【写真】チハヤフル戦を経て、中川は何かスッキリした表情を浮かべた(C)SHOJIRO KAMEIKE
30日(水)会場非公開で開催される配信イベントBreakthrough Combat01にて、中川晧貴が中原由貴とProgressルールで対戦する。
Text by Shojiro Kameike
今年7月のGladiatorフェザー級挑戦者決定トーナメントの初戦で、チハヤフル・ズッキーニョスに判定負けを喫した中川。試合後、バックステージでの落ち込み様を見た関係者からは「このまま中川はMMAを辞めしまうのでは……」という声も聞かれた。そんな中川がプログレスのケージグラップリングから復活するまでの道のりには、所属する道場リライアブルならではの雰囲気があった。
――今回プログレス初挑戦が決まりました。中川選手としてはMMAで敗れたあとの復帰戦だけに、MMAを戦いたいという気持ちはなかったですか。
「いや、それはなかったです。『おぉグラップリングなんや』と思って。今までグラップリングの試合に出たことがなかったんですよ」
――えぇっ!? それは意外です。柔道ベースでMMAのファイトスタイルを考えても、グラップリングマッチの経験があると思っていました。
「実は初めてなんですよ(笑)。自分としては新鮮な感じです。グラップリングでどこまでやれるかな、というワクワク感があります」
――これまでグラップリングマッチに出場する機会はなかったのですか。
「柔術はやりたいとは思っていたんです。最近は同じジムの石田拓穂とかが柔術の試合に出ていて。考えていたのは、それぐらいですね」
――しかし、柔術の試合に出たことはない?
「はい、出たことはないです(苦笑)。ウチのジムでも以前、上田祐起がグラジでプログレスに出たことがあるぐらいじゃないですか」
――これまで中川選手が出場している大会でも、プログレスの試合は行われていました。中川選手としては、どのように見ていましたか。
「もちろん会場でも観てはいました。でも自分がやるとは思っていなかったので――メチャクチャ気を抜いていましたね」
――アハハハ。単に一人の観客として観ていた、と。
「はい(笑)。自分は寝技が得意というか、MMAの中でも寝技をやる選手なので、観ていて展開がある試合は面白かったです。ただ、今もまだルールがピンと来ていなくて。要はMMAとして有利なポジションを取ると、ポイントが入るということですよね」
――それが一番分かりやすい言葉です。ポイントが入るのはテイクダウン、リバーサル、バックグラブ、そしてスクランブルで立ち上がる……全てMMAのためのグラップリング、というルールになっています。対して、引き込んだら相手にポイントが与えられます。
「それでも極める自信がある選手は、引き込んで極めたりしていますよね。森戸選手とか」
――森戸選手は先にポイントでリードし、引き込んでも逆転されないほど引き離してから極めに行くパターンがありますね。
「あぁ、なるほど。そう聞いて安心しました。自分は引き込むのが好きじゃないし、テイクダウンしてバックに回るのが得意なので。そこでポイントを取っていれば――」
――個人的には中川選手の試合スタイルを考えると、得意なルールではないかと思っています。その前に前回のチハヤフル戦について、お聞きします。本人としては判定で勝っていると思っていましたか。
「……そうですね。ギリギリで勝っているとは思いました」
――実際、中川選手が勝っていたという声も聞かれます。とはいえ負けは負け。その事実をどう受け止めていたのか。
「……」
――試合後、関係者から「心配になるほど中川選手が落ち込んでいた」と聞きました。
「……、……そうですね。まずは代表(田中淳リライアブル代表)に対して、メチャクチャ申し訳ないと思って。ジムとしてチハヤフル選手に連敗中だったし、そこで自分も負けてジムの看板に泥を塗ってしまった。あとは試合でチャンスもあったのに、極めきれなかった悔しさもありました」
――「あの落ち込み具合から立ち直ることができるのか」という心配の声もありました。
「だいぶ悩みました。『ここで負けていて、俺は今後どうするんやろう?』って。やけど自分の中では負けたと思えない、というか。判定は負けやったけど、自分の中では負けていない。すごく中途半端な気持ちやったんですよ」
――試合で完膚なきまでに叩きのめされた末の判定負けであれば、その時点で諦めていたかもしれないですね。
「確かに、そんな負け方やったら自分も納得できると思うんです。でも納得できんかった。そんな頃に代表が『そろそろジムに来いよ』と連絡をくれて――代表からの連絡が嬉しかったです。やっぱり負けは負けで、みんなに顔も合わせにくかったし。代表から言われんかったら、そのままジムに戻っていなかったかもしれないです」
――田中代表も、そんな中川選手の気持ちに気づいて連絡したのでしょう。
「代表も気さくな感じで連絡をくれて、ジムに行ったら言われたんです。『お前が諦めんかったら俺たちもサポートするし、まだまだ強くなれる』って。その言葉を聞いて自分も悔し涙が出ました。すると、さらに代表が『涙が出るぐらいやから、まだまだ頑張れるぞ』と――そう聞いて、自分も諦めずに頑張ろうと思いました」
――素晴らしいですね。MMAを続けると決めて次の目標などは考えましたか。
「今の段階では、何も言えないですよね。トーナメントも初戦敗退で、そんな自分に何ができるのか。だから、組まれた試合をやっていく。何でもやってみる。そう考えました。
もうひとつ――自分のキャリアについて考えないといけない、と思うようにはなりました。今までも行き当たりばったりなことは多かったんです。試合のオファーが来たら受けて、試合をする。でもこれからは、ちゃんと先を見据えて戦っていかないといけない。どんどん自分からもチャンスを掴むようにしないとダメやな、って」
――その一環として、今回のプログレス挑戦があると。
「対戦相手は二転三転しましたけど、どれも名前のある相手でした。自分からオイシイ話です。最終的に決まったのが中原選手って――まさかのONEやRIZINで試合をしているビッグネームで。自分からすれば雲の上の選手じゃないですか。中原選手もMMAの試合しか視ていないですけど、柔道ベースでグラップリングも強いと思います」
――MMAでの組み方は、似ていますよね。スタンドの組みはボディロックで始まり……。
「はい。そこは自分の強みでもあるので、負けないです。試合は最初に相手のグラップリングを確かめたいけど、5分2Rやからそんな時間もない。早めに仕掛けていかないといけないなら、最初から自分が攻めていきますよ。初のグラップリングで、中原選手というビッグネームを乗り越える新たな中川晧貴を視てください!」
■視聴方法(予定)
10月30日(水)
午後6時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル
■Breakthrough Combat01対戦カード
<バンタム級/5分3R>
吉野光(日本)
シンバートル・バットエルデネ(モンゴル)
<Progress暫定ウェルター級選手権試合/5分3R>
[王者]森戸新士(日本)
[挑戦者]泉武志(日本)
<58キロ契約/5分3R>
風我(日本)
オトゴンバートル・ボルドバートル(モンゴル)
<Progress72キロ契約/5分2R>
中原由貴(日本)
中川晧貴(日本)
<フライ級/5分3R>
チョ・ジュンゴン(韓国)
久保健太(日本)
<Progressミドル級/5分2R>
林源平(日本)
有松息吹(日本)