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Interview J-CAGE JJ Globo ONE Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 青木真也

【Road to ONE02】メインで青木真也と戦った世羅智茂に訊く─01─「僕は一本勝ちを目指していた」

Sera【写真】いきなりクローズドが取れたわけでなく、シッティングからハーフ。青木の動きに合わせてクローズドに入れた。ここも注目すべき点だ (C)MMAPLANET

7日(金)に行われたRoad to ONE02でメインで青木真也とグラップリングマッチで戦い、10分時間切れとなった世羅智茂。

ドローという結果よりも、7分間ほぼクローズドガードの攻防が続く動きの少ない試合になった。それでも青木は全局面で制したという言葉は言い放った。では、世羅はどのようにこの試合を捉えているのだろうか。大会から3日後、世羅に電話取材を試みた。


──かつてない状況下での青木選手との試合が終わり、3日が経過しました。改めてあの大会に参加したことをどのように振り返ることができますか。

Sera 02「大会自体、本当に良くできたなって思います。あそこまで厳戒態勢の状態で試合をするっていうのは、普通はないですし。

そういう意味でも貴重な体験ができました。何より、どこもイベントごとが開けない状況下で試合ができたことは幸運でした。選手としては嬉しく想い、運が良かったです」

──その意見すら、自分本位だと捉えられることもある世の中です。

「そうですね。僕のなかでは本当に良くないことですが、他の若者と同じようにコロナに対して甘く見ていた部分もあったかもしれないです。それと練習仲間から感染するのであればしょうがないという気持ちもどこかにありましたし。タクシーや電車に乗っていて、マスクもしない人の飛沫で感染すするのとは違うっていう感じではいましたね。

当日は、運営される方が如何にシリアスだったかも伝わってきましたし、あの大会で試合をさせてもらって貴重な経験を積むことができました」

──そんななか、試合は動きが少ない展開になってしまいました。

「格闘技を知らない人が見たら、つまらない試合に見えたと思います。いや格闘技が好きな人でも、そうだったかもしれないです(苦笑)。感情移入できない人はつまらないという感想を持ったでしょう。それはしょうがないです、そういう試合でした」

──作戦的には、どのような展開を考えていたのでしょうか。

「とりあえずクローズドガードに一度は入れたいというのはありました。そこからケージに押し込んでくることも考えていましたが、あの展開で全くガードを割ってこないというのは計算外でした。ここまで攻めないのかって。トップで固めることだけ集中してきたので……僕も甘かったです。あそこまで手首を掴んで、ただ上にいるというのは計算していなかったです」

──まずは引き込んでガードにいれること。青木選手に組まれてテイクダウンやバックを取られることは避けようということだったのですね。

「そうですね、一度は入れて。そこで青木選手がどうアクションしてくるのか、そこに合わせて動こくつもりでした」

──基本、青木選手が割ってくるのを待ち、自分から何か仕掛けることは序盤や中盤戦では考えていなかった?

「割ろうとしてきたときが、一番の攻め時だったので。あれだけ固められると、ガードからの攻めは難易度が上がってしまいます。ただし僕も見過ぎました。お互いに動けよと思っていた。僕は割って欲しくて、青木選手は僕から仕掛けてこいよって(笑)。噛み合わなかったですね」

──残り3分の段階で、世羅選手が一度ニーシールドハーフを見せました。

「このまま膠着して終わったら酷い試合になるので、自分から創っていくしかないと思いました。そこで動いてくるかと誘いましたけど、青木選手は攻めてこなかったです。でも僕もクローズドに戻してしまって。あそこでなぜ戻したのか、ちょっと覚えていないです」

──残り3分まで仕掛けることができかった要因は?

Sera 03「ケージ際で仕掛けてハーフで固められるのが嫌だったというのはあります。

ケージに押し込まれていると、首が曲がっていて窮屈な姿勢になるので、あそこで動いてもいつものようには動けないです」

──なるほど、柔術の試合場ではない状況でしたね。それでも最終的にはハーフから潜って足関節を仕掛けました。

「結果論として、もっと早くから攻めるべきだった。そう思います」

──世羅選手の試合で、あそこまで止まるというのは記憶になかったです。

「まぁ……柔術だと青木さんにルーチが掛かるので(苦笑)。柔術のルーチって、膠着を防ぐためにあるじゃないですか。柔術ルールであれば、青木さんが攻めていないということになります。ただ、今回の試合は柔術ルールでもMMAルールでもない。判定もポイントもないので、どっちもどっちだった。そんな試合です。

ルーチもアドバンもないわけですし、それが大前提のルールなので柔術の人が、柔術ならっていう意見も聞かれましたが、それは言ってもしょうがないです。MMAの人も上取っていたのは青木選手だっていうかもしれないし」

──ブレイクがあっても良かったと、試合中に思いましたが、青木選手はでも同じ展開になるという意見でして。そこに関しては、世羅選手はどのように考えますか。

「ブレイクですか、確かにそうですね。ブレイクというのは頭になかったですけど、今から思えばブレイクで仕切り直しがあっても良かったと思います。クローズドはダメだと切り替えたかもしれないです……が、それは結果論ですけどね。それがあっても、どう考えたかはブレイクがなかったので分からないです」

──青木選手が全局面で制していたというのも、青木選手の理論であって、世羅選手には世羅選手のグラップリング論があると。ところで掛け逃げと指摘されたことに関しては、どのように思っていますか。

Sera 04「それは違うと思います。僕は掛け逃げのつもりで仕掛けた技は一つもないです。

青木さんはそう感じたかもしれないけど、それは別に知らない。青木さんがどういう価値観であの試合に臨んでいたのか分からないですけど、僕は一本勝ちを目指していました。前半と中盤はああはなりましたが、後半は一本を狙いにいったのは間違いないです。

でも青木さんにそれがあったかというと、なかったと思います。僕もそうだし、見ていた人もそう感じるんじゃないですか。ノーポイント、サブオンリーだから僕は一本を目指していました」

<この項、続く>

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Interview J-CAGE JJ Globo ONE Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 青木真也

【Road to ONE02】試合直後の青木真也の話。魅せるためにリスクは? 「格闘技をやっているということ」

Aoki Shinya【写真】試合直後、控室となった会議室で (C)KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET

7日(金)に行われたRoad to ONE02。MMAPLANETでは1日を経てからメインで世羅智茂と対戦し、時間切れドローとなった青木真也にマイクの意図などを尋ね、彼の言葉を掲載した。

ここではクローズドショー、開催場所さえアナウンスされないという異様な状況での試合を終えた直後の青木の談話から、試合に関しての部分だけを抜粋してお送りしたい。


──世羅選手とのグラップリングマッチ、時間切れドローとなりました。

「語れるものじゃない」

──語れるものじゃないというのは?

「人に見せられるものじゃなかったですよね。攻めないから、試合が動かないッスよね。あぁ、こういうのかって。動かなくて、負けない試合をされた感じですよね。まぁまぁ、それで良いなら、それで良いけど。勝負はしたかった感じはしましたね」

──青木選手も手堅かったですよね。

「手堅かったです。来ないもん。カウンター待ちされているから、試合にならないですよ」

──そこで隙を見せようが、自分から動くことはできなかった?

「そうですね……最後は少し動かせたけど、そういう風にしても乗ってこないですよね」

──世羅選手のクローズドが、オープンになった瞬間も青木選手はスッと動くことはなかった。そして、セコンドからもオープンになっているという指示がなかったです。

「そうですか? 僕はクローズドで待たれた感じがします。でも、セコンドの声がなくてもそれは分かりますし。オープンにしても仕掛けはなかったですからね。そのままステイ、ステイ、ステイにされましたね」

──この試合、グラップリングを普段見ていないファンも視聴する機会だったと思います。そして、その視聴者は『青木、攻めろよ』という印象を持ったかもしれないです。

「そうですね、僕はこれで全局面で圧倒しちゃっているから。僕の概念では。僕が上からコントロールしていて、相手が掛け逃げをしている。まぁ、意識の差ですよ。この1つの試合じゃなくて、大会ごと背負って見ているつもりだから。全部まとめて大会を見ているつもりだから、もうちょっとお互い良いモノを創れたとは思います」

──う~ん、ただそこで足関節に入るとかやってしまうと、実は青木選手らしくない。あのままステイし続ける、それが青木真也の格闘技だと思います。

「ずっとステイ、相手が掛け逃げしてもステイする。これはこれで我慢比べなんです」

──我慢比べになるとになると譲れない?

「根負けはしないです」

──逆にブレイクがあっても良いのかもしれないですね。そういう意味では。仕切り直すために。

「良いかもしれないけど、それは戦うほうの意識だからブレイクがあっても同じ形になるんじゃないですかね。だから結論としてEBIはオーバータイムの決着戦があるという。そこに行き着くってことで」

──それでも魅せたいモノは見せられましたか。

「もうチョットかな。とりあえず及第点です。こういう時は仕方がない。だからマイクで誤魔化しました。そういうことです」

──繰り返しますが、良いモノを創るために勝負から外れるリスク、魅せるためのリスクは試合でおかさないと。

「それが、ちゃんと格闘技をやっているということだし」

──では、このような状況が続くとすれば青木選手は次は何を目指しますか。

「ここでMMAをやるかも。それはあるかと思います。もう寿命が短いから、勝負したいかな。もう別にいつ死んだって、いつ辞めたって良いって言いましたけど、本当に思っていますから。だから試合しても、良いのかなって思います」

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BELLATOR JJ Globo News クォンリー・グレイシー ブログ ホイス・グレイシー

【Bellator】公式Facebook、YouTube等で必見ホイス・グレイシーのオンライン柔術セミナー配信!!

Royce【写真】これぞグレイシー・イン・アクション!! 今も何ら色褪せることないという技術をホイスが公開してくれた (C)MMAPLANET

3月13日(土・現地時間)に開催予定だったBellator241を中止とし、同30日(月・同)、5月に予定されていた3大会の延期を発表しているベラトール。

その後のイベント開催など、UFCとは対照的に静観の構えでオフィシャルホームページやYouTubeチャンネルで過去の大会の動画を提供している状況だ。

そんなベラトールが15日(水・同)にオフィシャルFacebook、同ツイッター、同インスタグラム、同YouTubeでホイス・グレイシーのブラジリアン柔術オンライン・セミナーをライブで1時間余り公開した。


ホイスはまず「柔術は競技だけでなく、護身術の側面がある。私の父や叔父が創造した柔術のエッセンスを見せたい」と話し、次女のカリアナを受け手に護身柔術の指導を始めた。

手首を掴まれたときの外し方、肩を掴まれた時のショルダーロック、髪の毛を掴まれた時の立ちワキ固めなどに続き、殴られそうになった時の対処方法としてボディロックテイクダウン、エルボーなどグレイシーのベースを説明して「相手を痛めつける必要はないんだ」と、その理念を話した。

三男キードンに受け手が変わると、エリオも常に解いていた首を両手で絞められた時のエルケープ方法へ。途中からライブでの質問に答える形で、恐らくは自宅のリビングからのセミナーは続き、ヘッドロックからエスケープ&マウントなどグレイシー・イン・アクションの時代──いや、恐らくは1920年代から積み上げてきた護身の術を世界にホイスは配信した。

さらにエリオに教わったガードワークから、オモプラッタからモンジバカという流れも見せると、最後はビデオを回し視聴者の質問を伝えていた──ベラトールに参戦中の長男コンリー・グレイシーとスパーリングを行いオンライン・セミナーは終了した。

なお、この動画はYouTubeでは、コチラで今も視聴可能なので是非とも、グレイシーのエッセンシャルを感じ取ってほしい。

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Interview JJ Globo ONE Road to ONE02 Special ブログ 世羅智茂 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:番外編─世羅智茂戦@Road to ONE 02「いつもと変わりなく」

Shinya Aoki【写真】ロータスはMMAグラップリング、IGLOOでピュアグラップリングを構築する青木 (C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。世界的にMMAがストップした3月、試合数も激減したなか過去の試合をチェックするなど、変わらぬ情熱を見せる青木は、17日に東京都渋谷区の渋谷TSUTAYA O-EASTで開催されるRoad to ONE02で、世羅智茂とグラップリングマッチを戦うことが決まっている。

今、このタイミングで組み技を戦う青木に、自身の次戦について引き続き話を訊いた。


──世の中が揺れるなか、青木選手自身は世羅選手とのグラップリングマッチが決まっています。

「試合に関する向き合い方は、普段と変わりないです。最近、グラップリングが面白くなってきているので、一度やってみるのも良いなって。単純に面白くなってきています。もちろん、MMAの試合が決まっていればそっちを優先しますけど、楽しくなってきたグラップリングを試合で試すことができる。そこは単純に楽しみです」

──これまで青木選手がONEで行ってきたグラップリングは、どちらかというとケージグラップリング、MMAグラップリング的な要素が強かったと思います。今回の相手である世羅選手は純粋な柔術家、楽しくなってきたグラップリングを試すには壁にはこだわらない?

「ケージグラップリングではありますけど、相手によりますからね。マラット・ガフロフとやった時は相手がそれを望んできて。ゲイリー・トノンにはケージ中央でやられちゃいましたし。相手次第だから純粋グラップリングになる確率は高いと思います。それが楽しくなっちゃっています」

──世羅選手が座ってきても、対応できますか。

「できると思います。実際、日本にはグラップリングだけを戦っている人はいないし、そのなかで僕も純粋グラップリングの練習を週に一度やっているので。そういう意味でも良い対戦相手だと思います」

──正直なところ世羅選手とのマッチアップは意外でした。

「まぁ、色々対戦相手の名前は挙がりましたけど、現状でできる相手だと国内に限られてきて。そうなると、僕の方から特定の名前を挙げて組んでみたい相手はいないです。

そんななか関根(シュレック秀樹)さんの名前が挙がったことがありましたが、体重差もあって文脈が違い過ぎるだろうって(笑)。逃げたと言われると、まぁ癪に触るけど……。だって、僕のキャリアのアップデートにならないですからね。今、関根さんとグラップリングで試合をしても」

──エンターテイメント要素が強くなりますね。見た目の印象で。

「まぁ、しっくりとは来ないです。そういう試合があっても良いけど、僕が今グラップリングを真面目に取り組んでいるなかで、技術的にもアップデートしているので──ここはヘビー級の関根さんじゃないだろうって。自分の取り組みを良い形で試合に出したいから。

そうなると国内のグラップリングで一番強くて、名前があるのは岩本選手だと思っています。でも岩本選手とは週に3回、組み合う仲になっているので試合はできないですし」

──そして良い対戦相手、世羅選手との試合になったと。どのような印象を持っていますか。

「頑張る選手です。今成戦ではバックを取っているし、全く舐めたりしていないです。シリアスな勝負になると思っています。だから、世羅選手に頑張り勝ちたいです」

──世羅選手と今成選手の試合は、互いに警戒心が強い試合でした。

「僕はああはならないと思います。攻めたいので。まあ、そこは僕の宗教観で。攻めてこそ、ナンボという性分があるので攻めたいです」

──格闘技として楽しくなるには、世羅選手が青木選手の攻めをどれだけ遮断できるのか。そこが見所だと思っています。

Aoki & Iwamoto「僕としては、逆にそこを崩さないといけない。岩本選手や山中(健也)選手とIGLOOで練習できていることは財産になっているので、そこが上手く……技術的に出るかと思います。グラップラーの岩本選手、柔術家の山中選手、そしてMMAファイターの僕。

3つの宗教が混在していて、柔術、グラップリング、MMAとかなく、グラップリングマッチを戦います。本来は僕が技術をたくさん仕入れて引っ張らないといけないのですが、最近は教えてもらうことが多い。それが出る試合になるような気がします。練習でやっていることが出る。そういう試合になるでしょうね」

──自粛、延期、中止が合言葉となりつつある格闘技界。この現状で流動的(このインタビューをした時点で17日の無観客は発表されていなかった)ながら、試合があることについては。

「やるヤツはやる。どうなるか分からない部分はあるけど、そういう状況は関係なく、試合に向けてはいつもと変わりなくやります」

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Interview J-CAGE JJ Globo ONE Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 青木真也

【Road to ONE02】青木真也とケージグラップル、世羅智茂─01─「包み込まれるような組まれ方を……」

Sera【写真】即答、まさに今を生きる選択だ(C)MMAPLANET

12日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されるRoad to ONE02で、青木真也とグラップリングマッチに挑む世羅智茂。

世羅に青木との戦いを飲んだ理由を尋ねると──「断る理由がなかった」と、間髪入れず返答があった。


──青木真也選手とのケージでのグラップリングマッチ。オファーが来たのは、いつ頃なのでしょうか。

「先々週の月曜日だったと思います。『やります』と即答しました。メッセンジャーで石川(祐樹・カルペディエム代表)さんから連絡がきて、断る理由がなかったです」

──自身の気持ち、感情としてやるしかなかった?

「感情と言うか、やる以外なかったです。基本、試合は断らないです。あまり断った記憶はないです。Quintetや今成さんと戦った時もそうですし。それに今回の試合は自分のなかではメリットしかないと思っています。

負けるのは怖いですけど、そこでビビるのはよろしくないです」

──対戦相手が青木真也だから特に戦いたい……仮に早い者勝ちだったら、いの一番に手を挙げるというようなことはありましたか。

「仮にそういう状況だったら、すぐに手を挙げます。青木さんのことは日本ではもちろん、世界的に……MMAも柔術の人も知っているじゃないですか。もしかすると自分のキャリアの中で、一番注目される試合になるかもしれないと思います。だから、断る理由はなかったです」

──青木選手の純粋なグラップラーとしての技量はどのぐらいだと思っていますか。

「青木さんは基本MMAのグラップリングをやっていると思うのですが、最近はIGLOO柔術で岩本(健汰)君や山中(健也)君、イゴール田辺選手と練習しているので、その辺りの知識は勿論あるだろうし、対応もしてくる。ただのMMAグラップラーでないことは認識しています」

──今成選手とケージでグラップリングマッチを行いましたが、ケージでMMAファイターとグラップリングを戦うのとマットで柔術家とノーギで戦うのは気持ち的に違いはありましたか。

「ケージを使う攻防が出てくるという違いはあります。柔術やグラップリングは基本、壁はないので。そこを利用されての向うのペースになるというのは頭には入れています。いっても青木さんは何でもできて、全部のレベルが高いですが、金網に押し込まれてテイクダウンという攻撃は、あくまでも手段の一つとしてあるだろうと想定しています」

──壁レスなどの練習もしているのでしょうか。

「そんなに量は多くないですけど、やっています」

──その時の練習相手は?

「カルペディエム三田では、壁を使ったそういう練習もしているので、三田のスタッフとしています」

──三田にはMMA選手が練習に来ているようですが、彼らとは?

「最近はMMAファイターが来ていないので、そこまではできていないです。三田のスタッフに『ちょっと壁使ってよ』という程度ですね」

──柔術、グラップラーにとって壁レスリングは必要ない技術かと思います。

「まぁぶっちゃけて言えば、そうです。無視して良い、全く練習する必要はないです。でも僕は元々UFCとか好きで、割と壁の攻防を楽しんで見ている方なので、無駄といえば無駄かもしれないですが、そこは楽しくやっています」

──とはいっても、世羅選手は上の取り合いをする必要はありませんよね。座れば良い。

「それは勿論あります。その確率がどれぐらいかは分からないですが、青木さんと向き合ってみて何を選択するのか──ですね」

──今成選手との試合は、相手に合わせた感も少し感じました。

「アレは警戒し過ぎました。あそこは反省しています。警戒し過ぎていました。結果論ですが、もっと思い切りいけば良かったと思います」

──では青木選手と向き合って、最も警戒が必要なのはどのような点でしょうか。

「リーチとかじゃないでしょうか。青木さんの印象って、凄くリーチが長くて、懐が深い。包み込まれるような組まれ方をするんじゃないかと思います。そういうことを練習では体感できないので、実際に体面したときに如何にビビらずに対応できるのか。大丈夫だとは思いますが、実際に組まないとその恐怖は分からないので」

──青木真也対策を特定のパートナーとしてきたということは?

「特に誰かというのはないですけど、自分のなかで意識してそういう攻防には集中しようとかという感じです。練習相手に青木さんの動きをコピーしてもらうとかは特にせずに……自分のなかで危ないシチュエーションだとかを意識してやっています」

──青木選手といえばテイクダウンからバック、あるいはテイクダウンの途中の攻防でバック奪取&チョークかと。

「そこが必殺パターンですね。一番怖い状況です。バックを取られると逃げられるかどうかは微妙だというのは、自分のなかではあります。MMAでもバックを取られるとチョークでやられているので、そこに一度ハマると怖いです。特に1Rなのでバックを取られてそのままずっとバックキープされて終わるというのも、最悪あるかと」

──では極めの部分においては?

「全体のレベルが高いと思いますが、バックチョークが一番強いと思います。バックからのチョークは一度、その態勢に入ると危ないと思っています」

──この勝負、青木選手の動きに対し、世羅選手の防御力、攻撃を切る力に掛かってくるのかと予想しています。

「先に攻めたいですよね。今成さんの時に思ったのが、研究し過ぎて警戒し過ぎてしまった。もちろん研究もしますが、自分のアタックをしないといけないとあの試合で感じたので。青木さんとの試合では……難しいところですねぇ。攻めて自爆すると危ないのですが……でも自分から攻める、先に攻めることは忘れたくないです」

<この項、続く>