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【Pancrase347】ホン・イェリン戦前のアトム級QOP SARAMI「塩漬けです。もう、ああいう勝ち方はない」

【写真】有終の美ではないかもしれないが、終わりを見て現役生活を全うしている (C)MMAPLANET

本日29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、アトム級QOPのSARAMIがホン・イェリンとノンタイトル戦で戦う。
Text by Shojiro Kameike

3月に同王座決定トーナメント決勝で沙弥子を48秒で下したSARAMIにとって、あの右ストレートで一発の勝利は何を意味したのか。その後、パンクラスイズム横浜を離れ、毎日のように違う場所でトレーニングの日々を送る。

「この生活も長くは続けられない」というSARAMIに3月のKO劇と今、そして──これからについて尋ねた。


――もう次の日曜日にホン・イェリン戦を控えているSARAMI選手ですが、今一度3月のアトム級王座奪取について話をきかせてください。見事過ぎる右ストレート一発のKO劇。格闘技生活で、一番の喜びようだったのではないかと。

リモート取材を行った24日の時点では、藤野恵実につけられた傷が残っていた

「あの瞬間は『嘘でしょ!!』っていう感じでした」

──そこから笑顔の時間が、凄く長かったです。

「アハハハハハハ。北岡(悟)さんや、矢澤(諒)君は『パンチで倒す』と思っていたらしいです。いつか、パンチで倒すと。北岡さんにはずっと前から言われていました。でも、私はできないだろうって思っていたんです。女子で一発KOなんて、ないじゃないですか。まさか自分がするなんて思っていなくて(笑)。打撃に自信があるわけじゃないので」

──ただ、あのパンチです。練習をしてきて、成長しているという風に自分で感じることはなかったですか。

「自分の右のパンチが凄く強いという実感はありました。打ち方とかも、凄く考えてきたので。それは分かっていたけど、試合でソレを出せるとは思っていなかったです」

──あの勝ち方をこれからも続けたいという想いは?

「ないです」

──本当ですか。それを想って戦えないかもしれないですが、どこか少しでも残っていないですか。

「えぇぇ……。また、したい気持ちはありますけど。アレを狙うと、絶対にできないです。自分の攻めをしているなかで、ああいう偶然が起これば良いかなって。あのパンチを狙うと、自分のスタイルが崩れてしまいます。私の試合はドロドロで、勝つ時も負ける時も。殴り合いって誰でもできるので、それは余り格好良いとは思えないんです」

──練習仲間、女子選手たちの反応はどうでしたか。

「びっくりしていました。練習では私は打撃が上手くはないので。男子も女子も当てっこゲームが上手な人が、練習では打撃は上手です。思い切り打てないから、試合とは違うと思っています」

──ぶっちゃけてKO勝ちとタイトル奪取、どちらの方が嬉しかったですか。

「一発KOです」

──ずっと練習を続けてきて、あのKO劇があって良かったと本当に思います。

「私の人生にこんなことがあるんだって。本当に。私、格闘技の試合で勝って、お客さんが盛り上がる瞬間──あの気持ち良さって多分、結婚式をする時の気持ち良さよりも上だと思うんです。なのに、あんなKO勝ちしちゃうと、もう最高ですよ」

──そんなタイトル奪取後、所属先が整体北西に変わりました。

「もともとトーナメント中もパンクラスイズムで練習するのは1度か2度で。ジムの面子も変わっていく中で、私が格闘技をやる場所はイズムではなくなってきたように思えたんです」

──練習場所が所属名になったわけではないですよね。

「ハイ。私がずっと体を見てもらってきた整体です。北西(英司)さんはパンクラスができた頃から、選手の体を診ていて、格闘技の試合も物凄く見ている人で。フォースタンス理論に出会えたから、こっちに出てきて少し結果を残せたと思っています」

──イズムを離れる時、どこかジムの所属になろうと考えることはなかったですか。

「それは今も迷っています。決まった練習場所があることは大切だと思うので。ただ試合がもう決まっていたから、そこままという感じできました」

──今、練習場所はどういう風になっているのでしょうか。

「なかなか、色々なところに行っています。行動範囲は相当に広いですよ(笑)。女子選手がいるところに、練習に行かせてもらっていて」

──では万智選手ばりに1週間のルーティンをお願いします。

「月曜日は朝から仕事をして、夜は坂口道場に行きます。火曜日は昼ぐらいにKRAZY BEEに行き、夕方は元町にあるクロスフィットでパーソナルトレーニング。夜はカルペディウム三田のレスリングクラスに参加したり、しなかったり。水曜日は1日仕事をして、行けたらファイトベースに。木曜日も1日仕事して夜に東中野のトイカツ道場。金曜日は昼にマスタージャパンでグラップリング、夕方は国立に体の使い方のコンディショニング・トレーニングに行って、夜に整体をして帰って来ます。

土曜日は朝から仕事をして、夕方に千葉の市川市にあるトランセンド・ジムでロッキー川村さんにミットを持ってもらっています。で日曜日の朝にJTTに女子練習ですね(笑)」

──仕事をしながら……ですよね。1週間で7位置の練習を。

「やばいですよね(笑)」

──その原動力は何なのでしょうか。

「不安だから。やらないと不安なんです。もちろん毎週 、完璧にやっているわけじゃないですけど、この生活と練習を維持するには心もお金も、体力も大変です」

──そうですよね。

「だから、これをずっとやっていられないなって。引退も近いのかなって思っています」

──それでも結婚式よりも嬉しいモノがMMAでの勝利なわけですよね。

「結婚式をしたことないんですけどね(笑)。私は結婚して子供も欲しい。だからずっとできない」

──そうなると限られた試合のなかで、今回はタイトルマッチでないですが、その辺りはどのように思っているのですか。

「ホン・イェリン戦が用意されたことに、全く不満はないです。ちゃんと強い相手ですし、国際戦が戦いたかったので。用意してもらった相手に、今の全てをぶつけます。対戦相手の格とか関係なく、準備したことを全て出します」

──それは右ストレートですね(笑)。

「違います(笑)。塩漬けです。もう、ああいう勝ち方はないし、一度したから思い切り漬けにいけます(笑)」

──女子は比較的行き来ができていますが、これからのキャリアをどのように考えていますか。

「目標がなんなのかよくわからない状況ではあるんですけど、海外でやりたいです。もう日本人は皆やったし、今さら新しい子とやる必要はないかなって。めちゃくちゃ強い外国人にメチャクチャにやられたら、辞めることができるかなって」

──刹那的ですね。

「もう私、敵わないんだっていう経験をしたら辞められるかなって」

──その将来を望むとしても、メチャクチャ強い外国人を戦うためには次の試合でしっかりと勝つ必要があるかと思います。どのような試合にしたいですか。

「…………(じっくりと考えて)、攻め続ける。とにかく攻め続けます」

■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT

■Pancrase347 計量結果

<ライト級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也:70.15キロ
[挑戦者] 久米鷹介:70.3キロ

<ストロー級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] ソルト:51.95キロ
[挑戦者] 藤野恵実:52.1キロ

<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 押忍マン洸太:76.95キロ
[挑戦者] 佐藤生虎:77.1キロ

<ライト級次期挑戦者決定/5分3ラウンド
葛西和希:70.55キロ
天弥:70.65キロ

<女子アトム級/5分3R>
SARAMI:48.05キロ
ホン・イェリン:47.75キロ

<バンタム級/5分3R>
井村塁:61.4キロ
カリベク・アルジクル・ウルル:61.65キロ

<ライト級/5分3R>
粕谷優介:70.7キロ
ホン・ソンチャン:70.5キロ

<女子フライ級/5分3R>
端貴代:56.65キロ
渡邉史佳:56.8キロ

<女子ストロー級/5分3R>
KAREN:52.1キロ
エジナ・トラキナス:51.9キロ

<フェザー級/5分3R>
糸川義人:65.9キロ
栁川唯人:65.95キロ

<ストロー級/5分3R>
野田遼介:52.5キロ
船田侃志:52.55キロ

<バンタム級/5分3R>
安藤武尊:61.45キロ
ギレルメ・ナカガワ:61.55キロ

<2024年ネオブラッドTフライ級決勝/5分3R>
岸田宙大:56.7キロ
山﨑蒼空:57.1キロ

<フライ級/5分3R>
時田隆成:56.95キロ
齋藤楼貴:56.95キロ
 
<バンタム級/5分3R>
友寄龍太:61.1キロ
渡邉泰斗:61.5キロ

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【Pancrase347】計量よもやま話。アルジクル・ウルル、あ、あぶないっ!! 久米鷹介──危機一髪!!

【写真】よくパスできた──それほど厳しそうだったカリベク・アルジクル・ウルル(C)MMAPLANET

明日29日(日)に立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347の計量が、28日(土)に品川区の目黒セントラルスクエアU-NEXT内カンファレンスルームで行われた。
Text by Manabu Takashima

計量開始の15分前に会場に到着すると、驚いたことにエレベーターホールに井村塁と対戦するカリベク・アルジクル・ウルルが座り込んでいるではないか。しかも、喉に指を突っ込む荒療法で懸命で唾を吐いており、相当に減量が厳しい様子だ。

そのアルジクル、計量の際はフラフラになって下着を脱いで体重計へ。空気的にアウトのように見えたが、450グラム・オーバー規約ジャストの61.65キロでクリア。あれだけの状態でも体重を落とし切った気迫のパス──明日のリカバリーもそうだが、試合中の気持ちの強さは相当だと恐怖すら感じるアルジクルだった。


メインで雑賀ヤン坊達也の持つライト級王座に挑戦する久米鷹介も本計量スタート時間のギリギリまでトイレにこもるという緊急事態を思わせたが、彼もまた下着を脱いでパス。と、久米の下半身を隠していた布をレフェリー陣が外すのが早く──会場の人間には、TVに写せない部分の毛髪が確かに確認されていた。

この計量の模様は生配信されていたが、カメラマンさんのグッドジョブで画面は寄りになっており、久米もまたアルジクルとは違った意味で危機一髪のところでアウトにならずにすんだ。

またMMAPLANETが追う計量後の握手問題。男子はするが、女子はしないという定説だが──全15試合中、握手が見られなかったのは3試合。それがストロー級QOP選手権試合=ソルト×藤野恵実、SARAMI×ホン・イェリン、端貴代×渡邉史佳お3試合で全て女子マッチと定説は裏付けされることに。

とはいえ女子勢は握手でなく、距離をとって互いに一礼するという健闘のたたえ合いをしていた。

その女子の流儀に従おうとしたKARENを呼び止めて握手をしたエジナ・トラキナスは、体重計の上で何やら手話のようなモノを披露していたが、これは「ジーザスの導きが、唯一の道」というようなことだったようだ。

キルギス、ブラジル勢とともに韓国からやってきたホン・イェリン。彼女のセコンドにはGladiatorからONE FFに転じたイ・スンチョルの姿が見られ、次戦は2025年になってONE FFでなくONE FNデビューが予定されているとのことだった。

■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT

■Pancrase347 計量結果

<ライト級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也:70.15キロ
[挑戦者] 久米鷹介:70.3キロ

<ストロー級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] ソルト:51.95キロ
[挑戦者] 藤野恵実:52.1キロ

<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 押忍マン洸太:76.95キロ
[挑戦者] 佐藤生虎:77.1キロ

<ライト級次期挑戦者決定/5分3ラウンド
葛西和希:70.55キロ
天弥:70.65キロ

<女子アトム級/5分3R>
SARAMI:48.05キロ
ホン・イェリン:47.75キロ

<バンタム級/5分3R>
井村塁:61.4キロ
カリベク・アルジクル・ウルル:61.65キロ

<ライト級/5分3R>
粕谷優介:70.7キロ
ホン・ソンチャン:70.5キロ

<女子フライ級/5分3R>
端貴代:56.65キロ
渡邉史佳:56.8キロ

<女子ストロー級/5分3R>
KAREN:52.1キロ
エジナ・トラキナス:51.9キロ

<フェザー級/5分3R>
糸川義人:65.9キロ
栁川唯人:65.95キロ

<ストロー級/5分3R>
野田遼介:52.5キロ
船田侃志:52.55キロ

<バンタム級/5分3R>
安藤武尊:61.45キロ
ギレルメ・ナカガワ:61.55キロ

<2024年ネオブラッドTフライ級決勝/5分3R>
岸田宙大:56.7キロ
山﨑蒼空:57.1キロ

<フライ級/5分3R>
時田隆成:56.95キロ
齋藤楼貴:56.95キロ


 

<バンタム級/5分3R>
友寄龍太:61.1キロ
渡邉泰斗:61.5キロ

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【Pancrase347】葛西和希と挑戦者決定戦へ、天弥「アイツは持ってるみたいに言われるの、すっげぇ嫌」

【写真】 どれだけ女性の前で下ネタをしようが、これだけ格闘技について熱く語ってくれるのはMMAPLANETでは◎です(C)MMAPLANET

29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、天弥がライト級次期挑戦者決定戦で葛西和希と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

3月のパンクラス立川大会で天弥は松本光史と対戦し、2Rに松本をストップ寸前まで追い込み、文句なしの判定勝利を収めた。わずかキャリア4戦目で、元修斗王者にして30戦以上のキャリアを誇る実力者を下したことはアップセットと言っていい勝利だったが、天弥自身は「1㎜も負けるとは思わなかった。立ちでもスクランブルでも組みでも負ける気はしなかった」と言ってのける。

葛西戦は同じ日に決まるライト級王者(雑賀ヤン坊達也×久米鷹介の勝者)への挑戦権をかけた一戦。天弥はさらにその先を見据えたうえで、葛西戦での勝利、そして王座奪取を目論んでいる。


どっちが世界でやっていけるか

――今大会では葛西選手とライト級次期挑戦者決定戦として試合が決まりました。試合が決まった時はどんな心境でしたか。

「自分が松本(光史)選手とやったあとに葛西選手と丸山(数馬)選手の試合が決まっていて、次はその試合で勝った方になるんじゃないかなってパンクラスさんから伝えられていたんですよ。もし丸山選手が勝っていたら次期挑戦者決定戦じゃなかったと思うんですけど、自分的には試合経験を積みたかったんで(葛西✖丸山の)勝った方とやることはOKしていました。それで葛西選手になったって感じですね」

――葛西選手との対戦は想定していたわけですね。ファイターとしてはどんな形で印象を持っていますか。

「結構(試合を)長い間やっていて、11勝3敗って、そうそう簡単な数字じゃないと思うんですよ。そういうレコードを残して、これだけ長い間ずっとトップ戦線にいるんで、油断できないですよね。でも自分としては倒さなきゃって感じです」

――油断できない相手ではありつつ、倒して勝つことは今回のテーマのようですね。

「ですね。葛西選手が丸山戦後のマイクで『俺もトップ戦線でやっていける。世界と戦うんだ』と言って、僕と久米(鷹介)さんの名前を出したと思うんですけど、自分の方が歳も若いし、世界でやるのは俺の方が先だよって思ったので、だから実際に試合をやって、どっちが世界でやっていけるか(を見せたい)って気持ちもありますね」

――天弥選手としては受けて立つくらいのつもりだ、と。前回の松本戦は天弥選手の評価を変える試合だったと思うのですが、ご自身では勝つ自信を持って戦った試合だったのですか。

「世間はそういう予想だったと思うんですけど、自分の実力は自分が一番分かっているんで、1㎜も負けるとは思わなかったです。立ちでもスクランブルでも組みでも負ける気はしなかったです」

――その自信は日々の練習で身につくものでしょうか。

「練習のメンツがメンツですからね。基本はHEARTSとNEVER QUITで、たまに(中村)K太郎さんのところに行って、ですね。よくMMAスパーリングするのは安藤晃司さん、菊入正行さん、ISAOさん、江藤公洋さん。海外でも戦ってきた日本のトップ選手たちと毎週練習しているんで(対戦相手が)この人たちより強いのかよ?って思っちゃいます。例えば安藤さんと5分間殴り合ったりしたら、他の選手はこんなことやれないだろうと思うんで、やっぱり自信になりますよね」

――それだけ自信があったからこそ作戦や対策を立てるのではなく、全局面で勝つという意識だったんですね。

「はい。作戦は特になくて、全力でぶつかってやろうって感じです」

――その一方で元修斗世界王者で、40戦近いキャリアがある松本選手に勝てたことは自信になったのではないですか。

「それはありますね。やっぱ元(修斗)チャンピオンに勝ったんで。『これいけちゃうんだ、俺』って思いました」

――試合内容もフィニッシュではなかったですが、松本選手にしっかり勝つという内容だったと思います。

「KO勝ちって見た目も派手だし、完全決着がつくものですけど、見る人によっては『一発当てただけじゃん』とか『マグレじゃん』みたいに言う人もいるわけですよ。あと『アイツは持ってる』みたいに言われるのも、すっげぇ嫌で」

――勢いで勝っていると思われるのは心外だ、と。

「全部それで片付けられちゃうのはどうなの?って。それだったら3Rフルに使って、しっかりボコボコにしてやろうと。松本戦は、自分から行き過ぎて後半はバテちゃったんですけど、最後まで圧倒して勝とうと思っていました。自分は勝った試合が1RKOだったから、僕の評価って『キレる打撃を持っている』ぐらいだったと思うんで、それを変える試合だったと思います」

キツイ際の攻防は自信があるんで

――では3Rフルでやれたことも意味がありますよね。バテたことも経験と言えば経験ですし。

「そうですね。KO勝ちしちゃうと、逆に3Rやる機会がないんで。ある意味試合でバテたっていうのも経験と言えば経験なんで。あとは3Rのゲームメイクというか、そこも実戦で学びましたね。ああいう展開になって3Rをどうゲームメイクするか」

――松本選手はキャリアもあるので戦い方や試合運びも上手いですよね。

「そうなんですよ。やっぱり後半の方が戦い方が上手かったですよね。でも僕も2RにKO寸前まで追い込んで、3Rはポイントアウトしながら寝かせて、バック取ってパウンドみたいな戦い方をしたじゃないですか。あれも大沢さんの指示だったんですよ」

――どういう指示が出ていたのですか。

「2Rが終わったあとのインターバルで、大沢さんから『疲れただろ?』と言われて。やっぱり2Rの最後にフィニッシュしようと思ってダッシュしたから(スタミナを)使っちゃったんです。そしたら『3Rは戦い方を切り替えよう』と言われて、自分もそれが出来る自信があったから『分かりました』って答えて、3Rはああいう戦い方をしました」

――なるほど。でもああいう切り替え方ができことも驚きでした。

「そこは大丈夫です。キツイ際の攻防は自信があるんで」

――松本選手に勝ったことでライト級の国内トップにいるという意識も出てきましたか。

「今の自分はそのくらいにいるんだなって思います。次も組みでいくなら組みでもいいし、特に作戦も練っているわけじゃないんで、僕は練習してきたものを出そうかなぐらい、です」

――天弥選手は将来的に海外で戦うこと、UFCを目標にしていると思います。そこを目指す以上、国内では全局面で勝つつもりでやるという考えもあるのですか。

「そういうのはあるんですけど……まだ自分自身にそこまで自信を持ってないというか。松本選手に勝ったとはいえ、 やっぱり普段の練習では公洋さんたちとか、あのレベルの選手になるとやっぱりやられるんですよ。で、みんな世界でやっているわけじゃないですか。そういうメンツとラウンドをこなすと、みんなラウンドごとに違うんです──味が」

――まだ練習では差を感じる部分はある、と。

「でもそういう相手に対して、ようやく色々できるようになってきているんですよ」

――何か分かり始めた部分もあるんですね。

「はい。なんかUFCにはUFCなりの打撃の流れというか、ラウンドごとのポイントの取り方や作りがあるじゃないですか。それはBellatorにもONEにもあると思っていて、戦う舞台によって試合の組み立ても違うんだなって」

――それは戦況によっても変わりますよね。

「それを体で味わえているんですよ。だから試合で出していけたらな──ぐらいには思っているんですけど、葛西選手が出させてくる相手なのかなって思ったら、そうは思わないんで、全力でやりきります」

――試合で強さを見せる一方、普段の練習で自分の未熟さを感じることが出来る。いい意味で天狗になれない環境は選手にとっては最高だと思います。

「鼻を伸ばそうと思っても壁があって伸びません(笑)。あの先輩たちと練習していたら、天狗になれないし(格闘技の)厳しさを教えてくれる人たちなんで、ありがたいです」

個人的には久米選手とやりたい

――この試合に勝てば、次は雑賀ヤン坊達也×久米鷹介の勝者に挑戦する形になります。

「僕的にはヤン坊選手の方が楽で、久米選手の方がしんどい試合になるだろうなぐらいの想定なんですけど、個人的には久米選手とやりたいですね」

――それは久米選手のこれまでのレコードや実績を考えてですか。

「久米選手はアキラ選手に負けるまで7年ぐらいベルトを持っていたし、あれだけキャリアが長いのに(実力が)落ちないじゃないですか。前回も粕谷(優介)選手を3R圧倒していましたよね」

――久米選手は息の長い選手ですし、年齢・キャリアを重ねてもパワフルなファイトスタイルが変わらないところも特徴的です。

「なんか久米選手を倒して日本から出たいんですよ。久米選手はライト級で日本最強なんじゃないかと言われた時期もあったじゃないですか。そう言われる選手ってやっぱり何か特別なものを持っていると思うんで、そういう相手を倒したいです」

――フィニッシュするだけじゃなくタフな展開になっても競り勝つ強さも持っていますよね。

「日本でああいうタフなMMAができる選手って久米選手くらいじゃないですか。あの辺もちょっと経験したいですね」

――マッチメイク的な部分でいえば、ヤン坊選手と戦った方がKO決着必至のエキサイティングな試合になりそうです。

「打撃戦になると思うんで、どっちが立っていられるか試合になるでしょうね」

――例えばどちらの選手とも戦いたかったりしますか。

「やりたいっす。自分は日本のトップ選手とバンバンやりたいし、そうやって経験を積んで、海外にいきたいです」

――そういう意味でもベルトを巻くことでマッチメイク的な可能性が広がっていくと思いますし、やはりベルトは必ず巻きたいですか。

「ベルト……そうっすね。まあ獲っておきたいっす。やっぱりベルトを巻けば、僕の名前がパンクラスとか格闘技の歴史に刻まれるわけじゃないですか。僕がネオブラを獲ったのも、アマチュア修斗・アマチュアパンクラスの全日本を獲ったのもそうで、自分の名前を検索した時に出てくる獲得タイトルとかレコードって、自分を知ってもらうのに1番分かりやすいじゃないですか。『ベルト巻いてんだ』、『あの大会で優勝しているんだ』みたいな」

――天弥選手は必ずターニングポイントになるところで獲るべきものを獲ってきたわけですね。今日本から色んな選手たちが海外の団体に出ていて、今年のRoad to UFCでは日本人選手が全員ベスト4敗退という厳しい現実もあります。天弥選手も海外での活躍を目指す選手として、この結果をどう受け止めましたか。

「RTUに出ていた日本人選手はみんなレスリングが強かったじゃないですか。で、日本国内だとやりたい試合が出来ていたと思うんですけど、RTUでは出来ていなかった。そこら辺のゲームメイクが最近は大事だなと思っていて、打撃をポンポン当ててテイクダウンを取るのと、テイクダウンを見せて打撃を当てるって簡単なリズムではあるんですけど、それを試合で出すのが難しいんですよ」

――それが出来たとしても、どちらか一方になってしまいますよね。

「そうなんですよ。だから河名(マスト)選手も原口(伸)選手も、結局組んで抱きついて止まっちゃうじゃないですか。だったらもうちょい打撃の時間を割いてやった方がいいと思いました。だから僕自身は全グラフを均等に大きくしていって世界に出て、打ち合いが強い・打撃が強い選手なら組みを見せて削って、打撃で倒すみたいな。そういう全局面できる選手になって世界に出たいです」

――今は判定でもダメージが重視される傾向にありますが、天弥選手はもともとそういったダメージ重視の考えなのですか。

「やっぱり相手からしたらダメージを食らうのが1番嫌じゃないですか。よくRNCでも口塞いだりする選手とかいますけど、ああいうのを淡々とできる選手って強いと思います。頭の回転も速いだろうし。テイクダウンを狙ってしがみついて何とかとする、上を取ったままキープして終わる選手が多いけど、そういう選手は何を目的にやっているんだろうと思っちゃうんです。

あれはただ時間が過ぎていくだけじゃないですか。試合はパフォーマンスを見せる場なのに。自分はそういう考えが…ちょっと分からないです」

――なんにせよ格闘技は強さを示す競技。ジャッジする側がこのところコントールよりも加打に重きを置いていますね。

「最初から判定を狙って戦うことが評価されなくなってきて、自分はそれが本来のMMAなんじゃないかなと思います。組み技・寝技になったらサブミッションを狙う、パウンド出来るポジションを探す…そういう練習が必要だと思います」

――逆に組み技出身の選手が殴る意識を持てばスクランブルや寝技の動きも変わるでしょうね。

「絶対それがあるはずなんですよ。それこそレスリングとか柔道とか組み技のバックボーンがある選手は“殴る”ことを頭に置いていれば、それができる場面ってたくさん出てくると思いますよ。僕が打撃出身だからそう思うのかどうかは分からないですけど」

――天弥選手からすると「なぜ、ここで殴らないの?」と思うことも多いですか。

「逆に組み技出身の選手からすると、同じ場面を見ていても『ここで殴るの?』と思うことがあるだろうし、もしかしたらそこは打撃系と組み技系で分かり合えないのかもしれないですね」

――それは天弥選手が打撃格闘技出身で、そこからMMAに入って組み技を覚えたからこその感覚かもしれないですし、天弥選手にしか見えないMMAの世界もありそうです。

「自分はあると思っています。例えば相手を寝かして、相手が立ち上がろうとする瞬間、絶対に顔(のガード)が空くんです」

――顔をガードしたまま立ち上がるのは無理ですよね。

「絶対マットに手をついて立つんだから。だったらそこで寝かせにいくより、殴ってダメージ与えた方がいいじゃんって思うんです。がぶってコンロールするより、殴っておいて上体が浮いたところでまた下にテイクダウンに入れば削れていきますよね。自分はそういう見方をしているから、発想そのものが違うんだと思います」

――それがさきほどの「打撃系と組み技系で分かり合えないのかもしれない」ですね。今は組み技出身選手が海外の団体に挑戦するパターンが多いですが、天弥選手のような打撃出身選手が世界に出ていく姿も見たいですし、今のMMAにおいては天弥選手のように、組みを踏まえて“殴る”意識を持つことが必要だと思います。

「僕はそこが大事だと思うし、その意識が日本人には必要だと思います。この前のオリンピックを見ても、日本ってあんなにレスリングが強い国じゃないですか。絶対にダメージを与える意識を持つ選手が増えれば、その先(コントロールの先)にいけるはずなんで。自分も今後はレスリングもやっていくだろうし、練習環境ももっともっと整えて日本人が世界で勝っていきたいですよね。で、自分はそこにいく確信を持っているんで、みなさんも楽しみにしていてください」

■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT

■Pancrase347 対戦カード

<ライト級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也(日本)
[挑戦者] 久米鷹介(日本)

<ストロー級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] ソルト(日本)
[挑戦者] 藤野恵実(日本)

<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 押忍マン洸太(日本)
[挑戦者] 佐藤生虎(日本)

<ライト級次期挑戦者決定/5分3ラウンド
葛西和希(日本)
天弥(日本)

<女子アトム級/5分3R>
SARAMI(日本)
ホン・イェリン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
カリベク・アルジクル ウルル(キルギス)

<ライト級/5分3R>
粕谷優介(日本)
ホン・ソンチャン(韓国)

<女子フライ級/5分3R>
端貴代(日本)
渡邉史佳(日本)

<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
エジナ・トラキナス(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
糸川義人(日本)
栁川唯人(日本)

<ストロー級/5分3R>
野田遼介(日本)
船田侃志(日本)

<バンタム級/5分3R>
安藤武尊(日本)
ギレルメ・ナカガワ(ブラジル)

<2024年ネオブラッドTフライ級決勝/5分3R>
岸田宙大(日本)
山﨑蒼空(日本)

<フライ級/5分3R>
時田隆成(日本)
齋藤楼貴(日本)
 
<バンタム級/5分3R>
友寄龍太(日本)
渡邉泰斗(日本)

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【Colors03】パク・ボヒョン戦へ、失明覚悟のMMAファイター人生=渡辺彩華「なぜこの試合なんだろう?」

【写真】愛犬のエルモちゃんと。犬種は分からないのですが、マルチーズかマルプーからマルポメでしょうか(C)SHOJIRO KAMEIKE

8月3日(土)、東京都新宿区の新宿FACEで開催されるColors03で、修斗女子世界スーパーアトム級王者の渡辺彩華が、韓国のパク・ポヒョンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

渡辺にとっては昨年10月、RIZIN LANDMARKで万智に敗れて以来10カ月振りの復帰戦となる。万智戦で負った眼窩底骨折の治療のために戦線を離脱していた渡辺は、その間の国内女子MMAをどのように見ていたのか。その中で本野美樹に帯同し、現地で見たRoad to UFC——海外での戦いについても語った。


失明する可能性が高くなる。格闘技を続けるなら、そのリスクは分かっておいてほしいと

――万智戦後に眼窩底骨折で入院、手術したあと、いつ頃から練習を再開できたのですか。

「手術して1カ月後に有酸素運動はOKが出ました。格闘技の練習ができるようになったのは手術から3カ月後ぐらいで、スパーのOKが出たのは半年後でしたね」

――スパーを始める時、手術した箇所を打たれることに対し、恐怖はなかったでしょうか。

「怖さはなかったです。でも、まぁ失明寸前だったと言われましたからね。病院では『運が良かった。今後も格闘技を続けるかどうか、一度しっかり考えてほしい』と言われて」

――それは「格闘技を続けてはいけない」という意味ですよね。

「それもあるし、格闘技を続ける場合は術式も違うらしくて。いずれにしても自分の場合は、手術をしても普通の人より失明する可能性が高くなる。格闘技を続けるなら、そのリスクは分かっておいてほしいということでした。

このままMMAを続けていたら、別に強い相手じゃなく誰と対戦しても――それこそ練習しているだけでも失明のリスクがある。そのことは頭の片隅に置きながら練習しています。ただ、自分が失明することよりも、それで家族やチームの皆に迷惑をかけるほうが嫌だという気持ちはあって。だけど今のままじゃ終われない。ずっとその葛藤があります」

――『今のままじゃ終われない』というのは……。

「ファイターって皆、応援してくれる人がいるじゃないですか。その数が多い、少ないは関係なく。それだけ背負っているものがある。自分も愛知から東京に出てきた無名時代から支えてくれている人たちがいます。スポンサーさんや、AACCの人たちとか。そういう人たちに対して、ここで辞めるのは失礼だなと思ったんです」

――……以前と比べて話し方も考え方も大人になりましたね。

「アハハハ!!」

――以前、あれだけ暴言を吐いていたファイターとは思えません(笑)。

「落ち着いたかもしれないですね、アハハハ。この10カ月の間、ジムの先輩がいろんな試合に出ていて。それを自分がファイターとして見るのと、戦線離脱した状態で見るのとでは違うと思うんですよ。もちろん自分が戦線離脱していることに対して焦りはあります。だけど……、それこそ本野美樹さんは待って、待ち続けてRoad to UFCが決まったじゃないですか。そういうチームメイトを見ていると、自分も頑張らなきゃいけないって思うんです」

――チームメイトとしては本野選手のRTU、大島選手のInvicta FC、杉本選手の修斗世界タイトルマッチ、そしてRENA選手のRIZIN復帰などもありました。その中でご自身の意識、目標が変わって面はありますか。

(C)AYAKA WATANABE

「あぁ~。

タイに行って『世界はヤバいな』と思いました」

――7月にタイガームエタイへ行っていたそうですね。

「本野さんがRTU準決勝の前にまたタイへ行くということで、自分も気持ちを挙げるために付いていったんですよ。その時タイガームエタイにいたストロー級の女子選手が、その選手がヤバいぐらい打撃が凄くて。『日本にこれだけ打撃が凄い女子ファイターいる?』と思うぐらいでした。自分はMMAでもテイクダウンさせず、打撃で攻めるタイプじゃないですか。だけど、その選手と練習する時は私のほうがテイクダウンを狙ってばかりで」

――その選手の名前は?

(C)AYAKA WATANABE

「ファラ、ですね(※注)。

寝技できないけど、とにかく打撃が強い。同じ日にオクタゴンという大会で試合をするそうです」

※ファリダ・アブドゥエバ。ファラは愛称。キルギスのMMAファイターで、昨年11月のRIZINアゼルバイジャン大会ではアナスタシア・スヴェッキスカと対戦している(腕十字で一本負け)。現在MMA戦績4勝1敗。

「自分よりも打撃ができる選手と向かい合ったのが初めてで、衝撃を受けました。あとONEに出ているモン・ボー選手もいて、メチャクチャ打撃が強かったです。自分も『このままじゃ世界に出られない』と思いましたね」

――その経験を楽しそうに語れるのが、ファイターとしての本質なのだと思います。

「いやぁ、直後はナイーブになりましたよ。タイにいる間、本野さんに『大丈夫! 大丈夫だから』と慰めてもらっていました(苦笑)」

――アハハハ。

「もう毎週、ボディでKO寸前まで追い込まれて……。日本の女子MMAって、グラップラーが多いじゃないですか。その中で自分は打撃で勝っていた。でも本当に全部できないと世界じゃ勝てないんだなって痛感しましたね。7月上旬から3週間行っていて、先週日本に戻ってきたんですよ。そこから日本の選手と練習しても圧力は感じなくて。それを試合前に経験できたのは、本当に良かったです。なんだか安心しました(笑)」

アイツ、いつも良いところで負けていますよね

――一方、10カ月の間、日本の女子MMAは大きく動いていました。

「……万智、負けるなよ。アイツ、いつも良いところで負けていますよね。松田戦は万智が勝っていたとは思ったし、Xでもそう投稿しましたけど」

――万智選手に勝利した松田亜莉紗選手の印象はいかがですか。

「トータルバランスは良いけど、長けているものはないっていうイメージです。飛び抜けているものがない。悪くいえば、特徴がない」

――悪く言うのですね(笑)。

「アハハハ。パク・シウ選手だったら打撃、万智なら寝技っていうイメージじゃないですか。松田選手は怖さを感じないですね」

――ではパク・シウ×万智の試合については?

「凄い試合でしたね。MMAとして2人とも完成度が高いと思いました」

――ちなみに万智選手とは、直接対決の後も仲良くはなっていないのですか。

「全然! 今でも万智のことは嫌いですよ。仲良くなることはないし、一緒に練習することもないです。対戦直後にSNSで『IGLOOで待っています』とか投稿していたけど、行くわけないだろって(笑)。他のAACCの選手がよく一緒に練習しているみたいで、その選手のSNSを見て『あぁ生きているんだな』と知るぐらいです。アハハハ」

RIZIN、ROAD TO UFC、その前に万智はコテンパンにして泣かしますよ(笑)

――なるほど。修斗では藤野恵実選手がベルトを巻き、続いてパンクラス王座に挑みます。SARAMI選手もパンクラスのベルトを巻きました。

「自分もそこに絡んでいきたかったです。だから今回の対戦相手は、自分もあまり乗り気じゃなくて……」

――対戦するパク・ポヒョンも韓国Double-Gのベルトを獲得しているとはいえ、これまでのキャリアを考えれば、渡辺選手の有利は動きません。前戦では古賀愛蘭選手に敗れていますし。

「う~ん‥…、そういうことじゃないんですよ。『普通にやれば負けることはないでしょう』とか言われます。でも勝負事に絶対はない。まず自分自身がアップセットを起こし続けてベルトを獲りましたからね。ファイターって相性があるし、今回はケージではなくリングという違いもある。そんななかで次の試合は足元をすくわれず、フィニッシュします。

それとは別に、私は今までずっと強い相手と試合させてもらってきたじゃないですか。でもこの10カ月の間に、松田選手が万智に勝ってベルトを巻いた。万智とパク・シウ選手の試合も視ていて刺激になったし、藤野さんは修斗のチャンピオンになっていて。そこで『なぜ自分はこの試合なんだろう?』と思ってしまったんです。それだけ動きがあるなかで、自分だけ取り残されてしまっているというか」

――10カ月間、負傷で試合から離れていたことも大きいと思いますが……。

「それはそうなんですよ。でも今は、いつ失明するか分からないから後悔しないMMA人生を送りたい――もともと強い相手と試合がしたいとは思っていたけど、手術以降はよりその気持ちが強くなっていて。この人との試合、あるいはその試合のために練習しているなかで失明しても、納得できるような相手と試合をしたいんです。

よくレコードを綺麗にしたい選手がいるじゃないですか。私はそこに一切こだわりはなくて。『その相手、誰?』と思うような選手とばかり試合をして、レコードは綺麗だけどベルトは巻いていないとか。そんな選手にはなりたくない。限りある中で、どれだけ自分が満足するMMA人生を送ることができるか」

――……。

「まぁ綺麗なレコードを求めていたら、2戦目で藤野さんと試合していないですよ(笑)」

――確かに綺麗なレコードを求めるなら3戦目で黒部三奈選手、4戦目でSARAMI選手、そして5戦目で一階級上の万智選手とは対戦していないでしょう。

「そうそう(笑)。おかげさまで濃い、怒涛の日々を過ごさせてもらっています」

――今後はストロー級で戦っていくのでしょうか。

「そうですね。スーパーアトムは対戦相手がいないですし。今は通常体重を増やしています。万智の試合では、やっぱりストロー級との差は感じたので。修斗ならストロー級で、リベンジも賭けて藤野さんのベルトに挑みたいです。初戦の時より自信はあります」

――本野選手に帯同して、現地で目撃したRTUに挑みたいとは思いますか。

「周りから見て、『やってみたほうがいいんじゃない?』という声が挙がれば、挑戦してみたいです」

――というと?

「現時点で自分の体格や、タイで経験した打撃の圧力とかを考えたら、あの舞台で戦える自信はないです。でも、いつかはあの舞台で戦えるような――格闘技を見ている人たちに、それぐらい期待を持ってもらえる結果を残していきたいですね。

第三者から見て、期待できるかどうかがファイターとしての需要だと思っています。RIZINなら伊澤星花との対戦が期待されるかどうか。RTUは『渡辺なら優勝して、UFCでも勝てる』と期待してくれるかどうか。まぁ、その前に万智はコテンパンにして泣かしますよ(笑)」

■視聴方法(予定)
8月3日(土)
午後6時00分~ABEMA格闘チャンネル

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【DEEP JEWELS45】パク・シウと暫定王座&再起戦、万智「過去最強!! 勝って星花ちゃんと統一戦!!!!」

【写真】相変わらず、ド天然な元気っぷりを見せていた万智。悪霊に憑りつかれると思うほど、前回の敗戦は精神的にダメージがあったという(C)MMAPLANET

26日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP JEWELS45でDEEP JEWELS暫定ストロー級王座決定戦=パク・シウ✖万智が行われる。
Text by Manabu Takashima

コロナ期より日本をターゲットにトップファイターを目指してきたパク・シウに対し、昨年11月にキャリア1年で同王座決定戦に出場し松田亜莉紗に敗れた万智。

あれから半年を経て万智はさらに天然振りを発揮し、天賦の才を磨いてきたのか。その言葉では、想像もつかない今の万智──だが、とにかくインタビューでは絶好調さとハードな練習振りが伝わってきた。


――日曜日にパク・シウ選手と暫定ストロー王座決定戦です。その前に昨年11月の松田亜莉紗選手とのタイトル戦、スプリット負けという結果に関してですが……コールを受けた時、どのように思いましたか。

「勝ったと思いましけど……もう、ねぇ……」

──口が曲がっていますよ。

「アレは勝っていました、万智が。だから、ポカーンと夢みたいですよね。ドミさん(弥益ドミネーター聡志)も試合後、コーナーで凄く喜んでくれていて。梅田(恒介)さんは微妙な顔をしていました。でも、試合後に映像をチェックして『勝っていた』と……。『角度の問題だ』って。万智のヒジが当たったのと、相手のストレートが当たったのと。相手のセコンドも万智が勝ったと思っていたように見えました」

──万智選手が勝っていたという意見は少なくないですが、勝った松田選手には何も非はなく。松田選手陣営は、勝ったことを否定する必要はないですし。

「そうですね。まぁ向うはラッキーで、こっちはラッキーじゃなかったということですよね(笑)」

──その敗北をすぐに消化できたのでしょうか。

「あのう……皆には『落ち込んでいない』って言っていましたけど、結構引きずっていました……。練習にいっても、やる気を失って続けていた感じで。あの試合に集中して、その後のことも何も考えないぐらいだったので。でも、皆だって万智が勝ったと言っていましたよ……」

──勝ったと思った試合を落としたことで、何か学んだことはありましたか。

「もっと攻めないといけないな、と。あれだけコントロールしていたけど、判定負けするってことは。フィニッシュを目指さないといけないと思うようになりました」

──まだ不満そうですね(苦笑)。

「でも、今回タイトルを掛けてまた戦うことができるので」

──この試合が決まったのはいつぐらいだったのでしょうか。

「実は3月大会にもオファーがあったんです。あの時は古傷の具合が良くなくて、パクちゃんと戦うには……。なので5月にしてもらったんです。ただ3月の時は、タイトルは掛かっていなくて日韓戦のような感じで組まれていたんだと思います。結果、ラッキーだなって(笑)」

──その辺りで吹っ切れたようですね。

「もう、やる気満々になりました。タイトル戦の前から、次にやるのはパクちゃんだっていう空気だったので。でも、試合が正式に決まった時から、気持ちが入りました。なんか、呪われているなって思っていたんです。練習は好きだから続けていても、やる気がでない。身が入らないから、悪霊に憑かれている。絶対に何かがいるって」

──そろそろホラー系になってきましたね(笑)。

「真剣にそう思って、お祓いにも行きました!!」

──えっ……。絶句です。

「でも、何も変わらないから(笑)。呪いじゃなかったです。アハハハハ、試合が決まったらめっちゃやる気が出て」

──いや……。

「そうなんです。試合がないから、目標を見つけることができなくてやる気が起こらなかっただけで(笑)。もう、決まってからはやる気満々です」

──パク・シウ選手とは練習仲間でもあったので、練習環境を変えないといけなかったのではないですか。

「そこはパクちゃんが、52キロ級に上げたことで練習をしなくなっていました。マスタージャパンの金曜日の練習に行くのも止めて。JTTに行くようにしたのですが、(伊澤)星花ちゃんが所属になったので、JTTにも気まずくて行けなくなって。金曜日の朝は急いで宇都宮に帰って、正午からZEROでムエタイの練習をするようになりました」

──急いで、というのは?

「木曜日は東中野のトイカツ道場で練習をしてから、中野の友達の所に泊まっていたんです。次の日はマスタージャパンの練習があったので。でも、パクちゃんが韓国に戻ったので、またマスタージャパンでの練習を再開しました」

──とはいえ、マスタージャパンの女子練習で一緒の藤野恵実選手も同じストロー級ですよね。

「ハイ。試合をするとなったら……。藤野さんが修斗のチャンピオンになったことはめっちゃ嬉しいです。ヤバいぐらい嬉しかったです。でも、戦うとなったら調整が必要になるかと思います」

──現状の練習のルーチンは、どのようになっているのですか。

火曜日のアライアンスの練習メンバーと。野田遼介は、1週間後のONE FFで本田良介とリョースケ対決がある──とか、ないかと……という話も

「月曜日は佐野のグロリアMMAでグラップリングとムエタイ。

火曜日はここ(アライアンス)。水曜日が手塚(裕之)さんのところと、那須のクロウフォレスト。もうクロウフォレストの練習大っ嫌いです。みなにボコボコにされて……」

──そこも、つまりは……。

「ハイッ!! それだけ良い練習をさせてもらっていることなんですけどね(笑)」

──押忍。そして木曜日は?

「八丁堀で津田(勝憲)さんのパーソナルでミットを持ってもらっています。それから東中野ですね。金曜日が今はマスタージャパンと、土曜日がパラエストラ松戸、IGLOOからゼロです。そして日曜日がマスタージャパンの女子練習です」

──休息日は無しですか!!

「若いんで(笑)。ヤングですから」

──ヤング……。

「アハハハハ。でも一部練習の日もあるので、休めてはいます」

──なるほど……なのか……。これだけ色々なところで練習をしていて、対策などを立ててくれるのは梅田さんなのですか。

「ハイ、そうです。あとドミさんもセコンドに就いてくれるので。手塚さんも……手塚さんは声出し係ですけど(笑)」

──アハハハハ。ともあれパク・シウ選手は大変な相手です。

「私も大変だと思っています」

──?

「私もパクちゃんからすれば、大変だと思います。差はないです。過去一番強いです。でも、皆が『パクちゃんは大変な相手』と思っていることは分かります。昔、練習でボコボコにされていたし。

でも、パクちゃんも警戒していると思います。女だから、差はそんなにない。同じ性別だし、男の人と試合をするわけじゃないので」

──女子練習以外は男の選手との練習が、今も主なのですね。

「ハイ。多いです。あとはマスタージャパンでチィちゃん(澤田千優)と。チィちゃんがジヒン・ラズワンとやるまでは水曜日はパンクラスイズムで一緒にやっていて。移籍したので、マスタージャパンでやるようになって……今、一番の練習パートナーです。チィちゃんとは打撃有りで、マ~ジでガチスパーをやっていて。マジでヤバいです。力は凄くあるし、凄く良い練習になっています」

──とはいえパク・シウ対策という面では、ストライカーとの練習も大切になってくるかと思うのですが……。

「対策練習はやっていないです。自分のやることをやっているので。それをいくつかのパターン持っていて、得意なことを伸ばしているのですが、打撃の練習も頑張っているので。コンビネーションも皆に褒めてもらっています。

MMAの打撃が上手くなっているっていわれます。ゼロでムエタイをしたこともいきて、津田さんのミットでMMAの打撃が伸びている。だから組みばっかりパクちゃんが警戒してきたら、打撃だけで戦っちゃうかもしれないですよ(笑)。テイクダウン前もテイクダウン後も、めっちゃくちゃ考えるようになっているので。組みのパターンも増えて、際を頑張れるように。

その部分ではIGLOOでの練習も凄くタメになっています。(山田)海南江さんには、メチャクチャにやられて。自分が何も考えられないぐらい、やられているんですけどね(笑)。クルクル回されて──その技を、教えてくれるんです。寝技では一番の練習をしてくれています」

──今日の練習では足関節もかなりトライしていました。

「足関節は得意です。MMAでは使ってこなかっただけで(笑)。足関はメッチャ得意ですっ!!」

──すごいドヤ顔ですね。過去最強バージョン、期待が高まってきます。

「そうなると思います。練習でやっていることを、試合で出すことができれば」

──そのために必要なことは何になると思っていますか。

「気合い」

──体言止めですか(笑)。

「気合いです。根性、気持ちです。そこがあればデキる。パクちゃんは10年振りのタイトルマッチらしくて……あんなに強いのにチャンスがなかったから、ここに掛けてくる想いが強いと思います。

でも私はタイトルマッチを前の試合で経験して、しかも負けているから失うモノがないチャレンジャーの気持ちで戦えます。思い切りいくだけ。だから気合いと気持ちで頑張ります」

──勢いがそのまま言葉になっているように感じます。

「実は『稲妻メンタル』を読んで、メンタルを鍛えてきました!!」

──鈴木千裕選手の?

「ハイ。書いていることは当然のように参考になります。同時に元気過ぎて、一気に読めない(笑)。元気過ぎて、こっちがやられてくるので、精神面のスタミナ強化になっています(笑)。でも、練習で疲れて元気がない時に読むと鈴木選手の『気合いッス』っていう言葉で元気になれるんです。で、気合いが入って来る。鈴木選手はもうこれだけ実績を残した。私は何もない。こんなままじゃヤバい。だから気合いッス!!」

──浜口京子さんに見えてきました。

「似ているって言われています(笑)」

──元気な万智選手であることは間違いないようです。では、最後に改めてパク・シウ戦について意気込みの方をお願いします。

「色々な場所で、色々な人達にサポートをしてもらっているので、皆に感謝している気持ちを持ってパクちゃんと戦います!!

SARAMIさんがパンクラスを獲った。藤野さんが修斗を獲った。次は万智がDEEPを獲ります。パクちゃんが勝っても、もう星花ちゃんが戦いたいってならないから、タイトルを返上しちゃうと思うんです。だから万智が暫定チャンピオンになって、星花ちゃんと統一戦をします」

■DEEP Tokyo Impact2024#03視聴方法(予定)
5月26日(日)
午後5時20分~U-NEXT、YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、サムライTV

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修斗240519:第1部メインイベント・藤野恵実 vs. 杉本恵

初代女子ストロー級王座決定戦5分5R。

インフィニティリーグ2023女子ストロー級の優勝者と準優勝者の間での実施がアナウンスされていた初代女子ストロー級王座決定戦。

インフィニティリーグで優勝したのは元ストロー級クイーン・オブ・パンクラシストの藤野。1R一本勝ち、2RKO勝利の2度のフィニッシュを決め、3勝1分で勝ち点10を獲得し、同じく3勝1分だった杉本よりもフィニッシュ勝利数で上回ったことで、勝ち点で差をつけた。昨年11月のリーグ戦で杉本と対戦した際は、1Rにスタンドでのパンチと終盤のバックテイクで明確に取った藤野が、2Rにやや流して逃げ切りを狙ったことが裏目に出て、判定1-0でのドローになっている。

杉本は2019年に行われた『Woman’s SHOOTO -50kg インフィニティリーグ2019』で優勝。階級を上げて史上初のリーグ戦2度制覇を狙ったが、負けはなかったものの、勝利がすべて判定勝ちだったことで勝ち点が伸びずに準優勝に終わった。2020年11月のSARAMI戦で腕十字で敗れて以降は、6勝0敗2分で負けなし。

5分2Rで行われた前回の対戦から、倍以上となる5Rでの決着戦。藤野が2団体制覇を達成するか、杉本が悲願の初タイトルを獲得するか。

両者オーソドックス。藤野が詰めて右を入れる。ジャブで牽制する杉本。パンチを打ちながら組み付いた藤野だが、受け止めた杉本はケージに押し込まれず離れる。ジャブを突く両者。杉本がジャブから右ストレート。突っ込んできた藤野をいなして崩すと藤野から組み付いていく。引き剥がそうとする藤野。杉本が離れて距離を取る。ジャブを入れる杉本に藤野が組み付いていくが、離れた杉本。藤野は右ボディから左を入れる。杉本シングルレッグ。両足を引いて切った藤野。残り20秒でギロチンに捕らえて引き込んだ藤野。しかし杉本の表情には余裕があり外れた。1R終了。

2R。お互いインローを蹴る。ジャブを出して詰めた杉本が組み付くが、自ら離れた。お互いジャブを突いていく。杉本のジャブがヒットしているが、藤野は下がらない。藤野が右ストレートを打ち込み、組み付いてケージに押し込んだ。ヒザ・ヒジを入れる。離れた杉本。また藤野がパンチで飛び込む。左脇を差してケージに押し込みながら右でパンチを入れていく。離れ際にもパンチを入れた。杉本がバックブローを放ったが、背中を向けたところでバックを取った藤野。テイクダウンし上に。正対してハーフにした杉本だが、藤野が上からパウンド・ヒジで削っていく。ゴング。

3R。藤野のワンツーがヒット。もらった杉本が目を気にするが、レフェリーはアイポークとは判断せず続行。杉本がシングルレッグに入るが、藤野が両足を引いて切ると上に。マウント!パウンドを落とす。背中を向けた杉本にチョーク。反転して防いだ杉本だが、藤野がなおも上をキープ。サイドで押さえ込みながらパウンドを落としていく。亀になった杉本が藤野の左腕を両手で掴んでディフェンスするが、藤野がバックに回る。またパウンドを入れる。藤野が首に手を回すと向き直った杉本だが、藤野はハーフからマウントに!パウンド連打を打ち込むと、動けず打たれる杉本を見てレフェリー止めた!

3R3分43秒、TKOで藤野が初代女子ストロー級王者に。

藤野「ベルト取りました!プロデビュー20年目、今日で30勝目、めでたくできました。運動神経もないけど、みんな支えてくれるし、諦めないで続けてて良かったなって、格闘技をやるたびに思わせてもらっています。最高の人たちに恵まれている、いい格闘技人生です。まだ続けます!まだもっと強くなりたいんで、見ていてください」途中、涙ぐみながらも、最後は笑顔でコメント。

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45 AB ABEMA ARAMI MMA MMAPLANET o RENA RIZIN SARAMI Shooto Shooto2024#04 キック ソン・ヤードン チャンネル ボクシング 杉本恵 藤野恵実

【Shooto2024#04】藤野恵実と修斗女子世界ストロー級王座決定戦、杉本恵「藤野選手の圧力は感じなくて」

【写真】初戦の経験が、どう生きるか。楽しみな、25分間(C)SHOJIRO KAMAIKE

19日(日)、東京都港区のニューピアホールで昼夜興行として開催されるShooto2024#04では、第1部(昼興行)のメインで杉本恵が藤野恵実と修斗世界女子ストロー級王座を賭けて戦う。
Text by Shojiro Kameike

両者は昨年のインフィニティリーグで対戦し、結果は2Rドローに。しかしリーグ戦で優勝した藤野と準優勝の杉本が、ベルトを賭けたリマッチに臨むこととなった。杉本にとっては2度目のインフィニティリーグ挑戦で、初のベルト挑戦に辿り着いた。今回の試合に向けてタイはプーケットのタイガームエタイで練習していたという杉本に自身の成長と改善点、そしてベルトへの想いを訊いた。


――タイガームエタイで練習しているとお聞きしましたが、今もバンコクにいらっしゃるのですか。

「昨日帰国しました! 5月3日から10日間ほど、RENAと一緒にタイガームエタイで行かせてもらっていました」

――本野美樹選手もそうですし、RENA選手をキッカケにAACCからもタイガームエタイへ出稽古に行く選手が増えているのですね。

「そうですね。またRENAがタイガームエタイに行くと聞いて、私も試合前の追い込み練習で行きたいと思いました」

ソン・ヤードン、RENA、本田良介と(C)MEGUMI SUGIMOTO

――タイガームエタイではどのような練習をしてきたのですか。

「ボクシング、キックボクシング、寝技とMMAの全てですね。タイガームエタイにはいろんなクラスがあって、全てのクラスに参加できるので。おかげで1日3部練をやってきました。今までも阿部さんやAACCのメンバーと一緒に海外へ行ったことはありましたけど、これだけ長い期間、しかもガッツリと練習したことはなかったです」

――RIZIN神戸大会の前にタイで練習しているRENA選手にリモートでインタビューしたところ、ものすごく明るかったです。日本にいるとそうではない、ということではないと思いますが、タイの雰囲気がより人を明るくさせるのでしょうか。

「気候もあるし、タイガームエタイは練習環境も整っているので、すごく良い感じで練習することができました。私の場合は日本にいると、どうしても子供もいるし家庭のことも考えないといけなくて。今回はタイで集中して練習することができたので良かったです」

――杉本選手がタイで練習している間は、ご主人である阿部裕幸AACC代表がお子さんと一緒に……。

「ウチの場合は子供が二人ともAACCで練習していますからね。お父さんと一緒に練習へ行っていました」

――杉本選手は2013年に一度プロデビューし、お子さん二人の出産を経て2019年に復帰しました。小さいお子さんが二人いながら現役生活を送ることに難しさはないですか。

「周りの選手と比べても、どうしても練習時間は削られてしまいますよね。『いつまで現役を続けられるのかな……』とは考えたりします。でもそこは自分次第で、時間を見つけて強くなるしかないんだろうと思います」

――6年のブランクの間も、ずっと復帰したいという想いを抱えていたのですか。

「もともと小学校から大学までレスリングをやっていて、大学の後は就職してレスリングは辞めていました。その頃に阿部さんと出会い、最初はキッズレスリングの練習を手伝っていて――AACCでMMAの練習を見た時に、私もMMAをやりたいと思って。でもプロデビューして1年ぐらいで出産と子育てに入ったから、自分の中でやり切れていないという気持ちがあったんです」

――2019年に復帰するまでの6年間で、MMAも大きく変化していたと思います。分かりやすいところでは、国内でもリングよりケージが使用される興行が増えていました。その6年間のギャップは感じませんでしたか。

「確かにいろいろ変化していましたけど、その場に復帰することに対して怖さとかはなかったです。それよりも自分がまた皆の中に戻りたいという気持ちのほうが強くて」

――その気持ちに体は追いつきましたか。

「大丈夫でした。練習に復帰した時、思っていたよりも動けましたね」

――復帰後の2020年、黒部三奈選手とSARAMI選手に2連敗を喫して以降は無敗です。この2試合を境に杉本選手の中で何か変化があったのでしょうか。女子選手の中でも杉本選手は11勝3敗2分と勝率が高い。しかしトップどころには勝てないのか……という印象がありました。しかし次に対戦する藤野恵実選手との初戦(昨年11月)は2Rドローで、成長も見えた試合だったと思います。

「とにかく『負けたくない』という気持ちですね。私は負けず嫌いなので(笑)。AACCのメンバーがベルトを巻くなかで、早く私も追いつきたいと思って練習してきました」

――負けず嫌い、ですか。そう聞くと分かります。杉本選手は負けず嫌いの性格が強すぎませんか。

「アハハハ! そうですね」

――もともとレスリングのベースがあるのに、なぜそのベースを生かして戦わないのだろうかと思っていました。たとえば1Rは打撃戦で、2Rになるとテイクダウンからコントロールするという展開が多く……。

「それ、みんなに言われます(苦笑)。私は打撃がヘタクソなので、1Rはどれだけできるか試したくなってしまうんですよ。でもパンチが強くないこともあって、2Rはテイクダウンするという。本当は1Rからレスリングで勝負したほうが良いことは分かっているんです。でも、どうしても殴り合ってしまって」

――杉本選手の場合、気持ちが強すぎて前に行きすぎているように感じます。

「それはありますね(笑)。私は不器用で、一つのことしかできないんですよ。打撃は打撃、レスリングはレスリングと、どっちかになってしまいます。それも以前よりはバランスも良くなっているのかなぁ、とは思っているんですけど」

――藤野選手との初戦では、その成果が出たと思いますか。

「あの試合は思っていたよりも藤野選手の圧力は感じなくて、『これはいけるんじゃないか』と。相手の力強さも警戒はしていたものの、その点も対応できて。意外と冷静に戦えていたと思います」

――序盤にフラッシュダウンがありながら、テイクダウンを奪ってドローに持ち込めたのも冷静さがあったからこそですね。

「あぁ、あれはフラッシュダウンじゃないんですよ。体当たりというか、押されて転んじゃったんですよね(苦笑)」

――体当たりが強く転んでしまった……それはそれで、相撲MMAの真骨頂です。

「でもパンチを出していたので、あれはフラッシュダウンに見えても仕方ないです。あの時だけは、すごい圧力を感じました」

――冷静に戦うことができていた、というのは続く宝珠山桃花戦で証明されたのでしょうか。相手を打ち合いに引きずりこむことがある宝珠山選手に対して、杉本選手は打ち合いを挑まなかったです。

「相手が打撃の選手だったので、テイクダウンから優勢なポジションを押さえて勝つことは決めていて。いつも『相手が打ってきたら、こちらも……』という感じで試合をしてきましたけど、宝珠山戦はその気持ちを我慢しました(笑)」

――アハハハ。前回のインフィニティリーグと今回とでは気持ちも違いましたか。

「前回は復帰という意味で、『できる範囲で頑張れたら』と思っていました。でも2回目となると『絶対に勝ちたい』という気持ちは強かったです。その中で、藤野選手との試合はドローでしたけど手応えはあって。自分の気持ちと試合内容が、ようやく形になってきて――2回目のインフィニティリーグ挑戦で、ようやくベルトが懸かった試合にたどり着くことができました。次は絶対にベルトを獲りたいですね」

――初戦は2R戦で、次は5R戦です。その違いは意識しますか。

「2Rと5Rでは全然違いますよね。私自身やってみないと、どうなるかは分からないです。でも自分がやるべきことを全て出すというのは変わらないですね。5Rフルで戦うことになるかどうかは分からないけど、ラウンド一つずつ自分のレスリングを生かして全力で勝ちに行きます」

■視聴方法(予定)
5月19日(土)
午後12時30分~ABEMA格闘チャンネル

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【Pancrase341】右ストレート一閃! SARAMIが沙弥子を秒殺KOして初代アトム級QOPに

【写真】この喜び方を見ると、本当に意外なKO勝利だったのか (C)MMAPLANET

<アトム級QOP決定戦/5分5R>
SARAMI(日本)
Def.1R0分48秒 by TKO
沙弥子(日本)

沙弥子が右ローを見せる。左を突きながら距離を測るSARAMIにプレスをかけていく。ケージ中央まで押し戻したSARAMIが、右ストレート一閃。この一撃が沙弥子のアゴを打ち抜き、ダウンした相手に左のパウンドを連打してレフェリーストップを呼び込んだ。

修斗に続きパンクラスのベルトも巻いたSARAMIは「正直、自分でこんな勝ち方ができると思っていなくて。格闘技人生で2つめのベルトを獲りました。今までやってきた自分を褒めたいと思います。チャンピオンベルトを獲ったからといって、これからの人生が何か大きく変わるわけではないことは分かっています。私の格闘技人生を、もっと明るいものにしていればと思います」と挨拶した。


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【Pancrase341】アトム級QOP王座獲り=沙弥子戦へ、SARAMI「恥ずかしくない自分でいたい」

【写真】格闘家はいつまでも格闘家を名乗り続けることができる──だからと、表題の言葉を話したSARAMI。グッとくる言葉です(C)TAKUMI NAKAMURA

31日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE 341にて、アトム級クィーン・オブ・パンクラス王座決定トーナメント決勝としてSARAMIが沙弥子と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

2021年に修斗で女子世界スーパーアトム級のベルトを巻き、キャリア2本目のベルトを目指してアトム級クィーン・オブ・パンクラス王座決定トーナメントにエントリーしたSARAMI。

準決勝のジェニー・ファン戦は、ファンにやりたいことをやらせない試合運びで判定勝利を収めたが、そこにはメンタル面の充実や格闘技への取り組み方への変化があった。

沙弥子との決勝戦が決まり、記者会見の場では「格闘技との向き合い方や深みという点では、まだまだ私とは比べものにならない」という言葉も出たSARAMI。今回のインタビューでは試合への意気込みはもちろん、この発言の真意も訊いた。


──試合まで1週間を切っていますが、練習の状況はいかがですか。(※取材25日に行われた)

「昨日がスパーリングは最後で、あとはミット打ちをやってもらってという感じで調整します」

──今回はアトム級クィーン・オブ・パンクラス王座決定トーナメント決勝ということで、前回の準決勝のジェニー・ファン戦を振り返っていただけますか。

「結果的にジェニー・ファン選手が思ったよりも強くなかったのか、自分の方がちゃんと強かったのか…ですが、自分のやることをしっかり出せた試合だったと思っています」

──もっと苦戦する試合展開を想定していたのですか。

「ファン選手が凄い勢いで攻めて来て対応できないかなと思っていたし、あんなスピーディーにテイクダウンが取れるとは思っていなかったですね」

──ファン選手は3Rからアグレッシブに攻めて来ましたが、1・2Rは自分のペースで戦えているという手ごたえはありましたか。

「はい。3Rになってファン選手が出てきましたが、最初からあれをやらせなかったのは私だったと思うし、相手を(攻めに)来させなかったという部分で自分は成長したなと思います」

──SARAMI選手と対戦相手の相性や対策もしっかりハマったと思うのですけど、それ以外の部分でファン戦前に取り組んだことはあったのですか。

「メンタルトレーニングを始めました。始めて5カ月、月2回のペースなのですが、メントレの先生に『最近自信がないんです』というところから話をして、自分の頭の中を整理して…ですね。私って練習をすればするほど『今日も上手くいかなかったな』というメンタルになって、どんどん自信がなくなっていくんですよ」

──ダメな方ばっかりに目が行ってしまうのですか。

「そうです、そうです。できない自分・ダメな自分ばっかりを見ちゃっていて、ずっと自分に自信がなかったです。そこをもう少し自分ができたところを見てあげたり、自分のやるべきことにフォーカスして1つずつ積み重ねていくようになったら、ああいう試合ができました」

──試合直前のメンタルも今までとは違いましたか。

「緊張するのは一緒だし、プレッシャーもあったんですけど、とにかく自分がやるべきことをやらないと勝ちに繋がらないという意識で、ずっと練習からやっていて、それがしっかりできたのかなと思います」

──しかもそれで実際の試合でも相手の強いところをほぼ出させずに勝つことができたわけで、それもまた自信になりますよね。

「そうですね」

──自分ができなかったことではなく、自分ができたことに目を向ける。同じ練習をやっていても捉え方が変われば、今までとはガラリと変わりますよね。

「はい、変わりました。今までは北岡(悟)さんや川村(亮)さんに頼ったり、人に甘えていた部分があって、だいぶこの数年で変わってきたと思うんですけど、今回はちゃんと自分で作ろうと。1人になっても試合ができるように自立してやっていこうと思って、自分でこれがいいと思ったものを選ぶようになったんです」

──自分の意志でやりたいことが明確になったのですか。

「はい。そういうことをちゃんと自分で考えて作ってこられたのかなと思います」

──例えばSARAMI選手は周りからのアドバイスを聞きすぎてしまう部分もあったのでしょうか。

「そうかもしれないですね。自分ではこうしたいと思っていても、人の意見を聞くとブレるんですよ。でもそこを何とか自分で作れるようになったのかな…とは思います」

──改めてトーナメント決勝では沙弥子選手と対戦することになりました。組み合わせが決まった時、沙弥子選手が勝ち上がってくることは予想していましたか。

「してないですね。私は(V.V)Meiさんだと思っていました」

──沙弥子選手とMei選手の準決勝はスプリット判定の接戦でしたが、試合映像を見た感想はいかがですか。

「沙弥子選手は勢いがあるんだろうなと思います。このベルトを作ってほしいと言った張本人ですし、そうやって周りを自分の方に持っていく力とか、準決勝も微妙な判定だったかもしれないけど、そこを勝ち取るというのも沙弥子選手のパワーだと思います」

──確かに沙弥子選手はどちらに転ぶか分からないところを自分の方に持っていく勢いはあると思います。その相手にSARAMI選手はどのような試合をしたいですか。

「試合としては沙弥子選手が私とやって、やっぱりSARAMIは強かったなって思わせたい。勢いを持っている・持ってないは関係ないぐらい、私が圧倒したいというか。私がやるべきことをやれば自然にそうなると思っています」

──対戦相手もいますが、自分との勝負に勝つこと大事だと。

「試合になったら周りは関係ないですからね。ケージの中に入って戦うのは2人だし、それまでの勢いや周りの応援は関係ない。(1対1で)勝負しようよっていう感じです」

──記者会見では「格闘技との向き合い方や深みという点では、まだまだ私とは比べものにならない」というコメントもありました。そこも含めて自分が圧倒するという言葉につながるのでしょうか。

「そうですね。これは沙弥子選手に限らず、みんなもっと考えた方が良いですよね。競技に対してだったり、自分の形を持つことだったり。例えばさっきのメントレやムーブメントトレーニングは強い人はみんなやっているけど、そこまでやれてない人はたくさんいると思うんで。そういった意味で『比べものにならない』というのは、沙弥子選手に対してというよりは、その他大勢の選手に対して言ったことですね」

──それこそベルトが懸かった試合だったり、トップを目指していく選手になるためには、勢い以外のことも求められると思います。SARAMI選手もベルトという意味では2021年に修斗のベルトを巻いていますが、あの時と今を比較すると、SARAMI選手自身も周りのシチュエーションも違いますか。

「全然違いますね。やっぱりあの時はもっと自分がない状態で、みんなに甘えて、たまたまちょっと頑張ってベルトが獲れた、そんな感じだったんです。でも、今回は自分で勝ちを取りに行く感じなので、そこが違うかなというところと、修斗のベルトを失ってからRE-VIVEというジムに通うようになって、そこにはオリンピックに出るようなアスリートの人たちも通っているんですね。そういう選手たちと接していると本当にみんなしっかりしていて、競技への考え方が格闘技の選手とは違うんですよ。ある意味、格闘技はちょっと練習して頑張ればプロの試合に出ることが可能じゃないですか」

――純粋なファイトマネーだけで生活できている選手はごく一部だと思いますが、ファイトマネーが発生するという意味でのプロ選手は多いですし、ほかのスポーツと比較するとプロの位置づけは違うと思います。

「だから自分はプロ格闘家です、チャンピオンです、ベルトを持っていますと言った時にやっぱり恥ずかしくない姿でいたいし、本来はそこまでしないと生き残れない世界だと思うんですよ。でも格闘家はいつまでも格闘家を名乗っていられるものだから、そこで恥ずかしくない自分でいたいなと思うし、そう思うようになってから意識が変わりましたね」

──その意識で格闘技に取り組んでいるSARAMI選手がベルトを巻けば、新しい変わるきっかけにもなると思うのですが、自分自身への期待もありますか。

「そうですね。ただ勝った後のことはあんまり考えてなくて。引退も近いんだろうなとは正直思っているし、ベルトを獲ってまた世界が変わったらいいなと思います」

──安易にストイックという言葉はあまり使いたくないのですが、SARAMI選手はキャリアを重ねて『これぐらいでいいだろう』ではなくて『もっとできるだろう』と思って、それを実践しているわけじゃないですか。その部分でSARAMI選手に注目する方も多いと思います。

「どうなんですかね。でもデビューした時期で言ったら私と沙弥子選手は2~3年しか変わらないんですよ。年齢も同じだし。それで私が勝ったら『またSARAMIかよ』って思われないですか(苦笑)」

──勝負の世界なので、そうは思われないでしょう。

「キャリア的には私が上ではありますけど、沙弥子が新しい選手というか新世代みたいに思われているのは…ちょっとだけイライラします(笑)」

──今日は試合以外にも色々な話をありがとうございます。それではインタビューの最後に締めの一言をいただけますか。

「あぁ…私が一番苦手なやつですね(笑)。(しばらく考えて)楽しんで見てください! 以上です!」

■視聴方法(予定)
2024年3月31日(日)
午後1時00分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

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【Pancrase341】SARAMIとアトム級QOPの座を賭けて対戦。沙弥子「王者に相応しい人間かを証明する」

【写真】車で移動中にZOOM取材に応じてくれた。多謝です(C)TAKUMI NAKAMURA

31日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE341にて、アトム級クィーン・オブ・パンクラス王座決定トーナメント決勝として沙弥子がSARAMIと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

トーナメント準決勝ではV.V.Meiをスプリット判定で下した沙弥子。Meiの組技に苦戦したことを修正しつつ「今あの試合に自分の気持ちを置いても意味がない」とSARAMIとの王座戦に備えてきた。

沙弥子はMei、SARAMIというキャリアで勝る選手たちを倒すことに価値を見出し、パンクラスのベルトを狙う。


――準決勝のV.V Mei戦はスプリット判定という結果でした。あの試合を振り返ってもらえますか。

「もっとMei選手を組んだり投げたりできると思ったんですけど、予想以上に力の配分が上手かったり、タックルに入るテンポやタイミング、倒されてからの速さが予想以上だったので、対処が追い付かない部分があったんです。

バックを取られたときもセコンドの勝村(周一朗)さんから、私は逃げるのがそこまで上手くないので『無理に暴れても意味がない。殴って隙ができたら回れ』と言われていて、そこは冷静に指示通りにやれたかなと。自分の良い点と悪い点が分かった試合だったと思います」

――バックを取られた状態で後ろのMei選手を殴る場面が多かったですが、Mei選手の方が優れているであろうスクランブルの攻防を仕掛けるより、殴って嫌がらせして逃げるという判断だったのですね。

「そうですね。しっかり首を対処して殴れる時に殴って逃げるタイミングを待とうということでした」

――ただしバックキープされる時間が長く、ポイント的に不安になることはなかったですか。

「2Rが終わった時点のオープンスコアでポイントが割れていましたし、勝村さんに『ポイントをとられていますよね?』と聞いたら『そうだね』という意見で。3R、勝つためには攻める以外なかったので、相手を見ないで前に出るしかないと思っていました」

――勝つために自分が出来ることをやろう、と。

「あとは自分に恥ずかしくない試合をしたかったです。私はずっとMei選手とやりたくて、いざ試合でMei選手を怖がったり、前に行けない試合をするなら、倒されてもいいから自分に恥ずかしくない試合をしたい一心でした」

――判定を待っているときの心境は?

「試合が終わったときも周りに『すいません、負けました』と言って、私自身も負けたと思っていました。だから判定勝ちを告げられた時、あの会場で一番びっくりしては私だったと思います」

――SNS上でも判定に対して色々な意見が出ていました。

「色々と言われて、しばらくは落ち込みました(苦笑)。すっきりした勝ちではなかったので。でもジムのみんなが勝ちは勝ちだからと言ってくれたので、そこで立ち直ることができました」

――準決勝をクリアしたことはどう捉えていますか。

「みんなが納得する試合ではなかったので心残りがあると言えばあります。でも今あの試合に自分の気持ちを置いても意味がないと思っているので、あの試合は過去の試合、過去の自分として、今はSARAMI戦に集中しています」

――そのSARAMI戦に向けて、どのようなことを意識して練習してきましたか。

「SARAMI選手も組みが強くて、前回の試合では組みの対処が遅かったので、そこを意識しています。あとは動きのテンポが遅くならないように、自分の流れを自分で作ることができるように練習しています」

――SARAMI選手はMei選手と同様にキャリア豊富で上手さを持っている選手です。

「練習させてもらったこともあるし、力の入れどころ・抜きどころがすごく上手い選手だし、固める力や腰の力もあって、要所要所格闘家として必要な力を持っている選手だなと思いました。試合の流れを創る、ペースの配分、力の使い方…色んな経験をして勝つことの難しさを知っている選手なので、勝ちに徹することができる。変なギャンブルはしない、安定している選手だと思います。だからそこを自分がどう崩すかがキーポイントだと思います」

――動じないSARAMI選手をどう崩すか、ですか。

「Mei選手とやってもそうだったのですが経験豊富な選手は本当に動じないので。その場で自分ができることをやろうと思うし、逆にビクともしないならこっちからやってやろうじゃんって」

――トーナメントの勝ち上がりを見ると、準決勝でMei選手、決勝でSARAMI選手とキャリアが上の選手と対戦することになって、まさに沙弥子選手がチャンピオンに相応しいかどうかが試される相手との試合が続きますね。

「まさしくその通りですね。Mei選手に勝つこと、SARAMI選手に勝つことは本当に大事なことだと思います。見ている人たちもどれだけ2人が強いかを知っているし、2人に勝つことにどれだけ価値があるかも分かっている。私がチャンピオンに相応しい人間かを証明するためにも、パンクラスのベルトが似合うためにもあの人に勝つことが一番だと思います」

――決勝戦を前にしてベルトへの想いを聞かせてください。

「前回はベルトを意識しすぎたかなと思います。今回は勝てばベルトが手に入る試合ですが、そこを考えると空回りすることが多いので、ベルトのことは一旦置いておいて、シンプルにSARAMI選手に勝ちたい気持ちで戦って、その先にベルトがある・みんなにチャンピオンとして認めてもらいたいと思います」

――沙弥子選手にとっては一発勝負のタイトルマッチや王座決定戦ではなく、トーナメントでベルトを目指すことが大きいようですね。

「はい。ベルトまで2試合あることでベルトへの想いが強くなっていますし、経験を積む、厳しい道を進む……それも含めてこのメンバーのトーナメントでよかったと思います。ベルトを獲れば自分のビジョンも明確になるので、それを有言実行することを考えて日々過ごしています」

――最後にファンの皆さんに向けてメッセ―ジをいただけますか。

「パンクラスのベルトを取って皆さんと大喜びしたいです」

■視聴方法(予定)
2024年3月31日(日)
午後1時00分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

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