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J-CAGE Report Shooto2020#06 ブログ 後藤丈治 藤井伸樹

【Shooto2020#06】ドロドロを越えた名勝負、地獄を乗り越えた楽園ファイト──藤井が後藤に根性勝ち

【写真】年間ベストバウト級の激闘を藤井が制した(C)KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET

<フェザー級/5分3R>
藤井伸樹(日本)
Def.3-0:29-28.29-28.29-28
後藤丈治(日本)

サウスポーの後藤が左の蹴り、藤井が左を伸ばす、右ボディを打った藤井のシングルを切った後藤が左ハイから左ストレートを伸ばす。藤井の動きに反応する後藤は、左ハイ、ガードした藤井だが、右ジャブを受け圧力を掛けられているか。 

右にも左を合わせ、パンチのフェイクからハイを蹴って後藤は、藤井に組ませず左ストレートに続き、左フックを当てる、シングルを狙いつつパンチを見せた藤井だが、後藤は左ハイ、さらにステップインに左を合わせ、、ボディ、ガードの上から左を入れると藤井が下がる。

テイクダウン狙いに左の蹴り、ヒザを入れた後藤は左ハイ、藤井が組んでバックに回るが、逆に背中に回って離れる。藤井は左フックにシングル、後藤のギロチンスイープにも上を取る。スクランブルでスタンドに戻った後藤に、藤井がラッシュをかけてラウンド終了となった。

2R、、藤井の前進に左を当てる後藤は、左ハイ。それでも藤井は前に出るが、左アッパーを被弾する。右を入れ、左を当てた後藤にテイクダウンを決めた藤井。後藤がすぐに立ち上がる。ケージに押し込み、倒して削る藤井はシングルでついに背中をつかせる。

競り勝った藤井に対し、後藤はガードを取って息を整える。足を越させない、根性勝負の第2フェーズで後藤は、背中を譲り立ち上がり胸を合わせる。ここからヒザを入れて離れた後藤は、続くシングルを切って左を当て、左ミドル。両者揃って疲れたなか、藤井のシングルは決まらず後藤が左フックからクリンチへ。離れた後藤は右ハイを受けそうになりながら、直後に右をヒット。動きが明らかに落ちた後藤は、組まれてアームロックがすっぽ抜けて下に。藤井がバックマウントから絞めを狙う。胸を合わせに行き、絞めをセットアップされた後藤だが、10秒以上を耐えきり試合は最終ラウンドへ。

3R、シングルで尻もちをつかせた藤井が、即バックに回る。アゴの上からのRNCが徐々に入っていく。苦し気な表情の後藤はアゴの位置を変えて何とか耐えている。残り3分半、藤井はアゴの上から絞め、後藤を腹這いにさせてさらに力を籠める。アゴを引き、ヒジを押し上げて防いだ後藤だが、すぐに藤井が絞めを狙う。

ここは凌いだ後藤、それでもバックマウントからの逃れることはできない。後方へのパンチを打ち込む後藤がついに胸を合わせ、スクランブルで逆にバックに回る。離れた藤井は、ここも当然テイクダウン狙い。またも後藤はシングルへのキムラがすっぽ抜けて下に。スクランブルでバックに回った藤井を払い腰で投げた後藤の腕十字は腕が抜ける。

両者立ち上がり──最後の10秒、まさに魂の殴り合いを見せた両者に、会場のファンは惜しみない握手を送った。結果、ドロドロを越えた名勝負は藤井が3-0の判定勝ちを収めた。


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Interview J-CAGE Shooto2020#06 ブログ 後藤丈治 藤井伸樹

【Shooto2020#06】ジャパニーズゾンビ=藤井伸樹戦へ、後藤丈治「自分のパンチは当たると思っています」

【写真】若い力の成長があり、上の世代も成長できる(C) MMAPLANET

本日19日(土)に東京都渋谷区のTUSTAYA O-EASTにおいてダブルヘッダーで開催されるShooto2020#06。第2部で後藤丈治が藤井伸樹と対戦する。

インテリ地下格ファイターからパンクラス札幌大会でプロの道に進み、TRIBEへ。4月のRoad to ONEでは元修斗環太平洋バンタム級王者の祖根寿麻に一本勝ちし、その過程で見せていた打撃力に注目が集まった。

「絶対に楽出来る相手ではない」藤井戦前の心境を尋ねた。


──もう明後日に試合が迫ってきましたが、水抜き減量がなく当日計量の場合だと2日前はどれほど体を動かすのでしょうか。

「もう今日は動いていないですね。これに慣れちゃうと、水抜きはしたくなくなってしまいます(苦笑)。この計量方法の方が準備しやすいです。コンディションが良い気がします。

水抜きをすると、リカバリーで消化の良いモノを揃えたり、手間もかかり、試合前の数日は体重のことが常に頭を過っているので。今回なんか少し前からリミット近くだったので、精神的に余裕があります。僕は水抜きでもそれほど厳しい方じゃないのですが、水抜きしないで計量ができるスタイルが浸透してほしいです(笑)。

水抜きがあってもフライ級まで落とせるか……とか考えることもあるぐらいで、バンタム級としても大きくないんですけどね。TRIBEにいると、僕は本当にヒョロいんですよ。(若松)佑弥さんとかおかしな足をしているし(笑)、小川(徹)さんも超合金みたいな体をしています。体重はそうでもないのですが、僕は細いですね」

──PCR検査を経験して、結果も陰性でした。

「いつどこで感染するのかは誰にも分からないですし、自分が感染源になることもあるかもしれないので、陰性だったことはやはり良かったという気持ちです。心のどこかで感染することを恐れていますし、それは……ありますね。

皆、消毒やマスクっていうのは徹底していますけど、練習を続けているわけですしね。もう今では、あの石井逸人もしっかりと予防していますし(笑)。それこそ佑弥さんは赤ちゃんがいるから、本当に気を付けていますしね。やるべきことはやってはいたのですが、それでも陰性だったことにはホッとしました」

──偽らざる気持ちだと思います、そんななかで藤井戦。修斗デビュー戦が、ジャパニーズ・ゾンビとの試合になりました。

「4月に祖根(寿麻)選手に勝てて良かったと思いました。Road to ONEで勝ったからもらえた試合ですし、喜んで受けさせてもらいました」

──では藤井選手の印象を教えてください。

「絶対に楽をして戦えない相手です。そこは準備ができているというか、覚悟ができています。クタクタになることもそうですし、アッサリと終わることも全て想定して覚悟はできています」

──クタクタになる試合とは、どのようなモノでしょうか。

「効かせても効かせても、向かってくる。組みついてくるのか、打撃でくるのか。それは藤井選手次第でしょうが」

──ではアッサリと勝てるパターンは?

「何か自分の攻撃が当たって、気付いたら倒れている……みたいなことも想定しています」

──いずれにしても後藤選手の攻撃は当たるということですね。

「ハイ、自分のパンチは当たると思っています」

──祖根戦で後藤選手のことを知ったファンも多いかと思います。あれから5カ月、一番成長した点はどこでしょうか。

「あの時と比べるというか、あの時に得たモノがめちゃくちゃ多かったです。緊急事態宣言があって大会の日程が変わり、試合があるのかどうかも二転して。試合中はバッティングでダウンまでしました(苦笑)。

アレはダメージが残っていましたし、そういうなかで勝てたのは自信になりました。不測の事態が起こっても、冷静に戦えるようになったかと思います。あの経験があって、水抜きのストレスがなく、試合に集中できていています」

──その成果をケージの中で見せたいですね。

「一番嫌なことは藤井選手のペースに飲まれて、藤井選手のゲームになって終わることなんです。TRIBEでやってきたこと、考えてきたことを出し切って、ソレを勝利という結果で残したいです。

自分自身がどこまでやれるのか。それは分からなので、藤井選手に勝つことで『もっと上に行ける』ということを確かめたいです」

──ここから修斗で上を目指すことを今は考えているのでしょうか。

「チャンスがあれば何でもやっていきたいと思っています。ただ修斗で試合をさせてもらうので、ここで戦うからには上の首を狙っていきたいです」

──修斗バンタム級戦線は世界王者、暫定王者、そして環太平洋王者も修斗での戦いに主眼を置いていない現状があります。

「呑気にしている暇はないよ──と、自分が試合で勝つことで、チャンピオン達に思ってほしいですね」

■視聴方法(予定)
8月1日(土)
第1部:午後2時~ Abema TV格闘チャンネル
第2部:午後6時30分~ Abema TV格闘チャンネル


             
■Shooto2020#06対戦カード

【第2部】

<修斗環太平洋フェザー級選手権試合/5分3R>
[王者] 仲山貴志(日本)
[挑戦者] SASUKE(日本)

<フェザー級/5分3R>
藤井伸樹(日本)
後藤丈治(日本)

<ウェルター級/5分2R>
ヨシ・イノウエ(日本)
飯田健夫(日本)

<フライ級/5分2R>
大竹陽(日本)
関口祐冬(日本)

【第1部】

<フライ級/5分3R>
猿丸ジュンジ(日本)
飯野タテオ(日本)

<ウェルター級/5分5R>
大尊伸光(日本)
マックス・ザ・ボディ(日本)

<ライト級/5分2R>
工藤諒司(日本)
野瀬翔平(日本)

<ライト級/5分2R>
西川大和(日本)
椿飛鳥(日本)

<51キロ級契約/5分2R>
中村未来(日本)
永尾音波(日本)

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【Shooto2020#06】仲山✖SASUKEの環太平洋フェザー級戦 in O-EASTDoubleheader。後藤丈治は藤井伸樹と

【写真】修斗の試合でないとはいえ元環太平洋王者に勝っている後藤。修斗初陣は勝てばタイトル戦線に絡むことになるであろう藤井戦が決まった (C) MMAPLANET

23日(日)にSustainより、9月19日(土)に東京都渋谷区のTSUTAYA O-EASTでプロ修斗2020#06を二部構成で開催すること及び対戦カード第1弾の発表があった。

もともとは21日(月・祝)に後楽園ホールで開催予定だったが、日程を2日間繰上り場所を移すとともに、イベント形式も変更されることになった。

そんなO-EAST大会、まずは環太平洋フェザー級選手権試合=王者・仲山貴志✖SASUKE、フライ級の猿丸ジュンジ✖飯野タテオ、フェザー級では藤井伸樹と後藤丈治の3試合が明らかとなった。


世界ストロー級1位の猿丸と同級2位の飯野の試合がフライ級、藤井✖後藤がフェザー級ということは5月の無観客大会以降続く、タイトル戦以外の試合は1階級上で当日計量というフォーマットは継続されるようだ。

仲山は今年の1月にTOMAを下して巻いたベルトの初防衛戦となる。青井人、稲葉聡、そしてTOMAを破り3連勝中の仲山に対して、挑戦者のSASUKEは現在4連勝中と確実に結果を残してきた。

この連勝には王者に2度勝利している山本健斗デリカット戦が含まれている。圧力&グラインディングのチャレンジャーに対し、真っ向勝負だけでなく綻びを突くことに長けている仲山がどのような試合運びを見せるか。

歴代王者がONEと契約し続けているストロー級は元王者=黒澤亮平が復調ロードを往き、その黒澤に競り勝った本田良介はタイトルコンテンダーの小巻洋平を下すなど混沌としてきた。

猿丸はその本田と黒田を過去に破っており、誰もが認めるこの階級の実力者だ。

これまで5度に渡り、タイトルや挑戦者決定戦という大切な場を落としてきた猿丸にとって、最後のチャンピオンロードといえる状況下で──HEARTSの良心=飯野と拳を交えることになった。

ジャパニーズ・ゾンビこと藤井と対戦する後藤は、パンクラスでキャリアを積んできたが4月のRoad to ONE02で元環太平洋王者の祖根寿麻を打撃で圧倒し、ニンジャチョークで一本勝ち──一気に注目を集めるようになった。

何があろうが気持ちが折れない藤井と、意識を断ち切らせることが可能な左の持ち主・後藤の一戦は、今後のバンタム級戦線に影響を及ぼすカードといえる。

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Interview J-CAGE ONE ブログ 安藤達也 後藤丈治 根津優太 魚井フルスイング

【Road to ONE02】後藤丈治のMMAファイター人生─03これから編─「今年中に安藤達也選手と」

【写真】祖根戦の勝利を活かすも殺すも、これから次第 (C) MMAPLANET

北海道から東京へ、Tribe Tokyo MMAに所属して1年が過ぎ、祖根寿麻戦の勝利で飛躍のチャンスを掴んだ後藤丈治インタビュー最終回。

祖根戦での勝利をステップに、これからをどのように考えているのか。格闘家としての最終目標とともに尋ねた。

<後藤丈治インタビューPart.02はコチラから>


──結局、その1戦は実現しなかったですが、修斗での試合にOKを出したということは、今後は戦う場所は拘らないということでしょうか。

「チャンスを頂けるところで戦いたいと思っています」

──となる修斗、Road to ONEしか選択肢がこの2カ月はなかったということですね。ちなみに27日のTTFC08に出たいという気持ちはなかったですか。

「デビュー戦やキャリアの少ない選手の大会と長南さんに言われていたので……、良い相手なら戦いたいかったです。でも、試合の要請がなかったですし」

──では祖根選手に勝った試合をステッピングボードにしたいということですが、どこに向けてのステッピングボードになるのでしょうか。

「今年中に祖根さんの2つ、3つ上のランクの選手を倒したいと思っています。祖根さん絡みで勝った、負けたという選手とやるのもありかと考えてはいます。修斗だと祖根さんが負けている魚井(フルスイング)選手、勝っている根津(優太)選手。パンクラスなら金太郎選手が祖根さんにハイキックで負けているはずなので、金太郎選手も倒したい1人です」

──ではMMAファイターとしての目標は?

「そこは……心の中にはUFCというのはあります。UFCはバケモノが集まっている。日本人であのバケモノ達に勝てるのかって考えますし、到底無理だろうっていうところに挑戦したい。そういう気持ちはあります」

──あまり時間を共有はしていないかもしれないですが、TTMから巣立った佐藤天選手がUFCで戦っていますね。

「天さんは僕が東京に来てから、少ししてフロリダに行かれたのですが、今も連絡を取らせてもらっています。人生を賭けて、一つ一つUFCで勝つ可能性をあげていくために頑張っている姿勢は、凄く刺激を受けますし尊敬しています。

それとは別に……格闘家としての最終目標として、自分が死んだ後も記憶に残る試合をしたいということがあります。長南さんだったら、アンデウソン・シウバとの試合。それと僕の心の中に凄く残っている青木さんとエディ・アルバレス、KID✖魔裟のような試合に近づきたい。そういう戦いができるなら、場所はどこでも構わないです」

──そのためにも、4月の勝利を活かした試合をしていきたいですね。

「林修先生が『大した努力をしなくても勝てる環境で、死ぬほど努力しろ』と言っていたのですが、僕のこの言葉が好きでモットーになっているんです。真正面からぶつかるんじゃなくて考えて……練って、自分が楽に戦える場所で必死に戦う。

それと佑弥さんの影響も受けていて……佑弥さんは凄く考えて練習をしている人なんです。でも、試合に関しては『顔があったら殴る、腹があったら蹴る。以上!!』っていう感じなんです。試合になると僕も『顔があったら殴る、腹があったら蹴る、首があったら絞める』──そこだけを徹底的に意識して、完全KO決着、完全フィニッシュを突き詰めていきたいです」

──MMAPLANETでは武術の側面からMMAの解析を剛毅會の岩﨑達也宗師にお願いしているのですが、青木選手のみなならず岩﨑さんも後藤選手は殴る実感が拳(ケン)にある選手に、あの戦いができるようになってほしいと期待していました。

「ありがとうございます。その記事も読ませていただき、めっちゃ嬉しかったです。あの記事の最後で『組みの強い選手に後藤丈治がどういう風に戦えるのか』と言われていて、それこそ自分の真価が問われる試合になる……宿題を出してくれたと受け取っています。

そうやって考えた時に殴れて、組める選手が……祖根選手が修斗だったので、修斗でいないかなぁって考えた時に、何か安藤達也という選手がいたりして。トライブとの過去もありますし、安藤選手を倒したいと思っています。今年中に安藤選手と戦いたいです」

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Interview J-CAGE ONE ブログ 後藤丈治

【Road to ONE02】後藤丈治のMMAファイター人生─02上京編─「ここで生き残れたヤツだけが──」

【写真】2018年7月、GFGで佐々木郁也に勝利した時の後藤 (C)SUSUMU NAGAO/GFG

北海道の地下格を戦い、大学生となりキックのジムで地表に出てきた──後藤丈治インタビューPart.02。

北海道でもプロ生活、そして東京に出てきてからの日々について引き続き、後藤の話を訊いた。

<後藤丈治インタビューPart.01はコチラから>


──晴れてというと表現はおかしいですが、キックのジムに入り練習を始めたと。

「MMAへの憧れを持ちつつ、ほとんどキックボクシングの練習をしていて、パンクラス札幌大会でのMMAの試合と並行してキックの試合も出ました」

──キックの試合にまで!! それはプロの試合だったのですか。

「ハイ。2017年にBOUTでRISEのバンタム級で7位だった出口智也選手と戦い、キック2戦目だったのですが……番狂わせで判定勝ちできました」

──そのままキックでという気持ちには?

「そういう風にも言ってもらえましたが、やはりMMAが格好良いので。キックボクシングアカデミー札幌内にあるP’sLAB札幌所属選手として、MMAを続けました。P’sLAB札幌は自分がパンクラスに出るために、その名前を借りて活動をしてくれたという状況だったんです」

──また良い話ですねぇ。ところでキックの練習ばかりしていたということですが、その時のMMAの練習はどのような状況だったのですか。

「P’sLAB札幌は指導者がいなくて、所属も僕1人という状態でした。だから僕が会員さんの指導をする形で。寝技は全然できなかったです。壁レスを初めてやったのも2年ぐらい前で……」

──2017年まで札幌で試合をしていましたね。

「パンクラスでは札幌大会以外も、ディファの大会に出させてもらったこともありました。それと青森でGFGという大会にも出させてもらいましたね。地方在住の選手は試合を選ぶことはできないです。声が掛ると、全てをチャンスと捉えないと」

──東北の独立プロモーション、Global Fightingsports Gameですね。後藤選手はGrachanでバンタム級王者にもなった佐々木郁矢選手に判定勝ちし、これも番狂わせと言われています。札幌で練習をしていたのは、いつまででしょうか。

「8試合目まで……ですかね。佐々木選手に勝った後、ディファで米山千隼選手に負けました。米山選手に負けた理由はたくさんありますが、あの時に『このままじゃ勝てない』と思いました。もともと大学を卒業したら東京でMMAをやろうという気持ちもあったのですが、米山選手と戦ったことが決め手になりました。

あの試合に負けて、東京に行きたいと強く思うようになって去年の3月に大学を卒業し、練習ができる環境を探して東京にある会社に就職したんです」

──う~む、その辺りはそつないですねぇ(笑)。ではサラリーマンをしながら、練習をして試合に出ているということですか。

「ハイ。契約形態も特殊で、昼のプロ練習に参加できるようにしてもらっているんです」

──TRIBE TOKYO MMAに所属しようと思ったのは?

「卒業間際に東京に来て、色々と出稽古をさせてもらいました。その時に(若松)佑弥さんとか、自分と年が近い人が死ぬ気で練習しているのを、この目で見て『この人たちと強くなりたい』とメチャクチャ思ったんです。ここで生き残れたヤツだけが仲間になって強くなれるって感じて」

──なるほどぉ!! トライブで練習するようになり、どこが一番変わったと思いますか。

「一番は……練習と試合の乖離が無くなった感じがします」

──練習と試合の乖離、また他のトライブの若者たちとは一味違った返答です(笑)。練習での動きが、試合に出るようになったということですね。

「試合って特別なモノというのが、あったんです。非日常だと。でも青木さんも良く言ってくださるんですけど、『練習のための練習はするな』という……その意味がこの1年で理解できるようになりました。

特に組み技に関しては、本当に学ぶことが多かったです。壁を使ったエスケープとか、これまでできていなかったことですし。そういう点は凄く勉強になっています。組まれてゴチャゴチャと逃げるんではなくて、方法論が分かるようになったのは大きいですね。まだまだ全然足りていませんが……(苦笑)。

僕、練習でめちゃくちゃ弱いんです(笑)。上久保(周哉)さんとかめちゃくちゃ強くて、自分の皆にもそれぞれの強さがあって、日々『俺は弱い』と思い知らされています」

──打撃だけではどうでしょうか。

「打撃に関しても、練習ごとに今日は何をやろうとかとテーマを持って臨んでいるので、めちゃくちゃにやられることもあります。今日も結構やられました(笑)。

上手く凌ごうという練習なら、それはできると思います。でも、それだと練習のための練習になってしまいます」

──祖根選手に勝ったことで、次の試合が注目されています。あの試合をステップボードにしたいという想いは?

「正直、祖根選手に勝ったことでチャンスを頂けるんじゃないかと思っています」

──すでに5月31日の修斗で実現はしなかったですが、そのチャンスといえるオファーがあったと聞いています。

「あっ……ご存知なのですか……。僕は即答でやりたいと伝えました。実現はしなかったですけど……」

<この項、続く>

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【Road to ONE02】祖根に勝利、後藤丈治のMMAファイター人生─01地下格編─「相手は全身お絵かきの」

【写真】非常に礼儀正しく、試合度胸は満点。その理由が分かった (C) MMAPLANET

4月17日に行われたRoad to ONEで祖根寿麻をニンジャ・チョークで破った後藤丈治。パンクラスの地方大会、そしてプレリミが主な活躍の舞台だったファイターが、修斗でベルトを巻いた選手に圧勝した。

「こういう選手の声が聞きたい。それがメディアの役割」という青木真也からのリクエストもあった。あれから1カ月半が過ぎてしまったが、そのMMAファイターとしての成り立ちを後藤に尋ねると──まだ24歳ながら波乱万丈なMMAファイター人生を送ってきたことが分かった。


──青木選手から後藤選手の声を届けるのがメディアの役割という宿題を頂いてから、時間が経ってしまい申し訳ありませんでした。

「いえ、青木さんにああいう風に言ってもらえたのは凄く嬉しかったです。上京した時からAOKI AWARDとか、青木さん絡みモノに取り上げられることを目標にしていたので」

──青木真也にそうまで言わしめたのが、4月17日のRoad to ONE02の祖根寿麻戦の一本勝ちでした。修斗で環太平洋王者だった選手に勝った、その事実をどのように捉えていましたか。

「あの試合は自分にとってはオイシイ試合でした。新型コロナ感染拡大というなかで、これからどうなるのか分からないという状況に皆がいましたけど、しっかりと集中して取り組むことができて良かったです。

祖根選手にとってはメリットのない試合で、『自分なんかとやってくれるんだ』という気持ちでした。その一方で、自分にも勝つ可能性があるから組んでもらえているんだと理解して、修斗とかパンクラスとか関係なくバチっと倒して勝ちたいと思っていました。

状況が状況だったので、ああいう試合が組まれたのでしょうし……不謹慎な考えかもしれないですけどね」

──不謹慎という言葉が出るということは、あの日時で戦うことに躊躇することがあったということでしょうか。

「あの時はコロナが今より未知で、コロナとの戦いだという気もしていました。こんな時に試合をして良いのかということが頭をよぎったのも事実です。ただし、主催者も徹底して対策し、ジムも同じでした。だから、そこを信じて『やるか!!』という気にさせてもらいました」

──『俺は掛からねぇよ』という気持ちではなかったですか。

「それはないです。そんな風には思えないです」

──良かったです。そこを弁えてもらえないと、こちらも試合があるからといって取り上げることはできないので。

「そうなりますよね。コロナは現実問題で、まだ解決していないわけですから。リスクがあることをやっているのは、理解しているつもりです」

──その言葉で、後藤選手がどういう人物であるのか、ファンにも伝わるかと思います。もともとは札幌のP’sLAB札幌所属で北海道のパンクラスでキャリアを積んできた後藤選手ですが、MMAを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

「僕……実は地下格出身なんです……」

──……。

「高校生1年生の時に、町の体育館にあったボクシング室のようなところでパンチもキックも組み技も全部やっている練習を目にして。たまたま、そこで総合格闘技を初めて知ったんです。サークルのようなモノだったのですが、そこで練習をするようになりました」

──そこが地下格に関係していたと?

「ハイ、けっこう怖そうな人たちが集まって練習していました(笑)。僕はただの高校生で、UFCをゲームで知っていたぐらいで……本当にMMAのことは分かっていなかったんです」

──普通の高校生で、地下格からMMAを!! そこではどのような練習が行われていたのですか。

「グローブをつけて殴り合うとか……そこを仕切っていた人が連れていた人間とスパーリングをしたりとか(苦笑)。だいたい連れて来られるのは、ただの不良なんです」

──ダハハハハ。凄い世界ですねぇ。後藤選手には格闘技経験はあったのですか。

「小学生の時に少し空手をやっていました。硬式空手だったのですが、3年ほど稽古していました。でも道場が途中でなくなってしまって……。中学は卓球部に入って」

──いきなり卓球だったわけですね。その頃にMMAの知識は?

「全然なかったです。でも戦うことには憧れはありました。中学の時も週に1日ほど体育館でボクシングの真似事をしたり、高校になってからは部員は3人ほどで顧問のいない柔道部に所属していました。で、体育館でミット打ちをしようと思って訪れて、地下格の練習を見たという感じです。あの時は僕も素人のようなモノでした」

──不良を連れてきて、スパーリングをするって普通じゃないと思わなかったですか(笑)。

「何が普通か分かっていなかったです。アウトサイダーが世界最高峰ぐらいのイメージでいたので(笑)。建築業をしている代表は90キロぐらいある大きな人だったので、スパーリングでボコボコにされていました」

──そのような練習はどれぐらい続けていたのですか。

「16歳から18歳までですね」

──体重に関係なく、殴り合う……怪我とかしませんでしたか。

「ちょっと痛いとかは、普通でした。目の周りが腫れたり、鼻血が出るというのも」

──ご家族の反応は?

「それはやはり『大丈夫なの?』とは、言われていました。試合も1週間前ぐらいに『お前、出ろ』みたいな感じで伝えられて(笑)」

──実際に試合も出ていたのですね……高校生で……。

「もう『出るか?』ではなくて、『出ろ』という世界でした。そうしたら、相手が全身お絵かきみたいな相手で。ルールもパウンド有りで、会場は地下のクラブに四角形の柵を立ててコンクリートの床の上に薄いジョイントマットみたいなのが敷かれているだけで……あれはただの高校生には怖かったです(笑)」

──それはそうですが……続けていたわけですよね。

「地下格の試合は5、6試合ほど出て1度だけ負けました」

──ちなみにどういう勝ち方をしていたのですか。

「デビュー戦は『TOUGH』を読んだ後で、掌底が恰好良いなかって思って……掌底で勝ちました。MMAグローブをつけていたのですが、掌底を使いました(笑)。あの時に戦って勝つことの興奮を覚えてしまったんです」

──いやぁ、後藤選手……十分にイっている高校生ですね(笑)。

「アハハハ。学校では試合に出ているとか言っていなかったので、ケガして入院とかすると友達から『丈治君、どうした?』とか心配されていました(笑)。先生から『後藤、お前何をやっているんだ』と言われたこともありましたね(笑)」

──入院まですると、さすがにご家族からストップは掛からなかったですか。

「親は『あんた、ケガだけはすんじゃないよ』って」

──いや、だって入院しているじゃないですか(笑)。

「アハハ。自分でも変なことやっているなとは思うようになっていましたね。ただ途中からブラジリアン柔術の経験がある方が指導するようになって、寝技も少しやってはいたんです」

──それでも普通にMMAをやろうとは思わなかった?

「当時はパンクラスも修斗も知らなかったので。試合に出た時も、ここで勝てば『○○○○〇』に出られるかもしれないからって言われて。〇〇〇〇〇が何のことかも分かっていなかったですけど、勝てばプロになれるんだって思っていたぐらいで」

──今からして、地下格で学べたことはありますか。

「学べたことというか……あの環境があったから、今がどれだけ有難いかが理解できます。それと試合に出ることにためらわない気持ちは養われましたね(笑)」

──そんなことを無償でやるのですからね。

「いや……それが、お金は貰えていたんです。1試合で5万とか出たこともありました。高校生にとっては大きな額でした。そんな時に地下格をキックボクシングアカデミー札幌の代表が見に来ていて、『ウチで練習しないか』と誘われてキックのジムに通うようになったんです。やりたいのはMMAだったのですが、練習はキックで(笑)」

──それは高校生の時ですか。

「高校を卒業して、浪人をしている時ですね。で大学に合格してからキックのジムに入会しました」

──ちなみに勉学の方はどのような専攻をしていたのですか。

「一応、北海道大学というところで経済学部を学んでいました」

──ほ、北大。中井祐樹さんの後輩じゃないですか。後藤選手、5教科7科目の男でセンター試験を経ているのですね……。いやぁ、随分と気が狂っていますよ(笑)。

「アハハハハ」

──ところでキックのジムに移る時に、怖い方々はすんなりと了承してくれたのでしょうか。

「それはもう全く問題なかったです。代表は『お前、やるからには上にいけよ』って言ってくれて。今でも『元気つけろ』ってジンギスカンとか送ってきてくれるんです。昔は相当に腕が立つってことで名前も知れていたようですが、練習中はガンガンやっても、凄く面倒見の良い方でした。何よりやっていた楽しかったので、僕はあそこで練習を続けていたんです」

──うわぁ、めっちゃ良い話に聞こえてきました。

「僕は今でも感謝していますし、代表も凄く応援してくれています。『東京に行って、飯とか困っていないか』っていう感じで応援してくれています」

<この項、続く>

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Bu et Sports de combat Interview J-CAGE ONE Road to ONE02 ブログ 岩﨑達也 後藤丈治 祖根寿麻

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。後藤丈治✖祖根寿麻─弐─「コロナがチャンス」

Goto vs Sone【写真】MMA故に選択肢は多く、必死で練習してきたスクランブルMMA故に選択が限定されてやすい。これもMMAの妙(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──後藤丈治✖祖根寿麻とは?!──後編では、質量の高い後藤に対し、祖根が取るべき手段について尋ねた。

<武術的観点に立って見た──後藤丈治✖祖根寿麻Part.01はコチラから>

──祖根選手は一度は背中をつけて対処しましたが、またシングルにいってタップしました。

「そのシングルに行くのが失敗だとしたら、祖根選手はそれも分かっていたはずです。でも、トータルでMMAを経験値として覚えているから、試合ではあのようにハマるパターンの勝敗というのが起こると思います。

だからこそ、今、コロナの時期はチャンスなんです。自分が普段しないことをやる。日々に追われるとこなす稽古になってしまいがちです。強くなるためにブレない人が今だからでこそきることをする。それは対人練習でなくても、いくらでもあるはずです。

MMAファイターの人たち、試合がない今こそ──という気持ちでいてほしいです。例え1人でも強くなれる練習に没頭できます」

──ここまで話を聞いてなおですが、試合の立ち上がりというのはやはり大切ではないでしょうか。構え、間、質量、全てが後藤選手だった試合で、打で祖根選手が対応した。

「まあ、これも結果論ですが、結果論から学べることとして、いきなり前へ出るのではなく、先ずは距離を取って後藤選手に打たせそこに組みの圧力をかける、そしてパンチ、またはテイクダウン狙いからスクランブルなど、そういう手があれば祖根選手も自分の武器を使えたのかというのはあります。

何度も言っていますが、後藤選手の左のパンチはカウンターです。そこに打ちに行けば貰う確率は高くなる。ただ後藤選手の攻撃が、後の先を取れているかどうかは分からないです。後の先が取れていないのなら、祖根選手が先の先を取れれば後藤選手のカウンターを後手にさせることができ、自分のペースで試合を作ることも可能だったと思います」

──カウンターと後の先が違う、そこを今一度説明していただけますか。

「カウンターとはタイミングが取れた結果、起こる事象です。後の先とは、先が取れているという条件下でできることなんです。仮に後藤選手が後の先が取れていなかったとします。その場合、先の先を取られるとやられます。それは待ちの姿勢が後手に回るようになるからです」

──確かにカウンター狙いで、後手後手となる事例は少ないですね。

「逆に質問なのですが……祖根選手のシングルも、打からシングルでなく、MMAなのでシングルから打ということもありなわけですよね?」

──ハイ、デメトリウス・ジョンソンはそのパターンをMMAに持ち込みました。

「なるほど。では、それができなかった祖根選手はシングル狙いで居ついた(※一方向に意思が偏っている状態)ということですね。シングルに入って解除してパンチ、またシングルとか、祖根選手にも戦うパターンはあるはずですから」

──構え、間、質量で上回っている後藤選手を相手に、今言われたような攻撃が可能なのでしょうか。

Goto vs Sone02「後藤選手はしっかりと打とうして、足が決まることがあります。これは武術的にいえば、居ついている状態でもあります。それでも祖根選手が闇雲に突っ込んでいくと、あの左が待っていたでしょうね。だから前後の動きですかね。下がることができれば、後藤選手の戦力を低下させることができた可能性は高いです。逆に祖根選手は前に出ることで、後藤選手の戦力を上昇させてしまいました。

それが試合ってことなんです。アスリートは作品への完成度に拘ることを忘れて、ノルマをこなすようになります。青木選手がよく試合だけでなく、大会を通して自分のやることを作品と呼んでいるじゃないですか。あれがあるから、青木選手はパターン化しない。そして、強くなるために貪欲で、新しいモノを追い求めているのはMMAPLANETのインタビューを読んでいても分かります。

それが今、彼が良く口にしている岩本(健汰)選手とのグラップリングなんでしょう。そういう自分が強くなるために、斬新な『おっ!』となるモノがある選手は強いです。その時期は、かなり強くなれると私は思います」

──岩﨑さんも現役時代にそういう経験があったのでしょうか。

「まぁ自分ごとになりますが、極真をやっている時代に意拳に出会った時がそうでした。その時の全日本空手道選手権で数見肇に再延長で敗れたのですが、あの時が最後じゃないでしょうかね……」

──1997年の全日本ですね。準々決勝で優勝した数見選手に敗れたのですが、数見選手は準決勝が本戦判定、決勝は延長で一本勝ちでした。

「武術というモチーフが、私にキーワードを与えてくれたんです」

──そういうキーワードをMMA選手は今、この時期に手にするチャンスだと?

「ハイ。キーワードなのか、パズルのピースなのか。ただし、歴史から学ぶと──必ず大混乱の後に大成功を収める者がいます。それは大混乱の時に絶対にブレずに、没頭できるモノがある者です。そういう人間は強い。今、強くなるにはチャンスなんです。虎視眈々としている人間のコロナ後は楽しみですよ。

五輪アスリートなんて、4年に一度を人生の最大の目標にしていたから、今はもうパニックですよ。そういう彼らには今回の新型コロナウィルス感染拡大は非常に気の毒ですが、ここで一発逆転できる人間も出てくるはずです」

──それが祖根選手にも当てはまると。

「勿論です。祖根選手だけでなく、今、ブレることなく何かに取り組む選手は皆チャンスがあると自分は思っています」

──では逆に勝った後藤選手には何を期待したいですか。

「この強さを、どこまで見せてくれるのか。殴る実感が拳(ケン)にあるロシア人やブラジル人にも、アレができる選手になってほしいですね。その前に国内レベルでも組みが強い選手に、どう対応できるのか。パンチから組む選手、どっちも使って組める選手、パンチはダメだけど蹴りから組める選手、そういう組みの強い選手と後藤選手がどういう風に戦えるのか……特に蹴りもパンチもデキて、組んでくる選手との試合が見てみたいです。それを今回のように戦えると、後藤選手──凄く楽しみですね」

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Bu et Sports de combat Interview J-CAGE ONE Road to ONE02 ブログ 岩﨑達也 後藤丈治 祖根寿麻

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。後藤丈治✖祖根寿麻─壱─「質量に差」

Goto vs Sone【写真】試合開始直後からキャリアも各も関係なく、構え、間、質量ともに後藤が祖根を上回っていた(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──後藤丈治✖祖根寿麻とは?!


──この試合はパンクラスではプレリミ中心でキャリアを積んできた4連勝中の後藤選手が、修斗で環太平洋王者になるもRIZINと修斗で4連敗中の祖根選手とのマッチアップでした。

「キャリア的には祖根選手が格上ということですね。この試合だけで見ると後藤選手の方が評価は上の選手と思うくらい、質量に差がありました。構えた時点で、完全に後藤選手の間でした」

──サウスポーの後藤選手が、前に出てくる祖根選手にパンチを当てる。序盤からそのような流れでした。

Goto vs Sone 02「後藤選手は構え、間、内面の質量と全て良かったです。あの場で見える質量の違いは、

明白でしたね。こうなるとキャリアとか、関係なくなってしまいます。それにあの左のパンチは一発でKOできます。それを後藤選手は打ち合いのなかで出せる。強かったです」

──途中、頭突きがあり再開後のみ祖根選手のパンチに真っすぐ下がり、組まれてケージに押し込まれました。不可抗力とはいえ反則です。それにより、受けた方の質量が下がるということはあるのでしょうか。

Goto vs Sone 03「頭突きでダメージがあったかどうかは画面では判別できなかったですが、後藤選手は決して下がったわけじゃないです。あれは祖根選手が入れたんです。下がると、入るはまた違うんです。

そういう風になったのは、あの直後だけ後藤選手の質量は下がったからです。金的にしても頭突きにしてもダメージのあるなしを抜きにして、された方が再開後は不利に動いてしまうことが多いです」

──そういうものですか。

「もらった側がリスタート後は、不利に動いてしまう。ここは選手やチームの人達も頭に入れて戦うべきだと思います」

──では祖根選手はあの場面ではケージに押し込むよりも、殴りに行った方が良かったのですか。

「ハイ、その通りです。正論を言えばその通りです。祖根選手の間だったのは、あの試合ではあの局面だけでしたから。とはいっても、殴りにいっても打撃は完全に後藤選手の方が上でした。だからテイクダウンに行くなら、テイクダウンを取り切る。そこは後藤選手の寝技や、祖根選手の寝技の技量によってくるのですが、あの試合を見る限りはそこに拘るべきではなかったのかと思います。

ただし、あの場面で組みに行って押し込んで、テイクダウンを狙うというのは、キャリアのある選手がパッケージでMMAを体に馴染ませ、パターンで攻めてしまうようなことかと。それってどの競技にもあることで。結果、組まれてケージを背負っている時に頭突きのダメージがあったとしても、後藤選手は休めたと思います。

Goto vs Sone 05それでも祖根選手はワンテイクがとれた。あそこのワンテイクは、祖根選手にとって非常に大切だった。

でも、MMAの王道のようにスクランブルの展開を疑いもせず受けいれた。倒してから、技術面はともかく絶対に抑えるという意識は見られなかったです。そして後藤選手が立ってアームロックから離れて、打撃の間合いに戻った。この時には、両者の関係は試合開始直後と同じになっていました」

──ここからは後藤選手は左だけでなく、右、そしてボディや前蹴りも入っていました。

「3月のプロ修斗で行われた内藤頌貴選手と渡辺健太郎選手の試合は、最後に渡辺選手の間になったのですが、今回の祖根選手にはそういうこともなかったです。パンチだけでなく、腹への右の前蹴りが効いていましたね。

Goto vs Sone 06後藤選手は蹴りもパンチも使える。ただし、蹴れる状態であっても強く蹴る気はなかった。それでも足も手も使える人間は、両方使えるようになります。そのなかで右の前蹴りは、祖根選手は見えていなかったですね。

左を当てて、右も当てていた。後藤選手は躍起になることなく、そのまま戦っていると左が当たって勝てるのが分かっていたと思います。

Goto vs Sone 07出て打つのか、その場で打つのか、下がって打つのか。

相手が来る時に、その場で打てば良い。相手が来る時に出ようとして、先の先を取られやられることは多いです。だけど後藤選手は前に出ない。その場で当てて倒せると分かっていた。

セコンドの長南さんも「打ち合うな」という指示も出していましたし、後藤選手もその場で打っていました。祖根選手が前に出てこうとしていたので、その場で打てば良かったので」

──祖根選手としては、間合を外すとかそういうことが必要だったのでしょうか。

「下がって逃げるのではなく、下がって打てば間を取れることはあったかもしれないです。それも、後藤選手が追いかけるようなことがある場合ですね。でも、後藤選手はその場で打っていたでしょう。あれは理想的です。

Goto vs Sone 09そして、祖根選手は前に出て打たれた。あの質量で前に出ると、やられます。そして後藤選手の間なのに、シングルレッグを仕掛けて、組み技のことは詳しく分からないですが、ニンジャチョークでやられてしまいましたね。

あそこでシングルレッグというのも、殴られてダメージがある状況でMMAのパターンですよね。もう後藤選手は準備できていました」

<この項、続く>

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Interview Road to ONE02 Special ブログ 後藤丈治 祖根寿麻 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月─その壱─後藤丈治✖祖根寿麻「ビックアップセットですよ」

Goto vs Sone【写真】格闘技は勝敗の結果が、勝っても負けても将来に影響することが大切だ (C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年4月──格闘技が、この惑星から消えかけた1カ月──の一番、第一弾は17日に行われたRoad to ONE02から後藤丈治✖祖根寿麻の一戦を語らおう。


──2020年4月度、世界中から格闘技が消えた1カ月。選択肢が限りなく少ない状況で青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合は?

「後藤丈治✖祖根寿麻ですね。なんか僕、祖根って強いと思っていたんですけど、レコードを見るとこれで5連敗なんですよね。元谷(友貴)、岡田(遼)、根津(優太)、ジャスティン・スコッギンス、そして今回で。

まぁ、強い相手とやってきたというのはありますが、それにしてもコンディションが良くないのかと正直、思いました」

──それは自粛、非常事態宣言でどれだけの準備ができたのかということも影響してこないでしょうか。

「それを言えば、お互い様なんで。バンタム級だし、30歳を越えていると、中量級や重量級とは違って消耗しやすいのかというのも感じています」

──スタイルにもよるかと思いますが。

「まぁ、僕とはスタイルも違いますが……にしても消耗していないかと。ファイターのコンディションとして、ビジネスをしていたり、ジム経営と指導もあってプレーイング・マネージャーだから落ちてきているのか。

野村克也が南海ホークスで(※ダイエー・ホークスを経て福岡ソフトバンク・ホークス)プレーイング・マネージャーをやっていて凄く難しかったと言っていて」

──いや、青木選手はその時代に生まれていないじゃないですか!!(笑)。どちらかといえばヤクルト・スワローズの古田敦也さんの時代では? 自分なんて子供の頃、「なんで野村が4番で門田(博光)が3番なんだ。監督だからって、4番打つなよ」とか言っていましたよ(笑)。

「まるで分からないですよ(笑)。僕は野村監督の書いた本を読んで知った方です(笑)。選手兼監督は凄く大変で、優秀なヘッドコーチがいないとやらないって言ったとか。だから、祖根も難しいんだと思います」

──勝った後藤選手に関しては?

「一緒に練習しているんですけど、打撃の子ですね。でも祖根が有利だと試合前は思っていました」

──パンクラスでプレリミに出ていた選手が、修斗の前環太平洋王者でRIZINに出場している選手との対戦でしたからね。

「そう思いますよね。だからビックアップセットなんですよ。祖根のコンディションが悪かったとしても、この負けをこれから取り返すのは難しくなった。下手すると3年ぐらいかかるので、32歳とかっていう年齢でそこにもう一度向かい合えるのか。そうでない選択もできる状況がありますからね。

彼はそういう意味で優秀だと思うので。ただ後藤もレコードは決して良くない。最後の負けは米山(千隼)選手で、そこからはこれで5連勝なんですけどね。それまではパンクラスの札幌大会とかでも負けもある」

──だからこそ、この勝利が大きくないでしょうか。

「大きいですが、今回はRoad to ONEだから主戦場としているパンクラスでどういう風に評価されるのか。彼が修斗でやっているなら、元王者に勝ったから次は良いカードが来ますよね。修斗公式戦ではなくても、そのヒエラルキーを潰したので。『なら魚井(フルスイング)とやらせてみようか。いや手塚(基伸)かな?』ってなるのですが、パンクラスでも誰かとやらせてみるかってなるのか……分からないですよね」

──大会が再開されるとして、修斗の元王者にこの状況で試合をして勝った。そこはパンクラスも留意してほしいですね。きっと後藤選手がパンクラスで戦っていた試合よりも、今回の大会の方がABEMAで試合を視聴したファンが多いと思いますし。

「そこはありますよね。今回はパンクラスのプレリミよりも、視てもらっているだろうし。そこで結果も残しているし、すぐにアップして使われてほしいです。パンクラスにソレがないなら、修斗でも良い。とにかく次は、より上の選手と組んでもらいたいですね。彼は結果を残したので」

──確かにその通りですね。

「この試合で大きなチャンスを得る資格を得た。なら彼の言葉でメディアに対する発言が欲しいです。そうでないと、彼の人となりが見えてこないので。『誰とやりたい』、『どこでやっていきたい』とか。あの試合後は控室で取材をする状態ではなかったから、後追いで後藤丈治という選手を知りたいです」

──分かりました。それは青木選手からMMAPLANETへの宿題として捉えさせてもらいます。

「宜しくお願いします(笑)」

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J-CAGE ONE Report Road to ONE02 ブログ 後藤丈治 祖根寿麻

【Road to ONE02】左を効かせた後藤がフロントチョークで祖根からタップを奪う

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
後藤丈治(日本)
Def.1R by フロントチョーク
祖根寿麻(日本)

サウスポーの後藤に対し、オーソドックスの祖根。祖根は左右のフックで前に出て、後藤は距離を取ってハイキックで迎え撃つ。ここで祖根の頭が後藤のあごに当たり、試合は一時中断となる。再開後、祖根がパンチで後藤を金網まで押し込み、テイクダウンを奪う。一度は倒された後藤だが亀になって立ち上がり、アームロックを狙いながら正対する。ジャブ・左ストレートで前に出る後藤。パンチの打ち合いで右フックを効かせると、返しの左フックで祖根からダウンを奪う。祖根もタックルでテイクダウンを狙うが、後藤は首だけに手を回す形のフロントチョークへ。これががっちりと極まり、後藤が一本勝ちを収めた。