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JJ Globo Report SUG14 ジェイク・シールズ ブレント・プリマス ブログ

【SUG14】元ベラトール世界ライト級王者プリマスが、オーバータイムで腕十字を極めシールズを下す

<5分1R>
ブレント・プリマス(米国)
Def. Overtime by 腕十字
ジェイク・シールズ(米国)

一回り大きく見えるシールズが、ケージにプリマスを押し込む。体を入れ替えたプリマスが離れる。これがMMAマインドのグラップリングか、立ちレスが2分続く。プリマスが押し込む形でクリンチも自ら離れ、試合は残り半分の時点でシールズが引き込む。足を捌いてパス狙いのプリマスに対し、シールズがハーフガードで右腕を差す。

そのシールズの右肩に頭を置いて上体を殺したプリマスはスクランブルも潜りも許さない。半身のシールズはついにパスを許すが、残り試合タイムは40秒。シールズは最後の5秒で足を戻し、タイムアップに。両者揃ってオーバータイムを頭に入れた終盤戦のようだった。

コイントス後、シールズがシートベルトを選択。四の字フックのシールズのキープは1分を越え、プリマスにエスケープの気配は感じられない。シールズも背中を取ることに専念するように、2分のオーバータイム中バックを制し続けた。

後攻めプリマスは一本狙いでスパイダーウェブを選択。奥にある右腕を取られている左手でクラッチしたシールズだが、プリマスはその右腕の腕にヒザを置いて左腕を伸ばしかかる。立ち上がったシールズは、プリマスの肩抜き後転に反応して前転でエスケープを図る。しかしプリマスはシールズを仰向けにすると同時に、左腕を伸ばしタップを奪った。


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【SUG14】BellatorファイターがUFC Fight Pass登場。SUGで元ライト級王者プリマスがジェイク・シールズ戦

【写真】このゴゴプラッタが印象深いプリマス (C)BELLATOR

31日(日・現地時間)に開催されるSubmission Underground14。5✖1R+オーバータイム制が適用されたサブオンリー大会はメインでクレイグ・ジョーンズ✖ヴァグネウ・ホシャが組まれているが、セミも非常に興味深い対戦がマッチアップされている。

それがジェイク・シールズ✖ブレント・プリマスの顔合わせ。修斗、ROTR、Strikeforce、UFC、WSOF、そしてPFLで活躍した元祖柔術とレスリングの融合=アメリカン柔術の担い手ジェイクと、元Bellator世界ライト級王者の対戦。Bellator契約下のファイターがUFC Fight Passに登場するのも同大会のホストで──UFCとBellatorの両大会で解説者を務めるチェール・ソネンのパワーというところか。


ジェイクは2018年10月のPFLを最後にグラップリングに専念しており、この18カ月で実に10戦目の組み技戦となる。SUGには3度の出場で、前回はリッチー・マルチネスに腕十字で敗れている。どちらかといえばサブオンリーよりもポイント有りで力を発揮しそうなドミネイター・タイプのジェイクだが、オーバータイムを考慮にいれつつ、ストラテジーを立ててくるのか楽しみだ。

一方、グラップリングの印象のないプリマスだがベースは柔術で、黒帯を巻いている。またMMAで挙げた10の勝利のうち一本勝ちは半分以上の6つで、RNCおよびフェイスロックが5度のフィニッシュがあり、バックを制してからのチョークが必勝パターンという想像に難くない。ただし、そんなプリマスがサブミッションで最もインパクトを残したのは、昨年5月のベラトール・ユーロシリーズでのティム・ワイルド戦だ。開始早々に打撃を効かされて下となったプリマスは、ワイルドにゴゴプラッタを極めて一本勝ちしている。

ジェイクもトップコントロールの印象が強いが、実はハーフからの潜りスイープやワキを差して立ち上がって上を取るリバーサル系の動きも使いこなしている。5分間の短期決戦&オーバータイム──で、どれだけ積極的に動きつつミスを犯さないか。下の選手の方が仕掛けが多いともいえるサブオンリーで、真価を発揮するのはジェイクかプリマスか、気になるところだ。

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JJ Globo JZ・カバウカンチ other MMA Report Titan FC60 ハウシュ・マンフィオ ブログ 未分類

【Titan FC60】戦闘組み技戦は掌底MMAに。延長で速攻、胸を合わせたJZがマンフィオを破り王者に

<Titan FCコンバットグラップリング・ウェルター級王座決定戦/8分1R>
JZ・カバウカンチ(ブラジル)
Def. Overtime
ハマシュ・マンフィオ(ブラジル)

掌底をスタンドで見せあった両者。JZがテイクダウンのフェイクを織り交ぜて、左を振るう。一気に組みついたJZがバックに回ると、マンフィオはケージに頭をつけて耐える。自ら尻もちをついて寝技に持ち込もうとしたJZだが、マンフィオがこのタイミングで胸を合わせる。

離れた両者、マンフィオの左掌底がJZの頭部を捕らえパチーンという音が響き渡る。マンフィオは全くグラップリングでなく、掌底MMAを続けるなからテイクダウン狙いに掌でアッパーを打ち込む。JZのテイクダウンを打撃で迎え撃つマンフィオ、完全に組みを避けたグラップリングマッチは、組みにいくJZが叩かれる展開が続く。

掌底からカニバサミを狙ったJZは、これをかわされると左の掌底に組みついていく。かわして叩くマンフィオは、片足を取られても掌底を入れ続ける。残り1分も組みを切るマンフィオと組みを狙うJZの展開となり、ローシングルを切ったマンフィオは自ら組むことなく8分間が終わった。

マットが消毒され、EBIスタイルのオーバータイム一本勝負に試合は突入。まずJZがシートベルトポジションを選択、四の字フックからRNCを狙うJZは腰をずらしてくるマンフィオのアゴの上から絞めを狙う。フェイスロック気味の絞めを外したマンフィオが胸を合わせ、エスケープに要した時間は1分23秒だった。

続いてマンフィオは、シートベルトポジションを取ったマンフィオは僅か6秒でポジションを失い、JZがタイタンFCコンバットグラップリング・ウェルター級のベルトを腰に巻いた。「まずファイターがパンデミックのなか、ここに戻ってこられて嬉しい。彼は良いストライカーだし、その選択に文句はない。次? なんでも準備できている。ファイトMMAを仕事にするのは簡単じゃない。でもグラップリングは僕の人生だ、こういう経験はルーツを思い出させてくれるよ」とJZは笑顔を見せた。


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Interview J-CAGE JJ Globo Shooto2020#03 ブログ 世羅智茂 岩本健汰

【Shooto2020#03】修斗でグラップリング、岩本健汰─02─「極め切る力は柔術ではそれほど大切じゃない」

【写真】実はバキバキ・ボディの岩本。やり込んでいること伝わってくる説得力のある体、だ (C) MMAPLANET

31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されるProfessional Shooto2020 Vol.3 で、世羅智茂とグラップリングマッチを戦う岩本健汰インタビュー後編。

AOKI PROJECTが発動され、青木真也のMMAが打撃に偏りがちな今、グラップリングマッチを組むことでバランスを保ちたいという意向が反映したマッチアップだ。

ただし、岩本はグラップラー。MMAのためではなく、彼はグラップリングを一つの競技として確立させたいという強い想いともに修斗のケージに足を踏み入れる。

プロ修斗のなかでグラップリング寄りの柔術家=世羅と戦う岩本。もはや自らを柔術とは認めず、グラップラーだという認識の下で格闘家として生きる岩本は、この試合でグラップリングの面白さを伝えようという気持ちに溢れていた。

<岩本健汰インタビューPart.01はコチラから>

──グラップリングもMMAも、柔術も同じように楽しんで視聴したいですが、その裏で格闘技としてえげつなさもあります。

「こないだのSUGのクレイグ・ジョーンズ✖ヴィニー・マガリャエスですよね……。あのヒザが壊れたのは、えげつなかったです(苦笑)」

──そういう怖さもグラップリングというスポーツには含まれています。

「そこも含まれてグラップリングですしね。それがグラップリングの醍醐味であるサブミッションで……次の試合でもそのサブミッションという形を見せたいです。サブミッションを取るまでの戦いを。

グラップリングらしさ、良さを見せたいと思って戦ったことは、余りなかったですけど……これまではグラップリングのっことを理解した人が、面白いと感じてくれれば良いという意識だったので。でも、今回の試合はMMAとは違う……打撃がない故の技の美しさを意識しています」

──観客がいないことで、MMAの試合でも画面は静まり返っていて、セコンドの声がしっかりと聞こえる。これは通常の観客を入れたMMAの大会で組まれるグラップリングよりも、ずっと伝わりやすいのではないかと勝手ながら期待しています。

「あぁ、その話を聞くと良いなぁと思えるようになりました(笑)。MMAのファンの人に『動けよ』とか『殴れよ』なんて野次られると、試合に影響が出てしまうかもしれないので」

──いずれは、グラップリングを引っ張る立場として、そういう野次にも岩本選手が平気になるために、今回の試合がステップとなれば良いですね。ところで岩本選手は柔術とグラップリングは別物という説を説いていますが、グラップラーの強さを示す物差しは、未だに柔術の帯です。

「そうですね……」

──岩本選手は今も紫帯ですか?

「僕は一応、茶帯です。でも、連盟とかの登録上は紫帯のままです。IGLOO柔術の山中健也さんに帯を貰ったのですが、連盟に認められた帯ではないです(苦笑)」

──JBJJFでは紫でIGLOOでは茶帯、いかにも岩本選手らしいです(笑)。そして世羅選手は柔術の黒帯です。

「柔術とグラップリングは別競技です。帯の色は意識しないです」

──柔術とグラップリング、どこが一番違うと言えますか。

「ルールにもよりますが、柔術もノーギ柔術がIBJJFにあります。そのルールだとグラップリングでも柔術寄りです。今回のようにサブオンリーになると、柔術があまりやらないところも……サブミッションを確実に取る力や、サブミッションに対する防御力とか、柔術では勝敗の対象として大きな要素になっていない部分が必要になってきます。極め切る力は柔術ではそれほど大切じゃない」

──おお、言い切ってしまいましたね!! 柔術では極める前の段階の技術が必要だと。

「ハイ。だからルールによっても、柔術黒帯でもサブオンリーでは極める力がない人や、エスケープをあまり練習していない人は全然勝てないです。だからルールによるのですが、サブオンリーだと柔術の黒帯だからといって強いとは限らないです」

──今、ムンジアルで優勝できる柔術家で極めが強くない、エスケープ能力が高くない選手など存在するのでしょうか。

「極めがなくても、エスケープの能力が弱くてもムンジアルの世界王者にはなれると思います。サブオンリーになると、できない人でも一番になれます」

──ADCCでも長い間、IBJJFの最高峰ムンジアルで優勝する人が結果を残していた印象がありますが……。

「アブダビもサブオンリーではなく、後半はポイントが入ってきます。でも下になってはいけない。クレイグ・ジョーンズやゴードン・ライアンが勝てるのは、前半はサブオンリーだし、足関節で使える技が多くて、それほどポイントもIBJJF柔術寄りではないからだと思います。ポイントを失わないのもアブダビ流というのがありますし」

──では、サブオンリーだけに今回の試合は負けられないですね。

「そこは本当にそう思っています。僕は世羅選手と違って柔術はやっていない。グラップリングだけをやっています。グラップリングはMMAと違うのと同じように、柔術とも全然違います。おこがましいけど、僕はグラップリングを一つの競技として確立させたいんです。

世羅選手は、多分そういうことは思っていない。柔術とグラップリングの両方を楽しいって感じでやっているはずです。でも僕はグラップリングしかやっていない。グラップリングに全てを賭けています。そういう想いを持っているからには、負けるわけにはいかないです」

──グラップリング専門家は、ほぼいないといっても良い状況です。

「だからこそ、MMAの人が視て、柔術の人も視る次の試合は大切になります。色々な人を巻き込んでいくためにも、グラップリングの面白さを知ってもらいたいです」

■プロ修斗対戦カード

<修斗暫定世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
岡田遼(日本)
倉本一真(日本)

<ライト級/5分3R>
SASUKE(日本)
西浦ウィッキー聡生(日本)

<グラップリング72キロ契約/10分1R>
世羅智茂(日本)
岩本健汰(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
黒部三奈(日本)
大島沙緒里(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
杉本恵(日本)
中村未来(日本)

<バンタム級/5分3R>
清水清隆(日本)
小堀貴広(日本)

<フェザー級/5分3R>
石井逸人(日本)
齋藤翼(日本)

<ライト級/5分2R>
木下タケアキ(日本)
西川大和(日本)

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Interview J-CAGE JJ Globo Shooto2020#03 ブログ 世羅智茂 岩本健汰

【Shooto2020#03】修斗でグラップリング、岩本健汰─01─「青木さんと世羅さんみたいな試合にならない」

【写真】青木と岩本が練習をし始めた昨年夏の一コマ。MMA的ではなくて、グラップリング的なスクランブルの攻防や足関節の攻防が見られた (C) MMAPLANET

31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されるProfessional Shooto2020 Vol.3 で、世羅智茂✖岩本健汰のグラップリングマッチがAOKI PROJECTとして組まれた。

プロ修斗のなかでグラップリング寄りの柔術家=世羅と戦う岩本。もはや自らを柔術とは認めず、グラップラーだという認識の下で格闘家として生きる岩本は、この試合でグラップリングの面白さを伝えようという気持ちに溢れていた。

──世羅選手とのグラップリングマッチを青木選手の刺客として戦うことが決まりました。それ以前に青木選手とドローだった後のインタビューで、世羅選手から岩本選手と戦いという発言がありました。

「向うから指名してくれたので、チョット嬉しかったです。世良さんもそう思っているんだって。僕も戦いたかったので」

──では、その世羅選手の印象を教えてもらえますか。

「QUINTETとか見ていても、極めのある選手だと思いました。腕十字とギロチン。ポジションを取って攻めるというより、その場で一瞬にして極める形でのサブミッションがある選手だと思います。腕十字もクローズドガードから極めたりしていたので」

──10分間のサブオンリーを金網で戦う。ドローの場合、EBIのようなオーバータイムがないことはどう捉えていますか。

「あっても良いのですが、それで本戦はドロー狙いで、オーバータイムで勝負を掛ける選手もいるので、何とも言えないですね」

──今回、ルーチはありますか。

「いやぁ、聞いていないです。膠着しても、そのままじゃないでしょうか」

──動かないのも勝負ですが、修斗のなかであるグラップリングの試合ということで、意識することはありますか。

「打撃がないから面白くないとは、思われたくないです。MMAでもなく、柔術でもなく……グラップリングが面白いっていうことを見せたいです。今回の試合は無観客大会でABEMAの中継があるなかで組まれました。グラップリングを認知してもらうためにも、凄く大切な一戦だと感じています」

──勝つために……負けないために動きが、止まるのが格闘技で。個人的には勝利という目的に対する、手段として動きが多いのは理解できますが、目的と手段が変わると興ざめしてしまいます。そういうなかで岩本選手と世羅選手のグラップリングは、どういう攻防になるとイメージしていますか。

「青木さんと世羅さんみたいな試合にはならないと思います。やはり一本を狙って、膠着しないよう戦いたいですね」

──世羅選手は青木戦で終盤に下から仕掛けて、足関節を取りに行きました。

「う~ん、最近のグラップリング寄りの柔術家ですね。グルグル回って、足を取りに行くっていうのは。青木さんを相手に一度でも煽れたのは、凄いとまでは言わないですが……そこそこ攻め手はあったんだという印象です。

僕も世羅さんとはスタイルが少し似ていて。フックで浮かして足を狙うとか、ギロチンを取るとか。似ているからこそ、噛み合うとは思います」

──今、岩本選手は理想するグラップラーがいるのですか。

「まぁ、スタイル的には……ルールにもよりますが、このルールで世羅さんが相手なら上からプレッシャーをかけて青木さんみたいなスタイルで、かつ膠着のないようにとは考えています」

──おお、下から作るのはでないのですね。

「それはあまり考えていないです。世羅さんが上を取りに来るイメージはないです。なので上からプレッシャーをかけて、壁とか使いたいですね。せっかくケージのなかでやるので」

──足関節だけではないということですね。

「そうですね。何でもできないと。グラップラーとして──練習でもそうですが、立ちも含めて全部やっています。パスもスクランブルも、足関節も。均等にやっているので、一つに拘らないように今は意識しています」

──ではクローズドの中に収まることも考えられますね。

「そうなると、立って動きます。前の試合のようにはならないようにします」

──岩本選手は言い辛いからもしれないですが、青木✖世羅ではグラップリングの魅力は伝わらない? グラップリングの認知度を上げるには、ああいう試合になってはいけないというのはありますか。

「……やっぱり、それはあります」

──アハハハ。スミマセン、誘導尋問ですね。

「MMAを念頭に置くと、ああいう試合になってしまうと思うので、僕は僕なりにグラップリングの戦いをしたいです」

<この項、続く>

■プロ修斗対戦カード

<修斗暫定世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
岡田遼(日本)
倉本一真(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
黒部三奈(日本)
大島沙緒里(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
杉本恵(日本)
中村未来(日本)

<ライト級/5分3R>
SASUKE(日本)
西浦ウィッキー聡生(日本)

<バンタム級/5分3R>
清水清隆(日本)
小堀貴広(日本)

<フェザー級/5分3R>
石井逸人(日本)
齋藤翼(日本)

<ライト級/5分2R>
木下タケアキ(日本)
西川大和(日本)

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Interview J-CAGE JJ Globo Shooto2020#03 ブログ 世羅智茂 岩本健汰

【Shooto2020#03】岩本健汰と戦う世羅智茂─02─「勝ちに行きますが、岩本君の動きもよく見て欲しい」

【写真】柔術、そしてグラップリングが本当に好きなんだなぁというのが伝わってくる世羅だった (C) MMAPLANET

31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されるProfessional Shooto2020 Vol.3 で、岩本健汰とグラップリングマッチがAOKI PROJECTとして組まれた世羅智茂インタビュー後編。

自らが臨んだ岩本戦が、思わぬ形でプロ修斗の大会で組まれることとなった世羅は、グラップリングマッチが2カ月連続でABEMAの格闘技中継で見られる事態をどのように捉えているのか。そして岩本戦でどのような試合を見せたいのか──そんな問いに対い、世羅の持つ独特の世界感が伝わってくる返答があった。

<世羅智茂インタビューPart.01はコチラから>


──対策練習が好きでないと?

「そればっかりだと飽きてしまって、疲れちゃうんです。それなら純粋にやりたいこと、試したいことを練習したいんです、まだ」

──青木戦と同じルール。前回はMMAファイターと、今回はグラップラーと。組み技のなかで異種格闘技戦になっているような試合です。

「あっ、そこは意識していないです。組み技の異種格闘技戦……岩本君はグラップリングに寄っている柔術家で近いような気がします」

──岩本選手は自らをグラップラーであって、柔術家とは名乗っていない向きがあります。

「そうですか。なるほど……(微笑)」

──今回の試合は何か想うところはありますか。前回の試合は……。

「塩試合やってしまったので、前よりは動こうと思います。さすがに(笑)」

──前の試合は上にいた青木選手も動いていないです。

「まぁ、僕も動いていなかったのでお互い様です。上が動くってモノでもないですし」

──そういう想いもあるので、今回は意識して動くということになりますか。

「でも、勝つためです。良い試合をしても、極めることができなければドローなので。一本を狙っていきたいです」

──世羅選手は柔術の試合でも、下から腰を切って果敢に極めに行ったり、スクランブルでバックに回って思い切り絞めを狙うとか、極めに拘る印象がありました。同時に、そこでスタミナをロスすることも含めて。

「昔はけっこう酷かったです、その傾向が……」

──酷かった?

「あっ……酷かったというより、強かったです。今は自重するようになりました。昔ほどでは、なくりましたね。そこは変えてきています」

──ところで岩本選手は、厳密にいえば世羅選手とは柔術でいえば帯の色が違います。

「ハイ、柔術だと同じトーナメントには出られないですね」

──ただ、彼はもう連盟に認められた帯を巻くつもりもないようです。

「その思いっきりが良いですね。中途半端じゃなくて。僕は柔術も割としたいし、グラップリングもしたいので中途半端ですね」

──いえいえいえ。

「でも石川(祐樹カルペディエム青山代表)さんに『どっちかにせぇ』というか、『グラップリングに専念したら』とはよく言われます」

──グラップリングに専念すると、試合数が極端に限定されてしまうので、躊躇してしまうかと。

「日本だけだと一気に試合は少なくなってしまいますよね。う~ん、米国ではないのでグラップリングに専念しづらいです」

──米国ではノーギ・グラップリングの試合にどんどんMMAファイターも出場してきますしね。

「ハイ、米国はグラップリングが盛んです」

──世羅選手がそういうことに無頓着な性格であることは、徐々に分かってきましたが、2カ月連続でグラップリングの試合がABEMAで流される。コロナの時代のMMA大会にグラップリングが入り込む余地があるのではないかと。

「あぁ、そうなれば嬉しいですね。MMAファイターと柔術家が試合をしたり、そういうのでも続いてほしいですね。なので、このルールで戦ってくれる選手がいてほしいです。普通の柔術ルールだけを考えているグラップラーばかりが相手だと詰まらなくなるので。サブミッションに寄っているグラップラーがいれば、盛り上がりやすいですよね」

──Road to ONEに出場した宮田選手などもADCCに予選から出たいということを言っていましたし、コロナ時代はグラップリングが脚光浴びる機会になるかもしれないです。

「グラップリングをこれだけ見てもらうことって、過去になかったことですしね」

──そこでこのルールに出たいと思う柔術家、MMAファイターが増えると良いですね。では改めて、岩本戦への意気込みをお願いします。

「意気込み……ですか、まず前よりは動くので見てください(笑)」

──アハハハハ。

「僕ももちろん負けるつもりで戦うことはないです。でも、岩本君ももの凄く強い選手で、これからのグラップリング界の中心になる選手です。僕も勝ちにいきますけど、彼の動きも良く見て欲しい……。これじゃ、意気込みにならないですね」

──いえ世羅ワールドが展開されたと思っています。ありがとうございました。

「こちらこそありがとうございます」

■プロ修斗対戦カード

<修斗暫定世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
岡田遼(日本)
倉本一真(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
黒部三奈(日本)
大島沙緒里(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
杉本恵(日本)
中村未来(日本)

<ライト級/5分3R>
SASUKE(日本)
西浦ウィッキー聡生(日本)

<バンタム級/5分3R>
清水清隆(日本)
小堀貴広(日本)

<フェザー級/5分3R>
石井逸人(日本)
齋藤翼(日本)

<ライト級/5分2R>
木下タケアキ(日本)
西川大和(日本)

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Interview JJ Globo ONE Shooto2020#03 ブログ 世羅智茂 岩本健汰

【Shooto2020#03】青木真也に続き、岩本健汰と戦う世羅智茂─01─「ここで戦えることはラッキーです」

【写真】飄々とというよりも、世羅は淡々と語る (C)MMAPLANET

31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されるProfessional Shooto2020 Vol.3 で、世羅智茂✖岩本健汰のグラップリングマッチがAOKI PROJECTとして組まれた。

4月17日に開かれたRoad to ONE02で青木真也とグラップリングマッチを戦いドローだった世羅が、青木のトレーニング・パートナーである岩本と今度は戦うこととなった。

コロナの時代に思わぬ2連戦を戦う世羅に岩本戦について尋ねた。


──前回の青木選手との試合後に、岩本選手と戦ってみたいという発言があった世羅選手ですが、その一戦が修斗の大会で組まれることになりました。

「このタイミングなんだって(笑)。岩本選手とはADCC予選、全日本ノーギ、もしくはQuintetでやることもあるだろうと思っていたのですが、こんなに早く戦うことになったかと。でも、互いに続けていれば当たることになったでしょうし。

それが修斗の大会で実現することは驚く部分ではあるのですが、またこういう機会で試合をさせてもらえることは有難いです」

──大会開催も試合内容も賛否両論だった青木選手との試合が呼び水になりましたね。

「青木さんとの試合があったから、より面白くなるかと思います。岩本君と青木さんは同じチームのようなものなので、次は青木さんの代わりに岩本君が出てくるという流れがあるので」

──青木選手とすれば、身内の岩本選手をアップしたい。そういう試合かと思います。

「う~ん、そこまで考えているのかどうかは分からないですけど、青木さんが岩本君に期待しているということですよね。若いですし、これからのグラップリング界の中心になる選手で。もう既に中心になってしますけど……、その彼により大きな舞台に立ってもらおうという気持ちが青木さんにあるんじゃないでしょうか」

──そうは問屋が卸さないという気持ちは?

「それもありますけど、強い相手なんで十分に負ける可能性もあると思っています。彼は強いです。青木選手がどういう考えなのか本当のところは分からないです。でも、誰が相手でも負けられないという気持ちでいます。だから、青木さんの思惑は関係ないですね」

──世羅選手は4月17日の青木戦に続き、2カ月連続で試合をすることになります。この間に2度、青木真也、そして岩本という相手と試合ができる柔術家は日本にはいないです。

「いないですね。柔術の大会がすぐに開かれるということはないでしょうし……まだ無理ですよね。甲子園が中止になるってことは、色々なことに影響を与えてしまうんじゃないでしょうか」

──甲子園も興行だったというのが分かったような気がします。野球とサッカー、どちらが接触しているのかということを考えると。

「それは、そうですね。甲子園がダメだと、他のスポーツにも影響しますから。なんとか色々なスポーツが無観客でも開催に向かってほしいです」

──それでどこまで採算が取れるのか。もう、判断理由はそこに尽きると思います。

「だからこそ、僕がここで2試合を戦えることはラッキーです。自分のことだけを考えると。でも、他の人が試合どころか練習もできないという状況でもあるので、この状況を諸手を挙げて喜ぶという気持ちにもなれないです」

──現時点で結果的に4月17日は東京都における1日の感染者数がピークにあった日です。あの時と比べて、状況は上向いている中で、今回の試合に臨む。前回と比較てして、気持ちの違いなどはありますか。

「新たな感染者数が明らかに数値で減っていますし、外を出歩いている人の数も明らかに増えている。そのなかで気が緩むことはもうしょうがないと思います。どちらにしても、自分の場合は試合が決まれば練習をするだけなので」

──そのなかで戦う岩本選手は青木選手とは全く違うスタイルのグラップラーかと思います。岩本選手対策はしていますか。

「ハイ、青木さんと岩本君は違いますね。ただ、練習に関しては岩本君を少しは意識していますが、あくまでも自分の技術を練ることが多かったです」

──盟友の岩崎正寛選手が故郷に戻りカルペディエム芦屋をオープンされるそうですが、練習相手の事欠くことはなかったでしょうか。

「岩﨑君はまだ東京にいるので、練習しています。ちょっと新しい動きとか練習で試していますが、対戦相手のことばかり考えて練習するのって、僕は苦手なんです」

<この項、続く>

■ Shoto2020#03対戦カード

<修斗暫定世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
岡田遼(日本)
倉本一真(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
黒部三奈(日本)
大島沙緒里(日本)

<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
杉本恵(日本)
中村未来(日本)

<ライト級/5分3R>
SASUKE(日本)
西浦ウィッキー聡生(日本)

<バンタム級/5分3R>
清水清隆(日本)
小堀貴広(日本)

<フェザー級/5分3R>
石井逸人(日本)
齋藤翼(日本)

<ライト級/5分2R>
木下タケアキ(日本)
西川大和(日本)

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J-CAGE JJ Globo News Shooto2020#03 ブログ 世羅智茂 岩本健汰 青木真也

【Shooto2020#03】組み技異種格闘技戦=世羅智茂✖岩本健汰のノーギグラップリングマッチが決定!!

【写真】青木✖世羅に続き、今度は世羅✖岩本だ(C)MMAPLANET

25日(月)、サステインより31日(日)に会場非公開でABEMAテレビマッチとして開催されるProfessional Shooto2020 Vol.3 Supported by ONE Championshipで、世羅智茂✖岩本健汰のグラップリングマッチがAOKI PROJECTとしてマッチアップされることが発表された。

AOKI PROJECTとは青木真也が今、見たい──旬のカードやプランニングするというモノで、第1回で予定されていたプロ修斗フライ級戦=清水清隆✖平良達郎の一戦はコロナウィルス感染拡大の影響を受け、大会とともに中止されてしまった。

今回は修斗の大会のなかで、敢えて青木は日本グラップリング界の現状を憂い、また存亡を賭けてグラップリングマッチながら世羅と岩本に白羽の矢が立てた。

世羅は4月17日に開かれたRoad to ONE02で、プロジェクトの中心である青木とグラップリングマッチを戦い10分タイムアップのドローだったことは記憶に新しい。対して岩本は青木のトレーニングパートーナーであり、青木がピュアグラップリングでの知識を深め、技を練るのに欠かせないグラップラーだ。


ノーギワールドやADCC予選に挑むなど世羅は道着を着た柔術ともにノーギにもチャレンジする柔術家で、昨年のADCCアジア・オセアニア予選では岩本が優勝した66キロ級にエントリーしていたが、準々決勝で敗れ両者が組み合うことはなかった。

またMMAPLANETのインタビューで、青木戦を終えた世羅は岩本との対戦を口にしていた。その岩本はもはや柔術家という肩書きは持たず、グラップラーとして生きている。そして柔術でいえば岩本は茶帯を巻いているが、JBJJFが認可する帯制度では未だ紫帯のままだ。つまりは連盟主催の柔術では不可能な両者。思えばグラップラーの評価対象が、柔術の帯という現状も興味深い。

閑話休題。

とはいえ岩本は今やノーギ・グラップリング、特に今大会で採用されるノーポイント&サブミッションオンリー・ルールでは間違いなく日本の第一人者といえる。ADCC2019ではパウロ・ミヤオに初戦で敗れたが、当然のようにパウロとやり合う彼の組み技力が紫帯レベルであるわけがない。今年3月のZSTグラップリング=「GTF.3」でも圧巻の3試合連続一本勝ちで断トツの優勝を飾っている。

世羅も青木を相手にパスを許さず、青木が動けばニーシールド・ハーフからの作りや、リバースデラヒーバから足関節という流れを見せていたものの、それらの動きはIBJJFルール以下のポジションを許さない、またはポジションを取ることがベースとなっている足の取り方だった。

(C)SATOSHI NARITA

対して、岩本にとってのグラップリングは極めに行き着く。ポイントに関してはADCCのトップが上位とされる得点であり、IBJJFベースの世羅とはアイデンティティが違うといって過言でない。

青木✖世羅がMMAファイター✖柔術家のノーギ・グラップリングだったのに対し、今回の試合は柔術家=世羅✖グラップラー=岩本という構図が鳴り立つ。現状、日本ではトーナメント&出場料を支払う組み技トーナメントは成立させることが困難であるからこそ、プロ修斗内で見られる組み技・異文化交流は貴重、パウンド有りとは違う「組み」の魅力と怖さを日本中に届けて欲しい一戦だ。

なお同大会ではメインの修斗暫定世界バンタム級王座決定戦=岡田遼✖倉本真一、3回戦でライト級=SASUKE✖西浦ウィッキー聡、フェザー級で石井逸人✖齋藤翼、修斗女子初代スーパーアトム級王座決定トーナメント準決勝=黒部三奈✖大島沙緒里&杉本恵✖中村未来、そして2回戦のライト級戦=木下タケアキ✖西川大和の5試合に加え、バンタム級で清水清隆✖小堀貴広の3回戦も22日(金)に明らかとなっており、全8試合が組まれることが決まった。

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JJ Globo Preview SUG14 クレイグ・ジョーンズ ブログ ヴァグネウ・ホシャ

【SUG14】クレイグ・ジョーンズがEBIでのリベンジを掛けて、コンバット柔術世界王者ホシャと再戦

【写真】ADCCの階級ではクレイグがホシャより1階級上だ (C)SATOSHI NARITA

31日(日・現地時間)にチェール・ソネンがホストのSubmission Underground14が開催され、UFC Fight Passでライブ中継させる。

リモートカメラ、セコンドなし、レフェリーとファイターのみという状況で行われた4月大会は、改造された穀物サイロというダミー名の下で開かれ、今回も会場はSUGアイランドというUFCのファイトアイランドをもじった名称が使用されている。5分1R+オーバータイム制が用いられたSUGはノーポイント&サブオンリー・グラップリング大会で、前回大会に続きメインにクレイグ・ジョーンズが出場し、2017年に敗れたヴァグネウ・ホシャと戦う。


昨年来グラップリングで17勝3敗1分という驚異的な勝率を誇るジョーンズは、SUGでもジルベウト・ドリーニョ、ケビン・ケイシー、そして前回のヴィニー・マガリャエスは結果的にヴァーバル・タップだったものの、RNグリップの内ヒールでヒザを破壊しており、事実上3試合連続で足関節により勝利している。

そんなジョーンズは2017年にEBI11のウェルター級16人トーナメントに出場。ここでブラジルはリオデジャネイロ州生まれ、5歳の時に両親とフロリダに移り住み18歳からパブロ・ポポビッチの下で柔術&MMAを始めたホシャに、準決勝=OTで敗れている。

ホシャはMMAでもUFCまで到達しており、2009年から実働8年で14勝4敗8つの一本勝ちという戦績を収めている。2017年3月以降はグラップリングに軸を置いて活動し、ライト級だったMMA時代と違い主に77キロでキャリアを積んできた。

上に挙げたようにジョーンズに勝利したEBI11では決勝でゴードン・ライアンに敗れ準優勝、EBI13=ライト級TでPJ・バーチ&ネイサン・オーチャードという10thPlanet組を破るも、決勝でゲイリー・トノンの足関節に下っている。

他方、コンバット柔術では決勝でオーチャードと再戦し、マウントからの掌底の連打でライト級王者に輝くと、2018年のPolaris08でベンソン・ヘンダーソンをRNCで下している。さらにはADCC2019でも77キロ級で準優勝、今年に入るとSub Starで──先日UFCでマイケル・ジョンソンにストレートフットロックを極めたチアゴ・モイゼスからポイント勝利を手にするなど、グラップラー・ホシャはMMA時代よりも多くの栄光を手にしてきた。

ジョーンズとしてはホシャに対し、リベンジを狙い一本必至というスタイルを貫くことが予想される。その一方で、ホシャはEBIで挙げた6勝のうちOTでの勝ちが4つと延長のシートベルト・ポジション&スパイダーウェブの好守に強い。SUGは本戦が5分間ということを考えると、ホシャはOTでの勝利を狙ってくることも大いに考えられる。

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IFL17 Interview JJ Globo other MMA ブログ ヘンゾ・グレイシー

【The Fight Must Go On】Media Passから周辺取材─03─2007年9月29日、IFL17&ヘンゾの柔術人生

【写真】リコ・ロドリゲス、アンドレ・グスマォン、ファビオ・レオポルト、ジャマル・パターソンらがヘンゾ率いるNYピットブルズのメンバーとしてIFL世界王者となり、チャンピオンリングを手にした(C)MMAPLANET

国内外のMMA大会の中止及び延期、さらには格闘技ジムの休館など、停滞ムードの真っただ中です。個人的にも大会の延期と中止のニュースばかりを書かざるをえない時期だからこそ、目まぐるしい日々の出来事、情報が氾濫する通常のMMA界では発することができなかったMMAに纏わる色々なコトを発信していければと思います。こんな時だからこそ The Fight Must Go On──第35弾はMedia Passから──ポストファイト・インタビューではなく……周辺取材インタビュー、その03として2007年9月20日に開催されたIFL17=International Fight League 2007 Team Championship取材後に行ったヘンゾ・グレイシーの柔術レジェンズから、再録して紹介したい。

IFLはリング使用、都市型チーム対抗戦を用いた特殊なMMA大会でヘンゾはNYピットブルズの監督として、この日パット・ミレティッチ率いるクワッドシティ・シルバーバックスを下し2007年チームチャンピオンを獲得。記者会見後にIFLではなく彼の柔術家人生を振り返ってもらった。

グレイシーで最もフレンドリー、グレイシーでも最もクレイジー。12年8カ月前に愛すべきヘンゾが語った柔術人生とは。


――今も現役ファイターのヘンゾですが、今回のインタビューでは米国に移る前、ブラジル時代のことを中心に話をお伺いしたいと思います。柔術を始めたのは何歳のころなのでしょうか。

「5歳のときにホーウスの下で始めた。それ以前もリオブランカのアカデミーで遊んでいたけど、本格的に始めたのはコパカバーナのホーウスのアカデミーだよ。もともと家で父(ホビソン)と遊ぶときは、柔術やバーリトゥードの真似事ばかりだったし、柔術を始めることはごく自然の成り行きだった。アカデミーに足を運ぶこと自体が生活の一部だったし、それはプロフェッショナルになってからも変わりないよ」

――柔術を始めた当時は、誰が練習相手だったのですか。

「リオブランカのアカデミーでは、ホイラーとトレーニングしたこともあったけど、だいたいはホーウスの教え子たちだった。ホジャーの父であるマウリシオ・ゴメス、ジャカレ・カバウカンチ、私の姉と結婚したマーシオ・ストランボウスキー、マリブ、ヘナン・ピタンギ、凄い面々が揃っていた。私はアカデミーで、最年少だったんだ」

――本格的に始めてから、エリオ達と練習をしたことはありますか。

「ホーウスが亡くなる前は、ヒクソンのクラスには何度も出た。彼の死後は、ずっとカリーニョスと練習し、グレイシーバッハを創り上げるのを助けたんだ。やはり私はカーロス・グレイシーの血筋に当たる人間だからね」

――そのグレイシーバッハはバーリトゥードを嫌っていたにもかかわらず、ヘンゾは一族のなかで最も喧嘩早い人間だったと聞きます。

「イエス。喧嘩ばかりしていたよ。大好きだったんだ。当時からバーリトゥード・ファイターになりたいと宣言していたしね。柔術は柔術、スポーツとしての柔術も大好きで、色々な大会で優勝したよ。練習も一生懸命やっていた。その一方でいつもバーリトゥードのチャンピオンになりたいと思っていたんだ。当時から私にとっては、道衣を着た試合の次のステップがVTだった」

――そんなヘンゾの考えに対して、カリーニョスはどのような反応を示していたのですか。

「カリーニョスはVTが嫌いだった(笑)。ずっと嫌いなままだったよ。彼はスポーツライクな柔術が好きでしょうがない。でも、私がVT好きだったから、グレイシーバッハはここまで強くなれたんだ。バッハのトレーニングはギだけだったけど、私がノーギの練習をするようになった。当然、カリーニョスは良い顔をしなかったよ(笑)。でも、私はもっぱらノーギのトレーニングばかりしていた。限られたシチュエーションだけで戦っていては、本当の意味でグッドファイターとはいえないからね」

――それは、打撃も含めたトレーニングだったのでしょうか。

「もちろん。全てを想定したトレーニングだよ。ストリートでの喧嘩も多く経験した。16歳のときに足をピストルで撃ちぬかれた。他にも発砲されたことはままあったけど、あの一発のせいで、1年間も柔術のトレーニングができなくなったんだ」

――それだけで済んで、幸運だったという見方もできるのですが……。とにかく、すさまじい話ですね。

「マフィアとディスコで喧嘩になって、片目を潰したこともあったよ。そのマフィアの父親が凄い大物で、リオデジャネイロにはいられなくなったから、サンフランシスコに逃げて半年間、シーザーと暮らしていたんだ。ハハハハ。楽しい時間を過ごしたよ」

――失礼を承知で尋ねてさせていただきます。ヘンゾ選手は柔術を練習することで、我慢を覚えるということはなかったのですか。

「ハハハハ、そういう経験をして、私は我慢というものを学んだんだ。今、私は誰に対しても凄くフレンドリーな人間だと思うよ。ムサシ・ミヤモトと同じだよ。若い頃の彼はクレイジーだったけど、年月を経てジェントルマンになった。私はワイルドな面を持ち、性格がワルで染まっていたことがある。だからこそ、今のヘンゾ・グレイシーがあると思っている。とてもハッピーな年のとり方をしているんだ」

――ヘンゾはグレイシー一族のなかで、もっとも親近感を持てる人物で、偉ぶることもなく、物事を難しく語ることもない。が、その一方であなただけは怒らせてはいけない、まだワイルドな面が残っているからと聞かされたことがあります。

「ハハハハ。乱暴な性格をまだ内面に残しているからね。ただ一度、ワルに身を染めれば、そういうフィーリングの正体を知ることができる。そして、ワイルドな一面を内面に封じ込め、礼儀正しく生きることが可能になるんだ」

――柔術の大会に出るときも、やはりそういう一面を内包したまま、冷静に戦っていたのですか。

「私はとてもアグレッシブな柔術家だった。同時にスポーツというものを理解していたから、クリーンに戦っていたよ」

――当時は、ムンジアルやブラジレイロはなく、コパ・カンパニーやコパ・アトラティコ・スゥなどカップ戦が主流だったようですね。

「私は紫帯時代、ペナ級で12の大会で優勝している。当時、最大規模だったアトラティコ・スゥでは毎大会で優勝した。アトラティコ・スゥで無敗の柔術家は、私一人だ」

――ペナ級なら、ホイラーと同じ階級ですね。

1983年のコパ・アトランティコス黒帯ペナ級で優勝したときのヘンゾ。左は実弟ハウフ。中央が叔父のカリーニョス

「ホイラーは黒帯、私は紫帯だった。その後、茶帯になり、23歳のときに黒帯になったんだ。17年前の話だよ。黒帯になってからアトラティコ・スゥでは、ペナ級と無差別級で優勝しているよ」

――ペナ級の体で、無差別級で優勝したのですか!

「アブソルート級での戦いはチャレンジ以外のなにものでもなかった。けれども、その挑戦することが何よりも好きだったからね」

――そのチャレンジ魂が豊富で、アグレッシブな柔術家だったヘンゾ選手が、実はスパイダーガードを考案したというのは本当の話ですか。

「そうだよ。スパイダーガードの下地を作った。私はアカデミーで一番力がなかったから、スパイダーガードを考えついたんだ。カリーニョス、クローリン、ヒリオン、マチャド兄弟がアカデミーにいて、彼らは体が大きく、力も強かった。そんな彼らでも、パスできないガードが必要だったんだ。いくら強い彼らだってパスをしない限り、私を極めることはできないからね」

――こうやってご本人から話を伺っていても、なおアグレッシブな攻めが代名詞のヘンゾが、スパイダーガードの発案者だとはイメージできないです。

「スパイダーはベスト・ディフェンスだよ。いくら私がアグレッシブでも、まず自分の身を守る必要があるからね。パスをされないなら、フィニッシュもされない。ただし、今の柔術界でスパイダーガードを使う連中は、アグレッシブではない。ただのホールディングになってしまった。私はスパイダーガードからスイープをして、フィニッシュに結び付けていた。それが本当のスパイダーガードなんだ」

――その本物のスパイダーガードをグレイシーバッハで、指導していたのですか。

「もちろんだ。ただ、マーシオ・フェイトーザはそこから動かなかった。何度、注意してもホールドしたままだった。だから、いつだって『マーシオ、ポ~ハァ』と叫んでいたんだよ(笑)」

――アハハハ。ところでヘンゾが柔術で活躍していた時代、誰か目標にした柔術家はいましたか。

「ホーウスだね。人格者だったし、柔術でも彼の動きを眺めることが大好きだった。ホーウスのように戦う、彼のような人間になりたいと思ってきた」

――バッハの軽・中量級といえば、もう一人、ジャンジャック・マチャドという強豪もいました。彼とはどのような関係だったのですか。

「ジャンジャックは柔術家としてだけでなく、指導者としても非常に優秀だった。バッハ時代はいつも一緒に練習し、一緒に住んでいた。兄弟のようなものだ。ストリートで喧嘩をするとき、後ろから襲われないようにジャンジャックが背後を守ってくれていたんだ(笑)」

――ダハハハ。良い話です。ではグレイシー・ウマイタやカーウソンとは、どのような関係だったのでしょうか。

「ウマイタとはすごく良い関係だったよ。カーウソンのところでは一度も練習したことがない。カーウソンは、とても面白くて人間的には大好きだった。ただ、柔術のトーナメントではカーウソンは、最大のライバルだったんだ。彼の生徒には強い柔術家が多かったし、彼らは戦うべき相手として、我々バッハの前に立ちはだかっていた。

カーウソンの教え子たちが、私を強くしたといってもいいだろう。セルジーニョという、とても強い柔術家に一度、敗れたこともある。その後、1分ほどでチョークを極めたら、彼は引退してしまったんだ。クレイジオ・シャービス、ヴァリッジ・イズマイウ、いろんなライバルがカーウソンの教え子にはいたよ」

――イズマイウと仲が悪いのは、有名な話ですね。

「そうだね。奴とは1時間も戦ったことがある。プロフェッショナルの柔術マッチだった。私はその試合で敗れたが、失うものはなかった。勝ち負けでなく、戦うことに重きを置いていたからね。ファイターと名乗る限り、戦うことが重要だ。ヴァリッジと私はどちらが優れたファイターか問いたい。私は彼より優れたファイターだと自認している。奴は今、何をしている? 戦うことを止めてしまっただろ。私は今も戦い続けている。つまり、私は奴に勝ったんだ(笑)」

――そのイズマイウが、柔術とルタリーブリの世紀の一戦といわれたバーリトゥードに出場したとき、あなたは柔術チームの練習で、決して好きではなかった彼をサポートしていたとそうですね。

「好きでないのではなく、奴のことが嫌いなんだ。それでも一緒にトレーニングをしたのは、何よりも柔術のことが大切だからだよ。お金よりも、グレイシーという名前よりも、柔術が大切なんだ。柔術は絶対にルタリーブリに勝たなくてはならなかった。もちろん、私自身が戦いたかったよ、でも代表に選ばれずにヴァリッジが柔術の代表になった。なら、私は奴に協力するよ。アイツはスピードが必要だったからね。ただし、ヴァリッジはよく戦ったよ。ムリロ・ブスタマンチ、ファビオ・グージェウも勝利し、最大のライバルとの戦いから柔術が生き残ることができたあの日は、今でも私の人生のなかで最高の1日だよ」

――グレイシーの名前より柔術が大切というのが、ヘンゾらしいです。ただ、バーリトゥード・ファイターの側面が強く、それほど柔術に対して情熱を持っていることは伝わっていなかったような気がします。

「私のように柔術に対して、思い入れを持っている者は少ない。自分のことだけを考えている肝っ玉の小さい連中が多いんだ。真のチャンピオンとは自分のこと、そして他の人々のことを常に想う気持ちでいることだと私は思っている」

――ところでルタリーブリと関係が悪かったころ、ルタのファイターとプライベートでVTをしたことはありますか。

「イエ~ス。私は当時のルタリーブリを代表するマルセロ・メンジスと戦いたいとずっと思っていたんだ。だから、2回ほどVTで戦おうと伝えたけど、2度とも現れなかった。だから、ビーチで奴を見つけたときに殴りかかったんだ」

――それは……、VTというよりも暴行じゃないですか……。

「そんな状態なのに、奴は向かってこなかったんだ。まぁ、そういう時代だったんだよ(笑)。私はクレイジーだった。クレイジーさでは、誰も私に適わなかったよ。ハイアン? 奴もハウフも私の足元にも及ばないよ(笑)」

――日本でヘンゾ選手のそのような一面が垣間見られたのは、RINGSにセコンドで来日し、アジウソン・リマとイリューヒン・ミーシャの試合で、猛抗議をしたときだけですね。PRIDEに来日するようになってからは、とてもフレンドリーな印象しかありません。あの抗議をしているときは、ヘンゾがホリオン・グレイシーに見えるほどグレイシーらしかったです(笑)。

「サンキュー。ハハハハ。RINGSの連中は、言っていることに一貫性がなかった。だから、抗議したんだ」

――個人的にはただの良い奴よりも、あの姿があったほうがずっと信用がおけますし、愛すべき人間だと……。

「いくらナイスガイでも、スイッチが入ればクレイジーになる。いつでもね(笑)」

――今やそのクレイジーさなど微塵もなく、ニューヨークで成功を納め、ニュージャージー州のアスレチック・コミッションの信望も厚いヘンゾですが、なぜ、米国へ移住を決意したのですか。

「米国にこそ、このスポーツの未来があると思ったからだよ。確かにリオデジャネイロでは全てが揃っていた。でも、ブラジルは世界と距離がありすぎる。米国にいれば、ヨーロッパとも日本とも関係を築けるし、ビジネス的も将来性があると思った。実際、私のアカデミーには900人もの生徒がいるんだ」

――多くのグレイシーは西海岸に進出していましたが、なぜNYを選択したのですか。

「NYは世界の中心、NYがなければ何も始まらない。ただ11年前は誰も柔術のことなんて知らなかった。だからこそ、そんなNYで成功でき、柔術が普及したことが嬉しいんだ」

――ここまで来るのに相当、難題もあったのではないですか。

「問題なんてなかったよ。何かあっても、私は問題だとは思わない。眠りにつくときだって神に、明日、問題を起こしてくださいって願うほどさ(笑)。何かあったとしても、私はそれに立ち向かい、乗り越えることができる。そうやって生きていくことが楽しいんだ。もっともっと色んなことが起こって欲しいと思っているよ」

――ホリオン・グレイシー、ヒクソン・グレイシー、ホイス・グレイシー、彼らとヘンゾ・グレイシーの違いは、肉親以外でも強豪と呼ばれる教え子たちを育てたという点にあると思います。ヒカルド・アルメイダを初めとして米国でもマット・セラ、ジャメル・パターソンなど、MMAやグラップリングで活躍をしている教え子がたくさんいます。

「さっきも言ったように、肝っ玉の小さな人間、小さなソウルしか持っていない者が多いんだ。グレイシーファミリーであるのに、自分の持ち得るものを、他の人々と分け合わない。だから、チャンピオンを育てることができないし、良い人間を育てることもできない。私は良い選手、良い指導者を育てることができた。その根底には、彼らにもっと良い人間になって欲しいという想いがあったからなんだ」

――米国でもグレイシーファミリーは有名ですが、ヘンゾ選手とシーザー・グレイシー以外に、世界で通用する優秀な教え子と良好な関係を結ぶことができている指導者も見当たりません。

「柔術を自分たちのモノにしているからだよ。私は血のつながりなんかよりも、ただ強い選手を育てたいだけだ。大切なことはチャンピオンにするために、全てを伝授するということ。マットもジャメルも白帯の時から私の下でやってきた。誰だろうが、オープンマインドで接し、結果的に誰の手によって柔術が普及しようが私は構わない。柔術が広まれば、それでいいんだ」

――それはカーロス・グレイシーの教えなのでしょうか。

「これは……、私の考えといっても良いと思う。私は自分の屋根があれば満足できるけど、多くのグレイシーが同じトレーニングをし、同じ教えを受けたにも関わらず、先を見すぎてしまった。柔術を柔術として伝え続ければ、我々に教えを受けた個々の力が一つになり、柔術は普及していくのに。そんなことも、理解できていない者が多い。

私は自分の教え子には、分け隔てなく全てを伝えている。同時に人間的な成長も促している。人間的に成長すれば、チャンピオンへの道も開けてくるからね」

――柔術、グラップリング、MMA、全てにおいてで──ですか。

「全てで言えることだよ」

――ヘンゾにとっての柔術とは一体、何なのでしょうか。

「柔術とは、全てだよ。柔術を取りあげられると、私の体の中には何も残らない。柔術は全てを包含している。素晴らしいスポーツであり、素晴らしい生き方、そして身を守る術として最高の戦いだ。これらの3つ要素の全てが、柔術のあるべき姿で、もしどれか1つでしかないようなら、私はここまで柔術の普及に心血を注ぐことはなかったよ」

――それはグレイシー柔術という名のつく柔術のことなのですか。それとも、ブラジリアン柔術全般にいえることなのでしょうか。

「ブラジリアン柔術かグレイシー柔術、そんな風になったのは、ホリオンのせいだよ。ホリオンは、最初に米国に来て柔術を指導するようになり、他の人間が柔術の指導をできないように画策したんだ。グレイシー一族でありながら、彼以外のグレイシーは、自らのアカデミーにグレイシーと名乗れなくなった。

だから、私はブラジリアン柔術と名を変えたんだ。私は今もグレイシーという名前に誇りを持っている。だからこそ、ホリオンが米国に持ち込んだ柔術、その有り様が好きになれない。そればかりか、悲しむべきことだと思っている。しっかりと指導しないし、我侭にも程がある。ホリオンは私を訴えようとしたんだ。私は柔術を教えるため、自分の身を守るために、グレイシー柔術という名を捨て、ブラジリアン柔術という名前が通称になるよう努力した。

だからテクニック・ビデオでもブラジリアン柔術と名乗ったし、教本にもブラジリアン柔術という名称を使用したんだ。いまや、人々はみなブラジリアン柔術とよび、グレイシーでさえブラジリアン柔術と言うようになった。グレイシー柔術はブラジリアン柔術だってね」

――柔術が全てだというヘンゾですが、グレイシーという名前は何を意味するのですか。

「私の祖父カーロスから受け継いだ最大のギフトだ。グレイシーという姓は、私に誇りを与えてくれた。柔術を思い起こさせてくれる名で、私を強くしてくれたんだ」