カテゴリー
45 AB ADCC2022 CJI MMA MMAPLANET o ONE ONE169 UFC YouTube   アドリアーノ・モライシュ アナトリ―・マリキン アニッサ・メクセン アフメド・ムジタバ アミール・アリアックバリ アンドリュー・タケット アンドレ・ガルバォン ウマウ・ケニ・ログログ キック ケイド・ルオトロ ゴントーラニー・ソー・ソンマイ サムエー・ガイヤーンハーダオ ダニー・キンガド ボクシング マカレナ・アラゴン マーカス・ブシェシャ・アルメイダ リーヴァイ・ジョーンズレアリー ルンピニー ロッタン・シットムアンノン ヴァウテル・ゴンサウベス 三浦彩佳

【ONE169】2度目のMMAへ。ケイド・ルオトロ「次にやってくる波は、失われた柔術の技だよ。それが……」

【写真】緊張しているようには、感じられたなかったケイド。インタビューでは、それを見せないだけかもしれないが──とにかく興味深い話が聞かれた(C)ONE

9 日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催されるONE169でケイト・ルオトロが2度目のMMAに挑む。
Text by Manabu Takashima

アフメド・ムジタバと相対するケイドは、8月にCJIを制し100万ドルを獲得。ADCC2022の優勝に続き、この惑星で一番のグラップラーであることを示した。グラップラーが競技で食っていける時代を突き進むケイドが、1億5000万円を獲得した3カ月後にMMAを戦う理由とは。

そして意外な師弟関係にあるエリック・パーソンについて尋ねた。


僕は頭のネジが外れてしまっている

──今週末、アフメド・ムジタバと2度目のMMAを戦います。今の気持ちを教えてください。

「凄くワクワクしているけど、少し緊張しているかな」

──ナーバスになっているというのは?

「いつだって試合前は、ある程度はナーバスになるものだよ。そしてMMAだから、柔術の時よりも緊張の度合いは強い。それでも、楽しみな気持ちの方が大きいけどね」

──もちろん今はムジタバ戦に集中しないといけないのですが、CJI優勝を振り返ってもらえないでしょうか。前回のADCCに続き、CJIの優勝はケイドが改めて世界一のグラップラーであることが証明されました。

「本当に特別な時だったよ。ADCC2022から今年のCJIまで、自分をさらに高めてきた。ただ、これまでのトーナメントで優勝した時のような清々しい気持ちにはなれなかったのも事実だ」

──えっ?

「ONEではタイもベルトを持っている。WNOもそうだ。2人でベルトを巻いた。CJIではタイは不運にもヒザの負傷に見舞われて、決勝まで一緒に進むことがならなかった。確かに100万ドルを手にできたことは、凄いよ。本当に素晴らしいトーナメントだったしね。そこで最高の選手たちに勝つことができた。アメージングな経験になったよ。ただ、タイと優勝をシェアしたかった……」

──ADCCとは違い、同じ階級に出場をしました。決勝に両者が揃って進んでいれば、最後の1試合は行われなかったわけですね。

「そうだね。ファイナルはタイとシェアするつもりだったよ。ただ、タイが2回戦で負ったヒザのケガは酷くて、次の試合に進めなかった。最悪だよ。技術的にタイは僕と比べても……いや、この階級の誰よりも優れているんだ。でも、それが競技の怖いところで、最高の選手が色々なことが要因となって、勝ち上がれるわけじゃない」

──タイの負傷は残念でした。と同時にCJIではアンドリュー・タケットとの準決勝戦、リーヴァイ・ジョーンズレアリー決勝戦など、ケイドや若い選手がグラップリングを観賞用スポーツに昇華させたともいえます。

「そうだね。CJIのルールが、大きく後押ししてくれた。そして、参加選手の多くがただ柔術を戦うだけでなく、エキサイティングな攻防を仕掛けることの大切さを理解していた。退屈な柔術の試合をしていても、生きていくにはアカデミーを開いて指導をしないといけない。

でも柔術を戦って生きていくには、エキサイティングな試合をすることは欠かせない。皆、そういう試合を楽しみにしているのだから。アンドリュー・タケット、そして僕も相当にエキサイティングなファイターだ。その2人が戦ったのだから、試合はああいう風になるよ(笑)」

──CJIはグラップラーが競技生活で、生きていける道筋を創りました。そして100万ドルを手にしたケイドが、3カ月もしないうちにMMAを戦うというのは?

「MMAを戦う理由……、それはCJIが生まれる前からMMAを戦うことを決めていたからだよ。ただし、CJIは本当にタフなトーナメントで体を酷使し過ぎてしまった。ケガも多くて、9月のデンバー大会には出場できなかった。体調はかなり戻せたけど、部分的にはヘルシーでない箇所もある。今週末のファイトが、今年最後の試合になる。タイと一緒に体の回復に努めて、来年はもっと強くなって戻って来るつもりだよ」

──ケイドやタイのグラップリング戦を見るのが楽しみなのは、100パーセントのリアルファイトでシリアスな戦いにあっても、2人も楽しく戦っているように映るからです。その一方で殴りに来る相手と戦うMMAで、ケイドは楽しむという気持ちがあるのでしょうか。

「MMAと柔術は違うね(笑)。正直、それでも楽しもうと思っているよ。その恐怖を楽しむような感覚があるんだ。サーフィンで、とてつもないビッグウェイブに挑む時のようにね。そして、海に投げ出されるとサメが回りにいる。そういう危険な状況を欲している自分がいるんだよ」

──命綱なしにクライミングに挑むようなモノですか。

「それっ!! その通りだよ。MMAって、僕にとってそれに等しいんだ。相手は僕を失神させようと殴って来るんだけど、僕は頭のネジが外れてしまっているのか……そこをエンジョイしているんだ」

──そんなMMAを戦う時に、コーナーにエリック・パーソンの姿が見られました。UFCの前から日本で、30年以上前に戦っていたエリックはいわばオールドスクール・ガイです。もちろん今のMMAに適応していますが、彼の指導をケイドが受けているのが凄く不思議で興味深いです。

左にエリック。右にタイ。6月のMMA初戦のケイド陣営(C)ONE

「エリックは日本に30回以上行っていると言っているし、そうか……顔見知りなんだね。

凄いや、それって!! 僕がエリックに初めて会ったのは、5年ぐらい前かな。まだガキの頃だよ。当時の僕にとって、プロフェッサー・アンドレ・ガルバォンこそが最高であり、唯一絶対的な指導者だった。

でもエリックって、別モノなんだよ。彼は柔術も学んでいるけど、それこそ柔術が失ってしまったモノを持ち続けている。シュートレスリング、キャッチレスリングには僕らが目にしなかった技術が存在していた。

技術の変遷って、サークルじゃないか。ADCCでもレスリングが全盛で誰もがレスリングに懸命になっている時期があった。その前はレッグロックの時代だ。皆がレッグロッグを学ぶ必要があった。で、僕が想うには次にやってくる波は、失われた柔術の技術だ。それがエリック・パーソンのシュートレスリング、キャッチレスリングに残っている技術なんだよ」

──もの凄く興味深いですね。

「レッグロックを見てみようよ。昔のテクニックだ。ダーティーだと忌み嫌われて、誰もが忘れていた。でも、今では絶対に欠かせない技術になっている。20年の年月を経て、エディ・カミングスがレッグロックを極めまくり、その重要性を皆が再確認した。

エリック・パーソンが見せてくれたテクニックは、僕が見たことがないものだった。殺しの術というのか、もの凄く興味深いモノだったんだ。加えてエリック・パーソンはMMAの経験も豊富でパンチ、キックも含めて知識の宝庫といえる。何もかも知り抜いているよ。

なによりも人として最高なんだよ。本当のナイスガイで、このスポーツで出会ったことがない人間性の持ち主だ。そんなエリックだから、彼の教えを受けることを決めたんだよ」

エリックは聖水で僕の体を清めてくれ、十字を切り、オイルを焚いて……

──いやぁ、ケイドがそんな風にエリックのことを話してくれると、こっちまで嬉しくなってしまいますね。

「エリックって、一度見たことを写真に収めるように忘れることがないんだよ。本当に凄まじい知識量を誇っている。100万にも及ぶ技術を、シェアしてくれるんだ。彼のMMAの技術、知識、そして重ねて言うけど素晴らしい人間性が僕を助けてくれる。

実はあまり言ってこなかったけどMMAデビュー戦の前夜、僕はものすごく体調が悪化していたんだ。凄く寒気がして、血を吐きだすぐらいで」

──えぇ、そうだったのですか!!

「寒くて寒くて。父もどうして良いか分からなくて。咳が酷くて、息苦しくもあった。でも真夜中にエリックが部屋に来てくれた。エリックは聖水で僕の体を清めてくれ、十字を切り、オイルを焚いてマッサージを1時間もしてくれた。すると体の毒素が洗い出されたみたいになって、もう別人かのように回復したんだ。マーシャルアーチストだけでなく、彼はヒーラー(宇宙や生命のエネルギーを活用して、人々を癒す人物)なんだ」

──その話、皆が訝しく思うかもしれないですが……。今日は時間がなくて、私の話をすることはできないのですが、実はカリフォルニアで体調不良に陥った自分は、エリックに同じ癒されたことがあります。いやか、いつの日かケイドとエリックの対談をさせて欲しいです。

「おお、そうなんだ!! 絶対、その取材をやろうよ!!」

──ハイ。ただ今日は試合前のメディアデーで、時間も限りがあります。なので……2度目のMMAファイトでケイドは、何を見せたいのか話してもらえますか(笑)。

「まずベストを尽くすこと。キックもパンチも使うよ。そして、最後は僕のルーツ……柔術を駆使してフィニッシュする。対戦相手はレスラーで、柔術も茶帯か紫帯で危険な相手だ。KO勝ちもできるしね。テイクダウンの距離もグラップリングとMMAでは違ってくる。でも、僕だって打撃とグラップリングの融合を目指して練習してきた。しっかりと、仕留めるよ」

──さきほど、年内は今回の試合が最後になると言っていました。では2025年はどのような目標を持っているのでしょうか。

「来年はよりMMAに集中して、戦績を積み重ねていきたい。ただ柔術家としても、ONEのベルトを保持続ける。そしてADCCやCJIのような機会があれば、頂点を目指すつもりだ。それでもMMAで戦績を増やすことに、より集中したいと思っている」

■ONE169 視聴方法(予定)
11月9日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT

■ONE169 対戦カード

<ONE世界ヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] アナトリ―・マリキン(ロシア)
[挑戦者] ウマウ・ケニ・ログログ(セネガル)

<ONEムエタイ世界フライ級選手権試合/3分5R>
[王者] ロッタン・シットムアンノン(タイ)
[挑戦者] ジェイコブ・スミス(英国)

<ONEキックボクシング女子世界ストロー級選手権試合/3分5R>
[王者] ジャッキー・ブンタン(米国)
[挑戦者] アニッサ・メクセン(フランス)

<フライ級((※61.2キロ)/5分3R>
アドリアーノ・モライシュ(ブラジル)
ダニー・キンガド(フィリピン)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ゴントーラニー・ソー・ソンマイ(タイ)
タギール・カリロフ(ロシア)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ケイド・ルオトロ(米国)
アフメド・ムジタバ(パキスタン)

<キック・ストロー級/3分3R>
サムエー・ガイヤーンハーダオ(タイ)
ジャン・ペイメン(中国)

<ヘビー級/5分3R>
マーカス・ブシェシャ・アルメイダ(ブラジル)
アミール・アリアックバリ(イラン)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
エディ・アバソロ(米国)
モハメド・ユネス・ラバー(アルジェリア)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
三浦彩佳(日本)
マカレナ・アラゴン(アルゼンチン)

<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
アリーフ・ソー・デチャパン(マレーシア)
ヴァウテル・ゴンサウベス(ブラジル)

The post 【ONE169】2度目のMMAへ。ケイド・ルオトロ「次にやってくる波は、失われた柔術の技だよ。それが……」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 AB ADCC2022 CJI MMA MMAPLANET o ONE   アンドリュー・タケット ケイド・ルオトロ ジョセフ・チェン タイ・ルオトロ トミー・ランガカー ニッキー・ライアン マテウス・ジニス リーヴァイ・ジョーンズレアリー ロベルト・ヒメネス

【CJI】ついにケイド&タイのルオトロ兄弟も、CJIに鞍替え。揃って80キロ以下級にエントリー! ミカは?

【写真】今年に限って、趨勢は決まった。ADCCの77キロ級とCJIの80キロ以下級を比較すると後者の方が楽しみなのは明白だ(C)ONE

20日(木・現地時間)、ついにCraig Jones Invitationalの公式SNSがケイド&タイのルオトロ兄弟の出場を発表した。8月16日(金・同)と17日(土・同)の両日、ネヴァダ州ラスベガスのトーマス&マック・センターで開催されるCraig Jones Invitationalにグラップリング界のアイコンでありアイドルでもあるルオトロ・ブラザースが登場。ADCCでなくCJIを選んだツインズは揃って-80キロ級で戦うことに。
Text by Manabu Takashima

ADCC2022の77キロ級世界王者で、現在はONEサブミッショングラップリング・ライト級世界王者のケイド。タイは無差別級の銅メダリストでONEサブミッショングラップリングでは世界ウェルター級王者に君臨している。

前回のADCCでタイは88キロ級に出場し、今年の世界大会も同級で招待出場となっていたため、CJIに移ったとしても+80キロに挑むものと思われていた。それが2人とも80キロ以下級にエントリー、兄弟100万ドルをどちらかが獲得するため……の判断といえるだろう。

決勝でケイドとルオトロが100万ドルを掛けて戦うのも夢のような話だが、決勝の同門対決はいずれかが勝利を譲るという柔術界の伝統に従う恐れもある。そこを避けるために同じ山となることも考えられるが、果たして。ともあれルオトロ兄弟の参戦決定でCJIの80キロ以下級は、以下のように16名中14名が埋まった。

■ケイド・ルオトロ
■タイ・ルオトロ
■ジョセフ・チェン
■アンドリュー・タケット
■ロベルト・ヒメネス
■ルーカス・バルボーサ
■ニッキー・ライアン
■リーヴァイ・ジョーンズレアリー
■マテウス・ジニス
■ヘナト・カヌート
■ジェイソン・ノルフ
■アンディ・ヴァレラ
■トミー・ランガカー
■オーウェン・オフラナゲン

こうなると気になるのが、柔術の神の子ミカ・ガルバォンの動向だ。ミカはONEからのオファーを固辞したことがあり、独特の感性の持ち主でもある。現時点でADCCのリストに残っているままだが、残り2枠に彼の名が連なることはあるのか──気になるところだ。


The post 【CJI】ついにケイド&タイのルオトロ兄弟も、CJIに鞍替え。揃って80キロ以下級にエントリー! ミカは? first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 ADCC2022 CJI Interview MMA MMAPLANET o ONE ONE167 アレックス・ペレス アンドレ・フィーリ キック クレイグ・ジョーンズ ケイド・ルオトロ トニー・ファーガソン ブレイク・クーパー ボクシング マイキー・ムスメシ ライカ レイモンド・ダニエルズ

【ONE167】MMAデビュー戦前のケイド・ルオトロ「数年でトップファイターに。ADCCかCJIか……」

【写真】いよいよ。本当にインタビュー中の表情、声はリラックスしていたケイドだ (C)CHOI WOO SUK

8日(土・現地時間)、タイはバンコクのインパクト・アリーナで開催されるONE167でケイド・ルオトロがブレイク・クーパーとMMAデビュー戦を戦う。
Interview by Choi Woo Suk

ADCC2022、77キロ級優勝。ONEではサブミッショングラップリングで世界ライト級王者に君臨しているケイドが、MMAに挑む。強い――だけでなく、フィニッシュ能力の高さ――だけでもない。正確無比ならが、無機質でなく華麗なグラップリングで組み技ワールドを変革した天才。もちろん、組んでしまえば圧倒的に強いだろう。ただし、グラップリングはない要素がMMAには存在する。

そんなMMAに対し、柔術家ではなくマーシャルアーチストとして全てに対応できる姿を見せたいというケイドにMMA、そしてADCCかCJIが揺れるグラップリング界について話を訊いた。


12歳の時からムエタイをやってきた

──MMAデビューを土曜日に控えているケイドです(※取材は5日に行われた)。今の気持ちを教えてください。

「そうだね、今の気持ちの大部分はワクワクしている――ということかな。実は柔術の時と比較すると、もっとナーバスになると思っていたから自分でも驚いているんだ。正直なところ、柔術の試合の時よりも緊張していない。きっとキャンプでの仕上がりが最高で、ワールドベストのコーナーマンがいてくれるから、凄く自信があるんだと思う。試合が楽しみでしょうがないんだ」

――ところでMMAを真剣に戦おうと思ったのは、いつからだったのでしょうか。そして、このタイミングになったのは?

「子供の頃から、いつかMMAを戦いたいと思っていた。MMAの練習もしていたけど、定期的っていうことじゃなかったんだ。去年ぐらいからは週に1度、あるいは2度ほどトレーニングをするようになっていたけどね。よりシリアスにMMAの準備をするようになったのは3カ月前から。前戦のキャンプ後、MMAを戦う時が来たと思ったから、今回のタイミングになったんだ」

――やはり気になるのは、打撃です。どれだけ準備ができているのでしょうか。

「その質問に対して、求められている答えにならないかもしれないけど、12歳の時からムエタイをやってきた。柔術のジムでやってきたから、それほど高度ではない。それでもMMAっぽい動き、MMAを考えた練習をずっとタイとやっていたんだ。MMA的な動きに関しては、適応できていると思っている。もちろん、過去3カ月ほど集中してやってきたわけじゃないけど、MMAに関しては週に1度とか2度トレーニングをしてきたことも生きるんじゃないかと思っている」

――このファイトキャンプで、打撃は誰の指導を受けてきたのでしょうか。

「タイラー・ウォンブルス(へナート・ババルの黒帯ムエタイ選手。クラシック・ファイトチームのヘッドコーチでレイモンド・ダニエルズ、アンドレ・フィーリ、トニー・ファーガソン、アレックス・ペレスらを指導してきた)だよ。ハンディントンビーチはムエタイ、キックボクシングで優れたストライカー、そして指導者がいる。なかでもエリック・パーソンには打撃単体だけでなくて打撃と柔術、そしてレスリングをミックスした動きを教えてもらってきた」

――ウォンブルス・コーチやエリックの指導を受けたということですが、主な練習場所や練習パートナーは誰だったのですか。

「タイはいつも一緒に練習してきたけど、タイラーとエリックのジムで彼らの生徒とやってきたよ。2つのジムの皆が僕をサポートしてくれたから、凄く成長が早かった。本当に彼らには感謝している」

――柔術、レスリングと同様に打撃もMMAの一部です。どのようなMMAを戦いたいと思っていますか。

「全てだよ。本当のマーシャルアーチストは、何か一つのことが特別に秀でているのではなくて何でも対応できないと。もちろん柔術は僕にとって最高の武器だ。でも柔道の投げ、レスリングのテイクダウン、特にパンチ、打撃の能力を……キックも含めて皆に披露したい。全てを見せることなく、試合を終わらせることになるかもしれない。それでも全力で今持ちうる力を使いたい」

――打撃は主に押す力。グラップリングは引く力。そういう筋肉の使い方をすると言われています。

「その通りだ」

――両方を使う時、タイムラグが生じることがあるという指摘もありますが、そのように感じることはありますか。

「それはあくまでも普通の生活における筋肉の使い方、その範疇の話だよ。僕らの肉体や心肺機能は、決定的に普通の人たちとは違う。打撃を使って組みつく。グラウンドで攻めていて、スタンドに戻ってすぐに打撃を使う。全てのスポーツで肉体の使い方は違っているけど、MMAはあらゆるスポーツの体の使い方が一体化している。そういうラグをなくすためにドリル、スパーリングで時間を費やしているんだよ。いkなる動きをしていても、肺機能を活発しないといけない。パンチ一つをとっても、脹脛だって連動している。そういう普段の生活にはない動きが、徐々に見についてくる。それこそがマーシャルアーツの練習の素晴らしい点だよ」

――なるほど、です。ではブレイク・クーパーの印象を教えてください。

「クーパー一族の一人だよね。一族の全員が重いパンチ、ノックアウトパワーを持っている。ハワイらしくて、家族の絆が太い。人生の中心にレスリングがあって、凄く尊敬しているファミリーだよ」

――では現状、ケイドにとってMMAでの目標は?

「チャンピオンになること。サークルケージに足を踏み入れ始めたばかりの僕が、こんな風に言うのは無礼なことかもしれないけどね。でも、数年以内に自分の階級のトップファイターになる」

――では、これからもMMAを続けていくということですね。

「絶対的に続けるよ。今年中にもう1試合戦いたいと思っている。この試合のあと、タイがONEで柔術マッチが控えている(※ケイドはグラップリングの試合も柔術と呼ぶことがある)。そして、1度柔術トーナメントに出るだろう。9月にはコロラドでマイキー・ムスメシとグラップリングマッチも決まっているし、どんどん試合をしていきたいんだ。希望としてはONEが11月にアトランタで開くUS大会で、MMAの2戦目を戦いたい」

ADCCかCJI、今はまだ心が揺れている状態。来週には答を出す

――今週末にMMAを控えているケイドですが、今、グラップリング界が揺れています。クレイグ・ジョーンズがADCC世界大会に100万ドルの賞金が懸かったトーナメントをぶつけてきました。

「ADCCは五輪のように世界最大の柔術トーナメントだ。未来永劫に、ね。クレイグ・ジョーンズは2階級で優勝賞金100万ドルの16人制トーナメントを行う。賞金目的で多くの選手がADCCを離れるだろう。僕とタイはADCCで戦うのか、クレイグ・ジョーンズ・インビテーショナルで戦うのか。まだ決めていない。

ADCCがなければ、ここまで柔術が脚光を浴びることはなかった。同時に100万ドルは大きいよ」

――8月、ケイドとタイがTモバイル・アリーナ、あるいはトーマス&マック・センター――どちらに姿を現すのか。いずれにしても、楽しみでならないです。

「2年前、トーマス&マック・センターでADCC世界大会を戦った時、4試合で4つの一本勝ちを収め生涯最高のパフォーマンスを見せることができたと思っている。あの会場は本当に思い入れがある。クレイグ・ジョーンズが、あの会場を使用する。そして、より大きなTモバイル・アリーナで開かれるADCC世界大会はチケットもほとんどソールドアウトらしい。二つのショー、それぞれが最高になるだろう。

ほんと、難しいよ。タイとずっと話し合ってきた。来週には答えを出さないといけないけど、今はまだ心が揺れている状態だよ」

■放送予定
6月8日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT

The post 【ONE167】MMAデビュー戦前のケイド・ルオトロ「数年でトップファイターに。ADCCかCJIか……」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 AB ABEMA ADCC2022 MMA MMAPLANET o ONE ONE Championship ONE165 RIZIN ウアリ・クルジェフ キック グスタボ・バラルト ケイド・ルオトロ ゲイリー・トノン ダニー・キンガド トミー・ランガカー ボカン・マスンヤネ マイキー・ムスメシ マテウス・ガブリエル マーチン・ウェン 三浦彩佳 山北渓人 岩本健汰 平田樹 武尊 箕輪ひろば 若松佑弥 青木真也

【ONE165】ONE日本大会にグラップリング世界の頂点=ケイド・ルオトロが登場。ランガカーとリマッチ

【写真】ケイドをこの目で見られるだけで、嬉しい限りだ(C)RIZIN FF

4日(金・現地時間)、ONE Championshipが28日(日)に江東区有明の有明アリーナで開催されるONE 165「Rodtang vs Takeru」でONEサブミッショングラップリング世界ライト級選手権試合=王者ケイド・ルオトロ✖挑戦者トミー・ランガカーの一戦を組むことを発表している。
Text by Manabu Takashima

タイトル名にあるようにロッタン・ジットムアンノン✖武尊のキックを筆頭に青木真也✖セージ・ノースカット、ゲイリー・トノン✖マーチン・ウェン、さらに日本大会らしくダニー・キンガド×若松佑弥、ボカン・マスンヤネ×山北渓人、箕輪ひろば×グスタボ・バラルト、平田樹×三浦彩佳が行荒れる同大会で、組み技の世界戦が実現する。


ADCC2022で77キロを制し、ONEではライト級世界王者に君臨するケイドは双子の実兄でウェルター級王者タイ、そしてタフライ級王者マイキー・ムスメシと共に、ステロイドフリーのADCCという頂点を持つグラップリング界にあって、ナチュラル化のために動く──組み技ワールド新世代のリーダーだ。

そんなケイドはADCC世界大会の1カ月後、2022年10月にウアリ・クルジェフをヒールで下し同王座を獲得すると、12月にはマテウス・ガブリエルを相手に初防衛に成功。そして今年の6月に行われた2度目のタイトルディフェンディングマッチでは、ランガカーを判定で下している

一本決着でなかったにせよ、ここでダイレクトリマッチになった理由は何なのか。事実、今大会ではケイドでなく兄のタイがウェルター級世界王座を賭けて戦うという話もあった。一方、ケイドは日本大会が正式発表となる前からONE側では岩本健汰に声を掛けていた模様だ。

ただし岩本はADCC世界大会でのシード権獲得のために中堅に確実に勝つという2024年序盤に向けて明白なプランを持っており、ONEとの契約に縛られるとそのプランを実行できなくなることを危惧し、このオファーを固辞していた。

もちろん岩本✖ケイドは楽しみだが、岩本には全力でADCC世界大会に向かって行って欲しい。またケイドの試合は、対戦相手云々以上にケイドの動きを実際にこの目で見ることが一番の収穫となる。世界の頂点にあるグラップラーの登場は、4年振りのONE日本大会に一際、華を添えることになるだろう。

The post 【ONE165】ONE日本大会にグラップリング世界の頂点=ケイド・ルオトロが登場。ランガカーとリマッチ first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ABEMA ADCC2022 MMA MMAPLANET o ONE ONE FN10 UFC   キック タイ・ルオトロ チャンネル ブラジリアン柔術 ボクシング ロベルト・ヒメネス

【ONE FN10】デリダーと異種組み技戦、タイ・ルオトロ─01─「禁止薬物に頼らなくても、頂点に立てる」

【写真】いつも笑顔のタイとケイドのルオトロ兄弟。ステロイド問題を語る時も、試合前のようなシリアスな様子では軽快が言葉を続けた (C)MMAPLANET

5日(金・現地時間)、コロラド州ブルームフィールドの1stバンク・センターで開催されるONE FN10「Johnson vs Moraes 3」。ONEにとって初開催となる米国でのイベントでは、全11試合&メインカード9試合中2試合のサブミッション・グラップリングマッチが組まれた。

2003年1月22日生まれ、20歳になったばかりのタイ・ルオトロが、そのうちの1試合でONE世界ミドル級王者ライニア・デリターと対戦する。昨年、ブラジリアン柔術世界大会=ムンジアル黒帯ミドル級で準優勝、ADCC世界大会では無差別級で銅メダルを獲得した。

その後、タイを破ってムンジを制した柔術の神の子ことミカ・ガルバォンが、禁止薬物使用で金メダルを剝奪され、タイは19歳にしてムンジの金、アブダビの銅メダルを獲得するという快挙を達成することとなった。

そんなタイがデリダー戦だけでなく、ステロイド問題を語り、今後のONEグラップリングシーンに言及した。


──タイ、隣にケイドも見えますが、もうコロラドに入っているのですか(※取材は4月27日に行われた)。

「そうだよ。米国でショーが行われるのは最高だけど、コロラドは僕らが慣れ親しんだカリフォルニアと海抜が違うから、早目に入る必要があったんだ。ここに来るまでも可能な限り標高の高いところで練習してきたけど、しっかりとアクアメーション・プロセスをコロラドにやって来る前、そして着いてからも消化し、体はもう海抜1600メートルにほぼ慣れたよ。サンディエゴから数日前にやってきて、デンバーの郊外で山を走ってロッキー・バルボアがドラゴと戦う前のような準備をしてきた(笑)。だから日に日に動くのが楽になった。5月6日には、自分がどれだけ動けるのか凄く楽しみなんだ」

──今大会、ONEにとって初めての米国でのショーで9試合のメインカードのうち、グラップリングの試合が2試合組まれたことをどのように思っていますか。

「柔術にとって最高の機会になると思う。MMAだけでなくムエタイ、キックボクシングにグラップリングも組まれたショーは、これまで米国にはなかった。米国のスポーツ界にとって、大きな1日になるはずだよ。特にグラップリングマッチがこういう舞台で実施されることは、柔術界の皆にとって本当に素晴らしいことだよ」

──ADCC2022以降、正直をいえばあのトーナメントが頭抜けていたのか、以前の規模のトーナメントは続いていますが、グラップリングのビッグファイトは決して増えていないように感じます。Amazon Videoのプライムタイムショーで戦うことで、グラップリングをジェネラル層にアピールする絶好の機会ではないでしょうか。

「それこそが、僕がマットに上がる目的だから。誰かが僕の試合を見て、影響を受けてくれると嬉しい。少しでもインスパイアしてほしいと思っている。今回はレイニア・デリダーという大きな相手に、僕がどのようなパフォーマンスを見せることができるか。純粋に技術を武器に彼と戦って、世界中で視ている人に楽しんでもらいたい。それが僕のモチベーションになっているんだ」

──タイ、ADCCでは無差別級で銅メダルを獲得しました。今回、205ポンドでの試合になりますが、技術で戦うにしても体重差はどのように考えていますか。今もタイのベストな階級は170ポンドではないかと思ってしまうのですが。

「実は今回に試合に関して、今そうやって205ポンドだって効かされるまで、正確な階級のことは気にしていなかった(笑)。僕も今では普段から大体185ポンドぐらいはあるけど、今回は相手が大きいから190ポンドぐらいにしてきた。過去最重量になっている。でも195ポンドまで増やすことはない。ちゃんとシェイプして、最高のタイ・ルオトロとしてケージに上がりたいからね。だから205ポンドより重くなるなんてことはありえないから、リミットを気にしていなかったんだ(笑)」

──ハハハハ。それ以上重くならないから、リミットは関係ないと。

「全く気にしていなかった。ちゃんと契約書に目を通さないとね(笑)。これまでも自分より大きな相手とばかり戦ってきたから、接戦になることも試合を落とすこともある。でも、そういう戦いが好きなんだ」

──では柔術ベースのオランダ人MMA世界王者のサブミッション・グラップリングのスキルをどのように考えていますか。MMAファイター✖グラップラーという構図が成り立つファイトですが。

「僕は人生の全てを柔術と共に過ごしてきた。だから、僕の方がアドバンテージがある。でもライニアはタフな相手だよ。MMAの試合でも柔術を使って勝ってきた。彼は優れた柔術家で、この試合に向けてジョン・ダナハーのところでキャンプを行っていた。良い準備ができているだろうし、何よりも最高の作戦を授けられているに違いない。でも、さっきも言ったように僕の人生は柔術と共にある。どれだけ彼が高いレベルの技術を有していても、一本勝ちする」

──それにしても第1回UFCが行われた土地で、30年後にタイが大きな相手と柔術を武器に戦う。何とも言えないマッチアップです。

「MMAでは自分より大きな相手と戦うのは、もう危険だ。柔術マッチは技術で体格差を埋めることができる。それが柔術の素晴らしさだよ。体格差を生かしたゲームプランをライニアは実行しようとするだろう。でも、彼は遂行できない。その途中で、僕が彼を仕留めるからね」

──ADCC2022後にケイドのインタビューをした時に、「ADCCでステロイドを使っていないのはケイドとタイ、そしてロベルト・ヒメネスだけだ」と言っていました。

ケイド そう、その通りだよ(笑)。

──そして先日、ミカ・ガルバォンが禁止薬物使用で昨年のムンジアル優勝を取り消され、タイが晴れて世界王者に輝きました。今やMMAの方が検査が多く、ナチュラルなファイターがグラップリングよりも多いかと思う次第です。

「公正に戦うために検査を実施しても、実際のところはいたちごっこだよ。僕もケイドもワールド前にUSADAのテストを受けた。できればONEもスポンサーシップを受けて、毎月アスリートのテストをしてほしい。そうすることで、僕らのやっていることは次世代に受け継がれるはずだから。

テストに3000ドルも掛かるから、なかなかこのスポーツ全体で実施することは難しい。その結果、これだけ多くのジューサーが世の中に溢れることになる。ステロイド問題はMMAや柔術だけでなく、全てのコンバットスポーツに蔓延している。いやコンバットスポーツだけでなく、ほぼ五輪正式競技も含め全スポーツがステロイドに汚染されているはずだ」

ケイド そうだよ、皆がやっている。

「でも僕もケイドも禁止薬物に頼らなくても、一つのスポーツの頂点に立てることをADCCとワールドで示した。僕らは長く競技生活を送りたいし、引退後もヘルシーでいるために柔術に取り組んでいる。16歳や17歳という若い選手は、絶対にそんな物質に頼るべきじゃない。これから長い人生が待っているのに、だから……18歳でそんなモノに手を染めると、報いを受けて未来が決定づけられてしまうよ(笑)」

<この項、続く>

■放送予定
5月6日(土・日本時間)
午前8時00分~ABEMA格闘チャンネル

The post 【ONE FN10】デリダーと異種組み技戦、タイ・ルオトロ─01─「禁止薬物に頼らなくても、頂点に立てる」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ADCC2022 MMA MMAPLANET o ONE UNRIVALED UNRIVALED02 イゴール・タナベ ウィリアム・タケット ロベルト・ヒメネス 伊藤盛一郎 岩本健汰 森戸新士 河名マスト 海外 猿田洋祐 石黒翔也 須藤拓真

【UNRIVALED02】アンライバルド再始動はウィリアム・タケット×岩本健汰から。カウチも初来日

【写真】ポイント有り、アグレッシブかつギリギリのポイントメイクが見られるか(C)CLAYTON JONES & SATOSHI NARITA

26日(木)、UNRIVALED実行委員会から2月26日(日)に東京都世田谷区のiTSCOM STUDIO & HALL 二子玉ライズでUNRIVALED02の開催とカード発表があった。

テイクダウンP有り、引き込み減点の全局面グラップリング・イベント=UNRIVALEDの第2回大会が2021年11月以来、1年3カ月ぶりにスケールアップ――いや、当初の予定通りコロナの入国制限の撤廃を受けて海外大物グラップラーを招聘して行われる。

その海外大物グラップラーとはウィリアム・タケット、アンドリュー・タケット、そしてジェイコブ・カウチの3選手だ。


ウィリアム・タケットは10代の頃からFight to Winで注目され、2021年3月にはマニュエル・ヒバマーをヒールで粉砕。同大会10勝目を挙げると、Third Coast Grappling、WNOと戦うステージを上げ、ADCC2022米国西海外予選のウィナーとなった。

しかし、世界大会ではマテウス・シュゼシンスキの前にまさかのストレートフットロックで1回戦負けに。そのタケットの再起戦の相手は、同じくADCC世界大会77キロ級にエントリーし、初戦で大健闘の末JTトレスに敗れた岩本健汰だ。

B-teamで出稽古を行い、MMAからグラップリング一本に原点回帰した岩本。先のGladitoar020で組まれたプログレス・フォークスタイルグラップリング・ウェルター級王座決定戦で森戸新士を圧倒し、腕十字で王者に就いたジョゼフ・チェンを昨年のADCCオセアニア&アジア予選準決勝で、延長戦で下していることで、岩本は新ためて国内では頭抜けた存在であることを印象付けた。

気になるのは両者の試合がミドル級(83.9キロ)で実施される点だ。1年前までMMAでは65キロで戦っていた岩本が、この体重設定では何キロに調整するのか。いずれにせよタケットと岩本は新・足関時代からレッスルアップ&パスの時代へ移った史上最強の世界標準グラップリングを見せてくれることは間違いないだろう。

この他、石黒翔也×猿田洋祐、野村優眞×伊藤盛一郎という柔術家×MMAファイター対決なども決定しているUNRIVALED02にはムリーロ・タケシ・ソウザ、須藤拓真、吉岡崇人、河名マスト、イゴール・タナベ、矢野トミーらが出場することも明らかとなっている。

一番の注目はやはりジェイコブ・カウチだろう。カウチは廃コインランドリーの建物にマットを敷いた道場に寝泊りし、練習漬けの日々を送っていた組技集団=デイジー・フレッシュことペディゴ・サブミッション・ファイティングに所属している。ホドリゴ・バギの黒帯ヒース・ペディゴの指導の下、茶帯時代にWNOミドル級Tに出場し、ロベルト・ヒメネスをヒールで下し一躍注目を集めるようになった。

昨年のノーギワールズを制して、黒帯になったカウチの対戦相手が誰になるのか。続報が気になるUNRIVALED02は、FITE TVでの中継が決まっており、当日にはアマチュア大会=ALTANAも開かれる。

The post 【UNRIVALED02】アンライバルド再始動はウィリアム・タケット×岩本健汰から。カウチも初来日 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ADCC2022 MMA MMAPLANET o   アンドレ・ガルバォン ゴードン・ライアン

お蔵入り厳禁【ADCC2022】ゴードン・ライアン、スーパーファイトでガルバォンを圧倒。RNCを極める

【写真】ゴードンの圧倒的な強さを引き出しのは、ガルバォンの頑張りだった(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。最終回は――お蔵入り厳禁、アンドレ・ガルバォンとゴードン・ライアンのスーパーファイト・タイトルマッチの模様をお伝えしたい。


大会の目玉であるスーパーファイトは、2013年にブラウリオ・エスティマを下しスーパーファイト王座に就いて以来、3度防衛に成功しているアンドレ・ガルバォンと、前回大会の階級別と無差別を完全制覇し、今回も最重量級を圧勝したゴードン・ライアンの一戦だ。

ガルバォンは当初引退を宣言していたが、王冠とマントを纏う傲慢不遜な「キング」を名乗るゴードン──グラップリングというマイナースポーツで名を売るためには何が必要かと考え、このキャラクター創造に至ったと自ら語っている──は、SNSを用いてガルバォンや門下生たちへの挑発を開始。両者の仲は険悪化し、昨年の2月のWNO大会後にはゴードンがガルバォンに張り手を浴びせ、あわや乱闘勃発かという騒ぎにまで発展した。

ゴードンはその後、長年悩まされていた胃腸不全の悪化のため競技からの無期限撤退の発表を余儀なくされた。が、ADCC大会の統括モー・ジャズム紹介の医師のおかげで症状が改善して復活。片や「下らない遺恨は忘れよう。僕はゴードンを許す」と宣言したガルバォンの方も、引退を撤回し対戦を決意。ついに両者の一戦が実現の運びとなった。

なおガルバォンは、今回の大会前に受けたインタビューにて「僕はゴードンのSNS攻撃の罠に嵌り、精神がダークサイドに堕ちてしまっていた。毎日何時間もスマートフォンを眺めて夜も眠れなくなり、神の道から離れてしまっていた」と告白している。

競技者のメンタルをリアルに蝕む、SNS時代ならではのストーリー展開を経て──事前の予想は圧倒的にゴードン有利で、勝負論的な興味は薄いと思われた──この試合は「グラップリング史上最大の注目を集める戦い」と呼ばれるものとなった。

<スーパーファイト/20分1R>
ゴードン・ライアン(米国)
Def.16分4秒 by RNC
アンドレ・ガルバォン(ブラジル)

超巨大スクリーンに作り込まれた煽りビデオが流され、ド派手な火花が舞うなかレニー・ハートのコール(残念ながら段取りにミスがありタイミングがずれてしまっていたが)で入場した両者。

さらにブルース・バッファーが改めて両者の名をコールし、最高潮の盛り上がりのなかで試合は開始された。

握手を交わした後、気合十分のガルバォンはまるで相撲の突っ張りのようにゴードンの胸を押す。さらに──以前もらった張り手のお返しと言わんばかりに──ゴードンの顔に右の掌打。ゴードンは苦笑し、ガルバォンはレフェリーから注意を受けた。

その後ハンドファイティングが続いた後、ガルバォンがダブルレッグに入ると、ゴードンは抵抗せずあっさり倒れる。

座ったゴードンは、すぐにガルバォンの股間に両足を入れて開かせ、右足を抱えて引き寄せると、そのまま足を絡めて外ヒール狙いへ。

しかしガルバォンはすぐに反応し、ゴードンの足を押し下げながら勢いよくスピンし、支点をずらして足を抜いてみせた。

次にゴードンはガルバォンの右足にハーフで絡み、逆に左足に外掛け。が、ガルバォンはゴードンの左足を両手で掴んで勢いよく足を抜く。階級別の準決勝、決勝と相手がいくらエスケープを試みてもまったく離れなかったゴードンの足の絡みから、ガルバォンは2度逃れてみせた。

再びシッティングで近づいたゴードンは、ガルバォンの右足を引き寄せて絡めると、左かかとを掴んで後ろに倒す。

スクランブルを試みるガルバォンだが、一歩先をゆくゴードンは立ち上がってガルの右足をホールドして崩し、すぐに背後に付いてボディロックを取った。

すぐに立ち上がるガルバォン、ゴードンはその足を払ってグラウンドに。

上を取りに来るゴードンをガルバォンはバタブライで跳ね上げるが、ゴードンはバランスキープ。上の体勢を確立した。足関節だけではなく、スクランブルの攻防でも動きに隙がないのがゴードンだ。

ガルバォンは下からゴードンの体を浮かせて左足を引き出すが、ゴードンはバランスを保って足を抜く。立ち上がったゴードンの右足にガルバォンが浅いデラヒーバを作ると、ゴードンは低く体を預け、ガルバォンの右足を押し下げ、さらに左足に体重をかけて潰してゆく。ハーフの体勢になったガルバォンは、左足のシールドとスティッフアームでその侵攻に耐える。

その後、ガルバォンはなんとか距離を作ろうとするが、ゴードンはそれを許さず巨体でじっくり圧力をかけていった。

6分経過時点、ガルバォンはバタフライに戻すことに成功。が、ゴードンはすかさずボディロックを作って体重をかけてガルバォンの腰を固定。その後ゴードンは自らの腰を上げて改めてガルバォンの左足に体重をかけ、右足を押し下げる形で侵攻を再開した。

やがてハーフに入ったゴードンは、ガルバォンの腕のフレームを突破し、胸を合わせることに成功。さらに左ワキを取るゴードン。が、ガルバォンもここは差し返す。

慌てず騒がずじっくりとプレッシャーをかけてゆくゴードンは、再び左ワキを差して攻め上がる。枕を取りガルバォンの首を巨大な上半身で圧迫するゴードンは、やがて絡まれた右足を抜くが、次の瞬間ガルバォンは動いてまたハーフに戻してみせた。

残り11分。胸を合わせたゴードンは、ワキを制しガルバォンの上半身を完全に殺した状態でじっくりと体重をかけてゆく。やがて右足をヒザまで抜いたゴードンは、いつでもマウントを取れる状態に。が、ここで一度動きを止め、加点時間帯の開始を待ってからマウントに移行し、3点を先制した。

ガルバォンは下からなんとか体をずらすが、ゴードンはそれに乗じてバックを奪い、完全にガルバォンの体を潰した上で襷のグリップを作りさらに3点追加。さらにガルバォンの体を起こして、ボディトライアングルに移行した。その右手はガルバォンの右腕を制している。

こうして完全コントロールを奪ったゴードンは、そこからじっくりとチョークを狙う。諦めないガルバォンはなんとか体を動かすが、サイドが変わるたびに足のフックを入れ替えてゴードンは点を重ねてゆく。

やがてゴードンは自らの左足でガルバォンの左腕を完全に固定。さらに右腕でガルバォンの右腕も制すると、残った左腕で無防備になったガルバォンの顔面を圧迫するが、ガルバォンは意地でも首を開けようとしない。ゴードンはさらに右腕のホールドを解いて、両腕を使って片腕のガルバォンのディフェンスを崩しにかかる。

完全に余裕のある表情のゴードンは、アゴの上からの絞めやネッククランク等を試みるが、ガルバォンは諦めずに耐え続ける。ガルバォンは何とか体をずらそうとするが、ゴードンはそれを許さない。

やがてゴードンは、右腕の手首の細い部分を利用して首にねじ込む。たまらず仰向けになって最後の抵抗を試みるガルバォンだが腕が深く入ってしまい、残り4分の時点でとうとうタップした。

技を解いて座ったゴードンは、優しい微笑みを浮かべてガルバォンに握手を求め、それに応じたガルバォンにハグ。さらに首を抱き合い語り合う両者を、場内は暖かい歓声で称えた。

勝ち名乗りを受けた後、ガルバォンの手を上げてみせるゴードン。両者の3年越しの長い戦い──特にガルバォンにとっては精神を削られた辛い戦い──は、ついに終焉を迎えた。

大方の予想通りゴードンの完勝に終わったこの試合。が、地上最強最強のグラップラー、ゴードン・ライアンの無類の強さ、動きの隙のなさが、──足関節だけでなく、スクランブル、パスガード、コントロール、極めと多彩な局面において──存分に堪能できるものとなった。それを引き出したのは、ゴードンの足狙いを凌ぎ、不利な体勢に追い込まれても抵抗を続けたガルバォンの不屈の闘志に他ならない。

試合後、ケニー・フロリアンから勝利者インタビューを受けたゴードンは「俺はアンドレのことを悪く思ったことなんて一度もなかったさ。まあちょっとした揉め事や言い合いがあっただけだよ。リスペクトしているし、俺は彼の半分もタイトルを持っていない。彼の最後の相手として、そのレガシーの一部に加われるなら光栄だ。だからサンキュー、アンドレ!」と、今までガルバォンにしてきた数々の酷すぎる仕打ちはいったい何だったのか、とツッコミたくなるようにコメントした。

さらに胃腸の調子について尋ねられると「だいたい70パーセントくらいかな。前よりはいいけど、100パーセントとは言えないよ」と語ったゴードンは、99キロ超級での戦いについて尋ねられると「調子は良かったよ。ポイントはエネルギーの使い方だった。フレッシュなアンドレとの試合が、ハードでフィジカルなものになることは分かっていたからね。階級別の準決勝決勝は合計3分くらいで終えることができたから、ゲームプランをうまく実行できたよ」と振り返った。

続いて次の目標について聞かれると「今回はいい試合ができたけど、でもパーフェクトではなかった。全試合サブミッションは取れなかったからね。それに俺は、フィリぺのこともボコボコにしなくてはならないんだ。だからファンが求めて、主催者のモーが同意してくれるなら…今から20-30分くらい奴にウォームアップする時間をやるし、俺は(奴と違って)これ以上の金を請求したりしない。だからフェリペよ、やるぞ! 今からだ。もうファッキンな言い訳はなしだ!」と、──今回最大のライバルと目されながら、準決勝敗退に終わった──フィリッピ・ペナを挑発。スーパーファイトと無差別級の両方を制し、ADCC至上初の快挙を達成してなお貪欲に戦いを求める姿勢を見せた。

一方敗れたガルバォンは以下のように話した。

「みんなありがとう。試合に向けてすごくいい準備ができたよ。今回は16週間と長めに準備期間を取ったんだ。でも練習開始して4週間のところでヒザの靭帯と半月板と損傷してしまった。それから出来る限りの治療をして試合に臨んだよ。まだヒザは少しぐらついていたし、キャンプ中もヒザが悪いからガードの練習ができなかった。

だから、この試合で唯一なってはいけないのは下になることだと分かってはいた。ゴードンはプレッシャーも強いし、力もすごく強い。ゴードンは今、全盛期だ。片や僕は39歳で、04年からADCCに参加しているんだ(04年に予選に初参加、本戦出場は07年から)。いや、言い訳はしない。この試合を受けたのは僕だし、いい試合が出来ると思っていた。

しかし残念ながら怪我が少し障害となってしまった。でも、生徒たちはみんなサポートしてくれたよ。彼らの多くが試合をするべきじゃないと言ってくれたけど、僕は一度試合を受けた以上は、やるべきだと答えたんだ。僕は、前回大会のペナとの試合のときにこれが最後だと言った。でも僕の最後の試合がいつなのかを知っているのは、神だけなんだ。神が僕をこのマットに戻してくださった。それには理由があるはずだ。

ゴードンとは試合前にいろいろあったけど、あれは僕も悪かった。僕はあの頃、人生においてとてもダークなプレイスにいたから。でも、この試合に向けて王者らしく準備することができた。ATOSにいる多くの王者たちとともにね。試合はベストを尽くしたけど、ゴードンはリーチも長かったし、でかくて強かった。ゴードンおめでとう。これからも幸運を祈るよ。

みんなありがとう。そして僕もここを去る前に…、まだこれができるんだ! (と、6本指を立てて、合計6度のADCC優勝&スーパーファイト勝利のサインを作ってみせた)。僕は、ゴードンとさっきここで話すことができて本当に嬉しいよ。ものごとは、こうあるべきなんだ。邪悪さに対して邪悪さで応じてはいけないんだ。主よ、感謝します。人生において、僕に教えてくださった全てのことに対して」

一時はゴードンのSNS攻撃に精神を蝕まれ道を踏み外しかけたレジェンドは、自分を取り戻して最強最大の敵に堂々と挑み、そして敗れることで大いなる赦しを得たかのようだった。

The post お蔵入り厳禁【ADCC2022】ゴードン・ライアン、スーパーファイトでガルバォンを圧倒。RNCを極める first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ADCC2022 MMA MMAPLANET o   ゴードン・ライアン タイ・ルオトロ ニコラス・メレガリ ニック・ロドリゲス ファブリシオ・アンドレイ ブログ ホベルト・アブレウ ユーリ・シモエス ラクラン・ジャイルズ ヴィクトー・ウゴ

お蔵入り厳禁【ADCC2022】無差別級 古豪ユーリ・シモエスがスタンド磨いてオープンクラスを制す

【写真】いうとルオトロ兄弟や一部の新世代が特別で。シモエスの勝ち方こそ、ザADCC。ただしジェネラルに理解を求めることは難しい古典的グラップリングだ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第22回は――お蔵入り厳禁、無差別級決勝戦の模様をお伝えしたい。


88キロ以下級の体格で快進撃を見せた19歳タイ・ルオトロを、ニコラス・メレガリが激闘の末にレフェリー判定で制して決勝進出を決めた無差別級。もう一つの準決勝を戦ったのは、ベテランのユーリ・シモエスとサイボーグことホベルト・アブレウだった。

シモエスは1回戦、前回大会の無差別級で重量級を次々と足関節で仕留める大活躍を見せたラクラン・ジャイルスと対戦。ジャイルスの下からの仕掛けに対し、腰を引いて丁寧に潰して延長に持ち込み――ペナルティを承知で引き込んだジャイルスの仕掛けを潰し続けて勝利した。

猛威を振るった技術はすぐに研究されるという、競技における技術進化の必然を改めて確認させられたジャイエルスの敗退だった。

シモエスの2回戦の相手は、最重量級準優勝を果たしたニック・ロドリゲス。両者は昨年3月のWNO大会でも対戦しており、その時は引き込んで下を選択したシモエスは、ロドリゲスにボディロックを作られパスを許して完敗している。その教訓を生かしてか、今回シモエスは気迫を全面に出してのスタンドレスリングでの勝負を選択。本戦、延長と両者決定的な場面こそ作れなかったものの、積極性で勝って勝ったシモエスがレフェリー判定を制してリベンジを果たした。

迎えた準決勝でシモエスを待っていたのは、やはり最重量級のサイボーグことホベルト・アブレウ。サイボーグは前戦にてヴィクトー・ウゴの巨体を足払いで崩してから引き倒し、ワキをすくって上を奪取する形でテイクダウンポイントを獲得して制しての準決勝進出だ。

ちなみにそのウゴの初戦の相手は、最軽量級のファブリシオ・アンドレイだった。この最重量級vs最軽量級の超体重差対決にて、序盤はダックアンダーからのテイクダウンを許す場面もあったウゴだが、終盤ファブリシオの側転パスに乗じて上を奪取。巨体を浴びせての肩固めで勝利した。

2013年の無差別級を制したサイボーグと、2015年の88キロ以下級、2017年の99キロ以下級を制覇したシモエス。ADCCレジェンド対決となった準決勝は、スタンドレスリングでお互い譲らぬ展開に。

が、気力&スタミナともに充実したシモエスが延長戦でダブルレッグを決め、2-0で改良した。こうしてシモエスは決勝進出。前日の99キロ以下級の二回戦にて、微妙なレフェリー判定の末に苦杯を舐めさせられたニコラス・メレガリ相手にリベンジのチャンスを得たのだった。

<無差別級決勝/20分1R・延長10分x2R>
ユーリ・シモエス(ブラジル)
本戦0-0 マイナスポイント1-2
ニコラス・メレガリ(ブラジル)

試合開始直後、気合十分のシモエスが前進。跳びついてメレガリの首を取って崩しにかかり、さらに勢いよく足を飛ばす。さらに前に出るシモエスは、右のフック掌打のような勢いでメレガリの頭に手を伸ばして、レフェリーから注意を受けた。

3分弱経過した時点で、シモエスは素早い小内刈りからのシングルに入り、メレガリの右足を抱える。片足立ちでそれを堪えたメレガリは、落ち着いた表情で引き込んでハーフガードに。まだ後半の加点時間帯に入っていないので、通常のADCCルールの試合ならば問題ない判断だ。

しかし決勝戦は引き込みのマイナスポイントは最初から付いてしまう。ここを失念していたのか、メレガリは引き込まずとも、シモエスのテイクダウンに身を任せる形で倒れれば無失点で下のポジションを取れただけに、なんともマイナスポイントとなった。

その後は上からパスを試みるシモエスと、下から足を効かせるメレガリの攻防が続く。6分少々経過したところで、立ち上がったシモエスの左足にデラヒーバで絡んだメレガリは、内側からシモエスの右足をすくって体勢を崩してからシットアップ。

見事に上のポジションを取ってみせたが、まだ加点時間帯ではないのでポイントは得られず。自ら引き込んでスイープを決めたのにポイントで負けているというのは、おそらくADCCの決勝以外ではあり得ない状況だろう。

とまれ、ここからはメレガリがトップから攻めるターンに。しきりに右のニースライスでプレッシャーをかけていったメレガリは、やがてハーフで胸を合わせてシモエスを抑え込み、枕を作ることに成功した。

そこから足を抜きにかかるメレガリ。シモエスは腕のフレームと足を利かせて一度距離を作ることに成功したが、メレガリはすぐに体重をかけてシモエスの体を二つ折りにし、後転を余儀なくさせて再びハーフ上のポジションに入った。

加点時間開始が近づいたところで、一旦上体を起こしてニースライスを試みるメレガリ。が、シモエスは左のニーシールドで防ぎ、さらにかついで来るメレガリの体を足で勢いよく押し返して立ち上がってみせた。ここでちょうど10分が経過し、加点時間帯が開始。シモエスはマイナスポイント一つ分有利な形で、得意分野であるスタンドからのリスタートに持ち込んだことになる。

ここから試合はスタンドレスリングの攻防に。シモエスは前に出て、腰高のメレガリの右足を取っては押してゆく。そのたびに片足立ちで耐えて、やがて足を振りほどくメレガリ。テイクダウンこそされないものの、展開が作れないまま時間が過ぎていった。

残り6分少々の時点で、このままでは埒が明かないと見たかメレガリが引き込み、2つ目のマイナスポイントを受けることに。得意のオープンガードから仕掛けたいメレガリだが、このままリードを保てば勝てるシモエスは低い姿勢で対応。浅く片足担ぎの形を作るなどしてメレガリの攻撃を防いでゆく。

その後もシモエスは腰を引いてメレガリに足を深く絡ませず、たまに立ち上がって横に動き、またニースライスを仕掛けてマイナスポイントを回避する。メレガリはたまにシモエスの片足を引き寄せるが、その度にシモエスはすぐに立ち上がって距離を取る。メレガリとしては思うように形が作れないなか、時間が過ぎていった。

残り1分。シモエスは低く入る両足担ぎと片足担ぎでメレガリに攻撃をさせない。メレガリがシッティングを試みると、すかさず上半身を浴びせて潰すシモエス。終了寸前にシモエスに一つマイナスポイントが入るが、時すでに遅し。

結局マイナスポイントが1つ少なかったシモエスが、階級別2回戦のリベンジを果たすとともに、2015年の88キロ以下級、2017年の99キロ以下級に続いて3階級制覇を果たした。メレガリとしては、序盤に犯した痛恨のミステイク──ADCC決勝戦のみ適用されるルールへの対応を間違えて引き込み、マイナスポイントをもらってしまったこと──が、最後まで響いた形となった。

戦前は大きく注目されていなかったベテラン、シモエスが執念の優勝。戦いぶりは決して派手ではなく、実際無差別級の4試合は全て僅差のポイントかレフェリー判定での勝利だ。しかし相手が誰であれ常に前に出続けた、その気迫とコンディショニングの充実ぶりは際立っていた。

またスタンドレスリングではニック・ロドリゲスにすらテイクダウンを許さず、トップでは安定したベースを保ち相手の仕掛けを遮断し、下になってもメレガリのプレッシャーに耐え、パスを許さずにスタンドに戻る粘り強さを見せる等、ポジショニングの全ての面で強さを発揮したことも勝因だろう。

次回大会のスーパーファイトで当たるゴードン・ライアンには、過去4戦4敗と圧倒的に分の悪いシモエス。彼らの初対決は、16年のEBI 6準決勝だ。その前年のADCCで世界の頂点に輝いていたシモエスは、当時まだ線の細かった若手のゴードンにOTでチョークを極められ、まさかの敗退を喫している。ゴードン・ライアンに初のジャイアントキリングを許し、大ブレイクのきっかけを作ったのがシモエスというわけだ。

そのシモエスは、今や世界最強のグラップラーの名を欲しいままにするゴードンにどう挑むのか。両者の力関係が完全に入れ替わった現在、6年前の番狂わせとは比較にならないほどの世紀の大アップセットを、気迫のファイターシモエスは起こすことができるだろうか。

なお、3位決定戦はサイボーグが棄権したため、タイ・ルオトロが3位に。前回大会にて若干16歳で66キロ以下級に参戦し、ブルーノ・フラザト、パブロ・マントヴァーニという同門の先輩二人を倒して4位入賞したのに続いて、19歳の今回は88キロ以下級の体格で無差別級銅メダル。2大会続けての快挙達成となった。

■無差別級リザルト
優勝 ユーリ・シモエス(ブラジル)
準優勝 ニコラス・メレガリ(ブラジル)
3位 タイ・ルオトロ(米国)

The post お蔵入り厳禁【ADCC2022】無差別級 古豪ユーリ・シモエスがスタンド磨いてオープンクラスを制す first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ADCC2022 MMA MMAPLANET o   ジャンカルロ・ボドニ タイ・ルオトロ ニコラス・メレガリ ハイサム・リダ

お蔵入り厳禁【ADCC2022】無差別級 タイ・ルオトロ、今大会道着柔術最強メレガリ相手に奮闘の準決勝

【写真】体格差だけでなく、ノーギの慣れとファウンデーションの強さでタイを下したメレガリ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第21回は――お蔵入り厳禁、今大会の出場者のなかで道着柔術最強といっても過言でないニコラス・メレガリとタイ・ルオトロが対戦した無差別級の準決勝の模様をお伝えしたい。


もう一方のブラケットを勝ち抜きタイとの準決勝まで上がってきたのは、99キロ以下級で3位入賞したニコラス・メレガリだ。

初戦はヴィニシウス・フェレイラ相手に下から足を取りにゆくと、勢いよくスピンして引き抜いたフェレイラが左ヒザを負傷してしまい棄権。メレガリが次に駒を進めた。二回戦でメレガリを待っていたのは、同門にして88キロ以下級を圧巻の強さで制したジャンカルロ・ボドニだ。

ボドニは初戦では、一年前のWNOチャンピオンシップの重量級3位決定戦で僅差で敗れているハイサム・リダと再戦。そのボドニ、ハイサムのオープンガードを丁寧に捌き、体を二つ折りにしてレッグドラッグから背後にまわる。

ハイサムの左腕を両手で掴んで動きを制した後、裏返して後ろ三角絞めをロックしたボドニ。最後は孤立した左腕を捻り上げ、4分少々で一本勝ち。最重量級のハイサムの動きを完全に封じたまま、詰将棋の如く一手ずつ進めて極めまで持っていくという、恐るべしとしか言いようがない技術の高さと圧巻の強さを見せつけた。

ボドニとの同門対決となったメレガリの2回戦。まず小外刈りを内股で切り返されてしまったメレガリだが、下から足を絡めて上を取ると、レッグドラッグからパスに成功。

加点時間帯に入ってからニアマウントからバックに回ってフックを入れ、さらにそれを入れ直す形でリードを6点に広げた。

その後エスケープに成功したボドニにスタンドでテイクダウンを仕掛けられると、あまり抵抗せず下になったメレガリは、得意のガードで残り時間をやり過ごしてチームメイト対決を制し、ルオトロとの注目の準決勝に駒を進めた。

<無差別級準決勝/10分1R>
ニコラス・メレガリ(ブラジル)
Def ExR by Reff decision
タイ・ルオトロ(米国)

スタンドにて、お互い頭に手をかけてはいなし合う展開が続いた後、身長で勝るメレガリが小手に巻いての内股へ。綺麗にタイの体を舞わせたが、タイはヒザを入れて距離を取り、右腕でフレームを作り立ち上がった。

さらにスタンドの攻防が続くなか、メレガリがやや腰高のままタイの右足を掴みながら前に。と、今度はタイが小手からの内股でカウンター。メレガリの体を前に崩すと、次の瞬間必殺のダースチョークをロックオン。

場内の興奮が一気に高まるなか、腕が深く食い込み絶体絶命かと思われたメレガリだが、右腕を張って距離を作って脱出。そのまま体を預けて上を取るメレガリに対し、タイはバギーチョークを狙う。が、メレガリは大きな上半身を引いて逃れてみせた。

そこからしばらく、右でニースライスを仕掛けるメレガリのプレッシャーを、タイが下から耐える展開が続く。やがて試合が加点時間帯に入り、タイは両腕のフレームで距離を作り、さらに脇を差しながら立ち上がった。体格差のあるメレガリ相手に、さすがのスクランブル能力だ。

その後もスタンドで積極的にフェイントから仕掛け合う両者。やがてメレガリが前に出てボディロックを取ると、タイは小手投げでカウンター。が、これを耐えたメレガリはタイの背後にまわる。ここから高々とリフトしてグラウンドに持ち込もうとするメレガリだが、タイはすぐに立つ。

それでも背後に付き続けるメレガリ。タイが自ら前方に倒れてのスクランブルを試みると、巨体を浴びせてハーフネルソンからタイの体を返してフックを狙う。が、タイは一瞬早く体を翻して立ち上がってみせ、場内からは再び大きな歓声が上がった。

その後メレガリは、再びタイの右足に手を伸ばして抱えると、タイの軸足を豪快に刈ってのテイクダウン。スクランブルを試みるタイの背後に付く――や、タイは前転狙い。体重を浴びせてそれを許さないメレガリと、前転して足を取りたいタイの攻防が続く中で本戦が終了した。

スタンドから再開された延長戦。タイはヒザを付いてのダブルレッグへ。深く入りそのままドライブを試みるが、メレガリは倒れず、右の前腕で距離を取って防いでみせた。これは体格差がものを言った。

さらにスタンドの攻防が続き、またしてもメレガリが長い手を伸ばしてタイの右足をキャッチ。そのまま前に出て体を預けて倒し、亀になったタイに背後から覆いかぶさってバックを狙う。が、タイはここもスピンして体をずらし、襷を作ろうとするメレガリの腕を自分の腕で押しのけながら正対してみせた。

下になりかけたメレガリは腕で距離を作って立つが、すかさず迫ったタイは背後からボディロック。が、メレガリは豪快に巨体を舞わせて前方にダイブ。体のグリップを切って立ち上がる。

その後の残り2分、お互いスタンドでフェイントをかけ、手や足を飛ばし合いシュートインを試みるなかで試合終了。激闘を繰り広げた両者を、場内は大歓声で称えた。

レフェリー判定はメレガリに。スタンドでのテイクダウン狙いからタイを亀にさせる場面を数回作ってみせて、背後からフックを狙う時間も長かったので妥当な裁定だろう。

一方、惜しくも敗れたタイ。大きな体格差のあるメレガリ相手に抑え込まれることなく、15分間最後までペースを落とさず動き続けたそのスタミナとスクランブル能力は、驚異としか言いようがない。2回戦のペナからの勝利も併せて、階級別初戦敗退のショックを払拭するに余りある活躍ぶりだった。

The post お蔵入り厳禁【ADCC2022】無差別級 タイ・ルオトロ、今大会道着柔術最強メレガリ相手に奮闘の準決勝 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ADCC2022 MMA MMAPLANET o UFC   ゴードン・ライアン ニック・ロドリゲス

【UFC FPI03】ゴードンがタップ──も、時間超過。ロドリゲスを下し「このスポーツをメインストリームに」

<ヘビー級/20分1R>
ゴードン・ライアン(米国)
Def.OT by 45秒Fastest escape time
ニック・ロドリゲス(米国)

急遽ADCC2022のファイナルの再現となったゴードンとニッキー・ロッドの対戦。7ポンド重く231ポンドだったニッキー・ロッドに対し、ゴードンは引き込んでハーフガードを取る。ゴードンはニーシールド&右腕をオーバーフックも、ニッキー・ロッドが直ぐに腕を引き抜く。スネを使ってバランスを崩しにかかるゴードン、ニッキー・ロッドも長期戦を考慮してか慎重な動きに終始する。

ゴードンが潜ると、ニッキー・ロッドはスプロールして防御。ハーフバタフライから蹴ったゴードンは、アームドラッグでバックを伺う。ニッキー・ロッドの反応にハイガードを取ったゴードンだが、半身になって腕を抜かれる。とはいえ下からの圧でゴードンが、まずは試合をリードした。密着しようとしたニッキー・ロッドにスイープを仕掛け、右腕を差したゴードン。ニッキー・ロッドは一度立ち上がって、間を創りなおす。

ニーシールドの右足を抱え、後方に下がって外したニッキー・ロッドが頭を低く下げると、ゴードンも頭をつけていく。ここでも仕切り直して立ちあがったニッキー・ロッドは、ゴードンのガードを越えることができない。ゴードンも1度レッスルアップを狙ったが、すぐに背中をつけなおした。

試合はハーフタイムを越え、残り10分を切る。ニッキー・ロッドが右腕を差したが、密着時でのリバーサルを嫌がり距離を取り直す。ゴードンはクローズドの中にニッキー・ロッドを入れると、頭を掻いて「どうするやら」という表情を浮かべる。足をすくわれないように立ち上がったニッキー・ロッドが、飛び込んでボディロックに取り右足を抜きに掛かる。

アゴを両手で押したゴードンが離れる。と同時にニッキー・ロッドは立ち上がり、絶対にトップは許さないという意思表示。正座し、頭をつけていったニッキー・ロッドの右足を抱えたゴードンが引き寄せようとする。立ち上がったが抜けなかったニッキー・ロッドが、取られた足を畳むが50/50に入られる。足を組んだニッキー・ロッドは逆にトーホールド、ゴードンが尻を蹴ってエスケープ──結果、ADCCで敗れた形からニッキー・ロッドは逃れたことになる。

残り5分、OTを頭に入れる時間帯に。上のニッキー・ロッドはミスをしないことを第一に堅実に組み続け、冒険することはない。ゴードンも手堅くハーフガードを続け、時折りスイープを仕掛ける。立ち上がっても、足が前に出過ぎないように正座しなおすニッキー・ロッド。自らのグラップラーとしての価値観を崩さず、無理矢理動いて見栄えの良い試合をすることもない両者。特別仕様でないサブオンリー戦は、このまま一見──淡々と過ぎ、タイムアップを迎えた。

OTこそ、勝利の可能性が最も高くなるニッキー・ロッドは後攻に。まずゴードンがシートベルトからボディトライアングル、ロールしてマウント状態としたニッキー・ロッドが14秒でエスケープした。後攻めニッキー・ロッドもシートベルト、ここはまずホールド狙いか。ゴードンも15秒で逃れた。

OT2R、ニッキー・ロッドは腹ばいになるところ、背中を取られ続け同体でロールする展開が続く。逃がさないゴードンだが、腰を抜かれそうになりながらバックグラブをキープする。ゴードンは2分間、バックを取り続けた。対してニッキー・ロッドは、28秒でエスケープを許しゴードンが圧倒的に有利な展開に。

OT3Rもゴードンは、1分13秒コントロールした。こうなるとタップを奪うしかないニッキー・ロッドが、スパイダーウェブでなくシートベルトを選ぶ。ボディトライアングル&アゴの上からパームトゥパームを狙ったシーンも見られたニッキー・ロッドは、残り10秒でRNCの態勢に入る。ガッチリ決まった絞め、2分を経過したが時計は止まらず──ゴードンはタイムボードを指さして、タップかそれを知らす仕草かニッキー・ロッドの太腿をタッチした。

最後は非常に危ないシーンもあったが、結果として45秒のリードでニッキー・ロッドを下したザ・キングは「モチベーション? このスポーツをメインストリームにすることだよ」と話した。


The post 【UFC FPI03】ゴードンがタップ──も、時間超過。ロドリゲスを下し「このスポーツをメインストリームに」 first appeared on MMAPLANET.