものですね。

納土 ただ、それはそれで抜け道を探す選手も出て来ます。ちなみに体重を減らしすぎた選手は、試合で負ける可能性が高いというデータもあります。もちろんデータの集計方法次第で、減量幅が大きくても増加幅も大きい選手のほうが勝率は高いというデータも出すことができてしまうんです。それよりも、まず減量という行為自体について考えたほうが良いのではないでしょうか。

鈴木 昔、ハイパーリカバリーという方法が流行りました。ライト級の選手が試合当日は80キロまで体重を戻す――とか。しかしハイパーリカバリーをやっていた選手の多くは、選手寿命が短くなっていますからね。これは重要だから繰り返します。技を教えるインストラクターとかトレーニングを教えるトレーナーではなく、選手に寄り添うコーチとしては、競技寿命や引退後の生活のことを考えなければいけないんです。

――減量と勝率については、いかがですか。

減量が勝敗に直結するのではなく、減量により練習時間が減ることで勝敗を左右する、といえる(C)ALIVE

鈴木 コーチの視点から考えると、減量幅が大きい選手は試合直前、減量に集中してしまいますよね。我々としては、たとえば試合2週間前にハードスパーを終えた場合、試合直前まで確認作業を行いたいです。しかしその時点で落とす幅が大きい減量に入っていると、確認作業ができずに勝率も落ちると思います。その点でも体組成とフィジカルを考えると、通常体重から体脂肪率を10パーセントほどに抑えて、試合直前の脱水も4パーセント程度に抑えるようにする。すると試合直前の知的作業ができるようになるわけですね。

ラグビーやサッカー、いわゆるコンタクト系スポーツは休養を3~4日取れば、試合に迎えると思います。しかしMMAで多いのは、最後の最後まで脱水を行うと試合までに回復しない。体の回復もしていないし、技の反復確認もしていないでは、勝率も下がるのも当然ですよね。

逆に、体重が増えると強くなったと勘違いする選手もいます。それはそうですよ。スパーリング相手に掛かる負荷が違いますから。でも、それは強くなっているわけではない。やはり通常体重で試合に臨むと、一番パフォーマンスは高くなります。

納土 サッカーでは減量して試合に臨む人はいないですからね。

鈴木 そう考えると体組成という部分は、普段から試合を想定した体脂肪率であるべきかと思います。よくショートノーティスで試合に出場する選手がいますよね。むしろ体組成は、ショートノーティスでも試合ができるようにするべきなのかな、とも考えます。

リミットから10キロオーバーしている選手は、ショートノーティスでオファーを受けても「その期間で体重は落とせない」と言います。それは逆で、たとえば1カ月前のオファーならトレーニングで1~2キロ、脱水で3~4キロを落としてリミットまで到達する状態を保っておくほうが良いんですよ。

通常体重増やしすぎない、体脂肪を増やしすぎないようにしておく。そのためには普段の食事から考える必要もありますので、次回は管理栄養士さんと一緒に、「身体をつくるために必要な栄養」について考えていきます。

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45 AB K-1 MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK07 Special YA-MAN   キック クレベル・コイケ パトリシオ・フレイレ フアン・アルチュレタ ボクシング ライカ ヴガール・ケラモフ 平本蓮 斎藤 海外 金原正徳 鈴木千裕 鈴木博昭

【Special】J-MMA2023─2024、鈴木千裕「僕が突き抜ければ、日本のRIZINが世界のRIZINになる」

【写真】とにかく外連味のない返答が連続しました(C)MANABU TAKASHIMA

2024年も早くも1カ月が過ぎようというなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、こらからの1年について話してもらった。
Text by Nakamura Takumi

J-MMA2023-2024、第十八弾はRIZINフェザー級チャンピオン鈴木千裕に話を訊いた。

クレベル・コイケ戦の一本負け→ノーコンテスト後、スクランブル出場の154ポンド契約体重戦でパトリシオ・フレイレをKOして世界を驚かせ、ヴガール・ケラモフを下からのパウンドで倒し世の中を震撼させたRIZINフェザー級チャンピオンは、徹底して本物に拘り、世間を騒がせる平本蓮をぶった斬った。そして──これからも二刀流で世界を構築することを高らかに宣言した。

■2023年鈴木千裕戦績

6月24日 RIZIN43
──1R2分59秒 by 腕十字 クレベル・コイケ(ブラジル)
※クレベルの体重超過により、ノーコンテストに

7月30日 Super RIZIN01
○ 1R2分32秒by KO パトリシオ・フレイレ(ブラジル)

11月4日 RIZIN LANDMARK07
○1R1分28秒by KO ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)


──最初にお伺いしたいことは、12月10日の渋谷での会見です。アレを視た千裕選手が激高していると、実は山口(元気)会長から電話を頂いて……。「もうRIZINには出たくない」まで言っていたとか。

「あぁ……あの時は、ですね(笑)。僕のなかで大晦日って1年の締めくくりだと思ってきたんです。明確なリーグ戦ではないけど、この1年間に結果を残して……一番優秀な結果を残してきた人間のステージだと。アレを視るとそうじゃなくなっていたので、なんか方向性が変わったのかなって。『俺、こんなの出たくない』って思っちゃったんですよね。でも僕以外でも皆、思っているはずですよ」

──その大晦日、5月6日(※後に4月29日に変更)に金原正徳選手の挑戦を受けることが発表されました。

「ハイ。結果を残したヤツが出られるのが、大晦日だと勝手に僕が思っていただけで。そうじゃなくても大晦日の大会に出られるもんなんだと。それは、それで良いです。そっちの枠はそっちの枠で盛り上げてもらって、本物枠がちゃんとあった。本物枠で僕は頑張れば良い。そっちの枠がないと、そっちの層には見られない。本物枠がないと、こっちの層が見なくなる。そういうバランスの上で、大晦日は成り立っている。

あの時は腹が立ちましたけど、僕らがやっている格闘技は結果が出る。本物しか残らないですからね。だから本物枠でない奴が、本物に突っかかって来るなら──もう、殴るしかない(笑)。僕が思う本物じゃない格闘家とは、100回やったら100回勝てるって思いますね」

──その千裕選手が本物でないとした選手が、ここでMMAに本気になってくれるのか。

「皆、それで勝つ人は勝ちますし。不思議なことに口で盛り上げても、試合内容は面白くない。もう答えは出ています。だから、俺がRIZINを世界にすれば良い。本物じゃないヤツらが入ってこられない、強い外国人を日本に呼んで戦う、そうなっていけば良いと思っています」

──ズバリ、平本蓮✖YA-MAN戦はどのように映ったのでしょうか。

「あれはキックボクシングで(苦笑)。実際に平本はMMAの選手に勝っているわけじゃなくて、キックボクサーに勝っているだけで。だからMMAファイターとは言えないんじゃないですか。MMAファイターは弥益(ドミネーター聡志)さんだけで。弥益さんとの試合は頑張ったと思います。でも、怪物君(鈴木博昭)、YA-MANとの試合はほぼキックボクシングで。荻原(京平)選手、斎藤(裕)選手とMMAの選手には勝てていないわけであって。でも世間は分からないですよね。だから、別に構わないですよ」

──YA-MAN選手はしっかりとMMAの練習をしてきたと思いました。腕を差して、胸を合わせて体を入れ替えるとか。一朝一夕ではできないだろうと。

「あっ、そうッスね。でも、当たり前ですよ。していなかったら、失礼ですよ。それが仕事なのに。そうじゃないのが目立つから、当然のことをやっているだけで、しっかりとやっていると思われる。普通に新人王トーナメントですよ、アマチュアの。皆、言わないだけで心の中ではそう思っていますよ」

──そうですか!! いや平本✖YA-MANはあの距離で一定の時間、打撃戦を続けるという点において、組み技主体の日本のMMAファイターが越えないといけない壁と感じていたので感心して見てしまっていました。

「だって、MMAだから組めば良いわけで」

──組んで倒せない時、あの距離で戦うのが世界ではないですか。両者が外国人選手とあの距離で殴り合えるのか。そういうことを想像していました。

「あの人たちは、組んだら倒せる。それなのにあの距離で打ち合っているだけです。それにパンチ力がないから、怖くない」

──おお、そうなるわけですね!!

「だって一発貰うと倒されるパンチだと、近づけないですもん。でもお互いにパンチ力がないから、あの距離で打ち合っていられる。倒される怖さがないから、打ち合えるだけで。一発で『ヤベェ、殺される』となったら100パーセント、組みに行きますよ」

──去年の今頃、その言葉を聞いても半信半疑だったかもしれないですけど、2024年1月の鈴木千裕が言うと誰も反論できないですね。

「だって一発で殺されるという殺気を持っている相手が目の前にいたら……。例えば片手にメリケンサックをつけた相手と近距離になったら、絶対に組みますよね。どんな素人でも組みますよ。その怖さがないから、打ち合える。僕はその違いだと思いますよ。

クレベル(コイケ)選手とか、絶対に極められるという恐怖があるから皆、組まないじゃないですか。その恐怖心があるから、僕もいけなかった。その逆で、クレベル選手の打撃ができるバージョンだと皆、組みにいく。あの2人は、そういう怖いモノを持っていない。

別にパンチも強くないし、寝技もできないし、レスリングもできない。ならポコポコ打ち合うしかない。そうじゃなくて堀口(恭司)選手と神龍(誠)選手の試合は、組みがあって打撃もできるから面白い試合になる。展開が波打つので。

じゃあ、平本選手とYA-MAN選手の試合が波打っていましたか。打ち合って、ツー。ハイ、終り──だけ。それならキックで良くないですか」

──平本選手はポテンシャルが高いという見方をされますが、その辺はどのように思っていますか。

「ポテンシャルは皆が持っています。別に練習していないわけじゃないし、1日毎に1ミリずつでも強くなっている。だから全員にポテンシャルはあって、彼が特別なわけじゃない。全員にそれは言えることで。でも、それ以外のところが面白いから皆は買っているわけで。実力だけで言ったら、誰も買わないですよ。でもメディアとか、面白いから買っている。それが答えですよ」

──外連味のない返答が続いて、気持ちが良いです。

「いやぁ(笑)」

──千裕選手はSNSをどのように活用しているのですか。

「やりますけど、そんなにやらないですね。やんないなぁ。言い合いとかは、もうやらないです。そのフェーズは終わりました」

──なるほどです。そして金原選手とのタイトル戦が発表されましたが、5カ月先の試合が決まるというのは異例のことかと。

「僕自身はいつ戦うのかっていうことは、特に考えていなくて。その時期で要請されたので、『はい。やりましょう』と」

──この期間、どのように過ごそうと思っていますか。試合があれば、大好きなお金も入ってくるじゃないですか。

「アハハハハ。ハイ。本当は3月にキックの試合をやるつもりでした。3月、5月、6月、8月と試合がしたかったです。試合には出たいですよ。でも、もうそうはいかないので。それにチャンピオンになれば1試合、1試合に価値が生まれます。歴史に残る試合しかしたくないし、以前のようにポン・ポン・ポンと試合をすることは、もうできないんだなと思います。団体のチャンピオンは顔であり、看板です。誰とでも軽々しく戦うのも違うな、と。

だから金原選手との試合まで、もう練習だけですね。3月に入る前まではフィジカルに力を入れて、そこから競技練習を多めにしようと思っています」

──金原選手との試合はこの間にまた話を伺う時が来ると思います。なので今日は2024年の展望として、凄く気が早い話になってしまうのですが──金原選手との試合後は、どのような青写真を描いていますか。

「去年より1ミリでも前に進めればと思っています。チャンピオンになると応援してくれる方が増えます。良い人も、悪い人も増えます。加えて練習がなかなかできなくなる。そういう練習以外のことを如何に必要、不必要と分けることができるか。そこがポイントになってくると思います。

以前、魔裟斗さんと対談をさせてもらった時に、『俺はチャンピオンになって、メディアに出るようなると少し練習をしなくなった。ベルトを取られて、もう一度やり直そうとそういうことを止めて、練習をやりなおしてチャンピオンに返り咲いた』と言われていて」

──ハイ。

「そういう先人の言葉も聞かせてもらっています。僕も分かるんです、テレビに出たりメディアで露出している方が練習より楽しいです。だからこそ、練習をしないといけない。練習に軸を置いた生活をしないと。芸能人じゃなくて、格闘家なので。そこを見失うと、勝てなくなります」

──戦うステージもRIZINのチャンピオンになったので、その座を守っていくということでしょうか。

「そうですね。そこが一番です」

──MMAとキックの両方での活躍というのは、今年も?

「真面目な話、MMAとキックの両方って、皆、やれないですよ。やりたくても、やれない。両方で結果を残すことは、ごく一部の人間にしかできない。それは僕にしかできないと思っているので、そこは楽しもうと思っています。『一本に絞れ』とかいう人がいますけど、『あなた達はキックボクシングの練習をしないんですか?』、『しますよねぇ』、『それで試合に出ちゃいけないの?』って。お前はできなくても、俺はできるから。

ただ、それだけ。何も言うんじゃねぇって。そうやってきたら、結果的にチャンピオンになったわけじゃないですか。誰も文句言わないですよね」

──MMAは絶対的な世界の最高峰が存在していますが、キックは存在していません。キック・ルールの試合でも世界最高峰を目指したいという気持ちはあるのですか。

「そこは……どうなんですかね。今、言われたようにキックには世界最強に関して明確な答えがないじゃないですか。KNOCK OUTのチャンピオンになってもISKAだったり、どこどこのチャンピオンっていう風にチャンピオンがいっぱいる。逆にRIZINはシンプルで、RIZINのチャンピオンになったら日本チャンピオンっていう称号を手に入れることができる。

キックはどこの団体のチャンピオンになっても『K-1とやったら?』、『KNOCK OUTとやったら?』、『どこどことやったら?』って『たら?』がつくんですよ。でもRIZINのチャンピオンになったら日本チャンピオン──で、終わりなんですよ」

──国内の他のプロモーションで戦うとどうなるのか、という論議にならない絶対的な存在ということですね。

「そうなんです。他に競い合うことがない。キックは団体数が多すぎて……それを纏めるのは、僕なりに……KOすることだと。KO勝ちを続けて、『千裕選手、どこにいっても絶対にチャンピオンになるよね。どこにいっても誰も敵わないよね』って言われるようになれば、それが世界一だと思っています。回りを納得させるのが一番。

よく言われるじゃないですか、『ムエタイ・ルールだったら…………』って。でもブアカーオって昔、K-1最強って言われて、ムエタイでも最強って言われた。だから誰も勝てないですよ。でもヒジ有りができない選手が『ヒジ有りだとブアカーオに勝てないけど、K-1ルールだったらぁ』とかいうじゃないですか。そういうことを言わせなくするのが、やっぱりMMAのチャンピオンであり、キックのチャンピオンであること。それが世界一だと僕は思っています」

──千裕選手の言葉を借りると、今はMMAで日本チャンピオン。では世界チャンピオンを目指すことに関して、どのように考えていますか。

「それは自分を世界にすれば良い。今は日本チャンピオンですけど、僕が突き抜ければ『日本に最強がいるぞ』って海外から集まってきますよ。そうなれば日本のRIZINが世界のRIZINになる。現になっているじゃないですか。僕と戦いたいと言っているのはクレベル選手、ウガール・ケラモフ、フアン・アルチュレタ、パトリシオ・フレイレ。全員、外国人選手なので、勝手に世界に変わりつつある。KNOCK OUTもそうですよ、外国人選手が入ってきている。

だからKNOCK OUTもRIZINも世界になりつつあるんですよ。僕のなかで、僕は世界との戦いになっているんで。だから、それで良いんですよ」

──押忍。ところで、KNOCK OUT UNLIMITEDルールというのがあるのですが……。

「ハイ、知っています(笑)」

──ストライカーがMMAに転じる前にワンクッションを置くルールであると同時に、全局面の打撃が見られるルールをどのように思われていますか。

「凄く良いです。危険なところもあるし、皆が見たいところが凝縮されているというか。組んでアタックはできるけど、寝技の攻防がない。一般の人が見ても、面白いと思える究極の形なのかなって感じはしますよね」

──6月大会で2000万積めば、千裕選手の出場があるかも──と呟いている人の姿を見かけました(笑)。

「3000万でーす。アハハハハハ」

──ハハハハハ。今日はありがとうございました。また金原戦について話をお伺いに来ますので、宜しくお願いします。

「ハイ。また、お願いします!!」


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【Special】『MMAで世界を目指す』第3回:鈴木陽一ALIVE代表「体組成とフィジカルのバランス」─01─

【写真】一般会員さんからアマチュア、プロ選手に至るまで個々の違いを考えることが重要だ(C) ALIVE

世界的なスポーツとなったMMAで勝つために、フィジカル強化は不可欠となった。MMAPLANETでは「MMAに必要なフィジカルとは?」というテーマについて、総合格闘技道場ALIVEを運営する鈴木社長=鈴木陽一代表が各ジャンルの専門家とともに、MMAとフィジカルについて考えていく連載企画をスタート。MMAとフィジカルについて考える連載第3回目は、MMAに必要な体組成とフィジカル――さらにジュニア世代のMMAについて考える。
Text by Shojiro Kameike

<連載第1回「MMAに必要なフィジカルとは?」Part.1はコチラ
<連載第1回「MMAに必要なフィジカルとは?」Part.2はコチラ
<連載第2回「MMAに適した体組成とは?」Part.1はコチラ
<連載第2回「MMAに適した体組成とは?」Part.2はコチラ


――MMAに必要なフィジカルについて考える連載、第3回目のテーマは前回に続き「体組成」です。今回は体組成についての理解を深めるために、体組成とフィジカルのバランスについて考えていきたいと思います。今回は連載第1回目にご登場いただきました、理学療法士の納土真幸さんをお招きしています。

鈴木 よろしくお願いします! まず今回のテーマのポイントは、体組成——筋肉量や骨密度、組織の強さには休養と栄養が必要だということです。簡単に言うと、身体づくりのためには練習しすぎも良くないし、ちゃんと栄養も摂らないといけないんですね。なぜ改めてこのお話をするのかといえば、やはり競技を続けていくうえで年齢的な変化があるためです。

――普段からトレーニングしているファイターであっても、年齢を重ねると体力が落ちたり怪我が治らなくなったりしますね。

鈴木 はい。その対策として、体組成の観点からは筋肉量を増やして体脂肪を減らし、骨密度を高める。トレーニングで瞬発力、有酸素能力、耐乳酸性能力、筋力を上げたりする。さらに運動する一方で、身体に休養と栄養を与えて、脳と筋肉と内臓を回復させないといけません。年齢を重ねていくと、回復が遅くなっていくという問題があります。

30代に入ってから20代のイケイケの時と同じ体組成をキープするのは大変ですよ。しかし選手活動を続け、かつ勝率を上げるためのフィジカルと体組成を考える場合、やはり年齢的な回復力の遅さという問題に着目しなければいけない。トレーナーとして選手活動を長期的に考えた場合、いかに良い栄養と休養を与えて、良い体組成をつくるかという部分が重要になってきます。

もちろん日頃から体重を増やしすぎないことも重要です。通常体重が5キロ増えると、それは5キロの鉄アレイを持って動き回るのと同じですよね。するとヒザ腰など関節靭帯への負担が大きくなります。

――MMAは30代に入って花開く選手もいますし、選手寿命も長くなりつつあります。その要因としては、身体づくりの進化もあるのでしょうか。

納土 近年の傾向でいえば、スポーツ界全体で選手寿命は伸びていますよね。特に顕著なのはサッカーで、30歳を超えても競技を続けられる人が増加しています。最も大きな要因としては、スポーツ医学の普及が挙げられます。特に栄養管理については、選手が個別に管理栄養士をつけることが増えていて。サプリも普及し、疲れにくく怪我をしにくい体づくりを意識する選手が増えてきたことは事実です。インターネットの普及により、海外選手の体づくりに関する情報も入ってくるようになったとは思います。

鈴木 選手のスポンサーにも、サプリメーカーさんが増えてきたじゃないですか。たとえば久米鷹介の場合は『ゴールデンミッション』という、世界的なダンサーさんが開発したリカバリー系のプロテインを提供してもらっています。あとは接骨院、鍼灸、カイロプラクティック・マッサージ師さん、酸素カプセルスタジオのオーナーさんのサポートがあったり、管理栄養士さんを付ける選手も増えてきました。いわゆる栄養と休養、そしてリカバリーの知識も上がったし、実際にその方法が目の前にありますよね。昔なんて、スポーツ専門の栄養士さんは東京にしかいなかった。でも今は全国的に増えていますしね。それだけ体組成に関しても、長期的な視点で考えることができるようになりました。

――長期的な視点というのは、どれくらいの期間で考えるものなのでしょうか。

鈴木 私の場合は10代の選手が道場に入ってきた場合、親御さんの体型を見たりしますよ。よく引退した後に太ったり痩せたりする人がいるじゃないですか。それは遺伝的体質もあって。だから親御さんが試合の応援に来た時、その体型を見て「この選手は10年後、こういう体型や体質になるかな」というところまで考えます。たとえば竹本啓哉の場合、彼のお父さんはラグビー選手なんです。

納土 えっ!? そうなんですか!

竹本啓哉に関する意外な情報が――(C)MMAPLANET

鈴木 意外でしょう? 竹本の場合は性格とかビジュアルのおかげで、のんびりしてそうに見えたりしますよね。でもお父さんはバリバリの有名なラガーマンで、実は竹本も体が強い。加藤久輝のお父さんも柔道でフランスに派遣される選手だったから、お父さんに似て先天的に身体が強いのではないかと。するとゴールデンエイジ――運動神経が伸びる成長期のトレーニング量によっても、年齢を重ねた時の回復の度合いも変わってきます。もともと運動する習慣がある子は、成長期を超えて大人になっても体の使い方が巧かったり、トレーニングや試合後の回復が速い傾向にはありますね。

高校生の段階で運動をしているかどうかで、大人になってからの体質も変わります。道場を25年間やってきて感じているのは、コーチはその選手の幼少期から、家族の体型も見たりして将来的な体組成の変化まで考えて指導するほうが良いということ。私も選手の5年後を考えて、「今はウェイトをやらないほうが良いかな」とか考えたりします。

――これは話が逸れるかもしれませんが、子供の頃に激しい運動や減量をやらせないほうが良いという意見もあります。たとえば幼少期から格闘技を始め階級制のスポーツに取り組んでいる子たちの中で、減量させすぎると身長が伸びない等……。長い目で見た場合、子供の頃から体組成を理解せずに減量をさせると、身体の成長に悪影響を及ぼすのですか。

納土 一概には言えませんが――軟骨が育ってくる成長期の段階で、反復する動きが多い競技をやっていると、負荷の集中する箇所の怪我は多くなります。成長期の運動によって身体が出来上がっている子と出来上がっていない子、分かりやすく言えば身体が強い子と弱い子が分かれてくる。結果、スポーツは好きだけど身体が弱い子というのは頑張りすぎてしまい、腰椎分離症(疲労骨折が原因と考えられ、成長期のスポーツ選手に多く見られる)になるケースも多いですよね。

鈴木 格闘技でも中3から高1ぐらいで道場に通い始めた子で、腰椎分離症になってしまう場合も多いですよね。コンタクトスポーツだから、まだ身体が出来上がっていない段階で大人と当たることも多いですし。アライブの場合は若い子が道場に入ると、まず柔術から始めてもらうことが多いです。柔術を通じて、ゆっくり身体の使い方を覚えてもらいます。

納土 そういった練習は、身体を休めながら行うことができますよね。指導者が選手に対して、しっかり休むことを伝えられるかどうかで変わってきます。その点がスポーツ強豪校の部活動は違っていて……選手を休ませない学校が多いです。

鈴木 高校生にとって部活動は3年間ではなく、実質的に2年間ですよね。高3の前半で部活動を引退したりするので、それまでに実績を残すために2年間で凄くハードなトレーニングを積むことになる。

納土 それだけトレーニングして、実績を残さないと先がなくなるから仕方ない面はあります。

――高校スポーツの多くはトーナメント制です。高校野球でいえば甲子園で一回負けると夏が終わってしまうので、その是非を問うのは難しい面もあります。

鈴木 2~3月生まれの子なんて、高1といってもまだ中学生と変わりませんから。同じように高1の選手向けのトレーニングを課すのは過酷ですよ。あと日中の気温が40度にもなるのに、そんな炎天下の中でトーナメントを戦うとか。

納土 そのために中体連(中学校体育連盟)の解体が検討されたり、小学校の全国大会が無くなるというのは、選手のことを考えると仕方ない面はありますね。

ジュニアBORDERで活躍中の須田雄律の父、智行氏も「ジュニアの間はあまり減量をさせない」と語っていた(C)MMAPLANET

鈴木 今MMAでもキッズやジュニアの大会が増えているので、その点は注意したほうが良いと思います。ただしMMAの場合は部活動ではないぶん、長期的に考えることができる点が違いますよね。やはり成長期の子たちは、休ませる時は休ませないといけない。

アライブでも体組成を考えた時、長期的なダメージを受けないように結構休ませています。ベテランのプロ選手からは「社長は甘い」とか「休ませすぎ」と言われることもあるけど……。40代前後で負傷があり、日常生活に支障をきたしている例もありますから。指導者として、そういった選手の姿はもう見たくない。

言葉として「トレーナー」とは、トレーニングを教える人のことをいいます。「インストラクター」というのは、インストラクション=やり方を教える人です。一方、コーチは語源が「寄り添う人」なんですよ。我々は「寄り添う人」として、選手の競技寿命や競技年齢を考えながらフィジカルを考えることは大事だと思っています。

<この項、続く>

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45 MMA MMAPLANET o RIZIN Special UFC UFC290 UFN UFN218 UFN233   エドガー・チャイレス カーロス・ヘルナンデス ジョシュア・ヴァン ヘスウ・アギラー ライカ 堀口恭司 平良達郎 朝倉海

【Special】J-MMA2023─2024、平良達郎「堀口選手と交わる可能性もゼロじゃないんだ」

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【写真】我々にとって楽しみな試合が増えるということは、平良にとってタフな試合が増えるということ。2024年、平良はどこまでランクが上がるのか楽しみでならない(C)ZUFFA/UFC

2024年も早くも1カ月が過ぎようというなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、こらからの1年について話してもらった。
Text by Nakamura Takumi

J-MMA2023-2024、第十七弾はUFCでも5連勝し、ついに待望のランキング入りを果たした平良達郎だ。

UFCでの戦いも2年目を迎えた平良。ランキング外の選手たちからきっちりと勝利を重ね続け、そのレベルの選手たちには「負けないという自信が確信に変わった」1年を過ごした。本格的にスタートするランカーたちとの戦いに向けて、平良は何度も「ワクワクする」という言葉を使った。またUFC参戦を意思表示した堀口恭司や朝倉海についても訊いた。

■2023年平良達郎戦績

5月6日 UFN218
○1R4分20秒by 腕十字 ヘスウ・アギラー(メキシコ)

7月8日 UFC290
○3-0 エドガー・チャイレス(メキシコ)

12月9日 UFN233
○2R0分55秒by KO カーロス・ヘルナンデス(米国)


――2023年も3戦3勝と負けなしで終えた一年でした。平良選手にとってはどのような1年でしたか。

「UFCファイター、MMAファイターとして経験を積ませてもらった1年でした。戦ってきた相手はみんなランキング外。僕の方が有利と見られるような相手で、挑戦というよりも実力を証明する試合だったかなと思います」

――しっかり勝たなければいけない相手、勝って当然という気持ちもあったのですか。

「勝って当然というよりは、負けられない気持ちがありましたね。ずっとランキング戦をやりたいと言っている手前、ランキング外の選手に負けると、僕の言葉が軽いものになってしまうし、ここでこけたらまずいなという想いが毎試合ありました」

――一年を通じて自分ではどこが一番成長したと思いますか。

「自分のスキルを心から信頼できるようになったというか。UFCに初参戦した2022年は『世界はどのくらいなんだろう?』とか『フライ級の中でもどのくらいの立ち位置にいるんだろう?』というのが分からなかったのですが、UFCで5戦やってみて、UFC以外の他団体でベルトを持っているけど上位に入っていない選手には負けないというのが自信から確信に変わりました。今年はそれを持って上のレベルの選手にアタックしていきたいです」

――では前回12月のカーロス・ヘルナンデス戦を振り返っていただけますか。

「あの試合は米国にいるときに決まったんですけど、決まった瞬間から練習と試合でやることをリンクさせるように意識していました」

――試合でも練習でやっていることと差がないものをできた、と。

「はい。まさに練習通りに進んだと思います」

――個人的にはスタンドの重心が安定して、プレッシャーがよくなったように見えました。

「打撃に関しては変えないといけない部分が多くて、まだ変わりきっていないと思うんですけど、そこが試合では変わっているように見えたのかなと思います。僕自身はあとで振り返って『こんな打撃をやっていたんだ』と思いながら見ていて、自分の変化をあとで振り返ってみて気づくんです。細かいですがフェイントをかけて相手の反応を見たり、ディフェンスも徹底的に意識しているので、打撃の交錯そのものは多くなかったですが、そういった部分が構えの部分に出たのかなと思いました」

――実際に重心を意識した練習は取り入れたのですか。

「バランスや軸のぶれない打撃、そういうことの大切さには気づきました」

――またヘルナンデス戦前のインタビューでは「いかにグラウンドでダメージを与えるかを意識している」と言っていましたね。

「はい。でももっともっとパウンドを打ちたいですし、スクランブルでも上を取ったのに立たれちゃったんで(苦笑)。修正しなきゃいけないことはたくさんあるし、ケージレスリングで進化したところもあるので、それを次の試合を見せたいです」

――さて2024年についてですが、現時点で試合の予定はありますか(※取材は20日に行われた)。

「現時点では決まっていないです。希望としては3月にやりたいというリクエストはしているのですが、もう1月中旬なのですが、そこがどうなるかですね。それに合わせてトレーニングのメニューを決めようと思っています。相手によっては沖縄にスパーリングパートナーを呼ぶ必要もあるし、エレベーション・ファイトチームにも行こうと思います」

――待望のランキング入りも果たし、ここから本格的なチャレンジがスタートすると思います。

「間違いなくランカーと勝負できるという手応えもありますし、それと同時に試合になったら、そこを100パーセント勝つところまでもっていかないといけない。もうひと段階強くならないといけないですし、MMAの幅というかスタンドでもグラウンドでももっと武器と安定感が必要だと思います。だからやることはたくさんですね」

――こうしてお話を聞いていると非常に楽しそうなのですが、これからの試合にワクワクしていますか。

「はい。ここからは誰とやっても楽しいと思うので、今はワクワクしかないです」

――平良選手やMMAPLANETでも取り上げたジョシュア・ヴァンをはじめ、フライ級は下から上がってきた選手も多く、2024年は世代交代含めてフライ級が盛り上がる気がしています。

「ランキング戦が増えれば、ランカーのメンツも変わってくると思うし、入れ替わりが激しい1年になると思って…やっぱりワクワクしています(笑)」

――UFCの舞台で積みたいキャリアとは?

「一番は僕がUFCでベルトを獲る姿を見せたい。僕自身、エリートみたいな人間ではなくて、野球をやっていても人数が少ないチームでスタメンと控えの狭間みたいな選手だったんです。そんな僕みたいな普通の人間が努力やスキルで世界と勝負できること、そしてベルトが撮れることを証明したいです」

――大晦日RIZINで勝利した堀口恭司選手や朝倉海選手がUFCフライ級への参戦を示唆しています。そういった報道を目にして、どんなことを感じていますか。

「もしそういった選手たちがUFCに来てくれたら、UFCを見てくれる人も圧倒的に増えるでしょうし、仮にそうなったとしても、僕がそこでトップを張っていたいという欲はあります。もし戦う時が来たら僕もワクワクすると思います」

――ちなみに両選手の大晦日の試合はご覧になりましたか。

「率直に強いなと思いました。どちらもストライカーで一発がある、世界と勝負できる選手だと思います。ただ自分とやったらどうなるんだろう?というのは想像しますし、UFCに来たらどういうパフォーマンスになるのか楽しみです」

――完全に個人的&ファン目線で言うと平良選手と堀口選手がUFCで向かい合う時が来たら大興奮するでしょうね(笑)。

「ありがとうございます(笑)。実はメディアを通して、堀口選手がUFC復帰も考えているという話を聞いた時は、堀口選手と交わる可能性もゼロじゃないんだと思って、僕自身すごく熱くなったんですよ。これからどうなるか分かりませんが、僕も楽しみにしています」

――日本人選手たちがUFCに参戦してきたとしても、自分がトップでい続けたいですか。

「“日本人の中で”ではなくて“UFCの世界の中で”トップを張っていたいです。そこに日本人選手が絡んでくることがあったら、そこは僕も譲れないですね」


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45 AB ABEMA MMA MMAPLANET o ONE ONE165 RIZIN RIZIN44 Special   ジョン・ドッドソン 三浦彩佳 伊藤裕樹 堀口恭司 山本アーセン 平田樹 扇久保博正 福田龍彌

【Special】J-MMA2023─2024、山本アーセン「選手は分かったと思います。俺が何をやっていたのか、は」

【写真】これから山本の名でMMAを戦っていくのはアーセンだ(C)MANABU TAKASHIMA

2023年が終わり、新たな1年が始まるなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、始まったばかりの1年について話してもらった。
Text by Takashima Manabu

J-MMA2023-2024、第十六弾は遂に覚醒した──いやあるべき力を見せるようになった山本アーセンに話を訊いた。

戦績的には1勝1敗、通算でも4勝6敗と白星と黒星を一つずつ積み重ねたに過ぎない。それでも伊藤裕樹を組みで封じ込んだ戦い、TKO負けを喫したが福田龍彌と打撃でやり合った姿勢から2024年への期待が膨らみまくったアーセンに「爆発する準備」について尋ねた。

■2023年山本アーセン戦績

5月6日 RIZIN42
○3-0 伊藤裕樹(日本)

9月24日 RIZIN44
●3R1分36秒by TKO 福田龍彌(日本)


「俺を蘇らせてくれた將生、リョウ君、ジョーイです」とアーセン

──大晦日、お母さんの美憂選手のセコンドには就いたもの試合出場はなかったです。もう秋口からとある選手の名前、そして違う選手と戦うという話も伝わって来ていましたが。

「これ、全部正直に話しますけど、自分が大晦日に戦おうと思っていたのは〇〇〇〇〇との話があったからです。『よし、よし、よし』と。それが〇〇〇に代わったと伝えられた時に『えッ? そっかぁ』みたいになって。その時、僕が練習でやっていたことは寝技の戦い方を変えることだったんです。RIZINの試合って直ぐにブレイクが掛かるというのがあったけど、『これだけ待ってくれんの?』ってしばらく様子を見ることもあって。レフェリーによって、まちまちで。僕自身戦っていて早いなって思うことがあれば、余裕を持って攻めても良い試合もある。

そのなかで僕自身、固めてパウンドやヒザという攻めから、フィニッシュに持っていく形にしないといけないと思って。その練習をするようになっていました。そんな時に〇〇〇というオファーがあって、以前のように相手を選ばずにどんどん試合をするという選択もありましたよ。でも自分の体をこと考えると、ここはスマートにやっても良いかなって。

ずっと戦うことはできるけど、タイムリミットも考えるようになったなかで〇〇〇戦だと、あまりにも向うにしか得がない試合じゃないのって。その試合のために内臓を痛めて、57キロに落とすメリットは余りにもない」

──最後にお母さんと同じリングで戦うことに、魅力を感じなかった?

「もちろん、ありました。でも、そんな思い出目的だったらコーナーにいて全力でサポートする方が良いと思いました。それがあるから、〇〇〇とのオファーでも受けるって思われてんだろうなぁっていうのもあったので。俺は今まで、誰とでもやりますっていうスタンスだったけど、ちょっと賢く行っても良いだろうと。

自分がRIZINにいるのは、本当に(堀口)恭司さんと戦いたいから。そこに辿り着くまで、俺も上手くやっていって良いだろうと考えました。だから、体のことでなくて対戦相手で断ったのは初めてのことです」

──そこを考える年齢になったということでしょうか。

「考えても良いかなって、思うようになりました。これまで考えないでやってきたので。本当の格闘家なら、侍のように道端で刀を振られれば誰が相手でも応じないといけないんだろうけど。ちょっと違う、自分でいようかと。格闘技の知識、体のダメージの知識もついてきたので効率というものを考えました。結果2024年の戦いに向けて、爆発する準備をしておこうと受けないことに決めたんです」

──断ると、次がなかなかないかも?ということは考えなかったですか。

「だったら、それで良い。それだけ準備期間になるから。ただ、直ぐでなくても絶対に呼ばれるので。だったら、その時にもっと強い自分を見せることができる。俺に不可能はないし、ちゃんとした強さを求めて1試合、1試合をやり切ることにしたので。ちゃんと考えて、土台を創って戦っていこうと思っています」

──それは2023年の試合で、手応えを感じることができたからこそではないのでしょうか。

「結果ではなくて、自分が何をやっていくのが見えました。試合がなくても、練習は続けているし。進化している。試合に入るためのモード創りというモノがあるし。その方程式を見つけたから、試合間隔が空いても次の試合でもっと良いモノを見せることができる。結果でなく、自分が崩れないために必要なモノが見つかったから、ここは賢くやっても良いかと思ったスね」

──敢えて尋ねてさせてもらいますが、9月の福田龍彌戦が賢くないことをする最後の試合だったのでしょうか。

「えっ、どういうことですか?」

──あの距離で打ち合った。あそこで打撃戦を続けることができるなら、テイクダウンにもっと入れることができるのではないかと思った次第です。でも、終盤にいくほど殴り合った。

(C)RIZIN FF

「そう、あれは根性試しです。

打撃のことを知らないでバカバカ攻めて、バカバカ貰っていました。それで俺のなかに恐怖心が残った。結果、怖いのに殴りに行って。今は打撃の原理原則……角度、距離、タイミングとトップファイターが考えているであろうことを考えられるようになったと思います。

相手は打撃の選手。きっと打撃戦に付き合ってくれる。そんな相手と戦うことで、また恐怖がもたげるのかなって。習った知識を全て出すことができるのか、結局習っただけで試合では出すことができない人間で終わるのか。自分が本物のファイターであるのか、そこを確かめたかった」

──カットもあり、被弾もした。そして当てることもできた。そこで、できると確信が持てましたか。

「ビビらなかったし……自分は狙うと頭が止まる。体も止まる。それが弱点で、今直しているところで。でも、やっていることは出せたかなって」

──TKO負けしてまで、そこに拘る必要はあったのでしょうか。2Rで確信して、3Rはテイクダウンを織り交ぜようとかは考えなかったですか。

(C)RIZIN FF

「それをやると、俺は伸びねぇ。

それだとやり切れていない。テイクダウン、正直取れたと思います。でも、そこじゃない。テイクダウンに行かないことで、俺は将来への自信を得ることができたから。ただバコーンと入れて、相手がコーナーに詰まっていても行けなかったのはフックを警戒し過ぎたから。あれは完全に俺の弱さが出ました。的だけ見ていれば、フックは当たらないのに。あそこは跳びヒザをガッツリと極めることができたに違いない。ただ入るとフックが来ると思っちゃって……後ろ足に体重が掛かってしまった。ダメッすよね」

──ビビらないと、それはそれで危ないことですし。

「アハハハハ、メッチャその通りで。真ん中を取らないと。だから試合が終わった時に、バコーンと食らわせたらグラウンドでフィニッシュしないといけないという話し合いをしました」

──ハイ。あそこで下がらず打てると、アーセン選手のテイクダウン能力はグンと上がることが予想できます。

「上がるッスよ(笑)」

──あの距離で打ち合える日本人レスラーは、ほぼ記憶にないです。でも、最高峰にはドンドン打ち合えるレスラーがいます。

「俺はテイクダウンも切れるし。やっていることはお客さんには伝わらなかったかもしれないけど、他の選手は分かったと思います。俺が何をやっていたのか、は。『俺、ビビッてねぇからな』、『俺、組みだけじゃねぇからな』、『お前らをぶっ飛ばす方法なんて、いくらでもあるからな』というメッセージを込めて戦いました。

自分の試合は、次の試合へのストーリー創りでもあって。その場で全てを賭けているけど、それは次の試合に繋がっているんです。伊藤(裕樹)選手との試合で、組み続けた。でも福田選手との試合のテイクダウン狙いは、右オーバーハンドを当てるためでしかなかった。『組めなかった』と言われても、関係ねぇよ(笑)。追いかけるつもりなら、死ぬほど追い続けることはできた。だから次からは『さぁ、どっちだ』って、戦うことができるので。

でも、それも福田選手が相手だから試すことができたんです。日本のトップだから、今の。彼のやりたいところで、やれたから。そんなこと言っても、散らし方は下手でしたね(笑)。テイクダウンを意識させて、殴ろうと思っていたけど。ただ控室にいる時まで、テイクダウンから組み有りきの作戦だったんです。誰にもいわず打撃に切り替えたス。でも、モッサ(秋元僚平)先生と(中村)倫也は状況判断ができて、グラウンドから立ち技に指示を切り替えてくれました」

──まさに以心伝心ですね。

「幼馴染だから、俺の性格も知っている。

だからこそ、打撃で行くと決めて途中で曲げることはできなかったですよね」

──いやぁ、次の試合が本当に楽しみです。

「新しい動きも取り入れているし、楽しみにしてください」

──常々、そして先ほどもRIZINで戦う理由は堀口恭司選手と戦うことと明言しているアーセン選手ですが、堀口選手がフライ級王者になり、扇久保博正選手がジョン・ドッドソンを倒しました。現状、RIZINフライ級トップ戦線をどのように見ていますか。

「そこは放っておいて(笑)。戦(いくさ)と同じで、やらせておけば良い。どうぞ、脳みそを痛めあってください。その間に俺は着々と体も元気にして、チャンスがどんどん広がってくるから」

──その間、実績を残さないといけないわけですが。2024年はどのような選手と戦っていきたいと考えていますか。

「試合云々の前に、この間の大会の時にジョン・ドッドソンと凄く仲良くなって。あの人の普段の優しさと、リングに入るともう眼が違っているところとか格好良くて。アルバカーキに練習に来いって言ってくれたから、ちょっとドッドソンのファイトIQを貰いにニューメキシコに行ってこようかと考えています。

そこを貰えると強くなれるから、『欲しい』と伝えると、『俺で良ければ』と言ってくれて。次の試合はいつか分からないけど、2月か3月か──そこが終わったら、ドッドソンのところに2カ月ほど合宿に行こうかと考えています。そこまでは考えています。

その前の試合に関しては、誰が相手でも良いです。1回、断ってしまったんだから、やれと言われればやります」

──この1年でどこまで行けると踏んでいますか。

「行けたら、神龍(誠)まで行きたいですね。まぁ恭司さんとの試合を見て、強いって言われているけど、そこまでじゃない。逆に恭司さんがベテランっぽい戦い方になったから、ああいう風に戦えたんじゃないですか」

──ベテランらしい戦い方とは?

「冷静さを手に入れたんだと思います。あれだけ練習通りに、ポジションを取って潰すところは潰して戦えるということは。でも、あの試合で2人ともどこが嫌か見せてしまった。それはもう、変えることはできないはず」

──押忍。では続いて1月28日、ONE165で三浦彩佳✖平田樹戦が行われます。

「これさぁ……俺が想うことは全部話します。でも、何を書くかは選んでください。俺、全部話すんで」

──承知しました。

「正直、この試合に関してはどうでも良いって言っちゃアレだけど……日本の格闘技だから」

──格闘技として下品な対戦ですよね。でも、この試合を取り扱うにはそこを抉らないと、意味がない。そこで騒がないと、なんのために組まれたカードが分からない。

「うん、その通り。でも、それが日本のやり方じゃないですか」

──ではアーセン選手のところに、この試合についての取材もきますか。

「そこは『聞くなよ』っていうオーラを出しているから。『分かっているよな』、『察しろよな』って」

──申し訳ないです。察することができなくて(笑)。

「今はオーラを出していないです(笑)。『取材とかあっても話さない方が良い。2人とも傷つくから』って言ってくれる人もいましたけど(笑)。俺は最初から、話すつもりもないし。それに試合が組まれて、どんな形でも注目されるなら彩佳にとってチャンス。向うからしても、チャンス。俺はもう、そういう風に捉えています」

──平田選手と付き合っている時は完全にトレーナーという役割も果たしていたではないですか、練習場所も同じで。一方で三浦選手にはTRIBE TOKYO MMAという居場所があり、導いてくれる人がいます。

「一緒に練習はやっていないです。たまに相手がいない時に打ち込みぐらいはやったけど、それぐらいで。まぁ、お互いに全力で戦ってくれれば良い。どっちも一生懸命やれば良いけど、俺は彩佳側だよってことで」

──コーナーには?

「就かないですよ」

──この試合が組まれそうだと聞いた時、『アーセンがレフェリーをすれば良い』って言っちゃいましたよ(笑)。

「バカヤロー(笑)。自分は基本的にどっちも頑張れ──ですから。皆に良い試合を見せてください。感動をあたえてください。それだけっスよ。さっきも言ったけど、彩佳サイドっスよ。でも、元の彼女が不幸になれなんて、絶対に思わないス。そんな罰当たりなことはできない。俺はもう色々な無駄なモノを省いたうえでの、大の格闘技ファンなんですよ。俺が好きなのは、そういうことでなくて……戦い。戦いを見るのが好きなので。そういう、いちファンとしても口を挟んじゃいけない。素直な格闘技ファンとして、最後まで素直に楽しみたいです。青木(真也)さんの試合もあるし、あの大会自体が楽しみです」

──その姿をカメラで追われるのは?

「いやです。俺はRIZINファイターだから、他の会場でそういうことはできない。だって、母ちゃんが戦っているわけじゃないんだから。ついて回られても、困るんで」


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【Special】J-MMA2023─2024、透暉鷹─02─「UFCでベルトを巻く」「海外の元UFCファイターと戦いたい」

【写真】この大きなベルトを巻いたことが、どのように海外につながっていくのか(C)MATSUNAO KOKUBO & SHOJIRO KAMAIKE

J-MMA 2023-2024、第十一弾・透暉鷹インタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

パンクラス2階級制覇を果たした河村泰博戦について振り返ってもらった前編に続き、後編は気になる今後について訊いた。UFCとの契約を目指す透暉鷹が希望するのは、海外での試合あるいは海外の強豪との対戦——何よりUFCへと直結するRoad to UFCやDWCS出場だった。

<透暉鷹インタビューPart.01はコチラから>


――国内MMAではフライ級とバンタム級の層が厚いと言われています。そのなかで、「バンタム級の自分は強い!」と思いましたか。

「いやいや、まだそれは言えないですよ(苦笑)」

――しかしバンタム級で戦っていける自信はついたかと。

「それはありますね」

――となると、気になるのは今後です。海外で戦うためにバンタム級転向を選択した透暉鷹選手が、今後パンクラスで防衛戦を続けるのか。あるいはすぐに海外を目指すのか。

「まず前回のインタビューでも言ったとおり、バンタム級初戦がタイトルマッチになるとは思っていなかったんですよ。そこでパンクラスさんが僕の実績を考慮してくれて、暫定王座決定戦になった。そして正規王者の中島太一選手がベルトを返上して、僕と河村選手の試合が正規王者決定戦になって」

――はい。

「じゃあ次はどうするかというと、一番良いのは、今年もRoad to UFCが開催されるなら出たいです。RTUで3回勝てばUFCと契約できる、という目標が明確じゃないですか。しかもトーナメントだからコンスタントに試合ができる。もちろん自分のことを客観的に見ると、まだUFCのランカーやトップ選手たちと比べたら足りないところは多いです。今から、さらに実力を付けていかないといけないですよね。

そんななかで、『PFLという選択肢もあるよ』と言ってくださる人もいました。ただ、PFLはフェザー級以上でバンタム級がない。バンタム級に転向することも含めて自分自身の状況を冷静に見つめると、RTUからチャレンジしていきたいと思いました」

――パンクラスのベルトを獲得した場合は、防衛戦も含めて何か新しい契約事項が発生するのでしょうか。

「契約というより、まだ今後についてパンクラスさんとは細かい話し合いをしていなくて。チャンピオンはベルトを獲得してから1年以内に防衛戦ができなければ、王座返上——という規約は変わらないです。他のところで試合をすることは、話し合い次第だとは思いますけど、RTUの場合はどうなるのか……」

――現フライ級KOPの鶴屋怜選手がRTU出場中で、昨年クリスマスイブに暫定王座が制定されました。その例からいうと、RTU出場については特に規制はないのでしょう。ただし、まだ開催されるかどうか、開催されたとしてもスタート時期も明確になっていません。もしRTU開催まで期間が空いた場合、どのような試合をやっていきたいですか。

「そうですよね……。正直、格闘家ってそんなに長く続けられるものでもない。そして自分が目指しているのは、世界の強い選手と戦うことです。だから、どんどん強い選手と対戦していきたいですね」

――次の試合がパンクラスKOPの防衛戦という選択肢はない、と。

「難しいところですよね。今のバンタム級ランキングを見渡しても、お客さんが面白いと思ってくれるカードが組めるかどうか。日本国内の興行であれば、プロモーターもそういう目線になるじゃないですか。

たとえばランキング3位の井村塁選手がベルトに挑戦したがっている。そういう話も聞きます。でも井村選手は河村選手に負けていて、その河村選手に勝っている僕に挑戦するのは違う――という感はあります」

――その点では昨年4月、中島選手に敗れている現ランキング1位の田嶋涼選手にも同じことが言えますよね。パンクラス内のことでいえば、もう少し次の挑戦者を決める戦いが必要かもしれません。

「いずれにしても春ぐらいには試合がしたいです。やっぱりコンスタントに出たいので、前回が12月だから次は4月か5月か。去年は手術とかあって試合には出られなかったじゃないですか。二十代で試合がやれるうちに、年2~3回はやりたいですね」

――今年もRTUが開催されるとしても、エントリーして出場できるかどうかは、過去の実績も関わってくると言われます。確実にRTU出場を勝ち取ることができるような対戦相手が必要になってくるでしょう。

「はい。それに僕の目標はRTUに出場することではないので。RTUで勝ってUFCと契約し、UFCのベルトを巻くことです。そのための試合がしたい。勝ち星をつけるための試合とか、そういうものは望んでいません。できれば海外の元UFCファイターと試合をしてみたいですね」

――UFCを目指すうえで、RTUができたことでアジア勢の出場が途絶えたDWCS……。いや、UFCは難しいです。ただし、RTUがなければコンテンダーシリーズも選択肢に含まれてきそうですね。

「RTUが開催されないのであれば、DWCSも考えます。今は日本人選手がUFCと契約するためには、RTUやDWCSにチャレンジするしかないかなと思っていて。もし出られるならDWCSにも出たいです」

――RTUは3回勝てばUFCと契約できるのに対し、DWCSは試合内容によっては契約できない場合もあります。ある意味、一発勝負のオーディションですよね。そのRTUとDWCSの性質の違いについては考えますか。

「いや、そういうことは考えないです。DWCSだとフィニッシュする試合を求められるかもしれない。でも僕は、普段の練習から『漬ける』というようなことはやっていないので。DWCSでも自分の実力を出して、その試合を見せることができればUFCと契約できる自信はあります」


本文とは関係ないが、タイトル奪取後のバック宙はヒザをついて失敗した透暉鷹


今もstArtで修得に励んでいる──のではなく、コーディネーション・トレの一環


ちなみに久米鷹介は全日本バック宙選手権シャバーニの部出場に向けて猛特訓中だ


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