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45 MMA MMAPLANET o WNO22   ジエゴ・パト・オリヴェイラ ダンテ・リオン

【WNO22】フェザー級王者ジエゴ・パトが、ダンテ・リオンをヒールで斬って落とし二階級同時制覇

<WNO級ライト選手権試合/15分1R>
ジエゴ・パト・オリヴェイラ(ブラジル)
Def.8分35秒by ヒールフック
ダンテ・リオン(カナダ)

AOJのキッズ柔術家たちの熱烈な声援を受けてマットに登場したフェザー級王者パト。やはり大きなレオンに対し、まずは引き込む。デラヒーバからカカトを取り、足を絡めていくパトに対し、リオンが足を抜いて立ち上がる。すぐに逆の足を取りに行くパトだが、リオンは足の裏をつけて対処する。こうなると後方を倒しに掛かるパトが、右腕を抱える。

受けが強いリオンはヒザを畳んで解除。パトがKガードから右足に絡んでいくが、ここもリオンは決定的なシーンに持ち込ませずディフェンスする。パトは足取りつつ、バックも伺う。さらにデラヒーバから横回転、ならばとリオンが捌いてパスの圧を高める。デラでヒザ裏を取る形のパトが5分を過ぎて試合をリードした。

パト・チャントのなか、パトが立ち上がって上下が逆転。トップ攻めに転じたパトに対し足関節を仕掛けたリオン。即パトもストレートフットロックで逆襲に出ると、リオンが立ち上がりここもスイープが成立する。同じリオンのトップでもやや空気が変わったか、パトは右足をヒザで制され、窮屈な姿勢を取らされる。

立ち上がったリオンは足首を取ってデラヒーバに入らせず、頭を押し込んでいく。しかし、頭を戻したところでパトが左足をリフトして、リオンを浮かせたところで外ヒールをセット。ロールしたリオンだがエスケープできずタップし、パトが二階級制覇を達成した。 

「二本のベルトは重いよ。ただライト級で戦うことも大して変わりはない。でも、少し休みたいね。いつだってサブミッションを狙っている。最後は正しい場所で極めることができた」とファザー級とライト級のベルトを肩に掛けたパトの周囲をAOJキッズが取り囲んで大団円となった。


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45 AB MMA MMAPLANET o Road to ADCC UFC UFC300 WNO22 YouTube アデーレ・フォーナリノ アマンダ・アレキン アンディ・ムラサキ アンドリュー・タケット ウィリアム・タケット ケイド・ルオトロ ジエゴ・パト・オリヴェイラ ジョセフ・チェン ダンテ・リオン トミー・ランガカー ニック・ロドリゲス ヴィクトー・ウゴ 岩本健汰

【WNO22】ミカ・ガルバォンに挑戦、岩本健汰─02─「これからのことは一切考えていない。どうでも良い」

【写真】この試合後のことは考えていない。ルックスもどうでも良い。そんな岩本健汰でした(C)MMAPLANET

9日(金・現地時間)、カリフォルニア州コスタメサはOCフェアー&イベントセンター内ザ・ハンガーで開催されるWNO22「Rodriguez vs Hugo」で、ミカ・ガルバォンの持つWNOウェルター級王者に挑戦する岩本健汰インタビュー後編。
Text by Manabu Takashima

柔術の神の子への挑戦が降ってわいたように巡ってきた岩本は、この完全無欠のグラップラーを相手に勝つには「どうすれば良いんだ」と笑う。が、インタビューを進めていくと笑顔の裏にADCC世界大会イヤーでありながら、全てを賭ける気持ちがヒシヒシと伝わってきた。

ワールドステージで戦う岩本、その覚悟のほどを知って欲しい。

<岩本健汰インタビューPart.01はコチラから>


──とはいえウィリアム・タケットをパスしまくったという状況も、WNOだとパスもポイントにならないので極めを防げる選手は、IBJJFルールのように絶対にパスを許さないという姿勢では望んでいないかもしれないです。

「そこもあるかもしれないですね」

──グラップリングといってもサブオンリーのWNO、ポイントがありスクランブルが欠かせないADCC、ポイント制のIBJJFノーギとルールの違いが戦いをまるで変えるものかと、と。いくら技術は共通でも。

「WNOルールだと確かにミカは強いなって。どうやったら勝てるのか。まぁ全力でやるしかないですね(笑)」

──結果、ベストを尽くすと。とはいえ、どのルールでも防御力が絶対かと思うのですか。

「サブミッションエスケープは、僕は得意な方だと思います。なので、そこは気にせずに戦うことができるのですが、エスケープは印象点を悪くするので。だから入らせない。入られたら、すぐにカウンターでいくというマインドで行くしかないですね」

──ドロドロになってきたら、チャンスが増えるのか。

「う~ん、ドロドロ……そうっすね。ミカってヨーロピアンに出ていますよね」

──ハイ。ミドル級決勝でアンディ・ムラサキを腕十字で破り優勝しています。

「ヨーロピアンって、ドーピング検査ないんですかね?」

──あっ、そこですか。

「そうなんですよ。WNOはチェックはないですけど、ヨーロピアンに出ていたら抜けている可能性がある」

──そうしたら、使い続けている岩本選手の方が有利だと。

「ハイ(笑)」

──アハハハハハ。勘弁してください。

「でも本当にミカには、以前のようなパワーがない可能性はあります」

──なるほどです。そこは当日の楽しみとして、岩本選手は今回もB-Teamで調整をしてきました。

「ハイ、香港でのセミナーが終わってそのまま来ました。ニッキーやクレイグが不在だったのですが、まだ名前がないB-Teamのメンバーがめちゃくちゃ強いです。めっちゃ強い。ここでやっていることが、自分のバロメーターになります。初めて来た時から比べると、強くなっていると思います。でも回りも強くなっているし、紫帯でもメチャクチャ強い人もいて。ほぼ無名で強い人が、結構います。ここで練習をしていると、力がつきます」

──これはまるで別件なのですが、ケイド・ルオトロとトミー・ランガカーの日本での試合は視聴されましたか。

「ハイ。ケイドが圧勝しましたね、凄い試合でした。ケイドは凄いです。本当に世界一だと思います」

──実はこの試合が決まるまで、岩本選手の位置関係としてアンドリュー・タケットやジョセフ・チェンとのライバルストーリーが綴られていくことが楽しみでした。ただミカと戦うことで、岩本選手の存在がケイド、ミカというところにやってきたのかと。

「ここで勝てば、そうです」

──それがまさに今大会でのタイトル挑戦に表れているのかと。メインがニッキー・ロッド✖ヴィクトー・ウゴ。他にダンテ・リオン✖ディエゴ・パト、タイナン・ダルプラ✖オリヴィエ・タザ、ジェイコブ・カウチ✖セブ・ロッドという面々の中に日本人グラップラーが出場する。それこそUFC300で日本人ファイターがタイトルに挑戦する……NBAやMLBのオールスターに日本人プレイヤーが出場するようなもので、グラップリング界での快挙かと。

「まぁ……それは難しいことじゃないと思います。勝たないと意味がないので」

──ただし一部のグラップラーしか出場できないイベントです。それだけケンタ・イワモトは世界で評価されていることかと。

「そうですね。知名度的に僕が高いから、選ばれたというのはあるかもしれないです」

──ここでインパクトを残せば、今後のレギュラー参戦もあるのかと期待が膨らみます。

「きっと僕は良い試合ができることを期待されているんだと思います。攻防が多い、スクランブルが多い試合。ミカと相性が良い試合になると思われているのかと。でも、この試合に限らず……ですけど、一つひとつの試合が一つの終わりと心得ているので」

──というと?

「むしろ、この試合が僕にとって最後の戦いだという感覚です。もう後のことは考えていない」

──つまり今回の試合はRoad to ADCC世界大会ではないと。

「ハイ。キャリアとかこれからのことは一切考えていないです。これが最後だと思ってやっています。帰りのチケットも買っていないです。試合までのことしか、考えていないので。そこしか見ていない。カリフォルニアから戻ることは今、頭にないです。とにかくミカとの試合に集中しています。終わってからのことは、どうでも良い。米国から帰国するチケットもキャンセルできるやつを買って、こっちに来ているので」

──凄まじい覚悟のうえでのミカへの挑戦ですね。

「もう、この試合で終わりです。それからのことは一切、考えていないです」

──押忍。そんな岩本選手を応援している人々に一言お願いします。

「うん……えぇと……。勝つことしか考えていないです」

──痺れる想いを持つ岩本選手ですが、最後に一つスミマセン。気になったことがあります。

「えっ、何ですか」

──岩本選手、インタビューの受け答えは英語の方が上手くないですか。あのFLOに挙がっているインタビューとか、凄く流暢で。

「アハハハハ、そんなことないですよ。英語より日本語の方が……多分、大丈夫です。今日は……最近、日本語を使っていないので。もうカタコトになって、表現力がないなって自分でも思っていました(笑)。本当に日本語をしゃべったのが、久しぶりだったので申し訳ないなって(笑)。言葉が上手く回らなかったです」

──それだけ動きは上がっていると、期待しています。

「ハイ。ありがとうございます。口はこうでも、体は動くので。そして日本語、勉強しなおします(笑)」

■視聴方法(予定)
2月10日(日・日本時間)
午前11時00分~Flo Grappling

■ WNO22対戦カード

<ヘビー級/15分1R>
ニック・ロドリゲス(米国)
ヴィクトー・ウゴ(ブラジル)

<WNOウェルター級選手権試合/15分1R>
[王者]ミカ・ガルバォン(ブラジル)
[挑戦者]岩本健汰(日本)

<WNO級ライト選手権試合/15分1R>
[王者]ダンテ・リオン(カナダ)
[挑戦者]ジエゴ・パト・オリヴェイラ(ブラジル)※フェザー級王者

<女子フライ級/15分1R>
アマンダ・アレキン(米国)
アデーレ・フォーナリノ(豪州)

<ミドル級/15分1R>
タイナン・デルプラ(ブラジル)
オリヴィエ・タザ(カナダ)

<ミドル級/15分1R>
ジェイコブ・カウチ(米国)
セバスチャン・ロドリゲス(米国)

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45 AB MMA MMAPLANET o ONE ONE165 WNO22 YouTube アラン・サンチェス アンディ・ムラサキ アンドリュー・タケット ウィリアム・タケット ケイド・ルオトロ ショーン・オマリー ジェイ・ロドリゲス タイ・ルオトロ ダンテ・リオン ニッキー・ライアン 岩本健汰

【WNO22】世界の頂=神童ミカ・ガルバォンに挑戦、岩本健汰─01─「じゃあ、どうするんだって(笑)」

【写真】B-Teamで練習中の岩本。世界に挑む、日本の格闘家(C)MMAPLANET

9日(金・現地時間)、カリフォルニア州コスタメサで開催されるWNO22「Rodriguez vs Hugo」に岩本健汰が出場し、ミカ・ガルバォンの持つWNOウェルター級王者に挑戦する。この一戦はある意味、タケルがスーパーレックと戦う、あるいは日本人がショーン・オマリーと戦うのに等しい──ただ単に世界と戦うということでなく、世界の頂点と戦う一戦となる。
Text by Manabu Takashima

神童ミカ・ガルバォンは2003年10月生まれの20歳。父マルキの指導の下、柔術とルタリーブリで黒帯を巻く。キッズ時代から輝かしい成績を残し、2019年のムンジアルではジュベニウで階級別と無差別を制覇し、アダルトへ。時代はコロナ禍を迎え柔術トーナメントが動きを止めるなか、ミカは配信大会で頭角をグングンと表し、一気に黒帯のトップ選手として認知されるようになった。

2022年のムンジアル制覇はドラッグテストで黒となり抹消され、その年のADCCでは77キロ級決勝でケイド・ルオトロにヒールフックで敗れるも、今や時代の寵児となったルオトロ兄弟よりも前評判は高かった。その後、BJJスターでイザッキ・バイエンセとフィリップ・アンドリューに敗れてはいるが、目下のところ24連勝中だ。

WNOは2021年の第9回大会から出場し、アンドリュー・タケット、オリヴィエ・タザに勝利すると、チャンピオンシップトーナメントでウィリアム・タケット、ジェイコブ・カウチを破り、決勝でタイ・ルオトロに敗れた。その後もダンテ・リオン、アラン・サンチェスに勝利し、昨年10月に王座決定トーナメントでジェイ・ロドリゲス、PJ・バーチを下し、ウェルター級のベルトを巻いた。

さらに12月にコディ・スチールをRNCで倒して王座初防衛に成功、今回は岩本と2度目の防衛戦を戦うことに。そのうえで1月の最終週にはヨーロピアンにミドル級出場したミカは、3試合連続で一本勝ちし決勝でアンディ・ムラサキと相対した。結果スイープを許し、パスのプレッシャーを受けるなか、左足でムラサキの左足を制し、右足で肩と頭をロックしつつ腕十字を極めるという神童の名にふさわしいフィニッシュで優勝を果たしている。

岩本にとって間違いなく過去最強の相手。ミカが持つベルトに挑む岩本──テキサス州オースチンのB-Teamで最後の仕上げを行うところでリモート取材を試みた。


──当初の予定ではニッキー・ライアンが挑戦するという話だったのですが、いつの間にか岩本選手が挑戦者になっていました。いつ頃、この試合が決まったのでしょうか。

「12月末ぐらいだったと思います。年末ですね、『どうか?』っていう連絡が来たのが。1度OKを出したのですが、それが無しになって。正月をゆっくりと過ごしていたら、またオファーがきてやることになったんです」

──それはニッキー・ライアンの出場がなくなったから、オファーがあったということですか。

「ハイ。最初の時はそうでした。ただ1度なくなった理由は分からないです(笑)。交渉の段階でなくなって、『やっぱりどうか?』という連絡があってからお金の話など、契約交渉の段階に入りました」

──とはいえADCCアジア&オセアニア予選で優勝した直後には、ADCC世界大会のトーナメント枠を良くするためにPJ・バーチなどと戦って結果を残すと言っていました。そしてミカへの挑戦、余りに言動が不一致です(笑)。

「アハハハハハ。最初はADCC世界大会でいきなりケイド・ルオトロやミカ・ガルバォンと当たらないためにもうちょい下の人を倒したいというプランでした。なので、まさかその本人が出てくるとは思わなかったです」

──ADCC世界大会に向けて、プランが変わる試合のオファーに躊躇はなかったですか。

「最初は『ミカか……』という感じはありました。2月の9日だと、準備期間も少ないですし。1月の15、16日に香港でセミナーがあり、その間はあまり練習ができない。ミカが相手なら、もうチョイ準備したいという気持ちがあったのですが、迷った末にやることにしました」

──目の前にミカというオファーがあれば、無視することはできない?

「う~ん、僕から求めていたわけじゃないですけど、舞い降りてきたチャンスを逃すことはできなかったです。頑張ってきたらチャンスは巡ってくる──そう思って、受けることにしたんです。僕的には勝ちたい。でもミカって一番強いから、他の選手と比べると勝つのは難しい。でも『良い試合をしたな』っていうことで終わってしまうのが、一番嫌なんです」

──ONE165でのケイド・ルオトロへの挑戦も断った。でもミカとは戦いたいというのは?

「それは契約の縛りの話があったからです。ONEは縛りがあって、縛りがなければやっていました」

──しかし、どうすればミカ・ガルバォンに勝てる見込みがあるのか。それは正直なところ思うところではあります。

「確かにWNOのルールはサブミッションの仕掛けを重視しています。以前、ミカとダンテが試合をしたときにダンテが何回もテイクダウンを奪ったのに、最終的にミカが一度腕十字の態勢に入ったことで勝てたんですよね。サブミッションが凄く重視されるので、ミカをWNOのルールで倒すというのは──勝ち筋を見つけるは難しいところがあります。

かといって何も見えない相手ではないです。僕が勝てる部分があるので、そこを利用して勝ち筋を見出すしかないです」

──勝てる部分というのは、どこになると考えていますか。

「立ち技とかだったら、行けるかなと」

──とはいえサブオンリーなので、ミカは立ちで敵わないとみると引き込んでくるのではないでしょうか。

「引き込んでくる可能性はありますね。印象を悪くしないために」

──テイクダウンされるより、引き込みの方が自分の形で組手を創れるような気もしますし。そうなると、引き込んでも攻撃になる。

「ハイ。そこはADCCとは違いますよね。ADCCルールの方が今の僕には合っていることは合っています。でも……う~ん、そうっすね。まぁ、う~ん。ミカをパスできないですもんね。ヘヘヘヘヘヘヘ」

──いや、笑いごとではないかと。

「じゃあ、どうするんだっていう話になるんですけど(笑)」

──ハイ……。

「だから、まあ……そのう……だから、まぁ……なるべく遠い距離で立っても良い感じでやるのか。それだとネガティブになっちゃいますよね」

──逆に岩本選手が引き込むということは?

「それはチョットきついです。プランにはないです。冗談ではあるかもしれないですけど。ミカはパスが強いですからね(笑)。ウィリアム・タケットを結構パスしていたので。ハハハハ」

──笑っている場合ですか!!

<この項、続く>


■視聴方法(予定)
2月10日(土・日本時間)
午前11時00分~Flo Grappling

The post 【WNO22】世界の頂=神童ミカ・ガルバォンに挑戦、岩本健汰─01─「じゃあ、どうするんだって(笑)」 first appeared on MMAPLANET.
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F1 JT・トレス MMA MMAPLANET o YouTube   ウィリアム・タケット グラント・ボクダノフ ゴードン・ライアン ジオゴ・ヘイス ジョセフ・チェン ダンテ・リオン ダヴィ・ハモス 世羅智茂 岩本健汰 森戸新士

【Fight&Life & ADCC Asia & Oceania Trial】ADCC予選へ、森戸新士「家族や仲間の存在が自分の力に」

【写真】競技として柔術とグラップリングは別モノであると思いますが、グラップリングを修めようといういう姿勢は生き方として柔術家だと感じます(C)MMAPLANET

現在発売中のFight&Life#99で11月25日(土・現地時間)にシンガポールはジュロンイースト・スポーツセンターで開催されるADCCアジア&オセニア予選に出場する森戸新士のインタビューが掲載されている。

岩国と広島に柔術道場を持つ。経営&指導でありながら、毎月のように道着&ノーギ、プロ&アマ・トーナメントに数多く出場する森戸にとってADCC出場の意義と、柔術家として取り組みを尋ねた同インタビューを全文掲載したい。


──昨日の全日本柔術選手権、ライト級と無差別級で3位でした。

「階級別も無差別も初めて試合をした大浦マイケ選手、グラント・ボクダノフ選手に準決勝で負けてしまいました。マイケ選手は茶帯で勝ちまくっていた選手で、自分の形を創る前に崩されてしまいした。素直に完敗でしたので悔しくて、やり返したい気持ちでいっぱいです(苦笑)」

──無差別の準決勝はポイントを取り合って同点でレフェリー判定負けだったと。マイケ選手もグラント選手も年下です。国内において下の世代が上がってきたことに関しては、どのように捉えていますか。

「そういう年齢になってきたな、と(笑)。僕が黒帯になったのが2018年、あの時には『やっと黒帯の強い選手を倒しにいける』と思っていました。思ったことを実現してきて、今は茶帯から上がってきた強い選手を倒す立場になった。でも今回は倒されたから、やり返したいです」

──それにしても1週間前にグラジエイターで暫定王座決定戦を戦い、世羅智茂選手を破って王者になったばかりでした。ケージ・グラップリングと畳の道着、もう完全に別モノかと。強行スケジュールで、どちらに比重を置いていたのですか。

「今回はノーギの方でした。ただ普段からノーギの試合前でも道着の指導をしていますし。そのままスパーにも加わっているので、どちらも練習しています。ただフォーカスしていたのはノーギですね。道着の方は3、4回ほど練習しただけでした。なので全日本は出場するかどうか迷ったんですけど、これでは来年のムンジアルで勝てないと思い知らされたので、出て良かったです」

──たまたまグラップリングの試合が前だったから、比重を置いていたのでしょうか。

「今回はタイトル戦で、世羅さんにはノーギで1度負けているので。ちゃんと取り返しておきたいというのがありました」

──4-2でしっかりと確実に勝った。そういう印象の試合でした。

「ルール的に上の取り合いになると分かっていましたし、そのつもりで準備もしていました。しっかりと勝てたことは良かったです」

──それにしてもグラジエイター、FINISHというグラップリングのプロマッチ、プロ柔術でもKITとART。そして全日本やアジア、全日本ノーギともの凄い数の試合に出場していますね。

「基本的には月に1度は試合をしていると思います。でも僕は試合が終わると、もう過去のことになっちゃうんです(笑)。次のことしか考えないので」

──現役生活と指導者生活、これだけ試合に出ていてなお、バランスが取れているのですね。

「基本、オファーがあったら断らないようにしています。呼ばれているうちが華なので。大きな舞台で活躍したいですし、その過程でもあるので数もこなしていきたいです」

──そういうなかで旅費、出場費を払うトーナメントと足代が出てファイトマネーのあるプロの試合では、捉え方は違ってきますか。

「試合は始まれば同じなので、あまり違いとかは考えないです。エントリー費用で1万円払うのも経験値を積んで、実績を創るためです。それにトーナメントは試合数が多くて、その分練習で取り組んできたモノを試せて成長できます。勿論、ファイトマネーが少しでも多い方が良いですけどね(笑)。それにプロの試合は旅費の負担がないのも助かります。そこに呼んでもらえていることが、有難いです。そういう舞台で戦うと名前も売れますし、ジムの宣伝にもなるので。プロマッチは相手が強い人しかいないのも良い点です」

──森戸選手はいつ頃からグラップリングの試合に出て、ADCCを目指すようになったのですか。

「初めてグラップリングの試合に出たのは2019年のADCCアジア・オセニア予選でした。岩本健汰選手が66キロ級で代表になった時です。僕は77キロ級に出場し2回戦でラクラン・ジャイルスに内ヒールで負けました」

──ラクランはその年の世界大会では無差別級で3位になるなど、足関節で旋風を巻き起こしたグラップラーですし、初のグラップリングでは致し方ない結果かと。

「あの時は柔術の練習の時に道着の上だけ脱いで藤田(善弘。藤田柔術代表)先生とチョロッとやっただけで出ていました。で足関を創られて、逃げ方も分からず足首とヒザを少し鳴らされてタップしました」

──なぜ予選に出ようと?

「当時はまだ会社員で、仕事をしながらでも選手として活躍したいともがいていた時期で、大きな大会は全て出ようとしていました。それで、取りあえず出てみようと。振り返れば、まぁ……どうやって勝つつもりだったんだろうとは思います。同時にそれぐらいのマインドを持っていないと、ああいう舞台には出ていなかったでしょうし。僕は試合に出て、課題に直面して直していくようにしているので」

──柔術では禁止されている内ヒールで敗れて、これは別モノだから構わないという気持ちには?

「ならなかったです。あの後のラクランの活躍も見て、自分もグラップリングを頑張ろうというきっかけになりました」

──別モノだという考えにはならなかったということですね。

「別モノという考えもあると思います。ただADCCの入賞者を見ても柔術家が多かったです。コブリーニャ、ダヴィ・ハモス、2連覇のJT・トレスと。柔術家がADCCルールに対応するために練習をして結果を残している。つまり柔術はグラップリングで生きているということじゃないですか」

──ハイ。

「グラップリングを戦う上でも柔術の練習が無駄になるとは思わないので、それほど分けて考えることはないです。ただし、グラップリングに特化して練習した方がADCCでは結果を残せるとは思っています。ムンジアルとADCCの両方を狙うよりも、どちらかに集中した方が成果は出しやすい。それでもミカ・ガルバォン、ジオゴ・ヘイス、ファブリシオ・アンドレだとか、ルオトロ兄弟もそうですが、両方で活躍している柔術家も多くて。僕が目指したいのはそういう選手です」

──まさにその言葉通りの活躍を国内ではできています。両競技に出る利点はどこにあると考えていますか。

「利点……利点というか、両方とも楽しいです。道着もアジアの前に集中して練習していると、掘り下げる分だけ新しい技術が見つかって。その時は道着にハマります。でもノーギの大会前はレスリングもそうだし、新しい技術にハマります。一方に集中した方が、競技者としては上達すると思いますが、両方とも楽しいから、今のところは両方で頑張りたいという気持ちです」

──コンペティションに出る理由も楽しいからでしょうか。

「そこに対する取り組みも、ですね。もちろん、試合だから精神的に負担もあります。ただ挑戦していること自体は楽しいです」

──楽しめなくなる。それも競技者生活の一面ではあります。

「注目が集まり過ぎると、そうなるんじゃないでしょうか。マイナー競技だから、楽しめているのかもしれないです。ただゴードン・ライアンが楽しめているとは思えないですね(笑)。ウィリアム・タケットも『試合に出ることはストレスだから、ずっと競技者をやっていこうとは思っていない』と言っていました。弟のアンドリューは、ただ楽しいって感じですけど(笑)」

──なるほどぉ。これは絶対的に否定していることではなくて──。森戸選手が全日本柔術の週末に子供さんの運動会に行かれていたことは、正直驚きました。

「日程的に可能であれば、どんな大きな大会前でも娘の運動会には行きますっ!! 」

──かつかつに体重を落とすわけでないですし。そういえば、MMAでも計量後に運動会に駆けつけている選手もいました。

「僕は減量を余りしないのですが、そりゃあ娘の運動会は大切です。むしろ、そこから活力を得ないといけない。そのために日々を頑張っているので」

──昭和親父として、頭が下がります(苦笑)。

「競技を続けることは当然、楽しいだけではないです。今の僕は道場経営で生活を成り立たせているので、自分の実績も今後の経営に関係してきます。何より応援してくれる家族、生徒さんやスポンサーさん達の生活も僕が活躍することで豊かになってほしいし、自分の心も豊かになれるので競技を頑張りたいです」

──今年は1月にジョセフ・チェンに完敗を喫しました。自らの努力を否定されかねない敗北だったかと思うのですが、心を豊かにするのとは真逆で絶望感を持つことは?

「自分がジョセフの域まで達していないだけで、でも強くなっている実感があります。これだけ強い人がいるのだから、もっと頑張ろうという気持ちになりました。強い選手と肌を合わせられて良かったと思います。戦う舞台が世界になると、ああいう選手が揃っているので。現にジョセフはノーギだと過去一で強かった。ジョセフ・レベルの選手がADCCの世界大会に出る。そういう選手と日本で試合ができて、差も分かりました。そこをどう埋めていくのかという過程に今はいます」

──あの試合以降、森戸選手のグラップリングは技術的に変化しました。ラクランの足関から始まったグラップリング挑戦ですが、この競技自体に技術変遷が見られます。

「今では足関は必須科目です。主流の技術が代わり、その技術を修得していく過程はやはり楽しいです。強くなることが実感できるので」

──その成果を発揮する舞台が、 11月25日のADCCアジア・オセアニア予選です。

「ADCC世界大会は僕の目標とする大会の一つです。招待選手でもない僕は、そこに出るには予選で勝つしかない。もちろん、そこに賭ける想いはあります。そのために練習をしているので」

──その練習環境としては広島&岩国だと、首都圏のコンペ練習がある道場とはまた違ってきます。首都圏ではMMAファイターのプロ練習に参加する選手もいますし。

「練習環境の差はどう見てもあります。でも僕はこのジムを自分で起ち上げて、通ってくれる生徒さん、出稽古で来てくれる練習仲間──皆で強くなっていこうという気持ちでやっています。取り組み方次第で、練習環境の差は埋めていける。結果を残して、ソレを示していきたいという想いでやっています」

──アジア・オセニアニア予選、豪州、あるいは中央アジアからどのような選手が出てくるのか分からないですが、前回優勝の岩本健汰選手が優勝候補一番手だと思われます。東京やB-Teamで練習する岩本選手を相手にして、今の言葉を実践できるのか。大勝負ですね。

「う~ん、ADCCルールの実力でいえば向うの方が全然上です。ジョゼフに勝ち、ウィリアム、ダンテ・リオンという世界のトップと張り合える選手との試合を見ても、岩本選手はめっちゃ強いです(笑)。でも、そこに挑んでナンボなんで。やるからにはもちろん、自分の持っているモノを全部出して勝ちに行きたいです」

──岩本健汰になくて、森戸新士にある長所とは?

「柔術の極め。岩本選手もスクランブルが強いですけど、自分も意外と得意なので、そこで驚かせることもないことはない。そういうところでチャンスを創りたいです。僕はコロナの時に米軍基地での指導という仕事を失って、あの時に柔術を教えていた生徒さんの助けがあって、家族と生き抜くことができました」

──……。

「LEOSを創る前、結婚をする前、子供が生まれる前は自分のことしか考えていなかったです。今は柔術だと試合会場に仲間と一緒に行き、プログレスとか自分だけの試合でもセコンドで仲間が来てくれます。試合直前まで支えてくれて、応援してくれる家族や仲間の存在は、明らかに自分の力になっています」

──圧倒的な実力差があるケースを抜きにして、競り合った時にその想いが森戸選手のエネルギーになりそうですね。

「より一層負けられないという気持ちが大きくなります。試合前も娘の写真を見て……だから運動会にも行くし(笑)。奥さんから娘が『頑張ってねぇ』と言っている動画が送られてきます。道場の皆のメッセージを読んで、動画を見ると良い感じで緊張が取れて『やるぞ』と気持ちを切り替えることができるし。そんな皆のためにも頑張りたいです」

──では改めてADCCアジア・オセニア予選に向けて、意気込みの程をお願いします。

「ADCCアジア・オセアニア予選はレベルも凄く上がっていて、メンバー的にも過酷なモノになると思います。インターバルも短く体力的にも厳しいです。勝ち上がれば勝ち上がるほど厳しい状況になりますが、一つひとつ勝ち進んで──代表権を掴み取りたいと思います」

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o ONE   ケイド・ルオトロ ゲイリー・トノン ダンテ・リオン

【ADCC2022】77キロ級決勝。ケイド・ルオトロがミカ・ガルバォンを内ヒールで破り──全試合一本で優勝

【写真】双子でも、どこかタイの後塵を拝すという格が存在していたケイドだが、最年少ADCCウィナーの称号は両者の格の差を完全に埋めた(C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第6 回は77キロ級の決勝戦のケイド・ルオトロ×ミカ・ガルバォン戦の模様をお伝えしたい。


<77キロ級決勝/20分1R& ExR10分2R>
ケイド・ルオトロ(米国)
Def. 11分51秒by ヒールフック
ミカ・ガルバォン(ブラジル)

18歳のミカと19歳のケイドによる決勝戦。ミカはケイドの双子の兄タイとは、一年前のWNOチャンピオンシップ決勝、今年の柔術世界選手権決勝で対戦。前者ではタイがミカの攻撃を遮断し続け攻防の少ない展開が続いた末、レフェリー2-1でタイの勝利。後者では道着を掴んで逃さなかったミカがポジショニングで圧倒して勝利している。が、ケイドとミカは今回が初対決だ。

準決勝までの試合ぶりと同様、スタンドで前に出るミカ。対するケイドは柔らかく動き、ミカの頭をいなしたり足に手を伸ばすフェイントをかけてゆく。

やがて距離を詰めたミカは、ケイドの左足を掴んでから左ワキを差す。ケイドは得意の小手に巻いての内股でカウンター。堪えたミカは自ら回転して上を狙うが、ケイドは一瞬早く旋回して上をキープした。本来、相手の動きに合わせて「後の先」を取るミカから、ケイドが後の先を取った形だ。

ハーフ上からがぶって必殺のダースを狙うケイド。ミカが防ぐと、ケイドは枕を取って顔を上腕で圧迫する。上半身を制されたミカだが、足を利かせてケイドを浮かせてオープンガードに戻してみせた。

さらにミカは内回りからインバーテッドで崩しにかかる。が、ケイドはそこにカウンターで飛び込むようにバック狙いへ。ミカは距離を保って防ぐものの、ケイドが上をキープした。ここまでの攻防、普段は相手の動きを切り返すミカだが、ケイドに先を行かれている。

ミカは足で距離を作ってシッティングへ。立ち上がったケイドはニースライスを試みる。ならばとミカが下からケイドの左足を抱えて回転して50/50で絡むと、左足に内ヒールを狙う。ケイドが回転して逃れるや、ミカはシットアップしてボディロックを作り──上を狙う。ケイドは体勢を立て直して、再び小手から内股に。きれいにミカを投げてみせたケイドが、またしても上をキープした。

クローズドガードの中から、ミカをリフトして立ち上がるケイド。やがてミカは下に降りてスピンし、ケイドの左足に絡んで引き出して肩にかける。そこからケイドの動きに乗じてヒザ固めの形を作ったミカは上を狙うが、ケイドは卓越したバランスで上をキープする。

ケイドはミカに足を絡まれながらも体重を預け、上から腕でミカの顔を圧迫してゆく。ミカは再びヒザ固めに入るが、ケイドはヒールでカウンター。逃れたミカは再びシットアップで上を狙うも、ケイドはまたしても小手からの投げで対抗。ここでミカは回転の方向を変えるが、ケイドはここも大きく旋回して着地し、決してミカに上を取らせない。

背中を付けるミカに対して、ルオトロ兄弟の代名詞である相手の足を踏みつけてのパスを見せるケイドは、やがてミカのオープンガードの中に入り、上から腕で顔を圧迫する。

下から足を絡め、ケイドの左足を引き出して肩にかけるミカ。ケイドは空いているミカの左足にエスティマロックを仕掛ける。それをやり過ごしたミカは下から外ヒールを仕掛けるが、ケイドは素早く反応して抜く。

50/50で右に絡んだミカは、今度は腹這いになってのストレートフットロックを狙うが、ケイドはここも回転して抜いてみせた。一回戦のラクラン・ジャイルズ戦同様、卓越した足関節への対応力だ。

立ち上がって右でニースライスを作るケイドと、ハーフで絡むミカ。やがて試合は10分を経過して加点時間帯に入るが、両者とも最初からポイントはあまり気にかけていないようで、ケイドが上からプレッシャーをかけ、ミカがインバーテッド等で防いで反撃を試みるという攻防が続く。

ケイドの侵攻に対し、足を利かせて凌ぐミカは内回りしながらケイドの左足に両足で絡む。さらに右足も引き寄せて煽るミカだが、ケイドはミカの体の上に座るようにバランスを保つ。

柔軟な股関節を利して、自らの左足を下からケイドの股の間にねじ込むミカ。その左足が伸びてきたのを見たケイドは、それを瞬時に左ワキに抱えるとともに前にダイブして内ヒール一閃。ミカは即座にタップした。

会場が爆発するなか勝利をアピールするケイドは、「やられた」という表情のミカとハグして健闘を称え合い、歓喜のバク宙を決めてみせた。

世界最高峰の選手たちが集まるこの大会にて、特に強豪が勢ぞろいして最も熱い注目を浴びたのがこの77キロ以下級だ。そこで4試合全て一本勝ちという驚異的な内容をもって、19歳のケイド・ルオトロが史上最年少のADCC世界王者に輝いた。

実況のケニー・フロリアンからインタビューされて、満面の笑顔で「今の気持ち? アンリアルだ。言葉が出ないよ!」と答えたケイド。

(ミカと過去に試合している)兄のタイの経験は役に立ったのかという質問に対しては「それはものすごく大きかったよ。いくつもポイントを教えてくれたんだ。兄は何度もミカと戦っているけど、僕はこれが初対戦だったからね。ディアズ兄弟はこんなふうに言っていたらしいね。『まあアニキに何か具体的なアドバイスを頼めばなんか言ってくれたと思うけどよう、でもアニキはその前に『おめえ、あのクソ野郎をぶっ飛ばせよ!』って俺に言ったんだよ』ってね。とにかく今はホッとしているよ。そして最高の気分だ!」とジョークを交えて答えてみせた。

実際にこの試合においてケイドは、天下一品の反応速度を持つミカのカウンターのことごとく先を行き、決してミカに上のポジションを与えることがなかった。ミカの強さを誰よりも体感している兄の存在が、この勝利の鍵の一つだったのだろう。

そして、この新世代頂上決戦に唐突なエンディングをもたらした最後の極め。急速な技術進化とともに足関節のポジションのセッティング方法がどんどん洗練されてゆくなかで、それとはほぼ無関係に試合の流れの中でチャンスと見るや即座に動き、躊躇せずにダイブしながら極めてしまう反応力と発想の自由さは特筆に値する。逆に言えば、ダナハー以降「サドルや50/50でポジションを作ってからヒール」というプロセスが常識化していたからこそ、ミカはケイドの極めを予期できなかったのかもしれない。

加えて兄タイとともにONEと契約し、ルールは違うものの『グラップリングをDo Sportsから見る者も楽しめる競技にしたい』という彼らのアイデンティティが高い防御能力という下支えがあるなかで、フィニッシュに向けて大胆かつタイミングを見極める力を高めたかもしれない。

柔術ファンダメンタルを土台とした上で驚異的な強さを発揮するミカを、セオリーを超えた自由な動きで制してみせたケイド。ならば2人が道着着用ルールで戦ったらならどう展開になるのか。ルオトロ兄弟と、この敗北──黒帯取得以來からはじめての一本負けだ──を経てさらに強くなるに違いないミカとのライバル・ストーリーは、これからも見逃せない。

なお3位決定戦では、鉄壁のニーシールドでPJ・バーチの侵攻を防いだダンテ・リオンが、下からファーサイドの腕十字を見事に極めてフィニッシュ。

前回大会ではルーカス・レプリに一本勝ちして世界を震撼させつつも、3位決定戦でゲイリー・トノンのヒールで秒殺されてしまっていただけに、嬉しいメダル獲得となった。

■ADCC202277キロ級リザルト
優勝 ケイド・ルオトロ(米国)
準優勝 ミカ・ガルバォン(ブラジル)
3位 ダンテ・リオン(カナダ)

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o YouTube   ウィリアム・タケット ダンテ・リオン ヘナート・カヌート

【ADCC2022】77キロ級準決勝 ミカ・ガルバォンがトップの強さを見せ、持ち味発揮のリオンを延長で下す

【写真】重厚なトップの強さが、レスリングの強化により顕著になったミカ(C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第4回は77キロ級──柔術の神の子ミカ・ガルバォンの準決勝の模様をお伝えしたい。


<77キロ級準決勝/10分1R&ExR>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def. ExR 2-0
ダンテ・リオン(カナダ)

2回戦、電光石火の早業でヘナート・カヌートの腕を極めた――柔術の神の子ミカ・ガルバォンの準決勝の相手は、前回大会4位のダンテ・リオン。1回戦はマジッド・ヘイジからパスを奪い、横三角で腕を伸ばして順当勝ちを収めている。

続く2回戦でリオンは、初戦でウィリアム・タケットの足を極めてみせたポーランドのマテウス ・シュゼシンスキと対戦。

下からの足関節の仕掛けを凌いで延長に入ると、シュゼンスキのテイクダウンを切って背後に回ってシングルバックからコントロール。

延長戦のレフェリー判定を制して準決勝に勝ち上がった。

ミカとリオンは今年3月のWNO 12にて対戦。この時は足関節狙い、バック取り、腕十字と流れるような連携を見せるなど積極的に極めを狙ったミカが判定勝ちを収めている。しかし、スタンドで何度もテイクダウンを決めていたのはリオンの方だった。

前回の対戦時とは違い、積極的にスタンドに挑むミカ。左足へシングルを仕掛けるが、リオンは即座にカウンターのギロチンで絞め上げる。するとミカは斜め後ろに倒れながら体を翻してリオンの上になり、サイドを奪ってみせた。

そのまま低く重くリオンを押さえ込んだミカは、やがて横からマットとリオンの背中の間に体を滑り込ませるようにバック狙いへ。さらに背後からリオンの背中を登ったミカは、左足でリオンの左足を超えて後ろ三角狙いの体勢に入るが、リオンはその左足に両足で絡んで耐える。

リオンが下から体をずらすと、そこに乗じてバックを狙うミカ。リオンは足を利かせて両腕のフレームも駆使して距離を作り、下から正対することに成功した。

ニーシールド&フレームを作ったリオン。これは前回大会にて、当時の世界柔術絶対王者ルーカス・レプリの必殺ニースライス・パスを防ぎきった強力なポジションだ。しかし重石のごとき不動のベースを持つミカは、上半身でゆっくり圧力をかけてゆく。とその刹那、ミカは一瞬腰を浮かせてリオンの左のニーシールドをステップオーバーし、レッグドラッグの体勢に。ピンチかと思われたリオンだが、下から動いて足を利かせて正対し、再びシールドを作ってみせた。

ミカはその足を再び低く潰しにいく。さらに侵攻するミカが枕を取りにいくと、リオンは体をずらしてディープハーフに。腰を切るミカに対し、リオンは下からバックを狙うがミカが向き直った。

ここで試合は加点時間帯へ。リオンは下からミカを浮かせるが、ミカの低い重心は崩れない。その後も、上から重く低いプレッシャーをかけて侵攻を試みるミカと、それを凌ぐリオンという展開が続いた。ミカの強烈無比の圧力×リオンの鉄壁のガード。地味だが、間違いなく世界最高峰のスキルを両者が真正面からぶつかり合う展開だ。

残り2分半、ミカはリオンの腰を潰して背中を付けさせながらボディロックを完成させる。そのまま圧力をかけてじっくりせり上がるが、リオンは下から動いて足を利かせて体勢を戻した。

ミカは、決してリオンを立たせずに低くプレッシャーをかけ続ける。凌ぎ続けているリオンだが、徐々に圧力負けして背中を付けさせられ、枕を取られる場面が増えていく。

残り1分となり、枕から足を抜いてパスを狙うミカ。が、ここでリオンは全身の力を使って距離を取ると、ミカの左足に絡む。すかさずミカも足を引き抜いて、両者はスタンドに戻った。30秒、前に出るミカをリオンが無理せずいなす形で本戦終了。試合は延長へと入った。

延長戦。積極的に足を飛ばすミカは、リオンのスナップダウンに逆らわずそのまま右足にシングルに入り、ドライブしていく。リオンは倒れ込みながらギロチンでカウンター。ここで亀のポジションになったミカに対して、すかさずバックを取りにゆくリオン。

ミカは仰向けになりながら、左足でリオンの体を宙に舞わせてそのまま上に覆いかぶさった。

リオンは右腕のフレームでミカを遠ざけようとするが、圧力で勝るミカがリオンを背中に付けさせてガードの中に。ここでポジションが固定され、テイクダウンを仕掛けて動きが止まらないまま上を確立したミカに2点が追加された。

下になったリオンはニーシールドの体勢から後転して煽るが、ミカの盤石のバランスは崩せない。下から足も狙うリオンだが、その足をミカが引き抜く。残り1分半のところで両者が立ち上がった。

ここでも下がらないミカに対して、リオンがダブルレッグ。深く入って尻餅を付かされたミカは、すぐに亀の体勢に。直後にバックに回ったリオンは、襷からミカの体を引き剥がすように上を向かせて逆転のフックを狙う。が、ミカは体をずらしてハーフに。

この攻防でリオンが2点を獲得。残り1分の土壇場で追いついてみせた。ハーフの体勢のミカに対して、勢いづくリオンは力強くキムラグリップを狙うが、ミカはすぐにインバーテッドで戻す。するとリオンは低く体重を預けてボディロックへ。が、ミカも下からバタフライを効かせて守る。

このまま試合終了かと思われたが、残り数秒でなんと審判団は先程のリオンの2点を無効と判断してポイントが2-0に戻ってしまう。テイクダウンされて亀になったミカが、その状態を3秒保ったという判断のようだ。そのまま展開は動かずに試合は終了。納得のいかない表情でアピールするリオンだが、判定は覆らず、ミカの決勝進出が決まった。

スコアリングの不手際によってすっきりしない終わり方となってしまったが、たとえ同点で終わったとしても、試合の大半を強烈なプレッシャーで支配していたミカがレフェリー判定で勝利が告げられる可能性は高かっただろう。テイクダウンを何度も奪われたWNOでの前戦と比べて、ミカもADCC用に戦い方を変えてきていること、そしてスタンドでもレスリング力に定評あるリオンと互角に渡り合える力を持っていることを証明した。

同時に、強烈無比なプレッシャーを浴びながらも最後までパスを許さず、最後に見事な反撃をみせたリオンの充実ぶりも光った。現在世界最高峰に位置するグラップラー2人による、白熱の好勝負だった。

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ADCC2022 JT・トレス MMA MMAPLANET o PJ・パーチ YouTube   アンディ・ヴェレラ ウィリアム・タケット エスペン・マティエセン クレイグ・ジョーンズ ダンテ・リオン ダヴィ・ハモス トミー・ランガカー ニッキー・ライアン ヘナート・カヌート ロベルト・ヒメネス 堀内勇 岩本健汰

【ADCC2022】高橋サブ&堀内勇がADCCを深掘り─03─。77キロ級、トップ4の力有り?! 岩本健汰

【写真】組み合わせは次第、力はベスト4に肉薄しているか──岩本健汰(C)HUYNH NGUYEN

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第3弾は77キロのJT・トレスの対抗馬から、日本から出場する岩本健汰について話を続けてもらった。

<高橋Submission雄己&堀内勇、ADCC深堀対談Part.02はコチラから>


──おお、ニッキー・ライアンですか。

堀内 ダンテ・リオン戦でケガをして、その後にもう一度ヒザをやったようで。本当に復帰直後で、100パーセントとはいえないのでしょうが、「この2、3年レスリングを強化してきて、レスリングには本当に自信がある。ハンド・ファイティング、立ち技で相手を疲れさせることが重要だ。僕はJTと戦っても、レスリングで疲れさせることができて、もしかしたらレッスルアップもできるんじゃないか」という風に言っていました。

一方でミカの方は「JT、強いねぇ。1回戦でも決勝でも戦うのが楽しみだよぉ(笑)」っていう感じなんです(笑)。皆、それぞれがJT対策を練っているようです」

──ニッキーとJTが対戦して……ハンド・ファイティング、つまり組手争いをするということですよね。それが10分とか延長戦まで続くと思うと……。

堀内 アハハハハ。「加点でない時間帯は疲れさせる」と言っていたので、あとからチェックして最初の5分は早送りで良いかと思います(笑)。

高橋 アハハハハ。やっぱりケイドとニッキーかと思います。JTの嫌なことができそうなのは、ケイド。かき回してくれそうです。あとニッキーはB-TEAMのYouTubeとか視ていると、めちゃくちゃレスが強くなっていますね。ADCCルール的にレスリングの地力でJTに勝つこともあり得るかと。ミカ以外の対抗馬は僕もケイドとニッキーかなという感じです。

そういうなかでルーカス・レプリが欠場という残念な情報を見ました。

──レプリは実戦の感がどれだけ戻っているのかというのがあったのですが、残念です。JTのADCCの勝ち方でルールを理解して纏めてくる。それはIBJJF的フィロソフィーだという部分、実は岩本健汰選手に話題が進まないかと振りでした。

堀内 そういうことだったのですか(笑)。

──優勝、JT越えが現実的な話題かどうかは、さておいて日本からたった1人の出場選手で、B-TEAMで鍛えて本戦に挑む岩本選手に言及して欲しかったです。

高橋 う~ん……。

堀内 僕がスッと岩本選手の名前が優勝候補やそこに勝つというところで出てこなかったのは、やはり岩本選手と世界のトップの試合を見ていないからであって期待をしていないということは絶対にないです。

ツイッターを見せていただくと、B-TEAMで指導を代行したり、本当に凄いことだと思います。あのトップどころに短期間でそこまで認められて。ベン・エディにも勝っていますし。

高橋 地力は間違いなく、トップレベルに追随しています。僕も身をもって岩本さんの強さをロータスの練習で知っているけど、如何せん比較対象となるJTやミカと肌を合わせたわけでないので、肌感覚物差しでは話せない。そうなると過去の試合を見て、客観的な分析からルールに合う部分を揃えて勝敗予想をしていきたいですけど、こっちの物差しで測ろうとすると岩本さんの試合データがなかなかなくて、比べることが難しい状況です。

──となると、過去の実績で評価してしまうのが世の常ですね。それとアジア&オセニア予選の優勝者が、過去にどういうリザルトだったのかが判断材料になってしまいます。

高橋 ただB-TEAMで認められていて、組み技のレベルとしてトップグループに追随している。あとスタイル・マッチアップを考えると岩本さんはサブオンリーでなく、ADCCルール向きです。この条件でいうと、ベスト4候補のニッキーと練習して認められている。しかもニッキーに立ち技を教えていたりしています。そうなるとスタイルはADCCにバッチリ合っていて、組み技のレベルでトップに追随しているという理屈だと、ベスト4に食い込んでくる候補として挙げても良いのかもしれないとは思います。

──ベスト4候補というのは、ベスト4に入る力の持ち主ということですね。ただし、組み合わせで次第で、それこそ初戦でJT、ミカ、ケイド、ニッキーと当たることもあります。

堀内 アジア&オセアニア予選の優勝者は第1シードか第2シードに当てられる印象が強いです(苦笑)。

高橋 そこを乗り越えても、消耗するだろうし不利になってきますね。

──ではトーナメント枠を取っ払って16人の枠のなかで順位をつけるとすれば、現在の岩本選手は何位になると思われますか。

高橋 ベスト4はあると思います。

──堀内さんは?

堀内 僕は……そこは分からないです。でも、本当に期待しています。最後にエントリーされたマジット・ヘイジとかには勝って欲しいです。他の選手もトミー・ランガカー、オリヴィエ・タザ、ウィリアム・タケット、先に名前が出ていてもおかしくないロベルト・ヒメネス、ラクラン・ジャイルズ、ダヴィ・ハモス、ヘナート・カヌート、PJ・パーチ、アンディ・ヴェレラは少し落ちるかもしれないですけど。

──言うて石井慧選手にSUGで勝っていますし。

堀内 それだけ凄い選手しか、いないってことなんですよね。

高橋 俺、今挙がった中の選手だったらヴェレラ、バーチ、タケット、なんならラクランだと岩本さんが勝つかなって思っています。ただ、そこと1回戦で当たることがないんですよね。でもフラットに見たら、それぐらいの強さを岩本さんは持っていると思います。

──ならADCCだけでなく、世界のプロ・グラップリングの場に挑戦する姿も見たいですね。

高橋 ただしADCCルール向きというのは有ると思います。ルール云々でなく、組み技全体の総合力という部分では、岩本さんはトップレベルにいるんじゃないかと……いて欲しいという希望的観測はあります。触れてみて、凄く強いと思うから。岩本さんがボコボコにされたら、そのレベルってどうなんだって──となってしまうので。

堀内 ブラジル、そして米国ばかりだったころに北欧からランガカー、エスペン・マティエセン、豪州からラクランとクレイグ・ジョーンズが出てきたように、極東から岩本選手がバーンと来たら、本当に夢がありますよね。

──この場で、このメンバーと戦って、勝負論まで語ることができる日本人グラップラーが過去にいたのかということですし。

高橋 本当にそうですよね。

<この項、続く>

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MMA MMAPLANET o PJJC2022 アンディ・ムラサキ アンデウソン・ムニス エリキ・ムニス クレイグ・ジョーンズ グーテンベルギ・ペレイラ ジョナタ・アウヴェス タイナン・ダウプラ タリソン・ソアレス ダンテ・リオン ディヴォンテ・ジョンソン ブルーノ・マルファシーニ ペドロ・マリーニョ ホベルト・アブレウ リーヴァイ・ジョーンズレアリー レアンドロ・ロ ロベルト・ヒメネス 嶋田裕太 橋本知之

【PJJC2022】パン柔術見所。ライト級のムラサキ✖アウヴェス。ミドル級はダウプラ、ヒメネスらに注目

【写真】昨年のパンナムは8ファイナル敗退だったアンディ・ムラサキ。今年はどうなる?!(C)EUG

フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナで6日(水・現地時間)から、IBJJFパン柔術選手権が10日(日・同)の日程で始まっている。

世界の強豪が集結し、6月の世界大会の行方を占う上でもきわめて重要なこのパン柔術。プレビュー最終回は橋本知之が出場するライトフェザー級、嶋田裕太が出場するフェザー級以外について考察したい。


【ルースター級】
本命は2020年のヨーロピアンでブルーノ・マルファシーニ越えを果たし(その年は惜しくも決勝で橋本知之に敗れたものの)、今年のヨーロピアンで優勝を果たしているタリソン・ソアレスか。ソアレスと決勝で対峙する有力候補としては、2019年のヨーロピアンで芝本幸司に快勝したカルロス・アルベルトが挙げられるだろう。

(C)EUG

【ライト級】

この大会2連覇中、AOJのジョナタ・アウヴェスがエントリー。昨年のEUG2のトーナメント決勝にて、柔術の神の子ことミカ・ガルバォンと対戦し、一度トップを取ったら這いつくばってでもキープする執念の戦いぶりでリードを守り切って優勝した姿が印象深い。

そして別ブロックには、ティーン時代を日本で過ごし、昨年のEUG1で世界的黒帯を3タテして衝撃の黒帯デビューを果たしたアトスのアンディ・ムラサキがいる。

23歳のアウヴェスと22歳のムラサキは今年のLAオープンの決勝でも対戦し、この時は8-8のアドヴァンテージ差でアウヴェスが勝利している。柔術界の未来を背負う新世代のライバル対決が、今回決勝でまた見られる可能性は高そうだ。

(C)SATOSHI NARITA

【ミドル級】

大本命は、昨年の世界大会初出場にて初優勝を果たしたタイナン・ダウプラ。鍛え上げたフィジカルを武器に、万力のオープンガードで相手をたちどころにスイープして上を取ると、問答無用の圧力で相手のガードを潰して極めまで持ってゆく戦い方は圧巻だ。

(C)FLOGRAPPLING

そのミドル級、ダウプラの初戦が要・注目だ。

1回戦シードのダウプラが初戦で当たる可能性が高いのが、WNO等のノーギシーンでも目覚ましい活躍を見せるロベルト・ヒメネスだ。見事なバックグラブの技術とどこからでも極めを狙うダイナミックな戦いを身上とするヒメネスが、ダウプラの盤石の戦いぶりを崩せるか、注目したい。

ここをダウプラが順当に勝ち上がれば、おそらく準決勝で当たるのはホナウド・ジュニオール。昨年はパン大会、世界大会とどちらもダウプラの軍門を下っているだけに、雪辱に向ける気持ちは強いだろう。

もう一つのブロックにも強豪選手が散見されるが、ダウプラとの決勝を期待したいのは豪州出身のリーヴァイ・ジョーンズレアリー。抜群の切れ味のベリンボロ・ゲームの持ち主で、以前絶対王者ルーカス・レプリの必殺ニースライス・パスを凌駕してみせて世界を驚かせた。レアリーのベリンボロは、ベリンボロを世界に広めたメンデス兄弟を師に仰ぐダウプラにどこまで通用するのだろうか。

【ミディアムヘビー級】

最大のビッグネームは、階級世界制覇のレジェンド、レアンドロ・ロ。ユニティのムリーロ・サンタナ門下に入ったロと、別ブロックにいる師のサンタナによるクローズアウトが実現するかどうかが注目だ。

この二人を止める候補としては、メンデス兄弟の弟子にして昨年の茶帯世界王者マテウス・ホドリゲスや、昨年のF2W 166でダンテ・リオンに勝利する等ノーギで活躍するマニュエル・ヒバマーらが挙げられる。

【ヘビー級】
第1シードはポーランド出身、今年のヨーロピアン王者のアダム・ワルジンスキ。準々決勝では2019年のADCC世界王者にして、世界柔術でも二度3位入賞しているマテウス・ディニズと当たる可能性が大きく、この対戦がトーナメント序盤の大きなヤマとなりそうだ。

別ブロックでは、素晴らしい切れ味のヒールやギロチンを武器にノーギシーンで活躍し、1月のWNOではクレイグ・ジョーンズを破る殊勲の星を挙げたペドロ・マリーニョがエントリー、道着着用での戦い方も注目だ。

【スーパーヘビー級】
昨年の世界柔術初出場初優勝を果たしたエリキ・ムニスが大本命。長いリーリを活かしたスパイダーガードはまさに難攻不落、別ブロックにいる兄のアンデウソン・ムニスとともにクローズアウトを狙う。

が、アンデウソンのブロックには、エリキと昨年の世界大会決勝を争い僅差で敗れたフィリッペ・アンドリューや、そのアンドリューに道着着用の世界大会では敗れたものの、ノーギ・ワールズではアナコンダ・チョークで一本勝ちを収めて優勝したディヴォンテ・ジョンソン等の有力選手が控えている。

(C)SATOSHI NARITA

【ウルトラヘビー級】

最大のビッグネームは、サイボーグことホベルト・アブレウ。13年にADCC世界大会無差別級を制し、昨年もノーギ・ワールズで優勝する等その強さは健在だ。ノーギ専門家というイメージが強いが。その必殺のトルネードスイープは、道着着用にてグリップを確保することで威力が増すはずだ。準々決勝で当たる、昨年サウスアメリカンを完全制覇しているワラス・コスタとの試合がまずはヤマとなりそうだ。

もう一つのブロックには、強靭なベースを誇り、昨年、今年とワールドプロ大会を2連覇しているグーテンベルギ・ペレイラがいる。ちなみにペレイラとコスタは今年のグランドスラム・ロンドンの決勝でも当たり、僅差でコスタに凱歌が上がっており、今回の決勝で再戦が実現する可能性は大いにあるだろう。

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MIKE MMA ONE ONE Championship WNO Championships   ウィリアム・タケット オリバー・タザ ジョニー・タマ タイ・ルオトロ ダンテ・リオン ロベルト・ヒメネス

【WNO Championships】レポート─04─群雄割拠、柔術の神の子たちの競演。ミドル級準々決勝~準決勝

【写真】柔術の神の子が決勝進出、タイ・ルオトロ戦 (C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されたWho’s Number One Championships。ライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメント──は2021年グラップリング界の最大のイベントとなった。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第4回はミドル級の準決勝までの流れを整理したい。


ライト級同様、ミドル級の1回戦でも大波乱が起きた。優勝候補本命のロベルト・ヒメネスが、最後の最後にトーナメント代役出場が決まったジェイコブ・カウチに一本負けを喫した(別稿で詳述)。

同ブロックのもう一つの1回戦では、世界の注目を集める柔術の神の子ことミカ・ガルバォンが登場。コロナ禍の北米グラップリング界の隆盛を象徴する存在ウィリアム・タケットとの新世代対決が実現した。

(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

まずはミカがきれいな小外掛けでテイクダウンを奪うと、タケットも下からの足関節の仕掛けで反撃。

タケットが逃れるミカのバックを狙ったところで、一瞬の反応で体を翻してニアマウントに入るなど、序盤から両者の持ち味が発揮される展開となった。その後もミカが主導権を握り、タケットがシットアップした刹那のタイミングでニーカットパスを決め、次の瞬間マウントに入るといった素晴らしい動きを随所で披露した。結局一本こそ取れなかったものの、その天性の能力を存分に発揮したミカが判定3-0で完勝を収めた。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

続いてミカは準決勝で、1回戦でヒメネスを倒す大殊勲を挙げたカウチと相対した。

下からのスイープを狙うカウチが頭を抱えてきた瞬間に、ダイブしながらその右腕をすくいあげて伸ばしてアームバーに入るという離れ技を炸裂させ、3分弱で決勝進出を決めた。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

もう一方のブロックでは、ヒメネスと並んで優勝候補のタイ・ルオトロが登場、1回戦でジョニー・タマ──オリバー・タザの代打として急遽出場が決定──と対戦した。

タマが下から足を絡めてくるとすかさずベリンボロで切り返してバックを奪ったタイは、脱出したタマがシッティングから仕掛けようとしたときにダイブしてダースチョーク一閃。足関節にはベリンボロ、シッティングにはダースチョークというルオトロ兄弟の黄金カウンターパターンを見事に決めて1回戦を突破した。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

同ブロックもう一つの1回戦を勝ち上がったのはダンテ・リオンだった。

ジョン・ブランク相手にスタンドからのシングルレッグと下からのレスリングアップを何度も決めて優位に立ったリオンは、終盤にはブランクのフレームを手で押し除けて前にドライブして後ろ三角絞めへ。極めきることこそできなかったものの、文句なしの判定3-0で勝利した。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

タイとリオンによる注目の準決勝は、スタンドレスリングでダブルレッグを何度も決めたタイが、上から攻撃を仕掛け続ける展開に。

リオンも鉄壁のニーシールドからのレッスルアップという得意の流れを試みるが、タイはそれをことごとく遮断して上をキープ、ノンストップ・パス攻勢でリオン削っていった。終盤、ついに側転パスからサイドを取りかけたタイは、亀になったダンテの背後に付く。すかさず左腕をダンテの肩口から入れて首をワキで抱え、ギロチンと肩固めの融合のような形で絞め上げると、ダンテはすぐにタップ。のこり10秒ほどのところで見事な一本勝ちを収めた。

かくてミドル級決勝の顔合わせは、18歳のタイ・ルオトロ✖もうすぐ18歳のミカ・ガルバォンに。圧巻の強さと輝きをもって勝ち上がった柔術界の未来そのもののような二人による、大注目の新世代決戦が実現することとなった。

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F2W182 JJ Globo ダンテ・リオン ダヴィ・ハモス ブログ

【F2W182】残り2秒、ダンテ・リオンがダヴィ・ハモスからRNCで一本勝ち

先月28日(土・現地時間)、カリフォルニア州バーリンゲームのハイアットリージェンシー・サンフランシスコ・エアポートで、F2W182「East Bay」が開催された。
Text by Isamu Horiuchi

遅まきながら、注視すべき結果にになった上位カードから、メインで行われた一戦の模様をレポートしたい。

<F2Wノーギ・ウェルター級選手権/10分1R>
ダンテ・リオン(カナダ)
Def.9分58秒 by RNC

ダヴィ・ハモス(ブラジル)

常にアグレッシブな姿勢で試合に臨むリオンは、試合開始後すぐにシュートイン。腰を引いたハモスに防がれると、今度はイマナリロールへ。これもハモスに距離を取って防がれると、そのままオープンガードに入った。

低くプレッシャーをかけにくるハモスに対し、リオンはハーフガード&左のニーシールドという十八番の形を取ってその侵攻を許さない。ハモスの左腕にアームドラッグを仕掛けたリオンは、さらに下からの腕ひしぎ腕固めに。一瞬左腕を伸ばされかけたハモスだが、素早く反応して防御した。

その後もハモスは重心を低くしてパスを狙うが、リオンは左のニーシールド&フレームで防ぐ。逆に隙を見てリオンはレスリングアップを仕掛けるが、ハモスは素早く距離を取って防いだ。

残り4分少々のところで、リオンが潜っての仕掛けを狙うと、ハモスは前方に飛び込んでリオンの左足を取りにゆく。すかさず反応したリオンは逆にベリンボロからのバック狙いへ。が、ハモスはすぐに距離を取って立ち上がった。

ここでリオンも立ち上がり、試合はスタンドの攻防へ。リオンは二度ほどシュートインするが、反応の速いハモスに防がれると引き込み。

その後は、上から圧力をかけるハモス、それをニーシールドで防ぎながら煽るリオンによるどちらも譲らない攻防が続いた。

残り1分半、立ち上がったリオンはまたしてもシュートイン。ハモスは両脇を指してそれを振りほどくが、ここでリオンは間髪入れずもう一度ダブルレッグへ。これが深く入り、見事にテイクダウンに成功した。

この試合はじめて下になったハモスは、オープンガードから潜りを仕掛け、すぐにリオンの右腕をたぐってのアームドラッグへ。これでリオンを前のめりに崩したハモスは、リオンの足を抱えて前転を余儀なくさせて上に。あっという間に上を取り返してみせたのだった。

残り30秒、またしてもニーシールドから内回りに入ったリオンに対し、勝負をかけたハモスは瞬時に倒れ込みながらの左足に膝十字狙い。が、素早く足を畳んで対応したリオンは、そこに乗じてバックポジションを奪取。そのままリオンはあっという間に右腕をハモスの顎の下に食い込ませて締め上げ、なんと残り1秒でタップを奪ってみせたのだった。

常に自分から仕掛けて試合を作り、鉄壁のニーシールドで世界的競合ハモスの攻撃を遮断したリオン、最後は圧巻の極めを見せつけての見事な勝利──その腰にベルトが巻かれた。

対するハモスも、リオンの様々な仕掛けを遮断した反応速度の速さはさすが。そして最後にリスクを背負って勝負を仕掛けた姿は、プロとして称賛に値する。

それにしても、19年のADCC世界大会77キロ級で名を挙げたリオンが、15年の同階級決勝で見事な飛び十字を極めて優勝したハモスに完勝(奇しくも、両者の対戦相手はルーカス・レプリだった)。時代が確実に動いていることを実感させられる試合となった。

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