IBA Champions’ Night | January 17, 2025 | Yerevan, Armenia
Venue – Sport and Concert Complex after Karen Demirtchian
Address: Tsitsernakaberdi zbosaygi 1, Yerevan
Start 18:00
1 60kg BAZEYAN Artur ARM – MURJA Ardit ALB 6 rounds
2 67kg HARUTYUNYAN Ararat ARM – PARASCHIV Alexandru MDA 6 rounds
3 63.5kg TONAKANYAN Karen ARM – CHILAEV Anis TJK 6 rounds
4 71kg MADOYAN Gurgen ARM – ABDUKAKHOROV Kudratillo UZB 6 rounds
5 66.7kg BAYSANGUROV Khuseyn RUS – SANCHEZ Leonardo VEN 10 rounds PRO
6 92kg MANASYAN Narek ARM – NNAMDI Austine NGR 6 rounds
7 +92kg CHALOYAN Davit ARM – KUDUKHOV Vitaly RUS 8 rounds, 1/4
8 72.6kg SOSULIN Pavel RUS – BACARO Carlo РHI 10 rounds WBA Asia
カテゴリー: KAREN
【写真】試合運びの安定感は増してきた(C)MMAPLANET
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
Def.3-0:29-28.29-28.29-28.
エジナ・トラキナス(ブラジル)
KARENがフェイントから距離を詰める。エジナは下がりながら左右ロー、右ストレートからハイを蹴る。KARENの左インローに右を合わせるエジナ。KARENはスイッチするも距離を詰められない。中距離から右ストレートを当てるKAREN。エジナの右とハイは届かず。しかしエジナの手数が多い。左ジャブ、前蹴りを当てるエジナは、さらに右スイングから左ハイを見せる。
ワンツー+右ハイのコンビネーションを見せるエジナに、KARENが飛び込んでニータップからドライブしたが、エジナが左腕でギロチンに捕らえる。KARENはエジナの顔面を押して剥がそうとするも、エジナは背中を着けて絞め上げる。腰を上げながらスペースをつくったKARENだが、首は抱えられたままラウンドを終えた。初回はジャッジ3者がエジナに10-9をつけている。
2R、KARENが前に出て左前蹴りを伸ばす。インから右を突いたKARENに、エジナが左右フックを振るう。KARENの前蹴り、ローに右を合わせるエジナ。KARENは右ストレートをボディに伸ばした。エジナの右をブロックしたKARENは、左前蹴りをボディに突き刺す。KARENがレベルチェンジからダブルレッグでテイクダウンを奪う。
ケージ際でハーフガードのエジナが下から右腕で首を抱え、KARENの左足を跳ね上げる。スイープを凌いだKARENに対し、エジナは再びハーフに。エジナの右腕を外したKARENが左腕を枕に肩固めを狙うか。しかしエジナのガードも固い。KARENは右ヒジを落として削った。このラウンドもジャッジ3者がKARENの10-9とした。
最終回、組むチャンスをうかがうKARENに対し、エジナは左ジャブを突いて中に入れさせない。右ストレートから強引に組んだKARENがケージに押し込む。左腕を差し上げたKARENが、小外刈りから背中を着かせた。ケージに押し込まれたエジナがKARENの右腕を狙うも、ケージに掛かっている指をレフェリーが剥がす。するとエジナは左腕に狙いを変えた。
深く腕を抱え込んだエジナを潰していくKAREN。右ヒジをこすりつけながら立ち上がったKARENは、右パウンドを落とし、さらに右ヒザを顔面に押し付けて左腕を抜いた。再びガードを上げてKARENの右腕を取ったエジナだが、十字を極めきることはできなかった。
裁定はジャッジ3者とも29-28でKARENの勝利に。最終回はエジナの腕十字の仕掛けを評価したのであれば、その前のギロチンは評価されないのか……。ともあれ、安定感を増したKARENがストロー級QOPC、ソルト×藤野の勝者に挑むこととなるか。
【写真】有終の美ではないかもしれないが、終わりを見て現役生活を全うしている (C)MMAPLANET
本日29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、アトム級QOPのSARAMIがホン・イェリンとノンタイトル戦で戦う。
Text by Shojiro Kameike
3月に同王座決定トーナメント決勝で沙弥子を48秒で下したSARAMIにとって、あの右ストレートで一発の勝利は何を意味したのか。その後、パンクラスイズム横浜を離れ、毎日のように違う場所でトレーニングの日々を送る。
「この生活も長くは続けられない」というSARAMIに3月のKO劇と今、そして──これからについて尋ねた。
――もう次の日曜日にホン・イェリン戦を控えているSARAMI選手ですが、今一度3月のアトム級王座奪取について話をきかせてください。見事過ぎる右ストレート一発のKO劇。格闘技生活で、一番の喜びようだったのではないかと。
「あの瞬間は『嘘でしょ!!』っていう感じでした」──そこから笑顔の時間が、凄く長かったです。
「アハハハハハハ。北岡(悟)さんや、矢澤(諒)君は『パンチで倒す』と思っていたらしいです。いつか、パンチで倒すと。北岡さんにはずっと前から言われていました。でも、私はできないだろうって思っていたんです。女子で一発KOなんて、ないじゃないですか。まさか自分がするなんて思っていなくて(笑)。打撃に自信があるわけじゃないので」
──ただ、あのパンチです。練習をしてきて、成長しているという風に自分で感じることはなかったですか。
「自分の右のパンチが凄く強いという実感はありました。打ち方とかも、凄く考えてきたので。それは分かっていたけど、試合でソレを出せるとは思っていなかったです」
──あの勝ち方をこれからも続けたいという想いは?
「ないです」
──本当ですか。それを想って戦えないかもしれないですが、どこか少しでも残っていないですか。
「えぇぇ……。また、したい気持ちはありますけど。アレを狙うと、絶対にできないです。自分の攻めをしているなかで、ああいう偶然が起これば良いかなって。あのパンチを狙うと、自分のスタイルが崩れてしまいます。私の試合はドロドロで、勝つ時も負ける時も。殴り合いって誰でもできるので、それは余り格好良いとは思えないんです」
──練習仲間、女子選手たちの反応はどうでしたか。
「びっくりしていました。練習では私は打撃が上手くはないので。男子も女子も当てっこゲームが上手な人が、練習では打撃は上手です。思い切り打てないから、試合とは違うと思っています」
──ぶっちゃけてKO勝ちとタイトル奪取、どちらの方が嬉しかったですか。
「一発KOです」
──ずっと練習を続けてきて、あのKO劇があって良かったと本当に思います。
「私の人生にこんなことがあるんだって。本当に。私、格闘技の試合で勝って、お客さんが盛り上がる瞬間──あの気持ち良さって多分、結婚式をする時の気持ち良さよりも上だと思うんです。なのに、あんなKO勝ちしちゃうと、もう最高ですよ」
──そんなタイトル奪取後、所属先が整体北西に変わりました。
「もともとトーナメント中もパンクラスイズムで練習するのは1度か2度で。ジムの面子も変わっていく中で、私が格闘技をやる場所はイズムではなくなってきたように思えたんです」
──練習場所が所属名になったわけではないですよね。
「ハイ。私がずっと体を見てもらってきた整体です。北西(英司)さんはパンクラスができた頃から、選手の体を診ていて、格闘技の試合も物凄く見ている人で。フォースタンス理論に出会えたから、こっちに出てきて少し結果を残せたと思っています」
──イズムを離れる時、どこかジムの所属になろうと考えることはなかったですか。
「それは今も迷っています。決まった練習場所があることは大切だと思うので。ただ試合がもう決まっていたから、そこままという感じできました」
──今、練習場所はどういう風になっているのでしょうか。
「なかなか、色々なところに行っています。行動範囲は相当に広いですよ(笑)。女子選手がいるところに、練習に行かせてもらっていて」
──では万智選手ばりに1週間のルーティンをお願いします。
「月曜日は朝から仕事をして、夜は坂口道場に行きます。火曜日は昼ぐらいにKRAZY BEEに行き、夕方は元町にあるクロスフィットでパーソナルトレーニング。夜はカルペディウム三田のレスリングクラスに参加したり、しなかったり。水曜日は1日仕事をして、行けたらファイトベースに。木曜日も1日仕事して夜に東中野のトイカツ道場。金曜日は昼にマスタージャパンでグラップリング、夕方は国立に体の使い方のコンディショニング・トレーニングに行って、夜に整体をして帰って来ます。
土曜日は朝から仕事をして、夕方に千葉の市川市にあるトランセンド・ジムでロッキー川村さんにミットを持ってもらっています。で日曜日の朝にJTTに女子練習ですね(笑)」
──仕事をしながら……ですよね。1週間で7位置の練習を。
「やばいですよね(笑)」
──その原動力は何なのでしょうか。
「不安だから。やらないと不安なんです。もちろん毎週 、完璧にやっているわけじゃないですけど、この生活と練習を維持するには心もお金も、体力も大変です」
──そうですよね。
「だから、これをずっとやっていられないなって。引退も近いのかなって思っています」
──それでも結婚式よりも嬉しいモノがMMAでの勝利なわけですよね。
「結婚式をしたことないんですけどね(笑)。私は結婚して子供も欲しい。だからずっとできない」
──そうなると限られた試合のなかで、今回はタイトルマッチでないですが、その辺りはどのように思っているのですか。
「ホン・イェリン戦が用意されたことに、全く不満はないです。ちゃんと強い相手ですし、国際戦が戦いたかったので。用意してもらった相手に、今の全てをぶつけます。対戦相手の格とか関係なく、準備したことを全て出します」
──それは右ストレートですね(笑)。
「違います(笑)。塩漬けです。もう、ああいう勝ち方はないし、一度したから思い切り漬けにいけます(笑)」
──女子は比較的行き来ができていますが、これからのキャリアをどのように考えていますか。
「目標がなんなのかよくわからない状況ではあるんですけど、海外でやりたいです。もう日本人は皆やったし、今さら新しい子とやる必要はないかなって。めちゃくちゃ強い外国人にメチャクチャにやられたら、辞めることができるかなって」
──刹那的ですね。
「もう私、敵わないんだっていう経験をしたら辞められるかなって」
──その将来を望むとしても、メチャクチャ強い外国人を戦うためには次の試合でしっかりと勝つ必要があるかと思います。どのような試合にしたいですか。
「…………(じっくりと考えて)、攻め続ける。とにかく攻め続けます」
■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT
■Pancrase347 計量結果
<ライト級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也:70.15キロ
[挑戦者] 久米鷹介:70.3キロ
<ストロー級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] ソルト:51.95キロ
[挑戦者] 藤野恵実:52.1キロ
<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 押忍マン洸太:76.95キロ
[挑戦者] 佐藤生虎:77.1キロ
<ライト級次期挑戦者決定/5分3ラウンド
葛西和希:70.55キロ
天弥:70.65キロ
<女子アトム級/5分3R>
SARAMI:48.05キロ
ホン・イェリン:47.75キロ
<バンタム級/5分3R>
井村塁:61.4キロ
カリベク・アルジクル・ウルル:61.65キロ
<ライト級/5分3R>
粕谷優介:70.7キロ
ホン・ソンチャン:70.5キロ
<女子フライ級/5分3R>
端貴代:56.65キロ
渡邉史佳:56.8キロ
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN:52.1キロ
エジナ・トラキナス:51.9キロ
<フェザー級/5分3R>
糸川義人:65.9キロ
栁川唯人:65.95キロ
<ストロー級/5分3R>
野田遼介:52.5キロ
船田侃志:52.55キロ
<バンタム級/5分3R>
安藤武尊:61.45キロ
ギレルメ・ナカガワ:61.55キロ
<2024年ネオブラッドTフライ級決勝/5分3R>
岸田宙大:56.7キロ
山﨑蒼空:57.1キロ
<フライ級/5分3R>
時田隆成:56.95キロ
齋藤楼貴:56.95キロ
<バンタム級/5分3R>
友寄龍太:61.1キロ
渡邉泰斗:61.5キロ
【写真】よくパスできた──それほど厳しそうだったカリベク・アルジクル・ウルル(C)MMAPLANET
明日29日(日)に立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347の計量が、28日(土)に品川区の目黒セントラルスクエアU-NEXT内カンファレンスルームで行われた。
Text by Manabu Takashima
計量開始の15分前に会場に到着すると、驚いたことにエレベーターホールに井村塁と対戦するカリベク・アルジクル・ウルルが座り込んでいるではないか。しかも、喉に指を突っ込む荒療法で懸命で唾を吐いており、相当に減量が厳しい様子だ。
そのアルジクル、計量の際はフラフラになって下着を脱いで体重計へ。空気的にアウトのように見えたが、450グラム・オーバー規約ジャストの61.65キロでクリア。あれだけの状態でも体重を落とし切った気迫のパス──明日のリカバリーもそうだが、試合中の気持ちの強さは相当だと恐怖すら感じるアルジクルだった。
メインで雑賀ヤン坊達也の持つライト級王座に挑戦する久米鷹介も本計量スタート時間のギリギリまでトイレにこもるという緊急事態を思わせたが、彼もまた下着を脱いでパス。と、久米の下半身を隠していた布をレフェリー陣が外すのが早く──会場の人間には、TVに写せない部分の毛髪が確かに確認されていた。
この計量の模様は生配信されていたが、カメラマンさんのグッドジョブで画面は寄りになっており、久米もまたアルジクルとは違った意味で危機一髪のところでアウトにならずにすんだ。
またMMAPLANETが追う計量後の握手問題。男子はするが、女子はしないという定説だが──全15試合中、握手が見られなかったのは3試合。それがストロー級QOP選手権試合=ソルト×藤野恵実、SARAMI×ホン・イェリン、端貴代×渡邉史佳お3試合で全て女子マッチと定説は裏付けされることに。
とはいえ女子勢は握手でなく、距離をとって互いに一礼するという健闘のたたえ合いをしていた。
その女子の流儀に従おうとしたKARENを呼び止めて握手をしたエジナ・トラキナスは、体重計の上で何やら手話のようなモノを披露していたが、これは「ジーザスの導きが、唯一の道」というようなことだったようだ。
キルギス、ブラジル勢とともに韓国からやってきたホン・イェリン。彼女のセコンドにはGladiatorからONE FFに転じたイ・スンチョルの姿が見られ、次戦は2025年になってONE FFでなくONE FNデビューが予定されているとのことだった。
■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT
■Pancrase347 計量結果
The post 【Pancrase347】計量よもやま話。アルジクル・ウルル、あ、あぶないっ!! 久米鷹介──危機一髪!! first appeared on MMAPLANET.
【写真】 どれだけ女性の前で下ネタをしようが、これだけ格闘技について熱く語ってくれるのはMMAPLANETでは◎です(C)MMAPLANET
29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、天弥がライト級次期挑戦者決定戦で葛西和希と対戦する。
Text by Takumi Nakamura
3月のパンクラス立川大会で天弥は松本光史と対戦し、2Rに松本をストップ寸前まで追い込み、文句なしの判定勝利を収めた。わずかキャリア4戦目で、元修斗王者にして30戦以上のキャリアを誇る実力者を下したことはアップセットと言っていい勝利だったが、天弥自身は「1㎜も負けるとは思わなかった。立ちでもスクランブルでも組みでも負ける気はしなかった」と言ってのける。
葛西戦は同じ日に決まるライト級王者(雑賀ヤン坊達也×久米鷹介の勝者)への挑戦権をかけた一戦。天弥はさらにその先を見据えたうえで、葛西戦での勝利、そして王座奪取を目論んでいる。
どっちが世界でやっていけるか
――今大会では葛西選手とライト級次期挑戦者決定戦として試合が決まりました。試合が決まった時はどんな心境でしたか。
「自分が松本(光史)選手とやったあとに葛西選手と丸山(数馬)選手の試合が決まっていて、次はその試合で勝った方になるんじゃないかなってパンクラスさんから伝えられていたんですよ。もし丸山選手が勝っていたら次期挑戦者決定戦じゃなかったと思うんですけど、自分的には試合経験を積みたかったんで(葛西丸山の)勝った方とやることはOKしていました。それで葛西選手になったって感じですね」
――葛西選手との対戦は想定していたわけですね。ファイターとしてはどんな形で印象を持っていますか。
「結構(試合を)長い間やっていて、11勝3敗って、そうそう簡単な数字じゃないと思うんですよ。そういうレコードを残して、これだけ長い間ずっとトップ戦線にいるんで、油断できないですよね。でも自分としては倒さなきゃって感じです」
――油断できない相手ではありつつ、倒して勝つことは今回のテーマのようですね。
「ですね。葛西選手が丸山戦後のマイクで『俺もトップ戦線でやっていける。世界と戦うんだ』と言って、僕と久米(鷹介)さんの名前を出したと思うんですけど、自分の方が歳も若いし、世界でやるのは俺の方が先だよって思ったので、だから実際に試合をやって、どっちが世界でやっていけるか(を見せたい)って気持ちもありますね」
――天弥選手としては受けて立つくらいのつもりだ、と。前回の松本戦は天弥選手の評価を変える試合だったと思うのですが、ご自身では勝つ自信を持って戦った試合だったのですか。
「世間はそういう予想だったと思うんですけど、自分の実力は自分が一番分かっているんで、1㎜も負けるとは思わなかったです。立ちでもスクランブルでも組みでも負ける気はしなかったです」
――その自信は日々の練習で身につくものでしょうか。
「練習のメンツがメンツですからね。基本はHEARTSとNEVER QUITで、たまに(中村)K太郎さんのところに行って、ですね。よくMMAスパーリングするのは安藤晃司さん、菊入正行さん、ISAOさん、江藤公洋さん。海外でも戦ってきた日本のトップ選手たちと毎週練習しているんで(対戦相手が)この人たちより強いのかよ?って思っちゃいます。例えば安藤さんと5分間殴り合ったりしたら、他の選手はこんなことやれないだろうと思うんで、やっぱり自信になりますよね」
――それだけ自信があったからこそ作戦や対策を立てるのではなく、全局面で勝つという意識だったんですね。
「はい。作戦は特になくて、全力でぶつかってやろうって感じです」
――その一方で元修斗世界王者で、40戦近いキャリアがある松本選手に勝てたことは自信になったのではないですか。
「それはありますね。やっぱ元(修斗)チャンピオンに勝ったんで。『これいけちゃうんだ、俺』って思いました」
――試合内容もフィニッシュではなかったですが、松本選手にしっかり勝つという内容だったと思います。
「KO勝ちって見た目も派手だし、完全決着がつくものですけど、見る人によっては『一発当てただけじゃん』とか『マグレじゃん』みたいに言う人もいるわけですよ。あと『アイツは持ってる』みたいに言われるのも、すっげぇ嫌で」
――勢いで勝っていると思われるのは心外だ、と。
「全部それで片付けられちゃうのはどうなの?って。それだったら3Rフルに使って、しっかりボコボコにしてやろうと。松本戦は、自分から行き過ぎて後半はバテちゃったんですけど、最後まで圧倒して勝とうと思っていました。自分は勝った試合が1RKOだったから、僕の評価って『キレる打撃を持っている』ぐらいだったと思うんで、それを変える試合だったと思います」
キツイ際の攻防は自信があるんで
――では3Rフルでやれたことも意味がありますよね。バテたことも経験と言えば経験ですし。
「そうですね。KO勝ちしちゃうと、逆に3Rやる機会がないんで。ある意味試合でバテたっていうのも経験と言えば経験なんで。あとは3Rのゲームメイクというか、そこも実戦で学びましたね。ああいう展開になって3Rをどうゲームメイクするか」
――松本選手はキャリアもあるので戦い方や試合運びも上手いですよね。
「そうなんですよ。やっぱり後半の方が戦い方が上手かったですよね。でも僕も2RにKO寸前まで追い込んで、3Rはポイントアウトしながら寝かせて、バック取ってパウンドみたいな戦い方をしたじゃないですか。あれも大沢さんの指示だったんですよ」
――どういう指示が出ていたのですか。
「2Rが終わったあとのインターバルで、大沢さんから『疲れただろ?』と言われて。やっぱり2Rの最後にフィニッシュしようと思ってダッシュしたから(スタミナを)使っちゃったんです。そしたら『3Rは戦い方を切り替えよう』と言われて、自分もそれが出来る自信があったから『分かりました』って答えて、3Rはああいう戦い方をしました」
――なるほど。でもああいう切り替え方ができことも驚きでした。
「そこは大丈夫です。キツイ際の攻防は自信があるんで」
――松本選手に勝ったことでライト級の国内トップにいるという意識も出てきましたか。
「今の自分はそのくらいにいるんだなって思います。次も組みでいくなら組みでもいいし、特に作戦も練っているわけじゃないんで、僕は練習してきたものを出そうかなぐらい、です」
――天弥選手は将来的に海外で戦うこと、UFCを目標にしていると思います。そこを目指す以上、国内では全局面で勝つつもりでやるという考えもあるのですか。
「そういうのはあるんですけど……まだ自分自身にそこまで自信を持ってないというか。松本選手に勝ったとはいえ、 やっぱり普段の練習では公洋さんたちとか、あのレベルの選手になるとやっぱりやられるんですよ。で、みんな世界でやっているわけじゃないですか。そういうメンツとラウンドをこなすと、みんなラウンドごとに違うんです──味が」
――まだ練習では差を感じる部分はある、と。
「でもそういう相手に対して、ようやく色々できるようになってきているんですよ」
――何か分かり始めた部分もあるんですね。
「はい。なんかUFCにはUFCなりの打撃の流れというか、ラウンドごとのポイントの取り方や作りがあるじゃないですか。それはBellatorにもONEにもあると思っていて、戦う舞台によって試合の組み立ても違うんだなって」
――それは戦況によっても変わりますよね。
「それを体で味わえているんですよ。だから試合で出していけたらな──ぐらいには思っているんですけど、葛西選手が出させてくる相手なのかなって思ったら、そうは思わないんで、全力でやりきります」
――試合で強さを見せる一方、普段の練習で自分の未熟さを感じることが出来る。いい意味で天狗になれない環境は選手にとっては最高だと思います。
「鼻を伸ばそうと思っても壁があって伸びません(笑)。あの先輩たちと練習していたら、天狗になれないし(格闘技の)厳しさを教えてくれる人たちなんで、ありがたいです」
個人的には久米選手とやりたい
――この試合に勝てば、次は雑賀ヤン坊達也×久米鷹介の勝者に挑戦する形になります。
「僕的にはヤン坊選手の方が楽で、久米選手の方がしんどい試合になるだろうなぐらいの想定なんですけど、個人的には久米選手とやりたいですね」
――それは久米選手のこれまでのレコードや実績を考えてですか。
「久米選手はアキラ選手に負けるまで7年ぐらいベルトを持っていたし、あれだけキャリアが長いのに(実力が)落ちないじゃないですか。前回も粕谷(優介)選手を3R圧倒していましたよね」
――久米選手は息の長い選手ですし、年齢・キャリアを重ねてもパワフルなファイトスタイルが変わらないところも特徴的です。
「なんか久米選手を倒して日本から出たいんですよ。久米選手はライト級で日本最強なんじゃないかと言われた時期もあったじゃないですか。そう言われる選手ってやっぱり何か特別なものを持っていると思うんで、そういう相手を倒したいです」
――フィニッシュするだけじゃなくタフな展開になっても競り勝つ強さも持っていますよね。
「日本でああいうタフなMMAができる選手って久米選手くらいじゃないですか。あの辺もちょっと経験したいですね」
――マッチメイク的な部分でいえば、ヤン坊選手と戦った方がKO決着必至のエキサイティングな試合になりそうです。
「打撃戦になると思うんで、どっちが立っていられるか試合になるでしょうね」
――例えばどちらの選手とも戦いたかったりしますか。
「やりたいっす。自分は日本のトップ選手とバンバンやりたいし、そうやって経験を積んで、海外にいきたいです」
――そういう意味でもベルトを巻くことでマッチメイク的な可能性が広がっていくと思いますし、やはりベルトは必ず巻きたいですか。
「ベルト……そうっすね。まあ獲っておきたいっす。やっぱりベルトを巻けば、僕の名前がパンクラスとか格闘技の歴史に刻まれるわけじゃないですか。僕がネオブラを獲ったのも、アマチュア修斗・アマチュアパンクラスの全日本を獲ったのもそうで、自分の名前を検索した時に出てくる獲得タイトルとかレコードって、自分を知ってもらうのに1番分かりやすいじゃないですか。『ベルト巻いてんだ』、『あの大会で優勝しているんだ』みたいな」
――天弥選手は必ずターニングポイントになるところで獲るべきものを獲ってきたわけですね。今日本から色んな選手たちが海外の団体に出ていて、今年のRoad to UFCでは日本人選手が全員ベスト4敗退という厳しい現実もあります。天弥選手も海外での活躍を目指す選手として、この結果をどう受け止めましたか。
「RTUに出ていた日本人選手はみんなレスリングが強かったじゃないですか。で、日本国内だとやりたい試合が出来ていたと思うんですけど、RTUでは出来ていなかった。そこら辺のゲームメイクが最近は大事だなと思っていて、打撃をポンポン当ててテイクダウンを取るのと、テイクダウンを見せて打撃を当てるって簡単なリズムではあるんですけど、それを試合で出すのが難しいんですよ」
――それが出来たとしても、どちらか一方になってしまいますよね。
「そうなんですよ。だから河名(マスト)選手も原口(伸)選手も、結局組んで抱きついて止まっちゃうじゃないですか。だったらもうちょい打撃の時間を割いてやった方がいいと思いました。だから僕自身は全グラフを均等に大きくしていって世界に出て、打ち合いが強い・打撃が強い選手なら組みを見せて削って、打撃で倒すみたいな。そういう全局面できる選手になって世界に出たいです」
――今は判定でもダメージが重視される傾向にありますが、天弥選手はもともとそういったダメージ重視の考えなのですか。
「やっぱり相手からしたらダメージを食らうのが1番嫌じゃないですか。よくRNCでも口塞いだりする選手とかいますけど、ああいうのを淡々とできる選手って強いと思います。頭の回転も速いだろうし。テイクダウンを狙ってしがみついて何とかとする、上を取ったままキープして終わる選手が多いけど、そういう選手は何を目的にやっているんだろうと思っちゃうんです。
あれはただ時間が過ぎていくだけじゃないですか。試合はパフォーマンスを見せる場なのに。自分はそういう考えが…ちょっと分からないです」
――なんにせよ格闘技は強さを示す競技。ジャッジする側がこのところコントールよりも加打に重きを置いていますね。
「最初から判定を狙って戦うことが評価されなくなってきて、自分はそれが本来のMMAなんじゃないかなと思います。組み技・寝技になったらサブミッションを狙う、パウンド出来るポジションを探す…そういう練習が必要だと思います」
――逆に組み技出身の選手が殴る意識を持てばスクランブルや寝技の動きも変わるでしょうね。
「絶対それがあるはずなんですよ。それこそレスリングとか柔道とか組み技のバックボーンがある選手は“殴る”ことを頭に置いていれば、それができる場面ってたくさん出てくると思いますよ。僕が打撃出身だからそう思うのかどうかは分からないですけど」
――天弥選手からすると「なぜ、ここで殴らないの?」と思うことも多いですか。
「逆に組み技出身の選手からすると、同じ場面を見ていても『ここで殴るの?』と思うことがあるだろうし、もしかしたらそこは打撃系と組み技系で分かり合えないのかもしれないですね」
――それは天弥選手が打撃格闘技出身で、そこからMMAに入って組み技を覚えたからこその感覚かもしれないですし、天弥選手にしか見えないMMAの世界もありそうです。
「自分はあると思っています。例えば相手を寝かして、相手が立ち上がろうとする瞬間、絶対に顔(のガード)が空くんです」
――顔をガードしたまま立ち上がるのは無理ですよね。
「絶対マットに手をついて立つんだから。だったらそこで寝かせにいくより、殴ってダメージ与えた方がいいじゃんって思うんです。がぶってコンロールするより、殴っておいて上体が浮いたところでまた下にテイクダウンに入れば削れていきますよね。自分はそういう見方をしているから、発想そのものが違うんだと思います」
――それがさきほどの「打撃系と組み技系で分かり合えないのかもしれない」ですね。今は組み技出身選手が海外の団体に挑戦するパターンが多いですが、天弥選手のような打撃出身選手が世界に出ていく姿も見たいですし、今のMMAにおいては天弥選手のように、組みを踏まえて“殴る”意識を持つことが必要だと思います。
「僕はそこが大事だと思うし、その意識が日本人には必要だと思います。この前のオリンピックを見ても、日本ってあんなにレスリングが強い国じゃないですか。絶対にダメージを与える意識を持つ選手が増えれば、その先(コントロールの先)にいけるはずなんで。自分も今後はレスリングもやっていくだろうし、練習環境ももっともっと整えて日本人が世界で勝っていきたいですよね。で、自分はそこにいく確信を持っているんで、みなさんも楽しみにしていてください」
■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT
■Pancrase347 対戦カード
<ライト級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也(日本)
[挑戦者] 久米鷹介(日本)
<ストロー級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] ソルト(日本)
[挑戦者] 藤野恵実(日本)
<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 押忍マン洸太(日本)
[挑戦者] 佐藤生虎(日本)
<ライト級次期挑戦者決定/5分3ラウンド
葛西和希(日本)
天弥(日本)
<女子アトム級/5分3R>
SARAMI(日本)
ホン・イェリン(韓国)
<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
カリベク・アルジクル ウルル(キルギス)
<ライト級/5分3R>
粕谷優介(日本)
ホン・ソンチャン(韓国)
<女子フライ級/5分3R>
端貴代(日本)
渡邉史佳(日本)
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
エジナ・トラキナス(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
糸川義人(日本)
栁川唯人(日本)
<ストロー級/5分3R>
野田遼介(日本)
船田侃志(日本)
<バンタム級/5分3R>
安藤武尊(日本)
ギレルメ・ナカガワ(ブラジル)
<2024年ネオブラッドTフライ級決勝/5分3R>
岸田宙大(日本)
山﨑蒼空(日本)
<フライ級/5分3R>
時田隆成(日本)
齋藤楼貴(日本)
<バンタム級/5分3R>
友寄龍太(日本)
渡邉泰斗(日本)
【写真】J-MMA界、最強の女子タッグチーム (C)SHOJIRO KAMEIKE
29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、藤野恵実がソルトの持つストロー級QOPに挑戦する。
Text by Shojiro Kameike
2023年から国内女子MMAが急展開を見せている。そんな状況を象徴するのが藤野と杉山しずかの存在だろう。プロデビュー当時からジュエルス~DEEPを主戦場としていた杉山が、今年からパンクラスに参戦し、7月には重田ホノカをニンジャチョークで下して初めてベルトを巻いている。
藤野はパンクラスのベルトを失ったあと、昨年まさかの修斗参戦を果たす。インフィニティリーグから修斗世界女子ストロー級のベルトを獲得し、戴冠後の初戦がパンクラス王座挑戦に――。練習を共にし、互いにセコンドにもつく藤野と杉山に激動の展開を語ってもらった。
「ベルトを獲って当たり前というふうに見ていました」(杉山)
――本日はJTTでの練習前に、リモートでインタビューとなりました。まずはお二人とも戴冠おめでとうございます。
杉山 ありがとうございます!
藤野 私はだいぶ前ですけどね、アハハハ。
――これまでのキャリアを考えると藤野選手が修斗で、杉山選手がパンクラスのベルトを獲りに行くというのは意外でした。
杉山 そういえばそうですね。
藤野 確かに。まず修斗からオファーを頂いたのが意外でした。私としては、たくさん試合がしたかったんですよ。コロナ禍が明けてからも試合数が制限されたり、海外選手と試合を組んでもらってもキャンセルが続いたりしていて。そんな状態の時に、修斗インフィニティリーグ出場のオファーが来ました。
私もずっと『強い選手と試合がしたい』とは言っていたけど、津田(勝憲氏)とも『いっぱい試合がしたいよね』という話もしていて。インフィニティは2カ月に1回絶対に試合できるし、さらに勝てばベルトに到達できる。こんなチャンスないかな、と思ってインフィニティ出場を決めたんです。
――杉山選手は藤野選手が修斗のベルトを巻いた時は、どのように見ていましたか。
杉山 私はずっと藤野さんのセコンドについていて、ベルトを獲って当たり前というふうに見ていました。もちろん嬉しいですけど、驚くとか、凄く感情が動くというよりは、流れの中の通過点というか。「達成した!」という感覚はなかったですよね。
藤野 うん。
杉山 藤野さんが初めてパンクラスでチャンピオンになった時は、一緒に練習させてもらい始めてから時期も近い試合だったんですよ。だから凄く緊張感はありました。『絶対に獲ってほしい!』という気持ちは強かったし、みんなで獲りたいという想いがありました。
でも今回は、藤野さんも凄く緊張していたでしょうけど、自分でも『勝って当たり前』と言い聞かせていたはずで。あくまで通過点だから、達成した感じはないと思いますよ。
藤野 そんなことはないよ(苦笑)。
杉山 アハハハ。次はもう一度パンクラスのベルトを獲りに行きますけど……、もともとパンクラスに戻ることは決まっていたんですか。
藤野 いや、決まっていなかったのよ。だから修斗のベルトを獲ったあとにパンクラスからオファーが来たのが意外で。だって私はエジナ・トラキナスにもKAREN選手にも負けているから、王座挑戦の資格はなくなっていると思っていて。
――それでも藤野選手の中では、パンクラスのベルトを獲り返したいという気持ちは強かったのですか。
藤野 強かったですね。でもエジナに負けて『ベルトが遠ざかっちゃったなぁ』と思って。そこでチャンスを頂いたから修斗で試合をしたあとに、まさかパンクラスでタイトルマッチをやらせてくれるとは……面白い展開ですね。
――急展開すぎて、こちらも驚いています。最初はどのような経緯で、お二人が一緒に練習するようになったのでしょうか。
藤野 練習を始めてから、だいぶ経ちますね。最初はJTTの前にあったマーシャルアーツジムで、しぃやんが働き始めた頃です。『じゃあ一緒に練習しようよ』という話になって。たぶん最初は私の顔を立てて、練習でも受けに回ってくれていたと思うんですよ。だけど、どんどん強くなっていきましたね。
杉山 いやいや、そんな……。
藤野 しぃやんは成長スピードが凄い。だからここ数年は「杉山はメチャクチャ強い」という評価もされているのに、試合中にポカしちゃったり、なぜか攻め切れないところがあって。
パンクラスでも重田選手には勝って当たり前だと思っていたんですよ。ただ、試合だから何が起きるか分からない。でもメンタルとかで攻め切れないとかがなければ、普通にやれば絶対に勝つ。試合ではいつもどおりの強さを見せて勝ってくれたから嬉しかったですね。「これが杉山しずかだよ!」って。パンクラスに出始めてからは安定していて、「この強さが当たり前だよね」って見ています。
杉山 ……藤野さんの、その言葉を信じてやってきたような気がします。
藤野 普段から「強い、強い、もっとできるよ」と言っていますもん。
杉山 そうやってマインドコントロールしてもらっています(笑)。
藤野 私は思ったことを言っているだけよ。
杉山 そう、藤野さんは嘘をつかないから。自分が「こうだよ」と思ったことは絶対に言ってくれるし、「こうじゃないよ」と言ってくれることは絶対に嘘じゃないから。
――藤野選手が嘘をつけるタイプなら、インタビュー中に「下はパンツ一丁ですから」とは言わないでしょうね。
杉山 それはセクハラですよ。
藤野 アハハハ!! リモートだから下半身は見えないし。「カメラを下に向けないでくださいよ」という意味でね。
杉山 リモートならカメラを下に向けるのは自分でしょ(笑)。
――アハハハ! 杉山選手の試合は、フィニッシュはスイープからニンジャチョークを極めています。試合後、藤野選手がSNSで「いつもやられている技」と投稿していました。以前から練習では極めていた技だったのですか。
杉山 結構やっていました!
藤野 何回も打ち込みとか練習台になっていたので、昔から知っていました。食らったことがないと、完全にセットされるまで警戒しないかもしれないです。「あぁ首の下に手を回されているな。まさかコレは極まらないよな」ぐらいで。最初は上を取っているし、「ヤバッ」という感じがしないから。
――最後のニンジャは起き上がった瞬間に腕が入っていました。重要なのは、その前のリバーサルですよね。
藤野 そう、リバーサルがメッチャ巧かった。
杉山 練習では1千万回ぐらいやっているんですよ(笑)。でも試合では、ああいう展開になったことがなくて。今までは一方的にやることも多かったし、一方的にやられることも多かったですからね。
私がやったのはファンクロールという、レスリングの技で。自分でもスクランブルは強いと思うんですよ。最後まで取り取れるかどうかは分からないけど、スクランブルの面はやっている人と、やっていない人の差が凄く出ると思います。
――練習では藤野選手もコロコロと転がされていたわけですか。
藤野 私は下になるので、スイープの態勢にならないですね。
――ということは組むと、藤野さんが下になることが多いのですね。
藤野 多いどころか、全部テイクダウン取られますよ。
杉山 藤野さんはテイクダウンには来ないから。
藤野 行っても取れないんだもん(苦笑)。押し込むとニンジャを仕掛けて来るし。
「修斗もパンクラスも、よくやらせてくれるなぁと思って。本当に感謝しています」(藤野)
――なるほど。その杉山選手が巻いたベルトを見て、ご自身も改めてパンクラスのベルトを獲り返したいと思いましたか。
藤野 しぃやんのベルトもそうだし、やっぱり最初にベルトを巻いたのがパンクラスだったので、思い入れがあります。ずっと獲り返したいと思っていましたね。
――勝てば修斗とパンクラスの同時2冠王で、これは史上初ではないでしょうか。
藤野 そうですよね。修斗もパンクラスも、よくやらせてくれるなぁと思って。本当に感謝しています。
――では杉山選手から藤野選手への応援メッセージをお願いします。
杉山 今回のベルト挑戦って、本当に得るものしかないと思うんですよね。藤野さんの試合内容で修斗のベルトの価値も上がるし、パンクラスのベルトの価値も上がる。藤野さんとしても、女子のベルトの価値を上げたいと思っているでしょうし。そのために力になれることがあれば、どんな形でも私を使ってほしいです。
藤野 すでに試合もないのに毎週5Rのスパーリングをやってくれていますからね。
杉山 だって、それは私がやってもらっていたから。
――ということは、お互いに何カ月も5Rのタイトルマッチに向けたスパーをし続けているのですか。
藤野 私は重田選手とタイプが違いすぎるから、他の選手にも入ってもらっていました。しぃやんは器用で何でもできるので、付き合ってくれるんです。
――同時2冠王者となれば、交互に防衛戦を行うことになるかもしれません。
藤野 それは凄いなぁ。ただ、私は海外で戦いたい気持ちもあります。今でもUFCとの史上最年長契約を目指していますから。そのためにも、まず次の試合で勝ちます。
■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT
【写真】迷いなく、最後のリングへ(C)SHOJIRO KAMEIKE
29日(日)、埼玉県のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN48で、浅倉カンナが伊澤星花と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
2014年10月のデビューから10年、浅倉がプロMMAキャリアにピリオドを打つ。現在26歳——まだ引退には早いとも思われるが、レスリングを始めてから20年が経ち、現在は本人も気持ちがスッキリしているという。なぜこのタイミングで引退を決めたのか。プロデビュー~RIZIN 女子スーパーアトム級GP優勝~コロナ禍の苦難と、引退試合で伊澤星花という頂点に挑む意気込みを語ってくれた。
――浅倉選手に初めてお会いしたのは、まだプロデビュー前にパラエストラ柏で練習していた時でした。あれから10年ほど経ち、当時10代だった浅倉選手がラストファイトを迎えるというのは、なんだか不思議な気持ちです。
「あぁ~、前のパラエストラ柏ですよね。10年は結構長い期間ではあるけど、振り返ってみれば『あっという間だったな』と思います」
――なぜこのタイミングでラストファイトなのか。その理由からお願いします。
「引退を決めたのは去年の秋頃でした。自分の中では『これっ!』っていう理由があるわけではなくて。だけど今までは常に目標があって、他の選手の試合を観ると燃えてきて『私も試合がしたい』と思っていたんです。でも最近は、その気持ちがなくなってきていました。中途半端な状態でしたよね」
――……。
「私の中の格闘家って、常に燃えていて毎日ハードな練習をして――というイメージなんです。ずっと自分もそうでしたしね、今は自分自身が格闘家として毎日を過ごすことができていない……、そう感じて引退を考え始めました」
――以前からファイターとして燃え上がる時と、燃え上がらない時の波があった。ここ数年はその燃え上がらない状態のまま試合に臨んでいたのでしょうか。
「そうですね。何かモヤモヤというか、いろいろ考えながら格闘技をやっていました」
――本能や直感で動くということではなく?
「はい、そうです」
――その言葉を聞いて理解できました。後出しジャンケンになってしまうかもしれませんが、ここ数年の試合について「どこに向かって試合をしているのだろうか」と感じていたのは事実です。特にコロナ禍の前後から……。
「正直、そういう部分はあったと思います。海外選手とも試合がしたいけど、コロナ禍で私が海外で試合をすることも、日本に選手を呼ぶことが難しくなって。国内の選手との試合が組まれるなかで、『自分はどこを目指していけばいいんだろう?』とは考えました。
その時は感じていなかったけど、思い返せば少しその変化はありましたね。そんな状況で伊澤選手が自分の勝てなかった選手を倒していくことで、私自身はモチベーション迷子になっていったと思います」
――当時その伊澤選手に勝てば、自身の敗戦をひっくり返せるという考えに至るファイターもいます。むしろファイターとは、そうあってほしいとも思います。
「分かります。でも、う~ん……『自分には遠くなったなぁ』という気持ちになっちゃったんです。あと自分はパク・シウ戦でボコボコにやられてしまったじゃないですか。伊澤選手はそのパク・シウ選手にも勝っている。『どこまで練習して試合をしたら、あそこまで辿り着けるんだろうか』と考えてしまったんですね。自分は勝ったり負けたりのファイターだったので、迷いは生まれました」
――勝ったり負けたりと仰いましたが、2017年からは8連勝しています。そのなかで、RIZIN女子スーパーアトム級トーナメントで優勝もしました。当時は自信がみなぎっていたのではないですか。
「自信というか勢いはありましたよね。試合ごとに自分の成長を感じることができて、それが楽しかったです」
――浅倉選手は当時20歳、プロデビューから4年目でした。そのキャリアで、RIZINで駆け上がり周囲の期待も高まっていくことに対して、気持ちは追いついていましたか。
「……当時は何も気にしていなかったです。ただ強くなること、目の前の試合になることだけを考えていました。今のように深く考えるようなことはなくて、負けてもすぐに気持ちを切り替えることができていましたし。とにかく強くなることが楽しかったです」
――その気持ちが徐々に変わっていったのは、2018年の大晦日の浜崎朱加戦以降ですか。
「2戦目(2021年3月に判定負け)のほうですね。次の試合も大島沙緒里選手に負けて、初めて連敗を経験したことも大きかったです」
――試合に対する気持ちが落ちていった場合、練習は……。
「試合は勝ち負けがありますけど、練習はもともとキツイものですからね」
――あの鶴屋浩代表の指導ですし。
「アハハハ! でも当時は練習も楽しかったです。とにかくガムシャラに練習していて。だけど当時と今では状況が変わったんですよ。あの頃は私が年齢も一番下で、周りはお兄さんばかりでした。でも今は後輩もできて、練習でも自分より年下のほうが多い時もあります。そうなると後輩——重田ホノカやKARENの試合が決まったら、練習を見てあげたいし。だから楽しさは変わらないけど、練習に対する気持ちは変わっていたかもしれないですね」
――浅倉選手は現在26歳ですが、競技年齢も考慮しないといけないですからね。
「あぁ、そうですね。レスリングを始めたのが年長さん(5~6歳)で、格闘技を始めてもう20年になりますから」
――重田選手のインタビューで浅倉選手のことを訊くと、「もしかして浅倉選手はファイターとしての活動より、後輩の成長を見ているほうが楽しいのかな」とは感じました。
「それはあります。ホノカもKARENも自分で努力できるタイプだから、私が何かするってことはないんですよ。でもずっとジムには女子選手がいなくて、私も出稽古とかに行っていたし――それが今は男子だけでなく女子も、ジムの中で全ての練習ができる。そういう環境で彼女たちと一緒にいるのは楽しいです」
――ラストファイトの後はジムの指導者に加わるのでしょうか。
「そこは難しいですね。まだ自分が引退した後に、どういう気持ちになるのか想像がつかないんです。だけど後輩たちの試合は見続けていきたいです。でもこのまま練習に参加し続けると、私がボコボコにされることのほうが多くなりますから。それは悔しくなっちゃいます(笑)。
自分でも引退後に何をするかは、まだ何も固まっていなくて。ファイターではなくなってしまうので、ちゃんと考えないといけないです。よく『すぐ復帰するんでしょ?』と言われますけど(苦笑)」
――ラストファイトで戦う伊澤選手は、間違いなく現在の国内女子MMAで最強のファイターの一人です。その伊澤選手に勝てば、まだMMAを続けたいという気持ちになるのも当然だとは思います。
「私の中では、伊澤選手に勝つことでスッキリ辞めることができると思います。この試合に全てを懸けていますし、しっかりと燃え尽きますよ。ずっと気持ちもモヤモヤしていたのが、引退を決めてからは吹っ切れて練習に臨むことができていますから」
――ラストファイト、しっかり見届けさせていただきます。ちなみに浅倉選手LOVEを広言している重田選手は、引退することを伝えた時に悲しんではいなかったですか。
「今回はホノカに、初めてセコンドについてもらいます。パンクラスのタイトルマッチで負けて、彼女も悩んでいるとは思うんですよ。私のセコンドにつくことで少しでもモチベーションが上がってくれたら嬉しいし、次はホノカにあの舞台を目指してほしいです」
■RIZIN48視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
女子ストロー級。
新谷は2021年に7月に『WARDOG.31』でプロデビュー。同年10月に『PANCRASE324』に参戦し、後にストロー級王者となるKARENにヒジでカットされTKO負けで初黒星を喫するも、WARDOGに戻るとプロレスからの復帰戦となるマドレーヌに1Rアームバーで一本勝ちするなど連勝。昨年8月には広島で行われた『TORAO COLORS』で修斗に初参戦。原田よきを判定で下した。現在3連勝中。
グワーンジェンも新谷と同じく2021年にプロデビュー。デビューからWFL MMAで2連敗したが、その後2連勝。前戦は『JCK Fight Night 70』に出場したが、一本負けで戦績を2勝3敗としている。
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27.
ホン・イェリン(韓国)
イェリンが細かくジャブと左フック、KARENも右ローを蹴る。イェリンが右ミドル、KARENの右ローに右ストレートを合わせる。KARENの蹴りをバックステップでかわしてワンツー、KARENの右ストレートに右ストレートを返し、右ストレートから左フック、右ローを手数を増やす。
ジャブの差し合いからKARENが組みつくと、イェリンがKARENをケージに押し込む。イェリンはKARENの足にヒザ蹴りを入れ、KARENも態勢を入れ替えてテイクダウンする。イェリンはガードポジションから三角絞めを仕掛け、それを外したKARENがトップキープする。残り30秒、イェリンが腕十字を狙ったところでラウンド終了となった。
2R、KARENがジャブと右ロー。イェリンも右ストレートと左フック、左ミドルを蹴る。KARENがジャブと右ストレート、イェリンはKARENの蹴りに右ストレートを伸ばす。イェリンが右フックを見せると、KARENが右ストレートを返す。組みの展開になるが、すぐに離れる両者。KARENはイェリンの右ストレートにシングルレッグに合わせてテイクダウンを奪う。
KARENはイェリンの頭をケージに押し付けてパスガードを狙い、ヒジを入れる。イェリンが体を反転すると、がぶったKARENがボディにヒザ蹴りを入れる。KARENはイェリンの体をケージに押し付けてギロチンを狙いつつ、イェリンがKARENをケージに押し込んで立ち上がったところでラウンド終了となった。
3R、イェリンが細かくステップしてジャブをつく。KARENは右の前蹴り・右ストレートから組み付き、シングルレッグでテイクダウンする。ハーフガードでトップキープするKARENがヒジを入れる。KARENはアームロックを狙いながらヒジを入れ、イェリンが体を起こすとバックキープも狙いながらパンチを入れる。
イェリンは亀になって足を取りに行くが、KARENがそれをつぶしてパンチを落とし続ける。残り1分を切ったところでKARENがバックを取ってRNCへ。イェリンがそれをしのいだところで試合終了。テイクダウン&グラウンドも交えて攻め続けたKARENが判定勝利を収めた。
The post 【Pancrase342】TD&グラウンドも交えて攻め続けたKARENがイェリンに判定勝利 first appeared on MMAPLANET.【写真】試合後もこの表情が見られるか(C)SHOJIRO KAMEIKE
明日29日(月・祝)に立川市の太刀川ステージガーデンで開催されるPancrase342で元フライ&スーパーフライ&ストロー級KOP砂辺光久が、1年10カ月振りの実戦復帰を果たし前田浩平と対戦する。
Text by Manabu Takashima
44歳になった砂辺にとってパンクラス登場は実に4年10カ月振りとなる。なぜ、このタイミングなのか──。1993年はUFC活動開始の年でなく、パンクラスの旗揚げ戦のあった年と断言する砂辺のパンクラス愛とハイブリッドレスリングへの拘りの言葉の数々が聞かれた。
──試合自体が1年10カ月振り、このタイミングでパンクラスに戻ってきたのは?
「30周年記念大会に必ず出たかった。それがあります。5年前に北方大地に負けて、ベルトを彼に手渡した。あの瞬間に全て終わったと感じました。あの時、後々振り返ってみると会見の時から何まで、もう疲れてしまっていました。『何回目ですか、この調印式? 8年も僕、チャンピオンですよ』っていう風で。
でも北方選手はリベンジに燃えている。僕は6年間以上負けずに16連勝とかしている途中で、RIZINにキックで出てスコッと負けて。やり返したい北方選手の数年間の想いが詰まった試合で、負けた。なんか大きな役目をやり終えて、肩の荷が下りたというか。なんとなくですが、『ここには戻ってこないだろうな』と言う風に自分のなかで一区切りがつきました。
ただしパンクラスに最後の恩返しとして、地元・沖縄でパンクラスの大会を開く。でも発表後にコロナになり、おかしなことですけど『何かの力が働いてパンクラスと俺の間を止めている流れがあるな。もう、このケージに戻ることはない』と。あれからは好きだから格闘技を続けるという風にしていました。
3歳下の仲間、宮城友一がトップ戦線浮上を狙って頑張っている。教え子の当真桂直も頑張っている。その姿をサポートする立場で見ていて、彼らから刺激を受けつつもパンクラスに自分が戻るという風にはならなかったです」
──それでも、戻って来る気持ちになったのは?
「そんな時にRIZINの沖縄大会に声を掛けて頂き、ポンポンと2つ出て。結果は振るわなかったですけど、反響は大きかったです。僕がデビューして23年、パンクラス王になるということに拘り続けて──パンクラスで3階級のチャンピオンになっても得られなかった知名度を、RIZINで負けても得てしまう……。そこには自分のなかでも複雑な想いがあります。パンクラス、RIZINから声が掛かれば行こうかという想いはあっても、自分が試合に出たいと手を挙げることなかったです。
そうこうしているうちにパンクラスが30周年記念大会を開くようになった。今、現役で選手をしている人達のなかで1993年のパンクラス旗揚げを──ライブで観戦したわけじゃないですけどVHSのビデオでリアルに体感している人って、レジェンドの方々を除くともういないと思います。掌底、レガース、ヒールホールドが禁止になった──そんなパンクラスの歴史を体現し、語り継ぐことができる人間は自分しかいない。だから30周年記念大会で、一つ楔を打ちたい。『俺、まだここにいるよ』と……これが正しい表現方法か分からないですけど、今回の試合はハイブリッドレスリングをするつもりです」
──それこそ、その意味合いを理解できる選手たちが少なくなっていると思います。
「ですよね。MMA、総合格闘技を戦っていても僕の動きはハイブリッドレスリングです。それを今のパンクラスのファンの方に──『こんなヤツいたんだ』、『昔はこんなことをしていたんだ』というのを見てもらいたいというのがあります」
──フライ級で戦うというのは?
「もうフライ級でしか戦わないと思います。ストロー級の52キロで戦うには2カ月前から減量を始めて、1カ月前にはヘロヘロになっている。体は辛い、でも一生懸命に練習をする。翌日になってもキツイ。それをずっと続けていると、もう練習がしたくないと思うようになっていたんですよね。そこまでやっても北方選手に、僅差でもなんでもなく負けた。あそこまでやっても結果が出ず、宝物にしていたモノを奪われた。あの辛さを経験したことで、健康的に格闘技を戦おうというマインドに変わりました」
──そんな砂辺選手ですが、今回の試合前は以前のようにグランドスラムで調整をしていないそうですね。
「それは沖縄に、それだけの環境が整ったからです。あの頃、平良達郎がデビューをしていたのか、していないのか。沖縄にいると松根(良太)さん以外にチンチンにされることはない。なので強い練習相手を求めて横浜で合宿をさせてもらっていました。
今回も行こうかとも考えましたけど、沖縄でできるなと。特に達郎と肌を合わせると、毎回勉強になります。達郎は親身になって教えてくれますし。沖縄は凄く良い環境になったと言えます」
──逆に沖縄に練習にいく選手が増えています。
「そうなんですよ。松根さんが創った環境、そこで生まれた平良達郎の影響はデカいです」
──CROSS X LINEという自身のジムを持ち、THE BLACKBLET JAPANでのプロ練習に参加する。ただ修斗沖縄大会では沖縄勢同士が戦うことがあります。
「当真がTHE BLCKBELT JAPAN勢との試合が決まると、僕も練習にいくのは控えます。でも、もう旭那拳とのタイトルマッチ以外では交わらないので、当真も僕も週に2回お世話になっています」
──ところで5年間勝利から遠ざかり、44歳になった砂辺光久の力をどのように自己評価しているのでしょうか。
「なんか吹っ切れたんですよ、5年前に負けた時に。そして平良達郎がUFCと契約する前から、その成長振りを体感してきました。彼と触れることで、どんどん広がっているモノがあると感じています。
同時に最強を目指すことを辞めました。前はストロー級で一番になりたかった。でもパンクラスへの思い入れがあるので、他で戦うのではなくて『こっちに来いよ』という姿勢でした。それが最強でなく最高を目指すようになって……高山×ドン・フライ、あれって僕のなかでは最高なんです。プロとして凄く最高で。
ただ技術的に何か優れているということは一切ない。僕がこれからやらないといけないのは、技術を見せて何連勝をする……というのは難しいけど、勝った上で最高の作品を一つでも多く残すこと。残したいと思っています。
言ったらRIZINで前田吉朗とやった試合。あれってオジサン同士の総合格闘技じゃないですか。MMAが磨かれている時代に逆行したモノを見せて、最高だと思ってくれる人が多かった。あれほど強い人がいる場で、僕と吉朗が尖ったことをして下半期ベストバウトに選ばれた。人の心を動かす──そこに憧れを持ち続けてきました。1993年は僕にとってはUFCが始まった年ではなくて、パンクラスが始まった年です。それから、ずっとパンクラス、パンクラス、パンクラスで来ました。なので、これからはパンクラスにとって最高の作品を1つでも出していきたい」
──高山×フライは両者の共鳴が必要な殴り合いでしたが、前田選手は自身のIMMAF時代から積み上げてきたMMAをぶつけるために、共鳴どころか拒否をしてくることが予想されます。
「今までもそうなんです。田原しんぺー、室伏シンヤはMMAで僕に向かって来た。結果、田原しんぺーはパワーボム(腕十字をスラム)、室伏シンヤは喉輪落とし(ジャンピングガ―ド&ギロチンをスラム)でKOされました。プロレスラーの僕が、プロレスの技で勝った。修斗の人が修斗で戦い、パンクラシストがハイブリッドレスリングで勝っただけなんです。
前田選手は順調に結果を残せている選手ではないですが、辞めないで続けている。強いヤツらに揉まれてきた。どういう選手であっても、僕は自分の持っているパンクラスへの愛情であったり、ハイブリッドレスリングへの拘りを貫くつもりです。北方大地をジャーマンで投げたとか。試合がどうだったねとか、ゲームプランがどうだったではなくて、『アイツのアレ、面白かったね』というモノを一つでも多く創り出したいです」
──UFCが最高の舞台で、若いMMAファイターには最強を目指してほしい。何より、MMAは勝敗が絶対という姿勢を自分は持ち続けますが、砂辺選手に関しては、噛めば噛むほど味が出る「都こんぶ」のようになってほしいと思っています。
「僕のパンクラス30周年はまだ終わっていなくて。今回の試合に勝ったら、パンクラスの扉を開けた男──稲垣克臣(1993年9月21日のパンクラス旗揚げ戦、第1試合で鈴木みのると対戦)を引っ張り出したいと思います!!」
──その試合が実現するなら、ぜひリングでお願いします。
「そうですね、ロープエスケープ有りで」
■視聴方法(予定)
4月29日(月・祝)
午後1時30分~U-NEXT
■Pancrase342 計量結果
<ストロー級暫定王者決定戦/5分5R>
黒澤亮平(52.15キロ)
リトル(52.05キロ)
<ライト級/5分3R>
粕谷優介(70.70キロ)
久米鷹介(70.70キロ)
<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(77.55キロ)
長岡弘樹(77.35キロ)
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(52.05キロ)
ホン・イェリン(51.40キロ)
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(70.40キロ)
ホン・ソンチャン(70.00キロ)
<フライ級/5分3R>
砂辺光久(57.00キロ)
前田浩平(57.20キロ→57.10キロ)
<ストロー級/5分3R>
寺岡拓永(52.25キロ)
氏原魁星(52.10キロ)
<フェザー級/5分3R>
糸川義人(65.85キロ)
櫻井裕康(66.50キロ→66.10キロ)
<バンタム級/5分3R>
坂本瑞氣(61.35キロ)
谷内晴柾(61.25キロ)
<ネオブラッドT 2回戦 フライ級/5分3R>
饒平名知靖(56.65キロ)
名久井悠成(56.55キロ)
<ネオブラッドT 2回戦 フライ級/5分3R>
山崎蒼空(56.85キロ)
AXEL RYOTA(56.95キロ)
<フライ級/5分3R>
田中亮祐(56.35キロ)
齋藤桜貴(57.15キロ)