【写真】諦めたら、夢は実現しない。それは絶対であり、だらこそ難しい――ことが鮮明になるクァン・リーの言葉の数々だった (C)MMAPLANET
本日23日(土・現地時間)、マカオはコタイにあるギャラクシー・アリーナで開催されるUFN248:UFN on ESPN+106「Yan vs Figueiredo」。第2試合で前回のRoad to UFCバンタム級準優勝者シャオ・ロンを相手に、クァン・リーがオクタゴン2戦目を戦う。
Text by Manabu Takashima
10代でベトナムから米国に移り住んだクォン・リーのプロデビューは実に29歳と11カ月のとき。2021年9月に30歳直前にプロMMAファイター人生の一歩を踏み始めた彼は、今年の8月にUFCとサイン――それは、当然ショートノーティスの代役出場の要請を受けてからだった。
野瀬翔平、上久保周哉の夢を潰したシャオ・ロンを相手に、マカオの地でオクタゴン初勝利を目指すクォン・リーにその心境を尋ねた。
――クァンはベトナム生まれで、家族で米国に移り住んだそうですね。
「サイゴンの近郊で生まれ育って、14歳の時に米国に移住したんだ。両親と祖母が僕や兄弟、姉妹の将来を考えて」
――今から20年ほど前と考えると、ベトナム戦争云々の時代に家族と米国に渡ったカン・リーやナム・ファンの世代とは違うわけですが、それでもベトナムから米国に移り住む人は続いているのですか。
「いつの時代だって皆、米国で生活をしたいと思っているよ(笑)。今は違うかもしれないけど、僕らが米国に移住した時までは少なくともベトナムは貧しい国だったから。米国には良い仕事がある。つまり良い生活がある。だから僕の両親も米国移住を決めたんだよ」
――自分はコロナ前にベトナムを訪れたことがあるのですが、市井の人々が過去に経験した共産圏とは違うような気がしました。みな、明るくて。大雨が突然降っても、なんかお互いの顔を見て笑いあっているような。
「政治の話はあまりしたくないけど、僕らが育った環境は近所の人間のことを皆が理解していて、誰かが困ると助ける。何か良いことがあると、一緒に喜ぶ。そんな風だったんだよ」
――なるほど、50年前の日本もそうでした。醤油が切れると、お隣さんに貰いに行くような。
「そうそう、まさにそれだよ。助け合い、喜び合う。それが今もベトナムには残っているんだと思う。そこは米国、僕らが生活するようになったミネソタとも違っているよ。米国は自分たちの家族だけで生きているから。でもベトナムに住んでいた頃は、街の全員を知っていたよ」
――今、ミネソタと言われましたか。
「うん。ミネソタだ」
――カリフォルニアでなく、クァンの一家はベトナムとは全く違う気候で、冬は極寒の地に移り住んだのですか。
「全くだよ。その理由は祖母に尋ねてよ(笑))。雪なんてみたこともなかったし、信じられないような寒さで……。あそこで暮らしていることが信じられなかった。もう20年が過ぎたけど、今でも寒さには慣れない(苦笑)。それに僕が通いだした学校で、ベトナム人は僕だけ。カリフォルニアとは全く違っていたよ」
――やはり移住した直後は厳しいこともありましたか。
「僕は全く英語が話せなかったから。皆のなかでポツンと浮いた状態だった。でも、言葉が話せるようになると、ちゃんとやっていけるようになったよ」
――ところでベトナム時代には何か格闘技の経験があったのですか。
「ベトナムに住んでいた時はおろか、22歳になるまでマーシャルアーツの経験はなかったよ。ただUFCを視ることは好きだった。やっぱりカン・リーは僕にとってスーパースターだし、UFCはどの試合も凄かった。で、自分でもトライしたくなったんだ。僕も戦えるのかなって」
――22歳、遅いという風に思うことは?
「確かに22歳や23歳でトレーニングを始めること自体が、ディスアドバンテージだよね。でもアマチュアで最初に何試合が勝つことができて、もう辞められなくなった。勝った時の高揚感は他の生活では経験できないものだったから」
――そのアマチュアですが、2015年から5年間も続けていました。凄く珍しいことだと思います。
「それだけ実績も、プロでやっていける確証もなかったから。練習だって、今のように時間を割くことはできていなかったしね。ただ28歳、29歳になってUFCまでいけると思えるようになった。そして、毎日練習するようになったんだ」
――30歳の壁がUFCには存在していると、長い間言われてきました。実際にコンテンダーシリーズでもダナは常に若い選手を欲していると口にしています。
「そこはずっと心配してきた。UFCにいくまで6勝0敗、7勝0敗とキャリアを積み、そこからコンテンダーシリーズがある。じゃあ、僕は何歳になってしまうんだろうとは考えていたよ。とにかく僕ができることは、勝ち続けることだった。でも実際に5勝0敗になっても6勝0敗になっても、UFCから声は掛からなかった。あの時は凄く怖かったよ」
――LFAで7勝を挙げているファイターも珍しいかもしれないです。そしてティオル・タンを破り8勝目を挙げると、コンテンダーシリーズ出場が決まりました。ところが9月17日にコンテンダーシリーズでの試合が予定されているなかで、8月10日に急転直下のUFCデビューを果たすことになります。
「コンテンダーシリーズ出場に向けて調整中に、メディカルを受けた。その1時間後に『試合がしたい? 相手は強いけど』っていう連絡があったんだ。『イエス、誰とでも戦う』と即答して、UFCとサインした(笑)。
UFCで戦うことは、僕にとって全てだった。だから、クリス(グティエレス)との試合を受けること。勝ち負け以上に、その機会が巡ってきたことが重要だったんだ」
――つまりは今回のシャオ・ロン戦が本当の意味でUFCキャリアの第一歩となるわけですね。そのシャオ・ロンの印象を教えてください。
「タフで、気持ちの強いファイターだよ。それに26勝9敗と、僕の3倍もキャリアがある。彼はテイクダウン防御力が高く、スタンドで戦うことを好んでいる。ファイトはタフになるだろうけど、打撃に関しては僕の方がテクニカルだ。そして組み技に関しては、明らかに僕にアドバンテージがあることは間違いない。だから、どの局面でも僕が上回るだろし、ここでUFC初勝利を挙げる。UFCと契約ができたから、次は勝利を手にすること。それが僕の夢だからね」
■視聴方法(予定)
11月23日(土・日本時間)
午後5 時00分~UFC FIGHT PASS
午後4時45分~U-NEXT
■UFN248計量結果
<バンタム級/5分5R>
ピョートル・ヤン: 135.5ポンド(61.46キロ)
デイヴィソン・フィゲイレド: 135ポンド(61.24キロ)
<女子ストロー級/5分3R>
イェン・シャオナン: 116ポンド(52.62キロ)
タバタ・ヒッチ: 115.5ポンド(52.38キロ)
<ウェルター級/5分3R>
ソン・ケナン: 171ポンド(77.56キロ)
ムスリム・サリコフ: 170.5ポンド(77.34キロ)
<女子フライ級/5分3R>
ワン・ソン: 126ポンド(57.15キロ)
ガブリエラ・フェルナンジス: 126ポンド(57.15キロ)
<ライトヘビー級/5分3R>
ヴォルカン・オズデミア: 206ポンド(93.44キロ)
カーロス・アルバーグ: 205.5ポンド(93.21キロ)
<ライトヘビー級/5分3R>
オジー・ディアス: 205ポンド(92.99キロ)
チャン・ミンヤン: 205ポンド(92.99キロ)
<Road to UFCバンタム級決勝/5分3R>
ユ・スヨン: 135.5ポンド(61.46キロ)
チィルイイースー・バールガン: 135ポンド(61.24キロ)
<Road to UFCフライ級決勝/5分3R>
チェ・ドンフン(韓国)
キル・シン・サホタ: 126ポンド(57.15キロ)
<Road to UFC女子ストロー級決勝/5分3R>
シー・ミン: 115.5ポンド(52.38キロ)
フン・シャオカン: 115ポンド(52.16キロ)
<フライ級/5分3R>
カーロス・ヘルナンデス: 125.5ポンド(56.92キロ)
ニャムジャルガル・トゥメンデムベレエル: 125.5ポンド(56.92キロ)
<フライ級/5分3R>
ロナー・カヴァナ: 126ポンド(57.15キロ)
ホセ・オチョア: 125ポンド(56.7キロ)
<バンタム級/5分3R>
シャオ・ロン: 135ポンド(61.24キロ)
クァン・リー: 136ポンド(61.69キロ)
<ライト級/5分3R>
マァフゥシャトゥ: 155.5ポンド(70.53キロ)
ニコラス・モッタ: 155ポンド(70.31キロ)