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【SUPER RIZIN03】斎藤裕戦へ、久保優太「向き合った人にしか分からない恐怖を与えることができる」

【写真】ファイトIQが高い。技術論が、ずば抜けて楽しかったです (C)MMAPLANET

明後日28日(日)に、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、久保優太が斎藤裕に挑む。日本人で唯一旧K-1、GLORY、新K-1でベルトを巻いた天才は、MMAに転じて色物と思われかねない言動で注目を集めていたが、3月の高橋遼伍戦で全てをひっくり返す勝利を手にした。
Text by Manabu Takashima

その結果、早くも斎藤裕という長くRIZINフェザー級のトップで戦う元修斗世界王者と相まみえることとなった。ムエタイ、K-1、オフェンシブ&ディフェンシブと自らの戦いを使い分けることができる久保は、防御力の高さも一流のなかの一流だ。とはいえ組み技歴はまだまだ短い。足を狙ったテイクダウンに対して、防御力と一体化したカウンターを射抜くことができるのか。

卓越した打撃力を支えるファイトIQの高さは、MMAでも絶対に活かされるであろう久保。秒殺一本負け、コントールされ続けての判定負けとなる可能性がいくらでもある斎藤戦とはいえ、久保の話に耳を傾けると一か八かでないKO勝ちの可能性も同様にあるように思えてきた(※取材は5月24日の超RIZIN03の会見終了後に行われた)。


打撃に関しても、伸びしろがある。そこがMMAの面白いところ

──MMAPLANETでは中村拓己氏のインタビューを受けて頂いたことがあるのですが、個人的には初めて話を聞かせていただくことになります。宜しくお願いします。

「アッ、ハイ。宜しくお願いします」

──正直に申し上げて、久保選手が真剣にMMAに取り組んでいることを高橋遼伍選手との試合まで理解していなかったです。色物かと勝手に思っており、申し訳ありませんでした。

「いえ、それはもう皆さんが思っていたことだと思います。K-1の時から、RIZINになっても色々と炎上騒ぎも起こしてきましたので。エンタメ寄りだったのも事実ですし、そのように思われて然りだと思っています」

──とはいえ中村氏もそうですが、MMAPLANETで執筆している亀池聖二朗氏からも「誤解していますよ。格闘技に対して、あれだけ真剣に向き合う選手はあまりいない。リング外のやり取りで、久保優太をそのように思っているなら、まさに乗らせているということです」と以前から忠告を受けていました。

「アッ、ハイ。ありがとうございます。人って誰しもが二面性を持っていて、そっちの方がフォーカスされるのは自分としても、格闘技は話題にして貰わないといけないので……。格闘技って色々な種類や団体があるじゃないですか。自分のパフォーマンスや実力をどこで証明するのかと言ったら、やっぱり横並びに一線にあるよりも、注目される試合だったり、団体で戦うことだと思っています」

──そういう風に注目をされ、MMAでも実力を示す時が来るという想いだったのでしょうか。

「いえ、そういうことよりも、僕はとにかく格闘技が大好きなんです。格闘技をやるのも勿論ですけど、見るのも大好きで。K-1を引退した時には30歳ぐらいですかね。13年ぐらいプロで立ち技をやっていたので、やっぱり飽きてしまっていたんです。こういう言い方もアレなんですけど、立ち技は究めたと思っているので」

──究めたからこそ、MMAは立ち技より大変という言葉を発しているのでしょうか。

「旧K-1、GLORY、新K-1の全てでチャンピオンになったのは僕だけなんです。その実績を客観的に、俯瞰して見た時に『この競技は究めた』と思えました。だから新しい競技を求め、MMAでまた学ぶことがたくさんありました。きっかけは朝倉未来選手や矢地祐介選手とYouTubeをやらせてもらったことなんですけど、寝技になると同じ格闘技でもこんなに自分は何もできないんだと思い知らされて。

MMAっていうと何でも有りに凄く近いじゃないですか。ということはMMAファイターは、キックボクサーは寝たら雑魚なんだろうって思いますよね。リスペクトはしていても、腹の中ではそういう気持ちでいるんじゃいかと。そのコンプレックスが根底にありました。だからボクシングに行こうとも考えたのですが、MMAをやろうと思ったんです」

──ボクシングにいけば持っているモノをより深く、先鋭化していく作業が必要だったかと思います。対して、MMAだと一旦は持っているモノを忘れて、組みの技術を万遍なく学び直す必要があったのではないかと。それでもMMAに転向することに躊躇することはなかったですか。

「躊躇というか、太田忍選手に負けてから甘くないなと気づきました。アハハハハ。正直、当てれば勝てるだろうと思っていたんです」

──あぁ、キックの人はそういう風に思うのは当然かと。ただし、その当てるのがキックとは違いますし。

「開始直後に自分の前蹴りが顔面に入って、太田選手が倒れました。でも、投げられて足が折れました。全くテイクダウン狙いも切れなかったですし、寝技ではスイープもできずに太田選手の攻撃を凌ぐこと、それを体に叩き込むことしか準備できず、それがあの時点での限界でした。でも、あの敗北があったからMMAにより興味を持つようになったんです。僕はこう見えて、メチャクチャ練習するんですよ」

──こう見えても……(笑)。

「僕世間では投資家だとか、ビジネス面だったり、今では戸籍が外れているので元妻なのですが、2人のやり取りとか見て本当に格闘技をやっているのかと思われることがあると思います。でも、格闘技が好きなんです。応援してくれる人の期待にも応えたいですけど、何よりも自分は本当に格闘技が好きなんです。

練習をすることが、凄く好きで。学ぶことがメチャクチャ楽しくて。MMAがどんどん好きになってきたし、成長過程のなかでRIZINのチャンピオンになるという目標があります。その目標を達成するために日々努力をする形です」

──組み技はゼロから学ぶ。対して、打撃は究めているのにアジャストが必要になったかと。そして、打撃の強さを見事に生かせるようになったのが、高橋戦だったと思います。

「自分の打撃に修正が必要なことに対しては、もう日々戦っています。K-1時代の打撃が10だとすると、MMAで出せる打撃は半分ぐらいです。なおかつ、その半分のなかで今の僕では10パーセントや20パーセントしか出せていないです。

それを日々のトレーニングで、どんどんアップデートしていってなるべく5割に近づける。その知識だけは、僕の頭の中にあります」

『打撃で何が得意ですか』と尋ねられると、苦手なモノがないんです。全部が得意

──究めているから、5割を捨てることができるのですね。

「そうですね。残りの5割を練習だけでなく、試合で出すことが重要になってきます。正直、前回の試合でも練習の半分ぐらいしか出せていません。やはり、想像と違うところが多かったです。

だからこそ『もっと出せる』、『もっとできる』という気持ちがあります。そう思えるということは打撃に関しても、伸びしろがある。そこがMMAの面白いところですよね」

──高橋戦後に初めてキック時代の動画をチェックさせてもらったのですが、左ミドルと左ストレートが印象に残りました。その左からの攻撃を高橋戦ではほぼ見せていないです。

「左ミドルと左ストレート……距離を取って戦うようになったのはK-1時代の後半からなんです。初期はムエタイスタイルで、左ミドルと首相撲&ヒザ蹴りでパンチは一切できなかった。20代になってボクシングを学んで、日本ランカーの人達ともスパーリングができるレベルになると、パンチでガンガンいくように変わりました。

ただガンガンいくと初回にダウンを奪っても、3Rに逆転KO負けをすることがありました。そういうことが3度あったので、そこから判定でも勝てるスタイルになりました。K-1時代の最後の3年間は、ディフェンシブなスタイルでした。

その3つのスタイルで、どれを使うかという選択はある程度できます。旧K-1とGloryではワンキャッチが許されていました。新生K-1になるとキャッチが禁止になったことで、低いミドルが有効になりました。ただ、その蹴りはMMAでは使えません。簡単にキャッチされて、テイクダウンを取られてしまいます。だから、そうなると高いミドルになります。

そういう風に使える技、使えない技というのは自分自身で取捨選択しています。ただ、自分は『打撃で何が得意ですか』と尋ねられると、苦手なモノがないんです。全部が得意、8歳の時から立ち技格闘技をやっているので、苦手なモノがない。攻撃もそうだし、ディフェンスもそうなんです。ディフェンスが得意なんです」

──トップレベルで安定した成績を残すために高度な防御力は欠かせない要素ですね。

「ハイ。ただし、ディフェンスが得意な選手はあまりいなくて。だから僕の防御力は、評価されているんだと思います」

根っから格闘技が好きなので、何かに常に挑戦したい夢追い人なんです

──高橋戦でも2R以降は、ほぼ貰っていなかったです。とはいえ組みが加わったMMAにおいて──特に次の斎藤裕選手との試合でも、その防衛システムは機能するのでしょうか。

「確かに高橋遼伍選手と試合をした時も、1Rには貰っています。そこから修正をしたので、2Rと3Rは貰わなかったです。ただ斎藤選手との試合では、プランを変えて修正をしないと自分の防衛システムは働かないと思います。

斎藤選手は高橋選手より、テイクダウンを狙ってくるでしょうし。ニュー防衛システムが必要になってきます。立ち技の場合はテイクダウンがないじゃないですが、MMAは攻撃側の選択肢が増えて、ディフェンスをする方にも当てはまります。だから気を付けないといけないことが、増えます。

同時にそうなると、複雑なフェイントは必要なくなります。K-1の時はもっと騙し合いが多かったです。3、4、5段階で罠を仕掛けないといけないのが、MMAだと1と2。それだけ省略した攻撃を駆使し、ディフェンスの準備をするだけです。MMAは攻撃手段が多いので、何段階も網を張っていては先にやられてしまいます」

──いやぁ、凄く興味深いです。例えば昨年4月の斎藤×平本蓮戦ですが、平本選手はテイクダウン防御に成長の跡が感じられる一方で、TD防御が念頭にあって打撃の威力は本来持つモノと比較すると落ちていたと思います。

「テイクダウンを警戒することで、斎藤選手のパンチを被弾もしました。それは自分にも有り得ます。ただ、その解決策はもうあって練習ではできています。でも本番と練習はやはり別モノで。高橋戦で初回に効かされて、そこから修正したように、あとは本番で使えるようになるまで、練習で落としこむことができるかです」

──試合まで2カ月、打撃を斎藤選手に当てる自信はどれほどありますか。

「自信ですか? 今は正直、ないです。ないですけど、これだけ応援してくださる人達がいるので。僕をサポートしてくれるファンの皆さんやスポンサーの方たちって、僕と一緒に夢を追ってくれているんです。

僕は言ったら、夢追い人なんですよ。正直、K-1で3年間防衛戦を戦っている間に、いくらでも引退を選ぶことはできました。でも自分は根っから格闘技が好きなので、何かに常に挑戦したい夢追い人なんです。だから、この夢に一緒に乗っかって応援してくださる人の期待に応えたい。この2カ月で、自信をどんどん積み上げていくという作業に入ります。

高橋選手が2Rと3Rに組みを見せなかったことを疑問視する声もありました。僕としても、低く足をとりにくるテイクダウンを待っていました。ヒザを合わせようと思っていたので。でも高橋選手は仕掛けてこなかった。ストレートやヒザという僕のカウンターは、向き合った人にしか分からない恐怖を与えることができると思っています。

それだけ僕のカウンターは殺傷能力がありますし、『これを貰ったらヤバい』というプレッシャーを与えることができると思っています。その打撃には自信があります。会見で扇久保(博正)選手や斎藤選手も仰っていましたよね──『MMAをずっと続けてきたから負けられない』と」

──ハイ。

「僕はこの打撃を──8歳から立ち技格闘技でずっとやってきました。そういう身としては、打撃力で絶対に負けちゃいけないんです。負けないという自信もあります。それを生かして、そこを見せて当日はノックアウトしたいなと思っています」

■視聴方法(予定)
7月28日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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【SUPER RIZIN03】この夏、一番危険な戦い。扇久保博正「初めての感情。本当に完膚なきまでやっつけたい」

【写真】これは──2カ月前だからできたインタビュー。メディアデーの最後に頭を使わせてしまい、終わった時には扇久保から安堵のような笑みが見られた(C)MMAPLANET

28日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、神龍誠と対戦する扇久保博正。正式発表から5月の記者会見を経て、公開練習──そしてファイトウィークと試合が近づいてきても、その緊張感は高まるばかりだ。
Text by Manabu Takashima

格闘技は性善説に基づいて行われるもの。いや、あらゆるスポーツばかりか人間社会自体が性善説で成立している。そうでなければ車の運転もできないし、屋台でアメリカンドッグを買うこともできないだろう。

それが相手と争う競技、ましてや勝利を得るために目の前の人間を殴り蹴りし、倒して絞めるMMAは、自制心が欠かせない。タガが外れる瞬間、外すことができるファイターは強いが、外れっぱなしでは人間社会を生きていくことはできない。

どれだけ試合前にトラッシュトークをしようが、戦い終わってノーサイド。その姿勢こそが、プロが人前で戦う戦いだ。だからこそ、指導者と指導を受ける者として過ごした時代の因縁が、再燃しているこの戦いは危険だ。実際、扇久保は私生活を持ち出して対戦相手を嫌う様な言動をしたことなど過去になかった。「この感情が試合に影響することはない」という扇久保だが、神龍に対する呼称がインタビュー中も「彼」、「アイツ」、そして「誠」と変わり、一人称も「僕」と「俺」が交錯し続けていた。プロとして受ける取材と、感情の狭間に扇久保はあったように思われる。

そんな彼に神龍戦だけでなく超RIZIN03における立ち技格闘技出身ファイターの台頭を尋ねると、協調性と自負が感じられる──そう彼の人間性が溢れ出るような返答を聞くことができた。(※取材は5月24日の超RIZIN03の会見終了後に行われた)。
る。


早く、分からせてやりたいなって。彼の強さを認めた上で、そう思っています

──会見では神龍選手に対して、盛り上げるために一連の発言をしたのでしょうか。それとも何か身の内に想いがあって、あの言葉を発したのですか。

「榊原さんもリング上で『因縁がある』という風に言っていて、でもファンの皆はどういう因縁があるのか分からなかったんじゃないかと。その状況でも彼は、その因縁を説明をすることはなく普通に『フライ級の1番を決めます』という感じでるだろうなって予想していたんです。そうしたら、案の定そのままだったので。まぁ、盛り上げるためといえば盛り上げるためだったのかなぁ……」

──「いいか、お前」と話しかけておきながら、神龍選手が応えようとすると「黙れ。話を聞け」というのは、かなり理不尽に感じられました(笑)。

「アハハハハ」

──神龍選手の性格を考えると、トラッシュトークの枠を超越した本気モードの罵り合いになるという恐れもありました。

「そうなんですよ……」

──「指導員として、おかしい」という発言は完全にガチでしたね。

「でも、正直を言えばアイツとそれほど因縁があるとは思っていないんですよ(苦笑)。言った方は覚えていないですからね(笑)。でも、言われた方は凄く覚えているというパターンですね。それこそ会見で言ったトイレ掃除のくだりも、僕は全く覚えていなかったですからね。

第三者からアイツが根に持っていると聞いて。でも、それぐらいのこと皆にやっていますし。彼はトイレ掃除が嫌だったのでしょうね」

──そもそも神龍選手とはどれぐらいの期間、どの程度の付き合いをされていたのでしょうか。

「いつ入会したのかは覚えていないですけど、最初はキッズクラスに来ていたはずです。それから徐々に一般クラス、そしてプロ練にも出始めて。どんどん強くなってきて。何がきっかけで強くなったのかは記憶にはないのですが、凄く強かったことは確かです。

練習でも人が使わない、突拍子もない技。プロレスの技を使ったりしていましたね。もともとプロレスラーになりたかったんですよね。突拍子もないことを普通にやってのける子なんで、それが格闘技にも出てしますよね」

──ポテンシャルは認めていたと。

「ハイ。強くなると思っていました。体も柔軟で、やり辛さを感じていましたし。ただ……指導という面では付きっきりでやったり、ミットをずっと持っていたとかっていうことは、僕の記憶にはないです。

一般のテクニッククラスに誠が来ていた。そういう感じですね。あとは和田竜光選手とのタイトル戦とか、デビュー戦でセコンドに就いているんですよ。本当にイチ後輩というか、生徒という感じで見ていました」

──世代が違いますしね。松根良太&扇久保博正のような関係に扇久保博正と高橋誠もなり得たということではないですか。

「僕と誠が、松根さんと僕のような関係に? そういう風になろうとしているのかな……というのは、誠から感じることはありました」

──その気持ちに応えることができなかった?

「う~ん、これはもう詳細を話すと試合を盛り上げるためのインタビューに相応しくない内容になってしまうので……。ただ、常識が欠如したところを指摘したりはしました。そうですね、僕としては『誠な、世の中ってのはな……』なんて社会性を身に着けるために話をしたつもりではいました。

ちょっとね、浮いていたところがあったので。強くなるためにも、皆とコミュニケーションを取った方が良いというのが僕の考えだったし、そのためにはこうした方が良くないかということを伝えましたね。そうじゃないと、あれ以上強くなれないと思ったので。

でも、彼は僕が意地悪をしていると捉えたのかなかって。でも、俺ももっと変なことを言っていたかもしれないですね。まぁ、ウチのジムから離れた選手も当然いますけど、誠は特殊ですね。アイツは本当に、ウチのジムのカラーには合わない奴でした」

──リングの上に私怨があると、怖いです。

「これは僕も長い間戦ってきて、初めての感情ですね。本当に完膚なきまでやっつけたいと思っています」

──自分らのような生き方だと、それこそ人を本気で殴るという行為は若い頃に数えるほどあったに過ぎないです。だから、MMAファイターたちが試合で殴って、絞めて、勝敗もついている間柄で、一緒に練習をして会話をする。そこが凄いと素直に思うんです。自分だと、喧嘩に負けた相手は一生忘れないし、世間が許すなら今でも仕返しがしたい。ただ、そうやって会話や練習ができる人が戦うから、格闘技って成り立つんだと。

「そういう部分でいうと、今回の試合は本当にヤバいですよ」

──その感情がMMAファイターとして、扇久保選手の磁場を狂わせることはないですか。

「いや、全然ないですよ。早く戦いたい。早く、分からせてやりたいなって。彼の強さを認めた上で、そう思っています」

──その感情が勝負をするうえで、余計だと感じることは?

「あぁ、そこは大丈夫です。その感情に引きずられるようなことはないです。そこは自分に自信を持っています。自分のファイトスタイルにないことを、リングの上でやるつもりはない。誠が何もできなかったと思うような試合、そういう風な戦いにします。分からせてやります」

──あの若さと自信、そして実績もある神龍選手をそこまでにする自信があるわけですね。

「それこそ、肌を合わせたことがあるので。どこが強いのか、どこが弱いかも分かっています。彼の強いところを一つ、一つ潰します」

──弱さがあるとすれば、どういう部分でしょうか。

2018年4月28日の和田竜光戦。3Rでなく、2Rに向かう前の神龍

「気持ちでしょうね。

さっきも言いましたが、和田選手との試合でセコンドに就いて、3Rが始まる前に泣きそうになった顔を覚えていますから。『お前、試合中だぞ。気持ちを切らせるな』って怒ったんです」

──それも恨まれましたね(笑)。

「アハハハハ。ただ、その弱さが全てじゃないし。そこに捉われることもない。なんといっても、誠も成長をしているので。でもアイツには、絶対に負けないですね。そこは自信があります。

と同時にTHE BLACKBELT JAPANの若い連中は『分かるぞ、神龍』って思っているかもしれないですよ(笑)」

──アハハハ。その因縁とともに、この試合が超RIZINのなかで実施されるということで、扇久保選手には伺いたいことがあります。

「ハイ、何ですか(笑)」

キックができるからって、MMAで勝てるという風に簡単に思わないでいてほしい

──会見で、皇治×芦澤竜誠のような乱闘が起こりました。その会見を見ても分かるように、今大会はキックから転向してきた選手同士だけでなく、転向組がMMAファイターと戦う試合等が多く組まれています。この状況を俯瞰して、MMAファイターとして意地を見せるという気持ちを扇久保選手は持ち合わせているのでしょうか。

「僕は『俺はお前らと違うんだよ』という気持ちはないです。

乱闘劇の際の斎藤裕、所英男、扇久保博正の三者三様振りがおかしい

本物と偽物というのもなくて。皆、本物ですよ。それこそBreakingDownだって戦っているんだから、本物だと思っているし、偽物とは思っていない。

でもキックボクシングからの転向してきた選手とはやってきたこと、やっていることは違う。僕らが築いてきた技術と比べると、彼らがやっていることはどうしても浅い。そこは違うぞという想いはあります。ただし戦いとしては、全てが本物です」

──いうとキックボクサー×MMAファイター、キックボクサー同士のMMAの方が扇久保×神龍よりも、一般のファンには受ける可能性が高いです。

「う~ん、結局……本物が残るんで」

──……。

「あっ、本物って言っちゃいましたよね(笑)。せっかく、格好つけていたのに(爆)」

──アハハハハ。

「俺、自分で言っていることが分かっていないし、すぐに考えが変わっちゃうんですよ(笑)。だから良いところで編集をしてもらわないと。誠のことを言えないぐらい、俺も相当に変わっているんで(笑)」

──アハハハ。偽物とかではなくて、別モノという気持ちがあるということでしょうか。

「偽物とは絶対に思っていないです。僕はシュートボクシングの試合に一度出ていて、あの辛さを分かっているので。『こんなことをあの人たちはやっているんだ』と。だから、あの人達がやってきた凄さを認めています」

──とはいえMMAのルールで、日本で一番大きな大会でキックボクサーの占める割合が高くなっている(※結果的に11試合中、ベアナックルが2試合、特別ルールが1試合、MMAは8試合で、元キックボクサーが絡まない試合は3試合)。そこに危機感を感じることはないですか。

「だから……レベルの低い者同士が戦えば、面白いですよね。逆に高い者同士が戦うと、防御力が高いですからね」

──ただ元キックの選手達、強くなっていないですか。

「それは思っています。でもMMAとしての強さが一番なんで。だから斎藤(裕)君と久保(優太)選手の試合も、斎藤君が勝つと思っています。試合を見る人が、どう思うかは別で。MMA歴の短いキックボクサーの試合の方が動きが多くて、凄いように捉えられることはあるでしょうね。だから偽物でなく、別モノなんです。とはいっても、強さでいえば僕らの方が強い、確実に強いです。

同時にMMAは打撃から始まるので、打撃の圧力は重要で。そこはキックボクサーの人達は凄いです。そして、真剣にMMAに向き合っている選手もいます。これからは、そういう人達が増えてくること思いますし、もう次の超RIZINに表れています。それでも組み技は、すぐには強くなれない。練習をすれば強くなりますが、時間は掛かります。積み重ねが大切で、だからこそキックができるからって、MMAで勝てるという風に簡単に思わないでいてほしいです。

そのなかで僕の試合が、これがMMAだという試合になるかは正直分からないです。でも、自分がやってきたことを僕は信じているので。それを出していけば盛り上がる──じゃないけど、伝わるモノは絶対にあると思います。

僕はやっぱりRIZINのフライ級を、UFCを越えるフライ級にしたい。中央アジアとか強烈な連中が出てきているからこそ、僕と神龍の試合はRIZINフライ級にとっても大切な戦いになる。覚悟を持って臨みます」

■視聴方法(予定)
7月28日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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【SUPER RIZIN03】ヒロヤ戦を乗り越えて叶えたい大きな夢――所英男「最後は代々木第一で戦いたい」

【写真】悲壮感ではなく、勝ってもっと格闘技を続けたい。そんな想いが伝わるインタビューだった(C)TAKUMI NAKAMURA

28日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、所英男がヒロヤと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

「負けたら引退します」。対戦カード発表記者会見で所は進退をかけてヒロヤとの一戦に臨むことを明言した。2001年にリングスでプロデビューし、ZST、HERO’S、DREAMで戦い、2015年からはRIZINを主戦場に戦ってきた46歳の所が、いよいよキャリアの終わりを意識するようになった。

しかし自らが己に課した“負けたら引退”という状況のなか、所の中には新たな目標が芽生えたという。引退をかけてではなく最後に叶えたい大きな夢に向かって、所はヒロヤとの一戦に臨む。


──超RIZINへの出場が決まり、記者会見では「負けたら引退」という言葉もありましたが、会見のあとの反響や反応はいかがでしたか。

「みんな腫れ物に触るじゃないですけど、気を使ってあんまりそのことに対しては触れてこなくて……自虐的な感じになっちゃいました(苦笑)」

──最近の試合では所選手も「これが最後になるかもしれない」という覚悟だったと思うので、そういった反応が多かったのかもしれないですね。

「周りからすれば『いつ辞めるんだろう?』というのは常にあったと思いますし、自分自身もこれが最後かもしれないと思ってやってきて、それをようやく口に出せたのかなという感じですね」

──自分の気持ちの中で思っていることと、言葉にして発するのは大きく違うと思いますが、あえて言葉にしたというのは心境の変化があったのですか。

「自分はRIZINという素晴らしい舞台に出させてもらっていて、最終的にはRIZINで引退したいという気持ちがありました。そのなかで神龍誠戦はいい試合だったと言ってもらえたんですけど、自分がRIZINに出られるレベルなのかと言われたら、そうじゃないかもしれないですし、そこでヒロヤ選手と試合をすることになって(引退をかけて戦うには)タイミング的にいいのかなと思いました」

──流れとしてはまず最初にこの試合のオファーがあったのですか。

「ヒロヤ戦に関しては金原(正徳)さんのプロデュースというか、鈴木千裕戦の前に金原さんと一緒にタイで練習していて、そこで金原さんからヒロヤ選手の名前が出て、色々と話していくうちに、この選手だったら進退をかけて戦う意味があると思ったんですよね。それを金原さんがRIZINに伝えてくれて、ヒロヤ選手側とも調整してもらって、正式に決まりました」

──ヒロヤ選手には対戦相手として、どんな印象を持っていますか。

「すごく気持ちのいい選手ですよね。試合中も思いきりがいいし、プロの試合をするというか、気がついたらヒロヤ選手を応援している、そんな感じの選手ですよね」

──BreakingDown出身選手ですが、あまりそういった雰囲気はないですよね。

「僕は不良っぽい選手が苦手なんですけど(苦笑)、ヒロヤ選手は雰囲気が違いますよね」

──ヒロヤ選手の体つきや試合ぶりを見ると、真剣に格闘技と向かい合っていることが伝わってきますよね。

「それは凄く思いますね。あと会見で一緒になった時に、26歳であの落ち着きぶりは凄いなと思いました。僕が(アレッシャンドリ・フランカ・)ノゲイラとやったのが27歳の時だったんで、それを考えたら落ち着いていますよね」

──ヒロヤ戦に向けて、タイでの練習も含めてどんなことを意識してやってきたのですか。

「タイで初めてクロスフィットトレーニングをやったんですよ。色々と決まっているメニューを黙々とこなして、それがむちゃくちゃキツいんですけど、前田(日明)さんのトレーニングを思い出すというか。このトレーニングをやっていると、スパーリングの動きも変わったんですよね。自分の中でこれだ!と思う部分があって、日本に戻ってきたあとも、金原さんにHALEOを紹介していただいて、HALEOでトレーニングを見てもらうようになりました」

──実戦的なものではなく、運動能力を上げるようなトレーニングなのですか。

「そうです。そのおかげでスパーリング中の反応も速くなった……気がします(笑)。いざ試合になったらガチガチかもしれないですけど、少しでも自分のパフォーマンスを上げる可能性があるならやる、ですよね。金原さんからは『僕は10年前からやってます』と言われて、もっと早く教えてくださいよと思いましたけど(笑)」

──このタイミングで気づけて良かったと前向きに捉えましょう!

「本当にそうですよ。このタイミングで気づいて『救世主なのかな、金原さんは』って思うぐらい感謝しています」

──具体的には動きの反応がよくなったり、スタミナが続くようになったり、そういった効果が大きいですか。

「言っても若い人には勝てないですけど、46歳の自分の中では変わってます。40代前半くらいには若返りました。3月からトレーニングを始めて4カ月で4~5年前に戻っているっていうことは凄いですよね」

──今までとは違う形で充実した練習ができているようですね。

「前田さんからも連絡があって『治療に行ってこい』と治療院を紹介してもらったり、色んなところで変わってきています。次の試合、若い選手とやるからなんとも言えないですけど、前回とは違う内容でやれるんじゃないかなと思っています。

──ある意味、昨年10月のヒロ・ヤマニハ戦はそれまでと同じ練習を継続して挑んだ試合で、今回は新しいことにチャレンジして挑む試合ですね。

「そうですね。だから楽しいと言えば楽しいんですよ」

──その一方で、試合前に向けて練習をしていて、これで最後になるかもしれないと、ふと思うことはないですか。

「それはめっちゃ思いますね。『試合まであと2週間か』と思ったり、『この練習もあと2回か』と思ったり。それが寂しくはありますけど、まだ格闘技をやりたいという気持ちも強くなっています。負けた時の自分を考えると、僕から格闘技をとったら本当に何もない人間なんで、自分が自分でなくなっちゃうと思っているんですよね。だから、負けられないし、辞めたくないし、勝ちたいです」

──金原選手がRIZINで連勝してタイトルに挑む姿を見て、ポジティブな刺激や影響も受けましたか。

「まあ金原さんは元々強いんで、あんまり参考にならないですけど(笑)。2月のRIZINでは今成(正和)さんも一本勝ちして、40代が頑張ってるだけで、胸を打たれますよね。そこはもう勝ち負けだけじゃないと思います。でもだからこそ僕はヒロヤ選手に勝ってまだ格闘技を続けたいです」

──さきほど「最終的にはRIZINで引退したい」という言葉もありましたが、所選手は旗揚げ戦からRIZINに参戦しているんですよね。

「RIZINの旗揚げ戦が29日と31日の2DAYS興行で、29日の大会に出させてもらったんですよ。それから少し間が空くことはありましたが、ずっとRIZINに出させてもらっています」

──RIZINは来年で旗揚げ10年なので、所選手のキャリアを振り返ると、RIZINが一番長い期間、出場している大会なんですよね。

「そうなんですか? それは意外でした」

──ざっくり所選手のキャリアを時系列で並べるとZSTが2002年~2005年、HERO’Sが2005年~2007年、DREAMが2008年~2011年、2015年以降がRIZINなんですよね。

「言われてみれば、そうか……。ZSTなんかものすごく長くいたイメージがあるんですけど、3年くらいなんですね。全然気づかなかったです。ZSTが一番長いと思っていたので」

──だから所選手はRIZINを代表する選手の一人だと思いますし、この10年で格闘技ファンになった人たちにとっては所英男=RIZINファイターなんだと思います。

「確かに。僕は本当にRIZINには感謝しかなくて。RIZINに出る前にBellatorに出て(2015年3月、L.C.デイビスに判定負け)、そのあとにRIZINからオファーをいただいたんですが、マネジメントのトラブルで、試合が出来るか分からない状況になっていたんですね。でもその試合を受けたかったので、佐藤大輔さんとうちの奥さんがRIZINに掛け合ってくれて、なんとか急遽試合ができることになって。そうやってRIZINに拾ってもらったという恩と感謝があります」

──RIZINが所選手に戦う場を作ってくれたんですね。

「自分がそれに対して何かを返せているかどうかは分からないですけど…」

――しかも堀口恭司選手やジョン・ドッドソンといった世界のトップ選手とも試合が組まれて。

「なんでそんないいカードを組んでくれたんですかね(笑)。他にもクロン・グレイシーともやりましたし、太田忍選手のデビュー戦の相手もやらせてもらって」

――UFCのタイトルマッチ経験者、グレイシー一族、オリンピックのメダリスト……そうそうたる相手ですね。

「何気に那須川天心選手とボクシングルールもやりましたし、グラップリングで桜庭和志さんと組んでヴァンダレイ・シウバ&田村潔司組ともやっているんですよ」

――しかも次の対戦相手のヒロヤ選手はBreakingDown出身で。これだけ色んなジャンルとビッグネームと対戦した選手はいないでしょうね。

「全く目立ってはないですけど(笑)。でもすごくいい扱いをしてもらっているし、本当にありがたいです」

──そういった相手と試合が組まれるのは所選手だからこそだと思いますし、このストーリーをこれからも続けていきたいですよね。

「何が何でも続けたいですよね。それしかないです、今は。とにかく辞めたくないです。続けたいです。この試合のために全部出しきるトレーニングをやってきて、そのつもりで戦うので、ここで終わっていいという覚悟はありますが、それ以上に勝って格闘技を続けたい。その気持ちが一番です。あと新しい目標も出来たんですよ」

――新しい目標……聞かせてもらってもいいですか。

「僕の格闘技人生を変えたのが2005年7月のノゲイラ戦で、あの日の会場が代々木第一(国立代々木競技場第一体育館)だったんですね。6月にRIZINが代々木第一で大会をやっていて、僕ももう一度代々木第一のリングに立ちたいと思いました。代々木第一は僕の人生を変えてくれた場所で、色んな想いが詰まった場所で、引退するまでにあの場所で試合をしたい。その目標を達成するまではやめられないですね。その時は(山本)アーセン選手と対戦したいんですよ」

――アーセン選手とも対戦したいのですか。

「先ほど話したように僕は格闘技人生で色んな相手と戦ってきましたが、KID(山本徳郁)さんとだけは試合が出来なかったんです。だから自分の思い出の場所で、KIDさんの甥っ子のアーセン選手とやりたいです。だからロード・トゥ・代々木第一、ロード・トゥ・アーセンが今の目標です」

――それは素晴らしい目標ですね。所選手が代々木第一のリングに立つ姿を見たい人はたくさんいると思いますよ。

「東京ドーム、大阪ドーム、さいたまスーパーアリーナ、日本武道館……色んな会場で戦ってきましたけど、最後は代々木第一で戦いたい。その目標が出来てから、また気持ちがすごく燃えているんです。その目標をかなえるためにもヒロヤ選手には絶対に勝ちます」

■視聴方法(予定)
7月28日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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45 AB ABEMA K-1 MMA MMAPLANET o RIZIN SUPER RIZIN03 YouTube キック コナー・マクレガー チャンネル ボクシング 平本蓮 朝倉未来 海外

【SUPER RIZIN03】平本蓮 in アイルランド─02─「組み技をやるからこそ思う。やっぱり打撃は難しい」

【写真】組み技・MMAをやることによって、逆に打撃の奥深さに気づき、打撃技術を深く追求している(C)ABEMA

28日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、平本蓮が朝倉未来と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

3月16日に朝倉との対戦が発表されたあと、平本はアイルランド・ダブリンへ渡り、コナー・マクレガーが所属すSBGアイルランドで約1カ月間の武者修行を行い、その密着動画がABEMA格闘チャンネルにて配信されている。

MMAPLANETではアイルランド滞在時の平本をキャッチし、マクレガーとの遭遇だけでなく、現地でのトレーニング内容について話を訊いていた。今回はインタビューの後編を公開。より深い打撃論について語ってくれた。

<平本蓮インタビュー Part.01はコチラから>


――全局面であらゆる打撃を使えるという意味ではMMAが平本選手に合っているかもしれませんね。

「組み技をやっているからこそ思うのが、やっぱり打撃は難しいんですよ。例えば空手の型をしっかりやって、それをミット打ちでできるようになって、対人で当てる練習をして、実際の試合で出す…そこまでが必要になりますからね。だからMMAを始めてからの方がキックの試合を見る回数が増えたんですよ。K-1時代はMMAの試合を見ても選手が何を狙っているか分からなくて、今は段々とそれが分かるようになってきたんですね。逆に今はキックの試合を見ても選手が何を狙っているか分からなくなってきて、そのくらい視点がMMA寄りになってるんです。だから自分のオリジナリティを出すために色んなスタイルにも挑戦しているし、毎回毎回スタイルを変えてやっています。今はそれをアイルランドでも模索しているところで、この作業は楽しいですね」

――しかもその作業・練習を海外でやるのもいいですね。

「海外に来て思ったのが、キックボクシングをやっている選手は頭がおかしいと思われてますよ(笑)」

(C)ABEMA

――そうなんですか!

「僕もK-1やキックをやっていたと言うと、あんなキツイことをやっていたのか!と驚かれます。頭がおかしいは言い過ぎだけど(笑)、普通はやらないことをやっているという部分でリスペクトされますね。確かに3分3R・パンチと蹴りだけでひたすら打ち合うのは過酷ですよ」

――以前、平本選手がMMAの練習を始めた当初にジムで会った時に「今思うとK-1ルールの練習はマジでキツイです」と言っていたのを思い出しました。

「自分も長く格闘技を続ける意味でも、レベルが高い相手とスパーリングするときは強度が強めのマスにして、お互いの技術を交換するくらいにしてるんですよ。双方にダメージを与えないように。技術があるもの同士のちょうどいい力感があるんで。でもそれって技術を伸ばすための練習にはなるんですけど、いざ試合になった時の倒しに行く練習にはならない。だから倒す気持ちでやる練習やスパーリングをやっておかないと、K-1時代の倒す感覚が薄れちゃうなと思いました。海外は選手がたくさんいるので、比較的そういうスパーリングが出来るんですけど、日本ではなかなか難しい部分があるので、打撃専門のジムに練習にいくかスパーリングパートナーを探そうかなと思っています」

――もちろんわざと怪我させたり、壊したりするようなことはしないと思いますが、そのギリギリのラインのスパーリングも必要ではあるということですね。

「スパーリングの強度や頻度は相手のことも考えないといけないし、相手と信頼関係があるからこそ出来ることだとは思いますけどね。多少こっちが攻めることが出来て、やられるリスクがない・色んな技を試すことができる、そういうスパーリングができる環境を整えたいです」

――いざ試合中に「倒しに行け!」と言われても、その経験や感覚がなかったら、何をやっていいか分からなくなりますよね。

「はい。だからアイルランドに来る前に岩﨑(達也)先生や大塚(隆史)さんと『強い選手ともスパーリングするし、余裕を持ってMMAが出来る相手や色んな相手と手を合わせてきます』と話していて。細かい対策は日本でチームを組んでやるので、アイルランドではそれ以外の練習・スパーリングを大事にしています。もちろん強い相手とスパーリングするとディフェンスの集中力が上がるので、ディフェンス技術は上がるんですよ。でもそれと攻める・倒す技術は別物なので。ちゃんと目的を持って取り組んでいきたいです」

――先ほどはマクレガーのチームの話もありましたが、トップ選手の中には強い・レベルが高い選手たちだけでチームを構成するのではなく、スパーリングや技の受け役になるようなメンバーを用意していることも多いですよね。

「そうなんですよ。ちょうどコナーのチームにも動きがガチガチに固くて『これで大丈夫?』みたいな選手がいたんですけど(笑)、おそらく目的に合わせてスパーリングパートナーを用意しているんだと思います」

――特に平本選手の場合はK-1からMMAに転向して、よりレスリング・組み技に時間を割くことが多くて、倒す感覚が鈍っていた部分はありますか。

「はい。あとは組みを覚えたことじゃなくて、スタンドだけじゃなくてパウンドとか、もっとトータル的に打撃を強化したいというか。いい意味でスタンドにこだわりすぎずに自由に打撃をやりたいと思います」

――練習環境や練習相手をどう整えるのかもセンスですよね。

「それについては大塚さんがそばにいることの安心感が強いです。大塚さんは本当にMMAのことを常に考えている人なんで。大塚さんはレスリング出身で、僕も目指すところは組みやグラップリングでも自分から攻める選手だから、そういう練習もやっているし、そこに中原(由貴)さんがいることも心強いです」

(C)ABEMA

――ここから試合まではどこを意識して練習いこうと考えていますか。

「とにかく自信を持って試合をやるために。アイルランドに来た理由もコナーに触れるのもそうですけど、強くなりたくて来たわけだから。努力した方が勝ちというわけじゃないし、勝った方が正義なんですけど、僕は悔いなくやりたい」

――平本選手は自分に必要だと思ったことはやらないと気が済まないタイプですか。

「そうなんですよ。試合前に不安になるのが嫌なんで、試合のためにやりたいことは全部やって試合を迎えたいと思っています。それで今の自分はいい意味で頑張っていないというか『俺、頑張ってます!』みたいな感じがないんですよ。誰かに見せるためじゃなくて、自分のためにやりきりたいから」

――以前、SNSで「練習動画を出すのは好きじゃない」ということも発信していました。

「僕は試合で一番カッコいい自分を見せたいし、そのためにはトレーニングと練習が必要だけど、それを試合以外で見せるのが嫌なんですよ。周りから『平本は練習を頑張っている』と思われるのも嫌だし、なんか同情してもらおうとしているみたいで好きじゃないです」

――多くの注目を集めている朝倉未来戦、どんな試合を見せたいですか。

「試合としては1Rでスパっと勝つのが理想ですけど、そう簡単にはいかないことも想定しています。最近はK-1時代の地力の強さをMMAで出せるようになってきたことが強みになっていて、技術だけじゃなくて身体能力も上げていきたいし、今まで見せてなかったスタイルを見せたいなと思っています。試合までに色んなスタイルを作って、当日を迎えるので楽しみにしていてください」


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7月28日(日)
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【SUPER RIZIN03】平本蓮がアイルランドで語ったこと ─01─「一瞬の打撃を自分のMMAに落とし込む」

【写真】アイルランドでの武者修行でコナー・マクレガーとの遭遇を果たした平本。アイルランドで平本は何を感じたのか(C)ABEMA

28日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、平本蓮が朝倉未来と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

3月16日に朝倉との対戦が発表されたあと、平本はアイルランド・ダブリンへ渡り、コナー・マクレガーが所属すSBGアイルランドで約1カ月間の武者修行を行い、その密着動画がABEMA格闘チャンネルにて配信されている。

MMAPLANETではアイルランド滞在時の平本をキャッチし、マクレガーとの遭遇だけでなく、現地でのトレーニング内容について話を訊いていた。動画に合わせてMMAPLANETでもインタビューを公開。アイルランドで平本が何を感じ、そして帰国後にどんなトレーニングを続けて朝倉戦に備えているのか。ぜひ決戦を前に平本の言葉に耳を傾けていただきたい。


――今回コナー・マクレガーが所属するSBGアイルランドにて約2カ月間の武者修行を行うことになりました。いつかマクレガーがいるジムで練習したいという想いはあったのですか。

「行きたいと思っていても、実際に行けるとは思っていなかったので、最初は『本当に行けるの?』って感じでしたね。(マクレガーが所属する)SBGがどういうジムかも詳しく分かっていなくて、例えばメイウェザーのような位置にいる選手は、練習そのものをシークレットにしているイメージだったんです。コナーもそのスタイルだと思っていたので、こんな簡単にジムに来て練習するんだというのが驚きでした」

――僕もプライベートジムで限られたメンバーと練習しているイメージでした。

「おそらくマクレガーも個人のプライベートジムを持っていて、そことSBGを使い分けている感じですね」

――SBGそのものはどんな雰囲気だったのですか。

「SBGの会長のジョン・カヴァナが無茶苦茶いい人で、カヴァナのサポートが本当に手厚くて、大きな心配もなく練習に参加することが出来ました。大前提としてそれが大きかったです。僕が2021年に練習に行ったルーファスポーツのデューク・ルーファスとも仲がいいみたいで、コミュニケーションはとりやすかったです」

(C)ABEMA

――そしてマクレガーとの初対面ですが、あの時はどんな心境でしたか。

「ちょうど週末で疲れがたまっていて時差ボケもあったんですけど、練習中にコナーがジムに来て、一気に疲れが吹っ飛びました(笑)。そのくらいコナー本人が発するオーラとかパワーがすごかったです」

――その後はマクレガーがオーナーを務めるアイリッシュパブ=The Black Forgw Innでマクレガーと会話する一幕がありましたね。

「ジムで僕が練習しているところや僕のダイジェスト映像も見てくれて『パンチがいい。早いね』みたいな。朝倉未来とやることも知っていて、むちゃくちゃうれしかったです。そのあともコナーは自分のことを気にかけてくれて、ジムで一緒になった時も(怪我していた)目は大丈夫か?みたいに言ってもらいました」

――練習風景の動画を見ると他の選手たちに混じって練習する形だったんですね。

「そうですね。グラップリングの練習はみんなと同じ練習に参加してやっています。時期的にはちょうどコナーがマイケル・チャンドラー戦に向けたファイトキャンプに入るタイミングで(※マクレガーの怪我で試合は中止)、コナーの細かい練習内容に触れることはできなかったですが、朝倉未来戦が決まってコナーと同じジムで練習できるというのは刺激でしかないですね。モチベーションにしかならないです」

――ここからはSBGでの練習についても聞かせてください。

「コナーもそうだったんですけど、SBGの選手たちはみんなデカかったです。同じフェザー級の選手でも『本当に階級が一緒?』と思いました。ただ身体のデカさを感じる一方、それだけじゃないよなとも思って。例えばセルジオ(・ペティス)もデカいと言えばデカいですが、いざコンタクトしてみるとバンタム級の選手だなって感じなんです。パッチー・ミックスくらい規格外のデカさがあったら影響しそうですけど。組み技に関しては自分も色んなことを考えながらやってます」

――身体のサイズよりもコンタクトする感触が重要な部分でもあります。

「ルーファスポーツに行ったときの僕の組み技は素人に毛が生えたくらいのレベルだったので、今回は組み技の練習するのも楽しいですね。日本でグラップリングの練習をすると試合と同じように漬ける・削るスタイルの選手も多いですが、こっちの選手はどんどんトライする感じなんですよ。ドリルはドリル、テクニックはテクニックでやって、最後にスパーリングなんですけど、スパーリングではみんなどんどんトライするイメージでした。奇想天外な動きをしてくる選手もいるし、やっていて楽しいです」

(C)ABEMA

――打撃に関してはいかがでしたか。

「まず僕自身が原点に戻ったクラシカルなボクシングって言うんですかね、去年くらいからそういう練習を大事にしているんですよ。それでトレーナーが初めてミットを持ってくれた時に『俺は君みたいなオールドスクールの綺麗なボクシングが好きだ』と言ってくれて、それがうれしかったですね。MMAでは王道の綺麗なボクシングをする選手は少ないみたいで。ジムにいた全員の選手とスパーリングしたわけじゃないですけど、全体的な印象としてみんなキックボクシングが上手かったです。アメリカの選手はレスリングと打撃をミックスするんで、体を上下させたり小刻みに動く選手が多いですけど、SBGの選手たちはしっかり構えて蹴りも蹴って、という感じです」

――それこそイメージ的にはセルジオ・ペティスやルーファスポーツのスタイルをよりキックボクシング色を強くしたイメージですか。

「そうですね。僕はレスリングベースの選手の一番の強みは組んだ時のスタミナ、組んだ時に疲れないことだと思っているんですよ。レスリングで苦しい練習をやってきたからこその体力というか。だから僕もそこにしっかりと対応しつつ、あとはいかに相手にダメージを与えるか、意識を刈り取るか。そこを考えるようになってますね。急いでKOを狙うわけではなく、打撃を当てられるところで確実に削ってダメージを蓄積させていく、みたいな。そういう強さも見せたいかなと思います」

――相手を痛めつけるマインドが打撃には必要ですよね。

「どうしても組み技に自信がないと、一回(組みを)切ることに専念して、そこから打撃って感じだったんですね。でも今は組みが出来るようになってきたから、その際で打撃を入れられるポイントが分かってきたんですよね。で、そこでただ打撃を入れるだけじゃなくて確実に効かせる。そこに意識がいくようになってからはK-1時代に使っていた一瞬の打撃とか組み際・離れ際の打撃が使えるようになってきて。そこのスピードは自分も自信を持っているところなんで。そういう打撃をもっと磨いて、自分のMMAに落とし込むことが出来たら“化ける”んじゃないかなと思っています」

<この項、続く>


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7月28日(日)
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45 AB Interview other MMA SUPER RIZIN03 ブログ 摩嶋一整 新居すぐる

【SUPER RIZIN03】摩嶋一整戦へ、大晦日以来の新居すぐる「強くて有名になる。それが出来る舞台と相手」

【写真】ヴィジョンを持ち、目標を達成するための手段をしっかりと選ぶことができているイメージだ(C)TAKUMI NAKAMURA

28日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、新居すぐるが摩嶋一整と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

昨年は3戦3勝、パンクラスでの王座獲得や大晦日RIZINでの勝利など、大活躍の1年となった新居。怪我の影響で試合から遠ざかることになったが、超RIZINでは摩嶋とのフェザー級屈指の──タイプが違う──グラップラー対決が決まった。

2025年のRIZIN王座奪取というゴールへ向けて、新居は「7月に摩嶋選手に勝って、大晦日に外国人選手に勝って、自分の強さを認めてもらう」という青写真を描いている。


――昨年大晦日の弥益ドミネーター聡志戦以来の試合が決まりました。右拳の怪我もあって試合間隔が空く形になりましたが、年明け以降はどう過ごしていたのですか(※取材は5日に行われた)。

「最後に殴った右拳とカーフを蹴られた左ヒザを怪我してしまって、医者からは全治2~3カ月と言われていたんです。ただ再発するのが嫌だったので5カ月ほど空けて、本格的な練習を再開したのは比較的最近ですね」

――改めて弥益戦を振り返っていただけますか。

「僕は前足重心でカットしないスタイルなので、飯田健夫戦もそうなんですけど、ローとかカーフを蹴られやすいんですね。だから絶対にドミネーター選手もカーフは蹴ってくるだろうなと思っていました。ただ僕がカーフを蹴られて何発かパンチを返した時に、いつものドミネーター選手だったらカウンターでパンチを打ち返してくるんですけど、それがなかったんですね。だから相当僕のパンチを警戒しているんだなと思ったし、それで最後は一発合わせることができました。だから展開的に想定外だったことはないです」

――カーフを蹴られる前提でパンチを合わせる練習をしていたんですね。

「唯一びっくりしたのはカーフが痛すぎたことですね(苦笑)。飯田戦はローキック気味だったんで、そこまで効かなかったんですけど、カーフは2~3発で効きました」
――前足を効かされたことで、パンチの踏み込みに不安はなかったですか。

「自分もそういうイメージだったんですけど、遠心力を使ってパンチをぶん回せば倒せるんだなと。あとはMMAグローブの形状的に、例えばパンクラスのMMAグローブはかなり薄いので高木(凌)選手みたいにキレがあるパンチをピンポイントで当てないと倒すのが難しいのですが、RIZINグローブは拳のところが少し厚い作りなので僕みたいなぶん回し系でも効かせられるんですよね。そこがあの試合では出たかなと思います」

――打撃のパーソナルトレーニングの成果が出ましたか。

「僕、去年は一回も打撃のガチスパーはやってないんですよ。ダメージが残るのが嫌だから、打撃はマススパーしかやらないようにしていて。で、打撃をコツコツ当てて削るタイプじゃないから、一発を当てるための練習だけをやっていたんです。それが試合で出たと思うし、どれだけ劣勢になっても一発で倒す練習をしているからビビることはないです」

――新居選手の良い部分を伸ばすような指導なのですね。

「打撃を教わるときに、他の選手も参加するクラスに出ると『基本はこうだから、こういうことをやってください』という指導だと思うんですけど、今のトレーナーは僕が弱点だと思っていたところ・ここを直さなきゃいけないと思っていたところを良さに変えてくれるような教え方をしてくれるんです。僕を否定することがなくて、僕のこうしたいですというリクエストも受けて、そのための指導をやってくれるのでやりやすいですね」

――MMAPLANETでは昨年9月にパンクラスでベルトを獲ったあとにインタビューさせてもらい、その時に新居選手は年末のRIZIN出ることが目標だと話していました。その目標も実現して、練習の成果を出して勝つことができた。まさにこの1年間でやってきたことが形になった大晦日でしたよね。

「そうですね。僕は一昨年に練習環境をがらりと変えて、ちょうど1年くらい経ったタイミングで、去年は試合を続けていたんですね。それで去年は3戦3勝という結果を残せて、これから改良することもあると思いますが、今自分がやっている練習方法が間違っていないなと思えることが出来ました」

――前回のインタビューでも話されていましたが、新居選手は各ジャンルでパーソナルトレーナーをつけて練習するという形を取っていますよね。

「しかもそれぞれのトレーナーさんたちの連携が取れているというか、みんなでコミュニケーションが取れる関係なので、それぞれの練習状況が共有できているんですね。だからトレーナーは個別にいるけど、一つのチームとして取り組んでいることが出来ると思います」

――勝つために必要な環境を自分で整えている、と。

「前回のインタビューでも話した通り、本当に僕は毎日遊んでいるから(笑)、他の選手に迷惑をかけられないじゃないですか。それで各分野の専門家からパーソナルトレーニングを受けているんですけど、みなさん僕がどういうスタイルなのかを理解してくれているんですよね。

普段の生活も含めて。それは応援してくれる方たちも同じで、僕ってSNSでも遊んでいるところをバンバン公開するじゃないですか。普通は『もっと真面目に練習しろ!』と思われるかもしれませんが、これが僕のスタイルだし、それをみんな分かってくれているんですよね。実際に結果を残すことが出来ているし、今は自由に自分がやりたいことをやらせてもらっています」

――ただそういう状況で、怪我で試合ができなかったことはストレスにはならなかったですか。

「でも怪我でもしないと休めないので。僕、去年は3試合やったんですけど、6月から12月までで3試合やっているんですね。だからドミネーター戦が終わったらゆっくりしようと思っていたので、ちょうどよかったですね。この5カ月間は遊びまくって、また格闘技をやりたいという気持ちになってきたので、いい時間でした」

――5月にカンボジアで行われたチャリティ関連のイベントでグラップリングの試合に出場されましたが、あれはどういった経緯で決まったのですか。

「もともと僕は毎年茨城のTEAM STが主催しているイベントに参加していて、それはイベント収益の全額を茨城の児童施設に寄付するという趣旨のものなんですね。そのスタッフとカンボジアの方がつながっていて、カンボジアで開催するイベントに参加しませんか?という話をいただきました。だからあのイベントもカンボジアの児童施設の子供たちを招待して試合を見せて、試合で使ったリングを寄付するというイベントだったんです。

カンボジアは格闘技イコール打撃・立ち技らしく、グラップリングの試合は珍しかったらしく、控室で他の選手たちに『なんでお前はグローブもバンテージも巻かないんだ?』と驚かれました(笑)。見に来てくれた子供たちはすごく喜んでくれて。色んな刺激を受けました」

――そして超RIZIN3での摩嶋一整戦が決定しました。超RIZINには出場したいと思っていましたか。

「はい。ずっと今年の超RIZINには出たいと思っていて(朝倉)未来君と平本(蓮)選手の試合はタイトルマッチよりも注目されて、本当にたくさんの人が見る大会だと思うんですよ。しかも会場もさいたまスーパーアリーナのスタジアムバージョンで、日本でMMAをやっている選手だったら誰もが出たい舞台だと思うので、試合が決まった時はうれしかったです」

――対戦相手が摩嶋選手に決まったことはどう捉えていますか。

「僕の希望としては外国人選手と戦いたかったんですよ。今RIZINで日本人選手が外国人選手になかなか勝てない状況があって、そこで日本人同士で潰し合うよりも、日本人みんなで外国人選手に立ち向かっていきたくて、それこそ僕と摩嶋選手で外国人選手と戦うのもいいかなと思っていました。

ただマッチメイクは主催者が決めるものだし、僕と摩嶋選手の試合を見たいという声も多かったので、望まれる試合であればそれをやってから、VS外国人をアピールしたいと思います」

――摩嶋選手のファイトスタイルはどう見ていますか。

「めっちゃ苦手なタイプです(苦笑)。RIZINの戦績は負け越していますけど、対戦相手はほとんどチャンピオンクラスだし、試合に負けても評価が落ちていない選手だと思うので、大晦日と同じようにフィニッシュして勝って、自分の強さをアピールしたいです。僕は来年RIZINのベルトを巻きたいと思っているので、絶対にここは落とせないですね」

――ただ勝つだけじゃなくてフィニッシュしたいですか。

「自然にそうなると思います。僕も摩嶋選手もスタミナがないから、3Rまでいったらグダグダの試合になる気がします(笑)。だから2Rまでには終わらせたいです。というか僕は2Rすら延長戦みたいなものだと思っているんですよ」

――発想が5分1本勝負なのですね。1R=本戦、2R=延長戦、3R=再延長のような感覚で。

「そうです。だから再延長なんて絶対に嫌です(笑)」

――昨年はパンクラスのベルトを獲って、大晦日RIZINに出るという目標があり、それを達成しました。今の新居選手の目標を教えてください。

「僕としては7月に摩嶋選手に勝って、大晦日に外国人選手に勝って、自分の強さを認めてもらって、来年RIZINのベルトを巻きたいです。あとはベルトとは別の部分でクレベル・コイケ選手とは戦いたいと思っています」

――クレベル戦と戦い理由とは?

「純粋にどれだけ寝技が強いのかを体感したいし、クレベル選手って絶対にタップしなさそうじゃないですか。そういう相手を絞め落とすか関節を壊すかすれば、会場がめちゃくちゃ盛り上がると思うんですよね。そういう意味でやってみたいです。ちなみに僕がもしクレベル選手にがっちり三角を極められたら必ずタップします(笑)」

――その目標のために新しく取り入れたい練習はありますか。

「去年のパンクラスのタイトルマッチ前からなんですけど、安楽(龍馬)にレスリングを教わっているので、そこを継続して強化していきたいですし、外国人選手とやるにはパワーをつける必要があるのでフィジカルトレーニングも再開しました。ここ2年くらいは(日本人相手に)パワー負けすることがなかったのでフィジカルはやらなくてもいいと思ったんですけど、外国人選手に勝つためには絶対に(フィジカル強化は)必要ですね。筋力をつけるトレーニング、格闘技的なトレーニング、それぞれパーソナルトレーナーに見てもらっています」

――前回インタビューしたときにも思ったのですが、新居選手は明確にゴールや目標を決めて、そこから逆算して自分が何をすべきかを考える。そのためには投資を惜しまない。そんなタイプですよね。

「ああ…確かにそうかもしれないです。例えば僕は一週間練習したら日曜日にそれをおさらい・復習して、月曜日からの練習内容を考えるんですね。それでそれぞれのトレーナーさんに連絡を取るので、ただ目的なく練習するということがないかもしれないです。どの練習も一つ一つ全部に目的がある感じです」

――超RIZINという大舞台でどのような自分を見せたいですか。

「今回はチケットも売れ方も半端なかったし、新居すぐるの強さを認めてもらって有名になりたいです。ただ強いだけでもダメだし、知名度だけ選考していてもダメだし、強くて有名になる。それが出来る舞台が超RIZINであり、摩嶋選手という相手だと思うので、ここから人生を変えたいです」

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【SUPER RIZIN03】危ないレベルの因縁、扇久保博正戦。神龍誠「言いたいことは山ほどあった」

【写真】本当に仲が悪いと、MMAは危険だ (C)TAKUMI NAKAMURA

28日(日)、大宮市のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、神龍誠が扇久保博正と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

4月のRIZIN46のリング上で決定した神龍と扇久保の一戦。かつての師弟対決としての注目を集めていたが、日を改めて行われた記者会見では扇久保の「なんでうちの道場を辞めたか言ってみろ」という言葉に対し、神龍が「俺とお前は合わないなって言いましたよね?それを指導員が言っていいんですか?」と返すなど、両者の遺恨が露になった。

このインタビューは会見直後に行われたもので、神龍は扇久保戦に対して抱く感情を露わにした(※取材は5月24日の超RIZIN03の会見終了後に行われた)。


当時の僕は本当にしゃべるのが苦手だった

――両者揃っての記者会見を終えた直後ですが、今の心境を聞かせてください。

「ムカついてます」

――会見で神龍選手から扇久保選手に対して「俺とお前合わないなって言いましたよね?それを指導員が言っていいんですか?」という言葉もありました。

「そういう人なんだなって感じですね。普通は先生が生徒に対して『俺と合わない』なんて言わないじゃないですか。でもはっきりそう言われたんですよ。あっちは覚えてないと思いますけど。そういうことを言う先生のことをどう思います?」

――それはその時の状況もあるとは思いますが…………(💦)。

「しかもそれを15~16歳の生徒に対して言うわけですよ。僕はそういうことは言うべきではないと思います」

――例えば何かそう言われてしまう出来事があったのでしょうか。

「僕は何かやらかした記憶はないし、ただ単に気にくわなかっただけだと思います」

――やるなと言われたことをやってしまった、とか。

「それもないですが、当時僕が周りの人たちと馴染めなかったのは確かです。ただ僕だけ10代半ばで、周りに同世代の選手がいなかったし、みんな年上なわけですよ。そういうこともあって周りと馴染めなかったし、『お願いします』って練習に参加して、掃除して一番最初に帰るのが僕だったんです。

そういうなかで『お前は毎日便所掃除しろ』と言われて、僕はそれを一昔前のイジメみたいだなと感じていました」

――いわゆる師弟関係というものはないですか。

「そんな関係ではないです。一応、教えてもらっていたので感謝もしていたし、先生と呼んでいましたけど、綺麗な師弟関係はないですね」

――道場で指導する・指導を受けるだけの関係だ、と。

「そうですかね。だから僕は会見で(扇久保が)どっちの感じで来るかなと思っていたんですよ。そうしたらああいう感じで来たので、じゃあ僕もその感じでいきますよと思って言いました」

――扇久保選手の言葉を聞いて感情的になりましたか。

「僕も言いたいことは山ほどあったんですよ。それであっちが『しゃべれ』って言うから、しゃべりだしたら『しゃべんな』って言われて。ああいうところも理不尽ですよね」

――指導を受けている時から、いつかやってやりたいと思っていましたか。

「はい。当時からそう思っていました。色々言われてムカつくのもあるし、練習ではボコボコにされていたんで」

――ジムを離れたのもそれが原因の一つだったのでしょうか。

「ジムを離れたのはちょうどプロで初めて負けた時で、このままの環境で強くなれるのか?と疑問に思って辞めました」

――扇久保選手からするとジムが嫌で逃げたという捉え方をされているかもしれません。

「当時の僕にはそうするしかなかったです」

2018年2月、パラエストラ柏──夜の一般練習で内藤のび太とスパーリングをする神龍誠(当時は高橋誠)

――神龍選手の入門当時はどのよう状況だったのですか。

「もともと僕がジムに入ったのが中学一年生くらいの頃で、参加していた一般クラスで中学生は僕くらいでした」

――中学生の一会員としては色々と難しい環境かもしれないですね。

「それで周りに馴染むのが大変だったし、僕も人見知りだったんで、向こうからすると感じが悪かったんでしょうね。何か話かけても返事はするけど不愛想だっただろうし。今振り返るとそうだったんだと思います。でも当時の僕は本当にしゃべるのが苦手だったんで」

――今はそういう見方ができるかもしれませんが、当時はそこまで考える余裕がなかったのかもしれないですね。

「それでも優しくしてくれた先輩はいたし、大阪で試合をするときにセコンドについてきてくれた先輩や、周りに馴染めない僕に声をかけてくれた先輩もいたんですよ。あの人はそうじゃなかったってことです」

――人間的に合わないですか。

「はい。合わないです」

天才だからやらなくていいんだじゃなくて、基礎練習もやってプラスアルファにする

――話題を変えましょう。4月のRIZIN46のイ・ジョンヒョン戦は肩固めによる一本勝ちでしたが、あの試合を振り返っていただけますか。

「予想通りでしたね。年末に堀口(恭司)選手には負けましたけど、言っても僕は世界トップなので」

――心境的には勝って当然という試合でしたか。

「でもジョンヒョンは強いらしいですけどね。韓国ではトップ3に入ると言われているみたいなので。まぁ、僕は日本の器じゃないんで、そういう違いを見せられたかなと思います」

――堀口戦後は何を意識して練習してきたのですか。

「基礎に戻りました。強化しなきゃいけないところを見つめなおして。今まで雑にしていたところ、曖昧にしていたところを基礎からやる感じですね」

――新しいことを取り入れるよりも基礎を見直していると。

「そうですね。打ち込みの大切さだったり。どうしてもレベルが上がってくると練習がスパーリング中心になったりするじゃないですか。そういう部分で技が雑になっていたところもあったので、そこを振り返ったのが一番ですね」

――堀口選手と対戦して通用するところ・しないところが分かりましたか。

「相手の強みで勝負できるようにならないと先はないのかなと思いました。例えば堀口選手はすべてのレベルが高くて、何でもできるわけじゃないですか。それに対して僕がただ自分の強いところをぶつけるだけでは勝てなくて、相手の強いところでも勝負しながら、自分の得意なところに持っていくことが必要だなと思いました。堀口選手と再戦を狙っているので、このくらいしておきます」

――神龍選手の試合を見ているとMMA的なスクランブルの動きとサブミッションを取る動きが連動している印象があります。そこはご自身でも意識されているのですか。

「う~ん……身体能力。それが扇久保さんが言う『身体能力がある』なんじゃないですかね」

――なるほど。自分でもそこは武器だと思っていますか。

「逆にそこに頼りすぎていたってことだと思います。そういう意味で基礎に戻ったというか。自分は天才だから(基礎は)やらなくていいんだじゃなくて、基礎練習もやってプラスアルファにするということを堀口戦で考えるようになりました」

――あのタイミングで堀口選手と戦ったことは大きかったようですね。

「大きいです。あのタイミングでやれたことが大きいし、また強くなっちゃいますよ」

あの人もUFCに行ったらトップ5には入ると思う

――扇久保選手に対する感情は置いておいて、対戦相手としての印象は?

「フィジカルが強いパワー型で、テイクダウンしたらあまり動かずにパウンドで削って膠着することが多いですよね。そこにハマるのは嫌なので、そうさせないようにして僕の展開を作っていきます」

――攻略するイメージは出来ていますか。

「相手の対策ではなくて、今の僕なら全部で勝負できると思うので、特にないです」

――対扇久保ではなく、今の自分を出すことに集中していると。

「そうですね。確かに当時の僕は何もできなかったですけど、それは昔の話なんで。今は全部で勝負して勝ちます。あの人もUFCに行ったらトップ5には入ると思うので、世界一を目指す人間としてちゃんと超えたいなと思います」

――周りから様々な反響があると思いますし、お互いの色々な感情がぶつかる試合になりますね。

「そういう方が面白いんじゃないですか。あっちも家族もお子さんもいて、昔こういうことをされましたって言って下げるのもどうかなと思っていたんですけど、あの感じで来るなら僕も同じ感じでいきますよと。ファンのみなさんは試合を楽しみにしていてください」

■視聴方法(予定)
7月28日(日)
午後2時00分~ ABEMA格闘チャンネル

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【SUPER RIZIN03】久保優太と対戦、斎藤裕「MMAファイターとしての完成度はまだまだ上げられる」

【写真】丁寧な言葉遣いのなかにも、MMAファイターとしての矜持が感じられた斎藤だった (C)TAKUMI NAKAMURA

7月28日(日)さいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、斎藤裕が久保優太と対戦する。斎藤にとって2023年大晦日のクレベル・コイケ戦以来の再起戦が決まった。これまでRIZINの舞台で様々なタイプの相手と戦ってきた斎藤だが、元K-1ファイターとMMAで戦うのは平本蓮に続いて2度目。斎藤は「平本戦に向けてやってきたことが間違いなく久保戦にも出る」と平本・久保戦は地続きの試合だと見ている。
Text by Takumi Nakamura

また4月・6月と外国人選手たちの躍進が目立つ中、斎藤は「自分自身に可能性を感じて試合をして、強い自分を見せて勝って、もっと先を見ていけるように。お客さんにも期待を持ってもらえるような試合をしたい」と語った(※取材は5月24日の超RIZIN03の会見終了後に行われた)。


シバター戦をやったことで、結果的に確実にキャリアを積めている

――昨年大晦日のクレベル・コイケ戦後はどのように過ごしていたのですか。

「今後どうするかはすぐ決めなくてもいいかなと思いつつ、太らないように気をつけながらラーメン活動だったり、発信活動だったり、色んなことをやっていました」

――少し試合モードから離れたいという気持ちもあったのでしょうか。

「僕の中ではクレベル選手に勝ってタイトル戦線に行くつもりだったんですけど、そこで負けてしまって。あとは自分がやりたい選手がパッと浮かばなくて、自分は年齢やキャリア的にも一つの勝ちと負けが大きく状況が変わる中で、すぐ次をどうするか決められないなと思っていました」

――斎藤選手はフェザー級の選手と一通り対戦しているので、対戦相手以外の部分で自分にネジを巻くことが簡単ではないのかなと思っていました。

「戦う理由が欲しくなるし、頑張る目的がないと、ですよね。相手は誰でもいいから(試合を)やりますとはどうしてもなりにくい。それで対戦相手と興行のことも考えつつ、4月・6月に大会はあるけど、とりあえずそこで試合するというのもどうなのかな…と思っていました。それで(試合を)決めきれずにいたという部分はありますね」

――その斎藤選手が戦うモードになったのは、7月に超RIZINが開催されるということが大きいのでしょうか。

「それはあります。会見でも言った通り、今回は15年ぶりの(さいたまスーパーアリーナの)スタジアムバージョンで、僕自身その景色を会場で見たことがないんです。この15年間で格闘技を続けられなかった選手もたくさんいて、自分は今でも現役でいるということを改めて考えた時に、自分がそこで試合をやりたいと思って実際にできるんだったら、自分にもファイターとしての役割があるんだと思い始めましたね。もう5年くらい早かったら…と思うこともなくはないですが、今がそのタイミングなんだなと思いますね」

――ちなみに15年前はまだアマチュアでしたか。

「当時はプロを目指してアマチュアで実績を積んでいた頃ですね。まだ東京にも来ていなかったです」

――では超RIZINでの復帰に向けて準備を続けていたのですか。

「色々と試合のタイミングをRIZINサイドともやり取りさせてもらうなかで、最終的にここで決まりました」

――対戦相手として久保選手のことは想像していましたか。

「3月に高橋(遼伍)選手に勝たなければ候補に挙がってくることはなかったと思うので、もしかしたらあるかなくらいです」

――久保選手はK-1での実績を踏まえて、普通のMMAファイター選手とは違うキャリアを積んできた選手だと思います。斎藤選手とは真逆のキャリアだと思うのですが、久保選手のことはどう見ていましたか。

「デビュー2戦目がシバター戦でしたからね(※正式結果としてはエキシビションマッチ)。そのあとがプロレスラーの奥田啓介選手で、木下カラテ戦を挟んで、安保瑠輝也戦じゃ
ないですか。なんとも言い難いキャリアですよね(苦笑)。

ただ言い方を変えればシバター戦をやったことで、飛び級で試合ができない=一から試合をやらなければいけない状況になって、結果的に確実にキャリアを積めているんだなと思い
ます」

――その積み重ねが一つの形になったのが高橋戦だと思います。

「あの試合は相性もあったと思います。高橋選手の得意なローキックを久保選手がちゃんとディフェンスできたという。しかも久保選手はディフェンスだけでなく、自分から攻撃する・得意の形を作りながら、テイクダウンされない技術も試合で見せましたよね。接戦だったと思いますが、確実に力をつけてきている印象はあります」

――特にあの試合は首相撲的な技術が光っていました。

「首相撲のフレームの作り方ですよね。組まれても相手に対応できることが実力の証明だと思います。もちろんまだ穴はあると思いますが、自分ができることを明確にして勝つための試合運びを組み立てているんだなと思います。ただ僕とやったら色々と分かるんじゃないですかね。彼の良いところと悪いところが如実に出ると思います」

――カード発表会見では「最短で終わらせる」という言葉もありました。斎藤選手の口からそういった言葉が出るのは意外でした。

「MMAにおける最短ルートをやるということなんですけど、仕留めるべきときに仕留める。自分からやらないとやられる。その気持ちを持っていないと、ああいう打撃に長けている選手なので、試合が長引いた時に一発ガツンともらったら効かされてしまいますよね。そういう意味では理想を言うと1秒も一瞬も隙を与えない、そういうイメージです。スタンドで立ち会う時間を1秒でも長くしたいのが向こうの作戦だと思うので、それに対する自分の答えを持って試合をしたいと思います」

――久保選手をフィニッシュするイメージはできていますか。

「はい。勝ちパターンも3~4つは考えています」

自分が良くなるためにできることはたくさんある

――改めですがK-1王者の久保選手とMMAで試合することは想像していなかったですよね。

「はい。でも斎藤VS平本蓮もそうですよね」

皇治と芦澤竜誠の乱闘劇の際の斎藤。彼のやってきたMMAのポジションを表しているかのような表情だ

――それが実現してしまうのがRIZINという舞台でもあると思います。

「我ながらすごいキャリアになってきたなと思います。直近3試合でいったら平本、クレベル、久保優太。その前には朝倉未来やヴガール・ケラモフともやっていますからね。これだけ振れ幅がある選手はなかなかいないと思います。でも言い方を変えればRIZINに来て、対戦相手には困らなかったというか、色んなタイプの相手と色んなシチュエーションで戦ってきたなと思います」

――競技者としても色々なファイターと戦うことはプラスになりますか。

「今回は平本戦に向けてやってきたことが活きてくると思います。先ほども話したように平本戦の次がクレベル戦で、対戦相手のタイプが真逆じゃないですか。平本戦でやったことをクレベル戦に活かす・アジャストするのが難しかったんです。

でも平本選手と久保選手は同じストライカーで、平本選手は(久保と同じ)サウスポーにも構える。だから平本戦に向けてやってきたことが間違いなく久保戦にも出るだろうし、その次の試合にも活きてくると思います。だから無駄な試合は一つもないし、一戦一戦ステップアップしていきたいと思うので、久保戦もすごくやりがいがあります」

――僕はMMAは経験が重要な競技だと思っています。色んな練習をして、色んな選手と試合経験を重ねることがプラスになって、コンディションを整えることができたら、年齢を重ねても強くなることができる。外から見ていて斎藤選手はそういうモードに入っているような気がするんですよ。

「実は結構色んな人にそれを言われるんですよ。例えばクレベル戦に負けたあと、ずっと自分の試合を見てくれている人に『君のMMAは完成したの?』と言われて。まだ完成はしてないよなと思いながら、『こういうことをやったらもっとよくなるんじゃない?』という話を聞いたりすると、自分が良くなるためにできることはたくさんあるなと思って。

そのためには練習だけじゃなくて、試合も必要だし、意味のある相手とやることも大事。MMAファイターとしての完成度はまだまだ上げられると思いますし、今回は新しい取り組みも考えているので、それもプラスにできるようにしたいと思います」

――その新しい取り組みというのはなんでしょうか。

「実はタイのバンタオ・ムエタイ&MMAで一か月間練習することが決まっているんですよ。慣れ親しんだ東京を離れて練習するのは初めてのことで、不安も半分・希望も半分ですが、吸収できるものはすべて吸収したいと思います」

――ここからの斎藤選手のファイターとしての目標を聞かせてください。

「タイトル戦線ではクレベル×アルチュレタの勝者が鈴木(千裕)選手に挑む図式になると思いますが、ほかの海外ファイターもどんどん増えていますよね。4月のビクター・コレスニックやイルホム・ノジモフも強かったですし、6月にはカルシャガ・ダウトベックも出て、武田選手と対戦する選手(ラジャブアリ・シェイドゥラエフ)も相当戦績がいいですよね。これからはそういう選手たちとやっていくことになると思います」

――未知の強豪外国人選手が続々参戦するという意味では、RIZINの戦いも新しいフェーズに入ったと思います。

「僕もそう思います。外国人も日本人も選手は相当増えたので、そういう意味では対戦相手はたくさんいますよね。まずは7月しっかり勝ちます」

――大晦日以来の斎藤選手の試合を楽しみにしている人たちにどのような試合を見せたいですか。

「自分がやってきたものは格闘技で、それをデビュー戦からずっと変わらず積み上げてきました。今回で32戦目なのですが、たくさんの人に自分の試合を見てもらえる機会だと思っています。まだまだ自分自身に可能性を感じて試合をして、強い自分を見せて勝って、もっと先を見ていけるように。お客さんにも期待を持ってもらえるような試合をしたいです。何が何でも勝ちます」

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【SUPER RIZIN03】7月28日、朝倉未来×平本蓮の一戦が決定。両者「ボッコボコにする&負けたら引退」

【写真】遂に――実現(C)MMAPLANET

16日(土)、六本木ヒルズアリーナにて、7月28日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される『超RIZIN03』の対戦カード発表記者会見が行われた。
Text by Shojiro Kameike

会見では榊原信行CEOが、さいたまスーパーアリーナのスタジアムバージョンでの開催と、朝倉未来と平本蓮がフェザー級契約で対戦すること発表された。ここでは両者の挨拶とMMAPLANETからの質問に対する回答を掲載したい。


平本蓮
「僕もずっと望んでいたというか、目標としていた試合でもあるし。朝倉未来という存在が自分の中に刺激を与えてくれて。こんな感じのカリスマというか唯一無二の存在で、自分の中ではすごく感動した部分というか、尊敬とか憧れとか――そんなもんあるわけねぇだろ、バカ! ケラモフに負けて、YA-MANにのばされてイジけているので、僕が最後のトドメを刺そうと思います。ボコボコにします!」

朝倉未来
「去年の年末に弟から刺激をもらって。俺がRIZINフェザー級を盛り上げてきた自負がああります。年末にトップ戦線に食い込みたいって思うなかで、復帰戦に楽な相手を用意してもらったので。ボッコボコにしようと思います」

朝倉が挨拶の最後に「ここで平本に負けたら引退します」と述べると、すかさず平本も「コイツに負けるわけないので。朝倉未来に負けたら引退します」と返す。榊原CEOは「引退しなくてもいいんじゃないの?」と伝えたが、朝倉は「平本の引退試合を楽しみにしてください」、平本も「いやいや、朝倉未来の引退試合を楽しみにしてください」とアピールした。

朝倉にとってMMAは昨年7月、ヴガール・ケラモフに敗れて以来の復帰戦となる。平本陣営は昨年大晦日のYA-MAN戦の前から、この試合に向けていた。会見では2022年6月に開催された『THE MATCH』との比較アピールもあったが、朝倉×平本の一戦が実現した後の所謂ロス状態は起きないのか。

この点について榊原CEOは「RIZINにとっては、この試合が次のステップへの原動力となると信じている」と語る。平本は「格闘技界どうこうより、自分のことは自分で頑張れって感じです」、そして朝倉は「俺が負けなければ、もっと盛り上がっていくんじゃないですか」とアピールした。

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