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【DEEP112】フライ級T準決=福田龍彌戦に向けて。宇田悠斗「大会的にはDEEP育ちの伊藤選手優勝が綺麗」

【写真】基本ZOOM取材の時はスクショをトップ写真に使用するのですが、やはりこのインパクトには勝てず。改めて一張羅姿でいかせていだきます (C)MMAPLANET

11日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP112では、フライ級GP準決勝戦が行われる。1月13日に抽選の結果、宇田悠斗が福田龍彌と対戦することが決まった。
Text by Shojiro Kameike

修斗世界ランカーとしてGPに参加した宇田は、1回戦で島袋チカラを超高速ヒジ連打でKO。続く2回戦は村元友太郎をサッカーボールキックで退けている。こうした結果から、GPを通じて最も評価を高めているのは宇田かもしれない。そんな宇田が語る連続KO劇と、冷静な各ファイターの分析――その裏に、知られていない熱さが見えた。


こちらがZoomのスクショです。格好良いに──

――昨年12月にDEEPフライ級GP2回戦で村元選手をKO。今年に入って準決勝の組み合わせ抽選会が行われ、次の対戦相手は福田龍彌選手に決定しています。まず村元戦についてですが、サッカーボールキックによる衝撃のKO劇でした。あの試合内容は、点数をつけるとすれば何点ですか。

「あの試合は……60点ですね」

――えっ、マイナス40点の理由は何なのでしょうか。

「まずしっかりフィニッシュできたことと、練習でやっていたことが試合で出せたことが60点です。マイナス40点は、もう少し早い段階でフィニッシュできたかなというところですね。ファーストコンタクトで、相手が自分の攻撃に対して反応できていないことは分かりました。そこですぐにワンツーを打っておけば、当たったと思うんですよ。でも自分が警戒して、時間を使いすぎてしまいました」

――村元選手の動きに対して、どのような点を警戒したのですか。

「やっぱりスピードのある選手なので、カウンターを合わせてくると思って警戒しすぎてしまいましたね。1Rの1分を過ぎたあたりで、セコンドの石渡(伸太郎)さんから『相手は反応できていないから行け。勝負しろ』という指示があったんですよ。実際そこで自分の打撃も当たっていたし――もっと自分のことを信じて勝負していれば、もっと早くフィニッシュできていたと思います」

――ただ、そこでセコンドの指示も聞こえて、かつ少しでも自分から行くことができたということは、それだけ冷静だったということですね。

「すごく冷静に試合を進めることができていました。それこそアップの時から調子が良くて。周りの声も聞こえていたし、パフォーマンスはメチャクチャ良かったです」

――それでも自己採点が60点というのは、ご自身の中でその点数は高いほうですか。それとも低い点数なのでしょうか。

「いや、割と高いですね。自分の中では、今までで一番出来が良かった試合です」

――一番出来が良くて60点ということは、自分自身に対して厳しいということですね。ちなみに村元戦の作戦とは、得意の右ストレートを当てるというものだったのですか。

「最初はジャブで相手の位置取りをして、相手が飛び込んでくる時にカウンターを当てる。もっとグチャグチャした展開になると思っていたんですよ。村元選手はもっと足を使って、出入りを多くしてくると考えていました。

だけどファーストコンタクトでジャブを当てた時、村元選手はベタ足でドシッと構えていたので、何も怖くなくて……。スピードは自分のほうが速いし、圧力もない。反対に右ストレートか何かをもらった時、『この人のパンチでは倒れない』という自信が生まれて」

――その作戦や試合の中で掴んだ感覚に、間違いなくサッカーボールキックは入っていなさそうですね(笑)。

「アハハハ、全く頭になかったです。その場のノリというか(苦笑)」

――韓国Black Combatとの対抗戦を控えている大原樹理選手にも、サッカーボールキックについてお聞きしました。大原選手は昨年7月に石塚雄馬選手をサッカーボールキックでKOしています。なぜ寝ている相手の顔面を躊躇なく蹴り上げることができるのかと……。

「あぁ、大原選手もすごいKOでしたね。何て言っていました?」

――辿り着いた結論は、『むしろ考えていたら蹴ることはできない。普段から染み込ませているから、咄嗟に出るものだ』ということですね。

「なるほど、そうですね。普段からサッカーボールキックの練習はできないけど、常に仕留めることを考えて練習しています。相手の構えに少し隙ができたところに一発入れるということは、練習でも言われているので」

――その一つが、前回のインタビューで言われていた『離れ際の打撃は暴力として出せ』という石渡さんの指示ですか。

「そういうことです。常に意識を張って、仕留めるための暴力を出す練習をしています」

――これも大原選手にも聞いたのですが、相手が倒れている状態で抑え込むという意識はないのでしょうか。

「左フックが当たって相手が倒れた時、まだ目が死んでいなかったんです。『これは立ってくる』と思ったので、実は跳びヒザを出そうと思ったんです。でもまだ倒れている状態だったから、そこで顔面にヒザを当てると反則じゃないですか。すぐにサッカーボールキックへシフトチェンジしました」

――その状態で急ブレーキを踏めるのですね!

「相手の頭が良い位置にあったからです。ヒザを出そうとして、そのまま足を伸ばせば蹴りが当たる位置に頭があったので。最初から蹴ろうとしていたら、それほどちゃんとした場所には当たっていなかったと思います」

――なるほど。宇田選手が衝撃的なKO勝利を続けるなかで、他の選手の試合はどのように見ていたのでしょうか。自身の対抗馬として考えている選手はいますか。

「伊藤裕樹選手じゃないですかね。何というか……。大会的には、DEEPで育ってきた伊藤選手が優勝するのが綺麗な形なのかなって。その伊藤選手と、修斗からの刺客みたいな感じの自分が決勝で対戦するのが一番面白いんじゃないですか」

――今もそうですし、準決勝の組み合わせ抽選会では、マネージメントが同じの本田良介選手が負けることを期待するような発言がありました。

「いやいや、そんなことはないですって(苦笑)。誤解、誤解です」

――もう一つ、抽選会で着ていた一張羅のスーツが印象的でした。

「アハハハ、ありがとうございます」

――正直に言うと、宇田選手の顔に刃物による傷のようなものが見えた時、ヤンチャな時代があったのだろうと思いました。そして抽選会で着ていたスーツを見て、その推測は確信に変わっています(笑)。

「うーん、少しは……ハイ(苦笑)。もともとMMAを始めたのも、喧嘩に強くなりたかったからでした。それがいざジムに行った時、40歳ぐらいのオッチャンとボクシングのスパーリングをして、ボコボコにされたんですよ。『街でこの人と喧嘩になったら負けるんや』と思って(笑)。俺って弱いんだ、強くなりたいってメチャクチャ練習し始めました。

でも最初は試合に出るつもりはなく、ただ強くなりたいっていうだけだったんです。それが初めてアマチュア修斗に出た時にKO負けして……。あのKO負けから自分の中で火がついて、毎日ずっとジムで練習するようになりました。あの頃は仕事しながらプラプラ遊んでいましたけど、もう遊びにも飽きていて」

――そんな遊びよりも、MMAは楽しかったですか。

「楽しかったです。ずっと毎日が同じ感じで、自分の人生ってしょうもないなと思っていました。でもMMを始めてからは――遊んでいる時のようにお金が減っていくことはないし、強くなれる。何よりMMA自体が楽しいスポーツで。こんなに楽しいものはないですよ」

――当時一緒に遊んでいた友達は、現在の宇田選手を見てどう言っているのでしょうか。

「別次元の人として喋りかけてきます。『普通の人間に同じことはできない。お前だからできるんだ』って特別視されています。そんなことはないですけどね。

東京って格闘技ジムが多いし、通う人もたくさんいる。テレビでRIZINを見ている人も多いじゃないですか。だから自分が『格闘技を始めてRIZINに出たい』と言っても、誰も笑わないと思います。それだけ現実味がある場所だから。

でも愛媛県の宇和島というところは、特に何もない場所で。自分がMMAを始めてUFCに出たいと言っても、『コイツは何を言っているんだ!?』って思うんです。現実味がなさすぎて、『そんなことをする暇があったら仕事しろよ』とかボロクソ言われていました」

――……。

「そこから自分は頑張って、東京にも出てきて勝つことができている。そんな僕がベルトを巻いて、世界で活躍できるようになれば、きっと地元の人たちも変わると思います。やる気さえあれば誰でもどうにでもなるって証明したいです」

――なるほど。試合の話に戻りますが、抽選会でも言っていたとおり準決勝では伊藤選手と対戦したかったですか。

「それはトーナメントを勝ち抜いていくための戦術として考えていたんですよ。伊藤選手は打撃が強くて、自分が勝ってもダメージを負ってしまうと思います。でもトーナメントは、たとえダメージを負っても勝たないといけない。だったら勝つ確率が高いほうを選びますよね。伊藤選手と本田さんでは、伊藤選手のほうが勝つ確率は高いと思いました。どっちが強いというより、相性の問題で」

――本田選手が対戦相手になっていた場合は……。

「本田さんは一緒に練習したこともあって、強さが分かっています。……キツいタイプじゃないですか(苦笑)」

<この項、続く

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【DEEP112】4戦目で神田コウヤと暫定フェザー級王座決定戦、五明宏人─02─「1回戦えば1回勝てる」

【写真】面構えが良くて、当たり前というべき五明の広義での格闘技キャリア(C)MMAPLANET

2023年に向けて『2022年中に話を訊いておきたい』勝者、敗者を6人リストアップしインタビュー──五明宏人編Part.02。

伝統派空手出身、日本代表でもあった五明は、2021年に秋にMMAに転向すると昨年DEEPでプロデビューを飾り、デビュー8カ月でDEEP暫定フェザー級王座決定戦に臨むこととなった。

2月11日(土)に後楽園ホールで開催されるDEEP112で、五明は3戦3勝のレコードを引っ提げて神田コウヤとベルトを賭けて戦う。4戦目のタイトルマッチとはいえ、一つの競技で年代ごとに常に日本のトップとして活躍してきた彼のコンペティションを戦ってきた経験値は膨大で、精神的にもベテランのように落ち着き払っている。

伝統派ポイント空手の動きMMAに落とし込み、対戦相手によって戦い方、動きを変える。空手時代から、良い意味で自分を持たないで戦ってきた五明だが、そこには攻守が一体化したレンジコントロールという根幹が存在している。

空手を生かしたウェルラウンダーにタイトル戦、それ以降について話を訊いた。

<五明宏人インタビューPart.01はコチラから>


──空手時代とも髪型や色も変わり、相当にイメージが変わっています。

「MMAは整髪料が禁止で、空手の時のように固められないんですよ(笑)。色の方は空手家は染めることはできないので。武道として、髪の毛は黒の方が良いと思います」

──それだけ技術は生かしても、空手とは違うということなのですね。ところでお父さんからMMA転向に関して、何か注文は入らなかったですか。

「父どころか、周囲の全員から『勿体ない。これからじゃないか。全日本もあるし、世界を目指せば良いじゃないか』と言われました。でも正直、WKFとMMAは規模が違います」

──世界中で実施されていて、五輪種目になったWKF空手よりもMMAの方が規模が大きいと。

「注目度が違います。人生は1度と考えた時に、MMAに挑戦したいと思いました」

──目立って金を儲けたいという気持ちも?

「ハイ。格闘技界を盛り上げたいとか言っている人もいるけど、結局は自分が目立ちたいからやっていると思います。僕もやっているからには目立ちたいし、お金も稼げたほうが良いです」

──そこでトライフォース赤坂を選んだと。

「ハイ、朝倉未来さん、海さんがいて。そこに憧れて入ったのが大きいです。一番有名なんで、その人から教わるのが一番だと思いました。何で皆、憧れているのに他に行っちゃうのか。そこが不思議です」

──実際、どのような指導を受けていますか。

「とにかくスパーリングをして、そこからダメなところを指摘してもらっています。親身になって、色々と教えてくれるので凄く勉強になります。やっぱり、ダメなところが凄く分かるので未来さんの分析力は凄いです」

──セコンドをしている時の指示も凄く明確だと感じます。未来選手以外では、どのような指導を受けているのでしょうか。

「ここは結構、色々な人が来てくれます。未来さん、海さん、(白川)陸斗さんもそうですし、津田(勝憲)さんには個人的に教わっています。フューチャーキングの前から……MMAを始めて直ぐのタイミングで藤野(恵実)さんの繋がりもあって知り合って、以来ずっと教えてもらっています。

津田さんは小手先でない、MMAに必要な基礎をしっかりとやられてきた方なので土台を創ってもらっています。それと追い込み練習ですね。凄く厳しいので、追い込んでもらっています(笑)」

──とはいえ一つのことを究めた五明選手です。技術云々ではなく、精神的な基礎はもう十分にあるのではないかと。

「正直な話をすると空手の方が色々とキツイことが多かったので、MMAに来て練習がどれだけ厳しくても、精神的にキツイことはないです」

──さすがです。ところで2021年にはアマ修斗も経験していますね。

「ハイ。10月から正式にMMAを始めて、最初のアマチュアの大きな大会が全日本アマ修斗でした。それで応募すると、ギリギリで選考が通ったみたいで。で1回勝って、次に負けました。自分としては優勝できると思っていたのですが(笑)、そう上手くはいかなかったですね」

──それでもプロ昇格の資格は手にすることができました。

「あの時点でプロになっても負けるなと思いました。アマで負けているんだから、プロでは通用しない。それからはしっかりと計画を立てようと思った時に、5カ月後にフューチャーキング・トーナメントがあると聞きました。全日本アマ修が取れなかったので、そこで優勝してプロデビューするという目標を立てて、年末にもう1度、アマ修斗に出て。そこで勝ってフューチャーキングで4試合、しっかりと勝ち切ることができました。

あの時点でアマ戦績が6勝とか7勝1敗になったので、もうプロでやろうと決めたんです。振り返ると、全くプラン通りに今日までやってくることができていると思います」

──それにしても、見事に顔面パンチ有りに対応できていますね。

「まぁ……空手の時も同じで。やらなきゃ、やられる世界なんで。相手が誰だろうと、やられる前にやるだけです」

──空手が生きている部分と同時に、修正しないといけなかった部分があったかと思います。

「後屈ですね、僕は。後ろ重心になるのは、MMAでは良くないのでそこは変えました」

──後ろ足重心で、思い切りパンチを振るえる海外勢が羨ましいですね。ただ、距離を見て攻撃を受けないという部分では、MMAでは後屈的なモノの見方もありかと思っていました。

「どうなんでしょうね(笑)。結局、前屈みだろうが後ろ屈みだろうが相性もあるのでどっちが良いとかないかもしれないですよ」

──確かに後屈だと、前回の試合のような迫力のある攻めは出なかったかもしれないです。

「それもプラン通りで、メチャクチャ相手を研究して戦っています。だから僕の試合は、動きが毎回違うと思います。前回の試合で距離をつめて戦ったのは、自分のスタイルだからっていうことではないです」

──では、そのようななかで2月11日の神田コウヤ選手とのタイトル戦ですが、キャリアの違いは明白で。そしてレスリングベースでありながら、打撃もパンチ、蹴りともにある選手です。

「実はまだ、神田選手の対策はしていないです(※取材は12月23日に行われた)。とにかく今、自分に足らないモノを補っている最中です。MMAはやることが多すぎて、まだ細かく神田選手のことに関しては突き詰めていないです」

──では、組みという部分に関してはどのような取り組みを行っていますか。

「もちろん、組みでも戦えるように練習しています。レスリングも柔術も、グラップリングも毎日のように組み技をやっています。伝統派空手だからストライカーだと思われがちですけど、組んでも戦えるのがMMAファイターです。神田選手が組んできたら、ちゃんと組みもできるところを見せたいです」

──後輩の野村選手は『先輩と違い、僕はMMA的に戦う』と言っていましたが(笑)。

「アハハハハ。まぁ、前の試合を見たら誰だってそう思うんじゃないですかね(笑)。でも野村君の師匠の宮田(和幸)さんが、今日も来てくれてレスリングの練習もやっているんで。BRAVEにも出稽古に行っていますし」

──出稽古も行っているのですね。

「結構、行かせてもらっています。ALLIACE、トライフォース赤坂で道着もノーギもやっていて。MMAをMMAとして戦うための練習をやっています」

──決して空手の強さをMMAで見せるという思考ではなくて。

「僕が空手家といって負けちゃうと、空手に迷惑をかけてしまうので(笑)。僕はMMAファイター、総合格闘家としてやっています」

──ではMMAファイターとして、将来的な目標は?

「夢があるから頑張れる人もいるのですが……僕は結構現実的で。『UFCチャンピオンになる』とか、国内だったら『RIZINのチャンピオンになる』とか。『海外で活躍したい』という人が多いと思います。僕は取り敢えず目先のことしか考えていないです。結果的に格闘技を続けられる、お金も稼げる──と考えた時に、次のことをしっかりとやれば自ずとそういう風になる。だから、僕は次の試合しか考えていないです。そうしたら4連勝、そのままRIZINに行くのか。5連勝、6連勝して海外に行くのか。それは、その時にならないと分からないです」

──五明選手は対応力、適応力で道を開くような感じですね。

「そうかもしれないですね。僕はその場、その時に適したことをチョイスしてMMAファイター人生を送ろうと思っています」

──最適の選択をするには、勝って道を切り開く必要があります。神田選手とのDEEP暫定フェザー級王座決定戦に向けて、改めて意気込みをお願いします。

「10回やって何回勝てる……とかっていう人がいて。今回の試合も10回やれば9回、神田が勝つ。その1回を五明はこのタイミングで持ってこられるのかって。1回勝てるということは、1回戦えば1回勝てるんです。だから神田選手と1度、タイトルマッチを戦い、僕が勝ちます。1回やって1回勝つ。それが総合格闘技、MMAのプロの試合だと思います」

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【DEEP112】フライ級T準決勝、顔合わせ決定。本性を見せた(?)宇田悠斗は福田龍彌&伊藤裕樹✖本田良介に

【写真】自前のピンスト、スリーピースの宇田には呆然……。カフスボタンは五光になっていなかったが、成人式では白のスーツに毛皮のコートだったという…… (C)MMAPLANET

13日(金)、2月11日(土)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP112 IMPACT内で実施されるフライ級トーナメント準決勝の抽選会が、中野区中野サンプラザ15階会議場で行われた。

16人参加のトーナメントも、いよいよ大詰め。残るは伊藤裕樹、福田龍彌、本田良介、宇田悠斗という4名だ。

今回の抽選も恒例のジャンケンからスタートし、勝った者から1~4までの数字が掛かれた紙が入った封筒を選ぶことができるDEEP方式で進んだ。


結果、ジャンケンは最後でも1を引いた伊藤が、第1選択権を得て、メインとなる準決勝第2試合の赤コーナーを選ぶ。2番の本田が第1試合を選ぶと、3番手の選手が対戦カードを決める権利を有することができるが──。

果たして本田は第2試合=伊藤の横に並び、自動的にはセミファイナル第1試合は宇田✖福田に決定した。

この間、進行役を務めたDEEP佐伯繁代表が──その場にいた誰もが思っていたが、口に出せなかった一言を発する。「宇田君はチンピラみたいな恰好で」。途端に会場内に笑いが起こると本田と並んで座った宇田に対して、さらに「宇田選手は相当に危ない恰好をしていますけど、やっぱり四国の方はそういう恰好なの? どっちかというと福岡っぽいね。実際、福岡の成人式みたいな恰好で」と続けた。

今は東京在住の宇田だが佐伯代表の言葉通り、愛媛県からキャリアをスタートさせた選手で、本田は東京から福岡に戻り、福田は京都、伊藤は愛知と4選手とも地方のファイターが準決勝に残ったことを、宇田イジリで改めて認識されることとなった。

以下、準決勝の顔合わせが決まった直後の4選手のコメントだ。

宇田悠斗
「伊藤選手とやりたかったんですけど、しょうがない。福田選手、やりましょう。まぁ、決勝でやれることを望んでいるんで。お互い頑張りましょう。(CAVEの練習仲間の本田が「俺が負けるんだぁ」と突っ込む)。いや、そんなことないです。そんなことないです。両者、勝てるよう……ハイ。大丈夫です(苦笑)」

福田龍彌
「4番引いた時、宇田君とできると思っていなかったんで、僕からするとなんか嬉しい感じ。修斗時代から地方で一緒に頑張って来たんで。闘裸男で出来ていても良かったようなカードを後楽園で。でも、僕がDEEPを代表してしっかりとやっつけるんで。お願いします」

本田良介
「なんかスイマセン。宇田君と伊藤選手がやりたかったみたいで。僕、あんまり決めていなくて。ちょっと席を見たら、近いところに行こうと決めて、近いところに行きました。でもメインなんで、今までメインで戦ってエースというか、強いと言われている伊藤選手を食って。まぁ僕が一番知名度ないんですけど、ひっくり返したいと思います」

伊藤裕樹
「じゃんけんで負けて一番最後になって、くじは一番を引いたということは自分、持っているなと思って。まぁ、でも対戦相手は福田選手が宇田選手とやりたかったんですけど、神様は甘くないということで。本田選手と最高の試合ができればと思っています。僕のジンクスなんですけど、僕、結構試合をしていて──やられる相手が絶対に田んぼの田がついているんです(鮎田直人、藤田大和、福田龍彌)。福田、本田、宇田ぁ。ここで神様に挑戦状を送りたいと思って。皆さん、応援よろしくお願いします」

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【DEEP112】2022年中に話が訊きたかったファイター。5人目、五明宏人―01―「武道空手をやってきた」

【写真】インタビュー中の受け答え、そしてこの佇まい。全くルーキーではない。格闘をする人間として、どれだけ修羅場を経験しているのかが伝わってきた初インタビューだった(C)MMAPLANET

2023年が始まり、MMAワールドでは既に6日(金・現地時間)に米国でLFAが開催され、今週末にはONEのタイ大会、東京では修斗公式戦が行われる。

そんな2023年のMMAに向け、『2022年中に話を訊いておきたい』勝者、敗者を6人リストアップしインタビューを行った。第5弾は伝統派空手からMMAに転向デビューイヤーを3連勝で終え、2月11日には神田コウヤとDEEP暫定フェザー級王座決定戦を戦う五明宏人に話を訊いた。

TOKYO2020候補、空手界では誰もが知る実力者はなぜMMAを選んだのか。まずは栄光に包まれた空手家時代の五明の空手観、そしてMMAファイターとしてキャリアを踏み出した理由を尋ねた。


──五明選手自身、デビューから1年も経たずに4戦目でDEEPのベルトを賭けて戦うことをどのように捉えていますか。

「光栄なことで……素直にタイトルマッチは、自分からするとチャンスでしかないので。これをモノにしてこそ、スターになれる存在だと思うので必ずベルトを巻きたいです」

──では、今回は伝統派空手ベースでJ-MMA界でデビュー1年目から存在感が際立っている五明選手に、格闘技を始めた時から現在に至るまでを伺いたいと思います。まず空手を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

「父親が伝統派空手の道場をやっていて、小学校に上がった頃には習い事として空手を始めていました」

──伝統派とはいってもルールを用いた試合がある限り、スポーツという見方を私はしてきました。その辺り、父親が空手の指導者でもあった五明選手にとって空手とはどのようなモノだったのでしょうか。

「空手は武道だと思っています。だからスポーツ空手でなく、武道空手をやってきました。僕がやっていた空手、親父がやっていた空手は日本空手松濤連盟といって競技空手の中でも、日本空手協会よりの空手です。スポーツ化された伝統派空手とは別で、結構当てる伝統派空手でした。それもあって空手は武道で、スポーツという風に捉えていなかったです」

──では五輪で見られたWKFの競技空手は、空手として捉えることはできたのでしょうか。スミマセン、こんなことを聞いて。

「いえ(笑)。アレはアレで競技空手です」

──自分は本当にあらゆる競技のテクニックがMMAで使うことができると思っているのですが、伝統派空手の競技特性として極めの際の大きな声が挙がるではないですか。声を出すという行為は実戦を想定すると、「危ないよ」と思ってしまうんです……。

「僕もずっとやっていても不思議に思うところはありました。伝統派空手は技を出す時に気合を入れるんですけど、口を広げているのでアゴを殴れると、それで結構落ちるんですよ。歯を食いしばることができないので。歯を食いしばると気合を入れることができなくて。それが伝統派空手かな、と。

ただし僕の考えとして、空手をやっている以上ルールに応じて全局面で、できなければいけないと思ってやってきました」

──どの武道、格闘技も辿ってきた道ですが、本道と競技で勝つことに剥離が生まれる。五明選手は武道としての空手と、競技に勝つ空手を両立させてきたのですね。

「やっている以上、WKFのルールで日本一、世界一を取りたいわけで。ルールが定められているモノなので、そこに則って勝つ。自分たちの会派、日本空手松濤連盟でやっている時も強い空手で勝つという教えの下でやってきました。両方をやってきたので、特に違和感はなかったです」

──日本空手松濤連盟と全日本空手道連盟の試合だとルールが違ってくるのですね。

「日本空手松濤連盟は基本的に突きが当たることは普通にあります。連打もOKだけど、KOはしてはいけない。相手に当てて、残心を取るというモノでした」

──残心を取る、相手の攻撃に備えて構えをしっかりと取ると。

「はい、そうです。WKFの方も当てちゃいけないといっても、結構当てっていますし。当てても技有りになっていたので、本当に違和感はなかったです」

──相手に間合いをつめられたときに頭を下げた相手に対して、内回し蹴りで足の裏を頭部に落とした映像を見ました。

「あれはダメージとかでなく、ポイントを取るために特化した蹴りでした」

──素直にどこまで器用なのかと驚かされました。

「勝つためにはああいうこともできないと。そこはルールに応じて、技の練習をしていました」

──BRAVE GYM所属の野村駿太選手が帝京大学の後輩で、五明選手は本当に防御が長けた空手家だったと言っていました。

「僕としてはルールに順応するのが得意で、ルールに対して柔軟なんです。『俺はこういうスタイルでいくんだ』というのがない。全てのルールに順応して戦うことができるので、負けないノウハウがありました」

──前に出るだけでなく、下がって迎え撃つ。そこも見事だと思いました。空手時代はどちらの足を軸に、前後移動をされていたのでしょうか。

「前屈と後屈。その使い分けはあります。ただ競技化したWKFのルールだと、重心は五対五で皆がやっていると思います。伝統派って人によってはステップを多用するのですが、僕はべた足、摺り足でやっていました。だから相手の動きに合わせてタイミングを見るということではなくて、自分で相手を動かしていました。プレッシャーを掛けると相手が下がるのは当たり前ですけど、引き込んで相手を前に出させて返すという動きでした。この時は前屈、完全に前足重心で攻撃していました」

──ではMMAを戦うときの重心はどのようになっているのですか。

「それこそMMAに順応するために伝統派を採り入れていますけど、キックボクシングの技術を身に付けながら、その距離でも戦います。拘っていないんです。伝統派だろうが、キックだろうが、僕が戦っているのはMMAなので」

──そのMMAを戦うようになった五明選手ですが、大学卒業後もアルソックに就職して空手を続けていました。つまり空手で食べることができていたと思うのですが、なぜその環境を捨ててMMAに転じようと思ったのでしょうか。

「僕の世代は東京五輪があったので、そこを目指すためにアルソックに入社しました。なので空手で食べるという生活はできていました。でも、パリ五輪で空手は採用されなかった。空手では日本一も取れたし、国際大会でも優勝していたので──空手を生かしてMMAに転向しようと思ったんです」

──空手は階級が五輪になると、統合された。そこが五明選手が落選した要因だったのですか。

「う~ん、結局強いヤツは統合しようが勝つんです」

──古傷を抉るような質問になってしまうのですが、全ての階級で空手が実施されて欲しかったという気持ちはないですか。やはりオリンピアンか、そうでないというのは凄く大きいと思いますし。

「違いますね。でも、統合されていなければと考えたことはないです。終わったことですし、前を向いていたいので」

──押忍。前を向いた時にMMAがあったのですね。

「名前を出すのも恐れ多いのですが、伝統派出身で堀口恭司選手がMMAで凄く活躍されていて。それもあって伝統派空手は強いと信じていたので」

──当時からMMAを見ていた?

「凄く熱心にということはないですけど、堀口選手や朝倉選手の試合は見ていました。キックボクシングも頭にあったのですが、やはり距離感が違う。伝統派空手を生かせるのはMMAだと思いました。グローブもMMAの方が近いですし、やりやすいです」

──今、キックも取り入れていますが、ボクシンググローブの感覚は空手時代と比較するとどのような感じなのでしょうか。

「全然違いますね。MMAのグローブは違和感なかったです。ただボクシンググローブは、響くというか。あの感覚は最初は嫌でした。全然MMAグローブの方が好きです」

<この項、続く>

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【DEEP112】続く、北岡悟のファイティングロード。2月11日大会で、高野優樹と対戦決定!!

【写真】北岡と向き合うのは、『嫌』だろう。気後れするのも分かる(C)MMAPLANET

26日(月)、DEEPより2023年2月11日(土)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP112 IMPACTで北岡悟✖高野優樹のライト級マッチが組まれることが発表されている。

福田龍彌、伊藤裕樹、本田良介、宇田悠斗が勝ち残っているDEEPフライ級GP準決勝、ウェルター級選手権試合=チャンピオン阿部大治✖チャレンジャー鈴木慎吾、フェザー級暫定王座決定戦=神田コウヤ✖五明宏人という2つのタイトル戦などが既に決定している2023年DEEPの戦い初めに、北岡が加わることとなった。


北岡の2022年は上迫博仁、江藤公洋に連敗、2020年7月の小金翔戦のドローを挟み、黒星は連続で7つ並んでいる。とはいえ上迫戦は上迫の負傷も影響していたが、江藤戦も含め2021年の大原樹里、鈴木琢仁戦に連続KO負けを喫した時とは違い、決定的な一発を被弾することなく逆に手数と気迫で上回る場面も見せている。

もちろん、北岡本人はそんな評価のされ方など望むわけもないだろうが、同世代や先輩ファイターから江藤戦の気迫には称賛の声も送られていたのも事実だ。42歳、限界まで鍛えられた肉体とそこに宿るファイティングスプリットに向き合うと、精神的に圧されるという場面が上迫や江藤には見られた。その点で、高野は北岡の圧にどのように向かうことができるのか。

ただでさえバンタム級からフェザー級で戦ってきた高野がフィジカルの差が明らかな状態で、気持ちで引くと勝ち目はない。コンバットスポーツにおいて、フィジカルの差は年齢差よりも、絶対だ。この点でも優位に立つ北岡、それだけに後がない戦いともいえる──が、果たして。

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【DEEP112】DEEPの年始は2月11日。フライ級GP準決勝大会で阿部✖鈴木、神田✖五明と2階級のタイトル戦

【写真】日本が強くなるために力があるモノ同士が潰し合い、勝者が全てを手にして次に進むことが不可欠。そういう意味でも楽しみな神田✖五明の暫定王座決定戦だ (C)MMAPLANET

20日(火)、DEEPより2023年の初戦となるDEEP112 IMPACTの対戦カードが発表された。2月11日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催される同大会では既報の通り福田龍彌、伊藤裕樹、本田良介、宇田悠斗が勝ち残っているDEEPフライ級GP準決勝が行われる。

この他、今回の発表ではウェルター級選手権試合=チャンピオン阿部大治✖チャレンジャー鈴木慎吾、フェザー級暫定王座決定戦=神田コウヤ✖五明宏人という2つのタイトル戦が明らかとなっている。


阿部は暫定王者から住村竜市朗のタイトル返上を受けて正規王者となり、その住村を仕切り直しの一戦でKOした鈴木の挑戦を受けて初防衛戦を戦うこととなった。

一方チャンピオン牛久絢太郎のDEEP不在を受けて暫定王座が争われるフェザー級は、タイトル挑戦歴のある神田と昨年5月のプロデビューから3連勝の五明がキャリア4戦目のマッチアップとなった。

全国高校総体35年連続出場、昨年8月の高校総体で女子が団体組手や個人戦を制し、総合成績優勝に輝くなど名門中の名門、御殿場西高校空手部出身の五明は、その高校時代から全国に名が響く空手家だった。

その後は帝京大学に大学し、2年後輩には同じくDEEPで活躍する野村駿太がいる。国内に留まらず日本代表としてアジア、世界を舞台に戦い──ALSOK時代には2019年の全日本空手道選手権男子組手で優勝、KARATEプレミアリーグ東京大会でも67キロ級を制したが、五輪は統合階級となるなり、WKF五輪ランキングで61キロ級の佐合尚人に遅れを取り出場を逃した後、MMAへ。

トライフォース赤坂に所属となり、昨年の全日本アマ修斗のライト級に出場。現在プロ修斗で2戦2勝2KOを宇藤彰貴に準決勝で敗れたが、プロライセンス取得推薦枠獲得者となった。その後、DEEPヒューチャーキング・トーナメントのフェザー級で優勝しプロに。上記にあるように4戦目でベルトに手を掛けることに。

野村によると空手時代の五明は卓越した距離感と防御能力に長けていたという。MMAでは積極的にケージに追い込み、連続の顔面直接殴打でインパクトの残る勝ち方をしてきた。とはいっても、神田と比較すると組み技歴、そしてMMA歴の差が歴然としている。

長いリーチで距離を取れるだけでなく、テイクダウンやボディロックに生かせる神田に対して、五明がここまで考慮する必要がなかった間合いの妙を見せることになるのか。あるいは神田が意地でMMAの奥深さを見せつけることになるのか。非常に興味深い、暫定王座決定戦だ。

なお今大会では、しなしさとこの3年2カ月振りのMMA復帰戦=古林礼名戦。パンクラス移籍が確実視されていた住村の意外なDEEP参戦=島田伊吹戦。DEEPバンタム級王座獲得を目指す渡部修斗✖力也戦などが決定しているが、他にもベテランビッグネームの参戦の話も伝わってくるなど──最近のDEEPらしい質と量が圧倒的な後楽園ホール大会になりそうだ。

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