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【WJJC2022】柔術の神の子ミカ・ガルバォンと神童タイ・ルオトロ、New Wave Jiu-Jitsuがムンジに挑む

【写真】夢のティーン対決が実現するか。そんなに甘いモノではないのか──見所だらけのライト級だ(C)FLOGRAPPLING & ONE

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われる、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text by Isamu Horiuchi

プレビュー第3回は、タイ・ルオトロ、ミカ・ガルバォンという柔術グラップリング界の二大ニュースターのエントリーにより最注目区となったライト級の見どころを紹介したい。


昨年はヘナート・カヌートとマテウス・ガブリエルのチェックマット勢によるクローズアウトとなったこの階級。今年はカヌートの姿がないものの、2019年のフェザー級世界王者でもあるガブリエルは出場する。

下からは長い足を活かした切れ味抜群のベリンボロを駆使し、上を取れば卓越したバランスから強力なパスガードを繰り出すガブリエルは、まぎれもなく優勝候補本命の1人だろう。

このガブリエルと並ぶ優勝候補と言えるのが、AOJのジョナタ・アウヴェスだ。

(C)FLOGRAPPLING

4月のパン大会では準決勝までは全試合短時間で一本勝ちし、決勝でもライバルのアンディ・ムラサキ相手に上下どちらからも試合を支配して、付け入る隙を与えずに完勝。

頭一つ抜けた強さを見せつけている。が、ガブリエルとは昨年のEUG1トーナメントの初戦で戦い、ベリンボロでポイントを奪われて惜敗している。師匠メンデス兄弟の必殺技でもあるこの技の対策を、アウヴェスが今回いかにアップデートして再戦に臨むのか。

ベリンボロと言えば、今回はオーストラリア出身のリーヴァイ・ジョーンズレアリーと、ノルウェーのエスペン・マティエセンという2人の名高いベリンボロ使いもエントリーしている。両者ともにメダル獲得の可能性を十分に持った強豪だ。

しかし、今回は上記の選手たちを超える注目を集める若手が2人エントリーを果たしている。1人は、先日のONE CHAMPIONSHIPにてゲイリー・トノンとグラップリング戦を行い、僅か97秒にてダースチョークで圧勝したタイ・ルオトロだ。

双子の弟ケイドと共にティーンの頃から脚光を浴びてきたタイは、2019年のADCC世界大会に若干16歳で出場。無尽蔵のスタミナをもって動き続け、ブルーノ・フラザトとパブロ・マントバーニという同門の大先輩2人を連破してベスト4に進出し、世界にその名を轟かせた。

その後もタイはケイドとともにノーギシーンを中心に大活躍し、昨年のWNOチャンピオンシップでも優勝。現在19歳にして既に今年のADCC世界大会の優勝候補本命とまで言われている。

ONEグラップリング以前に、今年の1月にはリーヴァイ・ジョーンズレアリーをヒザ十字で下しミドル級に続きウェルター級でWNOのベルトを巻くなど──ノーギではすでに疑いなく世界最強クラスのタイだが、道着着用ルールでの試合も厭わない。

昨年末の世界大会では茶帯ライト級出場し、決勝で弟ケイドと真っ向勝負。やや押され気味だったものの終盤にダースからバックに回り、後ろ三角から腕十字に移行という見事な流れで一本勝ちを収めて優勝を果たした。数日後、両者は師匠のアンドレ・ガルバォンから黒帯を授与された。

ノンストップ攻撃と圧倒的な極めでグラップリング界を席巻する19歳が、道着着用の大舞台でどのような戦いを見せるのか。今回はまさに世界が注目する黒帯デビュー戦だ。

タイが一回戦を突破すると、アウヴェスとの対決が実現する。スタンドでもグラウンドでも動き続けるタイを、タイトな柔術を身上とするアウヴェスが道着を用いていかに封じ込めるのか。低重心で抜群の安定感を持つアウヴェスに上になられた時、タイはどのように抵抗して活路を見出すのか、興味は尽きない。

そして今回タイに劣らず、むしろそれ以上に大きな期待を集めている初出場選手が、さらに年下の18歳「ミカ」ことミカエル・ガルバォンだ。幼少時よりルタ・リーブリとブラジリアン柔術の両方を修め、突出した反応速度を用いたカウンター、一瞬の閃きと極めの強さをもってノーギ&道着着用の両ジャンルにて見る者を魅了する「柔術の神の子」だが、その才能の凄まじさがより如実に発揮されるのは道着着用ルールの方だ。

昨年のEUG第2回大会のトーナメントに茶帯ながら参戦したミカは、準決勝で現在世界最強のミドル級柔術家であるタイナン・ダウプラと対戦。驚異的な反応と体捌きでダウプラの強力なオープンガードを封じ込め、終盤は一瞬で形に入った三角絞めを極めかけて判定勝ち。決勝ではダウプラの兄貴分アウヴェスの執念の膠着戦法の前に惜敗したものの、世界を驚嘆させる黒帯デビューを果たした。

黒帯昇格後に出場したアブダビ・ワールドプロ大会では、ブラジル予選& 本戦の6試合中5試合で一本勝ちして圧倒的に優勝。前述のマティエセンとジョーンズレアリーの2人も極めている。

さらなる驚きは、今年4月末のBJJ Stars08大会のトーナメント。1回戦で世界5階級制覇のレアンドロ・ロとのドリームマッチに挑んだミカは、クローズドガードからの攻撃でロのトップゲームを封じ込めて完勝してみせた。

さらに決勝ではミディアムヘビー級の世界王者ルーカス・バルボーザと対戦。スタンド戦で互角以上に渡り合って疲弊させると、終盤にテイクダウンからあっという間にバックに回ってボーアンドアローチョーク一閃。2階級上の怪物世界王者からも一本勝ちを収め、一夜にして柔術界の二大レジェンドを連破するという大仕事をやってのけたのだった。

その後、5月に入っても8日(日・同)にサンパウロで開かれた最も歴史と伝統があるといっても過言でないブラジレイロでも黒帯ミドル級で1回戦こそ対戦相手が失格だったが、その後の3試合では絞め、横三角、腕十字と一本勝ちを収め頂点に立っている。

今回、アウヴェスやタイとは逆のブロックに位置しているミカ。順当に勝ち上がれば準々決勝で前回優勝のガブリエルとの大一番が実現する可能性が高い。トップからもボトムからも無類の切れ味を持つ両者だが、攻撃の仕掛けが鋭いガブリエルに対して、ミカは切り返しの鋭さを誇る。両者の特性が噛み合えば想像を超えるような名勝負となる可能性もあるだろう。

アウヴェス対タイ、そしてガブリエル対ミカ。仮に両強豪を打ち破り、ファイナルでタイ✖ミカのNEW WAVE Jiu Jitsuの一戦が実現することになれば、昨年9月のWNOミドル級王座決定トーナメント戦以来の顔合わせとなり、その時はタイが辛勝しえいる。

誰が勝ち上がっても、さらに興味深い対決に続くこのライト級こそ、今年の世界大会で最も熱い期待を集める場であることは間違いない。

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BJJ STARS08 MMA MMAPLANET o   タイナン・ダウプラ タイ・ルオトロ マウリシオ・オリヴェイラ ルーカス・バルボーザ レオナルド・ララ

【BJJ STARS08】怪物覚醒バルボーザから一本勝ち。ミカ・ガルバォン、柔術の神の子から柔術の神へ

【写真】9分間の神経戦から、一気の一本勝ち。柔術を見ても楽しめる層の心は既にダウプラ✖ミカに(C)BJJ STARS

4月30日(土・現地時間)、ブラジルのサンパウロにて豪華プロ柔術&グラップリングイベントのBJJ STARS 8が行われた。その目玉である道着着用ルールのミドル級GP。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第2回は、準決勝2試合とファン垂涎の一騎討ちが実現した決勝戦の模様をお伝えしたい。


<ミドル級GP準決勝/7分1R>
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
Def.1分30秒 by 変形腕ひしぎ十字固め
レオナルド・ララ(ブラジル)

試合開始早々、ララがジャンピングガードへ。バルボーザはそこに側転パスを合わせるが、ララはガードを閉じることに成功した。が、すぐに立ち上がったバルボーザはララのガードをこじ開けると再び右に側転。さらにララの左足を押さえつけながら左に回り、低く体重をかけて足を抜き、あっという間にパスを決めて見せたのだった。

さらにバルボーザは、1回戦のヒメネス戦と同様すぐに相手のニアサイドの腕を抱えて腕十字へ。うつ伏せで逃れようとしたララだが、バルボーザがその左腕をアメリカーナの方向に捻り上げると、たまらずタップ、わずか1分半の出来事だった。

勝利が決まった瞬間、バルボーザは立ち上がって上半身をはだけさせて咆哮。一回戦に続きリスクを厭わず攻め続け、今度は圧巻のパス&秒殺フィニッシュを決めてみせた。恐るべきサブミッションマシーンに進化したこの怪物に勝てる者など果たして同階級に存在するのだろうか、と思わせるほどの強さをもって決勝進出を決めた。

<ミドル級GP準決勝/7分1R>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def. 負傷棄権
マウリシオ・オリヴェイラ(ブラジル)

昨年のBJJ BETのノーギトーナメントの再戦。この時はガルバォンの引き込みの際にテイクダウン・ポイントを与えられたマウリシオ・オリヴェイラが、その後ガルバォンの攻撃を凌ぎ切って殊勲の勝利を収めている。ちなみにガルバォンが昨年の黒帯取得以来敗れたのは、このオリヴェイラ戦とWNOチャンピオンシップの決勝のタイ・ルオトロ戦のみ。他はギ、ノーギ合わせて30戦ほど戦い、その大半で一本勝ちを挙げているのだから、前回のオリヴェイラの勝利は──微妙な裁定を見方に付けたものだったとは言え──値千金だったと言える。

前に出るガルバォンに対し、オリヴェイラは引き込むと右足にデラヒーバガードで絡む。重心を落とすガルバォンだが、オリヴェイラはその左腕にスパイダー。そのままガルバォンを横に崩しにかかるが、ガルバォンも体勢を立て直す。

ならばとオリヴェイラは引き出したガルバォンの右足を抱えると、両足でガルバォンの体を浮かせながら後転。安定感抜群の重心を持つ神の子を見事に舞わせて上を奪取し、2点を先制してみせた。

下になったガルバォンがクローズドガードを取ると、腰を引いて距離を作るオリヴェイラ。ガルバォンはオリヴェイラのラペルを引き出し、それを首の後ろに回して掴んでハイガードを作る。

オリヴェイラが姿勢を正して立ち上がると、ガルバォンは右足にデラヒーバを作る。と、ここでオリヴェイラが左脚に異常を訴えて試合が中断、ドクターの診察を受けることになった。特にガルバォンが何かを仕掛けたわけでもなく、動きの中で起きたアクシデントのようだったが、オリヴェイラは立ち上がるのも困難な様子で、結局負傷棄権を余儀なくされることとなった。

とまれ、一度ノーギでガルバォンから勝利を挙げているオリヴェイラが、道着着用の今回も見事なスイープを決めて優勢に試合を進めていたことは特筆に値する。負傷が癒え次第、両者の3度目の戦いをぜひ見てみたい。

このようにすっきりしたリベンジこそ果たせなかったものの、ガルバォンの決勝進出が決定。一回戦のロ戦に続き、現在世界最強の柔術家の一人であるルーカス・バルボーザとのドリームマッチが実現することとなった。

<ミドル級GP決勝/10分1R>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def.9分37秒 by ボーアンドアローチョーク
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)

ここまで、「怪物覚醒」とでも言いたくなるようなアグレッシブな戦いで強さを見せつけているバルボーザは、決勝も気合い十分。対するガルバォンは、こちらも前2戦同様にリラックスして微笑んでいる。難攻不落の怪物を前にしても、神の子はまったく気負っていない様子だ。

近づいて襟を掴み合う両者。バルボーザがタックルを仕掛けるが、腰を引いて防ぐガルバォン。さらにバルボーザは一回戦で猛威を振るった膝を付いての背負いに入るが、腰の重いガルバォンは崩れない。さらにバルボーザは2度、3度と背負いを狙うが、ガルバォンのバランスは崩れず。

このバルボーザの仕掛けに対し、ガルバォンの方も受けに回ることなく煽り返しては、逆に足を取ってのテイクダウンや、背負いを狙ってゆく。バルボーザもそのたびにしっかりとディフェンスしてみせる。

その後もスタンドでの攻防を続ける両者。お互い道着を掴んで煽り合っては、飛び込んでの背負いやタックルを狙う。ガルバォンの背負いの前に一瞬バランスを崩すバルボーザだが、すぐに戻る。ここまで下になることを厭わずに勝ち上がった両者だが、この決勝戦ではお互いトップゲームを警戒し合い、譲るつもりはないようだ。

一つのミスが命取りになるような立ちでの神経戦が延々と続き、7分が経過。ここでレフェリーが両者にペナルティを宣告し、両者は一旦離れてから再開となった。

ここでガルバォンは素早くタックルで飛び込む素振りを見せては退く。腰を引くバルボーザだが反応が遅れ、体勢を立て直した時にはガルバォンがすでに距離を取った後。疲労が目立つバルボーザと、まったく動きの落ちないガルバォン。ここにきてスピードの差が見え始めてきた。

さらにガルバォンは素早くレベルチェンジしてアンクルピックを仕掛ける。一瞬体勢を崩されたものの、すぐに戻るバルボーザ。主審はここでガルバォンにアドバンテージを宣告したが、副審によって取り消された。これは妥当な裁定だろう。

その後も両者譲らずスタンドの攻防が続く。バルボーザが膝を付いての投げを仕掛けると、すかさずがぶりにかかるガルバォン。バルボーザはなんとか体勢を立て直したが、がぶりを仕掛けさせすらしなかった序盤と比べ、動きは鈍っているようだ。

さらに両者にペナルティが追加され、とうとう試合は残り1分に。先にポイントを取った方が勝利濃厚という展開だ。スタミナ十分のガルバォンがバルボーザの襟を煽り、さらに前に出たところで、膝を付いて飛び込むバルボーザ。残り48秒で勝負を仕掛けた。

反応の速いガルバォンは、再びがぶりを試みる。体勢を戻そうとするバルボーザだが、ガルバォンはそれを上回る速さでバルボーザの斜め後ろに着くと、そのまま一気にドライブ。右手でバルボーザの襟を取り、左手で右足を抱えて怪物を豪快になぎ倒し、テイクダウンに成功した。なんとかスクランブルを試みるバルボーザだが、ガルバォンはあっという間にそのバックへ。

右手の襟のグリップを持ち続けているガルバォンは、さらにバルボーザの左膝のパンツを掴んで弓矢締めの体勢に。そのまま締め上げると、残り23秒のところでバルボーザがタップした。

9分12秒にわたる立ち技の神経戦で怪物バルボーザを疲弊させ、その後の25秒で一気に畳みかけて圧巻のフィニッシュ。昨年のEUG大会のタイナン・ダウプラ戦ではトップからの無類のプレッシャーの強さを発揮したガルバォンは、今大会の1回戦ではロ相手にガードからの突出した攻撃力と盤石の防御力を、決勝ではバルボーザ相手に立ち技の安定感と持久戦の強さ、そして圧倒的な極め力を見せつけた。

全局面において見る者を驚嘆させる柔術の神の子ミカ・ガルバォン。バルボーザの怪物性が覚醒したのであれば、ミカは柔術の神の子から、柔術の神へと道を歩み始めた──。

6月のムンジアルでは一体どのような戦いを見せてくれるのか。昨年のミドル級王者のタイナン・ダウプラとの再戦や、今回欠場した元王者イザッキ・バイエンスとの初対決等、興味は尽きない。

【ミドル級GPリザルト】
優勝 ミカ・ガルバォン(ブラジル)
準優勝 ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
3位 マウリシオ・オリヴェイラ(ブラジル)、レオナルド・ララ(ブラジル)

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【BJJ STARS08】ミドル級GP1回戦、ハルクがヒメネスを──柔術の神の子は現役レジェンド越え達成

【写真】疲労困憊のロと、笑顔のミカ。世界のトップにあるレジェンド越えを果たした(C)BJJ STARS

先月30日(土・現地時間)、ブラジルのサンパウロにて豪華プロ柔術&グラップリングイベントのBJJ STARS 8が行われた。
Text by Isamu Horiuchi

目玉は世界4階級制覇のレジェンドであるレアンドロ・ロ、そのロの天敵であるミディアムヘビー級世界王者ルーカス・バルボーザ、そして柔術の神の子ミカ・ガルバォンら、8人のトップ黒帯選手が参加した道着着用ルールのミドル級GP。

レビュー第1回は、主催者の粋な計らいによって大注目の新旧対決が実現した1回戦の模様をお伝えしたい。


<ミドル級GP1回戦/7分1R>
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
Def. 2-0
ロベルト・ヒメネス(米国)

世界王者バルボーザに、新世代の旗手の一人ヒメネスが挑む注目の一戦が1回戦で実現。開始早々両者が腰を引いた構えで襟を掴み合うなか、バルボーザが低く飛び込んで飛行機投げ一閃。見事にヒメネスを舞わせたバルボーザは、次の瞬間にヒメネスの右腕を掬って腕十字へ。うつ伏せの状態で強烈に極めにゆく。

が、ヒメネスは回転してバルボーザの体をまたぎ、腕を抜いて肘のポイントをずらすことに成功。さらにバルボーザの背中とマットの間に飛び込んでのバック取りで逆襲に転じるヒメネス。が、バルボーザが腕を伸ばして距離を作ると、ヒメネスは上のポジションを選択した。

この一連の攻防で、バルボーザの方にアドバンテージが2つ与えられた。見事な飛行機投げがテイクダウンポイントを認められなかったのは、投げたバルボーザがポジションが固定される前に腕十字を仕掛け、結果として下になったからなのだろう。それにしても慎重な戦いを貫くイメージの強いバルボーザが、電光石火の投げを決めるや否や、ポイントの確保もままならぬままリスクを犯して極めを狙いにいった姿は印象的だった。

下になったバルボーザは、ヒメネスの右にデラヒーバで絡む。バルボーザの両足を正面から飛び越えようとするヒメネスに対し、バルボーザはヒメネスの両足首を持つと、後ろに倒して尻餅を作らせ、さらにそのグリップをキープしたままシットアップし、さらに立ち上がってみせた。こうして下になっても上を取り返せる自信があるからこそ、思い切った極めを狙って行けるのだろう。

試合がスタンドに戻ると、両者は再び頭を付け合っての攻防に。重心の低いバルボーザをテイクダウンするのは難しいと見たか、ヒメネスが引き込み。クローズドガードを作るが、天下一品のベースを誇るバルボーザのバランスは崩せず。残り2分のところでヒメネスは距離を取って立ち上がった。

スタンドの攻防に戻ると、バルボーザは再び両膝を付きながら飛び込み、今度は背負い投げに。またしても見事にヒメネスの体を一回転させて上を取ったバルボーザは、オーバーアンダーでかみつく。今回は2点を確保したバルボーザは、ヒメネスが動こうとするところで、すかさずバックに付いてシングルフックを入れてみせた。

両足フックは許さず、下から体をずらし続けるヒメネス。残り40秒のところで正体して上になることに成功した。が、ここでもバルボーザは、下からヒメネスの両足のパンツをしっかり掴んでパスを許さず、時間切れ。点数こそ2-0だったものの、2度にわたって豪快なテイクダウンを決め、さらに腕十字やニアバックで攻め込んだバルボーザの完勝だった。

これまで上になったら漬物石の如く動かない戦いが目立ったバルボーザが、ダイナミックに極めを狙う姿勢を見せての圧巻の勝利。結果として2度に渡って下になったが、ここでも強烈なパンツグリップを用いたオープンガードを駆使し、ヒメネスに付け入る隙を許さず。難攻不落のトップゲームを持つ怪物は、ここにきてさらに恐るべき進化を遂げている。

<ミドル級GP1回戦/7分1R>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def. 0-0 アドバンテージ1-0
レアンドロ・ロ(ブラジル)

いきなり実現したGP最大のドリームカード。駆け足で入場してきたロは、舞台に上がると気合十分のジャンプ。なんとも凄まじい跳躍力だ。それに挑む神の子ガルバォンの方は、リラックスした表情でマットをジョギング。対照的な両者だ。

場内の盛り上がりが最高潮に達する中、両者がハグして試合開始。体格でやや劣るガルバォンだが、積極的に前に出てロの襟を掴んでは足を飛ばしてゆく。やがてガルバォンから飛びついてクローズドガードに入った。

すかさず腰を上げ、膝を入れてガードを割りにかかるロ 。しかしガルバォンはロの右腕を抱えると、ガードを閉じたままブリッジをするようにロの右腕側にスイープ。完全に体勢を崩されたロだが、すぐに体勢を立て直して再びインサイドガードに入った。

次にガルバォンはロの右腕をクロスで引き寄せる。ロが抵抗すると、ガルバォンは今度は左手を狙いに。ロがこれも防ぐとガルバォンは再びロの右腕を取って脇に抱える。世界最高峰のトップゲームを誇るロが、ガルバォンが下から仕掛けるグリップバトルで完全に後手に回らされている。

ハイガードを取ったガルバォンは、次の瞬間左足をロの顔の前にこじ入れてオモプラッタへ。ロもすばやく反応し背筋を伸ばし、立ち上がりながら腕を抜く。それにしても、トップにいるロを防戦一方に追い込むガルバォンの攻撃力は凄まじい。

再び座ったロは、腰を引いて距離を作ってから右膝を入れてガードを開きにかかるが、またしてもガルバォンはその右腕を取ると、両腕で抱えて伸ばしにかかる。ロは再び座ることを余儀なくされた。

ロは再び腰を引いてから右膝を入れる。が、ガルバォンはここもブリッジをしながらのスイープへ。体勢を崩された後に持ち直すロ。ここまで4分。手足が長いというよりがっしりした体格のガルバォンだが、ロにパスガードの体勢を作ることすら許さない、恐るべき懐の深さのクローズドガードだ。

再びロが腰を引いて距離を作ると、ガルバォンはハイガードへ。ロがそれでも右膝を入れにかかると、ガルバォンはロの右腕を脇で抱えつつ、再び左足をロの顔の前にこじ入れながら伸ばしにかかる。右腕が逆方向に曲がるほどの強烈な極めだったが、ロは耐えて腕を引き抜いてみせた。

この攻撃で、残り2分20秒のところでついにガルバォンがアドバンテージを獲得。が、この先制点と腕を極められかけた代償として、ロはようやくガルバォンのガードを開かせたまま右足を入れる状態を作ったのだった。侵攻を狙うロは、一気に重心を前にかけると、ガルバォンの頭を抱えて胸を合わせにかかる。が、ガルバォンは両足でロの下半身を浮かせつつ、両腕のフレームを効かせて距離を作る。さらに回転してインヴァーテッドを駆使したガルバォンは、アドバンテージを許すことなく正対することに成功した。

残り2分。ガルバォンはロの右足にデラヒーバで絡む。ロは再び前に重心をかけてガルバォンの上半身を殺しにかかるが、ここもガルバォンは足を効かせて隙間をキープし、ガードを閉じることに成功。残り1分半。侵攻を試み続けるロはまたしても腰を引いて距離を作り、右膝を入れた。

するとガルバォンはガードを開くと、ロの右腕にラッソーで絡み、左腕にはスパイダーを作る。そこからロを左腕側に崩すガルバォンだが、ロもバランスを保つ。防がれても猛攻を試み続けるロと、守り一辺倒に入ることなく反撃を試みるガルバォン。事前の期待を裏切らない凄まじい攻防だ。

残り1分。ロが立ち上がると、ガルバォンは右足にデラヒーバで絡む。ロは前のめりに両手をマットに付け、側転するような形でガルバォンの足を越えにかかる。が、この動きでできたスペースができた瞬間を逃さずに、下から動いてロの右足を掴みにゆくガルバォン。さらに足を使って崩しにかかるが、ロはバランスを保った。

残り30秒。時間のないロは立ち上がると、またしても大きく前方に飛びこんでガルバォンの上半身を力技で制しにゆく。が、ここでもガルバォンは下から入れた右膝を利かせ続け、さらに左手ではロのパンツを掴んでコントロールを許さない。やがて残り時間が数秒になると、もはや逆転は不可能と悟ったロは体の力を抜いてマットに崩れ落ちる。ガルバォンがそのまま上になったところで極上の7分間が終了した。

もはや精魂尽き果て、マットに大の字になるロ。やがて立ち上がった後も全身で悔しさと落胆を表現しており、年下相手に全力で挑んで負けたという事実を隠そうともしない、ある意味きわめて潔い敗者ぶりだ。そんなロに対して、勝者ガルバォンはなんとも爽やかな笑顔で握手を求めたのだった。熱すぎるヴェテランと、リラックスした若者。試合開始前同様に対照的な両者だった。

それにしても恐るべしはガルバォンの技術の高さだ。試合の前半から中盤にかけてはガードから厳しい一方的に攻撃を繰り出し続けてロに反撃の緒を与えず、後半はロが全力を振り絞って仕掛けるパスを全て危なげなく防ぎ切る。攻守共に凄まじい力を見せつけた。

「柔術の神の子」の渾名に相応しい驚愕のパフォーマンスをまたしても見せてくれたガルバォンと、なりふり構わず力の全てを出し尽くし、堂々と散ったレジェンド・ロ。両者ポイントもなく派手な動きが続出したわけでもないが、二人の世界最高峰の柔術家が、誰も及ばぬ至高の技術を正面からぶつけ合った珠玉の名勝負だった。

残りの1回戦の試合では、まずは18年茶帯ミドル級世界王者のレオナルド・ララがイザッキ・バイエンセのイザッキ・バイエンスの代打として登場したウィルソン・オリヴェイラと対戦。テイクダウンを受けた際に膝を負傷するアクシデントに見舞われたにもかかわらず、治療を経て復活し──相手の合法的な攻撃を受けて一度試合続行不可能になった時点で、なぜ試合終了とならなかったのかは謎だ──終盤に逆転のパスガードを決めて5-2で勝利した。

もう一つの準決勝では、18年の茶帯ミディアムヘビー級世界王者にして、昨年のBJJ Bet大会におけるノーギトーナメントにてミカ・ガルバォンの極めを凌いで勝利したマウリシオ・オリヴェイラが、ペドロ・マチャドと対戦。引き込んだマチャドのラッソーガードに対してバランスを保ち、ニースライスで攻め込む等の見せ場を作ったことが評価されて、ポイントもアドバンテージも0-0ながらレフェリー判定勝ちを収めた。

かくして準決勝は本命バルボーザ対ララ、もう一試合は神の子ガルバォンとオリヴェイラによる注目の再戦が実現することとなった。

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BJJ STARS08 MMA MMAPLANET o UFC アレックス・オリヴェイラ デミアン・マイア ペドロ・マチャド マウリシオ・オリヴェイラ ルーカス・バルボーザ レアンドロ・ロ レオナルド・ララ ロベルト・ヒメネス

【BJJ STARS08】14年に及ぶUFCでの活動を終え、デミアン・マニアが15年ぶりのグラップリングマッチ出場

【写真】こういうとアレだが、実戦でマイアを見られるのはグラップリングでも限られた機会になってくる。超貴重なファイトだ(C)MMAPLANET

30日(土・現地時間)、ブラジルのサンパウロで開催されるプロ柔術& グラップリングイベントのBJJ STARS 08。

レアンドロ・ロ、ルーカス・バルボーザ、イザッキ・バイエンセ、ミカ・ガルバォン、ロベルト・ヒメネス、マウリシオ・オリヴェイラ、レオナルド・ララ、ペドロ・マチャドが出場する道着着用ルールのミドル級GPが行われる同大会で、デミアン・マイアがノーギのスーパーファイトに出場する。


昨年6月に14年に渡るUFCでの活動を終え、グラップリングシーンに戻ったマイア。44歳にして、2007年のADCC世界大会88キロ級を制して以来のグラップリングマッチだ。

MMAが異種格闘技でなく、5分×3Rもしくは5分×5Rのスポーツになって以来、グレイシーではなくホナウド・ジャカレと共に世界の最高峰で最も柔術を駆使してMMAで戦ったきたのが、マイアであることに誰も異論はないだろう。

またMMAファイターとしての良し悪しは別にして、ジャカレは打撃を消化していたが、マイアはほぼ組んでからMMAを戦ってきた。そういう部分でも、マイアは稀有な存在であり続けた。グラウンドでの打撃のあるなかでのグラップリングと純粋グラップリングは違う。やはりMMAでのグラップリングは、動きに制限が生じる。そのMMAグラップリングで世界最強だったマイアが、顔面パンチがない試合ではどのようなグラップリングを披露するか。

対戦相手もこの4月にUFCからフリーとなった同胞アレックス・オリヴェイラだ。とはいえムエタイ・ベースのガウショとマイアでは勝負の行方は明らかという見方も成り立つ。年齢的なことも加味し、マイアが今後はどのようにグラップリングと関わっていくのか。いずれにせよ、コンペティションで見られるマイアを堪能したい。

■視聴方法(予定)
5月1日(日・日本時間)
午前7時00分~FLOGRAPPLING

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BJJ STARS08 MMA MMAPLANET o ONE ガブリエル・アウジェス ジョナタ・アウヴェス タイナン・ダウプラ ブラジリアン柔術 ペドロ・マチャド マウリシオ・オリヴェイラ ルーカス・バルボーザ レアンドロ・ロ レオナルド・ララ ロベルト・ヒメネス

【BJJ STARS08】膠着禁止のミドル級GP。柔術の神の子=ミカ・ガルバォンがロを始め3人の世界王者に挑む

【写真】とんでもないGPトーナメント。タイナン・ダウプラが出ていないところがよりそそられる(C)CLAYTON JONE/FLOGRAPPLING

30日(土・現地時間)、ブラジルのサンパウロにてプロ柔術& グラップリングイベントのBJJ STARS 08 が行われる。
Text by Isamu Horiuchi

道着着用とノーギグラップリングの両方のルールにおける世界のトップアスリートたちを集めて開催されるこの豪華大会。今回の目玉は8人の黒帯選手が参加する道着着用ルールのミドル級GPだ。


この大会で特筆すべきは、道着着用の試合において膠着禁止目的の特別ルールが2つ採用されていることだ。一つ目は相手のラペルを相手や自分の手足に絡めて掴む技術に関するもの。攻撃姿勢を持って行われているとみなされれば許されるものの、膠着目的と判断された場合には掴んでいた側にペナルティが与えられ、強制的にグリップを解除した状態で試合が再開される。

もう一つは50/50ポジションについて。こちらは20秒間経過した時点で解けなければブレイクされ、両者にペナルティが与えられた上でスタンドから再開となる。

そんなルールが採用された8人制ワンデートーナメントの出場選手は以下の通りだ。

レアンドロ・ロ(ブラジル)
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
イザッキ・バイエンス(ブラジル)
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
ロベルト・ヒメネス(米国)
マウリシオ・オリヴェイラ(ブラジル)
レオナルド・ララ(米国)
ペドロ・マチャド(ブラジル)

この8人の中で、IBJJF世界王者の肩書を持つのはロ、バルボーザ、バイエンセの3人。特に実績・知名度共に群を抜いているのは、言わずと知れた4階級世界王者のレアンドロ・ロだ。

12年にライト級世界王座に就いて以来、ミドル、ミディアムヘビーと制し、2019年にはついに(友人のブシェシャことマーカス・アウメイダに決勝戦を譲られる形ではあったものの)無差別級世界一の座に輝いた。

もうすぐ33歳となるレジェンドはここ数年試合数を絞っているものの、その強さは衰えを知らない。今年のパン大会のミディアムヘビー級においても2試合を勝利し、準決勝でチームメイトに勝利を譲っている。

重い階級での戦いにおいては、一瞬の爆発的なムーブで優位なポジションを取っては動きを止めるような試合運びが目立つロだが、今回は久々のミドル級。この体重ならば、強力なガードから様々なスイープを自在に使いこなし、上からは機動力を生かして鋭いニースライスやトレアナ・パスで攻め立てる本来の動きが期待できそうだ。

(C)CLAYTON JONE/FLOGRAPPLING

このロにとって天敵ともいえる存在が、2018年のミディアムヘビー級世界王者&2021年は同門とシェアで準優勝のハルクことルーカス・バルボーザだ。

ロとは道着着用では2019年のパン大会、2020年のBJJ Starsにて対戦。ロのオープンガードからの攻撃をトップから封じ込めて勝利している。

特に2年前の試合はテイクダウンでポイントを先行し、終盤はバックに付きかけての完勝だった。さらに2021年のBJJ BetのノーギGPの決勝でもロと対決。この時に至ってはテイクダウンからバックを奪ってチョークで一本勝ちを収めている。ロのガードの攻略法を完全に会得している世界でも数少ない選手の一人が、バルボーザなのだ。

低く重く相手を抑え込み、無駄な動きはせず上を決して譲らない重厚なバルボーザの戦い方は、ロだけでなく誰にとっても難攻不落と言えるだろう。普段より軽いミドル級の戦いとなるこの大会、減量の影響がないならばバルボーザこそ本命と言えるかもしれない。

もう一人の世界王者が、イザッキ・バイエンスだ。

高い身体能力を活かした抜群のスクランブル力とトップキープ力を誇る。このGPと同じミドル級を主戦場としていて、2018年に世界王座に就いた。2019年と2021年の世界大会決勝では、それぞれガブリエル・アウジェスとタイナン・ダウプラに惜敗したものの、どちらも正面衝突を避けた相手に50/50を作られて終盤まで延々と膠着された挙句、終了直前に微妙なポイントを稼がれての敗戦だった。バイエンスの実力が現在も世界最高峰にあることを疑う者はいまい。

2019年と2021年の世界大会決勝の展開からいえることは、今回の大会特有の膠着禁止ルールによってもっとも恩恵を受けるのがこのバイエンスということだ。これまでロとは数回対戦し、いずれもそのオープンガードを超えられずに敗戦を喫しているが、27歳と脂の乗り切った現在のバイエンスが、今回とうとうレジェンド超えを果たす可能性は決して少なくないだろう。

GPをさらに興味深くしているのは、上記3人の世界王者に対し、年齢下の若手黒帯5人が挑む構図となっていることだ。

一番の注目は最年少19歳、柔術の神の子ことミカ・ガルバォンであることに異論はないだろう。ルタ・リーブリとブラジリアン柔術の両方で黒帯を巻き、北米では主にノーギシーンにおいて、突出した反応速度を利した一瞬の切り返しや驚くべき極めの強さをもって見る者を魅了している。そしてその驚異のパフォーマンスは、道着着用ルールにおいてさらなる輝きを放つ可能性が高い。

茶帯として参戦した昨年のEUG大会の道着着用トーナメント準決勝では、年末に世界王者となるタイナン・ダウプラと歴史に残るような大激闘を展開。ダウプラの強力無比なオープンガードを盤石の重心とボディバランスで封じ込めた上で、絶妙の体捌きと反射を利したパス攻撃で追い詰め、一瞬で三角絞めの体勢を作ってみせて判定勝ちを収めてみせた。

続く決勝では、弟弟子の雪辱に燃えるジョナタ・アウヴェスの執念の防御&膠着戦法を攻略できずに惜敗したものの、試合全般においてほぼ一方的に攻撃を続ける圧巻の内容だった。今年3月のパン大会において、ダウプラとアウヴェスのAOJ勢が頭二つ抜けた強さを見せつけたことを考えても、当時茶帯だった──柔術の神の子の凄まじさが分かろうというものだ。

昨年はさらにその後、アブダビ・ワールドプロ大会にエントリー。ブラジル予選と世界大会の両方の6試合のうちの5試合で一本勝ちを収めて圧巻の優勝を遂げている。

オープンガードを駆使する相手にギを掴まれても一切動じない盤石のベース&ボディバランス、強烈無比なプレッシャーといったファンダメンタルにおいても無類の強さを持つ神の子は、摩擦が多く極めの力がさらに増す道着着用ルールにおいてこそ最も輝くといえる。

今回、三人の世界王者とガルバォンの試合が実現すればどれもドリームカードだが、特に期待されるのはロとの一戦だろう。トップ、ボトムの双方から多彩かつダイナミックな攻撃を繰り出し、ファンを魅了する新旧レジェンドによる初対決は実現するか。

(C)CLAYTON JONE/FLOGRAPPLING

若手の中でもう一人注目選手を挙げるなら、やはりロベルト・ヒメネスか。

ダイナミックな極めと見事なバックグラブを中心にノーギシーンで活躍する21歳は、昨年2月のBJJ Starsにおいてバイエンセとノーギで対戦しており、ポイントで惜敗したもののバックを奪いかける等の大健闘をみせた。

そして先日のパン大会では久々に道着着用ルールに登場。初戦を突破した次戦で、色帯時代から因縁のある現世界王者タイナン・ダウプラと対戦。三角絞めに屈したものの、先制のテイクダウンを奪った上で見応え十分のスクランブル合戦を展開して力を示した。摩擦によってバックグラブの精度が上がる道着着用ルールにおいて、ヒメネスがレジェンド相手にアップセットを引き起こす可能性は間違いなくある。

残りの3人のブラジル人若手黒帯選手も、いずれも実績を持った存在だ。24歳のマウリシオ・オリヴェイラは、2018年の茶帯ミディアムヘビー級世界王者にして、昨年のBJJ Bet大会におけるノーギトーナメントにてガルバォンの極めを凌いて殊勲の星を挙げた選手だ。

25歳のレオナルド・ララは18年の茶帯ミドル級世界王者で、上述の昨年のワールドプロ大会において、ガルバォンに唯一極めさせなかった選手だ。23歳になったばかりのペドロ・マチャドは昨年末に黒帯を取得し、3月のパン大会のヘビー級で3位入賞を果たしている。

今も最高峰の実力を保持する世界王者3人と、その首を狙う新世代5人による要注目の戦いが幕を開ける。

■視聴方法(予定)
5月1日(日・日本時間)
午前7時00分~FLOGRAPPLING

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