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【Gladiator028 / HEAT55 X AFC34】今井健斗×廣瀬裕斗、ニューエイジのターニングポイント in 中津川

【写真】今井と廣瀬——名古屋~中津川間は興味深いジムが並んでいる(C)SHOJIRO KAMEIKE

6日(水)、大阪府豊中市の176boxで行われたGladiator028で、今井健斗が宮川日向を判定で下した。そして26日(土)、名古屋市の名古屋国際会議場イベントホールで開催されるHEAT55×AFC34で、今井と同門の廣瀬裕斗が韓国のチュ・ドンジョと空位のAFCフライ級王座を賭けて戦うこととなった。
Text by Shojiro Kameike

今井と廣瀬が所属する「マーシャルアーツクラブ中津川」は、名古屋市からJR特急「しなの」で48分——岐阜県中津川市のJR中津川駅から徒歩10分という立地にある。長野県飯田市に隣接し、多くの山々に囲まれた中津川市に、新世代ファイターの2人を訪ねた。


――お二人とも中津川市出身とのことですが、中津川とはどのような場所なのでしょうか。

今井 どちらかというと観光地ですね。古い町並みがあって。そこに海外からも観光客が来ています。僕としては、観光地という自覚もないですけど(笑)。

廣瀬 この間も飲みに行ったら、隣のおじさんが奢ってくれたり(笑)。

今井 よく居酒屋で知らない人が奢ってくれるんですよ。フレンドリーな町です。

廣瀬 僕は出身が中津川で、今は下呂市に住んでいます。

今井 下呂って中津川の隣にある市ですけど、ココから車で1時間は掛かります。

――先に格闘技を始めたのは今井選手なのですか。

今井 このジムに入ったのは僕が先ですね。僕が格闘技を始めたのも、もともと裕斗が地下格闘技に出とったんですよ。悠斗は高校が同じで、バイトも一緒で仲が良かったんです。それで裕斗の試合を観に行ったら『おもしろそうやなぁ』と思って。僕が先にジムに入ったあと、別のジムで練習していた裕斗がココにも練習に来るようになりました。

廣瀬 最初は選手として試合に出るというよりは、とにかく格闘技をやってみたかったんです。まずはキックの試合とか、名古屋のストチャレ(ストライキングチャレンジ)にも出させてもらって。試合があれば出させてもらうという感じで、地下格闘技とか何かはこだわっていなかったですね。試合があれば、どんどん出ていきたい。そう思っていました。

今井 僕は格闘技を始める前、RIZINとK-1ぐらいしか見たことがなくて。最初に地下格闘技を見に行った時は、アマチュアだけど華やかな大会でした。だから最初は僕も地下格闘技に出るつもりだったんです。でも一度も地下格に出ることはなく、アマチュアパンクラスやアマチュアDEEPに出て――地下格には一度も出ていないですね。

――それも時代、あるいは地域性ですよね。格闘技をやるには地下格闘技しかなかった地域もある。同時に名古屋まで行けば、パンクラスやDEEPのアマチュア大会が行われているという。

今井 そうですね。僕の場合は、このジムに入る前から代表の一平(高瀬一平マーシャルアーツクラブ中津川代表)さんが、実家の近くで格闘技を教えていたんです。そこに体験に行ったのが始まりですね。僕が入って1カ月後ぐらいには、このジムに移転しましたけど。家から近いから入ったのに、1カ月後には遠い場所に……。といっても車で15分くらいしか違わないですけど(笑)。

もともとは家具屋だった建物を改装したというマーシャツアーツクラブ中津川。2階は広いマットスペース、1階はトレーニングマシンのフロアとなっている(C)SHOJIRO KAMEIKE

それで自分のほうから裕斗を誘ったのかなぁ。僕がもうプロの試合に出始めた頃、裕斗もココに練習に来るようになって。当時のことを覚えていないんですけど。

悠斗 「来いよ」って言われましたから。

今井 あぁ、それは自分が誘っているわ(笑)。

廣瀬 もともと下呂のジム(Hida Traiing Lab)に毎日通っていて、さらに新しい技術を知りたいと思ってコッチにも来るようになりました。そうして練習しとるうちに、高瀬さんから「試合の話が来たぞ」と言われたんですよ。それがプロデビュー戦(2022年3月、DEEP Nagoyaでオサモ・リチャードソンに判定勝ち)でした。

――なるほど。お二人とも白星~黒星というキャリアを経て、今は連勝中です。何か大きく変化するキッカケがあったのでしょうか。

廣瀬 僕の場合は岡本秀義戦(2022年7月、1RにハイキックでTKO負け)ですね。それまで練習でパンチを受けても、バコーンと効いたことはなかったんですよ。試合前にも「打撃は効かないですよ。KOされることは絶対にないです」とか言っとったら、思いっきりKOされて……。そこでディフェンスの重要性を理解しました。僕、寝技が全然できないんです。

今井 アハハハ!

廣瀬 本当に今でも全然できないんです(苦笑)。だから打撃の練習を……。

――「やらない」のと「できない」のは、また違う話かと思います。廣瀬選手はどちらなのでしょうか。

廣瀬 やらないわけじゃないし、寝技が好きじゃないわけでもないんです。でも、なかなか練習でもテイクダウンできなかったり……。そういう苦手意識はありますね。

今井 このジムには柔道やレスリング経験者が多いんですよ。裕斗は自分で思っているほど組技ができないわけじゃないんです。ただ、僕たちは子供の頃から組技をやっていますからね。まぁ数年やったぐらいでテイクダウンは取られません(笑)。

廣瀬 僕も「絶対にテイクダウンしてやろう」と思って行くけど、なかなか……。

――それだけ組技が強い練習相手ばかりであれば、廣瀬選手にとってはテイクダウンディフェンスやエスケープして立ち上がるのは上達するでしょう。

廣瀬 あぁ、そうですね。

今井 それは抜群に上手いです。メチャクチャ極めづらいんですよ。

廣瀬 周りは組技が強い人ばかりだったから、毎日毎日「どうやったらテイクダウンされないか。どうやったら極められないか」と考え続けてきて。

今井 裕斗は一緒に練習し始めた頃、本当に組技に関しては素人みたいな感じでした。「何だ、コイツ」と思うぐらいの弱さだったんですよ。でも今は体も強くなってきているし、技術も上がって、どんどん極めづらくなっています。成長しているとは思いますね。だけど成長するのは、みんな一緒なので。

廣瀬 だから今でも皆に追いつけないんですけど(苦笑)。でも昔はできなかったけど、今はできるようになったというものは増えています。

――今井選手にとっては、山上幹臣戦が大きなターニングポイントになったのではないでしょうか。

廣瀬 あの試合は凄かったですね。

今井 周囲からは「勝てるでしょ」と言われていたんですよ。さすがに山上選手も10年振りの復帰戦では無理でしょ――と。僕自身は最初に山上選手の経歴を見た時、「自分がこんな選手と対戦して良いのか」とは思いました。でも練習していくなかで「これは勝てる」という雰囲気になってきて。

――それ以降、「山上幹臣に勝った男」としてプレッシャーを感じるようにはならなかったですか。

今井 それが――プレッシャーがメチャクチャ強くて。

廣瀬 アハハハ!

今井 それまでは「ブッ倒してやる!」「絶対にフィニッシュする」という気持ちで戦っていました。だけど、ここ2戦は僕が勝つと予想されるようなマッチメイクだったと思うんですよ。自分の中で「ここは絶対に落とせない」という気持ちが強くなり、アグレッシブに行けずに判定が続いてしまいました(苦笑)。

――確かに松原聖也戦宮川日向戦は、山上戦よりも手堅い攻めではありました。それが決して悪いことだとは思いませんが……。

今井 特に宮川戦は、思っていたより相手は体が強かったことも大きいです。試合前は――相手の打撃が強いことは分かっている。だから絶対に打撃では勝負しない。組めば絶対に極められると思っていました。でも実際に対戦してみると、手足が長いし体も強いので、やりづらかったです。テイクダウンしても、すぐにガードに入れられてしまいますし。自分も動きが堅くなってしまいましたね。

――試合後、SNSでは11月のパンクラス出場を希望していました。

今井 グラジは次の大会が年明けの1月12日じゃないですか。ちょっと年末年始はゆっくりしたくて……。それなら年内にもう1試合、頑張って出たいなと思ったんです。もちろんオファーを頂けるのは嬉しいし、言われたら出るとは思いますけど。

パンクラスの本戦でランカーと試合したい気持ちもあるし、グラジであれば僕がベルトを目指してもおかしくない位置にいると思っています。最後は実力なので、とにかく強いヤツに勝って行けば、もっと大きな舞台に出ていけると考えています。

――一方、廣瀬選手はHEATとAngel’s Fcの対抗戦で、AFCフライ級王座を賭けて戦います。

廣瀬 タイトルマッチの話を頂いた時はビックリしました。

今井 羨ましいです。僕にはそういうタイトルマッチの話が来たことがないので。なんか――持っていますよね(笑)。

廣瀬 相手は結構、打撃を振ってくる選手です。それを食らわないようにテイクダウンも混ぜて、MMAでしっかり勝つ。寝技もあまり好きではないですけど、健斗先輩とか強い人たちと練習しているので、それを自信にしてベルトを獲りに行きたいです。

■HEAT55 x AFC34 視聴方法(予定)
10月26日(土)
午後3時00分~ Twit Casting LIVE

■HEAT55 x AFC34 対戦カード

<ISKAインターコンチネンタル・スーパーウェルター級王座決定戦/3分3R+ExR>
アブラル・ヒマラヤンチーター(ネパール)
アントニー・マルコニ(フランス)

<キック・ライト級/3分3R>
安川侑己(日本)
チュ・ギフン(韓国)

<キック63キロ契約/3分3R>
ペットサムイ・シムラ(タイ)
パク·ジョンジュン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
熊崎夏暉(日本)
ふくやーまん(日本)

<Angel’s FCフライ級王座決定戦/5分3R+ExR>
廣瀬裕斗(日本)
チュ·ドンジョ(韓国)

<フェザー級/5分3R>
倉本拓也(日本)
キム·パンス(韓国)

<ライト級/5分3R>
岩倉優輝(日本)
シン·ジェヨン(韓国)

<ウェルター級/5分3R>
阿部光太(日本)
マ·チャンウ(韓国)

<ミドル級/5分3R>
堀越拓実(日本)
ヨ·ドンジュ(韓国)

<バンタム級/5分3R>
福井達郎(日本)
パク・チウ(韓国)

<ミドル級/5分3R>
フェルナンド・マツキ(日本)
チャン·ドンミン(韓国)

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【Gladiator028】蹴り、突き、寝技——吉田開威が語る右回転ヒジKOへの道「技は打ち込みと度胸」

6日(日)、大阪府豊中市の176boxで開催されたGladiator028で、吉田開威が上田祐起を右スピニングバックエルボーでKOした。
Text by Shojiro Kameike

1Rから組みの展開で押されながらも、凌ぎ続けた吉田が2R残り6秒で逆転勝利。6月の中国WKG&M-1、ウー・シャオロン戦に続くKO勝ちの裏にあった自身の成長と課題とは――。試合翌日、吉田が道場主を務める空手道剛柔流朋武館高岳支部を訪ねた。


MMAでも思いっきり軸足を廻すことができるようになっています

――昨日は見事なKO勝ち、おめでとうございます。全試合終了後、上田選手のために救急車が呼ばれていました。試合終了後からしばらく経ってからダメージが表面化したようですが……。

「はい、それは聞きました。でもフィニッシュのスピニングバックエルボーではなく、足先蹴り(そくせんげり)がボディに入った時のダメージだったようですね。自分でも『温かい生肉を神経の通っているナイフで貫き通した』というような感触がありました」

――凄い表現ですが、感触のイメージは伝わってきます。ボディ、内臓のダメージであれば、時間が経って表れてくるのも理解できますね。

足先蹴りは1Rと2Rに一度ずつ確認できる。2Rの蹴りで感触があったという(C)SHOJIRO KAMEIKE

「ズボッと刺さってはいなかったけど、『これは効いたな』という感覚はありましたね。あれがズボッと刺さっていたら、その場で倒れていたと思います。外れていても、それだけ威力があることは分かったので、この蹴りを完成させていきたいです」

――6月は中国で一撃KO勝ちを収めています。あの時も左ハイをブロックされたものの、そのまま相手が倒れました。

「僕もあの左ハイで倒れるとは思っていませんでした。まず作戦として、距離を測るために出した左ハイだったんです。前日の公開計量で、相手がメチャクチャ度の強い眼鏡をかけているのを父が見て『これは遠いところは見えていない』と思ったそうなんです。

それを聞いて――試合前日から、ひたすら遠い間合いからの蹴りの打ち込みをやっていました。ただ、さっきも言ったとおり最初の左ハイで倒れるとは思っていなかったです。相手はブロックしていたし『蹴りを受けられてしまった』という感触で。と思っていたら、そのまま後ろに倒れていったので、『えっ!?』と思いました。

今まで空手で、面を付けている相手をKOする感覚は持っていたんです。面があるからメチャクチャ深く、ガッツリ当てて、ようやく倒れるという感覚で。でも面を付けていない相手を倒すことができた――自分の蹴りが思ったよりも威力があるんだな、って初めて知りました」

――シャオロン戦前のインタビューでは、「空手ではKOできているけど、MMAでは判定続きだから倒したい」と言っていました。これまでMMAの試合で出していた蹴りと、シャオロン戦の左ハイでは何か違いがあったのでしょうか。

「あの左ハイは、軸足を廻す空手の蹴りなんですよ。遠い間合いから軸足を180度廻して、ヒザをグイッと前に出して、真正面に蹴っていくいような感じです。

上田戦では左ミドル、右ハイと軸足を廻して打ち込んだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

以前はMMAで蹴りを出すと掴まれそうだと思って、アマチュアの頃から全く蹴りを出せませんでした。寝技を全くやっていなかったので『蹴りを掴まれて倒されたら終わりだ』と。寝技の練習をすることで、その気持ちはどんどん減ってきて、MMAでも思いっきり軸足を廻すことができるようになっています。腰を入れて軸足を廻すことによって軸が残っているから、すぐ体勢を戻すことができて組みにも対応できるように練習しています。そこは進化した部分ですね」

――ということは昨日の試合でも、組まれた時に凌げる自信はあったのですね。

まだまだグラウンドに課題は残るが、徐々に成長は見せている(C)SHOJIRO KAMEIKE

「自信はありました。たとえば1Rにバックを奪われた時も、まずは落ち着いてワンハンドを外すことができました。練習では元谷(友貴)さんのワンハンドを受けているんですよ」

――元谷選手が太田忍戦で極めたようなワンハンドのRNCを……。

「そうです。元谷さんや寒天(たけし)さんのワンハンドは本当に強くて。それを受けていたおかげで、バックを奪われて四の字フックの体勢は辛いけど『両手で取られなければ耐えられる』と思いました。だから落ち着いて片手を外していったんです」

――上田選手の四の字フックに対しては?

「1Rは割とフックが硬かったです。でもカーフが効いて、2Rは動きが落ちていましたよね。試合中はずっと我慢していたのかもしれないけど、試合後に話をしたら『カーフがメチャクチャ痛かった』と言っていました。自分も2Rにトップを取り返した時は結構、無理やりな形ではあって。だけど『カーフが効いているから四の字フックはズレる。これは無理やりでも脱出できる』と感じていたんですよ」

――1Rにスタンドでオタツロックを組まれた時も、吉田選手は落ち着いているように見えました。

この形に入る練習ではなく、逃れる方法を練習していたのか(C)SHOJIRO KAMEIKE

「実は寒天さんをはじめ巧い人に、練習であの形をやってもらったことがあるんです。平良達郎選手のようにガッチリと形に入れば、完全にヒザが壊れてしまうことは分かりました。本来、スタンドの状態でガッチリと入ってしまったら、座って解除しないといけないんですよね。でも完全な形にはなっていなかったので、スタンドで正対しました。NTT(Nagoya Top Team=寒天練習)で受けていたおかげです」

――練習でやられて分かることは多いと思います。吉田選手の場合、NTT後のSNSは「またやられた」「まだまだ弱すぎる」という内容しか投稿していません。

「もう本当にやられまくっていますよ。寝技の練習では、ひたすら技を掛けられ続けて、ひたすら負けています」

――しかし凌ぐ自信はついてきたことで、寝技で勝負しようとは思いませんか。

「それは考えていないですね。僕のゴールはスタンドだと決まっています。そのために寝技も凌げるようになってきました。グラップラーを相手に寝技で勝負しても意味がないですからね。相手が打撃主体の選手であれば、そこは考えますけど。

というのも、MMAにおいて寝技で実績を出している選手のレベルに僕が追いつくことはあっても、そのレベルを超えることはないんですよ。でも超えないと極めるまでにはいかない。組みでグチャグチャになった状態では、今は採点に影響を及ぼさないですし。だから最後も、回ってトップを取った時は絶対に立とうと思いました」

Ares王者ユヌソフの試合からインスピレーションを受けました

――なるほど。スタンドの打撃でいえば、今回はいつもよりストレート系のパンチを、踏み込んで打っていました。

「今回は前に出て、パンチを当てに行こうとしました。同じ大会に出ていた木村柊也選手とか、南友之輔選手もそうですけど……ああいう一撃KOをやってみたいんですよね」

――おぉっ、その2選手を意識しますか。

パンチも間合いも課題のひとつ(C)SHOJIRO KAMEIKE

「僕自身、今までは下がりながらパンチを合わせることが多かったんです。そのほうが得意なので。だけど、今までパンチでは倒し切れていない。自分のパンチに威力があったとしても、それを当てることができていない。だから今回は当てに行く、倒しに行くことをイメージして打ち込みをやっていました」

――ただ、そのパンチにカウンターを合わされる場面も多かったです。

「効いてはいなくても印象が悪いですよね。今までは完全に間合いを取り切ってかた動いていたのが、今回はだいぶ距離を近くしました。特に1Rは積極的にKOを狙いましたけど、ラウンドを取られてしまって。これは無理だと思い、2Rは間合いを取り切ってからスタートしたんです。1Rめは大きく振りすぎてしまったことが反省点でした。でも試してみたかったので。

たとえば相手がチャンピオンや海外の強豪だと、その試合で試しはできないじゃないですか。今回は試す場であり、今は積み上げる時期だと思っていました。とにかく今回は、フィニッシュに繋がる手の技を試したいと思っていて。最後のスピニングバックエルボーも練習していたんですよ」

――1Rと2Rは組みで取られた。これは「たられば」ですが、もしそのスピニングバックエルボーが当たらず最終ラウンドに持ち込まれた場合は、どのような展開になっていたでしょうか。

「その場合、最終ラウンドは完全に空手をやるつもりでした。用意してきた技は、たくさんあったんです。寝技にならないことを前提に、用意してきた技の中からどれを使うか。そのまま行っても負けるので、一撃で倒すことを考えていたと思います。

そこで変にワーッと前に出ていくと、また組まれるリスクがありますよね。とにかく間合い感覚だけでいえば負けることはない。倒しに行かず、ポイントゲームに徹すれば負けることはない。そこに徹しながらKOできる筋を探そうという感じでした」

――それは組みの展開で凌ぐことができる手応えを得たと同時に、中国で倒す感触を得たからこそできる戦いですよね。では、いくつも技を用意してきたなかで、最後にバックエルボーを選択した理由は?

「あれは選択したのではなく、自然に出ました。上田選手の左は、序盤はジャブを突いてくるけど、疲れて来るとフックが多くなるんです。今回はそのフックを振ってくるところに合わせる練習をしていました。

フランス支部を持つ朋武館。今年8月、現地修行の際にソラヌフとMMAの練習も行っていた(C)GOJUーRYU HO-BUKAN

今回の試合の前にフランスへ練習に行ったんですよ。そこでAresバンタム級王者のアブバカル・ユヌソフと練習して。彼がベルトを獲得した時の試合映像を視たら、フィニッシュが右スピニングバックエルボーだったんです。『これをやりたい!』とインスピレーションを受け、自分の形に落とし込んで、ひたすら打ち込みをしました。

練習では和田教良さんや寒天さんに、大きく振ってもらって、その中に入ってバックエルボーかバックスピンキックを打つ。いろんな相手、いろんなシチュエーションでやってもらっていて、自宅でもミットで打ち込みをやりました。僕の中で技というのは、どれだけ打ち込むか――それと、度胸なんですよ」

――打ち込みと度胸!

「まず技は無意識で出るまで打ち込みをやります。あとはそれを出す度胸ですね」

――そこまでプランが固まっていたのであれば、上田選手にバックを取られた時も「とにかく疲れてくれ」と……。

「アハハハ。それはないけど――スタンドバックを取られたのは、半分わざとです。あまり良くないけど、『立った状態であれば負けない』とは思っています。でも考えていたより上田選手のテイクダウン能力が高くて、倒されてしまいました。『まだまだ全然ダメだ』と思って、今日は朝から柔術の練習に行ってきたんですよ」

――えっ、試合の翌日に!?

試合翌日から練習~空手の指導。昇段審査が近いため指導にも熱が入る(C)SHOJIRO KAMEIKE

「はい。朝は柔術、昼はMMAの練習をして、夜の指導に来ました(笑)」

――もう次に向けて進んでいるわけですね。上田戦後にはマイクを渡され、タイトルマッチについて発言しました。

「どうなんでしょうね? チャンピオンの竹中大地選手はRIZIN出場を希望していて、すぐグラジの防衛戦をやろうという雰囲気ではないですよね」

――順番でいえば7月にテムーレンをKOした南選手のベルト挑戦もありますし。11月にはRIZIN名古屋大会が行われますが、たとえばRIZINに興味はないのですか。

「そういえば今日、カードが発表されていましたよね(※取材開始直前、RIZIN公式YouTubeチャンネルでRIZIN LANDMARK10の対戦カードが発表されていた)」

――はい。

「一緒に練習している人の試合は聞いていましたけど……自分はRIZINより、開催されるならRoad to UFCを目指したいですね。海外で戦うならフライ級まで体重を落とせるかどうかもテストしています」

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45 Gladiator Gladiator028 MMA MMAPLANET o キック ダギースレン・チャグナードルジ チハヤフル・ヅッキーニョス パン・ジェヒョク

【Gladiator028】ダギースレンがヅッキーニョスにRNCで一本勝ち。ジェヒョクとの決勝へ

【写真】組み技・寝技になったときのダギースレンのパワーが目立った(C)SHOJIRO KAMEIKE

<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
ダギースレン・チャグナードルジ(モンゴル)
Def.2R4分19秒by RNC
チハヤフル・ヅッキーニョス(日本)

サウスポーのヅッキーニョスがインロー、ダギースレンはワンツーで飛び込む。さらにダギースレンは右ストレートから左フック、ヅッキーニョスは左右ミドルを蹴る。ダギースレンは変わらず右ストレートから左フックで前に出る。離れた間合いからダギースレンは左フックから右ストレート、ハイ、スピニングバックキックと蹴りを繰り出す。

ヅッキーニョスはそれをバックステップでかわして左ミドルと三日月蹴り、ダギースレンは右ストレートを伸ばすが距離が遠い。ダギースレンはヅッキーニョスの前蹴りを受けて右ストレートで飛び込も、ヅッキーニョスは左フックを返す。

ダギースレンが右のスーパーマンパンチを見せると、ヅッキーニョスは距離を外してシングルレッグで組みつく。ヅッキーニョスはここから四つで組んでテイクダウンを仕掛けるが、ダギースレンはバランスよくトップキープしてパンチを入れる。ヅッキーニョスもダギースレンの足を持って身体を起こして脱出する。

2R、ヅッキーニョスはジャブと右ヒジ、左の前蹴りを見せる。ダギースレンは右ストレートを伸ばし、ヅッキーニョスが前に出てくると左フックを狙う。ヅッキーニョスは左ストレート左ハイ、左の前蹴りと右の関節蹴りを見せ、スピニングバックフィストを見せた。ダギースレンは右ストレートで飛び込みつつ、左の前蹴りから左ストレート、やはり右から前に出る。ヅッキーニョスは右フックを返し、ジャブから左ローとハイ、ダブルレッグから組みつくとボディロックから後方に倒してテイクダウンする。

ここでサイドポジションを取るヅッキーニョスだが、ダギースレンは右腕を差すと、そのままブリッジしてポジションを返す怪力ぶりを発揮。亀になるヅッキーニョスのバックに回ると、スクランブルの展開でもトップキープし、ヅッキーニョスのバックに回る。そしてダギースレンは足を四の字クラッチしてRNCへ。一度はダギースレンの腕を外したヅッキーニョスだったが、ダギースレンが再び腕を回してRNCを極めた。

この勝利でパン・ジェヒョクの待つ決勝に駒を進めたダギースレン。試合後に周囲への感謝と「決勝戦も頑張ります」と次戦への意気込みを語った。


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45 Gladiator Gladiator028 MMA MMAPLANET o パン・ジェヒョク 水野翔

【Gladiator028】2Rまで動けなかった水野。必死の仕掛けも、パン・ジェヒョクが渋すぎる決勝進出

【写真】ここまで安パイで試合を進めるとは(C)SHOJIRO KAMEIKE

<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
パン・ジェヒョク(韓国)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27
水野翔(日本)

サウスポーの水野に対し、右の蹴りを見せたパン・ジェヒョク。左ローのパン・ジェヒョクは、ジャブを伸ばして間合いを測る。慎重なパン・ジェヒョクが攻撃を散らし、水野もすぐには組みに行かない。左の蹴りに、左ジャブを合わせたパン・ジェヒョクは用心深さのなかに余裕を持っているか。

刀を抜くというポーズで挑発するパン・ジェヒョクは、手を出さずに試合を支配している。一度レベルチェンジを見せた水野だが、距離を詰めることができない。残り1分、圧を受け続け下がるようになった水野は右ハイ後も入ることができない。最後に左ハイを見せた水野だが、ほぼ何もできない5分だった。

2R、パン・ジェヒョクがインロー、水野は関節蹴りに前に出ることができない。そして、距離を詰める必要がなく戦うパン・ジェヒョクは右を見せる。何かを見せたい水野。インローで削られ、このままではじり貧となる。パン・ジェヒョクはインローから右ストレート、触ることができない水野は前足を蹴られ続けている。ついにケージを背負った水野だが、パン・ジェヒョクは決して無理をしない。と右ハイからスピニングバックフィストのパン・ジェヒョクに対し、水野がダブルからシングルレッグへ。

抜群のバランスを誇るパン・ジェヒョクは、回って背中に乗るように前転してバックを取り切り足をフックする。絞めを防ぐ水野はキムラをとりつつバックに回る。ここもパン・ジェヒョクは無理をせず、バックを制したままラウンド終了を迎えた。

最終回、すぐに距離を詰めてシングルの水野だが、頭を押したパン・ジェヒョクが足を引き抜く。距離を近づけている水野は足を取りに行くも、パン・ジェヒョクがスプロールから、がぶってパンチを入れる。バックに回ることもなく、殴って離れようとするパン・ジェヒョク──だが、これは防御一辺倒ともいえる。

とにかく詰めるしかない水野は、左オーバーハンドからシングルレッグも、頭が下がりすぎてバックを許しそうになる。頭をマットにつkて動きが止まった水野だが、レッスルアップからシングルを続ける。股間でクラッチして背中をつけないパン・ジェヒョクは、盤石のバック奪取へ。両足フックから右腕を滑り込ませたパン・ジェヒョクがRNCをセットする。

防いだ水野は胸を合わせて、懸命にエルボーを落とす。下から固めたパン・ジェヒョクは、試合終了と同時に勝利を確信して両手を高々と広げた。結果、フルマークの判定勝ちを収めトーナメント決勝進出を決めたパン・ジェヒョクが「ボクハ・サクライダイヒョウ・スキ。ボーナス・クダサイ。ゴメンナサイ、フィニッシュ、ノックアウト・デキナクテ。ソーリー、ミズノセンシュ、ラスト、ホントニツヨイ。力を使ってフィニッシュできなかった。グラジエイター・サイコー」とバイリンガルマイクで試合を締めた。


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Gladiator Gladiator028 MMA MMAPLANET o キック キム・ウィジョン 木村柊也

【Gladiator028】木村柊也がAngel’s FC王者に圧勝!4戦4勝4KO・平均試合時間63秒、驚異のレコードを更新

<フェザー級/5分3R>
木村柊也(日本)
Def.1R1分09秒by TKO
キム・ウィジョン(韓国)

木村が右カーフキック、ウィジョンも右カーフを蹴って組みつこうとするが、木村は離れる。木村は前後のステップから前蹴りと右カーフ。ウィジョンも右カーフを蹴って距離を詰めるが、木村はそれをさせない。試合がスタンドに戻ると木村は右の前蹴りを突き刺して右ボディストレート、右カーフキックを蹴る。さらに木村は左アッパーから左フック、さらに右フックから一気にパンチをまとめる。

ウィジョンはダブルレッグに入るが、木村はそれを切る。ウィジョンは引き込むようにガードポジションを取ると、木村は一気にパンチを連打。ウィジョンが亀になって木村のの足にしがみつくが、木村はそこパンチを連打してレフェリーストップを呼び込んだ。

自身初の国際戦で、韓国のAngel’s FC暫定ライト級と中国のICKF(International Kung Fu Federation)フェザー級の2本ベルトを保持するウィジョンに圧勝した木村。これでプロ戦績を4戦4勝(4KO)、1試合平均のKOタイムを64秒とした。

試合後に木村は「ワクワクしていて、木村ドンナ戦い方をするんだろう?と思ったと思うんですけど、僕とやると誰でもこうなります。ここでやっている以上、ここのベルトを獲りたいと思うので、狙っていきます」とタイトル挑戦をアピールした。

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45 Gladiator Gladiator028 MMA MMAPLANET o 上田祐起 吉田開威

【Gladiator028】バック&RNCの厳しい展開を凌いだ吉田が、回転バックエルボーで逆転KO勝ち

【写真】吉田は寝技を凌ぎ、餌を蒔き続けて逆転KO勝ちした(C)SHOJIRO KAMEIKE

<バンタム級/5分3R>
吉田開威(日本)
Def.2R4分54秒 by KO
上田祐起(日本)

いきなり右ミドルを入れた吉田。さらに左右の蹴りを散らして、ジャブを伸ばす。上田のローに左フックを合わせた吉田だが、右を見せられた組まれると一気にバックを取られる。後方に倒れ込みながら、ボディトライアングルに取った上田が、パンチを入れながらNRCをセットする。上田は左腕を深く組み込む。何とか耐える吉田だが、まだ3分残っている。腰をずらそうとする吉田が立ち上がると、上田はオタツロックに。振り落とすのは怖い態勢だが、足のフックが緩んだ上田が着地する。

打撃の間合いに戻ると、吉田が左ローを蹴る。さらに右ハイを蹴った吉田に組みついた上田が、ワキを潜ってバックへ。再び後方に自ら倒れようとした上田。直ぐに起き上った吉田が胸を合わせて、ワンツーを振るう。さらに蹴り、スピニングバックフィストを見せた吉田の飛び込みに上田が左をヒットさせる。残り30秒、組んでバックに入った上田はワンフックからマウントに移行しようとする。上から殴られまいと背中を見せた吉田は、攻め込まれ続けた初回を道筋を立てて守り切った。

2R、吉田が左ロー、右三日月を蹴る。やや攻め疲れが見える上田は左を被弾する。さらに右を入れた吉田は左カーフを続け、スピニングバックフィストから蹴りに繋げる。左に右をクロスで合わせた吉田は、回転系の蹴りのフェイクから回転系のパンチへ。組まないのか、組めないのか──上田はジャブ、フックで殴られる。吉田はワンツーを入れ、左カーフ、スリップした吉田は立ち上がるところで組まれてケージに押し込まれる。

ここもワキを潜られた吉田は、ヒジを後方に入れる。正対しつつ、足をかけてバックに回った上田のオタツに胸を合わせることができない吉田だが、足が抜けると正対してパウンド。立ち上がった吉田は、続いた上田の右ストレートに右スピニングバックエルボーを当てる。この一発で吉田が、逆転勝利を手にし「今回は危ない試合でしたけど、KOを狙っていて倒せて良かったです。もっと強い相手とやりたいです。タイトルマッチへのチャンスをくれると嬉しいです」と話した。


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45 Gladiator Gladiator028 MMA MMAPLANET o チョモランマ1/2 森井翼

【Gladiator028】森井、3年ぶりの復帰&47歳・チョモランマ1/2を右ストレートでKO

【写真】やはり年齢・ブランクの壁は大きかった(C)SHOJIRO KAMEIKE

<ウェルター級/5分2R>
森井翼(日本)
Def.1R0分34秒by KO
チョモランマ1/2(日本)

森井がジャブ・左フックで前に出て右ストレートにつなげる。チョモランマも右ローを蹴り返すが、森井がそこに右フックを合わせると、右ストレートを一閃。これでチョモランマが後方にばったりと倒れ、レフェリーが試合をストップした。試合後、森井はウェルター級での王座獲りをアピールした。


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45 Gladiator Gladiator028 MMA MMAPLANET o パンクラス 今井健斗 宮川日向 山上幹臣

【Gladiator028】初回を微差で落とした今井が、2RにしっかりとTD&コントロールで宮川を下す

【写真】勝負所のテイクダウンはやはり重要(C)SHOJIRO KAMEIKE

<フライ級/5分2R>
今井健斗(日本)
Def.3-0:19-18.19-19(must)、19-19(must)
宮川日向(日本)

長身&リーチの長い宮川が左ジャブを伸ばす。さらにローを繰り出し、ワンツーを放つ。

シングルを切られた今井だが、すぐに仕掛けなおして足払いとミックしてテイクダウンを奪う。ウィザー&ヒザ立ちの宮川は立ち上がるもののボディロックで、倒されサイドで抑えられる。マウント狙いに、シングルの宮川。

今井が反応して、バックに回ると落とされずにRNCを仕掛けていく。

リストを取って耐える宮川は、外されると同時に胸を合わせていく。ここは今井がすぐにスクランブルで離れると、宮川はヒザ蹴りを入れる。ボディロックを小手で投げた宮川が逆にバックを制す。逆にリストが命綱の今井が耐えていると、宮川が殴ってボディトライアングルに。再度RNCをセットしようとした宮川に対し、今度は胸を合わせにいった今井がワキを潜ってバックへ。宮川が背中をつけると、今井は上四方からワキをすくいつつエルボーを落とした。

2R、左を見せて組んだ今井が早々にリフトして、スラムダウン。今井はサイドで抑えると、枕で抑えパンチを落とす。首を抱えてギロチンをセットした今井、自ら背中をつけてスクイーズする。さらにマウントに移行した今井がギロチンが解くと、宮川は足を一本戻す。しっかりとトップから殴る宮川は反時計に回ると、逆の時計回りでパスをマウントへ。自らハーフに戻るようにガードのなかに入った今井は、盤石の抑えでパンチやエルボーを振り落とす。

マウント狙いに腰を押してブリッジの宮川だが、返すことができない。頭をつけた状態で今井がパウンドの数を増やす。手がなくなり、諦めの表情も見える宮川が、懸命に足を戻す。今井は構わず殴って、タイムアップを迎えた。

結果はマスト判定が2人ながら、今井が3-0で勝利。パンクラスを含め、山上幹臣撃破から3連勝となった今井、上位勢や✖アジア勢との対戦が楽しみだ。


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45 AB Gladiator Gladiator028 MMA MMAPLANET o Road to UFC UFC YouTube しゅんすけ アドニス・セビジェーノ キム・ウィジョン キンコンカンコンケンチャンマン ダギースレン・チャグナードルジ チハヤフル・ヅッキーニョス チャンネル パン・ジェヒョク ライカ ルキヤ 上田祐起 中川晧貴 今井健斗 古賀珠楠 吉田開威 宮川日向 木村柊也 森井翼 水野翔 河名マスト 澤田政輝 田口翔太 石田拓穂 磯嶋祥蔵 福田泰暉 福田龍彌 荒木凌 野口蒼太

【Gladiator028】成長の証=ダギースレンとの再戦へ。チハヤフル・ヅッキーニョス「全く違ったMMAを」

【写真】国際戦2試合を含む、ハードな5試合でヅッキーニョスが手にした武器とは── (C)SHOJIRO KAMEIKE

もう既にオープニングファイトが開始しているGLADIATOR028。フェザー級王座挑戦者決定トーナメント準決勝でチハヤフル・ヅッキーニョスが、リベンジに挑む。
Text by Manabu Takashima

昨年6月に同王座決定トーナメント準決勝でダギースレンに敗れたヅッキーニョスは、15カ月で5試合を戦う打撃で戦える気持ちを創ってきた。一足飛びなど考えす、一歩一歩確かな成長を遂げたヅッキーニョスがこの間に経験と成長を訊いた。


――挑戦者決定トーナメント準決勝に臨むヅッキーニョス選手ですが、チャンピオン河名マスト選手のRoad to UFC準決勝敗退をどのように捉えていますか。

「残念な気持ちではありますが、最初にダウンを取ったの河名選手で。何もできなくて負けたわけでないです。現実は厳しいと思うのと、もう戦えないと思っていたので再戦のチャンスがあるかもということはポジティブにも捉えることができるという感じですね。

本音は勝ち続けてUFCに行ってくれていたら、ニャムジャルガルに続いてGladiatorのチャンピオンがUFCに行くことになっていればGladiatorの存在も明確になったのかとは思います。同時にここでチャンピオンになるとRoad to UFCに出られるという認識を僕は持っています。Gladiatorで色々な外国人選手と戦って、上を目指す。そこに他の日本人選手が来てくれたら、もっと盛り上がるでしょうし」

──押忍。そのように国際戦を繰り返すことで、力をつけていたヅッキーニョス選手。そういう戦いの序章だった時にダギースレンに判定負け、そして再び肌を合わすこととなりました。

「前回のダギースレン戦は大きかったです。実際にあの試合に負けて……通用した部分もあったけど、全体的に押し切られた試合でした。あの負けで、会社を辞めようと決めて。翌日に上司に伝えたんですよ」

──えっ!!

「実際に退社したのは、今年の2月なんですけど。あそこから気持ちも切り替わりいつか再戦したいと思っていたので、それが1年と3カ月……短いといえば短いですが、ブランクを空けずに試合をしてきて確実に成長しているという気持ちがあります。なのでリベンジのチャンスが来たというのは、凄く嬉しいです。

前職と同じでも、フリーになって自分でスケジュールを管理し今は格闘技に集中した生活ができているので。正直、サラリーマン時代は連日の残業と出張が多くて、今からすると『よう、やっていたな』って思うほどで。あの時と比べると、今は格闘技としっかり向き合えています」

──ダギースレンに負けて仕事を辞める決意をした。その時は、どのようにファイターとして強化していきたいと考えていたのでしょうか。

「一番はスタンド、打撃です。もともと打撃が苦手で、試合でも自分から打撃で前に出るってほとんどなくて。サークリングから隙を見て組みつくスタイルでしたが、それでは厳しくなってきたので。打撃が普通にできて、レスリングを強化する。柔術タイプだったので、テイクダウンをしないと自分の強味を発揮できないと考えました。それとフィジカルですね。ダギースレンと戦って、彼を体感して『なるほど』って思いました(笑)。何となく勝っていたことから、打撃だろうが組みだろうが自分から試合を創って勝つという風に変わりました」

──ダギースレン戦後、まず9月にハンセン怜雄選手との再起戦が組まれました。

「ハイ。打撃で倒してやろうと思っていました。ハンセン選手は打撃の選手で、戦績だけ見ると苦戦をしている。なので通用しないことはない。この試合で、自分の殻を破らないと成長できないという気持ちで臨んだ試合でした。実際に殴り合って、削られましたけどパンチでKOできたので良い経験になりました。技術云々でなく、気持ちでいけたのが大きかったです」

──続く12月大会では河名マスト選手に逆に打撃で敗れました。

「あの試合はやはり河名選手のレスリング力ですね。並大抵でないことは覚悟していました。MIBUROで大きな外国人がきてやられちゃうこともありますが、通用しないということはなかったです。だから河名選手と戦っても、打撃で上回って組んでも勝負できると思っていました。そうしたら……圧倒的なレスリング力の差がありました。

飛ばしすぎないで戦おうと思ったら、組みで圧倒されて。勝つには打撃しかないと打ち合ったらKOされました。感覚的な話になりますが、それでもトップレスラーのフィジカルを体験できたのは大きかったです。打撃が中途半端、未完成な打撃で勝負をしたことも敗因の一つだと思っています。組みだけでなく、打撃も反省できた試合でした」

──では今年3月の石田拓穂戦、ある意味絶対に負けられない状況だったかと思います。

「実力的には絶対に勝てるとは言わないですが、少なくとも普通に勝負ができると踏んでいました。リーチ差を生かして、打撃が勝負しようと。でも、その打撃が未完成でした」

──打撃で押し込まれて、逆転の一発という試合でした。

「KOしたパンチは正直、狙っていたものではないです。でも練習をし続けていたパンチでした。近距離でのパンチ、一発で意識を飛ばせたのも初めてで……結果的に打撃の練習の成果が出た試合で。自分のなかでは自信にはなりました」

──5月のパク・サンウォン戦はアドニス・セビジェーノが来日できず、急遽の対戦となりました。そしてストライカーを相手に、一つのテイクダウンからコントロールして腕十字で一本勝ちでした。

「打撃が得意なのは分かっていました。なのでKOをしようとかはなかったですが、打撃戦でどれだけできるのか試そうと思っていました。打撃を出させていなす。見切ったうえでテイクダウン。組んでからはいつも通り戦えばいける。そういう作戦通りの試合でしたね。打撃の向上と、作戦通りに動けることが確認できました」

──打撃を向上させても、打撃戦を一部と考えている。まさにMMAとして打撃と捉えることができていますね。その打撃、どこかで特別に練習をすることはあるのですか。

「ムエタイのプライベートを受けたり、ムエタイの選手と練習する機会を設けました。あとは福田龍彌さんから、アドバイスを良く貰います。そこを実践する。昔から教えてもらってはいたのですが、なんせ打撃が分からなくて。レベルが違い過ぎるから仰っていることが分からなかったのが、ようやく少し分かって来て。龍彌さんのいうことを信じて戦う。それが最近になって、できるようになりつつあると思います。そこは大きいです」

──そして迎えた7月のトーナメント準々決勝、中川晧貴選手に総力戦で競り勝ちました。

「中川選手はグラップラーで、リーチ差があるので打撃で行こうと思っていました。テイクダウンをさせずに、戦う。スタンドでプレッシャーをかけて相手を下がらせる。そこはデキてしっくりとは来ています。ただ僕も被弾してしまいました。前に行く気持ちが強くて。

打撃に拘るより組みの方が強みですし、打撃を混ぜて戦うことが身についてきたというのはあります。ただ、その組みの部分でポジションを返されたり、逆に得意なところで課題が残った形です」

──そして、いよいよダギースレンとの再戦です。以前との違い、改めてお願いします。

「打撃を使って戦えるようになったこと。もちろん、狙い過ぎると自分が貰ってしまうこともあるのですが『できるぞ』というところが違います。前回はスタンドでも、ほぼほぼ僕が逃げ回ってグラップリング勝負をしてたのが、そこも打撃を使って……。綺麗に入るとまではいえないけど、グチャグチャにはならないで戦えるかと思います。少し洗練されたMMAになる。そういうところを見て欲しいです」

──結果オーライかもしれないですが、石田戦で打撃で下がった時に組まずに打撃で勝った。それがあることで、絶対的に組むだけじゃない。その気持ちがあると相手に分かることは、大きいのかと思います。

「人一番ビビりだったんです。スパーリングでもパンチが飛んで来たら背中を向けてうずくまるぐらいの感じで避けていました。今の後輩、一般会員さんは凄いなって思うぐらい僕よりできていました。本当に僕は顔に来るものへの恐怖心が凄くあって。結局、勝ちたいってよりは単純にそういう自分が嫌だった。

恐怖心に打ち克ことは、戦ううえで必要な能力で。逃げ回る自分は嫌だし、逃げ回るスタイルじゃ通用しない。だから、やるしかないと思って取り組んで来たら段々、少しずつですけど向き合えるようになって。目を開けたままでパンチを貰えるようにはなりました」

──その気持ちが創ることができてのダギースレン戦です。

「去年のトーナメントはGladiatorで戦ってきた選手の出場は、僕しかいないような状況だったから出ることができたと思います。それで負けました。今回は、この1年で強さと成長する能力を見せたことで、トーナメント出場が認められたと思っています。あれからの5試合、間を空けずに戦ってきたことで得られた自信があります。ダギースレンも凄く成長しているので、全く違ったMMAを見せることができると思います」

──ところで、今もMMAは東京中心です。グラジでキャリアを重ね、力もつけてきた。首都圏で戦いたいという気持ちは?

「そういう気持ちは、強くは持っていないです。どこでも一緒です。今は配信があるので。昔は東京、後楽園ホールで戦いたいということはありましたが、今は場所に拘りはないです」

■視聴方法(予定)
10月6日(日)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル


■Gladitator028対戦カード

<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
チハヤフル・ヅッキーニョス(日本)
ダギースレン・チャグナードルジ(モンゴル)

<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
水野翔(日本)
パン・ジェヒョク(韓国)

<フェザー級/5分3R>
木村柊也(日本)
キム・ウィジョン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
吉田開威(日本)
上田祐起(日本)

<ウェルター級/5分2R>
森井翼(日本)
チョモランマ1/2(日本)

<フライ級/5分2R>
宮川日向(日本)
今井健斗(日本)

<フェザー級/5分2R>
野口蒼太(日本)
福田泰暉(日本)

<バンタム級/5分2R>
ルキヤ(日本)
しゅんすけ(日本)

<フライ級/5分2R>
澤田政輝(日本)
荒木凌(日本)

<フェザー級/5分2R>
田口翔太(日本)
藤井丈虎(日本)

<ウェルター級/5分2R>
後藤丈季(日本)
趙大貴(日本)

<ライト級/5分2R>
磯嶋祥蔵(日本)
キンコンカンコンケンチャンマン(日本)

<フライ級/5分2R>
古賀珠楠(日本)
藤原浩太(日本)

<フライ級/5分2R>
田中義基(日本)
村田和生(日本)

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【Gladiator028】1年4カ月振りの再戦、ヅッキーニョス戦へ。ダギースレン「打撃をたくさん使いたいです」

【写真】王座決定T決勝の体重オーバー以来、相当に減量には注意が払われているようなダギースレンだ (C)SHOJIRO KAMEIKE

本日6日(日)、大阪府豊中市の176boxでGLADIATOR028が開催され、フェザー級王座挑戦者決定トーナメント準決勝でダギースレン・チャグナードルジが、チハヤフル・ヅッキーニョスと戦う。
Text by Manabu Takashima

昨年6月に同王座決定トーナメント準決勝で対戦した両者。前回の対戦ではダギースレンがスプリットの大激戦を制した。あれから1年4カ月、この間の成長度合のぶつけ合いを前に寡黙なチンギス・ハンの末裔が、その自信のほどを静かに語った。

――トーナメント準決勝まで2週間を切っていますが、今の体調は如何でしょうか(※取材は9月25日に行われた)。

「体調は良いです。トレーニングも順調に続けることができて、これからは減量に集中していこうとかと思っています。7月に試合があって、それから練習を続けてきました。ここからは体重を落とします」

──もう体重調整の時期に入っているのですね。

「今は動いて体重を落としている状態で、来週になると計量を見据えて体重を創っていきます」

──ヅッキーニョス選手と1年2カ月振りの再戦となります。彼からは前回の対戦後、試経験がダギースレンより多くて、成長の度合いが違うという旨の発言が聞かれます。

「中川選手との試合を見て、ヅッキーニョス選手は去年に自分と戦った時よりもスタミナがついたように感じました。ただ、スピードがないです。前回は私が勝ちました。今回もしっかりと研究したので、勝つのは自分です」

──前戦と比較すると、打撃を使ったMMAができるようになったとも言っていました。

「自分との試合後、ヅッキーニョス選手は多くの試合をしてきたことは確かです。その試合映像は全てチェックしました。試合のたびに成長をしています。打撃でもKOしているので、その辺りは自分も承知しています。でも自分も彼の成長に負けないほど練習をしてきたので、打撃でやりあうことを全然平気です。

逆に自分は前回の試合でグラップリングやレスリングという面で、しっかりと力を発揮することができなかったです。7月のアドニス・セビジェーノ選手との試合でも、そこは上手くいかなったです。なので、今回はしっかりと組みでも強さを見せられるようにスタミナの強化を図ってきました」

──大阪では、どのような試合がしたいと思っていますか。

「前回は組みが多かったので、打撃をたくさん使いたいです。ヅッキーニョス選手と再戦することが凄く楽しみで、ファンの皆さんが喜んでもらえる試合ができると思います」

■視聴方法(予定)
10月6日(日)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル
<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
チハヤフル・ヅッキーニョス(日本)
ダギースレン・チャグナードルジ(モンゴル)

■Gladitator028対戦カード
<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
水野翔(日本)
パン・ジェヒョク(韓国)

<フェザー級/5分3R>
木村柊也(日本)
キム・ウィジョン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
吉田開威(日本)
上田祐起(日本)

<ウェルター級/5分2R>
森井翼(日本)
チョモランマ1/2(日本)

<フライ級/5分2R>
宮川日向(日本)
今井健斗(日本)

<フェザー級/5分2R>
野口蒼太(日本)
福田泰暉(日本)

<バンタム級/5分2R>
ルキヤ(日本)
しゅんすけ(日本)

<フライ級/5分2R>
澤田政輝(日本)
荒木凌(日本)

<フェザー級/5分2R>
田口翔太(日本)
藤井丈虎(日本)

<ウェルター級/5分2R>
後藤丈季(日本)
趙大貴(日本)

<ライト級/5分2R>
磯嶋祥蔵(日本)
キンコンカンコンケンチャンマン(日本)

<フライ級/5分2R>
古賀珠楠(日本)
藤原浩太(日本)

<フライ級/5分2R>
田中義基(日本)
村田和生(日本)

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