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【Fight&Life & ADCC Asia & Oceania Trial】ADCC予選へ、森戸新士「家族や仲間の存在が自分の力に」

【写真】競技として柔術とグラップリングは別モノであると思いますが、グラップリングを修めようといういう姿勢は生き方として柔術家だと感じます(C)MMAPLANET

現在発売中のFight&Life#99で11月25日(土・現地時間)にシンガポールはジュロンイースト・スポーツセンターで開催されるADCCアジア&オセニア予選に出場する森戸新士のインタビューが掲載されている。

岩国と広島に柔術道場を持つ。経営&指導でありながら、毎月のように道着&ノーギ、プロ&アマ・トーナメントに数多く出場する森戸にとってADCC出場の意義と、柔術家として取り組みを尋ねた同インタビューを全文掲載したい。


──昨日の全日本柔術選手権、ライト級と無差別級で3位でした。

「階級別も無差別も初めて試合をした大浦マイケ選手、グラント・ボクダノフ選手に準決勝で負けてしまいました。マイケ選手は茶帯で勝ちまくっていた選手で、自分の形を創る前に崩されてしまいした。素直に完敗でしたので悔しくて、やり返したい気持ちでいっぱいです(苦笑)」

──無差別の準決勝はポイントを取り合って同点でレフェリー判定負けだったと。マイケ選手もグラント選手も年下です。国内において下の世代が上がってきたことに関しては、どのように捉えていますか。

「そういう年齢になってきたな、と(笑)。僕が黒帯になったのが2018年、あの時には『やっと黒帯の強い選手を倒しにいける』と思っていました。思ったことを実現してきて、今は茶帯から上がってきた強い選手を倒す立場になった。でも今回は倒されたから、やり返したいです」

──それにしても1週間前にグラジエイターで暫定王座決定戦を戦い、世羅智茂選手を破って王者になったばかりでした。ケージ・グラップリングと畳の道着、もう完全に別モノかと。強行スケジュールで、どちらに比重を置いていたのですか。

「今回はノーギの方でした。ただ普段からノーギの試合前でも道着の指導をしていますし。そのままスパーにも加わっているので、どちらも練習しています。ただフォーカスしていたのはノーギですね。道着の方は3、4回ほど練習しただけでした。なので全日本は出場するかどうか迷ったんですけど、これでは来年のムンジアルで勝てないと思い知らされたので、出て良かったです」

──たまたまグラップリングの試合が前だったから、比重を置いていたのでしょうか。

「今回はタイトル戦で、世羅さんにはノーギで1度負けているので。ちゃんと取り返しておきたいというのがありました」

──4-2でしっかりと確実に勝った。そういう印象の試合でした。

「ルール的に上の取り合いになると分かっていましたし、そのつもりで準備もしていました。しっかりと勝てたことは良かったです」

──それにしてもグラジエイター、FINISHというグラップリングのプロマッチ、プロ柔術でもKITとART。そして全日本やアジア、全日本ノーギともの凄い数の試合に出場していますね。

「基本的には月に1度は試合をしていると思います。でも僕は試合が終わると、もう過去のことになっちゃうんです(笑)。次のことしか考えないので」

──現役生活と指導者生活、これだけ試合に出ていてなお、バランスが取れているのですね。

「基本、オファーがあったら断らないようにしています。呼ばれているうちが華なので。大きな舞台で活躍したいですし、その過程でもあるので数もこなしていきたいです」

──そういうなかで旅費、出場費を払うトーナメントと足代が出てファイトマネーのあるプロの試合では、捉え方は違ってきますか。

「試合は始まれば同じなので、あまり違いとかは考えないです。エントリー費用で1万円払うのも経験値を積んで、実績を創るためです。それにトーナメントは試合数が多くて、その分練習で取り組んできたモノを試せて成長できます。勿論、ファイトマネーが少しでも多い方が良いですけどね(笑)。それにプロの試合は旅費の負担がないのも助かります。そこに呼んでもらえていることが、有難いです。そういう舞台で戦うと名前も売れますし、ジムの宣伝にもなるので。プロマッチは相手が強い人しかいないのも良い点です」

──森戸選手はいつ頃からグラップリングの試合に出て、ADCCを目指すようになったのですか。

「初めてグラップリングの試合に出たのは2019年のADCCアジア・オセニア予選でした。岩本健汰選手が66キロ級で代表になった時です。僕は77キロ級に出場し2回戦でラクラン・ジャイルスに内ヒールで負けました」

──ラクランはその年の世界大会では無差別級で3位になるなど、足関節で旋風を巻き起こしたグラップラーですし、初のグラップリングでは致し方ない結果かと。

「あの時は柔術の練習の時に道着の上だけ脱いで藤田(善弘。藤田柔術代表)先生とチョロッとやっただけで出ていました。で足関を創られて、逃げ方も分からず足首とヒザを少し鳴らされてタップしました」

──なぜ予選に出ようと?

「当時はまだ会社員で、仕事をしながらでも選手として活躍したいともがいていた時期で、大きな大会は全て出ようとしていました。それで、取りあえず出てみようと。振り返れば、まぁ……どうやって勝つつもりだったんだろうとは思います。同時にそれぐらいのマインドを持っていないと、ああいう舞台には出ていなかったでしょうし。僕は試合に出て、課題に直面して直していくようにしているので」

──柔術では禁止されている内ヒールで敗れて、これは別モノだから構わないという気持ちには?

「ならなかったです。あの後のラクランの活躍も見て、自分もグラップリングを頑張ろうというきっかけになりました」

──別モノだという考えにはならなかったということですね。

「別モノという考えもあると思います。ただADCCの入賞者を見ても柔術家が多かったです。コブリーニャ、ダヴィ・ハモス、2連覇のJT・トレスと。柔術家がADCCルールに対応するために練習をして結果を残している。つまり柔術はグラップリングで生きているということじゃないですか」

──ハイ。

「グラップリングを戦う上でも柔術の練習が無駄になるとは思わないので、それほど分けて考えることはないです。ただし、グラップリングに特化して練習した方がADCCでは結果を残せるとは思っています。ムンジアルとADCCの両方を狙うよりも、どちらかに集中した方が成果は出しやすい。それでもミカ・ガルバォン、ジオゴ・ヘイス、ファブリシオ・アンドレだとか、ルオトロ兄弟もそうですが、両方で活躍している柔術家も多くて。僕が目指したいのはそういう選手です」

──まさにその言葉通りの活躍を国内ではできています。両競技に出る利点はどこにあると考えていますか。

「利点……利点というか、両方とも楽しいです。道着もアジアの前に集中して練習していると、掘り下げる分だけ新しい技術が見つかって。その時は道着にハマります。でもノーギの大会前はレスリングもそうだし、新しい技術にハマります。一方に集中した方が、競技者としては上達すると思いますが、両方とも楽しいから、今のところは両方で頑張りたいという気持ちです」

──コンペティションに出る理由も楽しいからでしょうか。

「そこに対する取り組みも、ですね。もちろん、試合だから精神的に負担もあります。ただ挑戦していること自体は楽しいです」

──楽しめなくなる。それも競技者生活の一面ではあります。

「注目が集まり過ぎると、そうなるんじゃないでしょうか。マイナー競技だから、楽しめているのかもしれないです。ただゴードン・ライアンが楽しめているとは思えないですね(笑)。ウィリアム・タケットも『試合に出ることはストレスだから、ずっと競技者をやっていこうとは思っていない』と言っていました。弟のアンドリューは、ただ楽しいって感じですけど(笑)」

──なるほどぉ。これは絶対的に否定していることではなくて──。森戸選手が全日本柔術の週末に子供さんの運動会に行かれていたことは、正直驚きました。

「日程的に可能であれば、どんな大きな大会前でも娘の運動会には行きますっ!! 」

──かつかつに体重を落とすわけでないですし。そういえば、MMAでも計量後に運動会に駆けつけている選手もいました。

「僕は減量を余りしないのですが、そりゃあ娘の運動会は大切です。むしろ、そこから活力を得ないといけない。そのために日々を頑張っているので」

──昭和親父として、頭が下がります(苦笑)。

「競技を続けることは当然、楽しいだけではないです。今の僕は道場経営で生活を成り立たせているので、自分の実績も今後の経営に関係してきます。何より応援してくれる家族、生徒さんやスポンサーさん達の生活も僕が活躍することで豊かになってほしいし、自分の心も豊かになれるので競技を頑張りたいです」

──今年は1月にジョセフ・チェンに完敗を喫しました。自らの努力を否定されかねない敗北だったかと思うのですが、心を豊かにするのとは真逆で絶望感を持つことは?

「自分がジョセフの域まで達していないだけで、でも強くなっている実感があります。これだけ強い人がいるのだから、もっと頑張ろうという気持ちになりました。強い選手と肌を合わせられて良かったと思います。戦う舞台が世界になると、ああいう選手が揃っているので。現にジョセフはノーギだと過去一で強かった。ジョセフ・レベルの選手がADCCの世界大会に出る。そういう選手と日本で試合ができて、差も分かりました。そこをどう埋めていくのかという過程に今はいます」

──あの試合以降、森戸選手のグラップリングは技術的に変化しました。ラクランの足関から始まったグラップリング挑戦ですが、この競技自体に技術変遷が見られます。

「今では足関は必須科目です。主流の技術が代わり、その技術を修得していく過程はやはり楽しいです。強くなることが実感できるので」

──その成果を発揮する舞台が、 11月25日のADCCアジア・オセアニア予選です。

「ADCC世界大会は僕の目標とする大会の一つです。招待選手でもない僕は、そこに出るには予選で勝つしかない。もちろん、そこに賭ける想いはあります。そのために練習をしているので」

──その練習環境としては広島&岩国だと、首都圏のコンペ練習がある道場とはまた違ってきます。首都圏ではMMAファイターのプロ練習に参加する選手もいますし。

「練習環境の差はどう見てもあります。でも僕はこのジムを自分で起ち上げて、通ってくれる生徒さん、出稽古で来てくれる練習仲間──皆で強くなっていこうという気持ちでやっています。取り組み方次第で、練習環境の差は埋めていける。結果を残して、ソレを示していきたいという想いでやっています」

──アジア・オセニアニア予選、豪州、あるいは中央アジアからどのような選手が出てくるのか分からないですが、前回優勝の岩本健汰選手が優勝候補一番手だと思われます。東京やB-Teamで練習する岩本選手を相手にして、今の言葉を実践できるのか。大勝負ですね。

「う~ん、ADCCルールの実力でいえば向うの方が全然上です。ジョゼフに勝ち、ウィリアム、ダンテ・リオンという世界のトップと張り合える選手との試合を見ても、岩本選手はめっちゃ強いです(笑)。でも、そこに挑んでナンボなんで。やるからにはもちろん、自分の持っているモノを全部出して勝ちに行きたいです」

──岩本健汰になくて、森戸新士にある長所とは?

「柔術の極め。岩本選手もスクランブルが強いですけど、自分も意外と得意なので、そこで驚かせることもないことはない。そういうところでチャンスを創りたいです。僕はコロナの時に米軍基地での指導という仕事を失って、あの時に柔術を教えていた生徒さんの助けがあって、家族と生き抜くことができました」

──……。

「LEOSを創る前、結婚をする前、子供が生まれる前は自分のことしか考えていなかったです。今は柔術だと試合会場に仲間と一緒に行き、プログレスとか自分だけの試合でもセコンドで仲間が来てくれます。試合直前まで支えてくれて、応援してくれる家族や仲間の存在は、明らかに自分の力になっています」

──圧倒的な実力差があるケースを抜きにして、競り合った時にその想いが森戸選手のエネルギーになりそうですね。

「より一層負けられないという気持ちが大きくなります。試合前も娘の写真を見て……だから運動会にも行くし(笑)。奥さんから娘が『頑張ってねぇ』と言っている動画が送られてきます。道場の皆のメッセージを読んで、動画を見ると良い感じで緊張が取れて『やるぞ』と気持ちを切り替えることができるし。そんな皆のためにも頑張りたいです」

──では改めてADCCアジア・オセニア予選に向けて、意気込みの程をお願いします。

「ADCCアジア・オセアニア予選はレベルも凄く上がっていて、メンバー的にも過酷なモノになると思います。インターバルも短く体力的にも厳しいです。勝ち上がれば勝ち上がるほど厳しい状況になりますが、一つひとつ勝ち進んで──代表権を掴み取りたいと思います」

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【ONE FF39】MMA早熟時代の象徴、韓国のチョ・ジョンゴン=17歳がONEルンピニー2戦目、初勝利を目指す

【写真】ジオゴ・ヘイス以上にベイビーフェイス、いや童顔でも当然――17歳のチョ・ジョンゴン(C) MMAPLANET

本日3日(金・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE Friday Fight39に韓国の高校生MMAファイター、チョ・ジョンゴンが出場する。
Text by Manabu Takashima

17歳、空手出身のチョ・ジョンゴンにとって今回は2度目のルンピニーでのファイトとなる。


昨年6月にAngel’s FCでプロデビューを果たしたチョ・ジョンゴンは、空手ベースの打撃を武器にプロ2戦目に後ろ回し蹴りでKO勝ちを収め、今年8月のHEATとの対抗戦ではAXEL RYOTAをスピニングバックフィストで破っている。

HEATとの対抗戦出場時点で2勝1敗1分けだったチョ・ジョンゴンは、日本での勝利で貯金を2つにすると1カ月後の9月15日にONE FFデビューを果たす。

しかし、イスマイル・カーンに3R1分10秒RNCで下り、キャリア2敗目を喫した。以前、ONEではWarrior Seriesのトライアウトで高橋誠が18歳という年齢が理由で契約を勝ち取ることができなかったが、故ヴィクトリア・リーの例を見るまでもなく、このチョ・ジョンゴンも含め18歳以下云々は適用されなくなったようだ。

閑話休題――この時点で海外に活躍の場を求める必要はなく、国内でもキャリアを積めるという声は韓国内にもある。同時にK-MMA界も早熟傾向が目立ち、各プロモーションのタイトルマッチにキャリア5戦前後の選手が出てくることも少なくない。

北米でいえばLFAもキャリア10戦を越える選手の方が逆に目立つような流れもある。ラウル・ロサスJrのUFCとの契約にも見られるように低年齢、早熟がトレンドになりつつあるMMA界にあってもチョ・ジョンゴンのように17歳で海外でキャリアを積むのは余り例がない。

いずれにせよ、力がなければ跳ね返されるのが、このスポーツ。キャリア3戦目のモイセス・イロゴンとのマッチアップは、等身大の対戦相手ということもありチョ・ジョンゴンの真価が――17歳にして――問われることとなる。

■放送予定
11月3日(金・日本時間)
午後9時30分~ ONE公式YouTubeチャンネル

■ONE FF39対戦カード

<ムエタイ142ポンド契約/3分3R>
コンクライ・エニームエタイ(タイ)
ソナー・セン(トルコ)

<ムエタイ130ポンド契約/3分3R>
ET・ティーデ(タイ)
モンコルゲーウ・ソーソンマイ(タイ)

<ムエタイ138ポンド契約/3分3R>
ダーキーノッカオ・コーモー11(タイ)
ジャック・アピチャットムエタイ(タイ)

<ムエタイ112ポンド契約/3分3R>
ロンチョンラッキー・バンターン(タイ)
ペターケー・キッチャムローン(タイ)

<ムエタイ120ポンド契約/3分3R>
アムワイデットウォー・ワンタウィー(タイ)
ペットラー・ミューウーデン(タイ)

<ムエタイ146ポンド/3分3R>
ファビオ・ヘイス(ポルトガル)
ウラジミール・クズミン(ロシア)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ディトリルックアン・オートムムエタイ(タイ)
アブドゥラ・ジェイコフ(ロシア)

<ムエタイ127ポンド契約/3分3R>
ロンジュン・パセサイシーイ(タイ)
キャリム・ダウ(フランス)

<ムエタイ143ポンド契約/3分3R>
マーシン・カオラックムエタイ(タイ)
パトリック・サナ(ハンガリー)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ルーカス・ガブリエル(ブラジル)
クルバナリ・イサベコフ(ロシア)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
モイセス・イロゴン(フィリピン)
チョ・ジョンゴン(韓国)

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BELLATOR ECI06 MMA MMAPLANET o ONE YouTube エステヴァン・マルチネス キャメロン・メロット コール・アバテ ジオゴ・ヘイス ダナ・ホワイト デイヴィッド・テラオ ベラトール マイキー・ムスメシ マニー・ヴァスケス ライアン・ホール 高橋SUBMISSION雄己

【ECI06】身長149センチの猛者エステヴァン。D1AAレスラー、柔道&ノーギワールズ王者テラオに要注目!!

【写真】スーパーアグレッシブなエステヴァン・マルチネス。高橋はとんでもないグラップラーと相対することになるかもしれない(C)WNO/CLAYTON JONES

29日(土・現地時間)、ニューヨーク州シセロで開催されるEmerald City Invitational06のバンタム級トーナメント展望後編。
Text by Isamu Horiuchi

高橋Submission雄己が出場する32人制ワンデートーナメントには、日本では無名でもとんでもない力量を誇るグラップラーたちが参戦している。そんなECI06バンタム級T優勝候補筆頭と目されるのは、ベガス出身にしてZRチーム所属、21年のノーギワールズ最軽量級王者のエステヴァン・マルチネスだ。発表されている身長が4フィート11インチ(149.85センチ)と軽量級選手のなかでもことさら低く、太く低い手足を持つタンクのような選手だ。

<ECI06展望Part.01はコチラから>


戦い方はきわめてアグレッシブにしてダイナミック。スタンドでは積極的にダブルやシングル、ファイアーマンズキャリー、アームドラッグ等を繰り出し、たとえ潰されて下になっても簡単には抑え込ませず、動き続けてスクランブルでトップを取り返す力がある。

相手が下になれば側転、ニースライス、かつぎと矢継ぎ早にパスを仕掛け、上から滑り込んでのベリンボロでのバック取りや跳びつき三角、上からダイブしてのキムラやギロチンも狙う。リスクを厭わないスタイル故に相手にバランスを崩されることも多いが、持ち前の瞬発力と反応速度、ボディバランスと重心の低さをフル活用してトップをキープし攻撃を続け、相手を疲弊させてゆく。

ベイビーシャークが頭一つ大きいって──どういうこと?

何より特筆すべきは、体型も味方に付けての一本負けの少なさだ。

マイキー・ムスメシと対戦した際にも再三の足関節狙いを凌いで判定に持ち込んでおり、ジオゴ・ヘイスやコール・アバテといった、二回り大きい軽量級世界最高峰からも一本は許していない。6分という制限時間内にこの選手から一本を奪うのはきわめて困難だろう。

その上強烈なチョークを得意としていて、バックを奪われた状態からスピンして逃れる瞬発力にも長けているので、OTへの適性も悪くない。

階級上のキース・クレコリアンとのOT戦においては、四の字ロックを作ることができず3度連続で高速エスケープを許して敗れてはいるが──エステヴァンを誰が止めるのかが、この大会の第一の軸となりそうだ。

実は、このエステヴァンと一昨年の今大会フェザー級トーナメントにて対戦し、あと一歩のところまで追い詰めた選手がいる。20歳のキャメロン・メロットだ。

大会主催のエメラルドシティ柔術と同じヒカルド・アウメイダ・アソシエーション傘下にして、トム・デブラス率いるオーシャンカウンティ柔術所属。昨年のノーギワールズ紫帯ライトフェザー級3位と、帯色や実績では他のトップ選手には及ばないが、そのガードワークはまぎれもなく一級品だ。

前述のエステヴァン戦では、怒涛のアタックに対して下から足を効かせ続けてパスを許さず、逆に足を取りにゆく場面もあった。やがてクローズドから体をずらして見事にバックを奪うことに成功し、首に深く腕を食い込ませてあわや大金星かという場面まで作った。

執念でエスケープを果たしたエステヴァンの粘りの前に試合がOTにもつれ込むと、レフェリーから優勢と判断されて先攻後攻の選択権を与えられたのはメロットの方だった。結局OTの第2ターンでチョークを極められて敗退したが、見る側が──仮定の話をしても仕方ないとは知りつつも──「もしEBIルールでなければ…」と思ってしまうほどの大健闘だった。

このメロットのような、まだ世界的には無名だが大きな可能性を秘めた若手選手を見つけるのも、このトーナメントの見所だろう。

さらに他競技でも実績を挙げている選手として、ライアン・ホールの50/50柔術所属のデイヴィッド・テラオにも注目したい。「スタンフォード」というとても賢そうなミドルネームを持つこの日系人選手は、ワシントンDCにあるアメリカン大学在学中の16年に、NCAA Division 1のオールアメリカンに輝いている。

さらに柔道でもハワイ州の高校王者であり、現在も米国チームの一員としてIJF主催の国際試合で活躍中。昨年チュジニアで行われたアフリカンオープンでは4試合を勝利して準優勝、さらに今年キューバで行われたパンアメリカンシニア(21歳以上)オープン大会では、4試合中3試合を一本勝ちで優勝に輝いている。

グラップリングでは、色帯時代には三角絞めや足関節で敗れる姿も見られたが、着実に戦績を伸ばしてゆき21年ノーギワールズの茶帯ライトフェザー級で優勝。

決勝は自らシッティングガードを取り、一瞬で相手を引き込む三角絞めで攻め込んだ。終盤は逆転を期した相手が下からワキを差して上を取りに来たところをウィザーからの内股で防ぎ、逆に小内刈りと相手の足を内からすくう合わせ技で倒して上をキープするという──レスリング&柔道の技術を存分に活かしての勝利だった。

なお、大会後に師のホールから黒帯を授与されたことを受けてテラオは、日本人である祖父が教えてくれたという「arigatai」という言葉を用いて、今まで格闘技で出会った人々に感謝の気持ちを表現している。

黒帯取得後も柔道と並んでIBJJF系の大会に精力的に出場しており、昨年12月のノーギワールズでは初戦を突破して準決勝で世界柔術準優勝のカーロス・アルベルトと対戦。残り数秒で三角に捕まるまでポイント0-0、アドバンテージ2-3の好勝負を展開し銅メダルを獲得している。

テラオのようなレスリングや柔道の強力なバックグラウンドを持つ選手が、細かい技術への対応を身に付けた時には脅威と化すのは間違いない。それがサブミッションオンリーという舞台で、他の柔術グラップリングベースの選手たちとどのような化学反応を見せるのか。またOTとなった時に、テラオが柔道で培った極めをいかに活かすのかもきわめて興味深い。

もう一人知名度のある選手として、マニー・ヴァスケスも注目したい。現在サウスカロライナ州の10th planet グリーンヴィル支部を主催するヴァスケスは、もともとはBellatorやダナ・ホワイト・コンテンダーシリーズ(1stシーズン、第1週&第1試合に出場しジョビー・サンチェスに敗れる)にも出場した実績のあるMMAファイターだ。

18年5月までに12勝3敗の戦績を残しており、19年2月にはベラトール215で元王者のエドゥアウド・ダンタスとのキャリア最大の大勝負が予定されていたが、詳細未発表の負傷を原因に欠場。以降2年以上戦線から遠ざかっていたが、21年5月にコンバテ・グローバルで復帰戦が決まった際、実は悪性リンパ腫(がん)の治療を行なっていたことを明かした。

過酷な抗がん剤治療を乗り越えて臨んだこの試合に惜しくも判定1-2で敗れた後は、グラップリングに専念している。

MMA出身者らしくトップからの圧力で相手の攻撃を封じてゆく戦い方を信条とするヴァスケスは、昨年9月に行われたEBI形式の大会Midwest Finishers 9を制覇。決勝戦でも本戦で終始トップを維持する安定感のある戦いを見せ、OTでバックから極めた後にエスケープを果たしての優勝だった。

またその前の月には、今大会優勝候補筆頭のエステヴァン・マルチネスともワンマッチで対戦しており、敗れたものの最後まで極めさせず判定に持ち込んだ。後半はパスを許してバックも奪われてしまい、組技の地力はエステヴァンが勝っていることを印象付ける内容ではあったものの10th planet勢が研究を重ねるOTが採用されている今大会で再戦が実現した場合、どうなるかは分からない。

以前EBIでジョー・ソトがジョアオ・ミヤオをOTで下したことがあるように、MMA畑のファイターはOTへの適性が高いことが多い。

以上紹介した以外にも、さまざまなメンバーが顔を揃えたこのトーナメント。エントリー選手たちの所属道場を見るだけでも、アトス、AOJ、ヘンゾ系列、デイジー・フレッシュことペディゴ・サブミッション・ファイティング、ATT、10th planet各支部、普段はセルフディフェンスを中心に練習を行なっているホイス・グレイシー系列道場等、豪華絢爛にして百花繚乱、米国グラップリングシーンの裾野の広さが窺われる。この中にあって、今成柔術のバナーを背負って単身日本から乗り込む高橋が快進撃を見せてくれるなら、これほど痛快なことはない。

選手としてだけでなく、常に日本の業界全体の将来を視野に入れて活動する高橋。その彼が北米の最先端と触れ合うこの大会から、何を感じて何を持ち帰るのか。結果がどうあろうと、今後の日本のグラップリング界に少なからぬ影響を与えてほしいものだ。

■視聴方法(予定)
4月30日(日・日本時間)
午前6時00分~Flo Grappling

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【Gladiator021】オーシマイキー聡承と対戦、世羅智茂─01─「MMAグローブを着けて分かったこと」

【写真】ケージとMMAグローブから、MMAとグラップリングがさらに理解できる──勉強になるインタビューです(C)SHOJIRO KAMEIKE

26日(日)、大阪府豊中市の176BOXで行われるGladiator021で、世羅智茂がプログレスのフォークスタイルグラップリングに初挑戦。弱冠16歳の注目グラップラー、オーシマイキーこと大島聡承と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

ここ数年は柔術よりもグラップリングにシフトチェンジしている世羅が、プログラップリングマッチに出場する機会も増えてきた。そんななか、ADCCオセアニア&アジア予選で感じた世界のグラップリングと、今回MMAグローブを着けてケージで戦うプログレスのルールについて語ってもらった。MMAファイターがグラップリングで強くなるために生まれたプログレスについて、柔術家やグラップラーと考えるシリーズ――としたい。


――まだ正式発表はされていませんが、今大会の直前に世羅選手がプログレスのフォークスタイルグラップリングに出場すると聞いて取材をお願いしました(※取材はは3月18日に行われた)。

「長谷川賢代表からお話を頂いて、すぐに『良いですよ』と返答しました。ただ、フォークスタイルグラップリングはMMAグローブ着用だったことを忘れていて……。練習用にネットでMMAグローブを購入しました(笑)」

――おっ、それは興味深いです。そんなフォークスタイルグラップリングのお話の前に、まず昨年のADCCオセアニア&アジア予選について訊かせてください。

「もちろん優勝を狙っていたのですが、予想していたよりもレベルが高かった。それが素直な印象ですね。そういう世界を体感できたことは良かった一方で、自分はADCCルールに対応する準備が足りませんでした。特に立ちレスの練習が足りていなかったです。自分の中ではしっかり練習していたつもりですが、実際にやってみると足りないと感じました」

――それだけ現代グラップリングでは立ちレスの重要性が増しているわけですね。

「みんな当たり前のように立ちレスをやっていますよね。軽量級と重量級では、違ってくるとは思うんです。僕が出場した66キロ級で優勝したジェレミー・スキナーは、足関節や下からのサブミッション一辺倒で勝ち上がっていました。そのジェレミーも世界大会では2回戦負けで。いずれにしても立ちレスは必須だなと考えています」

――以前と比べて、どれだけ立ちレスの割合が高まっているのでしょうか。

「昔だと立ちレスの割合って半々ぐらいのイメージでした。ざっくりとした言い方になってしまいますけど、今は7~8割でしょうか。その立ちレスの展開次第で試合内容も変わりますよね。ノーギでは下からの攻めが難しくなります。ギを掴んで引っ張ることができないし、汗で滑るようにもなってくるので。重量級と比べて、まだ軽量級は下から動きやすいとは思います。

体重が軽い分、上からのプレッシャーも弱くなりますから。それでも下からの攻めを熟知していれば、上にいても対処できるじゃないですか。そうなると軽量級でも立ちレスが強いと有利になりますよね。世界大会の66キロ級で優勝したジオゴ・ヘイスも、立ちレスはメチャクチャ巧かったです。なぜあれだけ強いんだっていうぐらいで」

――それだけ立ちレスの重要性が増しているなか、プログレスのフォークスタイルグラップリングについては、どのように考えていますか。

「点差が開きにくいルールですよね。テイクダウン、リバーサル、バック、それと立ち上がったらポイントが入る。柔術と違ってパスとマウントにポイントが入らないので、ポイント差はつきにくいんじゃないかと思います。その分、他のグラップリングとは戦い方も違いますよね。やっぱりMMAに寄ったグラップリングルールなので。しかもケージで行われますし、グローブを着けることでも大きく変わってきます。

実際にMMAグローブを着けて練習してみると、想像以上に違いを感じました。ケージというか壁を使った練習よりも、MMAグローブのほうが慣れないです。僕も8~9年ぐらい前、アマチュアパンクラスに出たことがあって。それでも、改めて着けてみると『こんなに違ったっけ?』と思ってしまうぐらい感覚が違います」

――8~9年ぶりですか! それは違うでしょうね……。

「たとえばMMAグローブって、握りこもうとするとアンコの部分に引っ張られて、ブレーキがかかっちゃうんです。そうなるとクラッチも変わってきます。あと、いつもならワキを差せるところでも、アンコの部分が引っかかって腕を差し入れることができなかったり。あるいはRNCが難しくなったりとか……。柔術やグラップリングでやっている、細かい組み手が難しくなってきてしまいますね」

ただ、MMAグローブを着けて分かったことはあります。細かい手の動きが難しくなるので、必然的にMMAはシンプルな動きのほうが多くなってくるんでしょうね。MMA選手の方って、グラップリングの練習でもレスリングのような細かい組み手はやらないと思うんです。試合で必要ないのであれば、練習でも必要ない。そう考えるのは、仕方ない」

――なるほど。もう一つの要素として、ケージの存在があります。同じカルペディエムの石黒翔也選手は、「ケージがあるからこそマットの試合よりも相手が距離を詰めてきてくれる」と仰っていました。世羅選手にとって、ケージに対してはどのように考えていますか。

「あぁ、なるほど。石黒君が言っていることも分かります。ケージがあったほうが相手をコントロールしやすいですね。テイクダウンするのも、トップコントロールするのも。ただ、そこからサブミッションを極めるのは、マットよりも難しくなります。どうしてもケージがあって、回りにくくなってしまうので。マウントやバックを奪ってからの動きも違ってきますしね。そこは何を目的にするのか、そのためにどう動くのかによって変わります」

――では、そこまで異なるケージ・グラップリングに対して、現在は対策などを行っているのでしょうか。

「プログレスのオファーを頂く前からロータス世田谷に行っていて、MMAファイターの方々と練習しています。すると自然に壁を使った攻防になりますよね。柔術やグラップリングに役立つかどうかは分からないけど、とりあえず面白いから壁レスもやっています」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
3月26日(日)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル

■ Gladiator021対戦カード

<ストロー級/5分2R>
田中優樹(日本)
木村旬志(日本)

<バンタム/5分2R>
今村豊(日本)
谷口武(日本)

<バンタム級/5分2R>
藤原克也(日本)
秋田良隆(日本)

<Gladiatorフライ級選手権試合/5分3R>
[王者]NavE(日本)
[挑戦者]ニャムジャルガル・トゥメンデムベレル(モンゴル)

<バンタム級/5分3R>
神田T-800周一(日本)
テムーレン・アルギルマー(モンゴル)

<55キロ契約/5分3R>
中務修良(日本)
エイドリアン・バトト・ジェマ―(フィリピン)

<Progressフォークスタイルグラップリング78.5キロ契約/5分✖2R>
世羅智茂(日本)
大嶋聡承(日本)

<Progressフォークスタイルグラップリング・バンタム級/5分✖2R>
前田吉朗(日本)
江木伸也(日本)

<バンタム級/5分3R>
ゆうと(日本)
キム・ウィジョン(韓国)

<フライ級/5分2R>
中西テツオ(日本)
宮川日向((日本)

<フェザー級/5分2R>
フェルナンド(ブラジル)
藤岡陸(日本)

<ウェルター級/5分2R>
橋本健吾(日本)
阿部光太(日本)

<Progressフォークスタイルグラップリング・バンタム級/5分✖2R>
ハシャーン・フヒト(日本)
花澤大介(日本)

<アマMMAバンタム級/3分2R>
佐藤フミヤ(日本)
北原蓮(日本)

<アマMMAバンタム級/3分2R>
平本丈(日本)
飴山聖也(日本)

<バンタム級/5分1R>
藤井丈(日本)
吉田開威(日本)

<バンタム級/5分1R>
武田純忠(日本)
有田一貴(ブラジル)

<フライ級/5分1R>
古賀珠楠(日本)
那須裕次郎

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ABEMA BELLATOR Finishers Kombat04 Kombat04 MMA MMAPLANET o UFC YUKI アンドリュー・タケット エステヴァン・マルチネス ガブリエル・ソウザ ケネディ・マシエル ザック・エルファルナーニ ジアニ・グリッポ ジオゴ・ヘイス ジャンカルロ・ボドニ マニー・ヴァスケス ヴァラー・ボイヤー 高橋SUBMISSION雄己

【ECI06】高橋Sub雄己、EBIならぬECI=Emerald City Invitationalバンタム級Tに出場

【写真】10thPlanet効果が見られるか── (C)YUKI TAKAHASHI

4月29日(金・現地時間)、ニューヨーク州シセロで開催されるEmerald City Invitational06のバンタム級Tに高橋Submission雄己が出場する。

高橋は2月26日にフィラデルフィアで行われたFinishers Kombat04でラミロ・ヒメネスを内ヒールで21秒殺したばかり。同イベントのバンタム級王座挑戦が約束されたが、より規模の大きなグラップリング大会への出場権を得た。

エメラルドシティとは緑豊かの街を指す言葉で、ワシントン州シアトルがこの名で呼ばれることが多いが、NY州の中央部の商工業都市で冬は豪雪地帯のシラキュースもこの名を用いている。そのシラキュース郊外のシセロで開かれる同大会は、同市にあるエメラルドシティ柔術が母体となっている。


活動2年で5大会=ウェルター級、フェザー級、ミドル級、ライト級、無差別級の16人制Tを実施してきたECIだが、今回は男女バンタム級16人Tが行われ、高橋が出場することとなった。

過去にウェルター級TでPJ・バーチやアンドリュー・タケット、フェザー級ではケネディ・マシエル、エステヴァン・マルチネス、ガブリエル・ソウザ、ジアニ・グリッポ、ミドル級にはジャンカルロ・ボドニ、オリヴィエ・タザら錚々たるグラップラーが出場してきた。

EBIルールが採用され、1回戦から準決勝までは6分、決勝戦は10分というECIバンタム級T。まず注目したいのは2021年ノーギワールド黒帯ルースター級優勝のエステヴァン・マルチネスだ。

ADCC66キロ級世界王者のベイビーシャークことジオゴ・ヘイスとWNOで戦いレフ判定負け、階級的に北米では5キロや7キロ重い階級で戦うのが常で敗北も少なくないが、ECIではフェザー級Tにも出場経験があり、今大会の優勝候補筆頭であることは間違いない。

そのマルチネスにレフ判定で敗れたことがマニー・ヴァスケスも、ある意味注目したいファイターだ。ヴァスケスはキャリア12勝4敗のMMAファイターで、Bellatorやコンテンダーシリーズ出場経験もある。いわばMMAでは高橋より格上となる。

さらにジェイソン・カウチ属するデイジーフレッシュこと、ペディゴ・サブミッションファイティングの新星ザック・エルファルナーニ、2022年ヨーロピアン&パンノーギ茶帯ライトフェザー級優勝のヴァラー・ボイヤーらなどは、要注意が必要な相手といえる。

またFinishers Kombat04で高橋に敗れたラミロ・ヒメネスもエントリーしており、高橋はともかくヒメネスはリベンジの機会を虎視眈々と狙っているだろう。

女子バンタム級にはUFC女子フライ級ファイターのミランダ・メーヴェリックも参戦しており、今後はEBIだけでなくECIも動向を追う必要があるグラップリング大会の一つになるやまもしれない。

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MMA MMAPLANET o UFC UFC285 ジェシカ・ペネ ジオゴ・ヘイス タバタ・ヒッチ

【UFC285】道と術の合体。払い腰→腕十字。タバタ・ヒッチがジェシカ・ペネから一本勝ち?!

<女子ストロー級/5分3R>
タバタ・ヒッチ(ブラジル)
Def.2R2分14秒by 腕十字
ジェシカ・ペネ(米国)

ジオゴ・ヘイスばりにベイビーシャークの異名を取るタバタは、ワンツーからシングルレッグを決める。ペネは蹴り上げを見せ、立ち上がったタバタにシングルに出る。切ったタバタに対し、ペネはシッティングからスタンドに戻った。パンチで前に出て、前蹴りを繰り出したタバタは、組み合いで右腕を差しあげて2度目のテイクダウンを決める。

特に寝技を続けることなく、立ってロー蹴るタバタはペネのレッスルアップからシングルは頭を押して切り、クリンチでケージに圧しこむと──ここも右を差しあげてテイクダウンを決める。ハイガードからスイープを決めかけたペネ、タバタは何とか踏み止まりトップをキープする。ここも立ちあがってローを蹴るタバタだが、今度はグラウンドを選択しペネの仕掛けを切りながらパンチを振り落とす。ペネはKガードも、取られた足を振り抜いたタバタがスタンドに戻って組んでいったところで時間に。

2R、サウスポーから左ミドルを入れたタバタは、オーソに戻しペネの組みを豪快に払い腰で一本級の投げを決める。ニーシールドに鉄槌を落としたタバタは立ち上がってローへ。パスを狙いに足を戻され、ローに切り替えたタバタはスイープ狙いを切って右ワキを抱えると一気に腕十字で切り替える。ペネの右腕が伸び、タバタが一本勝ちを決めた。

「ジェシカと戦えて光栄だった。彼女はこの階級のパイオニアだったので。でも、今はベイビーシャークの時代。グラップリングは私のバックグラウンドだから」とタバタは話した。


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ADCC2022 MMA MMAPLANET o UFC   アマンダ・ヌネス ガブリエル・ソウザ ケネディ・マシエル ジオゴ・ヘイス ジョシュ・シスネロス ディエゴ・オリヴェイラ ファブリシオ・アンドレイ マイキー・ムスメシ

【ADCC2022】66キロ級決勝 失点0で優勝。最軽量級世界一はベイビーシャーク=ジオゴ・ヘイス

【写真】全試合一本という派手な勝ち方ではないが、失点0も胸を張ることができる優勝だ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第11 回は66キロ級決勝戦=ジオゴ・ヘイス×ガブリエル・ソウザ戦の模様をお伝えしたい。

ADCCルールに見事に合わせた戦いぶりで決勝進出を果たしたジオゴの相手は、昨年のWNOチャンピオンシップでマイキー・ムスメシからパスを奪って準優勝に輝いたガブリエル・ソウザだ。

ソウザは1回戦、以前ノーギでファブリシオ・アンドレイを肩固めで仕留めるなど、強烈な極めを持つフアン・アルバランカと対戦。

序盤強烈にギロチンで絞め上げられ、落ちたと勘違いしたレフェリーに試合を止められて一度は負けを宣せられた。が、抗議が実り試合は再開。終盤にスクランブル合戦を制して2点を奪取し、アルバランカが動いたところでバックを奪って5-0で勝利した。

2回戦は、初戦でAJ・アガザームに勝利したジェレミー・スキナーと対戦。開始早々にパスを奪ったソウザは、そのまま上から攻め続けて、最後はマウンテッド・トライアングルで圧勝した。

準決勝のソウザの相手は、昨年ノーギで3度当たってことごとく惜敗している天敵のパトことディエゴ・オリヴェイラ。パトは1回戦で北米予選王者のキース・クレコリアンをストレートレッグロックで極めて、道着を脱いでも極めの強さを見せつけた。

そのパトは2回戦で、前回優勝のケネディ・マシエルとのマッチアップに挑んだ。

深くタイトに組んだ外掛けから、ヒールのようにかかとをワキに引っ掛けず、上腕で足首をすくう形でヒザを捻るZロックを極め、絶好調で準決勝に上がってきた。

そして迎えた準決勝──ソウザは延長戦のレスリング勝負に持ち込んでパトを疲弊させ、レフェリー判定で勝利。ジエゴと同じく、ADCC世界大会初出場にして決勝進出を決めたのだった。


<66キロ以下級決勝/20分1R>
ジオゴ・ヘイス(ブラジル)
Def.3-0
ガブリエル・ソウザ(ブラジル)

両者の立ちの攻防がしばし続くと、客席から「ベイビー・シャーク・ドゥ・ドゥ・ドゥ・ドゥ~🎵」とがなりたてる輩が現れる。このベイビーシャーク・ソングは言うまでもなく童顔のジオゴのニックネームの元ネタであり、ここ数年幼児に大人気の歌だ。

そこで実況解説陣も「5歳以下のファンはみんなベイビーシャークを応援しているはずさ」「僕の6歳の息子も全選手のなかで彼が一番のお気に入りなんだ」とコメント。初出場の若手ブラジル人同士、北米の観客にはなかなか感情移入しにくい試合でも楽しみ方はある。

2分半経過した頃、ジオゴが素早く小内からドライブしてテイクダウンに成功。加点時間前なので無理せず下になったソウザが内ヒールを仕掛けると、回転して逃れるジオゴ。それに乗じてソウザが上を取ると、ジオゴも下にステイし、得意の右に絡むハーフを作った。

やがてジオゴがクローズドから左足に絡んで崩すと、両者足関節の取り合いに。どちらも極めさせず、やがて勝者はスタンドに戻った。

6分経過時に、ソウザがアームドラッグへ。すぐに反応したジオゴが逆にカウンターのドラッグ返しからバックに回る。

襷を取り、足を一本入れるジオゴ。しかしソウザも動き続け、体をずらして正対して立つことに成功する。ここで下になったジオゴは、立たずに下から左足に絡む。加点時間帯前なので、無理にスクランブルを仕掛けなくても良いという考えのようだ。

その後ジオゴは下から足を狙い、ソウザが対応する展開が続く。ジオゴがトーホールドを仕掛けると、ソウザが回転して逃げて上下が入れ替わる。やがてダブルガードからお互い足を狙い合う状態となり、試合は10分を経過。加点時間帯に入った。

しばらくすると両者とも立ち上がる。様子見段階は終わり、世界一の座を賭けた本格的なポイント戦がここから開始だ。

お互い譲らない攻防が続くなか、ジオゴが一瞬のアームドラッグから小内につなげてソウザを倒す。本戦と違いすぐに距離を取り、背中を向けて立とうとするソウザ。ジオゴすぐその背後に回る。

ソウザの背中に登ってシングルフックと襷掛けを作るジオゴが、両足フックを狙う。何とか手で足を振り払うソウザだが、ジオゴは襷を双差しに切り替えてソウザのワキを開けさせ、ついにフックを入れて3ポイントを先制した。

残り7分で大きなビハインドを背負ってしまったソウザは再び手を使ってジオゴのフックを解除すると、腰を上げて頭を下げてジオゴを落としにかかる。頭で倒立するような状態でしばらく粘っていたジオゴだが、無理せず下に。得意の右に絡むハーフを作った。先制点を奪った以上、あとは失点せず戦ってゆけばいい。

ジオゴのハーフの前に攻め手を作れないソウザは、一旦離れてのパス狙いへ。が、ジオゴは柔らかい動きで対応。逆に下からソウザの左足に絡んで崩しては、足狙いを見せる。

深い50/50を作ったジオゴは、内ヒールを仕掛ける。特に極める必要はなく、相手に防御を余儀なくさせ時間を稼ぐのにきわめて有効な手だ。ソウザは立ち上がって組まれた足を押し下げて解除するが、ジオゴはインバーテッドからまたしても足を絡めてゆく。

その後、ソウザは横に回ってのパスや上から飛び込んでのバック狙いを見せるが、その度にジオゴは下から柔らかい動きで危なげなく対処を続けた。終盤も足と両腕のフレーム使ってソウザにパスのチャンスを与えないジオゴは、残り数秒のところで距離を取って素早く立ち上がる。ここでソウザも万事休すと悟ったか、最後の追撃はせず。弱冠20歳のジオゴ・ヘイスが初出場初優勝の快挙を成し遂げた。

ケニー・フロリアンから勝利者インタビューを受けたジオゴは、童顔の見た目よりさらに幼い声で(たまに指摘されることだが、ジオゴの英語はUFC女子バンタム&フェザー級王者アマンダ・ヌネスのそれをぐっと拙く少年ぽくした印象だ)、「最高の気分さ。夢がかなったよ。ここまでの道のりは楽じゃなかった。僕たちはみんな身を練習に捧げてきたんだ。チームメイトのファブリシオやミカ、そして師匠のメルキ・ガルバォンがいなければ僕はここにいない、彼なしに優勝など不可能だったんだ。全てを僕らに捧げてくれた」と語った。

その後メルキがマットに登場して、ジオゴとハグ。愛弟子の快挙に感涙にむせぶ師の横で、ジオゴは「この人は僕の父であり、友人であり、コーチであり、師匠だ」と改めて想いを語り、感動のエンディングとなった。

今大会の4試合、一切の失点をせず、ことごとく後半のレスリング、スクランブルの攻防で差を付けて勝ち切ったジオゴ。テイクダウンされてもポイントを許さず立ち上がり、徐々に相手を疲弊させてゆくレスリングの持久力で上回った形だ。

そんな戦い方を可能にしたのは、柔らかい動きで体力を消耗せずに、相手に得点を奪う隙を与えない優れたガードワーク、そして各局面で不要なリスクを犯さず、試合に勝つための最適な方法を選び取ることのできる高いファイトIQがあるからこそだ。

世界最高峰の選手が集ったこの最軽量級にて、ADCCルールで勝つためのスキルを、技術的にも精神的にも最も高いレベルで持ち合わせていたのが、ジオゴ・ヘイスだったといえるだろう。

なお3位決定戦は、延長までもつれ込んだ末、パトことディエゴ・オリヴェイラがジョシュ・シスネロスからペナルティ1差で勝利。こちらも初出場でのメダル獲得となった。

66キロ級リザルト
優勝 ジオゴ・ヘイス(ブラジル)
準優勝 ガブリエル・ソウザ(ブラジル)
3位 ディエゴ・パト・オリヴェイラ(ブラジル)

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o   ゲイリー・トノン ジオゴ・ヘイス ジョシュ・シスネロス ブログ

【ADCC2022】66キロ級準決勝 赤子鮫、シスネロスとのアブダビ流レスリングマッチを制し決勝へ

【写真】大会前の予想よりも、レスリング力が上がっていたベイビーシャーク。盟友アンドレイ戦、この準決勝でも立ちレスの成長は顕著だった(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第10 回は66キロ級の準決勝=ジオゴ・ヘイス×ジョシュ・シスネロスの一戦の模様をお伝えしたい。


2回戦で親友ファブリシオ・アンドレイとの大一番を制したジオゴの準決勝の相手は、米国の新鋭ジョシュ・シスネロス。

一回戦では、別人のように筋肉が肥大したイサン・クレリンステンと対戦し、延長でマウントを奪取。最後は後ろ三角絞めの体勢から腕を伸ばして一本勝ちを収めている。

シスネロスは2回戦で初戦でゲイリー・トノンからスクランブルでバックを奪い、最後のヒールも凌ぎ切って殊勲の星を挙げたサム・マクナリーと対戦。

ダイブしての三角絞めから腕を伸ばす等見せ場を作った末、延長レフェリー判定で激戦を制して準決勝進出を決めている。

<66キロ級準決勝/10分1R>
ジオゴ・ヘイス(ブラジル)
Def. 2-0
ジョシュ・シスネロス(米国)

スタンドでフェイントをかけ、足を飛ばし合う両者。2分半経過時点で、ジオゴがフェイントからシスネロスの左ワキをくぐる。正対しようとするシスネロスにボディロックし、小外掛けからジオゴが浴びせ倒して上になった。

一旦シスネロスのクローズドガードに入ったジオゴだが、すぐに立ちあがる。シスネロスは下から足を掴んでのスイープを試みるが、ジオゴは距離を取る。

さらにスタンドの攻防が続き、シスネロスが素早くシングルに入りジオゴの左足を捕獲。振りほどこうとするジオゴだが、シスネロスは許さず距離を詰めて上になる。時計を見て加点時間帯に入っていないことを確認したジオゴは、無理せず下にステイ、右足に絡んでゆく。

やがて試合は加点時間帯に。下から足を狙ったが防がれたジオゴは、シッティングから素早く右足を抱えてのレッスルアップを狙うが、シスネロス距離が距離を取り、両者はスタンドに戻った。

加点時間帯になってから初めてのスタンドの攻防、一つのテイクダウンが勝敗を左右する状況下だ。手四つを組んだ両者が頭を付け合うなか、素早く飛びこんだジオゴ。深く入ってのニータップでシスネロスを豪快に倒すと、すぐさま三点で体重をかけてスクランブルを許さずにポジションを固定し、大きな2点を先制してみせた。

一度はクローズドガードを取ったシスネロスは、それを開けて右にハーフで絡む。さらに下からジオゴの足に絡むが、ジオゴは立ちあがって対処する。次はまた右に絡むシスネロスだが、ジオゴはその手を押し下げて防御する。残り1分40秒の時点で、このままでは埒が明かないと踏んだかシスネロスは立ち上がった。

スタンドからテイクダウンを仕掛けるシスネロスだが、ジオゴは距離を取り防ぎ、逆に距離を詰めて四つの体勢に。ここから足を飛ばすシスネロスだが、ジオゴのバランスは崩れない。次にシスネロスはシュートインを試みるが、ジオゴは安定したフットワークで防ぐ。

残り20秒。シスネロスは素早くシングルに入ってジオゴの右足を取るが、ジオゴは側転するように抜き、逆にテイクダウン狙いを仕掛けてゆく。結局、最後までスタンドでシスネロスに付け入る隙を与えなかったジオゴが2-0で勝利した。

これまでの2試合同様、加点時間帯におけるレスリング・スクランブルの攻防を制したジオゴの勝利。全局面で高い技術を持つ上に、不要なリスクを犯さず体力も消耗しない試合運びで、要所でポイントを取りきるレスリング力に優れている。ADCCルールに対する抜群の適性と、童顔に似合わない高いファイトIQを再び見せつけた20歳が、初出場にして決勝進出を果たした。

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o   ジオゴ・ヘイス ディエゴ・オリヴェイラ ファブリシオ・アンドレイ

【ADCC2022】66キロ級2回戦 事実上の決勝&同門対決でジオゴがファブリシオから笑顔なきレフ判定勝ち

【写真】ブラジル予選に続き同門対決を制したジオゴ・ヘイスに笑顔はなかった(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第9 回は66キロ級の2回戦ながら事実上の決勝戦と目された同門対決、ジオゴ・ヘイス×ファブリシオ・アンドレイの一戦の模様をお伝えしたい。


<66キロ級2回戦/10分1R& ExR>
ジオゴ・ヘイス(ブラジル)
Def.ExR by Ref decision
ファブリシオ・アンドレイ(ブラジル)

20歳のジオゴと、22歳のファブリシオ。今回優勝候補のツートップと思われていたメルキ・ガルバォン門下の同門対決が、2回戦で実現してしまった。両者は南米予選01の準決勝でも戦っており、その時は下を選択したジオゴがヒールで勝利している。

試合開始。ファブリシオがいつもの足を振り上げるポーズをする最中に、ジオゴは座り込む。予選同様、序盤はスタンドレスリングを避けて下から戦うと決めていたようだ。

ハーフで右に絡むジオゴと、低くプレッシャーをかけるファブリシオ。絡まれた足をファブリシオが抜くが、ジオゴはウェイターガードの形で再びその足に、素早く外回りから右足を絡めて崩しては右に内ヒール、さらに左足に外ヒールを仕掛けるが、前回ジオゴに極められているファブリシオは冷静に距離を取った。

その後も下から仕掛けるジオゴと、距離を保ってそれを捌くファブリシオの展開が続く。お互い手の内を知り尽くした両者だけに、序盤は様子見しながら戦っているようだ。

やがて5分を過ぎて試合は加点時間帯に。徐々に攻撃の鋭さを増してゆくファブリシオは瞬時に頭を突っ込んでのバック狙い。ジオゴが反応すると素早くサイドを取りにいき、さらに方向を変えて大きくステップオーバー。ここもインバーテッドでジオゴが対応すると、次の瞬間左腕をすくって腕十字を狙い、さらにバックに周りかけるファブリシオ。が、ジオゴはここも体をずらして逃れ、ハーフに戻してみせた。

誰にも真似できないような速度で凄まじき連続攻撃を繰り出したファブリシオだが、ジオゴは冷静かつ的確に対処した。

その後も、上のファブリシオと下のジオゴの攻防が続く。下のジオゴは時にシットアップを狙うが、ファブリシオはその度に押し返す。さらに立って前傾姿勢を取るファブリシオに対し、ジオゴは素早く右腕をアームドラッグ。そのままワキをくぐろうとするが、ファブリシオはすぐに体勢を戻した。積極的に攻撃を繰り出す両者だが、お互いの手の内を知り尽くしているだけに簡単にポイントは許さない。

上からファブリシオがジオゴの顔を手で抑えると、ジオゴも同じように下からファブリシオの頭を手で押す。どちらも一切妥協のない攻防が続くなか、素早くシットアップしたジオゴが足首を掴みにゆくと、ファブリシオは両腕でディフェンスしながら下がる。この動きでファブリシオは警告を受けた。

結局、両者ともに譲らないまま本戦10分が終了。上下で決着の付かない同門対決は、スタンドレスリング勝負に持ち込まれた。

スタンドから再開された延長戦。両者ともまだスタミナは十分に残っているようだ。まずジオゴが右足にシングルを狙うが、ファブリシオは切る。次はファブリシオがダブルを仕掛ける。両足首をすくわれて尻餅を尽かされたジオゴは距離を取って立ち上がろうとするが、ファブリシオは素早く背後に周り、次の瞬間右腕をジオゴの首に回してチョークへ。

深く入ったように見えたが、動きを止めないジオゴはフックを許さず体をずらし続け、距離を取って離れることに成功した。瞬発的攻撃力で上回るのはやはりファブリシオ。しかしジオゴもポイントは許さない。

中央からスタンド再開。再びジオゴがシュートインするが、ファブリシオは切る。次はファブリシオがアンクルピックを試みるが、それをかわしたジオゴは逆にファブリシオの左足を掴むことに成功。その足を離しつつ飛び込もうとするが、ファブリシオもすかさず反応し、両腕を伸ばして距離を取った。

スタンドで頭を付ける両者。ジオゴは小内刈りからのテイクダウンを狙う。2度目のトライでファブリシオは尻餅。それでもジエゴの体を押し返すように距離を取って体勢を戻したファブリシオだが、反応が少し遅れてきているようだ。

残り2分。動きの落ちないジオゴは細かいフェイントを見せる。さらに上体を下げてファブリシオの左足をつかんだジオゴ、そのままドライブしてワキをくぐってバックからボディロックを取ることに成功。

ここからジオゴは背後から足を絡めてファブリシオを引き倒す。ファブリシオが亀の体勢を取ると、ジオゴはあえて離れてみせた。疲れてきた相手にグラウンドで反撃のチャンスを与えることなく、スタンドで削り続けることを選択する。これは南米予選決勝にて、ジエゴがパトことディエゴ・オリヴェイラを制した時にも用いた戦い方だ。

残り40秒。押され気味のファブリシオはヒザを付いてのテイクダウンを狙うが、今までのような力がなくジオゴに切られてしまう。残り25秒、ジオゴはアームドラッグから右足にシングルを仕掛け、再びワキをくぐってファブリシオの背後を取ってみせた。

前転して逃れようとするファブリシオだが、ジオゴはそれについて行きバックをキープする。立ち上がったファブリシオの背後にジオゴが付いた状態で、延長戦は終了した。

延長序盤に爆発的な動きでチョークのまで持っていったファブリシオと、後半2度バックを奪ったジオゴ。見方次第でどちらに付いてもおかしくない判定は、ジオゴに。親友相手の勝利とあって、ジオゴは喜びを表情に出さず勝ち名乗りを受けた。

最後までペースを崩さず戦ったジオゴと、本戦や延長前半で爆発的な攻勢をかけた後、終盤失速したファブリシオ。南米予選でジオゴに極められていることから来る気負いが、ファブリシオの戦い方に影響した面もあったのかもしれない、と考えるのは邪推だろうか。

とまれ。グラウンドで決着が付かなければスタンドレスリング勝負となり、テイクダウン認定が厳しいため、瞬発力だけでなく持久力が重要となる──そんなADCCルールの性質を十分に活かした戦いを実行したジオゴが、親友にして最大のライバルとの大一番を制してみせた。

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ABEMA ADCC2022 MMA MMAPLANET o コール・アバテ ジオゴ・ヘイス ファブリシオ・アンドレイ

【ADCC2022】66キロ級1回戦。本命ファブリシオ・アンドレイが、対抗コール・アバテに初戦でレフ判定勝ち

【写真】いやぁ、なぜ1回戦?という顔合わせ(C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第8 回は66キロ級の優勝候補筆頭、ファブリシオ・アンドレイと対抗馬と目されていたコール・アバテ──早過ぎる顔合わせとなった1回戦の模様をお伝えしたい。


<66キロ級1回戦/10分1R&ExR>
ファブリシオ・アンドレイ(ブラジル)
Def.ExR by Ref decision
コール・アバテ(米国)

今年の世界柔術フェザー級王者にしてチームメイトのジオゴ・ヘイスとともに優勝候補筆頭に挙げられるファブリシオ・アンドレイの初戦の相手は、最年少17歳にしてやはり大きな期待を集めるAOJの新星コール・アバテ──豪華メンバーが揃ったこの階級における、 1回戦の最注目カードだ。

それにしても、このいきなりの大一番の勝者が2回戦でジオゴと当たってしまうのだから、16人ブラケットの中の1ブロック4人の中に、最注目選手3人が固まってしまったこととなる。

足を振り上げるいつものポーズを取ったファブリシオは、試合前から気合十分。対するアバテは開始と同時に迷わず座りこむと、ファブリシオの右足にハーフで絡む。

ファブリシオが距離を取ると、アバテは素早くアームドラッグで左腕を引いて崩してから左足に絡んでいく──が、ファブリシオは足を抜く。逆にアバテがシットアップで上を取るが、ファブリシオが距離を作ると無理に追いかけずに下を取り直した。

その後も下から足を狙ってゆくアバテと、極めさせないファブリシオの攻防が続く。時折りアバテはシットアップも試みるが、ファブリシオが反応して立ち上がり、下から仕切り直すという状態が続く。

やがて5分が過ぎ加点時間帯に。ダブルガードから足を取り合う両者。アバテは右腕にアームドラッグを仕掛けてから背後に回りかけるが、ファブリシオは回転を続けて距離を作り、ダブルガードに戻してみせた。

さらにアバテはシットアップを狙うが、ファブリシオは腕を伸ばしてディフェンス。本戦で点を取って勝ち切りたいアバテと、延長に持ち込んでスタンド再開からレスリングで勝負したいファブリシオ、両者の思惑が見え隠れする。本戦終了寸前にファブリシオがシットアップし、アバテの下からの煽りを耐えたところで、10分が経過した。

スタンドから再開された延長戦。ファブリシオがシュートインするが、アバテがスプロール。ここからファブリシオの左足を抱えて回して崩しにかかるアバテは、さらにダースチョークのグリップを狙った後で、ファブリシオの左足も巻き込んで上からのクレイドルの形でグリップを作って体勢を潰してゆく。

それでもファブリシオが体を起こすと、アバテは斜めからボディロック。ここでファブリシオは小手に巻いてからの内股を仕掛け、振りほどいてみせた。

試合がスタンドに戻ると再びテイクダウンを狙うファブリシオだが、アバテは下がって回避する。残り2分半、ファブリシオがまたしてもシュートイン。今度は深くダブルに入ってアバテに尻餅を付かせた。

が、アバテは両腕をマットにポストして上半身は起こした状態をキープし、体をずらして背中を向けると同時に前転してスクランブル。ポイントを失うことなく離れてみせた。

スタンドから再開。序盤に力を温存しスタミナ十分のファブリシオは、アバテの首を抑えては足を飛ばす。アバテもヒザを付いてテイクダウンを狙うが、ファブリシオは距離を取る。逆にファブリシオがダブルレッグで深く入り、アバテの右足を抱えてシングルに移行。片足で耐えるアバテを場外際まで押していくが、ここはブレイクに。

残り1分。足を飛ばすファブリシオ。両者ともにテイクダウンを狙って入るが、そのたびに距離を取ってディフェンスされる。残り5秒、ヒザを付いたアバテは強引に右足を取りにゆくが、ファブリシオがそれを回転して切りバックに回りかけたところで試合は終了した。

ガッツポーズを取って勝利をアピールする両者。本戦で下から積極的に仕掛け、バックに周りかける場面を作ったのはアバテで、延長のテイクダウン合戦を支配し、相手に尻餅を着かせたのはファブリシオだ。

解釈次第でどちらにも傾き得ると思われたレフェリー判定は、ファブリシオに。難敵から薄氷の勝利を得た勝者は、歓喜の咆哮を連発した。本戦では出力を抑えてアバテの下からの攻撃を防ぎ、延長のレスリング勝負で優位に立って判定を取る。自らの強みをルールにうまく当てはめたファブリシオの作戦勝ちといえる。

世界最高のスキルを持つグラップラー同士の戦いとしては、お互いが持てる力を出し尽くすような見応えのある戦いにならなかった感は否めないが、それもこのADCCルールの綾なのだろう。とまれ、紙一重の戦いの末に1回戦最注目のカードを制したファブリシオが、盟友ジオゴ・ヘイスとの準々決勝──事実上の決勝とも思われる大一番だ──に駒を進めた。

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