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【Special】J-MMA2023─2024、鈴木千裕「僕が突き抜ければ、日本のRIZINが世界のRIZINになる」

【写真】とにかく外連味のない返答が連続しました(C)MANABU TAKASHIMA

2024年も早くも1カ月が過ぎようというなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、こらからの1年について話してもらった。
Text by Nakamura Takumi

J-MMA2023-2024、第十八弾はRIZINフェザー級チャンピオン鈴木千裕に話を訊いた。

クレベル・コイケ戦の一本負け→ノーコンテスト後、スクランブル出場の154ポンド契約体重戦でパトリシオ・フレイレをKOして世界を驚かせ、ヴガール・ケラモフを下からのパウンドで倒し世の中を震撼させたRIZINフェザー級チャンピオンは、徹底して本物に拘り、世間を騒がせる平本蓮をぶった斬った。そして──これからも二刀流で世界を構築することを高らかに宣言した。

■2023年鈴木千裕戦績

6月24日 RIZIN43
──1R2分59秒 by 腕十字 クレベル・コイケ(ブラジル)
※クレベルの体重超過により、ノーコンテストに

7月30日 Super RIZIN01
○ 1R2分32秒by KO パトリシオ・フレイレ(ブラジル)

11月4日 RIZIN LANDMARK07
○1R1分28秒by KO ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)


──最初にお伺いしたいことは、12月10日の渋谷での会見です。アレを視た千裕選手が激高していると、実は山口(元気)会長から電話を頂いて……。「もうRIZINには出たくない」まで言っていたとか。

「あぁ……あの時は、ですね(笑)。僕のなかで大晦日って1年の締めくくりだと思ってきたんです。明確なリーグ戦ではないけど、この1年間に結果を残して……一番優秀な結果を残してきた人間のステージだと。アレを視るとそうじゃなくなっていたので、なんか方向性が変わったのかなって。『俺、こんなの出たくない』って思っちゃったんですよね。でも僕以外でも皆、思っているはずですよ」

──その大晦日、5月6日(※後に4月29日に変更)に金原正徳選手の挑戦を受けることが発表されました。

「ハイ。結果を残したヤツが出られるのが、大晦日だと勝手に僕が思っていただけで。そうじゃなくても大晦日の大会に出られるもんなんだと。それは、それで良いです。そっちの枠はそっちの枠で盛り上げてもらって、本物枠がちゃんとあった。本物枠で僕は頑張れば良い。そっちの枠がないと、そっちの層には見られない。本物枠がないと、こっちの層が見なくなる。そういうバランスの上で、大晦日は成り立っている。

あの時は腹が立ちましたけど、僕らがやっている格闘技は結果が出る。本物しか残らないですからね。だから本物枠でない奴が、本物に突っかかって来るなら──もう、殴るしかない(笑)。僕が思う本物じゃない格闘家とは、100回やったら100回勝てるって思いますね」

──その千裕選手が本物でないとした選手が、ここでMMAに本気になってくれるのか。

「皆、それで勝つ人は勝ちますし。不思議なことに口で盛り上げても、試合内容は面白くない。もう答えは出ています。だから、俺がRIZINを世界にすれば良い。本物じゃないヤツらが入ってこられない、強い外国人を日本に呼んで戦う、そうなっていけば良いと思っています」

──ズバリ、平本蓮✖YA-MAN戦はどのように映ったのでしょうか。

「あれはキックボクシングで(苦笑)。実際に平本はMMAの選手に勝っているわけじゃなくて、キックボクサーに勝っているだけで。だからMMAファイターとは言えないんじゃないですか。MMAファイターは弥益(ドミネーター聡志)さんだけで。弥益さんとの試合は頑張ったと思います。でも、怪物君(鈴木博昭)、YA-MANとの試合はほぼキックボクシングで。荻原(京平)選手、斎藤(裕)選手とMMAの選手には勝てていないわけであって。でも世間は分からないですよね。だから、別に構わないですよ」

──YA-MAN選手はしっかりとMMAの練習をしてきたと思いました。腕を差して、胸を合わせて体を入れ替えるとか。一朝一夕ではできないだろうと。

「あっ、そうッスね。でも、当たり前ですよ。していなかったら、失礼ですよ。それが仕事なのに。そうじゃないのが目立つから、当然のことをやっているだけで、しっかりとやっていると思われる。普通に新人王トーナメントですよ、アマチュアの。皆、言わないだけで心の中ではそう思っていますよ」

──そうですか!! いや平本✖YA-MANはあの距離で一定の時間、打撃戦を続けるという点において、組み技主体の日本のMMAファイターが越えないといけない壁と感じていたので感心して見てしまっていました。

「だって、MMAだから組めば良いわけで」

──組んで倒せない時、あの距離で戦うのが世界ではないですか。両者が外国人選手とあの距離で殴り合えるのか。そういうことを想像していました。

「あの人たちは、組んだら倒せる。それなのにあの距離で打ち合っているだけです。それにパンチ力がないから、怖くない」

──おお、そうなるわけですね!!

「だって一発貰うと倒されるパンチだと、近づけないですもん。でもお互いにパンチ力がないから、あの距離で打ち合っていられる。倒される怖さがないから、打ち合えるだけで。一発で『ヤベェ、殺される』となったら100パーセント、組みに行きますよ」

──去年の今頃、その言葉を聞いても半信半疑だったかもしれないですけど、2024年1月の鈴木千裕が言うと誰も反論できないですね。

「だって一発で殺されるという殺気を持っている相手が目の前にいたら……。例えば片手にメリケンサックをつけた相手と近距離になったら、絶対に組みますよね。どんな素人でも組みますよ。その怖さがないから、打ち合える。僕はその違いだと思いますよ。

クレベル(コイケ)選手とか、絶対に極められるという恐怖があるから皆、組まないじゃないですか。その恐怖心があるから、僕もいけなかった。その逆で、クレベル選手の打撃ができるバージョンだと皆、組みにいく。あの2人は、そういう怖いモノを持っていない。

別にパンチも強くないし、寝技もできないし、レスリングもできない。ならポコポコ打ち合うしかない。そうじゃなくて堀口(恭司)選手と神龍(誠)選手の試合は、組みがあって打撃もできるから面白い試合になる。展開が波打つので。

じゃあ、平本選手とYA-MAN選手の試合が波打っていましたか。打ち合って、ツー。ハイ、終り──だけ。それならキックで良くないですか」

──平本選手はポテンシャルが高いという見方をされますが、その辺はどのように思っていますか。

「ポテンシャルは皆が持っています。別に練習していないわけじゃないし、1日毎に1ミリずつでも強くなっている。だから全員にポテンシャルはあって、彼が特別なわけじゃない。全員にそれは言えることで。でも、それ以外のところが面白いから皆は買っているわけで。実力だけで言ったら、誰も買わないですよ。でもメディアとか、面白いから買っている。それが答えですよ」

──外連味のない返答が続いて、気持ちが良いです。

「いやぁ(笑)」

──千裕選手はSNSをどのように活用しているのですか。

「やりますけど、そんなにやらないですね。やんないなぁ。言い合いとかは、もうやらないです。そのフェーズは終わりました」

──なるほどです。そして金原選手とのタイトル戦が発表されましたが、5カ月先の試合が決まるというのは異例のことかと。

「僕自身はいつ戦うのかっていうことは、特に考えていなくて。その時期で要請されたので、『はい。やりましょう』と」

──この期間、どのように過ごそうと思っていますか。試合があれば、大好きなお金も入ってくるじゃないですか。

「アハハハハ。ハイ。本当は3月にキックの試合をやるつもりでした。3月、5月、6月、8月と試合がしたかったです。試合には出たいですよ。でも、もうそうはいかないので。それにチャンピオンになれば1試合、1試合に価値が生まれます。歴史に残る試合しかしたくないし、以前のようにポン・ポン・ポンと試合をすることは、もうできないんだなと思います。団体のチャンピオンは顔であり、看板です。誰とでも軽々しく戦うのも違うな、と。

だから金原選手との試合まで、もう練習だけですね。3月に入る前まではフィジカルに力を入れて、そこから競技練習を多めにしようと思っています」

──金原選手との試合はこの間にまた話を伺う時が来ると思います。なので今日は2024年の展望として、凄く気が早い話になってしまうのですが──金原選手との試合後は、どのような青写真を描いていますか。

「去年より1ミリでも前に進めればと思っています。チャンピオンになると応援してくれる方が増えます。良い人も、悪い人も増えます。加えて練習がなかなかできなくなる。そういう練習以外のことを如何に必要、不必要と分けることができるか。そこがポイントになってくると思います。

以前、魔裟斗さんと対談をさせてもらった時に、『俺はチャンピオンになって、メディアに出るようなると少し練習をしなくなった。ベルトを取られて、もう一度やり直そうとそういうことを止めて、練習をやりなおしてチャンピオンに返り咲いた』と言われていて」

──ハイ。

「そういう先人の言葉も聞かせてもらっています。僕も分かるんです、テレビに出たりメディアで露出している方が練習より楽しいです。だからこそ、練習をしないといけない。練習に軸を置いた生活をしないと。芸能人じゃなくて、格闘家なので。そこを見失うと、勝てなくなります」

──戦うステージもRIZINのチャンピオンになったので、その座を守っていくということでしょうか。

「そうですね。そこが一番です」

──MMAとキックの両方での活躍というのは、今年も?

「真面目な話、MMAとキックの両方って、皆、やれないですよ。やりたくても、やれない。両方で結果を残すことは、ごく一部の人間にしかできない。それは僕にしかできないと思っているので、そこは楽しもうと思っています。『一本に絞れ』とかいう人がいますけど、『あなた達はキックボクシングの練習をしないんですか?』、『しますよねぇ』、『それで試合に出ちゃいけないの?』って。お前はできなくても、俺はできるから。

ただ、それだけ。何も言うんじゃねぇって。そうやってきたら、結果的にチャンピオンになったわけじゃないですか。誰も文句言わないですよね」

──MMAは絶対的な世界の最高峰が存在していますが、キックは存在していません。キック・ルールの試合でも世界最高峰を目指したいという気持ちはあるのですか。

「そこは……どうなんですかね。今、言われたようにキックには世界最強に関して明確な答えがないじゃないですか。KNOCK OUTのチャンピオンになってもISKAだったり、どこどこのチャンピオンっていう風にチャンピオンがいっぱいる。逆にRIZINはシンプルで、RIZINのチャンピオンになったら日本チャンピオンっていう称号を手に入れることができる。

キックはどこの団体のチャンピオンになっても『K-1とやったら?』、『KNOCK OUTとやったら?』、『どこどことやったら?』って『たら?』がつくんですよ。でもRIZINのチャンピオンになったら日本チャンピオン──で、終わりなんですよ」

──国内の他のプロモーションで戦うとどうなるのか、という論議にならない絶対的な存在ということですね。

「そうなんです。他に競い合うことがない。キックは団体数が多すぎて……それを纏めるのは、僕なりに……KOすることだと。KO勝ちを続けて、『千裕選手、どこにいっても絶対にチャンピオンになるよね。どこにいっても誰も敵わないよね』って言われるようになれば、それが世界一だと思っています。回りを納得させるのが一番。

よく言われるじゃないですか、『ムエタイ・ルールだったら…………』って。でもブアカーオって昔、K-1最強って言われて、ムエタイでも最強って言われた。だから誰も勝てないですよ。でもヒジ有りができない選手が『ヒジ有りだとブアカーオに勝てないけど、K-1ルールだったらぁ』とかいうじゃないですか。そういうことを言わせなくするのが、やっぱりMMAのチャンピオンであり、キックのチャンピオンであること。それが世界一だと僕は思っています」

──千裕選手の言葉を借りると、今はMMAで日本チャンピオン。では世界チャンピオンを目指すことに関して、どのように考えていますか。

「それは自分を世界にすれば良い。今は日本チャンピオンですけど、僕が突き抜ければ『日本に最強がいるぞ』って海外から集まってきますよ。そうなれば日本のRIZINが世界のRIZINになる。現になっているじゃないですか。僕と戦いたいと言っているのはクレベル選手、ウガール・ケラモフ、フアン・アルチュレタ、パトリシオ・フレイレ。全員、外国人選手なので、勝手に世界に変わりつつある。KNOCK OUTもそうですよ、外国人選手が入ってきている。

だからKNOCK OUTもRIZINも世界になりつつあるんですよ。僕のなかで、僕は世界との戦いになっているんで。だから、それで良いんですよ」

──押忍。ところで、KNOCK OUT UNLIMITEDルールというのがあるのですが……。

「ハイ、知っています(笑)」

──ストライカーがMMAに転じる前にワンクッションを置くルールであると同時に、全局面の打撃が見られるルールをどのように思われていますか。

「凄く良いです。危険なところもあるし、皆が見たいところが凝縮されているというか。組んでアタックはできるけど、寝技の攻防がない。一般の人が見ても、面白いと思える究極の形なのかなって感じはしますよね」

──6月大会で2000万積めば、千裕選手の出場があるかも──と呟いている人の姿を見かけました(笑)。

「3000万でーす。アハハハハハ」

──ハハハハハ。今日はありがとうございました。また金原戦について話をお伺いに来ますので、宜しくお願いします。

「ハイ。また、お願いします!!」


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MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK07 ブログ 鈴木千裕

【RIZIN LANDMARK07】鈴木千裕が振り返るケラモフ戦「字が上手い人はボールペンでも筆ペンでも上手い」

【写真】所属するクロスポイント吉祥寺の入り口には激励のメッセージが寄せられた日の丸が掲げられている(C)TAKUMI NAKAMURA

11月4日(土・現地時間)、アゼルバイジャンはバクーのナショナルジムナスティックアリーナにて開催された「RIZIN LANDMARK 7 in Azerbaijan」のメインでヴガール・ケラモフをKOし、RIZINフェザー級王座に就いた鈴木千裕。
Text by Takumi Nakamura

下馬評では圧倒的不利の中、敵地アゼルバイジャンに乗り込んだ鈴木はガードポジションからのカカト落とし→下からのパウンドでケラモフをKOするという誰も予想していなかったフィニッシュで勝利を手にした。

あのカカト落としはキックボクシングとMMAの二刀流だからこそ出来た技で、そこには鈴木独自の技術体系がある。今回のインタビューでは思い切りの良さと派手な勝ち方の裏側にある緻密なMMA理論を語ってくれた。


――RIZINアゼルバイジャン大会おつかれさまでした。試合が終わってからはどのように過ごしていたのですか。

「休みは1日もなくて、おかげさまで忙しくさせてもらっています。こうして取材を受けたり、応援してくれている方々にベルトを持って挨拶に行ったり。9割僕が負けると思われていた試合だったんで、みんなびっくりしていましたし、そのなかでも僕が勝つことを信じてくれている人たちもいて。またそういう人たちのために頑張ろうと思いましたし、あの試合をきっかけに僕のことを知ってくれた人もたくさんいるので、色んなところから頑張る力をもらっています」

――ベルトを巻いたことでどんな変化がありましたか。

「説得力が違いますよね。ベルトはその団体で一番の印なので」

――もともと鈴木選手はパンクラスでデビューしていて、MMAでベルトを巻くことに特別な想いはあったのですか。

「めちゃめちゃうれしいです。キックをやる時、やるならチャンピオンになると決めていましたけど、MMAのチャンピオンになるという最初の目標を叶えることが出来て、不可能はないんだなと思いました」

――試合前に取材した時も朝からスケジュールがびっしり詰まっていて、ずっと練習している姿が印象的でした。

「いつも試合前はあんな感じなので、僕としては通常運転ですね。海外とかタイトルマッチ関係なくいい練習ができました」

――ここからは試合について聞かせてください。公開練習では計量後のリカバリーをどうしようかと話していましたが、実際にどんなものを食べてリカバリーしたのですか。

「レトルトのご飯とスープ系を持っていったくらいで、あとは現地のものを食べましたし、公開練習でも話した通り、ケバブも食べました(笑)」

――初の海外遠征でしたが、精神的には落ち着いていたのですか。

「そこもいつも通りでしたね。地方で試合するのと変わらなかったです。移動の距離が遠かったくらいです」

――ケラモフの様子はいかがでしたか。

「自国の試合なので日本で見る時よりもやりやすそうな雰囲気でした。試合当日もケラモフは声援を浴びて、僕にはブーイングが飛んでいたので」

――ではいざ試合でケラモフと向き合って、どんなことを感じましたか。

「タックルを狙う圧力を感じました。僕もそれをイメージして練習していたんですけど、ケラモフは距離感が上手かったです。あと僕としてはもっと打ち合ってくると思ったんですけど、そこはテイクダウン狙いで来ましたね」

――手堅い作戦で来たということですか。

「手堅いといかいつも通りのケラモフですよね。もしかしたら自国の試合だから派手な勝ち方をしたいのかなと思ったんですけど、そういう感じは1ミリもなかったです。自分が勝つためにやるべきことを遂行するという、ホンモノの思考ですよね」

――ケラモフが右ストレートで踏み込み、鈴木選手も右ストレートを返したところで、シングルレッグでテイクダウンを奪われました。ここから鈴木選手がガードポジションからのカカト落とし→パウンドでTKO勝利という流れでしたが、どういった狙いがあったのかを教えていただけますか。

「まずケラモフがパウンドを打ってきたときに頭を寄せる。そこで三角絞めを狙うと相手は上体を起こすので、そうなったら蹴り上げを使ってみようと閃きました。実際に僕が三角絞めを狙ったらケラモフが上体を起こしてきたんで、顔面を蹴り抜いたら手応え……じゃなくて足応えがあって(笑)、これは効いただろ?と思ったら、ほぼケラモフは失神してました。ただあのカカト落としで試合が終わるとは思っていなくて、また意識を取り戻してくると思ったんですよ」

――一瞬意識が落ちて復活する可能性もありますからね。

「だからレフェリーが止めるまで殴り続けて完全に終わらせようと思いました」

――事実上のフィニッシュとなったカカト落としですが、事前に練習していたわけではなかったんですね。

「はい。どうしても(グラウンドの顔面への蹴りは)練習できないので。ただクレベル・コイケ戦の前の沖縄合宿の時に松根良太さんに『RIZINルールは蹴り上げを使った方がいい』と言われたことがあって。それでやってみた部分はありますね。失敗したら失敗したときに考えようみたいな」

(C)RIZIN FF

――過去に試合映像を見て、蹴り上げやカカト落としのイメージがあったわけでもなかったのですか。

「ないです(笑)。でも結局は応用だと思うんですよ。僕はキックの練習でたくさんミットを蹴ってきたし、MMAでたくさんガードポジションの練習をしてきました。僕は格闘技における自分の身体の使い方を分かっているから、それを応用してカカトで顔面を蹴ったイメージですね」

――なるほど。

「自分の足の長さと距離感、どのくらい力を入れれば衝撃が伝わるか……形としてはカカト落としでしたけど、蹴りの基本的な部分はキックの練習でミットを蹴るときと同じだと思います」

――その考えは面白いですね。

「例えば字を書くのが上手い人はボールペンで書いても、筆ペンで書いても上手いと思うんですよ。ボールペンと筆ペンは別物で力の入れ方も微妙に違うと思うんですけど、字を上手く書く技術があれば、そこを応用・調整すればいいだけじゃないですか。僕はキックとMMAを二刀流でやっているから、その応用の幅が人より広い。それであのカカト落としが出来たんだと思います」

――どうしても我々もキックからMMAに転向する選手に「キックとMMAの違いは?」という聞き方をしてしまいますが、共通点はたくさんあるわけですね。

「僕は大きな違いはないと思いますよ。多少は違いますけど大差はない。むしろ違いを追求しちゃうと強くならないです。(MMAは)腰が低い構えだからローをもらいやすいとか言われますけど、だったらローをもらわない距離にいればいいし、カットのタイミングを早くすればいいと思うんですよ。それはつまり自分の身体の使い方ですよね」

――イメージ通りに自分の身体を動かすことに競技は関係ないですからね。

「逆にキックをやるからアップライトに構えて後ろ重心にする必要もないんです。そういう固定観念を持っちゃだめですよね」

――鈴木選手の構え方や打撃はキックでもMMAでもあまり変わりないように見えます。

「一緒ですよ。僕らがやっているのは同じ格闘技だし、むしろ総合格闘技には全部の格闘技の要素が入ってますからね」

(C)RIZIN FF

――当日セコンドについたパラエストラ八王子の塩田歩代表は「千裕くんは草刈り系のスイープが得意」という話もしていました。

「もちろんそれは柔術で練習していました。だから自分がやってきたことにヒントがあって、それを頭の中で整理しておいて、試合の時に出せるか出せないか。それが格闘技センスであり、格闘技の向き・不向きだと思います」

――いかに手札を持って、それどう切っていくか。それがMMAでも必要ということですね。

「みんな試合前に練習するわけだから手札は持っているんですよ。でもそれを切る勇気とタイミングがなくて、僕はそれを試合で出す勇気がある。今回のカカト落としにしても、ほとんどの選手は『カカト落としなんてやっても当たらないよな』や『カカト落としをかわされたらどうしよう』と思っちゃうんです。でもそこで僕は自分がやってきたことや自分の感覚に自信を持って思いっきり蹴った。だから勝てたんです」

――こうしてお話を聞いていると鈴木選手はすごく考えて練習していますね。

「そうですね。しっかり考えて練習して、本番では閃きや本能に任せています」

――発想も柔軟だと思うのですが、それは練習で思いつくのですか。それと自分以外の試合を見てイメージするのですか。

「どうだろうな…。格闘技をやっていれば人間の弱点が分かるじゃないですか。そこを殴るか蹴るかの違いですよね。僕はそういう発想でやっています。ケラモフが立った時、あそこからパンチは当たらないし、ヒジ打ちはなおさらですよね。でも蹴れば当たるし、無理だったら立てばいい。そういうことだと思います」

――RIZINでチャンピオンとなり、今後の可能性が大きく広がったと思います。今戦いたい相手はいますか。

「僕はチャンピオンとしてオファーを待ちたいと思うんですけど、ベラトールに乗り込んでパトリシオ・ピットブルからベルトを獲りたいですね。僕はRIZINが世界に通用する舞台だということを証明したいし、前回ピットブルに勝った時はノンタイトル戦だったので、次はタイトルをかけてやりたいです」

――ピットブルには試合直後にX(旧Twitter)で絡まれていましたね。

「そうなんですよ。ダブルタイトルマッチやろうよ、みたいな。あれはもうなめんじゃねえよって感じですよね。お前が再戦したいだけだろって」

(C)RIZIN FF

――しかもあの発言は鈴木選手がケラモフに勝った直後だったんですよね。

「はい。『千裕は俺に挑戦する権利を得た』みたいな感じで。なんで負けてる側のお前が上から目線なんだよって思いますよね(苦笑)。まあ本気でやりたがってるのかどうかは分からないですけど、本気でやるつもりならやりますよ」

――ピットブルとケラモフをKOしたRIZINチャンピオンとして鈴木選手の名前も世界に知れ渡ったと思います。これからどんな試合をしたいですか。

「ここからは歴史に残る試合をやりたいですね。すべての試合がみんなの記憶に残るような名試合をしたいです。それがチャンピオンの使命でもあるし、そういう試合を続けていけばRIZINのベルトの価値が上がると思うんですよ。簡単には挑戦できないベルトなんだなって。僕はチャンピオンとしてその役目を果たしていきたいです」

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MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK07 キック ボクシング ヴガール・ケラモフ 鈴木千裕

【RIZIN LANDMARK07】衝撃の戴冠! 鈴木が蹴り上げ→ボトムからの連打でケラモフをKOし新王者に

<RIZINフェザー級選手権試合/5分3R>
鈴木千裕(日本)
Def.1R by KO
ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)

開始早々、鈴木が距離を詰めた。低く構える鈴木に対し、ケラモフが左ハイを見せる。左ロー、右ハイと蹴りを散らすケラモフが、右クロスからシングルレッグに繋げて鈴木に背中を着かせた。鈴木は下からケラモフの頭を抱えるも、ケラモフが起き上がる。ここで鈴木の右カカト蹴りがケラモフの顔面を捕えた。倒れるケラモフの顔面に、鈴木が下からショートのパンチを連打する。するとケラモフの動きが完全に止まり、さらに鈴木がパンチを打ち込み続けるとレフェリーが試合をストップした。

ベルトを巻いた鈴木は試合後、「こんにちは! チャンピオンの鈴木千裕です。アゼルバイジャンに来て、アゼルバイジャンが好きになりました。今日勝ったので、ファイトボーナスが出ると思います。その一部をアゼルバイジャンに還元したいです。MMAとキックボクシング、二刀流を達成しました」とメッセージを送った。


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MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK07 トフィック・ムサエフ 武田光司

【RIZIN LANDMARK07】右ヒジ→右フック→パウンドアウト。地元アゼルバイジャンでムサエフが武田に完勝

<ライト級/5分3R>
トフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン)
Def.3R by TKO
武田光司(日本)

サウスポーの武田がサークリングから左インローを見せる。プレスをかけて武田にケージを背負わせるムサエフ。ケージ中央まで押し戻してきた武田のアゴを、右ストレートで跳ね上げた。武田はシングルレッグで入るも、ムサエフが離れた。ムサエフは武田が距離を詰めると右で迎え撃つ。ケージを背負った武田に、ムサエフが右ハイを浴びせる。武田はボディロックで組むも、切り返したムサエフがパンチを突き刺していく。左右にステップを踏む武田に対し、左を伸ばしてプレスをかけ続けるムサエフが右インローから右ミドルを当てる。さらに右ストレートを当ててから組んだムサエフは、一度離れて武田にケージを背負わせ続け終了間際には右ストレートを上下に散らしていった。

2R、開始早々ムサエフが距離を詰める。ステップを踏む武田に、ムサエフが右インローを打ち込む。武田も左右インローを当てながら足を使う。ムサエフが右ストレートから連打で武田を追い込み、グラウンドの展開へ。左手を枕にしてムサエフがハーフガードの武田を抑え込む。武田は下から両腕を差し上げた。上半身を起こしたムサエフ、武田はムサエフの左腕に対してキムラを狙ったか。ムサエフは胸を合わせてトップをキープする。下から抱え込んで来る武田のボディにパンチを落としたムサエフが、トップのままラウンドを終えた。

最終回、ムサエフが右インローを打ち込む。武田は距離を取ってサークリングするが、自分から攻め込むことはできない。ムサエフがワンツーから距離を詰める。スイッチしながら回る武田が左フックを当てると、ムサエフも連打で攻め込み武田をケージに押し込む。体勢を入れ替えた武田だったが、再びケージに押し込まれてしまう。ここで右ヒジを受けた武田が離れようとしたが、その顔面にムサエフの右が直撃。ダウンした武田にムサエフがパウンドから鉄槌を落とし続けてレフェリーストップを呼び込んだ。


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MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK07 アリ・アブドゥルカリコフ キック ナリマン・アバソフ

【RIZIN LANDMARK07】アブドゥルカリコフが終了間際にTDを奪ってアバソフにユナニマス判定勝ち

<ライト級/5分3R>
アリ・アブドゥルカリコフ(ロシア)
Def.3-0
ナリマン・アバソフ(アゼルバイジャン)

ガードを固めて右を振るうアバソフ。アブドゥルカリコフは前後のステップからワンツーを伸ばした。アブドゥルカリコフの右前蹴りをキャッチしたアバソフがケージへドライブする。アブドゥルカリコフがケージ際から離れたところでバッティングが発生し、試合が一時中断される。再開後、アブドゥルカリコフが左ジャブからワンツー、右ロー。アバソフが距離を詰めると右アッパーのカウンターで迎え撃った。サウスポーにスイッチしたアブドゥルカリコフの前足にシングルレッグで組みついたアバソフだが、足を抜かれて右を叩き込まれてしまう。

アブドゥルカリコフが右スピニングバックキック、右クロスを打ち込む。アバソフがシングルレッグで組んだが、アブドゥルカリコフが離れる。アバソフはパンチを振るいながらアブドゥルカリコフをケージに押し込み、左腕を差し上げた。ウィザーのアブドゥルカリコフに対し、アバソフがニータップに切り替えた。そして右足をすくい上げて尻もちを着かせるも、アブドゥルカリコフがスクランブルから立ち上がり、左右の蹴りを突き刺していった。

2R、アバソフが左ジャブからボディロックで組み、ドライブする。左腕を差し上げたアバソフは、ウィザーで耐えるアブドゥルカリコフにヒザを打ち込んだ。アブドゥルカリコフが離れると、アバソフはサークリングする。打ち合いになるとアブドゥルカリコフがアッパーを突き上げてスイッチした。アバソフはアブドゥルカリコフのスイッチに合わせてシングルレッグで組みつく。アブドゥルカリコフは右足を抱えるアバソフの側頭部に右ヒジを連打したが、それ以外の展開はなくレフェリーがブレイクする。

ケージ中央でアブドゥルカリコフの左ジャブ、さらにスイッチしてからの左ストレートがアバソフの顔面を捕える。アバソフはアブドゥルカリコフがサウスポーに構えるとシングルレッグに入る作戦か。しかしケージに背中を着けて耐えるアブドゥルカリコフが右ヒジを打ち込んで離れた。またもアブドゥルカリコフがサウスポーに構えたところで、アバソフがシングルレッグへ。ここでアブドゥルカリコフの右前蹴りが下腹部に入ったとアバソフがアピールして試合は中断された。なんとこの間にアブドゥルカリコフがアバソフ詰め寄るが、これはレフェリーが止めないといけない。再開後、アバソフが組んでケージへドライブし、ボディロックから足を掛けていくもアブドゥルカリコフは倒されなかった。

最終回、互いに左ジャブを突き合う。アバソフが一気に距離を詰めてパンチを振るうがアブドゥルカリコフがバックステップでかわした。ここで飛び込んだアバソフがアブドゥルカリコフをケージに押し込む。ウィザーで耐えるアブドゥルカリコフが体勢を入れ替えると、アバソフが離れた。会場の声援を受けてアバソフが距離を詰めていくも、アブドゥルカリコフが距離を取っている。しかしアブドゥルカリコフがサウスポーにスイッチしたところで、アバソフがシングルレッグで組んだ。アブドゥルカリコフはまたも右ヒジを打ち込むも、アバソフは足を離さない。しかしレフェリーがブレイクをかけた。ケージ中央からアブドゥルカリコフがダブルレッグですくいあげ、グラウンドに持ち込む。すぐにアバソフは立ち上がるも、再びダブルレッグからマットに手を着かせ、バックに回って試合を終えた。

裁定はアブドゥルカリコフのユナニマス判定勝ちへ。アバソフは納得いかない表情で両手を広げ、ケージを後にした。


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MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK07 キック ジャスティン・スコッギンス フェリット・ギョクテペ メイマン・マメドフ

【RIZIN LANDMARK07】マメドフが代役ギョクテペに圧勝するもフィニッシュを逃す

<60キロ契約/5分3R>
メイマン・マメドフ(アゼルバイジャン)
Def.3-0
フェリット・ギョクテペ (トルコ)

マメドフが右ロー、ギョクテペは右フックを返す。マメドフは続くギョクテペの右にダブルレッグを合わせてテイクダウンを奪うと、ケージにギョクテペの頭を固定してパンチとヒジ打ちを落とす。

マメドフが立ち上がって強いパンチを落とすと、ギョクテペはガードを固める。マメドフはギョクテペの足を振ってサイドポジションで抑え込み、ヒジ打ちを落とす。ギョクテペもブリッジでポジションを返そうとするが、マメドフはサイドポジションをキープして1Rを終えた。

2R、マメドフがスピニングバックキックからダブルレッグでテイクダウンする。ギョクテペもギロチンチョークを狙うが、マメドフは足を抜いてサイドポジションで抑え込む。ハーフガードに戻されたマメドフは、そこからパンチを入れ、ケージを背にして立とうとするギョクテペを寝かせる。

マメドフが再びサイドポジションに出ると、ギョクテペは亀になって前転。ガードポジションから腕十字を狙うが、マメドフがインサイドガードでトップキープする。ホールディングするギョクテペに対し、マメドフは確実にパンチでダメージを与える。

3R、マメドフがギョクテペのローに右ストレートを合わせる。続く右ミドルと右ストレートで前に出て、ギョクテペのギロチンから頭を抜いてハーフガードで抑え込む。パンチを入れながらサイドポジションに移行する。

ガードに戻されるマメドフだがコツコツとパンチを落とし、再びサイドポジションへ。ここからノースサウスチョークを狙うも極まらず。マメドフがジャスティン・スコッギンスの代役ギョクテペを圧倒するも、フィニッシュするまでには至らなかった。


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【RIZIN LANDMARK07】ライト級の台風の目になるか?ギョンピョがラギモフに秒殺KO勝利

<ライト級/5分3R>
キム・ギョンピョ(韓国)
Def.1R by KO
ドゥラル・ラギモフ(アゼルバイジャン)

ギョンピョがインローから右フック。この一発から前に出て左右のフックを打ち込むとラギモフがダウンし、ギョンピョは一気にパウンドを連打する。ここでレフェリーが試合をストップし、ギョンピョが衝撃的な秒殺KO勝利を収めた。


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【RIZIN LANDMARK07】ケラモフに挑戦、鈴木千裕「僕にとって打撃は打でなく、殺なんで(笑)」

【写真】ハマれば絶対。そして、ハマらない時の対処も非常に興味深い鈴木千裕だ(C)MMAPLANET

4日(土・現地時間)、アゼルバイジャンはバクーのナショナルジムナスティックアリーナにて開催される「RIZIN LANDMARK 7 in Azerbaijan」のメインでRIZINフェザー級王者ヴガール・ケラモフに挑む鈴木千裕。
Text by Manabu Takashima

7月にパトリシオ・フレイレをKOした勢いをかって、RIZINフェザー級最強の男ケラモフにアウェイの地で挑む鈴木は、随分と破天荒な発言が目立つ一方で、戦いに関しては真理をつく言葉を発することが多々ある。

シンプル&ポジティブ、鈴木千裕の言葉を決戦前夜にお届けしたい。


――追い込みの大変な時期に取材を受けていただき、ありがとうございます(※取材は10月23日に行われた)。

「取材は基本的に言っていただけると、受けます。なんか、取材を断ったりするって、スカしているみたいでムカつきませんか(笑)」

――取材は受けてほしいですが、そこは練習と休息が第一だと、試合直前の選手に対して思っています。なので断られてもしょうがないタイミングはあるとかと。

「記事にしていただくことで、僕らのコトが話題になるわけですし。それは凄くありがたいことです。デビューして間もない頃、いつか記者の人達に囲まれまくりたいと思っていて。それが叶えられたのは凄く嬉しいことです」

――ありがとうございます。ケラモフ戦に向け、どのような追い込み具合でしょうか。

「いつも通りです。そんなに変わりない、日常ですね」

――アゼルバイジャンで戦うことは非日常でもあるかと思います。そこで記者会見で一度訪れることができたのは、大きくないでしょうか。

「街を見られること、気候を知ることができるのは凄く良いことなんですけど、ぶっちゃけ変わらないですね。別にどこで試合をしようが、やることは変わらないんで」

――とはいえ飛行機の長旅もあります。

「そこは……トルコのイスタンブール経由で、かなり長くて。ただ体を動かせないのは窮屈ですけど、到着して動かせば元に戻るので。時差とか凄く心配されましたけど、アゼルバイジャンと日本は5時間の時差があって。なら5時間余分に眠れば良いだけで(笑)」

――アハハハハ。

「めっちゃ簡単なことなんで、難しく考えすぎないことです」

――ポジティブ、イケイケ志向が強みですね。

「分かり切ったことを考えるのが、本当に嫌いで。アゼルバイジャンに行くことは決まっていて、そこには時差がある。それを嫌だと言っても、しょうがないです。行って戦うのだから、なら余分に5時間寝れば良いだけで」

――心配しても、時差はなくならないと。

「そうなんですよ。そこは考えても変わらない。なら、そういう無駄なことは考えたくないんです」

――なるほどぉ。素晴らしい考え方ですね。

「『練習場所はあるの?』って心配されても、あればある。なければ、外に出て走るしかないわけで」

――いや、その考え方ができるのは強いです。あの会見での、やり切り感にも通じているようにも感じます。

「どうせ1人で乗り込むなら、行ってやろうかって。なんか、気づいたら立っていました(笑)」

――感情に身を任せた、と。

「でも乱闘になって歯が欠けると嫌なので、マウスピースは持って行きました。乱闘はあるかもと準備はしていましたけど、台に乗ったのはあの時の感情、そのままです」

――ケラモフ×朝倉未来、クレベル×鈴木千裕を並べると、今回の試合はやはり組みの展開がどうなるのか。そこが焦点になるかと。

「まぁ、試合なんでテイクダウンされないというのは難しいです。15分の攻防で、UFCの選手でもテイクダウンを取られているわけで。なのでテイクダウンをされたら、テイクダウンをされた時に考えれば良くて。組んで倒されることに抵抗はないです。クレベル選手と戦って、彼以上強い寝技の圧力はないはずなので。自信を持って寝技に応じようと思います。

とはいっても多分、僕は倒されないです。ただ格闘技に100パーセントはないから。ほぼほぼ倒されないですけど、倒されたときに――倒されないという自信があったのに、倒されると焦っちゃうじゃないですか。でも倒されたら、倒された後がある。僕らが戦うのMMAであって、キックボクシングではないので」

――寝技の攻防になるとクレベルは日本一かもしれないです。ただし、相手を立たせない。立たせてもコントロールできる能力となると、ケラモフは相当あるように思います。

「もちろん、そうです。でも、スバ抜けてはいないです。スバ抜けていたら、今頃は世界チャンピオンになっています。そうじゃないので、だからどうしたって感じで、そんな深く考えたちゃダメなんです。格闘技って凄くシンプルで。倒されたら――こうして、こうするとか考えるのではなくて、その時に見えてくる答えがあるので。

その瞬間、向き合って初めて分かる隙とかもあって。僕は感性で動く方なので――ハイ。技術はありますけど、その時に見えてくるス。今はこうして、こうこうというのはないです」

――感性、直感で動くということはそれだけ準備をしてきたということですね。

「それはもう練習はやっています。どうやって立つか、ノウハウもあります。その引き出しはたくさん持っているので。その時に合った引き出しを開けるだけです」

――同時にセコンドが言っていることを守るよりも、直感で動くという風にも言われていましたね。

「ハイ。セコンドの声は参考にする――ということです。自分で考えて動き、ピンチの時は聞きます(笑)。バックチョークを取られそうなときは、指示の通りに動きます。ピンチでない時は、僕のやりたいようにやります。塩田(歩)さんも、それで良いと言ってくれています。練習中は聞きます。練習では頭を使って、試合では感性でいきます」

――クレベル戦では奥足を取られて、倒されました。対して、ケラモフは前足を取ってくる。その違いもあるかと。

「クレベル選手との試合は、とくにかくバックを取らせたくなかったです。そこが一番でした。結果的にテイクダウンをされても後ろに回られたくなかったので、いっぱいいっぱいでした。ダブルに移行されたときもそうです、とにかく背中に回らせないことに集中して」

――となると、ケラモフはシングルからバックに回ることに長けていますが。

「取らせないことが一番ですけど、取られたら取られたなりに処理しないといけないです。それと、ケラモフはワンフックからでも極めることができます。皆は力、力と言いますけど、テクニックがあって成り立っている。立ち技でも寝技でも、足は絡ませないことですね」

――そのために、打撃の圧を掛けることができるか。MMAではレスラーなど貰っても組めば――という考え方があります。

「ハイ。でも、僕は一発で失神させることができるので。やっぱり、それが一番じゃないですかね。殴られても組めば――じゃ、僕と戦うと地面を見ている。そういう展開になるパンチを僕は持っている。だから、逆にそういう風に思ってくれている方が、都合が良いですね。殴られても良いなんて、思っていたら失神させます。僕にとって打撃は打でなく、殺なんで(笑)」

――9月24日、クレベルに勝った金原選手から「勝って来いよ」とエールを送られました。

「うるせぇんだ、分かってるよ。やるに決まっているだろって(笑)。じゃないと解説席にいないです。もちろん、嬉しかったですし、ありがたかったです。でもリスペクトを持って『分かってるよ』と」

――ケラモフに勝って、金原選手と戦うということも考えているのでしょうか。

「もちろんです。僕ら若手が引退させてあげないといけないので。それが使命なんです。RIZINはベテランが多いので、僕らのような20代の若手が勝って引退させてあげないといけない。でもベテランは強いから、勝っちゃいます。なので、いつまでも残っている。

だから僕ら若手が一発で失神させてあげて『もう俺は無理かも』――と、引退させてあげることが若手の仕事です。ベテランは若手の壁になることが仕事で。でも、若手がベテランを凌駕する分岐点は、もう近いかと。そうやってジムでも練習していて、ジムの練習で後輩にやられるようになったら、僕もお終い――引退します。だから壁になるように練習しています」

――ジムに自ら銅像を創るという夢に向かって、現時点で何パーセントまで来ていますか。

「ケラモフに勝って、銅像を創ります!!」

――では、最後に意気込みをお願いします。

「今回はアゼルバイジャンと国を代表して戦います。なので、日本の人達は皆に応援してほしいです。むしろ、応援よろしくお願いします。日本人が昔から持つ忍耐力と侍魂がどれだけ強いのかを世界に見せるチャンスだと思っています。日本を背負って戦うので、皆さん、応援してください」

■視聴方法(予定)
11月4日(日)
午後9時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN LANDMARK07対戦カード

<RIZINフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
[挑戦者]鈴木千裕(日本)

<ライト級/5分3R>
トフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン)
武田光司(日本)

<ライト級/5分3R>
ナリマン・アバソフ(アゼルバイジャン)
アリ・アブドゥルカリコフ(ロシア)

<60キロ契約/5分3R>
メイマン・マメドフ(アゼルバイジャン)
フェリット・ギョクテペ (トルコ)

<ライト級/5分3R>
ドゥラル・ラギモフ(アゼルバイジャン)
キム・ギョンピョ(韓国)

<女子ストロー級/5分3R>
アナスタシア・ヴェッキスカ(ウクライナ)
ファリダ・アブドゥエバ(キルギス)

<フェザー級/5分3R>
ホアレス・ディア(南アフリカ)
イルホム・ノジモフ(ウズベキスタン)

<ライト級/5分3R>
イリヤール・アスカノフ(カザフスタン)
ヴラディスラヴ・ルドニエフ(ウクライナ)

<ヘビー級/5分3R>
クエンティン・ドミンゴス(ポルトガル)
ショータ・ペトレミドゥゼ(ジョージア)

<ライトヘビー級/5分3R>
ハサン・メジエフ(ラトヴィア)
コンスタンティノ・メルクロフ(カザフスタン)

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お蔵入り厳禁【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:7月―その弐―鈴木千裕✖パトリシオ「Bellatorが……」

【写真】フレイレ戦の勝利後の会見の席での鈴木。この時点では、彼の米国での活躍に胸を躍らせたファンも多くいたに違いない――(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
Text by Shojiro Kameike

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾という3人のJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。

今回は柏木信吾が選んだ2023年7月の一番、7月30日に行われた鈴木千裕×パトリシオ・フレイレ戦の続編……前編から2カ月以上を経てという掲載は、当時――記事化できなかったBellatorの状況が多々あったからだ。

お蔵入り厳禁――8月の時点で氏の口から語られていた『事実』こそ、鈴木千裕がアゼルバイジャンでヴガール・ケラモフと戦うという現在に通じている。

<月刊、柏木信吾のこの一番:7月:鈴木千裕✖パトリシオ・フレイレPart.01はコチラから>


――パトリシオにしても、よく受けたなと思う試合でもありました。

「それに関していうと、Bellator側の最初のリアクションは『スズキは何か悪いことでもしたのか?』だったんです(笑)」

――アハハハ。懲罰だと?

「ハイ(笑)。スズキはサカキバラを怒らせたのか、と。パトリシオに関しては、本当は試合をすることは嫌だったみたいです。『なぜ、やらないといけないのか』って」

――実はBlack Houseでマネージメントをしているエド・ソアレスは「イージーマネーだ」とホクホク顔で話をしていましたね(笑)。

「アハハハ。パトリシオからすると嫌だけど、条件が割りに合うというか……そこにあったら取るでしょと。お腹いっぱいでも、まだ食べられるということだったと思います」

――色々な背景があって実現した試合。鈴木選手が勝利し、彼はFigth&Lifeのインタビューで今後に関して、しっかりと「一番良い条件のところ」という話をしていました。お金の話ができる選手って、強いと思います。

「うん、そうですね。その辺りのハングリーさは、結果にも出てきますね。そういうファイターが成功しているんです。ブラジル人そうで。鈴木千裕選手のパトリシオ戦は、ハングリーな選手の魅力が詰まった試合でもありました」

――この試合で勝利した鈴木選手の北米MMA界における価値を柏木さんは、どのように捉えていますか。

「大筋は変わらない」

――えっ……。

「MMA業界の勢力分布図には、影響を与えないと思っています」

――……。

「Fight Matrixで鈴木選手のランクが12位に跳ね上がりました。それは数字的にパトリシオに勝った選手が自動的に上位にランクされるということです。ただしBellatorやUFCというMMA業界においては、お祭りのなかで事故が起きた――という捉え方だと僕は思っています」

――Bellatorで再戦だろう、とか。パトリシオをKOしたのだから、UFCのアンテナに引っかかってくるのではないという期待が……。

「お祭りの時に起こった事故って言っちゃうと、それは申し訳ないのですが……パトリシオも、そこまで深く受け止めていないかと。僕の立場としては、この勝利で色々と仕掛けられるかなっていうのはありますけど。そういう期待感があって、実際にBellatorで戦うことになったとしましょう。なら、高島さんはどう思いますか?」

――簡単ではないです。

「ジェレミー・ケネディ戦とか実現したら、どうなりますか」

――勝つことは難しい。もちろん、一発で勝つ力はあります。ただし、それを連続するだけの力はまだ備わっていない。

「そういうことですよね。鈴木千裕選手が活きるマッチメイクをBellatorや北米のプロモーションが組んでいくのかといえば、それはないですよね。特にBellatorはグラップラーが多いので……そこは簡単ではないと思います。正直、パトリシオをKOしたからといって、パトリシオより強いという風にはならないと思います」

――ハイ。

「もちろん格闘技の魅力が大爆発した試合ではあったのは間違いないです。ですが、それが現状ではないかと」

――その勝負に勝ったのだから、ライズしたモノが何倍にもなって返るようになってほしい……。

「オールインして、勝ったわけです。それは本当に素晴らしい勝利でした」

――Bellatorは柏木さんと違って、あの勝敗で何かを仕掛けることはないと。

「それは……ほら、今は状況が状況じゃないですか。10月以降のことを、今のBellatorが考えることができているのか。残念ながら、そうではないと思います。本来ならBellatorでリマッチが組まれても、全くおかしい話ではないです。でも、今はそれどころじゃない――ということは、伝わってきますよね」

――Bellatorの今後が不透明すぎますし、PFLがBellatorの全選手の契約を買い取るとは思えないです。

「選手を回すこともできないですよね。PFLのシステムで、そこまで選手を抱えることはないと思いますし」

――PFLはどうなのか……。ONEの元スタッフで、凄く優秀だった人がPFLの中東の担当になったり、自分の周囲ですら色々と勘繰りたくなる動きは見られます。

「いずれにせろ、契約を満了にする期間は必要ですよね。その母体を残さないと、契約を履行でいない」

――9月以降のBellatorは凄まじい数のマッチメイクを組むようになっています。

「そうですね。だから、本当にこの状況でなければ……。逆にいえばBellatorが、こういう状態だったからパトリシオ・フレイレと鈴木千裕戦を組むことができた。RIZINからすると漁夫の利です。アハハハ、言っちゃった(笑)」

――ダハハハハ。

「同時にBellatorが通常営業していれば、米国で再戦もあっただろうし、我々の方から米国で試合を組んでほしいと伝えていました。そこは絶対です。あの試合に勝ったんだから、それはやっていますよ。でも、今はそういう状況ではない。向こうがそういう状況ではないから話はしてこないし、こっちもできないというのが現状です」

――Bellator300以降の話が、まず聞かれないです。

「ないですね。10月7日以降がどうなるのか。それが10月7日前に分かるのか(※9月13日にBellator301=11月17日大会の開催が発表された)。いずれにしても、こういう状況で生まれた試合で、あの勝ち方をした鈴木千裕選手は今のRIZINフェザー級で誰とやっても面白い選手になったんです。

一発当てると、勝負を終わらせることができる。これまで燻っていてものがあったけど、パトリシオ戦の勝利で――こんなに良い選手なんだということが伝わった。鈴木千裕という選手の生き方が集約された試合が、パトリシオ戦だったかと思います。そこが凄く分かりやすい形で、多くの人に伝わった作品となりましたね」

■視聴方法(予定)
11月4日(日)
午後10時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN LANDMARK07対戦カード

<RIZINフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
[挑戦者]鈴木千裕(日本)

<ライト級/5分3R>
トフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン)
武田光司(日本)

<ライト級/5分3R>
ナリマン・アバソフ(アゼルバイジャン)
アリ・アブドゥルカリコフ(ロシア)

<60キロ契約/5分3R>
メイマン・マメドフ(アゼルバイジャン)
フェリット・ギョクテペ (トルコ)

<ライト級/5分3R>
ドゥラル・ラギモフ(アゼルバイジャン)
キム・ギョンピョ(韓国)

<女子ストロー級/5分3R>
アナスタシア・ヴェッキスカ(ウクライナ)
ファリダ・アブドゥエバ(キルギス)

<フェザー級/5分3R>
ホアレス・ディア(南アフリカ)
イルホム・ノジモフ(ウズベキスタン)

<ライト級/5分3R>
イリヤール・アスカノフ(カザフスタン)
ヴラディスラヴ・ルドニエフ(ウクライナ)

<ヘビー級/5分3R>
クエンティン・ドミンゴス(ポルトガル)
ショータ・ペトレミドゥゼ(ジョージア)

<ライトヘビー級/5分3R>
ハサン・メジエフ(ラトヴィア)
コンスタンティノ・メルクロフ(カザフスタン)

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【RIZIN LANDMARK07】ムサエフ戦 inバクー、 武田光司「返事をする前の晩は泣いちゃってましたから」

【写真】恐怖心があり、克服する。怖さを感じるから生身の人間。武田光司、漢です(C)TAKUMI NAKAMURA

4日(土・現地時間)、アゼルバイジャンはバクーのナショナルジムナスティックアリーナにて開催される「RIZIN LANDMARK 7 in Azerbaijan」にて、武田光司がトフィック・ムサエフと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

2020年からRIZINを主戦場に戦い、直近5試合は海外勢との試合が続いている武田。今回は2連敗している中で、敵地アゼルバイジャンでムサエフに挑むという試合だが「勝ち以外はいらない」と勝利への執念を語った。


――ムサエフ戦に向けてタイのプーケットで合宿を張っていたそうですね。

「今回は『気持ちを作る』をテーマにして、10月の頭に10日間だけ行ってきました。練習場所はタイガームエタイとプーケットグラップリングアカデミーの2カ所を拠点にしていて、そこに来る選手たちはみんな強いんですよ。違う階級の選手も含めるとUFC、Bellator、ONE Championshipに出ている選手がいて、自分の動きがそういった相手にどれだけ通用するのか。ガチンコで殴り合うわけではないですが、試合をするつもりで彼らと肌を合わせてきました。今回はそういう緊張感を持った練習をすることが目的だったので10日間という短い期間にしました」

――試合前に同階級の外国人選手と練習しておくことは重要ですか。

「僕はすごくそれは大事だと思います。海外にいかないと強くなれない、日本にいても強くなれる。考え方は人それぞれだと思いますが、僕が外国人選手と試合をするにあたって、ライト級になると相手のフィジカルが異次元の世界なんですよ。だから試合前に同じ階級の外国人選手と肌を合わせて、彼らのフィジカルの強さを体感しておくことは僕にとっては必要なことですね」

――ライト級で戦う上で外国人選手とのフィジカル差をどうするかは大きなテーマだと思います。

「軽量級でも差はあると思うんですけど、フェザー級以上になると一気に外国人の身体の強さが変わってくる。ジョニー・ケース選手とやった時はそもそもの身体の作りが違うなと思いました。そういう部分でも、ライト級で生き残るうえでは色んな工夫もしないといけないと思います」

――タイで合宿は定期的に行っているのですか。

「今年は2回目ですね。前回はスパイク・カーライルからタイで一緒に練習しようよと言われて、一カ月間行っていました。今回は一人だったし、試合前ということもあって、短い期間にしました。プーケットと言うと日本のみなさんは観光地とかリゾート地みたいなイメージがあるじゃないですか。でもそれはパトンビーチと呼ばれる地域の方で、僕が滞在していた場所から1時間くらいかかるんです。逆に僕らがいた地域はジムと飯屋とタイ式マッサージ屋とサウナしかないんです」

――どちらかというと合宿地のような場所なのですね。

「はい。泊まっていたホテルから徒歩10分の場所にタイガームエタイがあって、そこからタクシーで10分くらいのところにプーケットグラップリングアカデミーがあって、滞在中はホテルと練習場所の往復でしたね」

――どのようなスケジュールで練習されていたのですか。

「朝8時くらいにタイガームエタイのすぐ近くにあるアポロファイトキャンプという場所でフィジカルトレーニングをやって、タクシーでプーケットグラップリングアカデミーに移動して、9時半からグラップリングとレスリングの練習、一度ホテルで休憩して16:30からはタイガームエタイでMMAの練習をして、一日が終わるスケジュールです。

1日3部練習だから最後の練習が終わってホテルに戻ってくると疲れ果てているわけですよ。外に出歩く体力も残っていないし、格闘技漬けの毎日で練習にも集中できて、自分とも向き合うことができました」

――さて今回のムサエフ戦、最初にオファーを受けた時の心境は?

「夏前くらいにRIZINのオフィスでミーティングをして、11月にアゼルバイジャンで大会をやるかもしれないという話を聞いて、僕は海外で試合をやりたかったので、是非やりたいと伝えました。最初は僕もムサエフ選手もそれぞれ別の相手で調整していたと思うのですが、最終的にムサエフ戦のオファーをもらって。正直僕は連敗中だったし、そんなオファーが来ると思っていなかったんですね。だから一晩考えました。正直に言うとめっちゃ怖いし、俺なんかがムサエフ選手とやってもいいの?と思いました。でもRIZINは僕にこういうチャンスを与えてくれて、最終的にやるしかないだろと決断しました」

――試合を受けるまで葛藤がありましたか。

「喜怒哀楽、色んな感情がこみあげてきて、返事をする前の晩は泣いちゃってましたから(苦笑)。ムサエフ選手はめちゃくちゃ分厚くて高い壁ですけど、こういう壁を乗り越えないと、格闘技をやっている意味も面白みもないし、僕は去年から強いヤツに挑戦するという姿勢を貫き通しているので、ここでムサエフ選手から逃げたら終わっちまうぞと思って決断しました」

――今回の試合は武田選手にとってターニングポイントになる試合だと思います。

「海外の選手とやるのは一戦一戦が分岐点ですよね。ダミアン・ブラウン戦はRIZINデビュー戦&初めて欧米選手と戦って、試合前にヘルニアで腰がぶっ壊れていて、ろくな試合が出来ずにファンにボロクソに言われて。それからカーライルに一本負けして、ケースとザック・ゼインに勝って、ガジ・ラバダノフとルイス・グスタボに連敗したけど、次はムサエフ選手と試合が決まって。本当にたくさんチャンスをいただいていますよね。なぜかは分からないけど」

――それは試合結果だけじゃなく、武田選手が『また外国人選手と戦うところを見たい』と思わせるものを試合で見せているからではないですか。

「実は僕、それがすごく嫌いなんですよ。そう思っている周りに対してではなくて、そう思わせてしまっている自分自身に対して。やっぱり勝負だから勝ちたいんですよね。『あの選手と判定までいったからすごいね』や『負けたけど試合が面白かったよ』じゃなくて、勝たないと意味がない。勝つための過程が必要なことも分かっていますけど、最後は勝たないとダメなんです。だからムサエフ戦は何が何でも勝ちにいくし、勝ち以外はいらないです」

――格闘技には色々な価値観があると思いますが、あくまで武田選手は勝負にこだわる姿を見せていきたい、と。

「格闘技はエンターテイメントの側面もあるし、個人をどう売るかという意味ではタレントに近いものもあると思います。でも僕はどんなジャンルでも勝負はあると思っていて、例えばオーディションを勝ち抜いて役をもらうのも勝負じゃないですか。そのなかでも格闘技は特に勝ち負けが重要で、強いことが正義だと思うんです。僕はそれを強調したいし、勝つことと強さにはこだわり続けたいです」

――それこそ格闘技は1対1で、どちらが強いかを決めるもので、はっきりと勝者と敗者が分かれる、ある意味で残酷なものだと思います。

「だからこそ人は格闘技に魅了されるんだろうし、あれだけの熱を生むんだと思います。僕はトラッシュトークが苦手なんですよ。でも興行にはそういう要素も必要だし、十人十色だからそういう選手がいてもいいと思うようになりました。そういうのもひっくるめて格闘技は面白いなって思いますし、僕はそっち側の人間ではないので強さや結果で見ている人を魅了したいです」

――話が脱線しましたが、ムサエフ選手をどう攻略しようと思っていますか。

「直近で言えばムサエフ選手とアキラ選手の試合を見て、これは僕の見方なので本人の考えとは違うかもしれませんが、ムサエフ選手はハンドスピードが尋常じゃなく速くて、その相手に対してアキラ選手がインファイトを仕掛けるのは玉砕覚悟だと思いました。僕はムサエフ選手と要所要所で勝負したいと思っていますが、僕がムサエフ選手に勝てる所は少ない。じゃあ、どこで勝負するかと言ったらやっぱりレスリングなんですよ。

ムサエフ選手も『武田は打ち合わないだろう』と予想していると思います。でも僕にはそれ(レスリング)しかないから。もちろんそこを生かすための色んな作戦は考えていますが、勝負する場所はレスリングです。あとは気持ちですね。そこはみんな同じだと思うんですけど、そのなかでも僕は気持ちで譲りたくないし、絶対に気持ちでは上回ります」

――今回は武田選手の勝負論や勝利へのこだわりを聞くことが出来ましたし、ムサエフ戦の前にそれを読者に届けることができてよかったです。

「勝ちたいですよ、本当に。榊原(信行)さんの本のタイトルにもなっている『負ける勇気を持って勝ちに行け!』ってすごく良い言葉だなと思っていて。ムサエフ✖武田のテーマにぴったりなんです。自分が負けるパターンが想像できるなかで、勝ちにいかないといけないという意味で。あとこの言葉がいいのは、最後は勝ちにいけ=結果にこだわれってことだから、僕は必ず勝ちに行きます。

あとは僕も後輩たちが増えてきて、プロ練に参加しているメンバーは全部で20人くらいいるんですよ。一緒に練習はするけど、昔と違って若い子たちの面倒を見きれなくなっていて。だから試合でかっこいい姿を見せて、自慢できる兄貴でいたいです」

■視聴方法(予定)
11月4日(日)
午後10時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN LANDMARK07対戦カード

<RIZINフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
[挑戦者]鈴木千裕(日本)

<ライト級/5分3R>
トフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン)
武田光司(日本)

<ライト級/5分3R>
ナリマン・アバソフ(アゼルバイジャン)
アリ・アブドゥルカリコフ(ロシア)

<60キロ契約/5分3R>
メイマン・マメドフ(アゼルバイジャン)
フェリット・ギョクテペ (トルコ)

<ライト級/5分3R>
ドゥラル・ラギモフ(アゼルバイジャン)
キム・ギョンピョ(韓国)

<女子ストロー級/5分3R>
アナスタシア・ヴェッキスカ(ウクライナ)
ファリダ・アブドゥエバ(キルギス)

<フェザー級/5分3R>
ホアレス・ディア(南アフリカ)
イルホム・ノジモフ(ウズベキスタン)

<ライト級/5分3R>
イリヤール・アスカノフ(カザフスタン)
ヴラディスラヴ・ルドニエフ(ウクライナ)

<ヘビー級/5分3R>
クエンティン・ドミンゴス(ポルトガル)
ショータ・ペトレミドゥゼ(ジョージア)

<ライトヘビー級/5分3R>
ハサン・メジエフ(ラトヴィア)
コンスタンティノ・メルクロフ(カザフスタン)

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