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【Grachan71】足立晃基 with MIKE。MMA甲子園からプロへ「デビュー戦が決まって気持ちも変わりました」

【写真】首都圏、いや京阪神、名古屋、福岡とも違う奈良のMMA進化論(C)SHOJIRO KAMEIKE

15日(日)、東京都江東区の有明TFTホール500で開催されるGrachan71で、第1回MMA甲子園フェザー級優勝者の足立晃基が、内山国光とのプロデビュー戦に臨む。
Text by Shojiro Kameike

(C)MMA KOSHIEN

奈良県在住の足立は高校在学中、元グラジエイター王者のMIKEが主催するM3A FITでMMAを学び、今年2月のMMA甲子園第1回全国大会を制した。

その足立と、師であるMIKEに選手育成とMMA甲子園での経験について語ってもらった。


「格闘技ジムってプロ志望で入ってきた子のほうが早く辞めるのが定説」(MIKE)

——MMA甲子園優勝者としては、足立選手が初のプロデビューとなります。まず足立選手がMMAを始めたキッカケを教えてください。

足立 MMAを始めたのは16歳の時です。小学生の時に少しだけ空手を学んでいたことはありますが、それ以外はずっと体操をやっていました。

——なぜ体操からMMAに転向したのでしょうか。

足立 当時ずっと通っていた体操教室が、かなり厳しいところだったんです。精神的に疲れてしまって、体操を辞めてから1年ぐらい何もしていませんでした。でも体を動かすのは好きやったし、当時何となくUFCとかの動画を視始めて。『良いな、格闘技やりたいな』と思って、高校受験が終わって進学すると同時にジムに入りました。

——MIKEさん、体操経験者ということで他の一般会員さんとは体の動かし方も違いませんでしたか。

MIKE それが……入ってきた時は週1回、少し体を動かす程度だったんですよ。特に試合をしたいというわけでもなくて。それも毎週来る時もあれば、一時期来なかったり、また来始めたという状態が1年ぐらい続いていました。

足立 僕が入った高校は全員が絶対に部活に入らないといけない学校で、自分もハンドボール部に入っていて。部活が忙しくて――あと勉強も全然できないので、補修とかも受けていました(苦笑)。

MIKE 週1しかジムに来ていなかったけど、僕も打撃のトレーナーも「結構シャープな打撃をやるなぁ」と思っていたんですよ。それでウチのジム主催大会「M3 CUP」を始める時、足立君に「大会やるけど出る?」と聞いたら「あぁ、あぁ」みたいな感じで(笑)。

足立 もともとMMAをやりたかったんですけど、その頃は参加できるのが土曜日のキックボクシングクラスだけで。だから初めてのMMAの試合は、とりあえず組みは捨てていました。

MIKE 初めての試合ですし、組まれて負けても仕方ない。まずは経験してみることが大事だ——と思っていたら、まさかの反則負けで。

——えっ!? どういうことですか。

足立 M3AカップのMMAルールは、グラウンド状態の打撃が禁止なんです。なのにボディへのパウンドを打ってしまい、失格負けになってしまいました。分かっていたつもりだけど、体が勝手に動いてしまって……すみません。その試合から組みの練習をし始めて、今は組みが中心の選手になりました。

——なるほど。MIKEさんとしては足立選手に対して最初から、プロになってほしいと思っていたのでしょうか。

MIKE う~ん……、何て言うんでしょうね。格闘技ジムってプロ志望で入ってきた子のほうが早く辞めるのが定説に近いじゃないですか。僕も東京にいた頃、プロ練に行くと「おっ、新しい人がいる!」と思っても、1カ月後には来なくなったり。奈良で自分のジムを開いた今でも、自分より遥かにセンスが良い選手が入ってきても、いつの間にか来なくなる。20年間そういう状況を見てきました。

そんななかで足立君もMMAをやりたそう。でも「プロになることを勧めたらプレッシャーに感じてしまうかな……」と思って、最初は様子を見ていました。始めたばかりだし、楽しく参加してもらったほうが長く続けてくれるのかなと思って。

——そして入会から1年後、M3A CUPをキッカケにプロへの道を歩むことになる。まさにMIKEさんが考えた通りに進んでいったわけですね。

MIKE プロ志望で入ってくる子たちは、格闘技を楽しめていないことが多いと思うんですよ。「何がなんでもプロになるんじゃ!」みたいな。もちろんプロになるためには、それぐらいの覚悟は必要なんだけど――でも、いざプロ練に参加してみると、レベルの高さに圧倒されたり。特に東京はレベルが高いですしね。奈良という地方都市では、それは余計に難しいんじゃないかと考えました。

「ここで負けたら『MMA甲子園なんて所詮は高校生の大会だろ』と言われちゃうよ」(MIKE)

「それを言われるのは絶対に嫌です!」(足立)

——確かに、そうかもしれません。足立選手はMMA甲子園に出場する前、M3A CUP以外でアマチュアMMAの経験はあったのですか。

足立 アマチュアグラジエイターとアマチュア修斗に出ていました。一度だけ勝って、あとは全敗でした。

——1試合以外は全敗! その状態でMMA甲子園のトーナメントに参加することに不安はありませんでしたか。もう少し準備してから……とか。

足立 もともと3週間に一度ぐらい試合をしていて。とにかく試合で経験を積みたかったんです。だから「高校生だけの大会がある」と聞いて、すぐに出たいと思いました。

MIKE 僕の考えとしては、最初の1~2年はとにかく試合に出る。勝ち負けはどうでも良くて、とにかく試合に出るというスタンスのほうが良いのかと思っていました。そうしていると足立君が「MMA甲子園の初代王者になりたい」と言い始めたので、あの頃から意識も変わってきたかもしれないですね。今から考えると。

足立 やっぱり一つの目標があるのは大きかったです。特に「初代」という肩書は大きくて(笑)。あとは自分と同じ高校生と戦う、という点も大きかったですね。「同じ高校生だったら負けない」という気持ちはありました。

練習の強度もどんどん上げていったし、今まで負けていた分「勝ちたい」という気持ちも強くなって。あとは試合をするごとにスタイルも変わってきました。それまでは「組みたい」という気持ちが強すぎたんですけど、ちょっとずつ打撃も上達していって。

(C)MMA KOUSHIEN

実戦で試しながら、自分のスタイルが出来てきました。

MIKE ただ、僕としては今回のプロデビューに対して不安はあったんです。自分と同じ高校生に勝っているだけで、まだ大人との試合で勝ったことがない。その状態でプロデビューというのは――。

でもプロデビュー戦が決まったら、ますます練習に対する姿勢も変わってきて。MMA甲子園のあと今年7月、アマ修斗四国選手権に出て優勝したんですよ。2回戦以外は全て一本かKOで勝ったので、僕の中でもプロデビューに自信を持つことができました。

足立 MMA甲子園の前にアマチュアの試合に出ていた時は、試合前に体が硬くなっていました。結果が全ての世界やから、とにかく結果を出さないと――と自分を追い込みすぎたというか。でもMMA甲子園で優勝したあとアマチュア修斗に出る時は、気持ちは違いましたし、プロデビュー戦が決まって自分の気持ちも変わりました。

——そのMMA甲子園を経て、今回プロデビューに至りました。対戦相手の内山選手はGrachanチャレンジで経験を積み、足立選手と同じく今回がプロデビュー戦です。

MIKE ここで負けたら「MMA甲子園なんて所詮は高校生の大会だろ」と言われちゃうよ。

足立 それを言われるのは絶対に嫌です! 自分もプロデビュー戦は絶対に負けません。いつもどおりの試合をして、圧倒的に勝ちます。

■視聴方法(予定)
9月15日(日)
午後13時30分~ GRACHAN放送局

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【Nagoya Fight Fes】坪井淳浩GSB代表に訊く中部MMAの現在「長い間、通常運転を続けてきた」

【写真】イベント当日は主催者、セコンドと大忙しの坪井代表(C)TAKESHI SATO

8日(日)、愛知県名古屋市中区の若宮大通公園若宮広場で野外格闘技イベント「Nagoya Fight Fes.19」が開催される。
Text by Shojiro Kameike

この大会で開催される種目は多岐にわたる。ストライキングチャレンジ(アマチュアキックボクシング)、アマチュアDEEP(MMA)、MMA甲子園ワンマッチ、アマチュアシュートボクシング、そしてジュニアの試合まで――まさに名古屋におけるアマチュア格闘技の祭典だ。Nagoya Fight Fesの主催者である坪井淳浩氏は、SBとMMAで戦いながら自身のジム「グラップリング・シュートボクサーズ」を運営し、さらに大会開催にも携わってきた。2011年の現役引退後も裏方として活躍する坪井氏に、中部格闘技界の現在と今後について訊いた。


――現在、坪井さんが中部の格闘技界で担っている役割は多いです。プロ&アマを含めたDEEP、シュートボクシング、そしてMMA甲子園と……。

「あとは韓国キックボクシングのMAX FCですか」

――体は大丈夫ですか。MMA甲子園の設立記者会見の時、明らかに疲れ果てた様子で会場入りしていました。

「アハハハ! あの時が一番疲れていましたね」

――そのうち、どれか一つを誰かに任せるわけにはいかないのでしょうか。


リングを使用した勝川大会とケージの刈谷大会(C)TAKESHI SATO

「もともと全て他の人に任せているものであったり、皆と連携しているものですよ。僕が独り占めしているわけではなく、たまたま今は僕が上の立場で動かないといけない状況にあって」

――今は坪井さんが統括して、そこにスタッフや協力してくれる方々がいると。

「そうですね。一緒に協力しているのは今、ネックススポーツ(梅村寛代表)とスプラッシュ(木部亮代表)、新しくファイトサイエンス(野田カズヤ代表)が出来たりとか。いろんな方たちが手伝ってくれて回すことができている状態です」

――なるほど。坪井さんが現役時代を含めて格闘技界に携わって何年が経ちますか。

「もう30年ぐらい経ちました。現役を引退したのが2011年で、そこからは完全に裏方としてやってきています」

――その30年間で、中部の格闘技界はどのように変化してきたのでしょうか。

「まず競技人口が増えましたよね。もともと僕が裏方もやるようになった目的だし、その点は良かったです。最近は少し飽和状態といえるぐらい、ジムも急激に増えました。僕と同じ世代の人たちが現役を続けながらジムを開いて、今は僕たちの次の次ぐらいの世代がジムをやっていますから。それはMMA、キックボクシングを問わず。もうすぐ、その次の世代が入ってくるでしょう」

――それだけジムも競技人口も増え、これまで愛知県内で数多くのMMAイベントが行われてきました。そのなかでDEEP NAGOYAが定着し、愛知県内で定期的にイベントを開催し続けることができているのか。その理由を知りたいと思っています。

「一番は愛知県内だけでなく東海地区の皆さんが協力してくれること。まぁ定着というか……DEEP NAGOYAはもともとネックスの梅村さんが主催していて、僕のシュートボクシング中部大会と提携して一緒にやっていたんですよね。でも梅村さんが体調を崩して興行から離れることになり、開催を止めないために僕が引き継いだという形で。重要なのは、どれだけ長い間、通常運転を続けてきたかということだと思うんです」

――通常運転からDEEPやシュートボクシングの冠を外し、自身で独立した大会を開催しようとは考えませんでしたか。

坪井氏はシュートボクシング協会中部事務局も担っている(C)TAKESHI SATO

「ないです。それが一番大事なところなんですよ。DEEPがどう、SBがどうということではなく、まずコンセプトが何なのか。僕はストライキングチャレンジやアマチュアDEEPをはじめ、底辺拡大をコンセプトにやってきました。この点は何も変わっていなくて。底辺拡大をしつつ、育った選手のために次のステージを用意したい。

興行を開催します、というと最初は皆の協力を得ます。でも自分のジムの選手が増えて、そこからチャンピオンが出ると、たとえばマッチメイクの片側が全て自分のジムの選手にすることもできる。これは格闘技の興行あるあるですよね。ただ、自分のジムの選手は増える時もあれば減る時もあるから、いずれ衰退してきます。僕は最初から自分のジムの選手だけで大会をやるつもりはなくて」

――はい。

「まず底辺拡大のために、アマチュア大会を始める前に月2回、格闘技練習会を開いていました。打撃のスパーリングを3時間ぐらい。まだストライキングチャレンジを始める前ですね。『どのジムから参加してもOKで、ぜひ声をかけてください』と。ストチャレを行うことで、さらに練習会の参加者も増えていきました。同じように他の地域でも開催するようになって――基本的に『自分だけ潤えば良い』という考えはないです。

これはね、お金じゃないんです。もちろんお金は残さなきゃいけないけど、お金だけの話ではない。練習会、アマチュア大会を開催して、選手が増えてきたらプロ興行に出られるよう声を掛けていきます。どのジムであろうと一生懸命、頑張っている選手が東京や大阪のDEEP、SBの大会にも出られるよう協力する。これって格闘技の底辺を拡大していくために、当たり前のことだと思うんですよ」

自分たちは何のために始めたのか――常に自分に対して問い正していかないといけない

――坪井さんの中でプロモーターとしての自分と、ジム運営から選手を育てていく自分との間にビシッと線引きはできているのですか。

「仕事としては完全に分けていますよ。でも中部の格闘技界で底辺を広げ、選手を育てていくコンセプトとしては、どちらも変わらないんです。

たとえばプロモーターとして、愛知県をはじめ中部の選手を中心に興行を開催する。その相手を探して、他のエリアのジムにお願いすることはあります。でも、チケットが売れるからという理由で他のエリアの選手を中心に試合を組むことはない。チケットが売れさえすれば良い、という話ではないですから。

このコンセプトが崩れないかぎり、僕は今のまま続けることができる。コンセプトが崩れるようになったら、僕はやらないです。それじゃ意味がないんですよ」

――だとすれば、坪井さんが開催しているDEEP NAGOYAは、東京や大阪、浜松などで開催されているDEEPとも違うものですか。

「違います。でもDEEPに還元できるよう選手を育てていく、というコンセプトで開催しています。立ち技に関しても、ウチの興行でどんなルールの試合をしようと、必ずSBに還元できるように話を進めていますね」

――もう一つ、MMA甲子園が設立された時、坪井さんが真っ先にNagoya Fight Fesでプレマッチ開催を決めました。

初のMMA甲子園プレマッチはNagoya Fight Fesで行われた(C)MMA KOUSHIEN

「MMA甲子園というコンテンツが、ゆくゆく伸びているだろうと思いました。そのあとRIZINがRIZIN甲子園を発表したじゃないですか。でも高校生の大会について、MMA甲子園とRIZIN甲子園が出場者を取り合うとは考えていないので。それこそRIZINが高校生の大会をやってくれれば、このジャンルにもっと注目が集まる。我々もMMA甲子園を続けていくことで、中部に選手が集まってくるはずですし。

このMMA甲子園の中部地区についても、別に僕がやらなければいけないことはない。今アマチュアDEEPを担当してもらっている木部君に、そのまま引き継いでもらってもいいです。まず形が出来ていれば、他の誰かが引き継ぐことができる。MMA甲子園については早く形をつくるために、プレマッチをやらせてもらいました」

――Nagoya Fight Fesは、どのような経緯で始まったのでしょうか。

「まず僕たちはずっと大会会場を探しているんですよ。もともとは公武堂MACSのリングで大会を行っていたけれど、参加者も増えて会場に入りきらなくなった。で、『これを屋外で開催したら、どうなるだろう?』と思って場所(若宮広場)を抑えたんですよね」

――若宮広場は高速道路の高架下にあります。こちらはどこの管轄になるのですか。

「名古屋市です。毎年必ず抽選で抑えています」

――最初に申請する時、格闘技イベントを開催することで何か懸念はありませんでしたか。

「何もないですよ。別にコンテンツは何でも良くて、大切なのはその場所を正しく使うこと。近隣に迷惑をかけず、大会が終わったらキチンと清掃する。そうしていけば、ずっと続けることができますし、何よりも続けることが大事ですから。そのためには大会を開催するためのプランニングも重要で」

――先ほど独立した大会を……という点について訊きましたが、多くの場合は続けることよりも大きくすることを優先しますよね。

「結局、理想が先に走ってしまうことが多いじゃないですか。たとえば自分のジムにチャンピオンが生まれたから、大きな会場で大会を開催する。それは一度ぐらいならできます。でも僕たちがやってきたことは違いますから。自分たちは何のために始めたのか――どれだけ盛り上がっても、常に自分に対して問い正していかないといけない。周りに何を言われようとも、それは変えませんよ」

結局、自分はオタクなんだと思いますよ

――坪井さんの中で「今後こうしていきたい」といった目標はありますか。

アマチュアDEEP大会は公武堂ファイトから始まった(C)TAKESHI SATO

「アマチュアについては、また新しいプランを立てていることがあります。今のところは企業秘密ですけど(笑)。どれくらいの年月が掛かるか分からないですけど、ハマれば大きなものになると思うので」

――そう考えると、アマチュアDEEPは名古屋発信のものでしたよね。

「いろいろやってきましたね。グラップリングツアーとか」

――グラップリングツアー! 年間を通して優勝者と優勝アカデミーを決める、当時としては斬新な大会でした。

「あれはグラップリングツアーの前に、柔術の団体戦を開催していて。あれは梅村さんが全てやっていましたけど、早すぎました(苦笑)」

――柔術団体戦、ストライキングチャレンジ、アマチュアDEEP、グラップリングツアー、そしてMMA甲子園と、坪井さんが携わってきたことは今のNagoya Fight Fesに詰まっています。ちなみに野外イベントですが、雨が降った時はどうするのですか。

青空イベントのNagoya Fight Fes。会場の目の前に格闘技ショップ公武堂、その先には日本最大の商店街「大須商店街」がある(C)TAKESHI SATO

「屋根(高架)があるので、それほど激しい雨風でなければ大丈夫です。まぁ我々の念が強いのか日頃の良いのか、そんな天候に見舞われたことはないですね。たぶん僕以外のスタッフの徳が高いのだとは思います」

――アハハハ。

「今はこのNagoya Fight Fesが年4回、プロは勝川で年3回と刈谷で年1回——今は来年のスケジュールをどうしようか考えているところですね。結局、自分はオタクなんだと思いますよ。格闘技の仕事オタク、かな」

――格闘技の仕事オタク!

「先日の大会(8月26日、DEEP Nagoya Impact#03&04)でいえば、まず空手出身の寺崎昇龍は強かったですよね。北陸の選手だけど、刈谷市の大会でも応援団が多く来ていて。負けた脇田仁も強い選手ですから。第3部のメインで勝った畠山祐輔も強かった。

大野さん(マユミ・グラップリングシュートボクサーズ)もそうですけど、『この選手がどうやったら成長し、輝いていくかな』とマッチメイクなどを考えるのが凄く楽しいです。別にウチで育ったあと、どこで試合をしてくれても構わないですしね。大切なのは自分のコンセプトを変えないし、曲げないことですよ」

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【Grachan62&MMA甲子園】「いま僕が死んだら、グラチャンはなくなる。でもMMA甲子園は、僕が死んでも残るものでないといけない」岩﨑ヒロユキ-02-

【写真】素晴らしい覚悟のある言葉です (C)SHOJIRO KAMEIKE

23日(日)に大阪府豊中市の176BOXで開催されるGrachan62を前に、岩﨑ヒロユキ代表がMMA甲子園の実行委員長に就任した。
Text by Shojiro Kameike

プロ興行のグラチャンと、グラチャンのもとで開催されるアマチュア大会グラチャン・チャレンジとの関係、大阪でのアマチュア展開など岩﨑代表の想いを訊いた。

<岩﨑ヒロユキ・インタビューPart.01はコチラから>


――MMA甲子園の話に戻りますが、階級と減量についてはどのようにお考えですか。現状、MMA甲子園で設定されている最も軽い階級はフライ級です。高校生の場合、ストロー級が最適な選手もいるかと思います。

「階級については悩みました。実行委員会の皆さんとも相談していて――たとえば身長×体重でレギュレーションを考えるとか。でもMMA甲子園はアマチュア大会で、当日計量ですし、何をどうやっても減量はするわけじゃないですか。となると選手に無理な減量をさせたら所属ジムにペナルティを課すなどの対応を検討しています」

――まだ体が出来上がっていない段階で大幅な減量をしてしまうと、その後の身体形成に関わってきますからね。

「それは実行委員会と所属ジムが二人三脚でやっていくしかないです。実行委員会としても常に目を配っておかないといけない問題で。減量については選手ではなく、所属ジムの問題として捉えます。何かあれば所属ジムにも問題意識を持ってもらうように、実行委員会としても指導していくしかないですね」

――高校生の大会を開催するためには、プロ興行も問題意識を持たなければいけないと思います。キッズから高校生までが目標としてくれるようなプロ興行を開催すること。アマチュア大会だから厳しい、プロ興行だから緩い……ということは、あってはいけないわけで。

「計量について言えば、人間だから誰でもミスすることはあります。ミスした時にどうするのか。グラチャンに関して言うと、計量オーバーしたら次は同じ階級でオファーしません。いつも計量をクリアできるかどうか危ない選手には、常に指導し続けています。誰かは名前を出せないけど(笑)。

MMA甲子園では、そういった規約を明確にしておいたほうが良いでしょうね。一度計量オーバーしたら、二度とその階級で出場することはできないとか。そのためにもプロ興行を正しく運営していかないといけない、という意見は分かります」

――では、プロ興行においてタトゥーをどうするのか。MMA甲子園ではタトゥーが入っている選手は試合に出場できない。でもプロ興行なら良いのか。近年はタトゥーを入れることも一般的にはなってきましたが、アマとプロの関係を考えると問題は残ります。

「MMA甲子園ではタトゥーが入っている場合、オフィシャルのラッシュガードを購入してもらいます。ということは、それだけお金が掛かってしまいますよね。高校生にとっては決して安くない金額です。余計なお金を掛けたくないなら最初からタトゥーを入れない、という考えを持ってもらいたいですね。

一方で、プロは仕方ない面もあります。今はYouTubeでMMAを観ると、国内でも海外でもタトゥーが入った選手ばかりで。だからこそ、MMA甲子園なんですよ。『ラッシュガードを買わなきゃいけないなら、タトゥーを入れるのは止めようかな』と思ってくれる高校生が増えてくれたら――タトゥー問題に対して、MMA甲子園が少しでも抑止力になることができたら嬉しいです。もちろんタトゥーはファッションだし、高校を卒業して20歳を過ぎたら自分でどうするか考えれば良くて。もう大人ですからね。でもせめて……高校生の間は、その時の気分でタトゥーを入れるのは止めてほしい」

――タトゥーが入っている選手のみがラッシュガード着用で、相手がラッシュガードなしだとアンフェアになりませんか。

「そうですね。もともとラッシュガード着用については道徳面を優先して考えました。ただしフェアにならないというのは、そのとおりです。両方ともラッシュガード着用にするか、相手がラッシュガード着用でもOKした場合に試合を認めるか等、今後の検討課題ですね」

――MMA甲子園を開催することで、グラチャンは何か変わりますか。

「あくまで別組織なので、MMA甲子園に紐づいてグラチャンを何か変えないといけない、ということはないです。先ほど言ったとおり、計量については今のやり方を貫いていきます。たとえ選手にとっては厳しくても」

――分かりました。ではプロ興行のお話に移りますが、7月23日は前回の大阪大会と比べるとタイトルマッチもなく、関西の選手が中心となっています。

「大阪で大会を行うかぎり、大阪の選手が出ないと意味はないですからね。僕としては、いずれ大阪大会は関西の選手だけで試合を組みたいと考えています。これは書いてくれて良いけど、今回は手塚基伸と海外選手の試合を組む予定でした。でも海外選手が出場できなくなってしまって……」

――それは残念です。手塚選手と海外勢の試合は見たかったですね。

「今大会でいえば、第一試合に出る有田一貴選手はグラチャン・チャレンジ(以下、GC)を経ている選手です。来年は大阪大会でも、もっとGC出身選手がプロデビューすると思います。ようやく撒いてきた種が実を結びつつあるんですよね。

繰り返しになりますが、僕は選手にプロデビューしたことを後悔してほしくなくて。今まで、いろんな選手を見てきました。正直、グラチャンも初期は『プロかどうか』というレベルの選手も出ていたと思います。そういう選手が負けて、格闘技を辞めてしまう姿を見てきたんです。

彼らもアマチュアだったら格闘技を続けていたかもしれない。プロデビューするからには辞めてほしくないので、まずアマチュアで経験を積んでほしい。そう思っているからこそ僕もアマチュアにこだわっているのかな、って思います」

――MMA甲子園に出場した選手が芽を出すには、何年かかると思いますか。

「最低、3年はかかるんじゃないですか」

――MMAだけでなく、それこそ格闘技界だけでなく日本全体が経済的にも厳しい状況にあります。そのなかで高校生の大会を、いかにして3年以上続けていくか。

「だからこそ、各支部の力が必要なんです。僕ひとりだけでは絶対に無理ですよ。いま僕が死んだら、グラチャンはなくなるでしょう。でもMMA甲子園は、僕がいなくなっても残るものでないといけない。だから、しっかりと組織として固めていきたいです」

――グラチャン、GC、MMA甲子園以外にも今年開催された『J-MMAルーキーカップ』があります。

「ルーキーカップは10月8日が決勝で、来年も開催しますよ。これから各プロモーターの方々に相談します。今年は春に1回戦を行いましたが、来年は夏以降のスタートになるかもしれません。MMA甲子園の全国大会が来年に2月の開催予定ですからね。今後も楽しみにしていてください」

■Grachn62視聴方法(予定)
7月23日(日)
午後0時30分~Grachan放送局

■Grachn62対戦カード

<ライト級/5分2R>
林 RICE 陽太(日本)
小川道的(日本)

<無差別級/5分2R>
ハシモト・ブランドン(ブラジル)
岡本純一朗(日本)

<68㎏以下契約/5分2R>
鍵山雄介(日本)
村田俊(日本)
※当初、鍵山と対戦予定だった室井大勢が怪我のため欠場に。対戦相手が村田に変更となった

<フェザー級/5分2R>
大搗汰晟(日本)
櫻庭泰裕(日本)

<ウェルター級/5分2R>
青木忠秀(日本)
モリシマン(日本)

<フライ級/5分2R>
弘田颯志(日本)
田中智也(日本)

<ウェルター級/5分2R>
上田拳翔(日本)
遠塚浩希(日本)

<ストロー級/5分2R>
藪本龍作(日本)
大貴(日本)

<バンタム級/5分2R>
中嶋紳乃介(日本)
有田一貴(日本)

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【Grachan62&MMA甲子園】岩﨑ヒロユキ代表に訊く-01-「MMA甲子園出身者を契約で縛ることはない」

【写真】MMA甲子園でタッグを組む『レッドブルー』担当編集者、小学館の宮川拓人氏と岩﨑ヒロユキ氏(C)SHOJIRO KAMEIKE

23日(日)に大阪府豊中市の176BOXで開催されるGrachan62を前に、12日(金)に新宿区のパセラリゾーツ新宿本店でMMA甲子園の設立発表記者会見が行われた。Grachanのプロモーターである岩﨑ヒロユキ氏は、MMA甲子園の実行委員長として会見に出席している。

Text by Shojiro Kameike

小学館の週刊少年サンデーに連載中の格闘技漫画『レッドブル―』とタイアップし、作品の中でも描かれている高校生MMAファイターのための大会が現実のものとなる。岩﨑氏が実行委員長を務めることで、MMA甲子園とグラチャンがどうリンクしていくのか。今回は会見の内容とともに、会見直後に行った岩﨑氏のインタビューをお届けしたい。


記者会見には岩﨑ヒロユキ実行委員長、『レッドブルー』担当編集者の宮川拓人氏をはじめ、各地区支部長(関東支部長は岩﨑氏が兼任。補佐に水口誠悟、北海道:平大門、中部:坪井淳浩、関西:中村優作、九州:田村ヒビキ)が出席した。MMA甲子園は高校生を対象としたMMA大会で、9月24日(日)の関東大会からスタート。来年2月に全国大会の開催が予定されているという。

左から水口(誠悟)、坪井、宮川、岩﨑、平、田村、山崎明競技部長

世界で戦う選手育成を目標として、試合ルールはパウンド有りに。アマチュア、しかも高校生の大会とあって安全面を考慮し、通常よりもアンコが厚いパウンドグローブを使用するとともに、レフェリーストップ等も他のアマチュア大会と比べて厳しくなるとのこと。

とはいえ、まだ身体的には成長過程にある高校生は、パウンドも含めて打撃によるダメージが溜まりやすいことは間違いない。その点について、岩﨑実行委員長は「全国大会を目指すための各地区トーナメントは実績と実力を考慮して出場者を判断する。一方で経験を積みたい選手のために、パウンドなしのワンマッチ開催も検討したい」としている。会見後には、レフェリー陣からもパウンドなしマッチのルール整備について提案がなされていた。

高校生の試合となれば、MMAはもちろん格闘競技の経験も大きく試合に影響してくるはず。特に地方では地下格闘技で何十戦も経験を積み、プロデビューしている例も多い。その点については実行委員会も、エントリーした選手に対して厳しい目を持つことを明言。会見後のミーティングでは、保護者の同意はもちろん、所属ジムの承諾を得ないとエントリーできないことが実行委員会内でも確認し合ったという。

宮川氏は『レッドブル―』ではMMA甲子園卒業者がプロになっていく過程も描かれていく予定であることを明らかにした。今回のMMA実行委員会でも、漫画と同様に可能な限りMMA甲子園出身者のフォローはしていくとのこと。まだまだ立ち上がったばかりのプロジェクトだけに、課題は山積みだ。会見直後にMMA甲子園、グラチャンのプロとアマチュア、そして7月23日の大阪大会について岩﨑代表に訊いた。

――まずMMA甲子園というプロジェクトを考え出したのは、「グラチャンで良い若手ファイターを確保しておきたい」という気持ちだったからなのでしょうか。

「いやぁ、全然そういう気持ちはないんですよね」

――MMA甲子園が成功すれば、グラチャンが有望な若手選手を独占できるチャンスです。

「入口はMMA甲子園であっても、人の気持ちは変わるものです。若い選手なら尚更、試合を経験しながら自立していきます。だからMMA甲子園を経験した選手が、どこの団体で試合をすることになっても、『それはどうでもいいかな』っていう気持ちですね。もし僕が日本のMMAを独占したかったら、もっと欲深くグラチャンを運営していますよ(笑)」

――欲深く、というのは?

「MMA甲子園に出場した選手を契約で縛って、プロはグラチャンでしか試合できないようにする――ということでしょう? グラチャンは、そういうことはしないです。MMA甲子園の勝者をグラチャンが独占するということは絶対になくて。だから、どちらもグラチャンとは別組織として発足し、他の皆さんにも協力していただきながら開催しています」

――グラチャンの組織内で開催されているアマチュアのグラチャン・チャレンジ(以下、GC)は、勝者に対して何か契約が発生するのですか。

「GCこそ、活躍した選手が他の大会へ行っちゃっていて(笑)。山北渓人選手はGCに出てくれたあと、パンクラスでチャンピオンになり、今はONEと契約していて本当に嬉しいです。だからって『山北選手はGC出身だから』ってアピールすることもないですし。それこそ大阪大会では僕が『まだプロデビューするレベルじゃないかな』と思っていた選手が、他の大会でデビューしていました。でも仕方ないですよね」

――選手やジムがどの大会に出るかを選択する前に、岩﨑さんから「グラチャンに出ないか」と声をかけることもあるのですよね。

「あります。でも、よほどの選手じゃないと声はかけないです。GCで見て『プロデビューのオファーしたいなぁ』と思うのは、年に3~4選手ぐらいで。GCに出たからって、グランチャンでプロデビューできるとは限りません。それこそGCやMMA甲子園に出ている選手を優先する、なんて気持ちもなくて。

僕はアマチュアって勝ち負けより、経験のほうが大事だと考えています。極端に言えば、アマチュアで何試合か良い勝ち方をしているとか関係ありません。それよりもプロデビューしたあと勝っていくために、どんどんアマチュアで試合経験を積んでほしいです。

たとえば、去年グラチャンのフェザー級トーナメントに出ていた和田健太郎は、ずっとアマチュアで勝てなかったんですよ。GCは判定なし、制限時間内に決着がつかないとドローなので、和田はずっとドローが続いていました。KO負けを喫したこともあります。それでもプロデビューさせました。彼はレスリングの基礎がしっかりしていたので、試合経験を積めばプロデビューできると考えたからですね」

――反対に、MMA甲子園でも「すぐにプロデビューしても良い」という高校生ファイターが出て来るかもしれなません。

「それだけの選手が関東大会に出てきても、まずは全国大会に進んでもらいますよ。そもそもMMA甲子園に出るということは、勝ち進めば全国大会まで出ると考えてほしいです。そこで全国大会の前にプロデビューさせるようなことは――僕はしません。

MMA甲子園で考えると、高校生だと1学年の差は大きいじゃないですか。対格差とか。その勝敗だけで、プロで勝てるかどうか分かるものではない。一方で、プロデビューしても勝てないと、すぐに辞めてしまう選手も多い。僕は、それがすごく勿体なくて嫌なんですよ。プロモーターというのは、選手をプロデビューさせた責任もあると思っていて。

最近はグラチャンに出てくれている選手が多いです。もし僕が声をかけてプロデビューした選手がいても、もしかしたら勝敗によって次の試合を組めないことがあるかもしれない。アマチュアだと、もっと試合経験が積める。プロデビューしたばっかりに試合数が少なるというのは、選手が可哀想ですよ。あとは選手とジムの意向次第で」

――7月23日の大阪大会に出場する弘田颯志選手は、空手の実績がありながらアマチュアではミランダ亜廉選手に敗れています。それでも岩﨑さんから見て、実力的にプロで勝てる実力があったのですね。

「そうです。あの時はお互いに初めてのGC出場ですからね。マッチメイクする時に2人の経歴を見て決めました。試合はミランダ君が勝ちましたが、弘田君もそれだけの実力を見せてくれたので、すぐプロデビューと考えたんです。

今回はSWAG GYM KYOTOの釜谷真君から『強い選手と対戦させてほしい』という要望があり、田中智也選手との対戦を決めました。田中選手は本来ならウチのフライ級トーナメントに出ていてもおかしくない実績がありますからね。このカードは楽しみです」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
7月23日(日)
午後0時30分~Grachan放送局

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