カテゴリー
MMA UFC UFC ESPN29   アレッシャンドリ・パントージャ ブラジリアン柔術 ブランドン・モレノ ブランドン・ロイヴァル ボクシング

【UFC ESPN29】パントージャ戦へ=ブランドン・ロイヴァル「ジャブやアンダーフックで肩が外れていた」

【写真】肩の脱臼の心配がないロイヴァルは、どのような動きをオクタゴンのなかで見せてくれるか楽しみだ (C)MMAPLANET

21日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催あれるUFC on ESPN29「Cannonier vs Gastelum」。ミドル級のジャレッド・キャノニア✖ケルヴィン・ガステラムがメインの今大会で、ブランドン・ロイヴァルがアレッシャンドリ・パントージャと対戦する。

現UFC世界フライ級王者ブランドン・モレノと昨年11月に戦い、肩を脱臼し動けなくなりパウンドアウトされたロイヴァルにとって、9カ月振りの再起戦だ。カムバック戦を前にリモート取材を行うと、UFCで戦うようになって以降、ロイヴァルは常に肩の脱臼を気にしながらファイトしていたことが明らかになった。

今年の1月に手術をし、肩の負傷が癒えたブラドン・ロイヴァル──ジャブを打つのも、アンダーフックも脱臼の危険性があった彼は、もういない。フル・ポテンシャル発揮が期待されるロイヴァルは、パントージャ戦でも当然のようにフィニッシュを狙う。


──昨年11月のブランドン・モレノ戦では、動きの多い好勝負のなかで右肩を脱臼し動けなくなりパウンドアウトでTKO負けをしてしまいました。あれ以来、9カ月振りの実戦復帰です。

「肩に問題があることはキャンプの時から、分かっていたことなんだ。下になっても、肩の調子が悪いから立ち上がることも、ひっくり返すこともできなかった。バックから上を取ろうと動いて、殴った時に完全に抜けてしまったんだ。それで終わりだよ(苦笑)。

確かに試合に負けたことは残念だ。ランキングも下がった。敗北はクソッたれだよ。でも、肩の手術をする契機になったことは、本当に良かったと思っている。1月に手術をして、リカバリーに半年かかったけどね」

──現状、右肩の具合は?

「UFCで戦うようになって以来、どのキャンプよりも肩の調子は良かったよ。これまでの3試合はずっと肩をかばいながらキャンプをするような状態だったからね。過去最高、ベストなキャンプだったよ」

──つまりUFCで戦うようになって以来、ずっと肩の調子が悪かったということですか。

「そうなんだ。ティム・エリオット戦から肩のケガをしたままだった。カイ・カラフランスと戦った時なんて、ほとんど練習できなかったぐらいさ。右のパンチを打つと、腕が抜けてしまって……。グラップリングをすると、もっと酷いことになるような状態だった。腕を差してレスリングしようとすると、肩が外れる。そんな状態で満足な練習ができるわけがない。体調管理、グッドシェイプを保つようなトレーニングしか、あの試合前にはできなかったんだ」

──なんと!! その状態で試合をして、一本勝ちをしたということですか!! ではブランドン・モレノ戦前の練習というのは?

「シャドーボクシングとランニング、ドリルで技の確認。肩が外れないことを一番に考えて、調整するしかなかった」

──OMG!! 私もヒジが抜ける癖があった時があり、いつ抜けるかとビクビクしていました。

「だろう? 分かるよ。だから、モレノ戦で肩をやったと分かった時は、もうどうしようもなかった。そうならないように戦っていて、鉄槌を落としたら脱臼した。『あぁ、クソォ』ってもんだよ。もう取り返しがつかない状態だった」

──レスリングが苦手なのではなく、下になって戦うしかなかったということなのですね。

「その通りだよ。去年は1度もレスリングのトレーニングをしていない。肩にプレッシャーを与えることはできなかったらね」

──手術のきっかけになって良かったという言葉に、今更ながら頷くことができます。では今回の試合は、レスリングゲームも可能になるということでしょうか。

「イエイ、イエイ、イエイ。アンダーフックで胸を合わせると、脱臼するかもしれないという恐怖から脱することができたんだ。もう、レスリングで肩を痛めることがないから、気楽に戦えるよ。

レスリングだけじゃない。ボクシングもできる。なんせモレノ戦で肩が抜ける前に、脱臼したのは練習でジャブを打った時だったからね」

──……。

「終わったと思ったけど、その時は入れ直して事なきをえた……というか、何とかやり過ごすことができたって感じかな。ちょうどモレノとの試合の1週間前だった。でも、試合に向けて大変な事態に陥ったという感じでもなかったんだよ」

──えっ、そうなのですか。

「練習がしっかりと出来なくても、モレノに負けることはないと思っていたから(笑)。肩に問題があり、そこを踏まえた調整しかできなくても、試合中に肩を脱臼さえしなければ勝てると踏んで戦ったんだ」

──いやぁ、全くもって何といえば良いのか……。ブランドンとの試合に勝利したモレノはUFC世界フライ級王座に挑戦して初戦がドロー。リマッチではRNCで一本勝ちして世界の頂点に立ちました。負傷をおして戦った相手が世界チャンピオンになったことで、確かな自信を持つことができたのではないでしょうか。

「ブランドン・モレノのタイトル奪取からは、大いにインスピレーションを得ることができた。僕と接戦を繰り広げた相手が、圧倒してチャンピオンになったんだからね。あの試合を見ていて、とても良い感じになったことは確かだよ(笑)」

──もちろん、モレノと再戦を望んでいるかと思いますが、今回の相手パントージャは相当の手練れです。

「パントージャと試合が組まれて、自分がUFCの期待をそれほど失っていないことが確認できた。この意味は大きいよ。ランク外とか、ランキング下位の選手と戦うことになるんじゃないかと恐れていたからね。ただし、パントージャと戦うことが決まって、別の意味で恐怖を感じている。

パントージャは常にフィニッシュを考えて戦っているファイターだからね。怖い相手だけど、僕も判定は考えていない。常にフィニッシュしようと思っているところは、僕らは似ているかもね。だからこそ、スマートに戦わないといけない」

──う~ん、似ていますかね。ブランドンの方がより大胆に動くことで、ミスもあって厳しいポジジョンを強いられることはありますが、パントージャはリスクの高いファイトをする印象はそれほどないです。しっかりと堅実に戦い、想い描いた一本勝ちを狙うという風で。

「僕の方が動いて、前に出るというのはあるね。でも相手をカオスに追い込む点は似ているはずだ。それでも僕の方が少しアグレッシブだし、そこがアドバンテージになるだろう。パントージャが待つような局面でも、僕は前に出る。まぁ、実際にどんな手を彼が用意しているかは試合が始まるまで分からない。

ただし、どんな手で来ても僕の方が上をいく。打撃では僕の方がテクニカルだし、よりスマートで、より速い。パントージャがどんな風に動いてくるかは、既に把握しているよ。パントージャをフィニッシュすれば、それほどタイトル挑戦を待つ時間が長くなることはないだろう。しっかりと仕留めるよ」

──スーパーアグレッシブ、奇想天外、そして一本を取りに行く姿勢。日本のファンもブランドンの復活を期待しているかと思います。

「おお、嬉しいね。僕の柔術はブラジリアン柔術じゃない、ジャパニーズ柔術だ。日本の皆がMMA文化を創った。日本のMMAが試合をフィニッシュする精神性を僕に授けてくれたんだ。PRIDが大好きだった。そのPRIDEを創ったのは、日本のファンのMMAを見る確かな目だ。弟と夢中になって、夜中の3時にシンヤ・アオキの試合を見ていたよ(笑)。アオキの予想できないクレイジーファイトから、とても大きな影響を受けた。僕がゴゴプラッタを使うのは、シンヤ・アオキの動きを真似たからなんだよ(笑)」

■視聴方法(予定)
8月1日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC FIGHT PASS

■UFC ESPN29対戦カード

<ミドル級/5分5R>
ジャレッド・キャノニア(米国)
ケルヴィン・ガステラム(米国)

<ライト級/5分3R>
クレイ・グィダ(米国)
マーク・オデセン(デンマーク)

<ヘビー級/5分3R>
チェイス・シャーマン(米国)
パーカー・ポーター(米国)

<バンタム級/5分3R>
トレヴィン・ジョンソン(グアム)
サイドユカップ・カクラモノフ(ウズベキスタン)

<ライト級/5分3R>
ヴィンス・ピッチェル(米国)
オースティン・ホバート(米国)

<フライ級/5分3R>
アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル)
ブランドン・ロイヴァル(米国)

<フェザー級/5分3R>
ルイス・サルダーニャ(米国)
オースティン・リンゴ(米国)

<バンタム級/5分3R>
ブライアン・ケレハー(米国)
ドミンゴ・ピラルテ(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ビー・マレッキ(スウェーデン)
ジョシアニ・ヌネス(ブラジル

<ライトヘビー級/5分3R>
ウィリアム・ナイト(米国)
ファビオ・チェラント(米国)

<ライト級/5分3R>
ルーズベルト・ロバーツ(米国)
イグナシオ・バハモンデス(チリ)

<ウェルター級/5分3R>
ラミズ・ブラヒメジ(米国)
サーシャ・パラトニコフ(香港)

The post 【UFC ESPN29】パントージャ戦へ=ブランドン・ロイヴァル「ジャブやアンダーフックで肩が外れていた」 first appeared on MMAPLANET.

カテゴリー
UFC UFC ESPN29 クレイ・グイダ ブログ マーク・マドセン

【UFC ESPN29】クレイ・グイダと戦う、マッド・マドセン─02─「オリンピアンはライフスタイル」

【写真】マドセンはオリンピアンという人種なんだろう (C)Zuffa/UFC

21日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFC on ESPN29「Cannonier vs Gastelum」クレイ・グィダと戦う、マーク・マドセン・インタビュー後編。

デンマーク史上最高のレスラーで、グレコリオ五輪シルバーメダリストのマドセンは、全てをやり切ったレスリング人生のあとに、なぜMMAに情熱を注ぐことができるのか。

そして彼が「グレコの有効性」について、同じくグレコの五輪銀メダリストでありUFCでもミドル級の頂点に輝いたマット・リンドランドはどのように答えたのか。

<マーク・マドセン・インタビューPart.01はコチラから>


──マークはグレコローマンレスリングで輝かしい戦績を残していますが、そのスタイルとしてフリーやフォークスタイルと比較すると、アンダーフックの取り合いで足を触わることができないグレコの技術はMMAレスリングのなかで有効性は決して高くないのではないでしょうか。

「グレコローマンがMMAで効果的でない……それは僕も、実際のところ深く考えてきたことなんだ。そして君が指摘したように、フリースタイルやフォークスタイルとは別物だ。この2つのレスリングが、MMAで実効性があることは明らかだよ。そしてグレコローマンレスリングからMMAに転向したファイターは、決して多くない。

それでもランディ・クートゥアー、マット・リンドランド、ダン・ヘンダーソン、ジョー・ウォーレンがいる」

──米国のレスラーはカレッジまで、フォークスタイルをやり込んでいるかと思います。

「確かにね。だから、僕はUSレスリングのヘッドコーチを務めているマット・リンドランドに尋ねたんだ。彼が僕の住む、デンマークの小さなレスリングコミュニティを訪れてきてくれた時に。『マット、グレコの技術ってMMAでは実際のところどうなんだろう?』とね」

──ハイ。リンドランドの答は、どのようなモノでしたか。

「即答だったよ。『グレコを疑っているのかい? 冗談だろう(笑)。グレコローマンはMMAにとってパーフェクトだよ』ってね」

──本当ですかっ!!!

「僕はフリースタイルも、フォークスタイルも経験がなかった。でも、キャプテンがフリースタイルやフォークスタイルのアタックからの防御方法を伝授してくれた。フリーやフォークとは違う。でもレスリングという解釈の下では、グレコもレスリングなんだ。だから、僕はグレコの技術をもとにフリースタイルやフォークスタイルに順応し、そういうレスリングがベースにあるファイターと戦うことが、とてもチャレンジングなんだよ」

──グレコのレスラーたちは、あの限定された攻撃対象のなかで、その穴を見つけていくことで、どのコンバットスポーツのファイターと比較してもフィジカルに優れているように感じます。

「グレコローマンレスリングの経験は、MMAファイターとして他のレスリングやグラップリングを習得するうえで、とてつもないアドバンテージになっている。打撃にたいしても、そうだよ。MMAは全てのマーシャルアーツが、混ざり合っている。そして僕はグレコローマンレスリングの黒帯だ。ボクシング、打撃、グラップリングでもグレコで得た圧力は絶対的に武器になる。

MMAは体を使って戦う、チェスゲームのようなものだ。そして僕はこのスポーツのなかで、ベスト・グレコローマンレスラーだ。UFCでは素晴らしいボクサー、フリースタイルレスラー、フォークスタイルレスラー、グラップラーが活躍してきた。そして、僕がUFCで戦うことによって、その戦いにベスト・グレコローマンレスラーが加わった。

だからこそ、クレイ・グイダと戦えることが楽しみでならない。彼のようなレジェンドを相手に、僕がやってきたことが通じるのか、否か。しっかりと準備してきたし、凄くエキサイティングだ」

──グレコという五輪スポーツで、全てをやりつくしたと思いますが、なぜMMAのようなハードなスポーツに、それだけのモチベーションを持って臨むことができるのでしょうか。

「オリンピアンのライフスタイルだよ。なぜ、その競技に夢中になるのか。それは個々の競技を愛しているからだ。僕の人生は、直接は金を稼ぐことができないレスリングと常にあった。レスリングマットで戦っていたのは、金のためじゃない。レスリングを愛していたからだよ。技術の習得、体力強化、食事、睡眠、休息、全てがレスリングのためだった。その頂点を決める戦いに挑むオリンピアンにとって、競技を続けることが人生なんだ。

今、僕はMMAファイターだ。MMAは五輪競技じゃない。でも、僕にとって人生なんだ。死ぬまで、僕はオリンピアンだ。それが僕のライフスタイルだから。レスリング、MMAで戦うこと、それが僕の生き方なんだよ。それってサムライ、武士道と同じだろう? そして僕は一つのスタイルを究めた。同じようにMMAを戦っていきたい。

MMAを戦うことで、本当に多くのことが学ぶことができる。それこそが僕のモチベーションになっているんだよ」

──マーク、今日はありがとうございました。では日本のファンに一言お願いします。五輪直後ということもあり、五輪レスラーのMMAへのチャレンジはいつになくファンの間でも注目されるかと思います。

「日本のレスラーたちのハードワーク振りは、僕は百も承知だ。そして、彼らは今回の結果を残すことができた。それを誇りに思ってほしい。五輪は4年に1度の祭典だ。ただし、それは1日、1日、4年間積み重ねてきた日々の結晶なんだ。歯を食いしばり、没頭し、全てを捧げてきた日々の。

そして日本の皆が素晴らしい五輪を開いてくれたことを祝福したい。こんな状況で、よくあれだけのオリンピックゲームを遂行してくれた」

──日本、東京に住む人間としては、五輪だけが市井の人々の状況とかけ離れていたことに対して、どの競技も素晴らしかったがゆえに整理はつかないというのが本当のところです。

「だからこそ、僕に日本の皆を祝福させてほしい、感謝しているんだ。そのような状況で日本の皆は五輪のホストを務め、やり切ってくれた。この危機的状況で、日本の皆の勇気、忍耐力が五輪を最高のモノにしてくれたんだ。胸を張って欲しいし、そしてオリンピアン・アスリートに誇りを持ってほしい」

■ UFN ESPN29視聴方法(予定)
8月22日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC FIGHT PASS

The post 【UFC ESPN29】クレイ・グイダと戦う、マッド・マドセン─02─「オリンピアンはライフスタイル」 first appeared on MMAPLANET.

カテゴリー
MMA UFC UFC ESPN29 クレイ・グイダ マーク・マドセン

【UFC ESPN29】グィダ戦へ、五輪グレコ銀=マーク・マドセン─01─「もしTOKYOを目指していれば……」

【写真】溢れんばかりの自信、MMAということでなく自身の歩んできた人生に自信を持っているという雰囲気だったマドセン (C)MMAPLANET

21日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでUFC on ESPN29「Cannonier vs Gastelum」が開催され、デンマーク人ファイターのマーク・マドセンがクレイ・グィダと戦う。

マドセンはデンマーク史上最高のレスラーで、2016年リオデジャネイロ五輪グレコローマン75キロ級で銀メダルを獲得。世界選手権でも4度のシルバーメダリストに輝き、ノルディック選手権では6度の優勝──デンマーク選手権に至っては69キロから96キロまで4階級で11度の優勝を誇る。

まさに不世出のレスラーながら、ロンドン五輪とリオの間にMMAにデビューし2連勝──ここからレスリングに戻りメダルを獲得すると、レスリングを引退し通算8連勝でUFCと契約を果たした。UFCでも2勝0敗、キャリア最強の相手グイダ戦を前にしてオリンピアン、そしてメダリストがなぜMMAで戦うのか。加えて、グレコの技術はMMAに効果的なのか等を尋ねた。


──土曜日にクレイ・グイダとの試合が控えています。今、どのような気分ですか。

「とてもエキサイトしている。クレイ・グイダの試合をずっと見てきた。その彼とUFC3戦目で戦えるなんて、とんでもないチャンスだ。そして、凄く光栄なことだよ」

──ところで東京五輪が終わったばかりですが、レスリングはチェックしていましたか。

「もちろん。NBCでは24時間、ずっとオリンピックが流れていた(笑)。今回はキャプテン・エリック・アルバラシンの下、アリゾナでキャンプを行ったけど、キャプテンとはずっと昔に五輪の準備をしていたコロラドスプリングスのオリンピックセンターで出会って以来の仲でね。今回は、彼と一緒にレスリングをチェックしながら、『ああだ、こうだ』って話していたんだ。

そうだね、僕自身はレスリングだけでなく、どんな競技でも見ていたよ。アリゾナに3カ月間いたけど、五輪の間はずっとデンマーク代表のあらゆる競技を応援していた。デンマーク代表は素晴らしい活躍をしていたよ」

──デンマークでは、レスリング人気が高いのですか。

「そうだね、とてもとてもニッチなモノさ。米国や日本と比べると、凄く小さい。でも東京でも1人、デンマーク代表がレスリング競技に参加していた。デンマーク人レスラーが予選を勝ち抜くことだけでも、本当に大変なんだ。1回戦負けだったけど、グレコローマンレスリング67キロ級で戦ったフレデリクホルムクイスト・ビャレフーを心の底から尊敬しているよ」

──日本ではレスリングのトップ選手は一流企業に就職できたり、学校や自衛隊に就職して安定した生活を送ることができます。マークは2度五輪に出て、銀メダルを獲得していますが、MMAに転向しました。

「訂正させてもらうと、僕は3度五輪に出ているんだ(笑)」

──おお、スミマセンでした。では北京、ロンドン、リオと五輪を経験しているのですね。そしてロンドンとリオの間にMMAデビューをしています。

「世界大会では5度、メダルを取っている。それが人生をレスリングに捧げてきた、結果さ(笑)。日本のように、ロシアや旧ソ連の国々、米国でもレスリングは素晴らしい安定した人生を手に入れることができるプラットフォームを持っている。

きっと僕もそういう人生をレスリングのおかげで送ってきたはずだ。自分でいうのもなんだけど、デンマークでは誰よりも認識されたレスラーのはずだからね。3度の五輪出場は初めてだし、84年の歴史で初めてメダルを獲得したのだから。自分のデキることは全てやり、最高の結果を残せたと思っている。

ただ2016年にメダルを取った時も、MMAで結果を残せるのかって自問自答をしていた。レスリングとMMAを同時に戦うのではなく、100パーセントMMAに専念したくなった。もし、東京を目指していれば4度目のオリンピック出場もなっていたと思う。でも、2016年にレスリングは引退した。もうやり切ったし、MMAにフォーカスしたかったんだ。

MMAをやり切りたいと思ったからね。自分の可能性を最大限に引き出すチャレンジがしたかった。幸運にもレスラー時代から、世界を回って色々な国のオリンピック・センターでトレーニングもできた。レスリングでやるべきことはやり遂げたと思っている。だから、MMAでも同じように自分の力を出し切れる環境で練習をしたいと思い、今回はキャプテンとヘンリー・セフードの下で3カ月間、試合の準備をしてきたんだ。

この環境で練習していると、放っておいても自分が強くなっていることが分かる。ライト級のトップとしてやっていけるという確信を持てたよ」

──デンマークでは、米国のような練習はできないということですか。

「デンマークのMMAは、もの凄い勢いで成長しているよ。それでも正直、MMAではまだ第3世界だ。それでも、ここ3年のMMAの発展は凄いし少なからずとも、僕も寄与できていると思う。僕がUFCデビュー戦を戦った大会は、コペンハーゲンのロイヤル・アリーナで行われ1万2000人以上のファンが集まったんだ。

ただし、それ以前はデンマークにMMAの歴史はなかった。僕自身、MMAに転向を考えた時に相談した相手はデンマークのレジェンド、マーティン・カンプマンだったんだ。当時、クレイ・グイダの所属しているチーム・アルファメールのコーチを辞した彼は、デンマークに帰国した直後だった。

そしてマーティンは僕がMMAファイターになる手助けをしてくれた。どういう練習から始めれば良いのか、そこからマーティンに指導を受けた。ただし、僕が住んでいた街からコペンハーゲンまで車で片道90分も掛かり、朝の練習をして夕方の練習まで時間をつぶさないといけない。夜の練習を終えて、家に戻ると11時だ。全くもってチャレンジングな日々だったよ(笑)。

フェラーリと馬ぐらい、米国とデンマークでは環境が違うけど……あの日々は、僕にMMAファイターとしてやっていけるという自信を与えてくれたんだ。そして、さらに強くなるために、自分の能力を最大限に引き出してくれる練習環境を求めるようになった。それを今回、アリゾナで見つけたんだよ」

<この項、続く>

■ UFN ESPN29視聴方法(予定)
8月22日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC FIGHT PASS

The post 【UFC ESPN29】グィダ戦へ、五輪グレコ銀=マーク・マドセン─01─「もしTOKYOを目指していれば……」 first appeared on MMAPLANET.