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MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN52 アルマン・ツァルキャン ベニール・ダリューシュ

【UFC ESPN52】ツァルキャンがヒザ蹴りからの右ストレートでダリューシュに衝撃のKO勝利

<ライト級/5分5R>
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)
Def.1R1分04秒by KO
ベニール・ダリューシュ(米国)

サウスポーのダリューシュが左ミドルとインロー、前に出ながら左ストレートを伸ばす。ツァルキャンもジャブを返して右フック。首相撲からヒザ蹴りを突き上げ、右ストレート一閃。これがダリューシュの顔面を打ち抜き、そのままダリューシュがばったりと後方に倒れ、ツァルキャンが衝撃的なKO勝利を収めた。

試合後、ツァルキャンは「KOを狙っていた。判定にしたくないと言っていた通りだ。いいパフォーマンスを見せて、家に帰り、タイトル挑戦権を手にすること。でも、ダリューシュには感謝している。この階級で一番尊敬できるファイターだ。人間的にも、素晴らしい人物だ。誰もトップ5は戦いたがらないだけで、ベニール・ダリューシュだけが戦ってくれた。次はタイトル戦にしたいけど、そうならないでもどんどん戦いたい。僕はチャンピオンになる。信じて欲しい」と試合を振り返った。


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MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN52 ジェイリン・ターナー ボビー・グリーン

【UFC ESPN52】リーチに優るターナーが、右を耳の後ろに打ち込みグリーンをパウンドアウト

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
Def.1R2分49秒by KO
ボビー・グリーン(米国)

いきなり左を入れたグリーンに対し、ターナーも打ち返す。リーチで劣るグリーンは遠い距離&だらりと拳を下げた構えから飛び込んでパンチを伸ばす。長身&リーチで優るタナーが左右のローで距離を測る。頭が当たるようにステップインのグリーンだが、タナーも一瞬にして距離を詰めてワンツーを当てる。さらに左ストレートを決めたターナーが左ハイを蹴っていく。グリーンの前蹴りにも圧を掛けてハイから左を繰り出したターナーが、組まれてもしっかりと対応する。自ら距離を取り直したグリーンだが、右を耳の辺りに受ける。グリーンは足がもつれ、もう一発同じ場所に右を被弾してダウン。

すかさず馬乗りになりパウンドを落としたターナーは、背中が伸びたグリーンに右パウンドを続ける。完全に動くなったグリーン、レフェリーが遅すぎるストップをかけた時には意識は飛んでいた。「レフェリーにはカモン、何発殴れば良いんだっていう感じだった」と勝者は話した。


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MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN52 デイヴィソン・フェゲイレド ロブ・フォント

【UFC ESPN52】バンタム級の方が強い!?元フライ級王者フェゲイレドがフォントに圧勝

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フェゲイレド(ブラジル)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27.
ロブ・フォント(米国)

ガードを高く上げるフォントがプレッシャーをかけてワンツー、ジャブで前に出る。フェゲイレドがジャブに合わせてニータップでテイクダウンすると、フォントはフェゲイレドの身体を足で浮かせてすぐに立つ。

試合がスタンドに戻るとフェゲイレドはフォントのジャブに右フックをかぶせ、ワンツーにダブルレッグを合わせてテイクダウン。ここもフォントはフェゲイレドの身体を蹴り離して立つ。

フォントがジャブを打つと、フェゲイレドはインロー。フォントはフェゲイレドの右を空振りさせてバックにつくと、フェゲイレドは正対する。距離が離れるとフェゲイレドが右ストレート、フォントは右アッパーを返す。

ジャブの差し合いになると、フェゲイレドがジャブを効かせて、右ストレートと右ボディ。フォントのジャブの終わりに組みつくと、ここはフォントも脇を差させない。距離が離れると再びフェゲイレドがジャブをタイミングよく当てて、フォントをぐらつかせる。

2R、フェゲイレドは飛び込んで右。両差しで組みつき、テイクダウンを狙う。ここでフェゲイレドのヒザ蹴りがローブローとなってしまう。ブレイク後、フェゲイレドは距離を取りつつ、プレッシャーをかけるフォントに右アッパー。ダブルレッグに入って離れ際の右を当てる。

さらにフェゲイレドは飛び込むような右ストレート、右カーフとワンツー。フォントもジャブから前進するが、フェゲイレドがシングルレッグでテイクダウンし、立ち際にヒザ蹴り。

フォントがジャブと右ローで前に出ると、フェゲイレドはバックステップで距離を外し、フォントの右ストレートもスリッピングアウェイでかわす。最後はフェゲイレドがワンツーをヒットさせた。

3R、ここはフォントがすぐに組みつく。フェゲイレドはケージに押し込んでヒジを入れる。一度は距離が離れると、フォントはすぐに組みに行く。ケージに押し込まれるフェゲイレドだがテイクダウンは許さない。

試合がスタンドに戻るとフェゲイレドが左フックを効かせて右ストレート、フォントに組ませずにヒザ蹴り、左フックを打ち込む。フォントもアッパーと右フックを当て、細かくジャブを突くと、フェゲイレドは『来い、来い』とジェスチャーで挑発する。

フェゲイレドはシングルレッグでテイクダウン。瞬く間にサイド→マウントポジションを取ってヒジ打ちを落とす。そのままトップキープするフェゲイレドはガードに戻されても殴ってパスガードし、ニーオンザベリーからパンチを落とす。最後はフォントの立ち際にパンチをまとめたところで試合が終わった。

元フライ級王者のフェゲイレドがバンタム級転向初戦でフォントに圧勝。フライ級時代よりもパフォーマンスの良さを感じさせる強さを見せつけた。


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MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN52 ケルヴィン・ガステラム ショーン・ブレイディ

【UFC ESPN52】見事なサブミッションレスリング、ブレイディがガステラムをキムラで下す

<ウェルター級/5分3R>
ショーン・ブレイディ(米国)
Def.2R1分43秒by キムラ
ケルヴィン・ガステラム(米国)

サウスポーのガステラムが左オーバーハンド、ブレイディが組んでクリンチ&ボディにパンチを入れる。ヒザを見せたガステラムをケージに押し込んだブレイディがシングルレッグでテイクダウンを奪い、スクランブルでバックに回る。ガステラムはここで前転するが、逆に両足のフックを許してしまう。ブレイディはボディトライアングルに取り、首を狙う。足のフックが離れると同時に、後方回転でリバーサルに成功したガステラムがパンチを落とす。

立ち上がって離れたブレイディの左ジャブでヒザをついたガステラムは、既に息が荒くなっている。ブレイディはインロー、ワンツーで前に出て右を振るう。ガステラムも左を返すが、ジャブで再び崩れると腕十字を察知され背中を預ける。ケージ際に移動し、ワンフックのブレイディがフェイスロックとパンチのコンビで攻め立てる。ガステラムは立ち上がっても、後ろから足を払われ尻もちをつかさせる。ブレイディが再び背中を取って絞めつつ、殴るという展開からグラウンドに持ち込む。スクランブルを許さず両足をフックしたブレイディが初回を取った。

2R、インローを蹴り合った両者。右ローを蹴ったガステラムは姿勢を乱し、下に。ブレイディはハーフで抑え、枕で圧を掛けるとマウントに移行する。ガステラムはハーフに戻すが、背中をつかされた状態が続く。再び右足を抜いてマウントを取ったブレイディは殴ってバックへ。足をフックせず、引き倒してトップを選択したブレイディが、再びマウントを取る。ガステラムは背中を見せ、ロールでスクランブルを狙う。ブレイディはガステラムを股の下で泳がせて巧みにバックに回る。ガステラムもシングルを仕掛けるが、ブレイディが即反応してバックコントロール。ここもワンフックで殴っていく。

なぜかブーイングを続けるテキサスの観客だが、ブレイディは完全にガステラムをコントロール──パンチも入れるためにブレイクが関わることはない。残り30秒、ケージを背負って座り両足を束ねられたガステラムは、またもバックを譲って立ち上がろうとし両足フックを許して時間を迎えた。

最終回、左を当てたガステラム。直後にブレイディがダブルレッグでテイクダウンを決める。ハーフで肩固めを狙うブレイディには、またも大ブーイング。構わずブレイディはマウント&肩固め、ハーフに戻ってキムラへ。頭を跨がれ絶体絶命のガステラムがタップし、ブレイディは見事な一本勝ちを手にした。


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MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN52 キック ジョアキム・シウバ

【UFC ESPN52】グィダが豪快TDで見せ場を作るも、1・3Rを取ったシウバが判定勝利

<ライト級/5分3R>
ジョアキム・シウバ(ブラジル)
Def.3-0:29-28.29-28.29-28.
クレイ・グィダ(米国)

グィダが上体を振って、ジャブを突きながら前に出ていく。さらにインロー、ジャブから右フック、右カーフキックと手数を増やし、左フックの連打からダブルレッグを狙う。シウバもしっかり距離を取りながら、グィダのステップインに左フックと右ストレートを合わせる。

グィダは変わらず細かい左とステップで前に出て、テイクダウンのフェイントも入れながら右ストレートから左フック。シウバはガードを下げることなく、グィダのパンチを空振りさせる。グィダはテイクダウンのフェイントと右フックでシウバのバランス崩す。

態勢を整えたシウバはグィダの前進にアッパー気味の左フックを当てると、グィダのシングルレッグをつぶし、背中を見せて立つグィダにパンチを連打する。何とか立ち上がったグィダ。シウバはそこに右ヒジを連打する。グィダも両差しでケージに押し込み、シングルレッグから持ち上げてバックを狙う。

2R、シウバはジャブを細かく突いて、左フックと右ストレートを狙う。グィダは左フックからダブルレッグにも入りつつ、パンチから左ミドル、シングルレッグから足を持ち上げてテイクダウンする。シウバは立ち上がってギロチンチョークを狙い、ここからグラウンドで上をとってサイドポジションで抑え込む。

グィダも体を起こして立ち上がるが、シウバは首相撲からボディと顔面にヒザ蹴り。距離をとったグィダは右フックを強振して前に出る。シウバはヒザ蹴り、グィダのダブルレッグにギロチンを合わせる。グィダはシウバの身体をゆすって、マットに叩きつけるようにして脱出する。立ち上がるシウバの後ろにつくグィダ。シウバが正対するとダブルレッグとシングルレッグで何度も組みつき、ダブルレッグでテイクダウンする。

背中を見せて立ち上がるシウバだが、グィダは再びダブルレッグでケージに押し込むと、シウバの身体を持ち上げて豪快にテイクダウンして会場を沸かせる。最後はシウバが立ち上がり、グィダがダブルレッグで組みついたところでラウンド終了となった。

3R、左ジャブ・フックを見せながら前に出るグィダ。シウバは左の前蹴り・ミドルを蹴って、グィダに距離を詰めさせない。これでペースを掴んだシウバは自ら前に出て左ハイキック、グィダのステップインに右アッパーを合わせる。

グィダもダブルレッグで飛び込み、シングルレッグでケージまで押し込む。シウバはギロチンからがぶってコントロールし、グィダもしつこく組むが、シウバはギロチンを離さない。このギロチンをタイトに極めつつ、シウバがトップキープする。グィダも立ち上がるが、残り時間がなく試合終了となる。

2Rに持ち前のテイクダウン&コントロールで沸かせたグィダだったが、1・3Rを取ったシウバが判定勝利を収めた。


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MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN52 ジュリア・アヴィラ ミーシャ・テイト

【UFC ESPN52】「私が何者か!」ミーシャ・テイトがアヴィラを完全ドミネイト&RNCで一本勝ち

<女子バンタム級/5分3R>
ミーシャ・テイト(米国)
Def.3R1分15秒by RNC
ジュリア・アヴィラ(米国)

ジャブで前に出たミーシャが、押されて姿勢を乱したアヴィラをケージに押し込みテイクダウンを奪う。頭を抱えたアヴィラに対し、足を抜いてサイドに回ったミーシャがギロチンを無効化させ、頭を抜きに掛かる。ケージとミーシャに挟まれ窮屈な姿勢のアヴィラは頭を抜かれるとサイドで抑えられる。スクランブルでバックに回ったミーシャはワンフックで、フェイクロック気味に圧を掛け、正座状態のアヴィラを前方に潰してパンチを落とす。

引き込んだアヴィラから即マウントを奪ったミーシャは、上体を起こしてパウンド。アヴィラは背中を見せて、前方に落とそうとするがバックをキープしたミーシャが後方から勢いのある鉄槌&エルボーを打っていく。ミーシャはリストを取って鉄槌を打ち、右のパウンドから絞めの機会を伺う。さらにマウントに移行してエルボーを落としたミーシャ、初回は10-8級のドミネイトだった。

2R、ワンツーを繰り返すアヴィラに前蹴りからダブルレッグを決めたミーシャが、サイドで抑える。アヴィラは初回に続き、。ギロチンをかけて今回はガードに戻せたが頭は同様に抜かれてしまう。上体を起こして殴るミーシャは、反転しての足関節狙いにケージを掴んで注意を受ける。アヴィラに体を浮かされたミーシャだったが、ポスチャーしパンチを纏める。右足を狙った姿勢のまま押さえられ、左にしか回れないアヴィラのボディを殴り、キムラの仕掛けたミーシャがニーインベリーからマウント、さらにパンチを続ける。

背中を見せ、上体を起こしたアヴィラのバックをしっかりとキープしたミーシャが2Rも圧倒的な5分とした。

最終回も左を振るって直ぐに組んだミーシャが、テイクダウンを決める。アヴィラはウィザーから立ち上がるも、小外ですぐに倒される。ミーシャはマウントからバックマウントに移行しアゴの上からRNCへ。アヴィラは心が折れていたのか、すぐにタップしミーシャ・テイトが2年4カ月振りの勝利を手にした。

「対戦相手でなく、私が何者かを皆に思い出してもらうために戦った。ここで私は育ったの。今日18年のキャリアで20回目の勝利を手にした。前の試合後、皆は『もう辞めろ』、『引退だ』と言ったわ。『引退、引退、引退』ってね。辞めたらダメ、諦めない、誰に何を言われても関係ないことをここで皆に見てもらったと思う」と話し、コーチと家族に感謝の言葉を続けた。


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MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN52 ジュリア・アヴィラ ミーシャ・テイト

【UFC ESPN52】1年5カ月ぶりのファイト、ミーシャ・テイト「ジムで練習時間は、私だけの時間」

【写真】「もう日本で戦ったのは、ずっと昔のことだけど――皆が私のことを覚えてくれていて、土曜日の試合でもサポートしてくれると嬉しい」とインタビューの最後にミーシャは話していた。当然、我々がミーシャのことを忘れるわけがない (C)MMAPLANET

2日(土・現地時間)にテキサス州オースチンのムーディー・センターで開催されるUFC on ESPN52「Dariush vs Tsarukyan」でミーシャ・テイトが、ジュリア・アヴィラと戦う。

2021年に5年のブランクを経て、引退&出産から世界最高峰に戻ってきたミーシャ。以来、急激に進化した女子MMAというバトルフィールドで以前のようなパフォーマンスを見せることはできていない。フライ級転向は失敗に終わり、約1年5カ月ぶりのファイトでバンタム級に戻った。37歳、二児の母となったミーシャが今も戦い続ける理由とは?


――2022年7月のローレン・マーフィー戦以来、1年5カ月ぶりのファイトが今週末に控えています。6月にはマイラ・ブエノ・バストスと対戦予定でしたが、負傷欠場しています。

「マイラと戦わないことを決めたのは、負傷を治すだけでなく体を癒す必要があると感じたからなの。ケガをした状態で、フライ級に階級を落としたことが凄く体にダメージを与えてしまったから。手術も考えたし、するつもりだった。でも、結果的に手術を回避して自然治癒ができたから凄く良かったわ。またヘルシーな状態でまた戦うことができるようになったしね」

――年を重ねると人は変化します。肉体的、そして精神的にも。女子MMAファイターとして37歳という年齢をどのように捉えていますか。

「年齢は自分の考え方を確立する、一つの要素よ。私が今も同世代の人々と比べると抜群のフィジカルコンディションを保てているのは当然だけど、私たちマーシャルアーティストが年をとっても、その知識量や技能とは一切関係ない。だって女子選手だけでなく、男子選手も含め、若くて練習では凄く強くても勝利という結果を出せないことはいくらだって見られるわけで。

このMMAファイターとしての能力は何年も経験を積み重ねて、初めて手にできるもので。トラックを走る、芝生の上でボールを蹴ったり、投げたりするようなスピードと体力を競い合う類のスポーツと違い、マーシャルアーツは本当の意味でファイトIQというものが求められるの。いかにスマートに戦うことができるのか。駆け引きが幾重にも折り重なっている。それがMMAだから。

同時に年齢を重ねると若い頃には全く気にしていなかった、ボディをケアすることを心がけるようになるわけで。若かった頃には必要ないと思っていた体のリカバリーに力を入れることになった。ある意味、一番大切な部分がそこになっているから。私もそうだったけど、若いファイターは気にしない部分よね。だからこそ、単にランニングという部分においても私は若い頃よりも走れるようになっている。

年を重ねた選手が、戦い続けることができているのは体のケアに最も気を使っているからで。そういう選手が他にもいて、活躍しているのは素晴らしいことだわ。それって年を重ねて得ることができるモノで、他では手にしようがない部分だから」

――それは瞬発力や俊敏性にも当てはまることなのでしょうか。

「私自身、ジムで体を動かしていてその部分が衰えたと感じることはないわ。もちろん、凄く良くなっていることもないけどね。その点においては今、UFC PIがあって凄く助かっているわ。PIで最新の知識を得ることができ、私自身も栄養や体のことを勉強するようになったから、科学的な部分で最先端を行く人と私の間にはそれほどのギャップはない状況だし。

だから……前の試合をミーシャ・テイトだとは思ってほしくない。そうね、フライ級に落とすという判断は間違っていた。5年振りに復帰した試合は勝って、次の試合は接戦を落とした。あの時、私は自分がいるべきところに戻ったと感じていたし、バンタム級こそが私の階級だと今ならいえるわ。フライ級に落とすことで、経験してきたことを試合で生かすことができないくらい体に悪影響があった。爆発力もないし、全ては体重を落とし過ぎたことが原因になっていたから。バンタム級は、そうじゃない。今も私に競争力があることを土曜日に証明したい」

――それだけ日々の努力を続けるられるだけ、MMAを戦うモチベーションを持ち続けられているとこと自体が凄いと思います。

「そうね……一度引退し戻ってきたのは、まだMMAから離れることなんてできないと感じたから。戦うことに疲れたこともあったけど、一旦離れるともっとMMAと関係していたいと心から思うようになって。ここでトライしないと、絶対に人生最大の後悔になるってね。それに前回のフライ級での試合は、以前のような納得できるミーシャ・テイトの戦いではなかったし、ロールモデルになる試合でもなかったことは明白で。

確かに引退は近づいているんだけど、でも私は今も戦いに向かうプロセスをエンジョイできている。だから、MMAを続けることができるんだと思うわ」

――では今のミーシャにとって、現役ファイターとしてのゴールはどこにあるのですか。

「私が今でも戦えることを証明すること。そして、人々に良い影響を与えること。なにより、諦めないで戦うこと。そこを貫き通したい。もちろん、身を引く時のことを考えないといけないのは事実よ。でも、その時が来るまで簡単に諦めるようなことはしたくないの。あがき続けたいと思っている。現役を引退し、戦うことが人生の軸で無くなる時は絶対にやってくる。それが分かっているから、簡単にギブアップなんてしたくない。好きだからって、MMAは続けられるものじゃないのも分かっている。正しいタイミングで引退をしないといけないことも。でも、まだその時じゃない」

――ロンダ・ラウジーやミーシャがいて、女子MMAは今の社会的地位を手にできた。ミーシャは今の女子MMAの隆盛をもたらした功労者ですが、既に多くのことを達成してきたにも関わらず今も、それだけの想いでMMAに向き合っているのですね。

「う~ん……私は女子MMAが男子のMMAと肩を並べたなんて思っていないわ」

――えっ……。

「今だって人々は女子MMAを下に見ている。10試合――男子だけの試合カードが並んでいて、5試合はまぁまぁの試合で残りの5試合は良い試合だった。普通のことだし、なぜ良い試合でなかったということを問われることもない。でも女子だけの試合が10試合あって、5試合は良いファイトで5試合が良くなかったとすると、なぜ5試合は良くないかという話なる。結論は『女子だから』と言われる。それが現実よ」

――……。

「男の人は良くない試合をして、『良くなかった』で済むの。でも、私たちの場合は『オンナだから』って言われてしまうのよ、今でも。それでも私がUFCで女子の試合が組まれない頃にファイターとして成長して、女子MMAを広めることに役立ち、UFCが女子の試合を組むために役立てことは、本当に嬉しい限りよ。もちろん、そこにロンダの存在があり、私と彼女のライバル・ストーリーが人々の目を開き、耳を傾けさせることに成功した。女子MMAは以前よりも、注目されるようになったけど――私たちは今でも、女子だからっていう声なんて起きなくなるために戦っているの」

――ファイトウィークにも関わらず、深い話をありがとうございます。

「私は本当に本当に……心の底からファイトウィークを迎えることができて、今を楽しめているわ。過去最高のファイトキャンプを送ることができたし。今、色々なことが自分の人生のなかで調和していて。今の私は以前のようにファイターであるだけでなく、様々な責任がある人間で。だからこそ試合があり、ジムにいる時間の素晴らしさが理解できるようになったの。家で子供たちの世話に追われると、本当にどうにかなりそうになって(笑)」

――アハハハ。それは自分も少しは分かります。

「もちろん、あの子たちことは絶対的に心の底から愛しているわ」

――もちろんです。それでも、「勘弁してぇ」と叫びたくなるのがお母さんの大変さです。

「子供たちがいてこそ、最高の人生よ。それは絶対で。同時にジムで練習していると、その時間は私だけに向けられた時間になる。ジムで練習時間は、私だけの時間――」

――ハイ。

「その時間が、どれだけ貴重なのか。子供たちを生むまで、分かっていなかったわ。厳しいトレーニングが、人生で最悪のことだと感じたこともあった。でも、今はどれだけ練習で疲れても、それは自分のためだけの時間で――やらないといけないから練習をしているわけでなくて、自分がやりたいことをやっていると実感できる。こんなに素晴らしいことはないでしょう?」

――そのように考えられることが素晴らしいです。

「ホント、考え方が変わったから凄くハードなキャンプを楽しみ抜くことができたわ」

――そのキャンプを経て、土曜日の夜はどのような戦いを披露したいですか。

「ジュリアはつねに戦う姿勢を持っている。前に出て、戦う。パンチを貰っても下がることも、心が折れることもない。逆に勢いが上がるような真のファイターよ。絶対にフィニッシュしようとしているし、そういう対戦相手と戦うのは私も大好きで。2人ともギリギリまで攻める、そんな最高の試合になるはず。

勝負の行方がどうなるかなんて分からない。でも、言葉はなんていらない。オクタゴンのなかの姿で、私が絶対に諦めない気持ちでいることが皆に伝わる試合がしたい。人生が変化の時を向かるのは、素晴らしいことよ。でも、諦めるのとは違う。私の人生もすぐに変化の時を迎えるわ。でも、まだやり切っていない。前回の試合を見て、人々はミーシャももう終わりだと思ったはず。でもね、私はどう思われようが構わないわ。一つの敗北で、私がやってきたことを否定される必要はない。そして、私がこれからやり抜こうとしていることに、何も影響も及ぼさないから。

戦績、勝敗に左右されることは、もう私のファイトキャリアに必要ないの。必要なのは、このキャンプでやってきたことを試合で出し切ること。本音をいえば、これだけ練習をしてきたのだから何よりも勝利を手にしたいと思っているわ。

でもね、ファイターが2人で戦うのだから勝者が1人なのは絶対で。もし勝者になれなくても、日曜日の朝に私はいつものように目を覚まし――隣には娘、息子、フィアンセ、母、父がいてくれる。最高の人生が私にはある。最高に幸せなことに何も変わりはなく、そこに勝敗は関係していない。だから、何があっても私は勝者。全力で目の前にあること全てに向き合ってきたわ。何があっても、変わりない。でもね、心の底から勝ちたいと思っている」

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MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN52 ファーニー・ガルシア ブログ 中村倫也

お蔵入り厳禁【UFC ESPN52】中村倫也がUFC初戦を振り返る─03─「時代が作り出した幻想を壊していく」

【写真】次は中国か、米国か──期待がさらに募る中村倫也(C)MMAPLANET

8月26日(土・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたUFC on ESPN52「Holloway vs The Korean Zombie」で、ファーニー・ガルシアを相手に判定勝ちし、UFC初陣を飾った中村倫也インタビュー最終回。
Text by Manabu Takashima

お蔵入り厳禁──腕十字がファールカップで極まらなかったという珍事の裏で、そこに拘らなかった中村がUFC初戦を終えたことで、何を得られたのか。

<中村倫也インタビューPart.02はコチラから>


──某選手は三角絞めで腕を送るときにファールカップを使って、痛みを増すようにすると聞いたことがあります。

「アハハハハ。そうなんですねっ!! でも、確かにそういうこともできますよね。実は上四方で抑えている時も、ファールカップで頬骨をグリグリやって。痛いし、何よりも屈辱的だと思うんですよ、相手の立場からすると」

──試合前にビビッて漏らす選手もいて、凄い匂いの股間になっているなんて話も……。

「マジっすか。それは対戦相手からすると、ヤバいっすよね。でも体臭が凄い選手っていうのはいますからね。目がシバシバすることとかあって。体臭って、武器ですよ」

──しかし、話を戻すとファールカップで腕十字を極め切れなかった。それでも下になることなく、トップキープに切り替えました。

「そういうことがあるんだなって。そこの指摘を受けたことはなかったですしね。もうアマチュアの時と違って、とにかく強引に腕十字を極めようという気持ちではなかったです。ガルシアもかなり削れていたので、極まるだろうと思って仕掛けました。そこの防御力は最低限あるんだなって思いつつ……このクラスの相手に苦戦をすることなく勝てて良かったです」

──そこにつきます。極められなかった。フィニッシュできなかったという悔しさが残るファイトをUFCデビュー戦でできたというのは。UFCとの距離感が広がっている間に、ボトムラインにいる選手の力が相当に引き上げられたように思えるので。

「ハイ、そうですね」

──以前はもう少し名前のある選手、UFC内外で少しは名前の知られた選手に負けていたのではないかと。こちらの勉強不足もあるのですが、今や全く知らない選手に日本人選手が敗れるようになりました。

「ハイ。確かにそうなっています。そういうなかで勝てたことは、この世界に来ても同じ体重の人間だな──ということは、しっかりと確認できました。逆にバケモノ、彼らは日本人とは違うという言葉ばかりが耳に入って来ていたので、そういう時代が作り出した幻想も自分で壊していこうと思います」

──まさに自分が言った言葉のように、UFCに出ている選手は強いと思い過ぎるということですね。海外で日本人選手の負けを見すぎて、負けた時にショックを受けないように負けベースで考えるようになり、海外勢を大きく見すぎてしまう嫌いはあると自分でも思います。

「それだけ自分が信じてきたファイターの負けを見てきたからですよね。それは僕もそうで。UFCファイターなんだから、何かあるんじゃないかという想いを持って戦っていました。逆にそれがないとダメだと思いますし」

──ところで試合後にUFC関係者から、反応は何かありましたか。

「ショーン・シェルビーが試合後に控室に来てくれて、『いつでも試合を組むから言ってくれ』と直接言葉を掛けてもらいました。それとホテルでマイケル・ビスピンが『やったな。これからも試合をチェックし続けるよ』と言ってくれましたね」

──英語の返答は良かったと素直に思います。ショーン・シェルビーが「1人がその国のMMAを変える」と大会前日に言っていたのですが、その1人を輩出するためにも日本人UFCファイターが増えて欲しいですね。

「ショーンが『ようやく日本から……』と言っていたのは、待っていてくれたんだと感激しました。今回の勝利で『やっていけるな』っていう自信……は段階を踏んで、一つ一つ勝って大きくしていくものだなというのが分かりました。その自信が一つ深まった一方で、距離を潰したい場面で焦ることがあったので。その辺りの距離の潰し方の技術を次の試合までにもっと磨きたいですね。そうしたら、繋ぎとかも見せることができるだろうし。打撃もレスリングも生きるので、ここからはひたすら技術力を上げるフェーズになります」

──ところでRoad to UFCの優勝者としては最初のUFC出場でした。他の契約選手も風間敏臣選手以外はまだデビューをしていません。

「他の3階級の優勝選手はまだ試合をしていないですよね。風間君が負けた試合を控室で見た時に、『これ、俺が変なパフォーマンスをしたらRoad to UFCは偽物だ』っていう見られた方をされるなって、気合が一段と入りました。『アジアを舐めんなよ』って。

ここで僕が変な試合をしたり、負けたりしたら今年でRoad to UFCが打ち止めになるかもしれないから、絶対におかしなことはできないって。優勝者、準優勝者のパフォーマンスは常にチェックされているでしょうからね」

──そこまで考えていたのですね。では気になるUFC第2戦ですが、いつ頃と考えていますか。

「年内を考えています。米国でやりたいですね。まぁ、いずれは戦うことになるので、今年中にもう1試合ができれば──1試合したいですね」

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MMA MMAPLANET o TJ・ディラショー UFC UFC ESPN52 ファーニー・ガルシア 中村倫也

【UFC ESPN52】「腕十字は〇ンカップのふくらみで、ズレました」。中村倫也がUFC初戦を振り返る─02─

【写真】この十字が極まらなかった理由が、ファールカップにあったとは……(C)MMAPLANET

8月26日(土・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたUFC on ESPN52「Holloway vs The Korean Zombie」で、ファーニー・ガルシアを相手に判定勝ちし、UFC初陣を飾った中村倫也インタビュー第2弾。
Text by Manabu Takashima

完勝のなかでも課題が多く見つかったという中村に、試合前から挙げていた上四方での抑え、そして極めにいった3Rの腕十字について話を訊いた。

<中村倫也インタビューPart.01はコチラから>


――「何もないわ」と思って、持たれているよりも良いのではないでしょうか。

「それは、確かにその通りですね。いや、それでも気になるところだらけでした」

――それは具体的にはどのような点で?

「試合中に落ち着いて、リラックスしているという感覚だったんですけど、映像を視てみると跳ねているのが気になりました」

――それは跳ねるとエネルギーを零すという考えですか。ただ、跳ねを生かした瞬発力もあったように見えました。

「浮いてしまっている場面でも、落としてガーンと蹴ることができる感覚はあります。だから、その変はどうなっているのか。う~ん、跳ねているときに相手のアクションがあるとどうなるのか。そこは怖いです。だから跳ねている場面があっても、ストンとリズムを変えて歩いて詰めるとか――リズムを変える技術を創っていきたいです。そういう風にお互いて距離を詰められるようになる。それこそTJ・ディラショーがやるように、距離を潰すなかでも速度変化がある。四速でジィーと詰めるのでなくて、二速から五速にギアを上げて、そこからブレーキを掛けるような」

――う~ん、それは難しい……。と同時に、ケージサイドで撮影をしていて力みはあったように見受けられました。

「一発一発の打撃に、本当に力が入っていました。やっぱり練習とは違う体力の減り方を感じました。もっと楽に形だけで打っても良い時があるよなって。必要以上の力みがありましたね」

――ところで試合前に話を伺った時に、上四方という着眼点が凄く興味深かったのです。実際に上四方でコントロールをし続けました。テイクダウン後にハーフで殴り、スクランブルでバックという流れと違い、パスをして抑える。そして殴ることが難しいポジションにこだわったのはなぜだったのですか。

「上四方で抑えられている側の心理として、戦っている際中なのに視界が狭い。ダメージを与えることができない。床を蹴ってエビとかしようとしても、足がきかない姿勢でもあるんです。あとは……シンプルに股間を乗せられているという屈辱感(笑)。

実は津田(勝憲)さんが上四方が凄く上手いんですよ。練習後に上四方の創りを習っていて、上四方で抑えられるって嫌だなって。

確かにバックだと、相手が後ろにいるのでより嫌かと思います。ただし、ディフェンスが上手い選手も多いです。いずれにしても上四方が絶対ではなくて、でも展開の中に加えることができるということで採り入れました。上四方って乗っている側も、楽なんですよね」

──とはいえガードから足を抜いて抑える。パスやサイド奪取というプロセスを経てのポジションなので、そこには自信があったということでしょうか。

「そこはしっかりと練習しました。ATTで僕がハーフを取っていて、強い相手に足を抜かれてサイドで抑えられるとリーチが掛かってしまうような感覚で。殴られるよりも、よほどパスされる方が嫌だなって」

──それこそバックと同じで、抜かせるタイミングでスクランブルを仕掛けるファイターも少ないかと。

「そこはレスラーとして、上のキープ力はあると思っています。それに上四方から相手が逃げてくるのって、こっちからすると絶対にがぶりを経由することになるので。このポジションになると、どのように相手が動いてきても対応できるように打ち込みをじっくりとやり込みました。それをされると、下は凄く嫌なので」

──ガルシアが余りスクランブルに持ち込まず下にステイしたことで、倫也選手は腕狙いやノースサウスというサブミッションに出ました。

「守りは固かったです。腕を狙うとセコンドが『キーロックに気をつけろ』とか指示を出すんです。そうするとガルシアもワキを閉めてくるような感じで。

体を捻ってきた時には『ダースを狙っているからな』とか、セコンドの対応が迅速でした。『バレた』ってことが続いて。スクランブルになるなら、シングルへの対応策も用意していました。でも、そういう動きは試合を通してなかったですね」

──そこでノースサウスだったと。

「あれは終わってからですが、アームインに切り替えれば良かったと思いました」

──ノースサウスの態勢は長かったです。

「腕が疲れてきて。『あっ、これか。先輩たちが言っている危ない展開になるやつだ』って。その瞬間にリリースしました。極めに拘るよりも、トップ重視──勝つことが絶対で、その上でフィニッシュをしたかったので。でも、今回は時間が足りなかったですね」

──極めに一番近かったのは、3Rにはバックを譲りそうになったガルシアをスナップバックのように引き倒して、腕十字に入った時でしょうか。

「あそこは極めたいという気持ちでした。ただガルシアが力を逃したというのもあったのですが、チ〇カップ(※普通はファールカップと呼ぶことが多いです)、練習のときには装着しない〇ンカップのふくらみで、ズレました」

──えっ!!

「全然違うわって」

──もちろん、その感覚を掴むことが大切かもしれないですが、それだとポ〇チンが大きくてファールカップが大きい人の方が極めやすくなっちゃいませんか(笑)。

「アハハハハ。でも、そうだと思います。ズレずに極めることができれば。僕はあの瞬間、感覚が掴めていなかったので──『うわッ、やりにく!!』と思っちゃいました。シンプルにガルシアの腕の力が強かったというのもありますけど、ズレたと思って下にされるよりトップをキープしようと外しました」

<この項、続く>

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【UFC ESPN52】UFC初陣を振り返る、中村倫也─01─「シミュレーションなのにめちゃくちゃドキドキして」

【写真】いつもと同じ入場、仕草。そして佇まい。それも何十というシミュレーションがあってこそ (C)MMAPLANET

8月26日(土・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたUFC on ESPN52「Holloway vs The Korean Zombie」で、ファーニー・ガルシアを相手に判定勝ちし、UFC初陣を飾った中村倫也。
Text by Manabu Takashima

試合から10日を経て、中村自身にオクタゴン初戦を振り返ってもらうと、その動きの一つ一つに彼が理をもって臨み、尋常でない周到な準備が試合前から技術だけでなく、メンタル面でもなされていることが分かった。


──UFCデビューから10日が過ぎました(※取材は7日に行われた)。デビュー戦のパフォーマンス、どのように捉えていますか。

「ギリ合格かなっていうラインですね。良かったところは、大枠としての作戦がハマったところです」

──その作戦というのは?

「遠い距離から蹴り中心で攻めて、テイクダウン。そして上四方からコントロールして展開を創っていく。そこは大枠として……できたことは良かったのですが、ただ後から試合を視てみると気になることがいっぱい出てきているので、今はそれをどう直していくのかを考えています」

──序盤から試合を創っていったのは、中村選手でした。

「これまで僕の試合をチェックしたガルシア陣営が立てる作戦は、前に出させてステップバックしながらパンチを打ってくることと考えていました。そこに入らないギリギリの距離で蹴っていく。間合いが近くなると、打ちながら入る。そういうつもりでいたのですが、想っていた以上に距離が合わなかったです。もう一歩、半歩いかないといけないところが、そこまでの距離の創り方に緩急をつけるという技術を自分は持っていなかった。

『俺のスキルじゃ、この間合いは潰しにいけない』と思い、大きな蹴りかフェイントをかけて相手を反応させてから入っていました。それしかないと思ったのですが、そういう試合をしていることで、なんかモゴモゴしてしまっていました」

──モゴモゴとは?

「距離を潰すスキルが欲しくて──。自分のやるべきことを、試合のなかで見つけられることができましたね」

──試合が始まる以前なのですが、あの大観衆の声援のなかでケージインする。いよいよUFCで戦うということで、平常心を保つことはできたのでしょうか。デビュー戦では入場する際に感極まるという話をよく聞きます。

「そこは、めちゃくちゃシミュレーションしました。UFCは日本の興行とは違って、自分のタイミングで出ることができないです。曲が流れだすと、係の人が『ファイブ、フォー、スリー、ツー、ワンッ!! ゴー、ゴー、レッツゴー』という風にカウントをして。向うのテンションで入場が始まるので、それがどういう風に影響を与えるのか──何通りもシミュレーションしていました。

最初はシミュレーションなのに、めちゃくちゃドキドキして。『こんなあがり方するのかッ!!』というところから繰り返して、どこに心を置いておけば良いのかを見つけて。だから、平常心で入場することができました。ただ、あの場で気持ちがあがるのはメチャクチャ分かります(笑)」

──シミュレーションの全てが外れる。そこで焦るようなことがあると、怖いですね。

「当然、全てがハマらないというシミュレーションもします。『どれもハマらない、どうしよう?』という気持ちになると、どういう状況でオクタゴンに立っているのか。そこも想定します。例えば試合の3週間前の時点、ハマらないまま試合をして負けることをシミュレーションして。そうなったら、負けた気持ちを引きずって飛行機に乗ったら、自分は何を想っているのか。

『3週間前に頑張り過ぎて、もう少しペースを落とすべき』と考えているかもしれない。どれもハマらないということは既にズレが始まっている。なら今、何をやるべきか。『まだ3週間ある』って、そこで頭を入れ替えると……何か見つかるんですよ」

──倫也選手、ひょっとして恋愛とか彼女に対しても、そこまでシミュレーションしているのですか?

「アハハハハ。そんなことしないですよ(笑)。試合だけです」

──良かったです。そんなヤツ、絶対に嫌なので(笑)。

「アハハハハ。最上級の自分、鉄壁バージョンをMMAでは求めているので。他はそこまでやらないです。試合に関しては徹底してシミュレーションをすると、少しでも迷っている時間を減らすことができるんですよ」

──それこそアーセン選手が言っていた、試合に向けてのシチュエーションの幅の広さということなのですね。

「ハイ、試合は徹底的に細かいところまで考えます。今回もシミュレーションをしているなかで、『来ない。こんなに来ないんだ』と状況もありました」

──そこまで……なのですね。対してガルシアの心理としては、とにかく右を一発当てて何とかしたい。結果、自分の戦いというよりも倫也選手の動きへの対応に追われて居着いてしまっている。そのように見えました。

「そうでしたね。向うからの仕掛けというのはなかったですね。これまでの試合では、ガルシアは自分でプレッシャーをかけるので、ギュッと空間が圧縮されている中で戦うということをイメージしていました。プレスをかけさせないように。ただ、実際にはこっちが重心を落とすと、スッとその圧を抜く感じでした。

自分の最初のプレスでガルシアを動かせているので、向うのリアクションに対して、攻撃を仕掛けていけば大丈夫だと思えましたね」

──その自分からの圧が左の蹴りでした。やや遠いように見えたのですが、足も腹も良い攻撃が入っていました。

「踏み込みは、思っていたのより少し遠い距離からでした。だからガルシアが外してくるなら、それで構わないという蹴りだったんです。外してこなかったら、バシッとインパクトのある蹴りになるという考えで」

──2Rですが、左ハイでスリップした場面もありました。

「初回にそういう攻防がなかったので、弱冠カウンターのパンチをまだ恐れていましたね。それで、重心が後ろで高い蹴りになってしまって。無理に距離を潰しにいったので、少し怖さがありましたね。そういう風に気持ち的に引いていたので、あの重心とスリップになったんだと思います」

──相手の攻撃へのカウンターアタックは、あのガルシアの戦い方では難しかった。そこで蹴りとダブルレッグを突破口に、自分の動きで打開したという理解で良いでしょうか。

「そうですね、ガルシアがサークリングをする際に奥手を引いていると狙いが分かるのですが、体を開いていたので重心の動きだけで、テイクダウンを仕掛けて良いと判断しました」

──つまり拳の圧がなかったと。

「ハイ、思っていたよりなかったです。最初のミドルとローが思い切り入って、声も漏らしていたんですよね。それで力が入らなくなったんだと思います。圧力が落ちました。『これは大丈夫だ』と感じていた一方で、やっぱりUFCファイターですしね。『ここで戦っているのだから、何かあるはず』という警戒心が最後まで抜けなかったです」

<この項、続く>

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