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45 MMA MMAPLANET o WNO22 岩本健汰

【WNO22】岩本健汰、サブミッションをエスケープし続けるもRNCで一本負け。ミカに完敗─から学べること

<WNOウェルター級選手権試合/15分1R>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def.11分05秒by RNC
岩本健汰(日本)

立ちの展開から岩本が左腕を差す。離れたミカは喧嘩四つのなかでツーオンワンの岩本が右腕をも差し、左腕を差しあげてテイクダウンを狙ったところで腕十字を合わせる。右腕を取られた岩本だが、体を跨いで防御しスタンドに戻る。

スナップダウンのミカは岩本のシングルに三角絞めをセットする。腰を上げた岩本は腕十字に移行されても、体を伸ばして並行の位置を取り腕を引き抜く。ここが場外際だったため、マット中央で試合が再開されると岩本がシングルでテイクダウンする。ミカはギロチンを合わせてロールすると、マウントへ。岩本がハーフに戻すが、ワキ差しパスガードでサイドを譲ると、即マウントに戻される。

肩固め狙いのミカだが、岩本は足を戻して立ち上がる。ミカの小外を防いだ岩本がスナップダウンからダブルレッグへ。これは場外となり、試合は中央でリスタート。組み勝つ岩本のシングルレッグ、足を抜いたミカは足払いでテイクダウンを奪ってしまう。下にされた岩本は腰を畳まれ、ここからZハーフに戻す。頭を抱えに掛かるミカのアームインギロチンパスを防いだ岩本。またも場外となり、スタンドで再開に。シングルレッグでテイクダウンを決めた岩本は、即腕狙いのミカの試みを遮断してトップを取る。

ミカはここでクローズドガード、オープンになると蹴りあげていく。岩本はハーフでトップを維持。足を戻したミカの三角、オモプラッタを察知してスクランブルからスタンドに戻る。

逆転にはポジションを取ってのサブミッションが必要な岩本がローダブルレッグでテイクダウンを決めると、ミカに手首を取らせず左腕を差しにいく。ミカはオモプラッタ、スクランブルで頭を抱えてバックに回る。足をフックさせたくない岩本だが、同時にミカは首を狙う。と、RNCをセットしたミカが、観念したような岩本からタップを奪った。

「ブラジルではケンタのことはそれほど知られていないけど、戦ってみて試合前以上に彼のことを尊敬している」とミカは勝利者インタビューで話した。「良い試合で終わらせたくない」と言っていた岩本だが、良い試合という部分もサブミッションからのエスケープで完敗に。とはいえ、ここでミカに触れた経験は大きい。ADCCルールになれば、この日の経験から組み立てもできるはず。それが世界を相対した者だけが手にできる学びだ。


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45 MMA MMAPLANET o WNO22   ジエゴ・パト・オリヴェイラ ダンテ・リオン

【WNO22】フェザー級王者ジエゴ・パトが、ダンテ・リオンをヒールで斬って落とし二階級同時制覇

<WNO級ライト選手権試合/15分1R>
ジエゴ・パト・オリヴェイラ(ブラジル)
Def.8分35秒by ヒールフック
ダンテ・リオン(カナダ)

AOJのキッズ柔術家たちの熱烈な声援を受けてマットに登場したフェザー級王者パト。やはり大きなレオンに対し、まずは引き込む。デラヒーバからカカトを取り、足を絡めていくパトに対し、リオンが足を抜いて立ち上がる。すぐに逆の足を取りに行くパトだが、リオンは足の裏をつけて対処する。こうなると後方を倒しに掛かるパトが、右腕を抱える。

受けが強いリオンはヒザを畳んで解除。パトがKガードから右足に絡んでいくが、ここもリオンは決定的なシーンに持ち込ませずディフェンスする。パトは足取りつつ、バックも伺う。さらにデラヒーバから横回転、ならばとリオンが捌いてパスの圧を高める。デラでヒザ裏を取る形のパトが5分を過ぎて試合をリードした。

パト・チャントのなか、パトが立ち上がって上下が逆転。トップ攻めに転じたパトに対し足関節を仕掛けたリオン。即パトもストレートフットロックで逆襲に出ると、リオンが立ち上がりここもスイープが成立する。同じリオンのトップでもやや空気が変わったか、パトは右足をヒザで制され、窮屈な姿勢を取らされる。

立ち上がったリオンは足首を取ってデラヒーバに入らせず、頭を押し込んでいく。しかし、頭を戻したところでパトが左足をリフトして、リオンを浮かせたところで外ヒールをセット。ロールしたリオンだがエスケープできずタップし、パトが二階級制覇を達成した。 

「二本のベルトは重いよ。ただライト級で戦うことも大して変わりはない。でも、少し休みたいね。いつだってサブミッションを狙っている。最後は正しい場所で極めることができた」とファザー級とライト級のベルトを肩に掛けたパトの周囲をAOJキッズが取り囲んで大団円となった。


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45 MMA MMAPLANET o WNO22 オリヴィエ・タザ タイナン・ダウプラ

【WNO22】ノーギ柔術でタイナン・ダウプラがタザを完全ドミネイト。3-0で快勝

<ミドル級/15分1R>
タイナン・ダウプラ(ブラジル)
Def.3-0
オリヴィエ・タザ(カナダ)

序盤は立ちレス、組み手争いが続く。アームドラッグを狙ったダウプラ、切ったタザのシングルも姿勢が高い。肩を押してシングルに入ったダウプラは、レッグリフトから足払いでテイクダウンを奪う。しっかりとしたポスチャーでハーフを取ったダルプラに対し、タザは手首を掴んで防御を試みる。タザは肩を押すが、ダウプラがパスを決めてボディロックへ。タザは立ち上がりながらスイッチ狙いで、離れることに成功した。

そのタザのアームドラック、シングルレッグを切ったダルプラ。組み手争いのなかでタザがスナップダウン、姿勢を乱さないダウプラと頭が当たり一瞬のブレイクが掛かる。再開後も続き5分が経過、ここまでジャッジはダルプラを優勢とした。

第2タームも立ちの攻防が続き、両者が簡単に引き込むことがない。文字通り前に出て組み勝ち気味のダウプラが、ニータップでテイクダウンを決める。サイドで抑えたダウプラ、試合が中央に戻されるとレッグドラッグへ。・ポジションへ。タザは半身で厳しい時間が続き、左腕を押すことで懸命に耐えている。潜ろうとしたタザにダースを仕掛けたダウプラは、嫌がって背中をつけたと頃で再びサイドで抑える。ロールしたタザはバックを許さず、スクランブルに持ち込みスタンドへ。

ダウプラはシングルを切って、ファイヤーマンキャリーを狙う。直後に10分が過ぎ、ジャッジはここでもダウプラが有利とした。逆転にはキャッチ級のサブミッション・アテンプトが必要なタザは、シングルを切られるとガードを取る。すぐに足を越えてサイドで抑えたダウプラは前転して足を取りに来たタザのヒザを畳、枕で圧を掛けて解除する。タザはZハーフで絡んだ方とは逆の足に潜っていくが、ここもしっかりと枕で抑えられてしまう。潜らせないダウプラが、安定のトップコントロールで試合は残り1分に。

タザは前転も足を絡めることができずに、上半身を制される。右腕を差したタザに対し、立ち上がったダウプラが一瞬の足関節狙いからトップをキープ。ハーフでしっかりと抑え切ったダウプラがタザをドミネイトして快勝した。


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45 MMA MMAPLANET o WNO22 アデーレ・フォーナリノ アマンダ・アレキン

【WNO22】ADCCアジア&オセアニア・オープン優勝フォーナリノが、アマンダ・アレキンを秒殺!!

<女子フライ級/15分1R>
アデーレ・フォーナリノ(豪州)
Def.0分24秒by ストレートフットロック
アマンダ・アレキン(米国)

昨年11月のADCCアジア&オセアニアオープン55キロ以下級優勝のフォーナリノが、WNO出場。直ぐに座ったフォーナリノが、足を捌くアレキンの左足をキャッチ。跨いできたところでアレキンの左カカトを取り直す。フォーナリノはRNCグリップで固定しアオキロックへ。ここからロールするや、アレキンはヒザを捩じってタップ──足を引きずって退場した。

「これはフルコンタクトスポーツだけど、対戦相手にケガをさせたいとは思っていない。彼女がケガがないことを願っている。125ポンドは私にとって最高の階級で、ここでタイトルを狙っているけど同時に115ポンドでも戦える。タイトルが空位なら、ストロー級のタイトルも狙いたい」と勝者は語った。


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45 MMA MMAPLANET o WNO22 セバスチャン・ロドリゲス

【WNO22】ジェイコブ・カウチが、外ヒールでセバスチャン・ロドリゲスを一蹴

<ミドル級/15分1R>
ジェイコブ・カウチ(米国)
Def.1分25秒by ヒールフック
セバスチャン・ロドリゲス(米国)

まず座ったカウチ、ヒザの裏に足をいれてハーフのロドリゲス。カウチはアウトサイドアジ&ヒザ十字からストレートフットロックへ。さらに外ヒールに切りかえる。一旦、腹ばいになってグリップを取り直したカウチがタップを奪った。

「最高の気分だ。ここで戦うのは凄く居心地が良い。また戦う日が楽しみでならない。タイトル挑戦の準備はできている。誰とでも戦う。レッツゴー、ベイビー!!」とカウチは話した。


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45 AB MMA MMAPLANET o Road to ADCC UFC UFC300 WNO22 YouTube アデーレ・フォーナリノ アマンダ・アレキン アンディ・ムラサキ アンドリュー・タケット ウィリアム・タケット ケイド・ルオトロ ジエゴ・パト・オリヴェイラ ジョセフ・チェン ダンテ・リオン トミー・ランガカー ニック・ロドリゲス ヴィクトー・ウゴ 岩本健汰

【WNO22】ミカ・ガルバォンに挑戦、岩本健汰─02─「これからのことは一切考えていない。どうでも良い」

【写真】この試合後のことは考えていない。ルックスもどうでも良い。そんな岩本健汰でした(C)MMAPLANET

9日(金・現地時間)、カリフォルニア州コスタメサはOCフェアー&イベントセンター内ザ・ハンガーで開催されるWNO22「Rodriguez vs Hugo」で、ミカ・ガルバォンの持つWNOウェルター級王者に挑戦する岩本健汰インタビュー後編。
Text by Manabu Takashima

柔術の神の子への挑戦が降ってわいたように巡ってきた岩本は、この完全無欠のグラップラーを相手に勝つには「どうすれば良いんだ」と笑う。が、インタビューを進めていくと笑顔の裏にADCC世界大会イヤーでありながら、全てを賭ける気持ちがヒシヒシと伝わってきた。

ワールドステージで戦う岩本、その覚悟のほどを知って欲しい。

<岩本健汰インタビューPart.01はコチラから>


──とはいえウィリアム・タケットをパスしまくったという状況も、WNOだとパスもポイントにならないので極めを防げる選手は、IBJJFルールのように絶対にパスを許さないという姿勢では望んでいないかもしれないです。

「そこもあるかもしれないですね」

──グラップリングといってもサブオンリーのWNO、ポイントがありスクランブルが欠かせないADCC、ポイント制のIBJJFノーギとルールの違いが戦いをまるで変えるものかと、と。いくら技術は共通でも。

「WNOルールだと確かにミカは強いなって。どうやったら勝てるのか。まぁ全力でやるしかないですね(笑)」

──結果、ベストを尽くすと。とはいえ、どのルールでも防御力が絶対かと思うのですか。

「サブミッションエスケープは、僕は得意な方だと思います。なので、そこは気にせずに戦うことができるのですが、エスケープは印象点を悪くするので。だから入らせない。入られたら、すぐにカウンターでいくというマインドで行くしかないですね」

──ドロドロになってきたら、チャンスが増えるのか。

「う~ん、ドロドロ……そうっすね。ミカってヨーロピアンに出ていますよね」

──ハイ。ミドル級決勝でアンディ・ムラサキを腕十字で破り優勝しています。

「ヨーロピアンって、ドーピング検査ないんですかね?」

──あっ、そこですか。

「そうなんですよ。WNOはチェックはないですけど、ヨーロピアンに出ていたら抜けている可能性がある」

──そうしたら、使い続けている岩本選手の方が有利だと。

「ハイ(笑)」

──アハハハハハ。勘弁してください。

「でも本当にミカには、以前のようなパワーがない可能性はあります」

──なるほどです。そこは当日の楽しみとして、岩本選手は今回もB-Teamで調整をしてきました。

「ハイ、香港でのセミナーが終わってそのまま来ました。ニッキーやクレイグが不在だったのですが、まだ名前がないB-Teamのメンバーがめちゃくちゃ強いです。めっちゃ強い。ここでやっていることが、自分のバロメーターになります。初めて来た時から比べると、強くなっていると思います。でも回りも強くなっているし、紫帯でもメチャクチャ強い人もいて。ほぼ無名で強い人が、結構います。ここで練習をしていると、力がつきます」

──これはまるで別件なのですが、ケイド・ルオトロとトミー・ランガカーの日本での試合は視聴されましたか。

「ハイ。ケイドが圧勝しましたね、凄い試合でした。ケイドは凄いです。本当に世界一だと思います」

──実はこの試合が決まるまで、岩本選手の位置関係としてアンドリュー・タケットやジョセフ・チェンとのライバルストーリーが綴られていくことが楽しみでした。ただミカと戦うことで、岩本選手の存在がケイド、ミカというところにやってきたのかと。

「ここで勝てば、そうです」

──それがまさに今大会でのタイトル挑戦に表れているのかと。メインがニッキー・ロッド✖ヴィクトー・ウゴ。他にダンテ・リオン✖ディエゴ・パト、タイナン・ダルプラ✖オリヴィエ・タザ、ジェイコブ・カウチ✖セブ・ロッドという面々の中に日本人グラップラーが出場する。それこそUFC300で日本人ファイターがタイトルに挑戦する……NBAやMLBのオールスターに日本人プレイヤーが出場するようなもので、グラップリング界での快挙かと。

「まぁ……それは難しいことじゃないと思います。勝たないと意味がないので」

──ただし一部のグラップラーしか出場できないイベントです。それだけケンタ・イワモトは世界で評価されていることかと。

「そうですね。知名度的に僕が高いから、選ばれたというのはあるかもしれないです」

──ここでインパクトを残せば、今後のレギュラー参戦もあるのかと期待が膨らみます。

「きっと僕は良い試合ができることを期待されているんだと思います。攻防が多い、スクランブルが多い試合。ミカと相性が良い試合になると思われているのかと。でも、この試合に限らず……ですけど、一つひとつの試合が一つの終わりと心得ているので」

──というと?

「むしろ、この試合が僕にとって最後の戦いだという感覚です。もう後のことは考えていない」

──つまり今回の試合はRoad to ADCC世界大会ではないと。

「ハイ。キャリアとかこれからのことは一切考えていないです。これが最後だと思ってやっています。帰りのチケットも買っていないです。試合までのことしか、考えていないので。そこしか見ていない。カリフォルニアから戻ることは今、頭にないです。とにかくミカとの試合に集中しています。終わってからのことは、どうでも良い。米国から帰国するチケットもキャンセルできるやつを買って、こっちに来ているので」

──凄まじい覚悟のうえでのミカへの挑戦ですね。

「もう、この試合で終わりです。それからのことは一切、考えていないです」

──押忍。そんな岩本選手を応援している人々に一言お願いします。

「うん……えぇと……。勝つことしか考えていないです」

──痺れる想いを持つ岩本選手ですが、最後に一つスミマセン。気になったことがあります。

「えっ、何ですか」

──岩本選手、インタビューの受け答えは英語の方が上手くないですか。あのFLOに挙がっているインタビューとか、凄く流暢で。

「アハハハハ、そんなことないですよ。英語より日本語の方が……多分、大丈夫です。今日は……最近、日本語を使っていないので。もうカタコトになって、表現力がないなって自分でも思っていました(笑)。本当に日本語をしゃべったのが、久しぶりだったので申し訳ないなって(笑)。言葉が上手く回らなかったです」

──それだけ動きは上がっていると、期待しています。

「ハイ。ありがとうございます。口はこうでも、体は動くので。そして日本語、勉強しなおします(笑)」

■視聴方法(予定)
2月10日(日・日本時間)
午前11時00分~Flo Grappling

■ WNO22対戦カード

<ヘビー級/15分1R>
ニック・ロドリゲス(米国)
ヴィクトー・ウゴ(ブラジル)

<WNOウェルター級選手権試合/15分1R>
[王者]ミカ・ガルバォン(ブラジル)
[挑戦者]岩本健汰(日本)

<WNO級ライト選手権試合/15分1R>
[王者]ダンテ・リオン(カナダ)
[挑戦者]ジエゴ・パト・オリヴェイラ(ブラジル)※フェザー級王者

<女子フライ級/15分1R>
アマンダ・アレキン(米国)
アデーレ・フォーナリノ(豪州)

<ミドル級/15分1R>
タイナン・デルプラ(ブラジル)
オリヴィエ・タザ(カナダ)

<ミドル級/15分1R>
ジェイコブ・カウチ(米国)
セバスチャン・ロドリゲス(米国)

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45 AB MMA MMAPLANET o ONE Special WNO22 YouTube デミアン・マイア ブラック マーシオ・クロマド レアンドロ・ロ 岩本健汰

【Special】岩本健汰が挑戦するミカ・ガルバォンを知ってもらうため、Fight&Lifeインタビューを再掲載

【写真】このところ話題性でルオトロ兄弟の遅れをとっているが、実力的には遜色ない──はず(C)SATOSHI NARITA

9日(金・現地時間)、カリフォルニア州コスタメサで開催されるWNO22「Rodriguez vs Hugo」で自らの持つウェルター級王座の防衛戦で岩本健汰と対戦するミカ・ガルバォン。
Text by Manabu Takashima

ここでは、ミカ・ガルバォンが何者かを知ってもらうために、2022年4月に発売されたFIGHT & LIFE#90から、彼が柔術を始めた時からムンジアル優勝→陽性で王座剥奪までの柔術家&グラップラー人生を振り返り、また彼の柔術&グラップリング観を話してもらったインタビューを再掲載する。

岩本が挑む世界最強のグラップラー=ミカ・ガルバォンとは?


――柔術の神の子ミカ・ガルバォンに初インタビュー。嬉しい限りです。

「こちらこそ、日本のマガジンでインタビューされる機会を貰えて感謝しているよ。マナウスと日本なんて、本当に別世界だと感じていたから。僕のことを注目してくれるなんて思いもしなかったんだ」

――パンデミック後、IBJJF軸の柔術界は動きを止め、代わってプロ・グラップリングとプロ柔術が台頭しました。茶帯から黒帯を巻くようになったミカはこの間、ノーギと道着で大活躍しています。

「コロナ・パンデミックが起ったとき、多くの柔術家がトレーニングをストップした。でも、僕は逆転の発想でこの期間にしっかりと練習して、差をつけようと思ったんだ。9人か10人、アカデミーから出ることなく、練習に集中し、外の世界と接触しないようにしていた。そうすることで、僕らは練習できる環境を維持し続けたんだ」

――強くなるためにそこまで貪欲だったのですね。

「気が狂ったように練習に集中していたよ(笑)」

――だからこそ、コンディションという面でもミカは他の選手をリードできたのですね。そんなミカは柔術とルタリーブリという2つのブラジル産格闘技の黒帯です。それにしても柔術とルタリーブリが犬猿の仲だった頃を知っている身とすれば、隔世の感があります。

「父は柔術三段の黒帯で、ルタリーブリでもブラックベルトを巻いている。僕からすると柔術とルタリーブリの抗争をしていた時代を知らないんだ。ただ、ここマナウスでの両者の関係はリオデジャネイロと比較にならないぐらい険悪だったと聞いている。何しろ、死人に出るほどだったんだ」

――あってはならないことですね。いくら自分たちのスタイルが大切でも柔術もルタリーブリも世間から認められない集団になってしまう。

「その通りだよ。でも僕が生まれる少し前、ルタリーブリはウゴ・デュアルチやエウジェニオ・タデウからアレッシャンドリ・ペケーニョやマーシオ・クロマド達に世代交代があり、彼らが柔術に歩み寄ったことで時代は変わったんだ。そしてマナウスでは2010年代に入り、柔術とルタリーブリは協力関係を組織として構築した。それ以来、柔術家がルタリーブリ、ルタリーブリの選手が柔術のトーナメントに出場するようになった。マーシャルアーツの根底にある尊敬、名誉、友情、情熱を浸透させるのに競技間のライバル心なんて全く必要ないからね」

――19歳のミカの言葉を当時の柔術家、ルタリーブリ選手に教えてあげたいですね。

「アハハハハ。アカデミーを襲って、路上で乱闘をする。それが何を生むんだって思うよ」

――ミカは柔術とルタリーブリ、どちらから練習を始めたのですか。

「柔術だよ。2歳の時に初めて道着の袖に腕を通した。ずっと柔術を戦っていて、10歳ぐらいの時からルタリーブリを始めたんだ。17歳でルタリーブリの黒帯になり、18歳で柔術でも黒帯になれた」

――ルタリーブリを練習した利点はどこにあると考えていますか。

「米国に比べると、ブラジルは今でもノーギ・グラップリングのトーナメントは少ない。米国では日常的になっているけど、やはりブラジルは道着へのこだわりは強い。そんな間に米国のグラップリングはどんどん進化している。ブラジルから米国に行くと、本当に驚かされた。でも、僕にはルタリーブリの経験があったから、今のサブオンリーの潮流に乗り遅れることがなかったんだ。なんせ僕はルタリーブリ・ファイターでもあるからね(笑)」

――その通りですね(笑)。

「柔術だけをやっていると、ほとんどトップを取ることがないという選手もいる。でもノーギでは上になることが大切だ。と同時にノーギを経験すると、道着での動きが本当に良くなるんだ。道着とノーギを経験することは、どちらの競技にも役立つよ。ノーギを経験すると、動きがシャープになるよ」

――柔術界ではノーギも柔術という意見が聞かれます。

「イエス」

――ではノーギ柔術とルタリーブリの違い何なのでしょうか。

「違いはないよ。今、柔術家のなかでもレッグロックは常識になった。でも、ルタリーブリには20年前から存在していた。今、グラップリングが盛んになっているけど、僕らはルタリーブリがずっとあったからね(笑)。そうだね、違いは――ルタリーブリは道着のズボンを履くこと。ノーギ柔術はショーツで戦う。それだけかな」

――セルフディフェンスが柔術の根幹だという意見もありますし、今も柔術のトップファイターは、MMAに転向する傾向はあります。

「スポーツとして見ても、いくつかストリートで有効な点は見られるよ。それにファイターだったら、それがスポーツであっても、自分の身は自分で守れないといけないと思っている。セルフディフェンスの基本ぐらいは知っておかないと。マーシャルアーチストとして、自分を守れないなんて恥ずべきことだから」

――そういう想いはあると。

「そうだね。使わないに限る。でも、その術は知っておくべきだよ。あとMMAに柔術を生かすなら、それ用の練習が必要だ。どういう状況で柔術の技術が有効なのか、しっかりと把握しなければならない。ただ柔術の練習をしていても、MMAには使えない。殴られるのがオチだ。デミアン・マイアが良い例だよ。しっかりとアジャストして、柔術をMMAに落とし込んでいた。逆にIBJJFのワールドのような最高のトーナメントで優勝を目指すなら、競技柔術に集中しないと。他のことをしながら勝てるほど甘くないよ」

――では競技柔術内でもオールドスクール柔術とモダン柔術が存在します。これだけ試合展開、技術が変化したスポーツは我々の年代も柔術とMMAだけではないでしょうか。

「ベーシックとファンダメンタル、この2つは柔術に欠かせない。だから柔術を始めた時には基礎、土台を習うんだ。腕十字、ベリンボロでなく道着を掴んだ時から、どういう風にプレッシャーを与え、どこが正しいポジションなのかを覚える必要がある。黒帯になって勝てない、上手くいかないという時に基本に立ち返ることができる。そのために基礎、土台を学ぶ必要があるんだ。僕自身、オールドスクールの柔術から学び始めた。どこのポジションにいても、シンプルかつ使いやすい動きを選択しているよ。それにどのスタイルだろうが、どんな考えを持っていようが、しっかりと練習をしないと技術は使いこなせない。とにかくトレーニングすることだよ」

──これまた至極、真っ当かつシンプルな真実ですね。

「以前、マイキー(ムスメシ)とも基本が大切、打ち込みをどれくらい練習しているのかという話題になったんだ。僕は1時間だと答えた。マイキーは『おお、良いね。僕はファイブだ』って言うんだ。つまり5時間だよ(笑)。4度の世界王者が、これだけ基本を大切にしている。多くの人が強い相手とのスパーリングをすれば良い練習だと思い込んでいるけど、決してそうじゃない」

──ミカは凄い頻度で試合に出ていますが、試合前と試合のないときでは練習内容は違ってきますか。

「確かに僕は試合数が多いよね(笑)。ただし試合前も自分が強くなることに重点を置いて、試合に勝つという練習はしていない。試合がない時の方がペースは緩やかになるけど、練習内容は変わらないかな」

──なるほど。ミカは道着柔術、サブオンリー、ノーギのポイント戦とあらゆるルールの試合に出ていますが、一番重視しているのはどのルールの試合になるのでしょうか。

「それが可能かどうか分からないけど、道着でもノーギでも世界の頂点に立ちたい。でも僕はルールを理解し、試合タイムも頭に入れて自分の動きができるにしている。そうだね──今年の目標はIBJJFのムンジアルでの優勝とADCC世界大会の優勝だよ。簡単じゃないことは分かっているけど、これまで通り道着もノーギも並行して2つの世界を狙いたい」

──それを口にデキて、周囲も期待できる。まさに柔術の神の子です。ではムンジアルとアブダビのトーナメントで、それぞれ最大のライバルは誰になるでしょうか。

「誰か特定の選手の名前は思い当たらない。ムンジアルとADCCはタフな相手しかいないから(笑)。ADCCは特にトライアルの優勝者を中心に16人の選手しか出場できない。タフでない相手を見つけることが難しいよ」

──確かにその通りですね。それにしてもADCCブラジル予選では5試合連続で一本勝ちでした。

「ノーギの試合では過去最高のキャンプができて、人生で一番状態が良かったんだ(笑)。自分のなかでも、ちょっと違うミカ・ガルバォンがいたような感じだった(笑)」

──それでいて昨年のEUGの道着77キロ級Tでは2021年のムンジアル・ミドル級世界王者となるタイナン・ダルプラをまだ茶帯だったミカは破っています。去年から今年にかけてタイナンが喫した唯一の黒星です。両者の再戦があるのか。とても楽しみです。

「タイナンはノーギはやらないから、あるとすればムンジアルかな。僕らは右も左も攻めることができて、どちらが得意ということがない。だから凄くエキサイティングな試合になるんだよね」

──道着柔術では4月30日に予定さているBJJ STARSの8人制トーナメントではレジェンド=レアンドロ・ロとの対戦が実現することも期待されています。

「子供の頃、シセロ・コスタのところで一緒だったことがあるんだ。当時からロは僕にとって憧れの存在だった。8年、9年が過ぎて彼と戦うことができる場所から辿り着くことができた。トーナメントの山が別だから、僕ができることは一生懸命に練習して、まずはファイナルまで勝ち上がることだよ」

──ところでONEがトップグラップラーと契約し、ワンマッチ形式で得られる対価が上がってきています。その一方でトーナメントに彼らが出場し続けることはあるのか。現状、プロとしてプロモーションと契約することをどのように捉えていますか。

「たしか僕のマネージャーも彼らからの接触があったんだ。でも、僕はまだその時期じゃないと思っている。ONEのようなビッグプロモーションでMMAと一緒に試合が組まれるのはグラップリングが一段階ステップが上がった表れだと思う。ノーギは道着よりも一般の人に理解されやすいだろうし。そんな試合を視るのは僕も楽しみだよ。僕らの世代は幸運にも他の仕事をしなくても柔術で生活ができるようになった。練習と指導をして生きていける。だから、まだMMAイベントのなかで、ワンマッチで戦うよりも、あらゆるルールのトーナメントに出場して、強くなりたいと思っている」

──柔術の神の子が、柔術の神と呼ばれる日がやってくるのは、そう遠くなさそうです。最後に日本のファンに一言お願いします。

「とにかく日本の雑誌にインタビューしてもらい、僕の人生を日本の人とシェアすることがデキて感激しているよ。皆がこれから僕の試合を見てくれると嬉しいね」


■視聴方法(予定)
2月10日(土・日本時間)
午前11時00分~Flo Grappling

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45 AB MMA MMAPLANET o ONE ONE165 WNO22 YouTube アラン・サンチェス アンディ・ムラサキ アンドリュー・タケット ウィリアム・タケット ケイド・ルオトロ ショーン・オマリー ジェイ・ロドリゲス タイ・ルオトロ ダンテ・リオン ニッキー・ライアン 岩本健汰

【WNO22】世界の頂=神童ミカ・ガルバォンに挑戦、岩本健汰─01─「じゃあ、どうするんだって(笑)」

【写真】B-Teamで練習中の岩本。世界に挑む、日本の格闘家(C)MMAPLANET

9日(金・現地時間)、カリフォルニア州コスタメサで開催されるWNO22「Rodriguez vs Hugo」に岩本健汰が出場し、ミカ・ガルバォンの持つWNOウェルター級王者に挑戦する。この一戦はある意味、タケルがスーパーレックと戦う、あるいは日本人がショーン・オマリーと戦うのに等しい──ただ単に世界と戦うということでなく、世界の頂点と戦う一戦となる。
Text by Manabu Takashima

神童ミカ・ガルバォンは2003年10月生まれの20歳。父マルキの指導の下、柔術とルタリーブリで黒帯を巻く。キッズ時代から輝かしい成績を残し、2019年のムンジアルではジュベニウで階級別と無差別を制覇し、アダルトへ。時代はコロナ禍を迎え柔術トーナメントが動きを止めるなか、ミカは配信大会で頭角をグングンと表し、一気に黒帯のトップ選手として認知されるようになった。

2022年のムンジアル制覇はドラッグテストで黒となり抹消され、その年のADCCでは77キロ級決勝でケイド・ルオトロにヒールフックで敗れるも、今や時代の寵児となったルオトロ兄弟よりも前評判は高かった。その後、BJJスターでイザッキ・バイエンセとフィリップ・アンドリューに敗れてはいるが、目下のところ24連勝中だ。

WNOは2021年の第9回大会から出場し、アンドリュー・タケット、オリヴィエ・タザに勝利すると、チャンピオンシップトーナメントでウィリアム・タケット、ジェイコブ・カウチを破り、決勝でタイ・ルオトロに敗れた。その後もダンテ・リオン、アラン・サンチェスに勝利し、昨年10月に王座決定トーナメントでジェイ・ロドリゲス、PJ・バーチを下し、ウェルター級のベルトを巻いた。

さらに12月にコディ・スチールをRNCで倒して王座初防衛に成功、今回は岩本と2度目の防衛戦を戦うことに。そのうえで1月の最終週にはヨーロピアンにミドル級出場したミカは、3試合連続で一本勝ちし決勝でアンディ・ムラサキと相対した。結果スイープを許し、パスのプレッシャーを受けるなか、左足でムラサキの左足を制し、右足で肩と頭をロックしつつ腕十字を極めるという神童の名にふさわしいフィニッシュで優勝を果たしている。

岩本にとって間違いなく過去最強の相手。ミカが持つベルトに挑む岩本──テキサス州オースチンのB-Teamで最後の仕上げを行うところでリモート取材を試みた。


──当初の予定ではニッキー・ライアンが挑戦するという話だったのですが、いつの間にか岩本選手が挑戦者になっていました。いつ頃、この試合が決まったのでしょうか。

「12月末ぐらいだったと思います。年末ですね、『どうか?』っていう連絡が来たのが。1度OKを出したのですが、それが無しになって。正月をゆっくりと過ごしていたら、またオファーがきてやることになったんです」

──それはニッキー・ライアンの出場がなくなったから、オファーがあったということですか。

「ハイ。最初の時はそうでした。ただ1度なくなった理由は分からないです(笑)。交渉の段階でなくなって、『やっぱりどうか?』という連絡があってからお金の話など、契約交渉の段階に入りました」

──とはいえADCCアジア&オセアニア予選で優勝した直後には、ADCC世界大会のトーナメント枠を良くするためにPJ・バーチなどと戦って結果を残すと言っていました。そしてミカへの挑戦、余りに言動が不一致です(笑)。

「アハハハハハ。最初はADCC世界大会でいきなりケイド・ルオトロやミカ・ガルバォンと当たらないためにもうちょい下の人を倒したいというプランでした。なので、まさかその本人が出てくるとは思わなかったです」

──ADCC世界大会に向けて、プランが変わる試合のオファーに躊躇はなかったですか。

「最初は『ミカか……』という感じはありました。2月の9日だと、準備期間も少ないですし。1月の15、16日に香港でセミナーがあり、その間はあまり練習ができない。ミカが相手なら、もうチョイ準備したいという気持ちがあったのですが、迷った末にやることにしました」

──目の前にミカというオファーがあれば、無視することはできない?

「う~ん、僕から求めていたわけじゃないですけど、舞い降りてきたチャンスを逃すことはできなかったです。頑張ってきたらチャンスは巡ってくる──そう思って、受けることにしたんです。僕的には勝ちたい。でもミカって一番強いから、他の選手と比べると勝つのは難しい。でも『良い試合をしたな』っていうことで終わってしまうのが、一番嫌なんです」

──ONE165でのケイド・ルオトロへの挑戦も断った。でもミカとは戦いたいというのは?

「それは契約の縛りの話があったからです。ONEは縛りがあって、縛りがなければやっていました」

──しかし、どうすればミカ・ガルバォンに勝てる見込みがあるのか。それは正直なところ思うところではあります。

「確かにWNOのルールはサブミッションの仕掛けを重視しています。以前、ミカとダンテが試合をしたときにダンテが何回もテイクダウンを奪ったのに、最終的にミカが一度腕十字の態勢に入ったことで勝てたんですよね。サブミッションが凄く重視されるので、ミカをWNOのルールで倒すというのは──勝ち筋を見つけるは難しいところがあります。

かといって何も見えない相手ではないです。僕が勝てる部分があるので、そこを利用して勝ち筋を見出すしかないです」

──勝てる部分というのは、どこになると考えていますか。

「立ち技とかだったら、行けるかなと」

──とはいえサブオンリーなので、ミカは立ちで敵わないとみると引き込んでくるのではないでしょうか。

「引き込んでくる可能性はありますね。印象を悪くしないために」

──テイクダウンされるより、引き込みの方が自分の形で組手を創れるような気もしますし。そうなると、引き込んでも攻撃になる。

「ハイ。そこはADCCとは違いますよね。ADCCルールの方が今の僕には合っていることは合っています。でも……う~ん、そうっすね。まぁ、う~ん。ミカをパスできないですもんね。ヘヘヘヘヘヘヘ」

──いや、笑いごとではないかと。

「じゃあ、どうするんだっていう話になるんですけど(笑)」

──ハイ……。

「だから、まあ……そのう……だから、まぁ……なるべく遠い距離で立っても良い感じでやるのか。それだとネガティブになっちゃいますよね」

──逆に岩本選手が引き込むということは?

「それはチョットきついです。プランにはないです。冗談ではあるかもしれないですけど。ミカはパスが強いですからね(笑)。ウィリアム・タケットを結構パスしていたので。ハハハハ」

──笑っている場合ですか!!

<この項、続く>


■視聴方法(予定)
2月10日(土・日本時間)
午前11時00分~Flo Grappling

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