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【Banana Oil 2025─06─】ProgressとKNOCK OUT Unlimitedで強くなる日本のMMA─02─Unlimited編

【写真】(C)MMAPLANET

12日に大阪でGladiator、19日は東京でプロ修斗公式戦が開催され、米国でもLFAやUFC、中東では先週末にUAEWがアブダビで、今週末にはPFLがドバイで始動するように2025年のMMA界は既に動き始めている。UFCに絶対の価値を置いたJ-MMAを想定し、如何に強くなるかを考えるコラムも今回を最終回としたい。
Text by Manabu Takashima

「日本人選手の5勝1敗は、米国では2勝1敗」。「修斗、パンクラス、DEEPのタイトルはUFCで戦える力をつけるために、意味はない」──このショッキングなヘンリー・フーフトの言葉を現実的に捉えると、日本のMMA界は社会構造として興行主が生き残るために懸命で、強さ=ビジネスという状況にない。

結果、勝負論とは別軸でエンターテイメント性に重きが置かれ、選手達の思考回路もそちらに軸が置かやすくなりがちだ。日本の格闘技界には(世界中を見渡しても──だが)UFCのような資金力はない。それでも、その道しか存在しない多くの国と違って、格闘技を戦うことで得られる「幸」は多い。そんな独特な格闘技文化がある日本だからこそ、国際戦の数は減少し、世界との違いや距離を肌感覚、空気で知る機会も減った。

それでもMMAでなくても実戦で選手は強化できる。そんな2024年に感じた成果と希望──スクランブルにポイントを与えた組み技=Progressに続き、立ち技プロモーション=KNOCK OUTが2023年末より導入したテイクダウン、パウンドが許されたUnlimitedルールによる日本人選手の強化を探りたい。


KNOCK OUTを率いる山口元気さんは、自分が格闘技の記者を始めた1995年には既に日本のトップキックボクサーだった。強さを求め、UFC以前には地上最強と思われたムエタイに傾倒し、強い相手と戦うためなら自身で相手のファイトマネーを工面するまでしていた格闘バカだ(スミマセン)。

ちょっといい加減なところもあるが、ファンから記者になった頃の自分にとっては吉鷹弘、金泰泳に次ぐ憧れの人だったこともあり、そんないい加減なところも強さを求める姿勢に霞んでしまう。キックの記事を書かなくなり、相当な年数を経ても定期的にやり取りをするような間柄が続いてきた。

元気さんが自分に振る話題の90パーセント以上が、選手の強化策。しかもMMAで勝つためだ。海外からトレーナーを招きたい、合宿所を創る。MMAで勝つための首相撲、ヒザ蹴り、タイナーの有効性。ジムの拡張とプロチームの結成。打撃で勝てるための組み技、寝技の強化。そんな話ばかりをしてきた元気さんが、キックボクサーやムエタイ戦士がMMAに転向するため、キックとMMAの接点としてUnlimitedルールを遂に興行に組み入れ始めた。

試合時間は3分3R、MMAグローブ着用で投げ、テイクダウンが認められ、寝技でもパンチ、蹴り、ヒザ、ヒジによる攻撃が許されている。サッカーボールキック、踏みつけも4点ヒザもOKで、関節技&絞め技は反則だ。ブレイクはスタンドもグラウンドもMMAと比較すると非常に早い。

一昨年12月の同ルール初戦はMMAファイターの三上ヘンリーが、極真空手のパトリック・ケンソンから左ストレートでダウンを奪い、サッカーボールキックから鉄槌とヒジの連打で勝利を収めた。昨年7月にはNOCK OUTの首相撲やヒジ無しルールのチャンピオンである栗秋祥梧が、RIZINを主戦場とする中村優作を左ストレートでKOしている。

そして昨年12月30日に、その栗秋が元LFAフライ級王者で元UFCファイターのカルロス・マタを迎え撃つ一戦を始め、グレコベースの倉本一真がムエタイの重森陽太と、さらにキックボクサー同士のバズーカ巧樹×大沢文也というUnlimitedルール3試合が行われた。

元気さんは強さを追求するだけでなく、興行主だ。スポンサーを獲得し、チケットを売って選手と観客、応援してくれる人々を満足させることが職務だ。だから格闘技を連想させる喧嘩マッチでなく、喧嘩を想像させる格闘技を世に伝えなければならない。

加えてキックボクサーが日本の格闘技界のトップであるRIZINルールに移行することも、当然のように考慮している。

つまりUFCを軸とした日本人ファイターの強化策以外のファクターも、Unlimitedルールには散りばめられている。

キックボクサー同士の対戦は、まさに喧嘩を匂わせた。

組みとグラウンドでの打撃があることで、中間距離以内のレンジでのコンビネーションを駆使する戦いではなく、一発狙い。

そこに殺気と恐怖心が入り混じっていることで、動きはどうしても荒くなるように映った。

そして、一方の選手が下になると──第1回VTJのヒクソン・グレイシー以外の選手が放つ、本能の赴くままの打撃が見られた。

2試合目の重森×倉本は、まさに異種格闘技戦の様相を呈していた。

殴りたい重森、倉本は殴られずにテイクダウンし、抑えつつダメージを与えたい。組みの展開は動きがないと、ブレイクになる。重森陣営は膠着を誘発して打撃の間合いに戻ることを第一の対策とし、スクランブルに持ち込んで立ち上がるだとか、テイクダウンを切って間合いを取り直すという動きは放棄していた。それらの技術の習得には時間が掛り、彼らにとって本分ではない(MMAファイターを本格的に目指すなら、時間を掛ける必要があるが)。勝つためにリングに上がっているのだから、当然だ。

倉本は何度ブレイクが掛かっても、倒して、殴る。最終的には削って、2Rにパウンドアウトで勝利した。RIZINでトップを目指すなら、テイクダウンをしてサッカーボールキックという選択肢もあっただろう。サッカーボールキックは足の甲を痛めそうで避けたいのであれば、踏みつけ。あるいはがぶってニーなど、ブレイクされない攻撃手段は存在する。が、それを時間に追われて畳みかけ続けると自らが体力的に削られ、打撃の間合いで神経も削られることを考えると、一気呵成に攻めるという手段に出られなかったのは分かる。

対戦相手だけでなく、倉本にとっても初めてのルールでの戦いだったのだから。

と同時にトップコントロールした時、もっと有効なパウンドを序盤から落とすことができれば、ブレイクの数も減っていたという見方もできる。

Unlimitedルール最後の試合は、非常にスリリングだった。

栗秋の打撃は蹴りもパンチも相手を倒す、ダメージを与えることができる。

テイクダウン防御は簡単ではないが、寝技ではスクランブルに持ち込むだけでなく、リバーサルを決めるシーンもあった。加えて3Rには全くテイクダウンを警戒していないモタに、ダブルレッグを決めサッカーボールキックを蹴り込む場面まで見られた。

結論をいえば終始モタが組み勝ち、コントロールでもクリアに柔術的なポジションを奪取し続けた。それでもパウンドに心が折れず、栗秋は判定勝負になるまで粘りを見せた。

キックボクサーがUnlimitedをキックとMMAの接点として、MMAファイターへの移行を図るならテイクダウン防御と、倒されても立つという練習を日々、日常的に採り入れる必要があるのは明白だ。

(C)RIZIN FF

その上で短いブレイクを生かして、戦う。

仮に大晦日のカルシャガ・ダウトベック×YA-MANがUnlimitedルールで組まれていたなら、打撃の圧を嫌がったダウトベックはテイクダウンをしてもステイトップはできず、立ち技で削られてYA-MANに敗れることも十分に考えられる。

Unlimitedを生かし、強豪MMAファイターと立ち会う。その間にジムで、テイクダウン防御とスクランブル力をつける。練習はもう、打撃より組み重視だ。それこそが、キックから転向組のベストUnlimited活用方法だろう。

(C)RIZIN FF

一方MMAファイターとすれば、短いブレイクを許さず如何にダメージを与えるのか。

寝技でクラッチをするのではなく、腰、腹など体の軸と一方の手足=先端のコントロールで対戦相手を制する術を学び、余った方の手で力強いパウンドを落とす。そう、これも大晦日で堀口恭司が、ズールーを相手に見せていた抑え&パウンドだ。

スクランブルに長けた相手と戦う機会があれば、金網をより押し込みにくいロープ際の攻防は、組み&パンチ=ダーティーボクシングの技術力アップになるに違いない。クラッチをしないで如何に制することができるのか。ここの技術力アップは、前回触れさせてもらったPROGRESSが絶対的に効果的だ。それ故にMMAでなくとも、UnlimitedとProgressで日本のMMAファイターは強くなれると、定義した次第だ。

Unlimitedに関していえば12月30日の試合出た選手たちがキックやムエタイで、どのような戦いをしているのか理解せずに、このようなことを書くのは失礼にあたるだろう。それでも彼らが、よりMMAを距離とタイミング、つまり間合いを研究した打撃を駆使できていればと素直に思った。その上達こそが、彼らがMMAで成功に近づき、MMAファイターの強化にも通じる。

テイクダウンを考慮した間合い、重心、ステップ。キックでもムエタイでもない。しかし、キックとムエタイの理をMMAに落とし込んだ打撃術が発展する。これこそが、UFCに絶対の価値とした日本人選手の強化策に最大の効果をもたらすに違いない。

テイクダウン防御は完璧でなくてもブレイクが早いルール特性を生かし、組ませない打撃をファイターだけでなく指導者───殴る、蹴るの専門家──が進化させてくれれば、その打撃に対応して組んで倒す、そこからコントロールとダメージをシンクロさせた技術がMMAファイターに不可欠となる。

さらにテイクダウンを切り、倒されても立つことがキックボクサーからMMAファイターを目指す選手たちが磨いていく。倒してサッカーボールキック、組まれて膠着誘発の向う側に──キックボクサーも和製ナックモエも、MMAファイターも強くなれる要素が散りばめられている。それこそが元気さんがMMA界に持ち込んだ、Unlimitedのポテンシャルだ。

もちろんRIZINで勝つためのUnlimited、KNOCK OUTを盛り上げるためのUnlimitedが存在しても良い。ただし、UFCと契約してオクタゴンで勝つことを目指す立ち技選手、MMAファイターは上に挙げたようなUnlimitedの効果的な活用法を見出して欲しい。

改めて書き記すと日本のMMAファイターはProgressとUnlimitedで強くなれる。いやぁ、四半世紀も前にαとΩを考案した佐山さんって、どれだけ天才だったのだろう。

ただし、天才には継続する持続力や理解者がなかった。今の日本の格闘技界は違う。

日本はまだまだ強くなれる。日本の5勝1敗は北米の5勝1敗と同等になれるし、修斗、DEEP、パンクラスのベルトはUFCで戦える力をつけるために意味があるようになる。HEAT、Grachan、Gladiator、NEXUS、TTF Challenge、CROSS X OVER、Breakthrough Combat、Bloom FC、PFC、GFGで戦うことは、頂点に通じる道を切り開く。そんな日本に、まだなれると信じているという言葉を──長すぎた新年の挨拶の締めとさせていただきます。

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45 AB MMA MMAPLANET NEXUS NEXUS38 o UFC YouTube スチュアート・ニコル 北野一声 堀江耐志 大谷啓元 荻窪祐輔

【NEXUS38】北野一声、ダイレクトリマッチで荻窪祐輔に挑戦。大谷啓元の粘りは、堀江耐志に通じるか

【写真】3回戦──が鍵となる?!(C)TAKUMI NAKAMURA

18日(土)、Fighting Nexusより3月2日(日)に東京都新宿区のGENスポーツパレスで開催されるNEXUS38の対戦カードが発表されている。
Text Manabu Takashima

NEXUSフライ級選手権試合、チャンピオン荻久保祐輔が北野一声の挑戦を受ける一戦は昨年11月の後楽園大会の再戦となる。


ストロー級でも倒せる拳の持ち主、北野は昨年3月に1年10カ月振りの実戦を豪州のBeatdown Promotionで行い、現UFCファイターのスチュアート・ニコルと対戦──も、初回KO負けを喫した。この試合前に今後はフライ級で戦うか、ストロー級でやって行くのか決めるという発言もあったが、NEXUSでの再起戦はフライ級で王者とノンタイトルで戦うことになった。

結果、スタントで優位に立った北野は荻窪の試合をさせずにフルマークの判定勝ちを収め、タイトル挑戦を宣言していた。ダイレクトリマッチがタイトル戦、当然のように今回は最初から3Rが想定されている。2回戦は瞬発力が持久力よりモノをいうが、3回戦は違う。

荻窪陣営も、3Rを戦ったことがない北野のことを研究し尽くして、ケージに足を踏み入れるはずだ。北野は倒せるという強味を、持久力を伴う必要がある戦いでどれだけ出せるのか。今後の試金石となる王座挑戦といえるだろう。

2022年グレコローマンレスリング72キロ級優勝で、2023年の世界選手代表からMMAに転じた堀江耐志が2戦目も発表されている。対戦相手は大谷啓元。当然のように抜群のフィジカルを誇り、トップ奪取能力を持つ堀江に対し、1年5カ月振りに実戦復帰の大谷のディープハーフからのスイープや、スクランブル中のバック奪取、あるいはラバーガードやゴゴプラッタという技が通じるのか。大谷のねちっこい寝技が、レスリング・エリート堀江にどこまで通るのか。対戦も要注目だ。

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45 AB Gladiator Gladiator029 MMA MMAPLANET NEXUS o YouTube   デマルケス・ジャクソン パン・ジェヒョク 八隅孝平 小森真誉 平田直樹 河名マスト 田中有 矢地祐介

【Gladiator029】新ライト級王者 小森真誉「『ロータスは強い』と八隅さんに言ってあげたかった」

【写真】日々指導してくれる八隅への想い、日々練習しているロータス世田谷への信頼感が小森にベルトを巻かせた(C)MMAPLANET

12日(日)、大阪府豊中市の176boxで開催されたGLADIATOR029のメインで田中有をパウンドアウトし、ライト級のベルトを巻いた小森真誉。
Text Manabu Takashima

八隅孝平に師事し、大道塾吉祥寺支部の飯村健一に手ほどきを受けたムエタイを消化したことで飛躍が期待されながら勝ち切れない。そのポテンシャルが試合で発揮できずに周囲をやきもきさせてきた小森が、ベルトを巻いた。しかしながら、スクランブルでの代役出場は普段戦う階級より1クラス重いモノ。

そのうえ前回の試合で敗れており、この挑戦は興行有りきのタイトル戦に必要なピースという見方をされていた。そして絶対的なアンダードッグと見られていた現実を跳ね返し、チャンピオンとなった小森にイベント終了直後に話を訊いた。


『なんでやねん』と普通に思いますよね

――タイトル奪取、おめでとうございます。

「ありがとうございます」

──MMAPLANETでは代役でタイトルマッチが決定した際、前回の試合はフェザー級で敗れている選手がベルトを掛けて戦うことに疑問を抱き、小森選手に事前取材をすることをせず申し訳ありませんでした。

「いや、分かります(笑)。というか、もう選手も含め格闘技関係者全員がそうだったと思います。田中選手のための試合で、相手を探しているということだとも理解していました。田中選手も本当にベルトが欲しいんだなって」

──私が個人的に耳にした話では、田中選手はデマルケス・ジャクソン戦がなくなり、相当に落胆しタイトルマッチでなくても……という気持ちだったと。いずれにせよ、このオファーがあり、勝算があるなら小森選手陣営は受けて当然だと思います。ただ、この試合をタイトルマッチとしたプロモーションサイドの決定に我々は首を傾げていました。

「そうなのですか……」

──これは個人的な話ですが、ロータス世田谷に取材にいくといつも練習をしている小森選手の姿を見させてもらっていました。そしてある基準を設けているMMAPLANETの取材対象になるところまで上がってきて欲しいと、勝手ながら思っていました。ですので、この形でないタイトル戦。あるいはノンタイトルなら、小森選手を試合前にインタビューしたかったです。

「そうですね……それはそうです。不本意という言い方は違うかもしれないですが、『なんでやねん』と普通に思いますよね。僕が他の選手がそういう風に挑戦しているなら、『意味が分からない』と感じただろうし。タイトルマッチに行くまでが難しいのに、この挑戦はそういう経緯が無かったことは確かです。ここで勝てば良いだけっていう……」

──そういう状況だったからこそ勝たないと本当に何でもない、ただ使われた選手になってしまっていました。この状況だからこそ、負けられないというプレッシャーはなかったですか。

「それはありました。負けて失うモノはないとは思ってはいましたけど、負けて良いと思って戦っているとは思われたくなくなかったです。『ライト級でなんで挑戦できるねん』とバカにされることもあったので、絶対に見返してやろうと。ライト級だからとか、言い訳が残る試合には絶対にしたくなかったです。

もちろん練習でやってきたことは自信があります。結果は出せていなかったですが、自分はもっと上の選手と練習をしているので……。一緒に練習をしている人は、自分のことを評価してくれて、『勝てる』と言ってくれていました。八隅(孝平ロータス世田谷代表)さんも、そう信じていつも送り出してくれていたのですが……。その期待に応えられず、結果を出せてこなかったです。なので、このチャンスが巡ってきたのだから、絶対に結果を残してやるという気持ちでした」

──ロータス世田谷勢、八隅さんの指導を受けている選手が12月に河名マスト選手、平田直樹選手、矢地祐介選手と魔の3連敗を喫しました。

「八隅さん、コーチ業を引退するとか考えていたみたいで……。今日の試合に勝って、『ロータスは強い』と八隅さんに言ってあげたかったです。それぐらいチームも落ちていて……。矢地さんはメチャクチャ強いです。それは練習をしている人は知っています。金原(正徳)さんも強さを認めています。平田君も練習通りにできていれば……」

──練習で強い人同士が、戦うのが試合だと思います。

「ハイ。そういう選手はたくさんいると思います。試合で結果を出さないと意味がないです。そうでないなら、練習をして楽しんで生活すれば良くて。結果を出さないと、興行にも呼ばれない。自分もいつの間にか練習の方が強いという風になってしまっていて……。

負けが続くと『八隅はダメだ』とか『ロータスって組み技は上手いかもしれないけど、MMAは実際どうなんだ。あの戦い方はどうなんだ』とか聞いたりしてて」

──本来は、『何言っているんだ?』って思いますよね。ただ結果がついてこないと……。

「別に八隅さんが悪いんじゃない。負けた選手の責任なんです」

──ずっと八隅さんの話になってしまっていますね。

「八隅さんの技術、やられているようでやられていない。その部分で時間を使ってダメだったこともありましたが、今回は……いや、もうちょっと早く切り返せればよかったです」

組手は通じると、最初に組んだ時に思いました

──初回は下になってポイント的には劣勢だったかと思います。それを2Rから挽回し、3Rはバックを制してパウンドアウトしました。

「1Rもテイクダウンされましたが、自分のなかでは『抑え込まれていない。もっと来い』という気持ちでした。逆にいうと田中選手は攻めている気持ちがしていなかったかもしれないです」

──バックに回らせなかった。そして、バックに回ろうという動きを使って逆にリバーサルができていました。

「組手は通じると、最初に組んだ時に思いました。フィニッシュしに来てくれれば、切り返す自信はありました。

八隅さんや岩本(健汰)君の技なんですけど。今回は自分よりデカい相手からトップを取るには、バックエスケープ。バックを攻めさせて落とすとか、そういう際の攻防が大切だと思っていました。それに首相撲で削ることができる。倒されても、動けば良い。実際に自分のなかで攻められたから、休むという場面はなかったです」

──半身から真後ろへ。その動きが完成する前に田中選手が、首を取りに来た時などは狙い目だったと?

「そうですね。八隅さんが『肩を入れろ』という指示をくれたのですが、あそこからハイクロッチで上を取り返すのは定番というか……。それにライト級でもこの組手は通じる。むしろ大きな相手の方が通じるのかと感じました」

──十分にライト級の大きさに見えました。

「そうですか? 実はこれまで3度、緊急オファーでライト級で戦っているのですが、一応全部勝てています。練習の方が強いから、減量しないでライト級で戦った方が良いと言ってくれる人も確かにいました。けど、けっこうビビっていました(笑)」

もうチョイ強いというのを見せていきたいです

──ライト級王者として、今後に関してはどのように考えていますか。団体潰しという声もありますが(笑)。

「アハハハハ。団体潰し……(笑)。せっかくベルトを取れたので、もう1回ライト級でやろうと思っています。もう1回というか……返上したら、意味不明になってしまうので。Gladiatorがどのような選手を指名してくれるのか、ですね」

──フェザー級王者パン・ジェヒョクから「過去にNEXUSで戦っている選手のベルトを狙いたい」という対戦表明がありました。

「なるほどスね。それはもう……パン・ジェヒョクが僕のライト級王座に挑戦したいということですね。そうしたら、僕もフェザー級王座が欲しいって言います(笑)。本当に強いことは分かっています。でも、強い選手が来ても戦えるように準備を続けたいと思います。もうチョイ強いというのを見せていきたいです」

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Gladiator NEXUS o キャプテン☆ キャプテン☆アフリカ ジョン・ハングク パンクラス 佐々木信治 修斗

GLADIATOR 029:メインイベント・田中有 vs. 小森真誉

ライト級王座決定戦。

当初はキルクリフFCのデマルケス・ジャクソンが田中と対戦予定だったが、ジャクソンがビザの問題で来日できず、小森が抜擢された。

田中は修斗出身で、キャプテン☆アフリカと環太平洋王座戦で対戦経験あり(1R一本負け)。GLADIATOR初参戦でライト級挑戦者決定戦に勝利すると、昨年3月にジョン・ハングクと暫定王座決定戦で対戦するも、体重オーバーしたハングク相手にカーフスライサーで一本負け(規定によりノーコンテスト)。その後正王者佐々木信治が引退して王座は空位となっている。29歳。

代役で王座戦出場が決まった小森はGLADIATOR初参戦。NEXUSでは9勝3敗、パンクラスでは3勝7敗。本来はフェザー級を主戦場としている選手で、階級を上げての試合となる。33歳。

身長では小森が上回る。間合いを詰める。左ミドル。田中タックルへ。ケージに押し込む。四つでクラッチした小森が外掛けでテイクダウンを狙う。しかし田中がサバ折りでテイクダウン。サイドを取っている。背中を向けて立った小森。スタンドでハーフバックの体勢の田中。ケージを背負って後ろに回らせない小森。またテイクダウンを狙う田中。尻もちを着かせた。ケージを使って立つ小森。田中シングルレッグから軸足を刈ってまた尻もちを着かせる。寝かせた。また背を向けて立つ小森。残り1分。崩してヒザを着かせたところでバックを狙うが、向き直った小森。残り30秒。田中が立つと首相撲からヒジを一発入れたが、田中入れ替えて正対。ゴング。

1R田中。

2R。左ミドルを入れた小森。パンチの連打で出る。ケージを背負った田中。組みに行くと小森がケージに押し込む。入れ替える田中。四つでクラッチして外掛けからテイクダウン。またサイドについている。立ちに行く小森だが、田中ハーフバック。向き直った小森が逆に上になり寝かせに行く。レッグマウントに。ハーフで寝かせた。田中下からキムラを取る。極まる体勢ではないが、小森もクラッチでディフェンスするのみで攻められない。ゴング。

2Rは微妙。

3R。田中タックル。受け止めた小森がケージに押し込むと崩してテイクダウン。背中を向けて立つ田中。小森バッククリンチ。田中はバックを取られた体勢でアームロック狙い。小森前方に潰してグラウンドに持ち込む。ハーフバックから両足フックしバックマウント。小森パウンド!体を伸ばされたまま打たれ続ける田中。レフェリーストップ!

アウェイの小森、初参戦でキャリア初のタイトル獲得。

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【Banana Oil 2025─05─】ProgressとKNOCK OUT Unlimitedで強くなる日本のMMA─01─Progress編

【写真】昨年10月のBreakthrough Combat旗揚げ戦で組まれた中原由貴と中川晧貴、MMAファイター同士のProgress。MMAで強くなれるグラップリングの実戦だ(C)MMAPLANET

「日本人選手の5勝1敗は、米国では2勝1敗」。「修斗、パンクラス、DEEPのタイトルはUFCで戦える力をつけるために、意味はない」。ヘンリー・フーフトの言葉が呪文のように頭から離れない。日本のMMA界は社会構造として、選手が強くなること関して欠陥社会と表現せざるをえない。
Text by Manabu Takashima

ファイターが稼ぐには、強さ以外の要素が余りにも多く──当然のように──求められてしまっている。MMA、いや格闘技界は20年前の不祥事の影響で、未だにナショナル・クライアントが協賛企業となりえない。おかしなもので海外のMMA大会はスポンサードしている日本企業が、国内ではMMAとの距離を置いている。

メディアの変化で、PPVが最大に利益を求めることができる時代が到来したことの影響も受けている。地上波のように広く浅くというジェネラル層が対象でなく、SNS等の認知度を判断理由にスポンサーが集まるようになった。この構造はまさに貧富の格差が明白となるビジネスモデルで、地道に選手を育てるというプロモーションにその富が配分されることが少ない。

そもそも日本のMMA界は、プロレスの力を借り、それが世間に訴える方法論として成立してきたためエンターテイメントと勝負論を別軸に考えている。商売のために──と格闘技としてギリギリセーフ、ばかりか本来はアウトのことをして商売を成り立たせてきた。

UFCのように独占禁止法に触れるかというぐらいの巨大なパワーの持ち主が、Fight Passという媒体を持ち、中継料を支払って人材育成に役立っているのとは、ビジネスの根本が違う。

2020年、世界がコロナ・パンデミックに襲われた際にUFCはコンテンダーシリーズのグローバル化を一気に推し進めた。この際、ダナ・ホワイトが口にした「今、世界中で小規模の大会が立ち行かなくなっていることが本当に気掛かりだ。だから、ファイトパスで契約するスモールショーを増やして経営が成り立つようにしたい。タレントをクリエイトするために資金が必要だから」という言葉は涙が出た。

その資金があれば日本のMMA界が勝負論とエンターテイメントを同じ軸として回すことができるのか否かは別問題だが、とにかく「タレントをクリエイトするための資金」が日本のMMAプロモーションにはないのが実情だ。

強さを軸とするのか、しないのか。前者の姿勢を持ち年間5大会以上を開くプロモーションでは1つだけだと、個人的に理解している。

理想を追い求める分、苦労も多い。選手ファーストとならない現実もある。そうでない方が、選手の待遇が良い面もある。いずれにしても層が薄い中で、タイトルが持ち回りされ、国際戦が少ないのがJ-MMAの実情だ。北米との距離は広がる一方で、世界の頂点を目指すのは業界の力でなく、個人の力、ジムの力に頼らざるを得ない状況がもう20年も続いてきた。

ただ、日本のMMAファイターはMMAでない実戦で強さを磨くことができる。そんな気づきがあったのが、2024年の収穫でもあった。

その実戦とはProgressとUnlimitedという2つのルールだ。ここではUFCに絶対の価値をおくという思考のなかで、2つの戦いの活用法と現状を探ってみたい。


Progressは2021年の秋に長谷川賢が草案し、実行委員会を立ち上げたグラップリング戦だ。Gladiator、HEAT、NEXUS、Bloom FC、そしてProgress実行委員会が主催するBreakthrough Combatで実施されてきた。ケージ使用&ポイント制のグラップリングで、そのポイントの与え方に最大の特徴がある。

テイクダウンに2P、上を取り返すリバーサルとバッククラブにも同様のポイントが与えられる。特筆すべきは下になった者が立ち上がり、正対して離れる──つまりはスクランブルで1Pが挽回できる点にある。

加えてグラウンドではボディクラッチを禁じるなど、米国フォークスタイルレスリングの要素を取りいれ、ブラジリアン柔術ではポイントとならないテッポウ返しやバックで胸を合わせてトップを取る等の上下の入れ替えにも2Pが与えられている。加えて、引き込みは対戦相手に2Pを献上することなる等々、トップ重視のさながら打撃のないMMAというべきポイント方式になっている。

加えて、この柔術とMMAの中間地点といえるProgressではグラップリング界の頂点=ADCC世界大会出場を目指すグラップラーにとっても、後半のポイント無しルールを制するためのレスリング力、スクランブル力を養える要素が含まれており、森戸新士のように同ルールでMMAファイターを極めまくる柔術家も現れた。

柔術家・グラップラー×MMAファイター、柔術家×柔術家、MMAファイター×MMAファイター、レスラー×柔術家などマッチアップによって、試合内容も大きく変わる異種格闘技的感覚を持つProgress。現状、森戸に歯が立たたないMMAファイターたちは如何に寝技に付き合わず、トップでスコアリングして勝てるのかという戦い方をしている。

いうとレスリングだけでなく、北米のMMAファイターと比較すると日本のMMAファイターは柔術的な強さにも大きな課題が残っている。これだけ組み主体のファイターがいても、過去10年で高度に進化したグラップリングの技術に適応できる選手は多くない。

グラップリング技術の向上はレスリング、打撃と同様に日本のMMAファイターが世界で戦うために不可欠だ。ただし、道着ルールやノーギでもサブオンリーでは勝敗を争うという形で鎬を削ることは難しい。テイクダウン&スクランブル重視のProgressルールだからこそ、そこに勝負論が生まれ、実戦でトップ柔術家の技量を体感できる。

理想をいえば、引き込んだ柔術家から距離をとるのではなく、逆に距離を潰す。足を一本抜きハーフで固め続けたり、ケージに押し込み続けることができる技量を身につけたい。

同時にMMAファイター同士のProgressルールでは、打撃のない=ケガのリスクが減った状態で、グラップリングだからこそ可能となるプロモーションの壁を無くした対戦が実現しやすくなる。そこでテイクダウン&スクランブル能力を養い、生きた技術の蓄積も可能となるだろう。

なぜ、米国のレスラーは殴って相手をコントロールできるのか。彼らはボディクラッチ禁止のフォークスタイルで、相手の体の軸を自らの根幹で抑え、枝葉となる四肢のうち片方の腕、両足もしくは片足を制することでコントロールすることに慣れている。つまり片手が自由になるわけだ。

その余った方の手は、フォールや支配するために使われてきたが、MMAでは自由となる方の手で相手を殴ることができる。スクランブル&拳の攻撃は、相手を動かして体力を奪い、ダメージを与えるという点においてMMAで素晴らしく効率的だ。

前述したようにProgressは柔術家、グラップラー、レスラー、MMAファイターの異種格闘技的な面白さを持ち、柔術家の極め感覚を養い、スクランブルの強化にも役立つルールだ。そしてUFCに絶対の価値をおく、そうでなくてもMMAファイターとして強さを追求するうえで、打撃のないMMAという意識を持って戦うことで、テイクダウン&コントロール力の向上が見込まれる。MMAでなくても、実戦で強くなれる。それがProgressルールだ。

同様にKNOCKOUTの山口元気さんが、キックボクサーやムエタイ選手がMMAを目指す上でワン・クッションとなる──そんな位置づけで始めたUnlimitedルールも、MMAファイターは強さを磨くことができる。MMAファイターがユニファイドルールで勝つ、強くなるためのUnlimitedルールの活用法と現状を次回、考察したい。

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【Banana Oil 2025─04─】”UFCを絶対の価値”とした場合、日本のベルトは「意味がない」を受け入れる

【写真】ベルトに意味がない──UFCで戦うために、武器にならないということ。武器になるのは、強さのみ(C)MMAPLANET

日本の現状をMMA界の名伯楽であり、頑強なリーダーシップを誇る──プロフェッショナルMMAファイター集団=キルクリフFCのヘンリー・フーフト総帥が取材中に発した2つのショッキングな言葉を紹介した。UFCを絶対の価値とした場合に、その強さを追求できる状況にない。それが日本のMMA界の現状であり、現実だ。
Text by Manabu Takashima

「日本人選手の5勝1敗は、米国では2勝1敗」

「修斗、パンクラス、DEEPのタイトルはUFCで戦える力をつけるために、意味はない」

前者に関しては、レスリング無き打撃戦の奨励という形が進む日本のMMAに危惧を覚えるものの、技術的に北米及び世界との差は存在しているのだから、厳しい現実でも受け入れやすい。対して、この後者に関しては……反論材料はいかようにも用意できる人が、J-MMA界には揃っているだろう。


UFCに絶対に価値を置きたくても、できない。それでは食えない。それが日本のMMA界だからだ。だからこそ、ここではヘンリーの言葉を受け入れて、日本のプロモーションのタイトル戦線の様子を眺めてみたい。

ヘンリーがいうように修斗、パンクラス、DEEPだけでなくRIZIN以外、日本のMMA王座はさらなる上の舞台を目指すための材料でしかない。強い選手が揃っている。待遇面が良い。そういう場に進むためのチケットだ。現状では上記の老舗プロモーションだけでなくGrachan、HEAT、Gladiator、NEXUSらのベルトは全て、次に進むための通行手形として存在している。

それらのベルトを巻いたファイターはRoad to UFCか、RIZINというネクストターゲットとなる名を挙げる。とはいえ、そのベルトがどれだけ「行きたい先」の評価の対象となっているのだろうか。地方大会のワンオフ、あるいはエクスクルーシブでないRIZINはともかく(だからこそ、待ち状態のファイターの心理は辛いのだが……)UFCは、Road to UFCにしても基本は他の選択肢はない。

2022年のRoad to UFCに出場した日本勢は堀内佑馬、野瀬翔平、風間敏臣、中村倫也、SASUKE、松嶋こよみ、宇佐美正パトリック(計量失敗で欠場)、鹿志村仁之介(ライト級で代替出場)、内田タケル(ワンマッチ出場)の9選手でタイトルホルダーは修斗フェザー級王者のSASUKEだけだった。

2023年の第2回は鶴屋怜、野瀬翔平、上久保周哉、SASUKE、神田コウヤ、丸山数馬、原口伸の8選手で鶴屋がパンクラス、SAUKEが修斗、神田がDEEPのチャンピオン、原口がGrachan王者としてトーナメントに挑んだ。

前回は松井斗輝(計量失敗で欠場)、透暉鷹、野瀬翔平、小崎連、河名マスト、原口伸、本野美樹、雑賀ヤン坊達也(ワンマッチ出場)の8選手中、透暉鷹とヤン坊がパンクラス、河名がGladiator、原口がGrachanと4選手がベルトを巻いていた。

Road to UFCはその出場基準自体があやふやで、他のタイトルホルダーが出場を撥ねられるケースはいくらでも見られる。それでも出場を狙ううえで、選手たちがタイトルを保持したくなるのは十分に理解できる。いうと……絶対ではないkが、Road to UFCへの出場権獲得には効用があるやもしれない。ただし、出場してしまえばあとは実力勝負だ。

3度のトーナメントでUFCと契約した日本人3選手中、ベルトを持っていたのは鶴屋怜1人だけだった。日本の各プロモーションのベルトを持つことで、8人トーナメントを勝ち抜く力を有しているという保証になるのか。それは否、だ。

ベルトとは強さの象徴だが、今や国内の各プロモーションの陣容と国際戦の減少を見ればチャンピオンになったからといってRoad to UFCを勝ち抜ける力がついたことにはならない。”UFCを絶対の価値とする”と、RIZIN以外のベルトは世界に挑戦できるだけ力を持ったことの証明とはならない。

前戦で負けた選手が、タイトル戦に出てくる。前回はノンタイトル戦で白黒がついているのに、ダイレクトリマッチでタイトルが賭けられる。タイトル戦出場選手が欠場となり、下の階級で連敗している選手にいきなりタイトル挑戦権が与えられる。ランキングはタイトル挑戦の優先権で、上がいなくなると必然的に挑戦権は回って来る。特にJ-MMAのフィーダーショー化が明確になった以降、王者がステップアップした場合、王者越えを果たしてベルトを巻く選手は相当に少なくなってきた。王座決定戦と暫定タイトル戦が、スパイラルを描くように組まれ続ける。

そのようなタイトルマッチを実施するために、組まれたタイトル戦に掛けられたベルトが強さの象徴となりうるわけがない。ヘンリーの「ベルトは無意味」という言葉の通りだ。

ヘンリーは実際、日本のMMA界に向けてのみこのように口にしたわけでない。「修斗、パンクラス、DEEPのタイトルはUFCで戦える力をつけるために、意味はない。それは米国のローカルショーでも同じことだ。〇〇〇だけ、その価値がある。それは〇〇〇でベルトを巻けるなら、UFCでも戦えるだけの力があると認められるからだ」と、ベルトでなくUFCで戦えるだけの力を有する経験が必要だと訴えていた。

くどいように書き記している”UFCを絶対の価値とする”ことがない選手にとって、ベルトは違う価値を持つ。経済的に生活が一変することがなく、未来を切り開くことにならなくても手にしたい。ベルトとは、日頃の努力が実を結んだことが目にできる結晶だ。ベルトを巻いて、応援してくれる人たちと喜びを分かち合いたい。最高に素敵なMMAを戦う理由になる。

プロモーションとしてもリスクのあるビジネスを成立させるうえで、タイトル戦が欠かせない要素なら組んで然りだ。

ただし、UFCとの契約を勝ち取るため、UFCで世界の頂点を目指すためにMMAを戦っているのであれば、必要なのは力かベルトか。何が必要なのか。

そこはもう自明の理なのだから、目的達成のために明確なビジョンを持ち、目的と手段を混同しないキャリアアップの青写真を描くのみ。この青写真がないと、限られた時間を無駄に使うことになる。同時にMMAPLANETは、メディアとして──UFCで戦う下準備になる戦い模様を届けていきたいと思っている次第です。

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MMA MMAPLANET NEXUS Nexus37 o ブログ 佐藤龍汰朗 将斗

【Nexus37】佐藤龍汰朗が打撃&TDを織り交ぜて将斗をコントロール。判定勝ちでミドル級王座獲得

<ミドル級王座決定T決勝/5分3R>
佐藤龍汰朗(日本)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27.
将斗(日本)

1R、サウスポーの佐藤が関節蹴り、将斗は右ミドルを蹴る。佐藤は左ストレートを見せて組み付き、一度は将斗に距離を取られるが、再び左ストレートから組んでケージまで押し込む。佐藤は将斗を寝かせつつ、将斗が立ち上がるところでバックにつき、ケージ押し込んでヒザ蹴りを入れる。

距離が離れると将斗が右ストレート、佐藤が左ストレートから組みつく。ここで将斗が佐藤のバックに回り、佐藤を亀にしてパンチを入れる。ここから佐藤がRNC、腕十字を狙うが、佐藤が上のポジション取り返す。最後は将斗のバックに回って佐藤がパンチを入れた。

2R、将斗が右ストレート、佐藤が左ストレートから組んでヒザ蹴り。一度離れると左ストレートから組んでテイクダウンし、バックにつく。将斗は足をフックさせずに立ち上がると、佐藤はそのまま組み続けて投げを狙いつつ足関節へ。

佐藤はそこからカーフスライサーのような形で将斗のバックにつく。将斗はバックをとられながらアームロックを狙う。佐藤はそれを潰してトップキープしてパンチとヒジを落とす。将斗はガードポジションから腕十字を仕掛けるが、佐藤はこれも潰してパンチを落とす。

3R、お互いにパンチから距離がつまり、バッティングで将斗が側頭部から出血。止血のあとに試合続行となる。再開後、佐藤は左ストレートから組んでバックにつき、後方に投げる。将斗はバックを取られながらアームロックを仕掛ける。佐藤は体重をかけて潰し、両足をフックして鉄槌・パンチを入れる。

将斗は足のフックを外して立ち上がる。佐藤はその立ち際にヒザ蹴りを入れ、距離が離れるとすぐに左ストレートから右フックで前進。組んだ将斗がバックについてテイクダウンするが、佐藤はすぐに立ち上がってヒザ蹴り。これがローブローとなり、試合が一時中断となる。

再開後、佐藤は左ストレートとヒザ蹴り。最後は佐藤がインサイドガードでトップキープして試合終了となった。判定は3-0で佐藤が勝利。初代ミドル級のベルトを巻いた佐藤は「将斗くん、3戦目とは思えないくらい強かったです。またやりましょう。僕は来年海外に行きます!」と語った。

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45 MMA MMAPLANET NEXUS Nexus37 o 北野一声 荻窪祐輔

【Nexus37】北野一声が現王者・荻窪祐輔にノンタイトル戦で勝利。王座戦でのリマッチをアピール

【写真】北野が思い切りのよい左ストレート・左ミドルをヒットさせた(C)TAKUMI NAKAMURA

<フライ級/5分2R+Ex>
北野一声(日本)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27.
荻窪祐輔(日本)

サウスポーの北野がインローと左ミドル、そこから左ストレートを当てて前に出る。組み付く荻窪は引き込んでオモプラッタを狙うが北野が立ち上がって距離をとる。試合がスタンドに戻ると、荻窪が右フックからダブルレッグに入って、ケージを背負う北野を寝かせながら、北野の立ち際を狙ってアームロックへ。下になりつつ、そこから三角絞めも狙う。終了間際、腕を抜いた北野が左のパンチを落とす。

2R、すぐに荻窪がダブルレッグに入る。ケージを背負う北野のバックを狙いつつ、北野が正対するとギロチンを狙う。頭を抜いて立ち上がる北野はスタンドを要求する。スタンドの再開後、荻窪が北野の左ストレートにダブルレッグを合わせてケージまで押し込む。荻窪はバックを狙いつつ、正対する北野の右腕を持ってアームロックへ。

自らグラウンドに持ち込み、北野の腕を巻き込むように上を取ろうとするが、北野がその際で細かくパンチを入れる。北野が立ち上がって試合がスタンドに戻ると荻窪が右ミドル、北野の左ストレートが当たり、荻窪がそのままガードに引き込む。北野がそこにパンチを落とし、試合終了となった。判定はジャッジ3名が20-18で北野を支持。現役王者からノンタイトル戦で勝利した北野はタイトルマッチでの再戦をアピールした。


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【Fighting NEXUS】速報中!Fighting NEXUS vol.37

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さてさて今日はFighting NEXUSの日。後楽園ホールでFighting NEXUS vol.37が開催されます。今大会から1R:KICK 2R:MMA 3R:ベアナックルで行うNEXUS CRAZY RULEを導入。手始めに齊藤淳(ReBORN経堂)×村田純也(リベルダージ)が行われます。果たしてベアナックルファイトまで進展するのか興味津々。本日は公式YouTubeチャンネルを観戦しつつ、電波と充電の続く限り速報します。乱筆乱文にはご容赦くださいませ。


【第1試合 NEXUS MMA 3分2R フェザー級65.8kg契約】
◯山崎陸(坂口道場)
(判定3-0)
×麻生空良(AACC)
1R、プレッシャーを掛ける山崎。パンチを振るって組み付くとケージに押し込んでテイクダウンに成功。簡単にマウントを奪取。しばらくポジションをキープして腕十字を仕掛けるがタイムアップ。
2R、開始直後は麻生がパンチを連打。しかし山崎はカウンターでパンチを当てて組み付く。時間を掛けてテイクダウンするとバックに周る。チョークで絞め上げる。耐える麻生。山崎はマウントに移行して腕十字!だが麻生は反転して脱出。逆にバックチョークを狙うがタイムアップ。判定は山崎に軍配!


【第2試合 NEXUS MMA 5分2R(延長1R) バンタム級61.2kg契約】
×小牧竜也(パンクラスイズム横浜)
(判定0-3)
◯アポロ中山(ゴッドサイドジム)
1R、小気味良いステップからパンチを繰り出す小牧。それに対してローを返しつつタックルでテイクダウンに成功。しかし小牧はスタンドに脱出。スタンドの攻防の末にラウンド終了。
2R、やはりスタンドの打撃で前に出る小牧。しかし中山は要所要所でタックルでテイクダウンに成功。一時はマウント、バックを奪取してポジショニングで優勢のまま試合終了。判定は中山に軍配!


【第3試合 NEXUS MMA 5分2R(延長1R) フェザー級65.8kg契約】
◯千春(FREEDOM@OZ)
(1R TKO)
×嵐士(K-PLACE)
1R、千春は長いリーチを活かしてパンチ、さらに蹴りも上中下で蹴り分ける。それに対して嵐士は前に出てパンチを振り回すが千春は冷静にスウェイで回避。さらにカウンターのフックで射抜くと嵐士はダウン。パウンドを集中させるとレフェリーが試合を止めた!


【第4試合 NEXUS MMA 5分2R(延長1R) ライト級70.3kg契約】
×涌井忍(和術慧舟會HEARTS)
(1R 腕十字)
◯小川健晴(ゴッドサイドジム)
1R、スタンドの攻防から組み付いた涌井。首相撲から膝蹴り、さらに肘打ちで攻勢。しかし小川はするっと組み付いてスタンドでバックに周る。涌井は一度は正対したが、小川はしつこく組み付いてテイクダウンに成功。腕十字を狙うが涌井は腕を抜いてスイープ。上になってポジションをキープ。だが小川は下から三角絞め。さらに腕十字!これで涌井はタップ!小川が鮮やかに極めた!


【第5試合 NEXUS MMA 5分2R(延長1R)ミドル級83.9kg契約】
×一慶(ALLIANCE)
(判定0-3)
◯マシン(BLUE DOG GYM)
1R、じわじわと前に出る一慶。左右のパンチがヒット。嫌がったマシンが組み付いてケージに押し込む。しかしマシンの膝がローブローに入って試合は中断。しばらくして再開するとマシンは間合いを詰めて組み付く。しかし潰して上になったのは一慶。バックから腕十字を狙うがマシンは耐えてラウンドを終えた。
2R、開始直後から組みに行くマシン。潰してバックに周った一慶だがマシンは正対。逆にバックに周ると一慶は立ち上がって正対。長い差し合いが続く。そこからマシンの膝蹴り。一慶は嫌がったが投げでテイクダウン。マシンは勢いに乗じて上になって試合終了。判定はドロー!延長に突入。
延長R、開始直後にパンチを振るって前進するマシン。組み付いてケージに押し込む。差し合いになると一慶が足を掛けてテイクダウン。だがマシンも正対してスタンドへ。マシンは背中に張り付く。これも一慶は正対して差し合いが続いて試合終了。判定はマシンに軍配。僅差の勝利!


【第6試合 NEXUS MMA 5分2R(延長1R)フライ級56.7kg契約】
×荻窪祐輔(K-PLACE)
(判定0-3)
◯北野一声(SONIC SQUAD)
1R、距離を保ったスタンドの攻防。じわじわと前に出る北野。左ミドルを効果的にヒット。さらに左のパンチを当てると荻窪の動きが落ちる。北野は左ミドルからのパンチを蓄積。嫌がった荻窪が転倒。北野は上になるが荻窪はオモプラッタで脱出。スタンドになると荻窪はパンチからタックルでテイクダウン。アームロックを狙うが北野は脱出してラウンド終了。
2R、開始直後に荻窪がタックルでテイクダウン。しかし北野はケージを背にして背中を付けさせない。北野が立ち上がると荻窪は飛びついてギロチンチョーク!タイトに絞めるが北野は首を抜いてスタンドへ。しかし荻窪はすぐさまタックルで組み付く。北野もバックに周りかけて膠着。身体が離れると荻窪のタックルを切って北野のパンチがヒット。グラつく荻窪。ダウン?北野は上からパウンドを入れて試合終了。判定は北野に軍配!


【第7試合 Fighting NEXUSバンタム級王座次期挑戦者決定戦】
◯中桐涼輔(トイカツ道場/13GYM) 
(判定3-0)
×神部篤坊(ABLAZE八王子)
1R、近い距離でのパンチの交差。中桐は豪快なタックルでテイクダウン。しかし神部はすぐに立ち上がってスタンドの展開。打撃の交差から中桐がスタンドでバックに周る。しばらく背中に張り付いてコントロール。このままラウンドを終えた。
2R、開始直後に中桐がタックルでテイクダウン。神部がギロチンを狙うが不発。神部はそのまま立ち上がってケージ際での差し合いが続く。膠着してブレイク。神部はパンチを振るうが中桐は組み付いてバックに周るとそのままテイクダウン。立ち上がる神部のバックに中桐が張り付いて試合終了。微妙な判定は中桐に軍配。


【第8試合 NEXUS CRAZY RULE 3分3R 60.0kg契約】
×齊藤淳(ReBORN経堂) 
(2R 腕十字)
◯村田純也(リベルダージ)
1Rはキックボクシングルール。スタンドでプレッシャーを掛ける齊藤。ボディを交えて的確にパンチをヒットさせる。嫌った村田は組み付いて投げを放って逃げる。スタンドで再開すると齊藤は前進してパンチ、ローを蓄積。村田は最後まで耐え抜いてラウンドを終えた。
2RはMMAルール。じわじわと間合いを詰める村田。齊藤はサークリング。村田はなかなか組まない。残り2分になったところで村田が組み付いてテイクダウン。村田はパウンドを落として齊藤の腕が伸びたところに腕十字!齊藤はタップ!


【第9試合 Fighting NEXUS初代ミドル級王座決定トーナメント決勝戦】
◯佐藤龍汰朗(坂口道場一族)
(判定3-0)
×将斗(AACC)
1R、スタンドのお見合いから低空タックルで組み付いた佐藤。しかし将斗の腰は重い。ケージ際での差し合いが続く。一度はテイクダウンするが将斗はすぐに立ち上がってまたも差し合い。身体が離れるとパンチで前に出る佐藤。しかしいなして将斗がスタンドでバックに周る。そのままグラウンドに持ち込んでチョーク。だが佐藤は脱出すると逆にバックに周ってパウンドを入れてラウンドを終えた。
2R、スタンドでの攻防から組み付いた佐藤。バックに周るとグラウンドに引きずり込む。しばらくキープしていたが将斗は立ち上がる。しかし佐藤は下から足関節を取ってグラウンドに引き込む。すかさず上になるが将斗は下から腕十字。だが佐藤は腕を抜いて上からパウンド。上をキープしてラウンド終了。
3R、開始直後のバッティングで試合は中断。将斗が側頭部から出血。ドクターチェックの末に再開。組み付く佐藤がバックに周る。そのままジャーマンでテイクダウン。将斗はアームロックを狙うが佐藤は腕を抜いてバックに周る。万事休すかと思いきや将斗は脱出。スタンドに戻ると激しい差し合い。ここで佐藤の膝がローブローに入ってしばらく中断。スタンドで再開すると佐藤がパンチ、膝を入れて最後はタックルでテイクダウンして試合終了。判定はもちろん佐藤に軍配。佐藤が優勝!
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【Nexus37】アマチュア1戦でプロデビュー、3戦目でミドル級王座へ王手。将斗「いつも通りやれば大丈夫」

【写真】小川直也の教え子で、武尊に憧れている将斗。MMAを本格的に始めたのは昨年9月、MMA歴は1年半に満たない(C)MMAPLANET

28日(木)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるFighting NEXUS vol.37。今大会のメインイベント=初代ミドル級王座決定トーナメント決勝戦で将斗(ゆきと)が佐藤龍汰朗と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

学生時代は柔道に打ち込み、昨年9月から本格的にMMAの練習を始め、アマチュア戦績1戦1勝でトーナメントに大抜擢された将斗。一回戦で趙大貴にTKO勝利すると、準決勝ではマシンとの無敗対決にも勝利し、決勝戦まで勝ち進んだ。抜群のポテンシャルと可能性を秘めるミドル級の超新星は、小川直也が代表を務める小川道場出身、武尊の闘争本能溢れるファイトに憧れるファイターだった。


――準決勝のマシン戦はスタンドの打撃でTKO勝利という結果でした。あの試合は将斗選手にとっても会心の勝利だったのではないですか。

「でも反省点は結構ありましたね。ちょっと試合前から怪我もあったし、まだ試合慣れしていないというか。自分はアマチュアの試合にほとんど出ていなかったので緊張しすぎました。1Rは全然動けてなかったし、自分から手が出せてなかったと思います」

──試合中はどのくらいから動けるようになったと感じましたか。

「マシンくんは合わせるフックが強いイメージがあったので、それも警戒しすぎていて、なかなか1Rは中に入れなかったんです。でも2Rは打撃でいくと決めて『中に入ろう。中に入れなかったら負ける』と思って、打撃でいったら上手くハマりました」

──将斗選手にとってマシン戦はプロ2戦目だったんですよね。

「そうです。というか本格的にMMAでプロを目指そうと思ったのも1年2~3カ月前だったんで緊張しすぎちゃいました」

──MMA歴もそのくらいなのですか。

「はい。人に誘われて週1回フィットネス感覚で練習していた時期もあったのですが、それも最後の半年くらいは仕事が忙しくてほとんど行けてなくて。本気でプロを目指そうと思って仕事を辞めてAACCに入ったのが1年ちょっと前です」

──初めて取材させてもらうということで経歴的なことから聞かせてもらえますか。

「もともと幼稚園の時に小川直也さんの小川道場で柔道を始めて、しっかり行くようになったのは小学1年生からです。長男と次男が先に柔道を始めていて、半強制的に(柔道を)始めました(笑)」

──小川さんの教え子だったんですね。柔道そのものは好きだったんですか。

「小・中学の頃は柔道をやらされている感じで、中学時代はよくサボっていました(笑)。ただ自分は頭が悪かったこともあって、周りからも『ちゃんと柔道をやってほしい』と言われていて。それでギリギリのところで高校でも柔道を続けようと思って、高校に入ってからは柔道が楽しいと思えるようになりましたね」

──高校に入るまではあまりいい成績を残せなかったのですか。

「小学生の頃は県大会の決勝で負けて全国大会に行けなかったのですが、団体では全国大会で3位とか上の方まで行ってました。中学でも全国には行けなかったんですが、負けた相手が全中で優勝していたり、それなりに上位陣とはやっていました。自分は中学までは軽量級で体も小さくて、高校に入った時は60kgくらいだったんです。それからどんどん体がでかくなって、高校3年間で身長が20㎝くらい伸びて、体重も100kgまで行きました(笑)」

──まさに急成長したんですね。高校での成績はどうだったのですか。

「それが高1の時は怪我で、高2の時はコロナと重なって、高3の時も怪我でインターハイの予選には1回も出てないんです(苦笑)」

――色んな巡り合わせがなくて、インターハイには縁がなかったんですね。

「そうです。ただ自分のライバルだったヤツがいて、天野開斗って言うんですけど。そいつとはそれなりに競い合えていたのですが、大事な試合には出られなかったです」

──では柔道には相当悔いが残ったんじゃないですか。

「高校時代は悔いが残りましたね。結局天野は高校生と大学生が出る20歳以下の大会でも全日本2位になって、俺が練習していない間にどんどん差がついてるんだろうなって考えになっちゃって。本当は柔道推薦で大学にも行く予定だったんですけど、その推薦も断っちゃったんです。で、当時は引っ越しのバイトをやっていて、そっちで『マネージャーになれるように頑張れよ』と言われていたので、引っ越しの仕事を頑張ろうと思いました」

──大学進学を蹴ってフリーターになるというのは、周りから反対されなかったですか。

「自分の面倒を見てくれていた道場の先輩、高校の先輩、神奈川で知っている先輩とかも『もう一回頑張れば柔道で上に行けるよ』って言われたんですけど、もうその時は気持ちが折れてましたね(苦笑)。親からも『どうするんだ?』と言われたんですけど、当時の自分は柔道で日本一を獲る覚悟がないから、それなら(大学に)行く必要はないと思っていて。そういう覚悟があって大学に行くならいいんですけど、その覚悟もないのに大学だけ行くのは嫌でしたね」

──そして引っ越しのバイトを続けるなかでMMAと出会うのですか。

「ちょうど柔道出身で同じ引っ越しの仕事をやっている先輩がいて、その先輩が水垣偉弥さんのジム(BELVA)に通ってたんです。それで『そんなに柔道で後悔が残ってるならジムに来ればいいじゃん』と誘われて、一度BELVAに行かせてもらって。その時に水垣さんから『センスがあるから真剣にやった方がいい!身体が大きい人がいる場所に行ってみなよ』と言われたんですね。だったらジムを探そうと思って、自分の家から近かったのがKRAZY BEE。それでKRAZY BEEに入会するんですけど、当時は引っ越しの仕事をしながら通っていたんで、いわゆる一般会員としてたまに練習に行く程度だったんです」

──それが最初に話したフィットネス感覚でやっていたという時期ですね。

「そうです。そのくらいの練習頻度だったのですが、KRAZY BEEからDEEPに出ていた加藤瑠偉くんに『アマチュアの試合に出てみたら?』と言われて、いざ出てみたら腕十字で一本勝ちしたんです。その時に『もしかしたら俺ってセンスあるんじゃね?』と思って、本気でプロを目指そうと思ってすぐに勤務先に退職届を出しました。職場の支店長からは『お前、本当に大丈夫か?』と言われたし、親に『俺は格闘技でチャンピオンになるわ』と伝えたら『あんたは何言ってんの!』と言われましたけど(苦笑)」

――どうしても周りはそういう反応になりますよね。

「それで改めてジムをどうしようかと思った時に『AACCはデカい選手が多い』と聞いて。実際にAACCのプロ練を見に行ったら、誠悟さんとか酒井(リョウ)さんとか本当にデカい人がたくさんがいて、実際にみなさんと組ませてもらった時に『センスあるからここで頑張れ』と言われて、AACCに入ることにしました」

――そして入会して1年経たずにプロデビューする、と。

「AACCに入ったのが去年の9月で、12月に1回アマチュアの試合に出て、そこで一本勝ちしたんですね。そしたらいきなりNEXUSからベルトがかかったトーナメントのオファーが来て、周りからは『もっとアマチュアの経験を積んだ方がいい』と言われましたが、僕自身は『ベルトがかかっているなら出ますよ』と言って出場を決めました」

──本格的にMMAを始めて3カ月のやりとりですよね。

「そうですね(笑)。でも自分は何か目標を作らないとダメなタイプで、今の目標はRIZINに出ること。あとはDEEPでウェルター級のベルトを獲ることなんです。そこにつながるチャンスがあるなら絶対に出た方がいいと思って決めました。実際にそれで決勝まで勝ち上がってこれたし、今はみんな自分のことを応援してくれてますね」

──ちなみに打撃にもすぐ対応できたのですか。

「AACCのプロ練はガチスパーなんで、ヘッドギアをつけてバチバチにやるんです。もちろん最初はガードを固めて何もできなかったですが、そういう状況に置かれたらやるしかないじゃないですか。それで打撃を覚えていった感じです。2戦目の時からKrushに出ていた萩原秀斗さんにミットを持ってもらうようになって、そこで打撃の細かい部分を教えてもらっています。それで色んな選手ガンガンやり合うので、打撃には自信がつきました」

──決勝で対戦する佐藤龍汰朗選手にはどんな印象を持っていますか。

「まあ……よく分からないですね、正直(笑)。ただ何でもできて、腰は強そうだなと」

──相手どうこうよりも、自分がいいパフォーマンスして勝つことに重きを置いていますか。

「そうですね。僕は練習環境にも恵まれていますし。よくみんなに言われるのが、経験の差はいつかどこかで出ることもあるだろうけど、いつも通りしっかりやれば大丈夫だって。DEEPの元チャンピオンの鈴木槙吾さんとも練習させてもらっていて、鈴木さんからそう言ってもらえているので、自分がいつも通りやれば大丈夫かなと思います。前回の試合みたいに経験がない分、試合で固くなっちゃうことがちょっと怖いくらいです」

──これからプロでやっていく上で、自分のどこをアピールしたいですか。

「やっぱり……スター性ですかね!」

――ずばりスター性! ここまでのキャリアも異色ですが、自分は他の選手とは違うと思いますか。

「そこは周りに感謝しています。自分は小さい頃からズレていて、自分1人だったら今頃何をやっていたか分からないような人間でしたけど、周りの仲間たちが柔道を勧めてくれたり、今でもたくさんの人が応援に来てくれるので、みんなに感謝しています。あと自分は昔から武尊選手に憧れていて、武尊選手みたいにどんなことがあっても前に出るみたいな選手になりたいですね」

――MMAファイターではなく武尊選手に憧れているのですか。

「はい。もともとYouTubeで武尊選手の試合を見たことがきっかけで好きになって。武尊選手が上京してすぐの頃にもやししか食べてなくて大変だったとか、そういうエピソードも色々とあるじゃないですか。そういうことを乗り越えてスターになっていった武尊選手からはいつもパワーをもらっていました。当時は中学生とか高校生で自分が格闘技をやることになるとは思ってなかったんですけど、自分も武尊選手みたいに気持ちが伝わる試合をする選手になりたいです」

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