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【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ペティス✖堀口恭司「質量と間はペティス」

【写真】ペティスの3Rまでの動き、その秘密が明かされるのは2022年のバンタム級ワールドGP後だろう (C)BELLATOR

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たセルジオ・ペティス✖堀口恭司とは?!


──堀口選手の敗北。武術空手的にはペティス戦をどのように見ることができました。

「まず3Rまで、堀口選手がポイントをリードしていたことは絶対的です。とはいえ、それが堀口選手の試合なのか、ペティスの試合だったのか……」

──そのように感じるというのは?

「まず、あのサークルケイジの広さと堀口選手の距離の取り方が、RIZINのリングで取っている距離のようにフィットしていなかったように見受けられました。距離が近くになっていました」

──それは試合序盤からですか。

「そうですね。遠い距離を取っているようでも、近かったです。そしてイチ・二、イチ・ニというリズムなの、そこからのパンチはイチ・ニのサンになる。対してペティスはイチで、全てを打てる構えでした。そうなると質量はペティスが重く、間もペティスになりますよね。

幾度か堀口選手はカーフを蹴って姿勢を乱すことがありましたが、質量が重いペティスを相手に蹴ろうとすると、間がペティスなのであのようになる。無理に蹴っているので空振ったり、蹴ったほうが跳ね返されるということは、往々に起こります。重心が乱れた蹴りになっているんです。対して打てば当たるという状態ではあったのですが、なぜかペティスは打たなかったです。

4Rまでずっとその調子で。それは打てなかったのか、打てなかったのか。4Rになってからは、別人といいますか……本来は1Rからあの動きができていたと思うので、なぜ最初からああいう風に動かなかったのは疑問です。どれだけ質量だ、間だと言っても手を出さないとMMAでポイントを取ることはできないですしね。

積んできたことが、練度不足だったのか。単発でしか出さないから、堀口選手がそこに合わせやすくなり、ポイントとして打撃でも堀口選手につく。そんな風になっていたのか……。それに堀口選手の右のクロスは、ショートレンジでも効きますしね」

──ペティスの3Rまでの戦い方を考察するのは、難しいということですね。

「体重差があるスパーリングが成り立つのは、重い選手が軽い選手に合わせて動くからです。それでも目に見えない攻防がある。同じ体重で戦っていてペティスが手を出していなくても、目に見えない攻防があり、試合が成立した──そんなことが起こっていたかもしれないです。とにかく質、間とも圧倒していたペティスがあのように動かなかったのは、ペティスにしかその理由は……試合中は分からないですよね」

──5Rで消耗戦、ラウンドを落としても疲れさせるという賭けだったのか。

「しかし、MMAですからね。あれだけテイクダウンを取られると、取られないように策を講じると思うんですよね。画面で見ていると、堀口選手が疲れたという風に見えなかったですし……。この連載は結果が出たところで武の理を解析しようという試みなのですので、あの結果が出ても堀口選手が疲れたようには私には見えなかったです。

ただし4Rの序盤にテイクダウンをして、それまでとは違い拘ることなく立った。そこがターニングポイントになったのかと。グラウンド・コントロールの展開にブーイングが起き、そこで堀口選手は動揺したのか、内面に何が起こったのか。あのまま抑えて、パウンドをちょこちょこと落としていれば勝てた──という仮説は十分に成り立つかと思います」

──私がFigth&Lifeで行った取材では、堀口選手は「あのままで勝てた。でも、面白くない試合で良いのか。立って倒そうと思ったし、倒せると思った」という風に話していました。

「う~ん、勿体ないです。勝利が絶対のなかで、勝利以上を目指す。だから、あれだけの存在になったのかもしれないですが……。次にまたテイクダウンを狙いにいって切られ、従来の質と間で上回る選手の試合にここからなっていました。

そうなると相手の動きをかわすという守りの間合いだった堀口選手は、手を出し始めたペティスに苦しみだした。それが4Rに起こったことかと思います。あの攻撃ができる、ああいう打撃が内在していることをペティスは明らかとしました。質量に回転が加わり、威力があることは一目瞭然となりました。

と同様に打撃に関しては、堀口選手も右のクロスを合わせるという動きに終始していましたね。テイクダウンに帰結するファイトだったからなのか単調でしたし、粗かったです。あのペティス陣営の野杁正明選手を意識したという送り足で前に出るという戦いは、相手の間になって合わされることも多いのですが、堀口選手は下がった。なら、ペティスがパンチを出していれば当たったと思うのですが……と結局、この試合はそこに行きついてしまいますね。

5R戦をマネージメントするという点において、堀口選手が3Rまでは正解だったわけですし。質量も間もペティスでも、MMAの試合では堀口選手。これは私なんかも、試合を勝たせる立場になったときに注意しないといけないことなんです。そういう意味でも勝ったペティス、負けた堀口選手、MMAを戦う選手や指導者、MMAを見ているファン、全てに勉強になる試合だったかと思います」

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Bu et Sports de combat MMA サンチン ナイファンチ ナイファンチン 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(02)「横への隙を無くすため」

【写真】横からやってくる相手へ対応ではなく、横への隙を無くすのがナイファンチン (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチの解析を行いたい。第2回となる今回は、ナイファンチンという「手っ取り早く喧嘩に強くなる」型を知る前に、改めて武術と格闘技、格闘技と喧嘩の違いについて話──後編をお届けしたい。

<ナイファンチン第1回はコチラから>


──格闘であっても、闘争でないと。

「空手の道場では組手をする際に『どうすれば良いですか?』という問いがあった時は、『喧嘩のつもりでやりゃぁ良いんだよ』という答えでした。ところが時代とともに、この言葉は通じなくなってきました」

──喧嘩をしていない子供たちが増えたということでしょうか。

「ハイ。喧嘩もそうですが、怒りという感情がない。怒っちゃいけないように教育されているんです。そういう教育になっています。人に迷惑を掛けちゃいけない。いやいや、子供は迷惑を掛けて良いんです。そのために大人がいます。子供の迷惑を受け止めないで、迷惑を掛けるなという教育をするから、何が迷惑なのか、自分の感情を出すことができなくなっています。

だから大人になって迷惑を掛ける人間だらけになったんです。子供の喧嘩なんて、本気でも素人なんです。そういう時に怒ることができなくて、その感情を抑えてより弱い者にぶつける。そういう世の中です。路上の無差別殺人、狙いは女性、子供、ご老人ばかりです。人を殺して、自分も死にたいとか言って、ヤクザに切りかかる輩はいません。

教育現場や格闘技の道場で『死ね』という言葉が聞かれなくなった。それは『死ね』と言われて、『嫌だ。死ぬもんか』という怒りで現状を跳ね返していたのが、そういう言葉を聞かされても怒れなくて、落ち込んでしまう。それって間に一つ抜けちゃっているんじゃないかのと」

──あまり声を大にして言えないですけど、ふた昔も以前に格闘王を名乗る人と口論になったことがありました。あの時に『殺すぞ』と言われたのですが、その言葉を吐く限りは『お前も殺される覚悟ができているんだろうな!!』と口論以上に発展しそうになって(笑)。

「アハハハハ。ただし、そういうことなんです。相手に飛びかかられたことで、自分が何を口にしたのか理解したことでしょう。『殺す』という言葉が、その御仁にとっては武装ということなのでしょうが、あなただけでなく相手も武装していますよ──ということは、闘争をするうえでは忘れてはいけないです。

そういうことが完全に抜け落ちているんです。言われた方が、『お前も殺されるぞ』という感情を持たないから。そこがないと、命の脅かし合いの攻防とはならない。本気の命の脅かし合いのなかで使うモノが武術です。自分の精神に一片のごまかしがあってもならないんです」

──とはいえ、武術を鍛錬するうえでも殺し合いはできないです。

「仰る通りです。やっちゃいけないことです。ローマ帝国の頃から『汝平和を欲さば、戦への備えをせよ』という格言があります。一太刀で相手を倒す稽古をしていると、人を殺める必要性はなくなります。武術、武道の存在意義はそこにあります。だから型稽古が存在しています。

幕末に防具剣道をやっている人たちが実戦ではそれほど役に立たなかった。真剣で巻き藁を切り、型稽古をしている人の方が斬ることができた。どれだけ人を斬る状態を創っているのか。MMAは命のやり取りが念頭にあるモノではないです。だからこそ、どれだけ本気で勝つための練習をしているのかが問われるのだと感じるようになりました」

──ではMMAを戦うわけでも、空手のコンペティションに出るわけでもない人間が型稽古をすることは人を殺める業を稽古していることになるのですか。

「そうです。自分の命、家族に危害を加える人間がいるという前提で稽古をしているので。そんな人間がいないと思うなら、稽古をする必要はありません。世の中、信じているモノに裏切られることいくらでもあります」

──ハイ。

「だからといって『裏切られた』とか言っても、筋違いです。そういうことがあるという前提、それに耐えうる精神的、肉体的な強さをつけておく必要はMMAを戦う、格闘技の試合に出るという意志がなくても、身につけておいて何ら損はないと私は思っています。そして型稽古で言いますと、ナイファンチンからそういう武の核心に入っていきます。殺さないために殺し合いを学ぶ──その領域にナイファンチンから入っていくことになります」

──ナイファンチンは横移動です。そこから何を学ぶことが前提となっているのでしょうか。

「横に移動することで横から来る人間への対応方法思われがちですが、横から来る人間と戦うのではなくて、自身の横への隙を無くすためだと考えてください。正面を向いていて横に隙ができやすいのが人間です。

言うと……どこを向いていようが、360度を気にしないといけない。その360度はクーサンクーで学びます。パッサイは斜めです。いずれも隙ができやすいところの隙をなくす、それが型稽古なんです。

隙がなくなると、正面への反応、動きが見違えるほど速くなります。後方に隙ができるのが人間です。続いて横です。正面は一番、意識できる。だからこそ、後ろと横に隙ができてしまう。その隙をなくすことが、私が行っている型稽古の目的です」

<続く>

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Bu et Sports de combat MMA   サンチン ナイファンチ 剛毅會 岩﨑達也 松嶋こよみ 武術空手 海外

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチ編─01─「武術と格闘技、喧嘩と格闘技」

【写真】サンチンに次にファイファンチを学ぶ、その故とは (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチの解析を行いたい。第1回となる今回は、ナイファンチという「手っ取り早く喧嘩に強くなる」型を知る前に、改めて武術と格闘技、格闘技と喧嘩の違いについて話を訊いた。


──サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會ですが、長らく続いたサンチンの連載をひとまず終え、今回からナイファンチの解析に移らさせて頂きます。その前にサンチンは他の型とは性格が違うモノ、その部分を改めて説明して頂けないでしょうか。

「サンチンは空手に必要な精神と肉体を養う、あるいは育むための型です。他の型の稽古をしても、サンチンのレベルが他の全ての型のレベルになるファンダメンタルです。突きが良くない、それはサンチンのレベルが低いことが要因になることもあります。

サンチンを省いて、武術空手の指導はできないです。稽古をする目的がそれぞれなために、全ての教え子にサンチンの型稽古を指導してきたわけではないです。ただしMMAの試合に武術空手を生かしたいのであれば、サンチンの要素を多分に含んだ稽古はやっているので、サンチン自体の稽古をするする必要はないようにしてきました。ミットをやろうが、スパーリングをしようが、それはサンチンをしていることになります。サンチンの考え方でパンチの練習をさせている感じです。そして、サンチンをすることで自ずと突きは強くなります」

──ここでもサンチンのことになってしまいますが、なぜサンチンをすることで突きの威力が増すのですか。

「体が空手の体になるからです。空手の体になることが目的です。では、サンチンで創った体をどのように使うのか。次の段階として、使用方法を学ぶことになります」

──それがナイファンチということですか。

「格闘技と武術は違います。なので武術という部分の空手を身につけるには、格闘技の練習をしていても身につかないです。エネルギーの運用方法を学ばなければなりません。左側が資金の源泉と、右側が資金の使途と示す資金運用表というものがあります。あれと同じで左がサンチンで、右が他の型という風に考えると分かりやすいです。その右側──エネルギーの使途の第一歩がナイファンチになります」

──なぜ、ナイファンチが第一歩になるのでしょうか。

「そこに関しては私が決めた順番ではなく、慣わしに則した形です。流派や先生によってはパッサイから始めるところ、セイサンから始めるところもあるでしょう。

ナイファンチに限らず、ナイファンチ以外の型でも体の使用方法を学ぶことに変わりないです。サンチンとセイサンは分類上では那覇手なので、この2つを同時に学ぶことはないと言われているようですが、そういう慣わしが伝わるようになったのも琉球王国が廃藩置県で沖縄県となった頃からのようで。それ以前はどうも那覇手も首里手も、泊手もなく、それぞれの先生がサンチンを教え、ナイファンチを教えるという風で同時に学ぶということがなかっただけで、個人が別の型を学ぶことはあったようです。

剛毅會がサンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行うのは私の先師が決めたようですが、よくできた順番だと思っています。どこからやっても構わないはずですが、私の感覚的に手っ取り早く喧嘩に強くなるにはナイファンチだと思います」

──喧嘩に強くなるには、ですか。格闘技と武術は別ですが、武術に喧嘩は含まれると。

「格闘技と武術が別であるように、喧嘩と格闘技は別物です。全く違います。実は最近はMMAで勝つために喧嘩のトレーニングを取り入れています」

──喧嘩のトレーニング? 喧嘩はルールなき実戦ではないですか。そこを練習に採り入れるというのは?

「まさに今、喧嘩にルールはないと言われましたよね。つまり、そういうことなんです。喧嘩と格闘技の違い。喧嘩と格闘技は時間、速度が違います。格闘技は強くなればなるほど、スポーツ化していきます。スタミナの配分やジャッジの判定基準を考えるようになり、喧嘩における暴力性と相反する要素が必要となってきます。

喧嘩って本気なんです……本気というか、躊躇ない。躊躇していると、やられます。ヨーイドンがないわけですから。その根底には怒りや恐怖が存在しています。ただし格闘技は本能の発動がないのに戦闘をしないといけない。練習を見ていてもそうですが、人間の
精神は、憎くもない相手を簡単に殴るようにはできていないです。

それが海外の選手なんかは金が掛かって、より良い人生を手にするためには迷うことなく惨たらしいことがちゃんとできます。国内にもいるかもしれないですが、少なくとも私が関わってきた選手たちは、そういうことが不慣れな人間です。松嶋こよみは、まだ全然殴れるほうです。特に若いころは躊躇がなかった。そんな彼でもデビュー当初はボコボコに殴れていても、キャリアを重ねるとそうでないようになってきます。

もちろん、MMAに勝つためにはスタミナ配分も、ゲームプランを実行することも大切です。だから、殺傷能力だけでは勝てない相手と戦うようになると、自ずとボコボコと殴ることがなくなってきます。あるいはより凄い相手に殴られて、イップスのように以前のように殴ることが出来なくなるケースもあります。

よって練習の時にも、石ころを持ってぶん殴ることをイメージさせます。でも、石ころを持ってぶん殴るって殺意のある行為です。剣術や空手が格闘技と違うのは一太刀、一突きが本気でなければ意味がないということなんです。本来、剣術や空手は本気で殺めに来る人間に対して、自分がやられないための手立てなので本気でないと意味がないんです。本気でないなら、出さずに一目散に逃げた方が良い」

──う~ん、なるほどです。MMAには相手を眼前にして様子見というファイトが存在します。

「ということです、ね。これはもうナイファンチの話ではなくて空手や型の基本稽古全般の話になってきますが、一つのジャブ、ストレートもどこに当たるのかしっかりと考えて練習できているのか。動作のための動作になっていないのか。そういうことを考える必要があると思います。シャドー、ミット、スパーリング、何のためにやっているのか。そこは常に問い掛けるべきで。

格闘技はウォーミングアップから始まり、徐々に体を動かします。マススパー、ライトスパー、そしてガチスパーと上げていく。対して、試合はウォーミングアップからガチンコへ行く。そのガチンコが一瞬の交錯で勝負がつくというものじゃない。そうじゃないですか?  しっかりとマネージメントしないと勝てない。結果、闘争と格闘技が乖離してしまう一面が見られます」

<この項、続く>

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Bu et Sports de combat MMA サンチン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 松嶋こよみ 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─18─サンチン、MMA実戦応用編─03─

【写真】サンチンのこの回転する動きを練ることで、内面の攻撃を可能とする(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、MMA実戦応用編=最終回、MMAでの役立ち方について紹介したい。

<サンチン解析第17回はコチラから>


外面の攻撃と内面の攻撃、後ろ蹴り編

外面の攻撃

往々にして見られる後ろ蹴りは


腰の回転でエネルギーを作っており外面の攻撃となる


外面の攻撃は回った際に左パンチを被弾したり


組みつかれるなど反撃を受けやすい


蹴りが命中することも当然あるが、危険性の高い攻撃になる


実際に押されるだけで、姿勢を乱す=回っている時に中がとれていないため

内面の攻撃

対して内面の攻撃の後ろ蹴りとは


内払いから背中を見せるが


このときに中に入っているので


これだけの距離で


カカトで蹴るだけで十分な威力があり


相手の反撃を受けない


相手が入ってこられないので押されることも、パンチを当てられることもない

ここでの回転も、サンチンに身に着けることができる──詳細は第6回を参照──

回転が浅いと


相手の中を取ることできないので蹴りは内面の攻撃とはならない


中を取るために、サンチンの型で知る回転の仕方が必要になる


サンチンの動き自体が、回転してヒジを打つことが想定されている。サンチンではヒジを中段にいれるが、もちろん上段にも生きる

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Bu et Sports de combat GLORY K-1 LFA MMA UFC アレックス・ポアタン・ペレイラ アンドレアス・メケイリディス イスラエル・アデサニャ キック ギガ・チカゼ ジョゼ・アルド ボクシング 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的観点で見るMMA。ポアタン✖メケイリディス「二段跳びヒザは当たる」

【写真】右から左の跳び二段ヒザ蹴り、見事なKO勝ちを収めたペレイラ (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たアレックス・ポアタン・ペレイラ✖アンドレアス・メケイリディスとは?!


──アレックス・ポアタン・ペレイラ✖アンドレアス・メケイリディス。ペレイラはGLORYで世界ライトヘビー級とミドル級の2階級を制した正真正銘、世界の頂点に立ったキックボクサーからMMAへ転向を果たした選手です。キックの道を究めた人にとって、MMAはなかなか難しいと思うのですが、この試合を見てその辺りを武術的に探っていただきたいと思います。

「GLORYの重量級で世界チャンピオンということは、本当に世界のトップですね。MMAはいつからやっていますか?」

──もともとは2015年や2016年に3試合戦い、2勝1敗でした。その後はキックに専念して、イスラエル・アデサニャにも勝っています。GLORYの了解を得て、世界王者でありながら昨年11月にLFAでMMAを戦い、今年の3月にライトヘビー級王座を失いました。そしてUFCにデビューしています。

「ペレイラのキック時代の映像を見たことがないので、なんとも言えないのですが、立ち技格闘家は倒す……効かすタイプとマネージメントするタイプに分かれます。魔裟斗選手とか、RENA選手はマネージメントタイプです。ムエタイも5Rを通して戦うマネージャーで、古くはK-1だとピーター・アーツがマネージャーでした。アーネスト・ホースとはどっちでも戦えます」

──さすがミスター・パーフェクトです。

「ハイ。そしてミルコ・クロコップはマネージメントが下手でした。だからMMAにミルコを送り込んだ石井館長は素晴らしいです。当時、MMAの打撃系の選手のなかで、立ち技競技で成功していたのは……モーリス・スミスを例外にいなかったです。

まぁ15年や20年も前の話ですし、今ではMMAの情報が氾濫していて、技術体系も整っているので無防備にMMAを戦うことはないですから、ギガ・チカゼのような選手もいますよね。しかし、ペレイラに関してはブラジルですし、ブラジルのキックがテクニカルだとか、強いというイメージはなかったですね。

いずれにせよ、ペレイラは試合開始早々から先を取っていました。メケイリディスは物凄くペレイラの蹴りをビビっていたからです。重心も後ろに下がってしまって。もうMMAというより、異種格闘技戦になっていました」

──メケイリディスは組んで倒して勝つ、それしかなかったと思います。

「ところがメケイリディスは、1Rはテイクダウンからバックコントロールして終えたのに、2Rになるとキックボクシングを始めてしまうんです。なぜ、1Rと同じようにしないのか。初回に組んでコントロールして、疲れてしまったんでしょうね。それでガムシャラにテイクダウンに行けなくなり、タイミングを見てなんて思い……キックをした。

しかし……なぜ、相手の嫌なことをしないのか。MMAだからって、キックの世界王者に対して打撃をする必要はないです。MMAの前に、まずは闘争であれ。つまり、相手の嫌がることをするわけですよ。そこをちょっと見落としているんじゃないかなって感じます。メケイリディスは打撃が苦手だから論外ですけど、自分の得意技で勝負するといっても相手が平気だったら、そこで勝負して勝つ確率は上がるのかということです。

ペレイラからすると、メケイリディスが組んでも背中をつけずにバックを譲る形で凌いだ。そして、2Rにチャンスが到来して倒しきった。大したものです。フィニッシュは二段跳びヒザ蹴りでしたが、普通のヒザ蹴りと違い時間差攻撃になるので、とても受けづらいです」

──WEC時代のジョゼ・アルドのカブ・スワンソン戦が思い出されます。あの時、ジョゼ・アルドは左から右と両方を当ててKOしました。

「二段蹴りは本当にMMA向きのヒザ蹴りです。でも、それは決して最初の足がフェイントになって、後ろが当たるということではないんです」

──そうなのですかっ!!

「ハイ。左で誘って右で蹴るということではなくて、両足で蹴ることができる。まさにジョゼ・アルドが決めたモノですね。左足で蹴るとなると、右足を軸にして左で蹴ります。ということは、右足は居着いてしまっているんです」

──なるほどぉ!!

「それが左、右と蹴ると両足で蹴ることになるので、居着いていない。つまり体の連動が止まらないんです。空手には夫婦手という原理原則がありますが、そこと同じです。特にMMAにおいては、遠間から蹴るイメージがありますが、短い距離でも十分に使えます。左足で蹴っても、右足が居着いていたら──そこに残っていて、キャッチされ倒されやすいです」

──一見、両足だと空中で姿勢を変えることができず危なそうなのですが、違うのですね。

「二段のヒザ蹴りをしている選手のことは、実はキャッチできないです。そして、不思議なことに二段蹴りは距離が合いやすい。軸足を作って片足で蹴る場合は距離が合わないと、パンチを合わされたり、組み倒されたりします。絶対とは言えないですが、ほぼほぼ二段蹴りは相手が反応します。つまり受けに回っているので、距離が合うんです。

なぜか……それは明確には分からないです。ただし、二段蹴りの先を取ることが大変なんだとは思います。二段蹴りが始まった時点で、先を取られています。1本目を抑えていないと、先は取れない。これが左ミドルであれば初動、起こりが分かりますよね。

ただし二段蹴りの1本目は、なかなか先が取れない。そういう意味では時間差攻撃としても二段蹴りは有効で、跳ばなくてもレパートリーにしておきたい技です。当たらなくても、反撃を食らう可能性は一つのヒザ蹴りよりも少ないですから」

──いやぁ、興味深いです。

「攻撃には内面の攻撃と外面の攻撃があります。例えばこの試合でも、ペレイラは蹴りを出していないけど、蹴りを出している。メケイリディスは出ていない蹴りに反応していまいた。それは無防備と同じことなんです。もう受けに回っているので、ペレイラからすれば何でもできます。

だからペレイラがUFCという途轍もない世界で今後も活躍できるのかといえば、今回はあまり見せなかったパンチがどうなのか……ですね。キックボクサーがボクシンググローブで培ってきたパンチを、MMAグローブの攻防にアジャストするのは時間が掛かる場合があります。MMAグローブは既に近いので。それをペレイラが、いかに埋めてくるのか。

加えてペレイラが組みに対応しても、それは対応した時点で相手が先をとっていることになるので、自分の戦いをするには組ませないことです。MMAの選手は、現時点では蹴りにまだハマりやすいですし、これからペレイラがどうなるのか。打撃でなく、組みに対するストライカーの戦い方をどうモノにするのか。そこは見ものです」

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Bu et Sports de combat イアン・ギャリー ジョーダン・ウィリアムス ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ギャリー✖ウィリアムス「負けて頂き有難う」

【写真】相手の自滅で勝つ。自らの自滅で負ける。自らの技量が勝つ、自らの技量で敗れる。これが勝負事は表裏一体で、前者の方が多いのかもしれない (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たイアン・ギャリー✖ジョーダン・ウィリアムスとは?!


──アイルランドMMAの未来、イアン・ギャリーのUFC初戦でした。

「序盤、対戦相手のジョーダン・ウィリアムスが良かったです。ウィリアムスが距離を取ってカウンター狙いで、そこのギャリーが入れなかった。そこに入っていくと、やられるからローを出すとかぐらいで、あそこから何があるということではなく、何もできないからアレを出す。そして前に出ることができていなかったです。

この試合を見る限りでは、ギャリーもカウンターファイターなのかと思いました。そういうなかで後の先を取ったのはウィリアムスだった。つまり先の先を取るパンチがギャリーになかったということですね。

ギャリーの方がリーチが長いのに、入ることができていなかったですから。自分より小さな選手にカウンターを合わせるのは上手いかもしれないです。結果的に勝ったのもそういうカウンターの右ストレートでしたから。

両者の質量はそれほど変わらないのですが、序盤はウィリアムスが間を制していました。そして先を取っているのもウィリアムスです。先の先、後の先だろうが先を取らないと当てることはできないわけで。ウィリアムスもカウンター狙いで、自分から攻めているわけではなかったのですが、後の先を取っていたことになり、ギャリーは先の先を取っていないから入れなかった。前に出られなかったです」

──そのように序盤は優位だったがウィリアムスですが、なぜ組んでいったのでしょうか。そのままでも良かったのに、組んで行ってからペースを失っていったように感じました。

「あれですねぇ。なぜ、あの流れで組むのかは理解できないです。考えられるとすれば、あの短時間で疲れてしまったのか、打撃戦を続けることに。あそこで組みに行くって、メチャクチャですよね。体を入れ替えられて、テイクダウンも取れなかったわけですし。

あのクリンチの展開から、打撃に戻った時にはウィリアムスの質量はメチャクチャ落ちていました。その状態で自分から打ちに行くという武術では絶対にしてはいけないことをやり、ギャリーがカウンターの右を合わせてKOしました。言ってしまえば、そういうことです。クリンチの展開の前と後の違いは何だ、と。あんなに風になるのは、バテてたからとしか考えられないです。あの短時間で。

まぁ武術的に見れば、序盤の打撃戦で先の先、後の先を考えるなら分かりやすい試合でした」

──UFCの初戦は力が発揮できない。UFCジッターという言葉があります。

「緊張してしまうのですね。これまで通りの試合が、UFCという場で期待値が増すとできなかった。それはやはり再現性がないからです。とにかく指導者の役割とは、色々な個性のある選手たちに対して原理・原則を徹底して練習させることだと思うんです。

スパーリングを5Rとか、7Rしたという練習で選手たちは達成感があります。ただし、それで試合の準備になっているのかということなんです。試合から逆算して考えると、イアン・ギャリー陣営としてはUFCジッターという事例が以前に存在しているなら、そこも引き算して準備をしないといけない。

試合の準備って、本当に引き算が多いです。ただし、足し算でやってしまうことが多々あります」

──高く見積もってしまうわけですね。

「そんなことできないですよ。本来は。指導中の指示、セコンドの指示、そこは本当に考えないといけないです。『ローでも良いんだよぉ』なんて言われても、『じゃあ、何でも良いだろう』ってなっちゃうじゃないですか。その指示の意図はどこにあるのか、そこをしっかりと考える必要があります。

話をギャリーに戻すと、それでもアレだけ攻められても、しっかりとKO勝ちしている。それはウィリアムスが自滅したから。だから、勝ちにつながった。MMAって、そういうことが多いです。勝負ごとは」

──確かに、相手が自滅した。相手が勝たせてくれた。この連載中によく聞かれる言葉です。

「勝ったからといって浮かれるのではなく、相手に対して『負けていただきありがとうございます』という気持ちで試合後を過ごしたいですね。もちろん、ケージの中で嬉しさを表すのも勝利者インタビューで威勢の良いことを話すのもありです。ただし、そこから一歩下りれば、相手が負けてくれたという想いを大切にしたいと思います。自分自身のために。

勝負って強いから勝つより、相手が負けてくれることが多いです。ここは本当に試合の真理で。ウィリアムスがバテた。だからギャリーが勝ったなんて、何にも面白くない結論ですよ。でも、そこにリアルがあることを見つめないといけないんです。

選手たちは勇敢で、勝つ気満々でいても、そこは早く家に帰って寝たいという気持ちと常に裏腹です。そこを捉えて、指導をしなければならないです。相手だって帰りたい。自分だって帰りたい。そういうなかで折れないことが大切なんです」

──疲れたウィリアムスが自滅し、ギャリーは勝たせてもらったと。

「それでも、ああいう最後の技を持っている選手がどれだけ日本にいるのか。そこを考えると、ギャリーは最後の右を正確に使っていました。アイルランド、英国系は拳闘に強い。UFCジッターがあったかもしれないし、ウィリアムスは序盤が良かったのに、疲れてダメになったのもあります。それでも、アレを使って勝てるのは……練習環境から、何かあるのでしょうね。次も見てみたい選手です」

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Bu et Sports de combat MMA UFC アンドレ・イーウェル クリス・グティエレス ピエラ・ロドリゲス 剛毅會 岩﨑達也 武術空手 海外

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。グティエレス✖コラレス「答が必要」

【写真】今回は定位置で養成されたパワーを繰り出すことはできなかったグティエレス (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たクリス・グティエレス✖フィリップ・コラレスとは?!


──グティエレスは移動のパワーでなく、定位置でエネルギーを養成することができる珍しい選手だということでしたが、今回はコラレスの蹴りの前にその良さが出せていなかったように見えました。

「結論から言いますと、グティエレスはコラレスをビビっていました。ただし、蹴りに対してではないです。パンチが怖いから、下がってカウンターで倒そうとしていました」

──蹴りで養成したエネルギーを出す機会を奪われたのではなく?

「コラレスの蹴りは、足でペチャンって出しているだけで威力はないですよね。あれは効かないです。拳(ケン)にチンクチが掛かるかのように、蹴りも爪先やカカトという先端部分までエネルギーが伝わっているかどうかで、威力も決まります。

コラレスの蹴りは当たった時に足首から先がプラプラァとしていて、体のエネルギーが爪先まで伝わっておらず、質量が低い蹴りなんです。ですから、効かない蹴りよりもコラレスの前進してからのパンチを嫌がっていた。コラレスもパンチでいけば良かったのですが、カウンターのパンチを嫌がっていたのかもしれないです」

──ともあれグディエレスがアンドレ・イーウェル戦で見せた定位置でのエネルギーの養成もなかったということですね。

「定位置でエネルギーを養成するという部分では、止まった位置で力を創っているのですが、それを運ぶという作業、エネルギーで前進するという点ではピエラ・ロドリゲスの方が上です。そして今回の試合ではただ単に下がってしまっていました。だからエネルギー云々という部分では、グティエレスは話にもならないです。

コラレスの方が質量が高くて、そこに対してただ下がる。それは無防備で下がっている危険な行為です。選択したのが、下がって一発狙い。結果、決して褒められた前進ではないコラレスを勢いづけています。その前進により、コラレスの質量は上がっていました」

──それでもグティエレスが2-1の判定勝ちを収めます。

「それがもう分からないです。1Rと2Rはグティエレスがどう勝とうとしていたのか。3Rはもうコラレスが疲れたのか、右を打たれてからはグティエレスの試合になりました。でも最後の30秒か、言ってみると10秒の間だけです」

──岩﨑さんの見立てだと29-28でコラレス。同じ裁定のジャッジが1人いました。ただ、残りの2人は30-27なんです。

「30-27でグティエレスというのは……それはもう全然分からないです。明確なのは3Rですけど、あのラウンドのグティエレスは良かったんです。ただし、1Rと2Rのカウンターを取りに行った作戦は失敗です。カウンター狙いが逃げになっていたので。それでもグティエレスになるのは……分からないです。

そして定位置でエネルギーを養成できるというのも、そこには法則性がなかった。でも法則性があっても、相手や自分のコンディションで発揮できないことは多々あります。それに定位置でエネルギーを養成していることを指導者が良いと判断していないと、続けられることもないです。

だから私は選手が型をやる必要はないと思っています。でも指導する側は私の場合は型ですが、なぜこうなったのかという答が必要なんです。答を持っているのかどうかで、指導は変わってきますからね」

──と同時にこの試合でグティエレスは勝った。なら指導は間違っていないという見方が成り立ちます。

「勝てばハッピーです。それはコーチも。と同時に、ダメだったところは洗い出さないといけない。試合は勝つためにやります。なので武術の本質をそこで取り入れ、追及することで負けてしまっては何もならない。

明確にジャッジの裁定基準が、空振りでも手数を出して前に出ていると勝てるのであれば、私も試合ではそうさせます。試合は勝つために戦うものなので。そのなかで前進すれば勝てるけど、前進するリスクと危険性を指摘できるようでいたいです。

そのうえで前進して、試合に勝たせに行きます。空振りでも評価されるなら、空振りもさせます。勝つことが一番大切なことですから。それが武術と競技の違いです。だから武術の叡智を生かすのは、テクニックや動作だけではない。これだけ厳しい競技をやっているなかで、自分の持っている武という部分からも、その過酷さを説き、精進させることだと思っています。

武術とは生きる、死ぬというなかで生まれたものです。生死が掛ったところの深刻さから生まれた叡智を格闘技で生かすというのは、そういうところでもあるはずです。だから辞めるなら辞めれば良い。そんなことしないでも格闘技の試合は出ていけます。でも、UFCだ、海外だっていうのなら、それぐらいの気持ちでないとあの連中を相手にして、やり合うことはできない。

私は競技をやってきたけど、殺し合いは経験していないです。だから武術を勉強するんです。

武術をやっていない人間だって、実社会でえげつないことを平気でやっています。それはルールがあって、時間があり、審判がいる格闘技とは比べモノにならない、残酷なことをやります。その残酷極まりなさを考えることで、戦わない平和を追求できると思います。実社会は性悪説のえげつないところです。武術はそういう場で、平常心でいられるよう鍛錬するものです。海外で、UFCで勝つという目的を持った馬鹿者には、武術の叡智が5分✖3Rの戦いで生かせることができればなと。それは男の浪漫。格闘浪漫です」

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Bu et Sports de combat グレゴリー・ホドリゲス パク・ジュンヨン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ホドリゲス✖パク・ジュンヨン「自己否定」

【写真】乱打戦になった幾重もの要因を突き詰めていく──と (C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たグレゴリー・ホドリゲス✖パク・ジュンヨンとは?!


──ホドリゲスはLFAからUFCと当企画で追ってきた選手です。LFAのミドル級選手権試合ではジョシュ・フレムドを「UFCへ行く」という高い意識を持って戦い右ストレートでKO。2週間後のUFCデビュー戦ではドゥスコ・トドロビッチからマネージメント力で判定勝ちを収めました。

「ホドリゲスはスタートの段階で、ペースを完全に創っていてパクが完全に吞まれています。その一方でホドリゲスは構えが良くなかったです。試合前のインタビューで『攻め過ぎてパンチを被弾するようなミスはもうしない』と慎重に戦うようなことを口にしていましたが、効かせた後に攻めたことが悪いのか──攻め方が悪かったのではないかと、この試合を見て思いました。

正しい攻めをしていれば、逆転されることはなかったでしょうし、そこも良い・悪いよりも、自分の攻めがどうだっかをしっかりと検証できているかどうか。一番大切な部分だと思います」

──しかも、慎重に行くと言っていた割には途中でパンチを被弾して、危ないシーンもありました。

「ハイ。落ち着いてペースを握って、試合をドミネイトしていく気概にパクは下がっているんです。

ただし、パクはこういうホドリゲスのようなブラジル人選手ともまた打ち合おうと前に出ることできました。ただし、そのケースで結果がどうなってきたかはもう過去の試合を振り返るまでもないです。

欧米人の100パーセントに対し、アジア人が自分の100パーセントでぶつかっても勝てない。だから相手の100パーセントを90パーセント、80パーセント、70パーセントと下げさせる工夫が必要です。自分の100で相手の100には対抗できない。あの勇敢さは素晴らしいですが、勝てないという結果が残ります」

──と同時にプロモーターが望む試合になっています。

「そこはもう私の関与できるところではないので(苦笑)。私の役目は弟子を勝たせることですから、そういう見方はできないです。ただ、そういうプロモーターに歓迎される試合になるのも、韓国人選手は相手の100に対して、自分の100をぶつけることができるからでしょうね。

これが日本人選手の場合は、相手の100が強大だと自身の100が90、80パーセントと自分から落ちて行ってしまうケースが多かったです。日本人同士の殴り合いで勝てた選手が、外国人選手と戦うと打撃戦にならない。自分の拳が強いのではなく、相手の質量が低いところで勝ってきただけなんです。

だから外国人選手と向き合うと、自分の100パーセントを出せない。これは少し話が飛躍しますが、KO負けのトラウマから、攻めることができなくなるケースがMMAでもあるじゃないですか」

──ハイ。イップスですね。

「それを弟子と話していて。どうすりゃ、イップスから逃れることができるか……他のスポーツは分からないけど、殴り合いにはその解決方法があるっていう話をしていたんですよ」

──どのような解決策が存在しているのですか。

「両手に石ころを持つんです」

──へっ?

「両手で石ころを持った時点で、イップスは直ります」

──……。

「もちろん、試合でやると反則です。イップスの選手は練習でも、当てることはできなくなっているかと思います。それに実際に石ころを掴む必要はないです。そのイメージを持つ、それだけで変わるんです」

──そうでないと、試合で石ころを握るわけにはいかないですし。

「つまり石ころを握っている──そういうイメージでいると、質量を下げないで戦えるということなんです」

──ただし韓国人選手の多くは、その必要がなく殴ることができると。

「その通りです。もともとが欧米人の満点が100点だとして、満点で90点しかないパンチを日本人選手は60点まで自分で下げてしまう。でも韓国人選手は90点のまま戦えます」

──ただし相手が100点の場合は、90点では勝てない。

「ハイ。だから面白いモノです。彼らが相手の100を90、80と下げる戦いをして、自分の90の力でいけば結果も残ると私は考えています。相手のパンチを90を落とす工夫があれば。

石ころを一つ握って殴るイメージを創る。そのためには選手も、指導者も今まで通りでないということを踏まえ、考えて稽古をしないといけないです。拳の握りから、パンチの打ち方、ミットの受け方。石を一つ握るだけで、握らないパンチとは違うわけですから。

イップスだと思われている選手が、これまでと同じ練習をしていても直らないように、外国人選手と殴り合うには、考えて練習、そして指導をしていかなければならない。それにはまず自分のやっていることを疑うこと。この自己否定が、あまりないですね。

自己否定しないと、伸びないです。強くなるには自己否定と自己破壊は欠かせない。つまりは、今の状態はどうだろうって考えることなんです。

なんだか安心するための練習が多いように感じます。それで良い人もいます。と同時に、UFCだ、海外だっていうなら練習は自己否定、自己破壊。MMAって他のスポーツと比較にならないぐらい残酷な格闘技をやっていて、気持ちの良い練習や安心するための練習では絶対に欧米人に勝てない。今のままで良いわけじゃない。そういう練習ができない臆病者がオクタゴンで戦えるとは思えないです」

──……。

「そういう部分も踏まえて、このホドリゲスとパクの試合を見なおしてほしいです。2Rにパクがパンチを振るってテイクダウンへ行く。もうケージ際でガードも、何もない打ち合いをしてホドリゲスが組みに行った。ここでダブルレッグをパクは切って、がぶります。

あそこでギロチンなんか仕掛けない方が良かったですよね。ホドリゲスの方が寝技は強いのは1Rで明らかった。あれだけ見事に攻められていたのに、テイクダウンを切ってスタンドに戻らなかったのはパクの失敗です。加えて、なぜかホドリゲスもバックグラブに入ったのに自らフックを解いて試合はスタンドに戻りました。

で、また殴り合いから先に組んだホドリゲスが、見事に払い腰を決めた。ここでもホドリゲスはバックに回りながら、寝技に固執しない。立ち上がって胸を合わせたパクが打ち合いにいきます。

ホドリゲスはパンチは重いです。本当に重い。だけど打ち方も悪く、相手とのやり取りの中でぶん殴り合いが良くない。ぶん殴ることは悪くないが、ぶん殴り方が悪い。結果的にパンチの重さで、倒しましたが危ない試合でした。

ホドリゲスは押すパンチになっていましたね。組み技の選手に多い打ち方ですね。拳銃なんかも打った勢いで、弾は貫通します。当たってから力を入れるのではなく。そういう押す打ち方をイチ・ニ、イチ・ニというリズムで打っているだけで、連打という回転運動にもなっていない。だからパンチを被弾してしまう。パンチの打ち方が悪いのに、パンチを打っている。パンチを打つことは悪くないですが、パンチの打ち方が悪い。

それでも前腕に力があり、パンチが重いです。本来は前腕に力のある人は、力んで威力のあるパンチが打てなくなります。それがホドリゲスは良い具合に疲れていて、力が入らなかった。結果的に力が抜けたリラックスした状態でパンチを当てることができました。打撃の質でいえば、どちらが勝ったか分からない試合でしたが、アレは食らえば重いです。

今後、ホドリゲスにしても、この試合で勝ったことでより上の相手と戦うことになるでしょう。そうなると彼のパンチが当たっても倒れない選手も出てくるでしょう。しっかりと打ち方を見直した方が良いと私は思います。これじゃ相手は倒れない。そういう自己否定が必要です。勝った試合直後だけに。

選手にとって一番大切なのは目の前の試合に勝つことです。そこをクリアしたからこそ、ここで自己否定──自分を見直す向上心があれば、この選手はもっともっと強くなれる、もっと怖い選手になれるはずです」

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Bu et Sports de combat LFA ピエラ・ロドリゲス ブログ ヴァレスカ・マシャード 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ロドリゲス✖マシャード「法則性と再現」

【写真】UFCとの契約に向けて意識の高さと、重心のコントロールに良さが見えたロドリゲスだが、前回の試合のようにエネルギーで前進するという動きはできていなかった (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たピエラ・ロドリゲス✖ヴァレスカ・マシャードとは?!


──ピエラ・ロドリゲスが4月にLFA女子ストロー級王者になった試合で、岩﨑さんは『ロドリゲスは前進した時に質量が上がる。エネルギーが出ている移動。それがなくて前に出ると相手のパンチを被弾するだけ。しかもロドリゲスは前進してエネルギーを伝えるのではなくて、エネルギーで前進していて参考になる選手』と言われていました。今回の試合では、そのエネルギーで前進するということができていたのか。

「結論として、なかったです。今回は重さのロドリゲスと前進のマシャードという試合でした。ただロドリゲスはパンチを打つ際のヒジの角度が良かったです。MMAグローブで戦う上で理想に近い打ち方でした。

クロスレンジという打ち合いのなかで、有効なパンチでした。ただし、そこを狙い過ぎていた感がありました。その狙い過ぎが影響しているのか、エネルギーで前進するということは今回の試合ではなかったです。

そして試合は前進している方が有利になります。マシャードという選手はまるで知らなかったのですが、コンテンダーシリーズという一発勝負のオーディション番組で、もう殺るか殺られるかという意識でまず戦っています。

そのなかでロドリゲスは最初、頭の位置が後ろで。顔面攻撃のある試合で、相手が前に出てくる。それなのに頭の位置が後ろにあると、もう下がるしかできなくなります。いきなり受けに回っており、最悪の姿勢といえます」

──ハイ。

「ところがロドリゲスが1Rの中盤にワンツーから3発目の右クロス──返しの右を当てて、ダウンを奪います。この選手は重心のバランスがある。自分でコントロールしていましたね。ただし今回の試合もLFAのタイトルマッチもロドリゲスは激闘になっています。そこをどう見るのか。工夫して、一方的な試合にしろというのが本来の格闘技の捉え方だと思いますが、このオーディション番組では激闘が喜ばれ、慎重に戦うと評価されないという背景がありますよね。

だから今のトレンドでもある蹴りの距離にならないのか。蹴りがとにかくなかったです。上と下の連動が2人ともなかった。あの距離だからテイクダウンにも入りやすかったですし、ちょっと以前のようなMMAに感じましたね。

ただ、それでも蹴りは使えますが、そのような練習環境にないのかもしれないです。まぁアグレッシブネスが最重視されているということなんでしょうね。距離を取って脹脛の蹴り合いだと、契約してもらえないと」

──その通りですね。

「良い試合だった。良かったねぇということが一般的になってきて、そこから反省をするというのが難しくなっていると思います。私の場合は空手を教えてくれる先生が、自己否定から入る方でした。それはもっと良くなると信じているからこその裏返しなんです。

ロドリゲスがそういう環境にあるのか。ただし、ロドリゲスには『この人に殴られたくない』っていうパンチがあります。簡単にいえば魅力的です。打撃の質量に関しては、1Rの中盤から3Rまで通して、ロドリゲスにありました。

結局のところは、その使い方なのでしょうね。良いのに、なぜか攻められるという……」

──途中で足を負傷したというようなことを試合後のコメントで口にしていました。

「あぁ、そういうことですか。それでもUFCに行くために、アレだけ戦ってしまう。凄いですね。凄い話です……」

──そこに前回の試合のように、エネルギーで前進することが常にできれば、と。

「前回の試合でエネルギーで前進できていたことが、再現できない。それが格闘技の特徴です。再現性がない、確認が試合でしかできていないからです。前回はデキた、今回はデキなかった。技術的なことではなく、そこがエネルギー的なモノであると結果論で判断するしかない」

──対して武術には……。

「ハイ、型があります。型があればなぜ、それができなかったのか。なぜ、できたのかという要因が分かります。型には法則性があるので。ただしロドリゲスの前回の試合と今回の試合をみると、法則性がないので再現できない──という風に結論づけることはできます」

──この日はデキた。次の日はデキなかったと。

「ハイ。自転車が乗れる日と乗れない日があっては、自転車レースには出られないです。法則性があれば自転車に乗れない日はなくなります。そこが何度も言ってきましたが、武術と格闘技の違いになります」

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Bu et Sports de combat MMA サンチン 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─17─サンチン、MMA実戦応用編─02─

【写真】武術の叡智をMMAに使う。武とスポーツ格闘技の接点、融合が生まれる(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、MMA実戦応用編=第2弾としてサンチンで身に着けることができるMMAで有効な内面の攻撃について紹介したい。

<サンチン解析第16回はコチラから>


外面の攻撃と内面の攻撃

右ストレートを左手で払い


右を打ち返す


しかし左を打たれる。相手の外で受けて外で返しても、また外から攻撃を受ける


あるいはウェービングで避けても


左フックを返そうとしても、ヒザ蹴りを受ける

「これらの自身の中心がズレる動きは、外面の攻撃になります。自分の中心をずらして、反撃をする場合は相手の間にいることが多いです。結果、反撃を受ける。MMAで戦ううえで止む無く、こういう動きになることはありますが、自分が動いた結果、どのような反応を相手がするのかを考える必要があります。対して、武術空手の理を取り入れると外面ではなく内面の動きを重視することになります。つまり一番安全な動きは直線の動きになります」(岩﨑)

内面の攻撃とは、相手の突きに対し


軸をずらすことなく


腕受けをした時には、もう中に入っており


突きを真っ直ぐ返し相手の攻撃を被弾せず、自らの突きだけ当てることができる。「中に入って、さらに中に入る」のが内面の攻撃となる

※ただし内面の技を使えず、ただ直線的な動きをするとカウンターを合わされる

この動きを習得すると、腕受けもなく中に入って


突きを当てることが可能になる

武術空手サンチンの型で知る、軸がズレない動き──呼吸を含んだ詳細は第5回を参照──

左足前サンチン立ちから


左足に重心を掛け


右足を出し


その右足に重心を乗せる。この動きでは軸がズレて、外面の動きになるので相手の中を取ることはできない


このような外面の動きからの突きは、相手の中に侵入できない


武術空手のサンチンでは


相手に中を取るために可能な限り軸を動かさず、中を入って


前に進む。内回しで外側に膨らまずに中を進むことで、内面の動きとなる


結果、同じように受けて突いていても、相手の中に侵入できる突きになっている

「内面の攻撃は見た目は分からないが、サンチンによって動きを自身にインストロールできれば、中に入る動き実戦できるようになります」(岩﨑)

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