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【Road to UFC2024Ep04】キム・キュソン戦=透暉鷹「UFCのトップで面白くない試合をする選手はいない」

【写真】キム・キュソンの日本人との対戦歴を見ると、ここは安パイと思いたくなるものだが全く楽観視していない透暉鷹だった(C)TAKUMI NAKAMURA

18日(土・現地時間)&19日(日・同)に中国は上海のUFC PIで開催されるRoad to UFC2024。2日間で4エピソードが実施されるアジア発、世界最高峰への道──その2日目、エピソード04で透暉鷹が韓国のキム・キュソンと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

透暉鷹は2022年12月に河村泰博に一本勝ちし、フェザー級に続いてバンタム級キング・オブ・パンクラスを獲得。年始のMMAPLANETでのインタビューではRoad to UFCへの出場を希望しており、それが叶った形となる。パンクラスでの2階級制覇も、バンタム級転向も、すべてはUFC参戦のため――。いよいよ透暉鷹がUFCへの道を歩み出す。


――上海入りしたあとのインタビューありがとうございます(※取材は14日に行われた)。本格的なファイトウィークがスタートしたところだと思いますが、どのような感じですか。

「UFCの施設や環境がものすごく整っていることが一番衝撃ですね」

――海外遠征ではありますが、そこまで苦労はないですか。

「そうですね。明日から食事も支給されますし、練習場所まで近くてバスも出ているので、移動も楽なんです。試合以外の作業もなく、ストレスがフリーなので、すごくいいですね」

――透暉鷹選手はパンクラスでの戦いを経て、Road to UFCへの出場が決まりました。実際に決まったときの心境はいかがでしたか。

「もともと僕は世界で戦うためにパンクラスを選んで、ずっとRoad to UFCには出たいと思っていました。ただ実際に出られるかどうか分からない状況で、色んな角度・色んな方面からアプローチしてもらっていたんです。そこはもう出られるように祈るしかなかったんですけど、こうしてチャンスが来て本当に嬉しかったですね」

――今までの試合とは違って、正式に出場決定を待つ状況だったと思いますが、どのような心境で過ごしていましたか。

「チャンスが来ることを信じて練習していましたね」

――昨年12月の河村泰博戦からバンタム級に階級を落とす形でしたが、それも×世界やRoad to UFCを見据えてのものだったのですか。

「そうですね。海外挑戦が見えてきたくらいから、階級を落とすことを視野に入れて体を作り直してっていう感じでやっていました」

――計画的に体重を落としていたのですね。

「もちろんフェザー級よりきついはきついです、最後の水抜きとか。でもそこは海外の選手とやるには必要なところなんで。色々なことも経験していきながら、バンタム級まで落とせるように普段から節制しています」

――透暉鷹選手としては実績やキャリアを積んでRoad to UFCにチャレンジするというよりも、明確にRoad to UFCにチャレンジするという目標があって、そこから逆算してやってきたわけですね。

「はい。元々そこを目指してやってきたので。だからいよいよ自分が望んでいた戦いがここから本格的に始まる、という心境です」

――河村戦以降はどのようなことを意識して練習してきましたか。

「自分の課題というか、ずっと取り組んでいる技術的なところがあって、それは試合で経験しないといけない、練習では身についていかない部分でもあるんですね。だから試合と練習を重ねながら、しっかり取り組んでやってきました」

――実際に試合にならないと分からない部分もあると思いますが、練習での変化・手応えは感じていますか。

「自分ではそこまで分からないのですが、練習仲間や周りのコーチ陣には、スピードが上がったねと言われます。スピードが上がれば打撃のキレも上がって威力も変わってくるし、階級を落としたほうが普段の練習の質が上がって、良い練習ができてますね」

――節制してグッドシェイプになったことで、練習全体の質が上がっているようですね。

「そうですね。技術的にもちゃんと練習できるみたいな」

――技術面ではどういったことを意識してきたのですか。

「自分の得意なところは組みだったり、フィジカルや瞬発系の動きを生かすことで、そのうえで例えば組みだったら、自分が力を使っていても、ちゃんと相手に力が伝わっていなかったら意味がない。そこでテクニック的にしっかり力を使うというか、しっかり力が伝わるように、ですね。練習でも試合の中でやっていることをイメージしながらやらないと、ちょっと感覚が違ってきたりするんです。それは打撃の部分も同じで、自分がテイクダウンして極めたりとか、パウンドアウトするための総合的なストライキングの距離感やシュートボックスの距離感をずっと取り組んでいます」

――対戦相手のキム・キュソン選手にはどんな印象を持っていますか。

「結構日本人とも試合をしている選手なので、日本人とやることにも慣れているのかなと思います。僕もフェザー級では長身の選手とやることが多くて、オーソドックスで亀井(晨佑)選手とか。だから(身長が184センチの)キュソン選手のイメージはしやすいのかなと思います。

ただ技術的には今までやってきた相手よりも、もっと上だと思っていて。グラウンドで寝かされてから立つ動きとか、柔術的な感じの動きとかも多分全然レベルが上がってくると思うんで、そこをしっかりイメージして練習してますね」

――キュソン選手はデータも多い選手なので作戦も立てやすそうですね。

「練習仲間にも180センチぐらいの選手がいて、それこそ日沖(発)さんは身長も体型も似ているので、練習はしっかりやってくることができました」

――Road to UFCはUFCと契約することがゴールで、一戦一戦結果が大事な戦いです。どんな戦いを見せたいですか。

「僕は普段の練習からプロとして面白い試合をやれるように…というか、技術的にUFCのトップにいる選手で面白くない試合をする選手っていないじゃないですか。ちゃんとそこを普段の練習からやっていて、それを試合に出していけば、自然にいい試合ができると思うんですよ。格闘技は相手あってのものだし、そこが噛み合うかどうか分からないですけど、自分の中では練習でしっかりフィニッシュを狙って戦う。

練習で漬けたり、判定を狙う動きばっかりしていると僕は絶対に勝てないと思っているんで。普段からフィニッシュを狙って練習して、その練習通りにやれば結果も出るし、いい試合ができると思います」

――純粋に強い選手の試合は面白いですし、強いからこそフィニッシュを狙えるのも確かです。

「そのくらい強い選手しか集まってこないから、UFCは人気があるんだと思います。たまに選手の気持ちが折れたように見える試合もあると思うんですけど、あれは気持ちが折れてるわけじゃなくて技術・フィジカル的に負けているからだと思うんですよ。

そこは気持ちでどうにかなるものじゃないから。ちゃんと練習から技術とフィジカルを作って、それを試合で出すことが出来れば気持ちは折れない。僕はそういうものだと思っているから、ちゃんと練習・試合でやれてないと駄目だなと思います」

――技術・フィジカルで競っているからこそ最後は気持ちの勝負になるわけですからね。それでは最後に日本のファンにメッセージをいただけますか。

「正直試合が決まった直後は日本のファンに対する想いみたいなものを考えたことがなかったんですね。でも試合が近づくに連れて、色んな人から声をかけてもらうようになって。僕自身、UFCに向けて試合をやってきて、今までとやってきたことは変わらないんですけど、海外で試合する=日本のみんなが応援してくれるんだなということを日に日に実感しています。

今まではあまり気負う感じではないんですけど、しっかり周りの声や応援もプラスに変えて、今までやってきたことをしっかり出すことに集中していきたいなと思います」

■視聴方法(予定)
5月19日(日)
午後9時~UFC Fight Pass
午後6時45分~U-NEXT(※Ep03から引き続き)

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45 MMA MMAPLANET MMAとフィジカル o Special YouTube   パンクラス ワタナベ関羽マサノリ 久米鷹介 栄養 竹本啓哉 粕谷優介 鈴木陽一 食事

【Special】『MMAで世界を目指す』第5回:鈴木陽一ALIVE代表「MMAファイターの食事と体づくり」─02─

【写真】4月29日にパンクラスで粕谷優介を下した久米鷹介。試合2カ月前で、このグッドシェイプを維持していた(C)SHOJIRO KAMEIKE

世界的なスポーツとなったMMAで勝つために、フィジカル強化は不可欠となった。MMAPLANETでは「MMAに必要なフィジカルとは?」というテーマについて、総合格闘技道場ALIVEを運営する鈴木社長=鈴木陽一代表が各ジャンルの専門家とともに、MMAとフィジカルについて考えていく連載企画をスタート。連載第5回目は、前回に続き公認スポーツ栄養士の牛島千春氏とMMAファイターの食事と体づくりについて考える。
Text by Shojiro Kameike

<連載第5回Part.01はコチラから>


鈴木 どの年代でも増量期はカロリーを増やして、減量期はカロリーを減らすという原則は変わらないわけですよね。

牛島 はい。たとえカーボを優先しても、少量のカーボだけでカロリー摂取量が低すぎると意味はないですから。特に成長期であれば、成長する分のカロリーも摂取しないといけないですし。一方でMMAの場合は、試合のない時期の食事の内容も考えておかないと、いざ試合前になると減量もしづらくなってしまいますよね。

鈴木 試合がない時期、つまり通常は糖質中心の食事のほうが良いですか。

牛島 糖質中心のほうが、減量期に入ると体重を落としやすくなると思います。脂質を上げすぎてしまうと、脂肪が増えてしまいますからね。そのケースでよく言われるのが「クリーンバルク」と「ダーティバルク」です。

牛島 たとえばジャンクフードばかりを食べて体を大きくのするのが「ダーティバルク」で、クリーンな食事で体を大きくすることを「クリーンバルク」と呼びます。ただ体を大きくするだけであれば、ダーティバルクでも良いのですが……。

鈴木 以前、何かの記事で見たことがあります。1日10本コーラを飲んで体を大きくしたけど、コーラを飲まないとイライラするような体質になってしまったと。コーラを飲むと血糖値が上がるじゃないですか。するとインスリンが分泌されて、血糖値が下がりすぎてイライラするようになってしまう。そうならないようにコーラを飲み続けるという……。

牛島 血液検査を実施している競技であれば、その状態では血糖値で引っかかってしまいますよね。

鈴木 やはり成長期の体づくりではカーボを先に摂ることも重要だけど、ちゃんとバランスを見ていかないといけないですね。練習中に、吸収の良い糖質が入ったドリンクを飲むのは良いですか。たとえばポカリスエットやアクエリアスとか。

前編にもあったとおり、ファイターにオフシーズンはない。竹本啓哉とワタナベ関羽マサノリのコンビは1週間のスパンで互いの試合を控えていた(C)SHOJIRO KAMEIKE

牛島 良いと思います。あるいはBCAAが入ったサプリメントを摂るとか。アミノ酸が欠如すると筋分解が起きてしまいますから、筋肉のエネルギー源になるBCAAは摂ったほうが効果的ですね。特に強度が高いスポーツや、運動時間が長い場合はBCAAを摂らないと逆に筋肉も減っていく場合があります。

鈴木 「運動時間が長い」というのは、どれくらいの時間を指しますか。

牛島 2~3時間でも長いと思います。

鈴木 MMAって打撃と寝技、全てをやると2~3時間ぐらいは普通に掛かってしまいますよね。ウチの場合は、計4時間ぐらいになることもありますし。

牛島 それは凄いですね! 練習の間はドリンクだけで繋いでいるのですか。

鈴木 ドリンクぐらいです。そうなると筋肉が減ってしまいますか。

牛島 練習後のエネルギー補給は、どうしているのですか?

鈴木 選手によってバラバラですね。練習を終えて自宅に帰ってからガッツリと食べている選手もいると思います。

牛島 遅い時間にガッツリ食べてしまうと消化しきれずに、翌朝しっかりと食べられないケースも出てきますよね。

鈴木 練習を終えて夜11時に食事をするとしたら、やはり野菜とたんぱく質が中心の食事のほうが良いですか。

牛島 そのほうが消化に良いと思います。炭水化物も良いですが、糖質を摂りすぎると消化にエネルギーが使われすぎて、熟睡できなくなる可能性があります。睡眠の質が下がると翌日の動きにも響いてしまいますよね。やはりガッツリと食べるのは、寝る2~3時間ぐらいまででしょうか。

鈴木 それは難しい(苦笑)。

牛島 夜に練習する状況だと、帰宅してすぐに寝なければ翌日に響いてしまいますよね。そのためには朝と昼にちゃんと食べて、夜の練習前に栄養を摂取しておくことが大切になります。

鈴木 ジムの周囲に飲食店を探しておいたほうが良いね。

牛島 練習後はできるだけ早く栄養を摂ったほうが良いので、帰宅して食事するまで1時間も空くようでしたら、練習直後に補食でつないでほうが良いです。早ければ早いほど翌日に疲れも残らないので。理想は最初に糖質を摂ってからプロテインを飲んだほうが効率は良いですね。血糖値を上げてから、たんぱく質を摂るという。

鈴木 その場合、糖質が入ったプロテインでも良いですか。

牛島 はい、それでも大丈夫です。

鈴木 なるほど。あるいは練習後に、おにぎりを販売するか……。

牛島 そういうのはアリだと思いますよ。昔は部活で練習後にマネージャーさんが、おにぎりを用意していることもありましたし。

鈴木 そうだ! 僕も部活で練習後は走って寮に戻り、すぐに食事していました。当時は「なぜこんなに早く食事するのだろう?」と思っていたけど。

牛島 トレーニング後にすぐ糖質を摂ることができるよう、炊飯器を持って移動されているボディビルダーの方もいるぐらいですし。

鈴木 昔はごはんや鶏むね肉をタッパーに入れて持ち歩くことが多かったけど、最近はごはんを炊いて、そのまま炊飯器を持って移動する人がいますね。

牛島 もちろん極端な例ではありますが――1日3食だけでなく、トレーニング後にエネルギー源を補給する。筋肉を減らさないためには、それぐらいの意識が必要ということですね。

格闘技専業でもないかぎり、どうしても練習は仕事や学校が終わってからーー。1日の生活リズムを考えることは必須だ(C)ALIVE

鈴木 昼間に仕事や学業がある選手に必要なことは、まずは朝と昼にしっかり栄養を摂取すること。あとは練習前に補食でつなぎ、練習直後に糖質からたんぱく質を摂取して、あとは早く寝ろ――ということですね。

牛島 「朝ごはんを制する者が競技を制する!」ということですね。あと1日3食はもちろん、たんぱく質はコツコツと摂っておくほうが良い場合もあります。たんぱく質は一度に溜めておく量が限られているので。6時間経ったらグリコーゲンが枯渇してしまうので、炭水化物もコツコツと食べておいたほうが良いです。

鈴木 そう考えると、昼ごはんと晩ごはんの間に「3時のおやつ」を食べるという習慣も、本当によく出来ていますよね。

牛島 3時ごろは一番、脂肪になりにくい時間ですからね。夜になればなるほど脂肪を溜めこむ遺伝子が働くようになります。そういった生活習慣に変えることも簡単でないとは思いますけど……。

鈴木 でもプロのファイターにとっては、そういった調整も仕事のうちですから。

牛島 これだけは言えるのは――アスリートにとって、どうしても埋められない才能の差というのはあると思います。しかし食事も含めて体づくりは、自分の努力次第という面が大きいんです。それこそ1日3食と3時のおやつは、もともと皆さんが日常でやっていることで。その内容を変えてみるだけでも良いですから、ぜひ始めてみてください。

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【Special】『MMAで世界を目指す』第5回:鈴木陽一ALIVE代表「MMAファイターの食事と体づくり」─01─

【写真】高校生に全日本アマチュアMMAを制した、ALIVE所属の山本麻弥。彼のような十代ファイターが増えていくと同時に、新しい体づくりも求められている(C)SHOJIRO KAMEIKE

世界的なスポーツとなったMMAで勝つために、フィジカル強化は不可欠となった。MMAPLANETでは「MMAに必要なフィジカルとは?」というテーマについて、総合格闘技道場ALIVEを運営する鈴木社長=鈴木陽一代表が各ジャンルの専門家とともに、MMAとフィジカルについて考えていく連載企画をスタート。連載第5回目は、前回に続き公認スポーツ栄養士の牛島千春氏とMMAファイターの食事と体づくりについて考える。
Text by Shojiro Kameike

<連載第4回Part.01はコチラから>
<連載第4回Part.02はコチラから>


鈴木 前回に続いて公認スポーツ栄養士の牛島さんと一緒に、MMAファイターに必要な食事や栄養の摂り方などを考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

牛島 よろしくお願いします!

鈴木 今回のテーマは2つあります。一つは成長期の減量と体づくり、もう一つは昼間に仕事や学業がある選手の食事の摂り方についてです。

まずは成長期の減量と体づくりについて――我々がMMAを始めた二十年前というのは、選手は大人ばかりでした。柔道やレスリングからMMAへ、というように。しかし今は子供の時期からMMAを始めていることが多いです。成長期、つまり中学3年間や高校3年間は身長も体重も大きく変わる。その時期の減量や体づくりには、どうしても公認スポーツ栄養士さんなど専門的な知識が必要になってきます。

牛島さんの「公認スポーツ栄養士」という資格の詳細は前回記事へ(C)SHOJIRO KAMEIKE

牛島 MMAが階級制のスポーツであるという点がポイントですよね。成長期の体づくりを考えるうえで重要なのは、骨が成長するのは20歳まで。筋肉や脂肪は20歳以降でも増やすことはできます。しかし骨量を増やすことができるのは十代の間ですから、その時期に過酷な減量を課すのは……。

鈴木 栄養士の観点からすると、絶対にNGですよね(苦笑)。身長も伸びている、骨量も増やさないといけない時期でも階級を変えず、どんどん減量がキツくなってくるという。

牛島 そうなると骨量が増えない恐れがあります。もっと長い目で選手のことを考えてほしいな……という気持ちにはなってしまいますね。

鈴木 十代の成績より二十代の健康を考えてほしい。ウチのジムでも高校生が入会してきたら、まず身長について訊くんです。身長が伸びている間は、無理な減量をすることがないように階級を考えるようにしています。

一方で、ウチの山木麻弥は高校2年生でパンクラスのアマチュアMMA全日本選手権で優勝しましたが、プロデビューは遅らせました。というのも、まだ成長期だから、練習していると痛みを感じる箇所が多くて。彼は天才児ではあるけれど、やっぱりプロで試合をしていくためには、ちゃんと体づくりをしないと――と思いました。

牛島 確かに。せっかくの才能がもったいないですよね。

鈴木 子供の頃からMMAをやっていて、高校時代にプロデビューする選手は今後も増えていくでしょう。そのためには十代の選手の体づくりは考えておかないといけない。

牛島 栄養の摂り方は年代によって変わってきますし、シーズンによっても違いますしね。

鈴木 シーズンという点では、MMAは他の競技と違ってオフシーズンがないんですよ。

牛島 えっ、オフシーズンがないというのは……。たとえば野球やサッカーなどは、オフシーズに体をつくり込んだりしますよね。そういうことができないわけですか。

鈴木 そうなんです。打撃主体か組み技主体かでも体型から違ってきますし。

牛島 う~ん、それは難しい(苦笑)。何が合っているか、何が合っていないかの幅も大きく変わってきますよね。

鈴木 成長期の選手と昼間に仕事や学業がある選手、いずれも知りたいのは「1日のうち何時、何を摂取すれば良いのか」ということだと思います。オフシーズンがない、定期的に試合をする選手に必要な体づくりと栄養とは何なのか。

牛島 常に体が出来ている状態にしていないといけない、ということですね。

鈴木 はい。プロになればスクランブル出場――試合直前に欠場した誰かの代わりに試合をすることもあります。道場の場合だと、自分の試合が終わっても道場の仲間の試合があれば練習相手になる。完全にオフになる期間というのは、なかなか少ないです。

練習前と練習後、いつどんな栄養を摂取するべきなのか。後編でさらに深堀していきます(C)SHOJIRO KAMEIKE

それとMMAの場合は学生であれば昼は学校に行って、夜に道場で練習する。社会人であれば昼は別の仕事を持っていて、仕事が終わってから夜に練習する。そして夜10時か11時に練習を終えて、帰宅して寝て、翌朝はすぐ仕事や学校に行くというケースが多くて。

牛島 そのケースであれば、まず朝と昼はきちんと食べますよね。あとは補食で繋いでいくしかないと思います。

鈴木 補食というのは?

牛島 「食事を補う」と書いて「補食」と言います。お菓子などではなく、おにぎり、パンなど栄養のあるものを指します。

鈴木 炭水化物が中心になるのでしょうか。

牛島 いえ、たんぱく質も含みます。要はガッツリとした食事ではなく、軽食といって良いかもしれません。まずは朝ごはんと昼ごはんをしっかりと食べておくことが前提で、あとは練習中にもエネルギーを補給しておかないと、そもそも体力がもたないですよね。

鈴木 そうなると、まずは生活習慣から変えていかないといけない。

牛島 たとえば朝ごはんが補食レベルだと、1日はもたないと思います。もう1日に必要なカロリーを朝と昼に摂るぐらいの意識でいないと……。

鈴木 朝起きてすぐの時間は胃腸が動いていない、つまり消化が悪いという状態になってはいませんか。

牛島 仰るとおりです。朝ごはんの場合は、まず温かい白湯を飲んでから食べたほうが、内臓の働きが良いですね。朝ごはんが定食形式なら、お味噌汁から飲んだりとか。

鈴木 あぁ、なるほど。ごはんを食べる時にまず味噌汁から口をつけることが多いけど、それも理に適っているというか。

牛島 コース料理は、まさにそうです。スープ、前菜、たんぱく質から最後に炭水化物と。これが健康に良い順番です。これが増量の場合は逆で、野菜ではなく糖質から摂ります。

鈴木 え、どういうことですか。

牛島 減量の時は「ベジタブルファースト、カーボフィニッシュ」といって、先に食物繊維を食べておきます。すると血糖値の上昇が緩やかになり、同じものを食べても体重が増えにくくなると言われていて。反対に増量の場合は「カーボファースト、ベジタブルフィニッシュ」で、先に糖質で血糖値を上げておいてから他のものを食べると、筋肉が増えやすくなります。

鈴木 それこそまさに、まず筋肉を増やしてから減量で体重を落とすMMAに必要なことですよね。たとえば幼少期から打撃系競技をやっていた子が高校生になってMMAを始めようとした時、やはり線が細い子が多い。道場でレスリングや相撲をすると押し負けてしまうから、まずは筋肉を増やさないといけないという状況ではあります。

牛島 その場合は、やはりカーボファーストですね。野菜でお腹いっぱいになっちゃうと、糖質まではお腹に入らなくなってしまうので。特に食が細い子は、野菜よりもお肉のほうを優先して食べてもらうことはあります。

<この項、続く>

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【UFC ESPN50】ハニ・ヤヒーラと対戦、ビクター・ヘンリー「こっちからサブミッションを仕掛ける」

【写真】ビクターは135.5ポンド、ハニは136ポンドで計量をパスしている (C)MMAPLANET

27日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでUFC on ESPN55「Nicolau vs Perez」が開催され、ビクター・ヘンリーがハニ・ヤヒーラと戦う。
Text by Manabu Takashima

柔術家として、柔術の技術でUFCを戦い続けるハニのスタイルに最大の経緯を払うビクターは、そんなハニに勝つには掟破りのサブミッションを仕掛けることを明言した。


──ビクター、うっすら汗が見えますね。

「そうなんだ、体重を落としている。もう痩せっぽっちだ(笑)。ドライアウトはそれほどしなくて、水をメチャクチャ飲んでいるんだよ」

──ウォーターローディングですね。

「大体1日に2ガロンほど、飲んでいるよ」

──7.5リットルも!!

「食事は本当に少ない量しか摂っていなくて、あと13ポンド落とすんだ」

──そんな時にインタビューを受けてくれてありがとうございます。ところで前回のジャビット・バシャラットとの試合は、急所蹴りでノーコンテストという残念な結果に終わりました。

「1R、彼は足なのかミドルなのか。それほど低くない蹴りを使ってきて、それがかすったんだよ。ファールカップがずれて、位置を戻した。そしたら2Rになって、今度はモロにカップを蹴られ耐えがたい痛みに襲われた。もう、アレで全てが終わったよ。凄く残念な結果に終わったけど、これもファイトだ。それにジャビットも狙って蹴ったわけじゃないしね。

4日間、腫れて歩くこともできなかった。それでも動けるようになったら、すぐにトレーニングに戻ったけどね。そういうことだよ。今は全く問題ない」

──ああいうアクシデントで試合が終わった時、仕切り直しのリマッチを戦いたくなかったですか。

「それはUFC次第だから。僕の方から誰かと戦いたいと言ったことはない。誰とでも戦うし、もちろんちゃんとした額のファイトマネーが支払われるならということだけどね。でも、僕の方から誰かにチャレンジするとかっていう気持ちはないんだ」

(C)Zuffa/UFC

──ビクターとハニ、日本のファンが思い入れのある選手同士の対戦となりました。

「僕もハニも日本で戦ってきた歴史がある。ただ、それよりもハニという自分が何をすべきかを理解しているファイターと戦えることが楽しみでならない。彼はPRIDEの時代のオールドスタイルを知っている。そういう経験をしてきた選手と戦えることもワクワクするんだ」

──ホイス・グレイシーの時代と違い、誰もが柔術を知っている中で柔術だけでUFCを戦い抜いているハニをどのように思っていますか。

「ハニは本当に尊敬に値するファイターさ。ただ今のファイターが皆、柔術を知っているとは思ってない。皆、半柔術なんだよ。サブミッションファイティングはテイクダウン、ポジショニング、サブミッションという流れでもない。テイクダウン、ポジション、パウンド、そしてサブミッションだ。

みなキックボクシングを続け、パンチを当てるとRNCを狙う。そういう試合ばかりで、彼らが柔術を知っているというわけじゃない。そんななかでハニ・ヤヒーラは数少ない、本当の柔術の使い手だ。デミアン・マイアに並ぶ、MMAで柔術を使いこなすファイターで。本当に凄いと思っている。彼のような拘りを持った選手は凄く重要だ。ハニが何をやってくるのか、相手は分かっているのに止めることができない。凄いことだよ。

今、多くのファイターはただ勝利を目指している。内容は関係ないんだ。ただ勝とうとしている。対してハニは自分が効果的だと信じた技術、柔術を使って勝利を手にしている」

──その意見を持てるビクターは反柔術でなく、柔術が分かっているファイターだと理解して良いですか。

「イエス、ハニ・ヤヒーラほどではないけど、僕は柔術を知っている。僕はレスラーで、キャッチレスリングを通してMMAにおける柔術を理解している。凄くピュアな柔術スタイルをね」

──ビクターもハニも、フィニッシュを目指すというファイト・アイデンティティは同じかもしれないですね。

「もちろん、フィニッシュをするために戦う。しかも、時間はかけたくない。効率く良く稼ぐんだ(笑)。同じ額を手にするなら、短い時間で貰う方が良いだろう(笑)。15分とか25分戦っても、2分でフィニッシュしてもファイトマネーは同額だ。なんで、そんな長い時間戦わないといけない? 当然、少しでも早くフィニッシュする方がエンターテイメントとしても上質だ。

前に日本でRIZIN×Bellatorのショーを観たけど、いくつかの試合は退屈だった。あの時、日本のファンですら携帯に目をやっていたよ。あくびをしながらね。ああいう対抗戦だから、負けらないという気持ちになるんだろうけど、あのファンの反応をみていたら再び対抗戦を組もうとはならないよ」

──ではビクターはどのようにハニとエキサイティングなファイトを披露しようと考えていますか。ハニに勝利するには彼のゲームに付き合わないことが一番です。テイクダウンを切る。突き放す打撃で深追いはしない。寝技には付き合わない。タイロン・ウッドリー×デミアン・マイアのような展開ですね。凄く退屈な試合になってしまいました。

「もちろん、彼の思うように戦わせては勝てない。ハニは低い姿勢で足を取って倒し、抑え込もうとするだろう。でも、そこから逃れる手段はある。それにはハニ・ヤヒーラが何をやってくるのかを理解する必要がある。ただ、逃げようとしてもコントロールされるだけだ。

僕は彼が何を仕掛けてくるから分かっている。対処方法もある。そのなかの一つが、こっちからサブミッションを仕掛けることだ。その機会が訪れれば、サブミッションを仕掛けるのは当然だからね」

──そんなシーンが見られることを楽しみにしています。では最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

「6月22日、ジョシュ(バーネット)がBloodsportを日本で開催するけど、僕も日本に行く予定だ。すぐに皆と会えるね。その前に僕とハニ・ヤヒーラの試合を楽しみにしてほしい。僕らはオールドスクールのMMA、日本で見られた戦いをするから」

■視聴方法(予定)
4月28日(日・日本時間)
午前5時00分~UFC FIGHT PASS
午前4時30分~U-NEXT

■UFC ESPN55対戦カード

<フライ級/5分5R>
マテウス・ニコラウ(ブラジル)
アレックス・ペレス(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
ライアン・スパーン(ブラジル)
バグジン・ガスコフ(ウズベキスタン)

<女子フライ級/5分3R>
カリーネ・シウバ(ブラジル)
アリアネ・リプスキ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ジョナタ・ジニス(ブラジル)
オースティン・レーン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ジョナサン・ピアース(米国)
デヴィッド・オナマ(ウガンダ)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
ウロス・メディッチ(セルビア)

<バンタム級/5分3R>
ハニ・ヤヒーラ(ブラジル)
ビクター・ヘンリー(米国)

<ライト級/5分3R>
オースティン・ホバート(米国)
ミハウ・フィグラック(ブラジル)

<ヘビー級/5分3R>
ドンテイル・メイス(米国)
カイオ・マシャード(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ケトレン・ソウサ(ブラジル)
マルニック・マン(米国)

<ライト級/5分3R>
ハメ・ジョントップ(ペルー)
クリス・パディーリャ(米国)

<女子フライ級/5分3R>
イワナ・ペトロビッチ(クロアチア)
リャン・ナ(中国)

<ライト級/5分3R>
マァフゥシャトゥ(中国)
ガブリエル・ベニテス(メキシコ)

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【FAW2024#02】準決勝=ギレルメ戦へ、中村京一郎「BMFのベルトを日本に持ってくるためにUFCに」

【写真】インタビューはUFC300の前。面白い志向のJ-MMAファイターが出てきた(C)MMAPLANET

本日、会場非公開で開催される格闘代理戦争-THE MAX-準々決勝大会。3月15日の1回戦でミスター・ホンデを96秒で破った中村京一郎は、ギレルメ・ナカガワと対戦する。
Text by Manabu Takashima

プロとしての実績は出場メンバーのなかで頭抜けている中村は、当初より本命視されていた。しかし、そこにギレルメとトミー矢野というMMA志向の強豪柔術家が加わったことで、一気に周囲の危機感は増した。と思いきや、ダブル・ディレクター制を敷く中村を支える中村倫也はポジティブ・シンキングに満ち溢れている。対照的に、岡見勇信は不安が頭が離れない。まるでアクセルとブレーキのような両監督とともに準決勝に向かう中村に話を訊いた。


──準々決勝の勝利から3週間弱(※取材は4月2日に行われた)。中村選手は格闘DREAMERSで既にリアリティTVショーを経験していますが、そこが優位に働くことはあるのでしょうか。準々決勝大会も通常のMMAイベントと空気が違っていたのは確かですし。

倫也 ああ、確かに違いますよね。

岡見 なるほど。

中村 「初めましてっ」ではないので。そこは他の選手とは違うかもしれないですね。ただ僕自身はカメラとかスタッフさんとか、DREAMERSの時から気にしていなかったです。逆にホンデ選手の方があったかもしれないですよね。日本語が分からない。収録。格闘技の試合と揃っていて。だってファイトショーツを試合当日に忘れているぐらいだし。新宿に買いに行っていたらしいです。なんかそれを聞くと、勝った嬉しさがどんどん軽減してしまいましたよ(苦笑)。

──とはいえ、プロのキャリアが上限いっぱいの中村選手だけでに、本命過ぎる。その怖さが監督という立場のお二人はなかったですか。

岡見 絶対に負けられないというのは……変な話、TVの企画だし、負けさせてはならない。ここで負けることはあってはならないという気持ちでした。すんなりと優勝をしてもらわなければいけない。でも番組には、魔の空気感があるので。そこは怖かったです。

──ここに1人、魔の空気感の欠片もなかった人がいます。

倫也 アハハハハ。僕ですか?

岡見 そこが倫也とパト(宇佐美正パトリック)は、何かが乗り移ったかのような強さがありました。特に倫也の最後の凄まじい勝ち方なんかは。「こんなハッピーエンドがありますか」って(笑)。

倫也 それとトーナメント戦って、ワンマッチより想定外のことが起こるとは思います。今回のように3カ月で3試合だとケガの影響とかも出てくるでしょうし。

──そういうなかで、やたらと打撃の前評判が高いミスター・ホンデにあの勝ち方ができたことをどのように自己評価していますか。

中村 たまたまです。あのフィニッシュは。作戦も3分✖2Rで普通と違う。相手の情報もない。だからペースを上げるのは2Rからだったんです。テイクダウンも織り交ぜようとか、そういう話もしていていましたし。

倫也 1日しかないなかで映像を探して、Breakingdownの試合と朝倉海選手のYouTubeでマススパーをしているのを見つけました。スパーと試合の動きが一致していて。奥手のストレートと返しのフック、それとインロー。キックボクシングのなかで嫌な攻撃は、すぐに分かりました。ただキックボクシングの距離だから、一歩外せば良い。それを京一郎は5戦ぐらいの経験でなぜかできてしまうから、僕は全く心配していなかったです。こっちは組みも考えて、試合を組み立てることができるので。

岡見 倫也がそこまでやっているから、スタッフに「岡見選手は何もやっていないですね」って言われちゃいましたよ。アハハハハハ。

──アハハハハ。確かに。

中村 キックの間合いで面倒くさいことにならないよう、四つで組むというゲームプランでしたが、そうはならなかった。組んでみて、ちょっとならないなって思いました。ただ向き合った時に、動きが固かったです。だから最初にフラッシュダウンを奪った時も、そこで仕留めにいかなかった。ホンデ選手は焦っていたけど、集中力が増しました。

倫也 相手がそうなった時って、結構同調してしまうんですよ。そこでラッシュをかけずに、次に勝機が訪れるのを待っていたのも良かったです。あそこで同調していくと、逆に貰うこともあるので。

中村 本当は中に入って、もっと面白い試合をした方が良いかもしれないですが、トーナメント戦なので。

──面白い試合など、必要ないですよね。岡見監督!!

岡見 そこはあえて、僕を名指しですか(笑)。勝ちゃあ良いです。でも京一郎は、僕にない感覚の持ち主なんで。打撃の間合い、見方っていうのは素晴らしいです。あまり被弾しないでKO勝ちができているので。しっかりとMMAを考えた打撃ができる。つまり僕が見ることができなかったところが、見えているのだろうなと。そこを凄く信用しています。

全く緊張をしない。そこも僕とは違うのですが、実はテンションがいつもより高かった。倍までとは言わないけど、8割増しぐらいで話しているし。これから試合だという空気感は全然なくて。

中村 ストライカーだからというのもあったと思います。前日に戦うことが決まったわけで、研究する時間もないからこそ絶対に負けないと思いました。

岡見 普通はそこまでリラックスすると危ないんですよ。普通は。

中村 ケージの中に入ると、スゥっと落ち着くんですよ。そしてグンと集中力が増します。人間の集中力って限られているので、ケージの中に入って上げた方が良いかと思っています。

岡見 僕のキャリアにはないものなので、試合前の京一郎は見ていて不思議な感覚でした。だから逆に怖くなってしまって。そういう選手って、負けて百八十度変わってしまうのも見てきたので……。なので「試合だからね」って言う感じで、要所を締めてはいました。

──今回のフォーマットは約2カ月間に3試合。1カ月に1度のペースで試合があります。初戦は69キロ契約、次からはフェザー級。中村選手の普段の体重は何キロなのでしょうか。

中村 多い時は80キロ以上あります。ただ、今回は75キロぐらいまでしか戻さなくて、今は73キロぐらいです。

──3、4カ月に一度の試合だと中村選手のフィジカルは絶対に武器になると思います。ただ、1カ月おきに10キロの減量がある場合はどうなのか。

倫也 確かに……ただ、僕は高校の時に2週間おきに60キロから50キロまで落としていていました。意外と大丈夫。人間は凄いです。

中村 体が覚えているっていうのもありますね。65キロを覚えていて、食事を抑えると「ハイ、ハイ、ハイ、これね」って体重が落ちていきます。

──いやぁ、岡見選手……この両者の言葉を聞いていると、やはり時代が変わったのかと考えてしまいます。

岡見 特にDREAMERSで出会った子たちは、僕らの時とは違うというのは実感しています。僕らの時代はノウハウがなくて、水を飲まないで落とすなんていう選手もいましたからね。計量が終わったら、コンビニで勝って来たパスタを食べるとか。

──力石徹シンドロームですよね。

中村 アハハハハハ。でも、そういう話も聞いたことがあります。減量は倫也さんに教えてもらったやり方がハマっています。4年目なんですけど、65キロに落としたのは6、7回なので体もフレッシュなんだと思います。

倫也 いや、僕も中学の時とか全く知識がなくて。もちろん、母親もなかった。だから、ずっとコンニャクとキュウリだけを泣きながら、「辛ぇ」って食べていました(笑)。

──エグい、カロリーが低くても栄養価も……。ともあれ進化したダイエットを駆使している中村選手ですが、準決勝はギレルメ・ナカガワ選手と戦うことになりました。決勝進出を考え、他の選手と戦いたかったということはないですか。

中村 僕は誰かと戦いたいとかはなかったです。

岡見 僕も誰でも良かったですね。

倫也 僕は「中谷選手で行こう!!」と。というのも、シャッフルされることを知らなくて。仮で組まれたトーナメント表だと中谷選手だったから、気持ちが中谷選手だったんです。

中村 シャッフルされるっていうのは、試合に勝ってから知りました(笑)。

岡見 まぁ、とにかく山は1回戦。1回戦が全てだと思っていたので。やっぱりリアリティTVショーは特殊な環境で。DREAMERSを経験しているとはいえ、凄く怖かったです。普通の大会なら、全然平気です。でも、この格闘代理戦争の空気が何かを狂わせるんじゃないかと……老婆心ですよね。

中村 それ、対策済みでした。DREAMERSの時、番組をチェックしながら収録が続いていて。あれは感情の起伏が激しかったです。だから、今回は代理戦争の動画を視ていないです。試合だけにフォーカスする。それ以外は目にも耳にも入れないようにしています。番組はトーナメントで優勝してから視ます。

これは狩野(優)選手に負けたことも踏まえて、勉強したことです。あの頃はただ喧嘩をしていていただけで、僕はアスリートじゃなかったです。

だってPOWNDSTORMで勝ったのは倫也さんだけで。控室が一緒の皆が負けた。じゃあ、なぜ? この人だけは勝てたんだって考えました。泣きながら帰ってくる人間とか、いるわけですよ。それだけ背負うモノがあって、実際に背負っているのに戦う時は、それは別モノとして捉えていた。だって、あの時の倫也さんは試合の2週間前に鼻も折っていたんですよ。

倫也 「何があっても関係ない。知らねぇよ」っていう気持ちで。言うと「誰が負けようが知らねぇよ」という気持ちでしたね(笑)。

中村 そこを見習いました。スポーツとしてやっている。減量も練習も、試合に対してのプロセスが──撮影があろうが、徹底していたんだなって。僕も今は割り切りがあるから、試合前に対戦相手の横でインタビューに答えることができて。分けていないと、試合に影響したかもしれないです。それと1試合目だったのが良かったです。試合と試合の間が長いとか、そこは僕には関係なかったので。

それに僕が1試合目にKOをしたことで、他の選手は影響を受けたはずで。逆にあの場で判定勝ちをした中谷選手も、割り切れているんだと思います。

倫也 アスリートって制限のなかで生きているので、ああいう場に立たされると自由にできない。不良上がりは自由にできる。それはそれで羨ましいけど、そういう人はアスリートのような規律はない。そこは戦い方にも表れます。でも、今の京一郎は不良や喧嘩屋とアスリート性の両方を持っています。

中村 髙谷(裕之)さんにも言われました。相手が決まって「作戦とかねぇだろう。明日は喧嘩をすれば良いんだ。相手もお前のこと研究できないんだし」って。

倫也 不良がアスリートになるパターンが一番怖いですよ。

──まさにビビアーノ・フェルナンデスのテイクダウンを切って、殴れる不良上がりですね。

中村 そうなんですよ。テイクダウン防御になると髙谷さんはアスリートになって、技術を言語化もできる。熱いところと、冷静なところを持っているんですよね。

──中村選手がギレルメに対して、そのような戦い方ができるのか。

倫也 初戦の勝ち方も良くて、パフォーマンスも良かったです。もちろん警戒もして、準備もしています。技術的なことをいうと、ワンアタックにピークを持って来ると思うので。そこを集中力を持って対処すれば2回、3回と続くと切れてくるんじゃないかと。無敗といっても、柔術では負けています。そこは京ちゃんの自由さが上回るはずです。

初戦の京ちゃんの打撃を見ると、ギレルメ選手だって同じようには戦えないはずです。真っ直ぐ下がらないし、サークリングもできるので。そういうことにギレルメ選手が、初めて遭遇する試合になりますからね。

岡見 倫也はファン目線というか、もう京一郎の試合を見ることを楽しめるんですけど……僕は心配ばかりで(苦笑)。ホントに勝ってもらわないと。このメンバーのなかでギレルメ選手は一番の相手だと思っていました。ボンサイMMA、クレベルとサトシを引き継いでいる。打撃も振るところは振って、テイクダウンからどんどん極めてくる。固めるのではなく、極める。それがボンサイで創り上げてきたMMAです。

倫也が言ったようにテイクダウンがハマらないと、ボンサイMMA……クレベルは打撃の乱打戦に勝負を賭けてきます。つまりは京一郎の土俵です。そこに持ってくることができれば、京一郎はしっかりと戦ってくれるに違ないです。

──こなれた様に話してくれましたけど、リアリティTVショー向け過ぎて。もう少し、具体的な技術論を話してもらえないですか(笑)。

倫也 アハハハハハハハハ。

岡見 いやいやいや(笑)。ちゃんと話しているじゃないですか。

──ギレルメが引き込む可能性は?

岡見 それもあり得ます。引き込むのか、覚悟を決めて殴り合いにくるのか。気持ちが入っている時と気持ちが落ちた時、ギレルメ選手はどちらを選ぶ選手なのか。何にしろ、京一郎はテイクダウン狙いを1度、2度、3度と切ることが重要です。そこから殴ってくると、僕は思っています。

中村 1回戦と違って対策ができる。それが恐怖になる。フィニッシュしている試合が多いから、この左のパンチを気を付けない──という気持ちが一瞬でも出ると、ギレルメ選手の弱さが出る。ただし恐怖を乗り越えてくるだろうし、そこからの距離、間合いの勝負になると思います。一瞬でも距離を間違えるとギレルメ君、終わるので。組まないといけないという焦りを、3分間で如何に引き出すか。

──逆にギレルメのやるべきことに、ファーストアタックでハメられる恐怖感はないですか。

中村 初戦を見てもパワーを使ってボディロックから倒しに来るので、そこは余りないです。だからこそ2回、3回と切れば落ちてくるのか。それでも前に出てくるのか。あとプレッシャーだけでなく、物理的に削って集中力を切らせる必要もあります。ボディで削るとか、そこに持っていきたいですね。

倫也 バックギアに入っている顔つきをしていて、読めないことをやってきそうで。そこは警戒は必要だと思います。

中村 フィニッシュに入った時、あの顔が少し和らぐんですよ。

岡見 その顔にさせない戦い方をするということで。

──ところで先日、このトーナメントで優勝すると超RIZIN03に出場できるという話がありました。

中村 それもオマケですよね。番組の途中で出てきた話で。「俺もRIZINを目指しています」というキャラになるのは嫌です。

倫也 アハハハハハ。

──ABEMAから「でも、許す」と言って欲しいです(笑)。

岡見 アハハハハ。ストラッサー(起一)じゃないですか(笑)。

中村 僕はやっぱりUFCに行きたいので……というか、行くので。BMFのベルトを日本に持ってくるためにUFCに行きます。次、ゲイジーとホロウェイがBMFでやるじゃないですか。ホロウェイが勝ってくれると、ベルトがフェザー級にくるので。ホロウェイに勝って欲しいです。

■視聴方法(予定)
4月19日(金)
午後7時~ABEMA格闘チャンネル

■FAW2024#02 対戦カード

<フェザー級/3分3R>
ギレルメ・ナカガワ:65.6キロ
中村京一郎:65.65キロ

<フェザー級/3分3R>
中谷優我:65.75キロ
トミー矢野:65.6キロ

<63キロ契約/3分3R>
田畑魂:60.7キロ
ガブリエル・クサノ:62.4キロ

<66キロ契約/3分3R>
脇田仁:63.80キロ
袖裂雄貴:65.75キロ

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【Road FC68】敵地でパク・シウォンと対戦、林RICE陽太「完全に自分がナメられている。俺は甘くないぞ」

【写真】取材は4月5日、林RICEが主宰するパラエストラ森ノ宮で行われた (C)SHOJIRO KAMEIKE

13日(土)、韓国はソウルのチャンチュン体育館で開催されるROAD FC68で、Grachanライト級暫定王者の林RICE陽太が、ROAD FC同級王者のパク・シウォンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

もし日本のMMAに「1年で最も変化したファイター」という賞があれば、林RICEは受賞者の筆頭に挙げられるに違いない。3連敗からの5連勝――しかも今まで見せたことのない跳びヒザでKO勝ちし、さらにベテランの小谷直之も沈める快進撃の末、岸本篤史を下して暫定ながらGrachanのベルトを巻いた。果たして林RICEに何が起こったのか、その真相に迫る。※前日計量では林RICE、キャプテン☆アフリカは共に一発でパスした


――ROAD FCの試合に関するお話の前に、どうしてもお聞きしたいことがあります。

「え……、何でしょうか」

――昨年、林RICE選手の中で何がどのように変わったのかと。

「アハハハ! はい。まぁ、そうですよね」

――林選手のファイトスタイルとしては「MMAの中で柔術をやっている」というイメージでした。しかしその後は2連続KO勝ちを収めており、スタイルの変化に驚いています。

「自分の中では2連続KOの時に変わったのではなく、その後から変化していったという感じなんです」

――というと?

「僕は2022年に入ってから3連敗していました。その1敗目を喫した相手、木村俊也選手とは普段から一緒に練習したり、ご飯を食べに行ったりすることもある仲やったんです。でも僕の中でオファーを断る理由はない。それと『相手が断ってくれへんかな……』という気持ちがあったんですよ。でも木村選手も受けて試合が成立して、僕が負けました。

ただ、負けはしたけど自分の中では『それほど悪い内容ではない。次の試合は頑張ろう』という気持ちがあって。でも次の試合で大宮優選手に負けた時は、練習の時から調子が悪いし、試合でも何か違和感がありました」

――その違和感の原因は何だったのでしょうか。

「これは自分がダメな話で、試合前に新しい技を使い始めるとするじゃないですか。でも練習の時に自分よりキャリアが浅い選手や、ジムの会員さんを相手にその技が使えても、実際の試合でプロにそんな技が通用するはずがない。でも、その技をやってしまったりとか――大宮戦では何かが噛み合わないまま負けちゃって。

さらに3敗目のロクク・ダリ戦は、減量で最後の水抜きに失敗してしまいました。もう言い訳になっちゃうんですけど……。計量後に水分と食事を摂っても回復せず、試合前日の夜には『この調子やと明日の試合はボコボコにされて、殺されてしまうんじゃないか』と考えてしまうぐらいやったんです」

――……。

2023年2月、山下康一朗に3-0の判定勝ち(C)SHOJIRO KAMEIKE

「試合が始まったら、コンディションは少し回復していたけど、やっぱりイメージ通りには動くことができていない。結果、3連敗したあとが先ほど言われた山下康一朗戦で。『ここで負けたら終わりやな』と思っていました。正直、山下選手はまだキャリアが浅かったし、その相手に負けると『次は誰と試合するんや』ってなるじゃないですか。プロモーター側からしても。そんな状態で自分もプロとして続けるのは嫌で。だから山下戦は背水の陣みたいな気持ちで、とにかく黒帯を持っている柔術の技術に持ち込んで勝つことができました」

――山下戦の勝利によって、ご自身の中では3連敗からの流れを断ち切ることはできたのでしょうか。

「いえ。まだ3敗のあとに1勝しただけで、トータルの戦績でも負け越していたんですよ。まずは勝ち越したい。そうなると次の試合で負けてしまうと『たまたま1勝しただけで、今までと一緒や』と思われるじゃないですか。だから次の試合では絶対に勝たないといけない――という状態で、3連勝するぐらいまでは毎試合が背水の陣でした。

次の小川道的選手との試合はグラチャンの大阪大会で、メインで組んでもらいました。でも僕がメインというのは実力じゃなく大阪大会やからな、と自分でも思っていて。正直、小川選手を相手にあの勝ち方ができたのは、たまたまやったんです(苦笑)」

打撃で小川を下がらせ、狙いすました跳びヒザでKO(C)SHOJIRO KAMEIKE

――たまたま、であの跳びヒザが出ますか(笑)。

「自分としては毎試合が背水の陣やから、とにかく全力を出さなダメやと思っていました。すると相手のローに対して左ストレートを合わせた時、メチャクチャ手応えがあって。小川選手の顔を見ると明らかに効いているし、そうなるとテイクダウンに来るやろうと思って、跳びヒザを合わせたんですよ」

――それだけ相手の動きはしっかり見えていたわけですね。跳びヒザでのKO勝ちで、周囲の評価も変わったのではないですか。

「変わりましたね。特に自分が練習を見ている高校生の男の子がいて。小川戦の前までは『林さんって、そこそこ寝技ができるだけで、体格が大きいから自分より強いだけで。あとは、それなりにプロで試合しているだけでしょ』みたいな雰囲気があったんです。それが小川戦のあとは『林さん、凄いっす!』みたいな感じで『コイツ、ムチャクチャ単純やな』と思いました(笑)」

――アハハハ! さすがに林RICE選手の考えすぎという気もしますが、それだけ評価を変える一発だったとは思います。

「やっぱり良い試合して勝ったら、周りの印象も変わるんやなって思いました。その次が小谷直之選手との試合で」

――小谷戦は林RICE選手のキャリアの中で一番の山場だったと思います。ライト級王座を巡る戦いの中で組まれた試合で、しかも相手は実績で大きく上回る小谷選手ですし。

「ここで小谷選手と組まれるんか、と思いましたよ(苦笑)。キャリアでは下の山下選手、同世代の小川選手には勝てても、小谷選手に負けたら『やっぱり上には行けへんのやな』と思われるでしょうし。ここも気持ちとしては背水の陣で。

試合前はムチャクチャ緊張していました。計量の時も小谷選手はメチャクチャ体が大きいし。でも計量後のリカバリーで回復して、自分の中でも『今日は力が出ているわ』と感じるほどだったんです。試合でも四つとケージレスリングの展開になった時、『これはイケる!』と感じて。1Rが終わって『自分がやるべきことをやったら勝てる』と思いました」

――結果は2Rに左ストレートから返しの右フックでダウンを奪い、パウンドアウトしました。

小谷戦のKOで林RICEの変化は確かなものに(C)GRACHAN

「特に1Rから、左のオーバーハンドが当たる手応えを得ていました。フィニッシュは左が当たって、次の右はオマケみたいな感じで当たり小谷選手がダウンしました。あとはパウンドで――小谷戦のKO勝ちで初めて『自分は変わったんや!』と思うことができたんです。戦績もイーブンになったし、次の岸本篤史選手と暫定王者決定戦でも、しっかり前に行ける気持ちをつくることができました」

――ちなみに先ほど仰った高校生の選手は、小谷戦を視て……。

「もう『林さん、プロのファイターやん!』と。単純でカワイイなぁと思いました(笑)」

――アハハハ、確かに。岸本選手に勝利して遂に暫定ではありますがベルトを巻きました。しかし暫定という2文字は気になりませんか。

昨年12月、暫定Grachanライト級王者に(C)GRACHAN

「それはやっぱり正規のほうが良いです。『暫定って何やねん』と訊かれて、流れも含めて説明しないといけないし(苦笑)。ただ、やっぱりタイトルマッチをやれて、しかもベルトを巻くことができたのは嬉しいです。あの時はベルトだけでなく自分のキャリアの勝ち越しも懸かっていたので。正直、僕って結構チャンスをもらっているじゃないですか。大宮戦で負けているのに、次にダリ選手との試合を組んでもらったりとか。『ここでベルトを獲らないと、もう二度とチャンスは来ない』という気持ちで試合に臨みました」

――先の山下戦はMMAの中で柔術をやっていましたが、岸本戦はMMAのグラップリングで勝負したという印象が強いです。

「ありがとうございます。僕のほうから組みに行くという展開は、変わっていないと思うんです。でも相手に打撃で圧をかけられても、自分も打撃を捨てずに勝負して、そのうえで自信を持って組みに行く。ようやく総合力で勝てるようになったといいますか」

――ベルトを巻き、ノンタイトル戦で大道翔貴選手を下したあと、次にROAD FCのチャンピオンと対戦する。これは良い流れなのか、あるいは苦行が続くのか……。

「アハハハ、そうですよね。毎試合、前回の試合よりキツくなる。今回もオファーが来て相手の情報を見たら『メッチャ強い選手やん』ってビックリしましたけど(笑)。ただ、自分もベルトを巻いて海外のチャンピオンと試合ができるのは、『認められたんやなぁ』と嬉しいです。一つひとつ勝って、ようやくココまで来たんや、と。

でも今回は相手が長期欠場からの復帰戦で、トーナメントに出るための前哨戦なんですよね。それはもう完全に自分がナメられているんだなって思います。でも僕にとっては怒りというより、YouTubeとかを視ていても『そんなに大きなこと言うて大丈夫か?』と心配になっています。いやいや――2023年は一度も試合をしていないくせに、俺はそんなに甘くないぞって。その間に自分は伸びてきた。変わってきたんです」

――パク・シウォンに対しては、どのような印象を持っていますか。

「正直、強いかどうか分からないです。過去の試合を視ても、相手が無抵抗でやられすぎていて。対戦相手のレベルが分からないので、彼の強さも分からないというのが正直な印象ですね。だから『俺は今まで対戦した相手とは違うぞ』と思うんです」

――なるほど。そして今回は練習仲間であるキャプテン☆アフリカ選手と同じ舞台で試合をすることになりました。

「ずっと一緒に練習させてもらっていて、去年のトーナメントで出花さん(出花崇太郎=キャプテン☆アフリカ)が負けた時は『出花さんが負けるんや。どんだけ強いヤツが出てんねん』と思いました。自分にとって出花さんは憧れの選手なんです。初めてプロ練で出花さんにボッコボコにされた時、『これがホンマのプロ練なんや……』と感じて。僕にとっては出花さんは目標であり、いつか倒さなアカンという選手です。

だから出花さんはどう考えているか分からないけど、僕は対戦したいし、それが韓国で実現するなら嬉しいです。とりあえず今回は、僕のことをナメているであろうまずは今回パク・シウォンに勝って、トーナメントにも出させせてもらいたいですね。韓国でキッチリと自分の仕事をしてきます」

■視聴方法(予定)
4月13日(日・日本時間)
午後2時00分~KAKAO TV、AFREECA TV

■ROAD FC68メインカード計量結果

<Road FC ヘビー級王座決定戦/5分3R>
キム・テイン:106.2キロ
関野大成:110.9キロ

<ライト級/5分3R>
パク・シウォン:70.4キロ
林RICE陽太:70.1キロ

<74キロ契約/5分3R>
ユン・テユン:74.3キロ
キム・サン:74.1キロ

<ライト級/5分3R>
キャプテン☆アフリカ:70.5キロ
ハン・サングォン:70.4キロ

<バンタム級/5分3R>
アレクセイ・インデンコ:63.1キロ
ハン・ユンス:63.4キロ

<Figth100ルール69キロ契約/3分3R>
ピョン・イェジュン:67.4.キロ
醤油ニキ:68.9キロ

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45 AB MMA MMAPLANET o UFC UFC300 アルジャメイン・ステーリング アルマン・ツァルキャン アレックス・ポアタン イェン・シャオナン イリー・プロハースカ カルヴィン・ケイター ケイラ・ハリソン シャーウス・オリヴェイラ ショーン・オマリー ジェイリン・ターナー ジェシカ・アンドラーデ ジエゴ・ロピス ジム・ミラー ジャスティン・ゲイジー ジャマール・ヒル ジャン・ウェイリ デイヴィソン・フィゲイレド ヘナト・モイカノ ホーリー・ホルム ボクシング ボビー・グリーン ボー・ニコル マックス・ホロウェイ マリナ・ホドリゲス 食事

【UFC300】フェザー級転向、前バンタム級王者アルジャメイン「全てやりきったから新しいゴールを」

【写真】300回のスーパーイベントは現地時間の月曜日から水曜日までメディアデーが設けられている (C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」は、実に新旧12人のUFC世界王者が出場するスーパー・メガ・アニバーサリー・ショーだ。
Text by Manabu Takashima

プレリミ出場となった6人の元世界王者に前UFC世界バンタム級王者アルジャメイン・ステーリングが含まれている。昨年8月にショーン・オマリーに敗れて以来の再起戦は、フェザー級二階級をカルヴィン・ケイターと戦うアルジャメインに、この間に出場したグラップリング戦、そして当たらな階級で戦う胸の内を尋ねた。


――UFCでは初めて、実に12年ぶりにフェザー級で戦うアルジョです。今の心境を教えてください。

「良い感じだよ。階級を上げいるから、これまでとは食事も変わり違った体験をしている。凄く状態も良くて、フェザー級でも自信をもって戦えるよ。体の強度も全く落ちていないからね」

──UFC300という記念すべきショーで戦うことに関して、どのような気持ちですか。

「これらのカードに自分の名前が入っていることに、ワクワクするね。現役のチャンピオンと元チャンピオンが揃っている。こんな凄い試合が並んだショーは、これまでになかったはずだ。ファンのためにも良い試合をしたい。ただ勝ちに徹するようなファイトではなくて」

──5年振りにプレリミで戦うことになりますが、そこに何か想うことはありますか。

「全然、気にしていない。早く家に帰ることができるじゃないか(笑)。友人を集めて乾杯して、一杯やるのも早くなる。それが今から楽しみで仕方ないんだ」

──ハハハハ。昨年8月にバンタム級のベルトを失って以来、この8カ月でグラップリングマッチで3度戦いました。組み技の試合に出た目的は何だったのでしょうか。

「試合に出ていたかったんだ。グラップリングも好きだし、自分より大きな相手と手合わせができる。3試合中、2試合は大きな相手と戦うことができた。試合にでることで、実戦感覚を失いたくなかった。それがグラップリングを戦った一番の理由かな。顔を殴られる心配はないし、良い経験になっている。

グラップリングといえども実戦を戦うことで、体が錆びつかないし、技もしっかりとシェイプできる。それにプロの試合だ、ちゃんと稼げたからね(笑)。例え組み技でも、フリーで戦おうとは思わない。色々と試せたし、モチベーションを保つことができた。そんなことを全て含めて、チャレンジしたってことだよ」

──なるほどです。ところでファイトウィークになっても、やはりバンタム級時代と違って肌に張りがあって元気そうです。

「とにかくメンタル面で違いがある。凄く良い感じだ。肉体的にもベターだ。何よりエナジー・レベルは明らかにバンタム級時代より高い。もう2019年には、あと数試合戦ったら階級を上げようとは思っていたんだ。それがバンタム級でタイトルコンテンダーになったから、135ポンドでの戦いを続けていた。ワールドベストにもなれた。結果的にバンタム級世界王者として、試合に勝つたびにもう一度バンタム級で戦うということを繰り返していたんだ。

でも前回は、試合をすることを凄く急いでいた。今回は時間をかけて調整してきたし、全てがポジティブに動いている。自分に誰よりも厳しい減量を課すことで、自らの可能性を高めてきた。それがバンタム級で戦うということだったんだ。脂肪が少なく、ほぼ筋肉のボディなのにギリギリの減量を強いてきた。今回からフェザー級で戦うことで、自分の体の可能性をさらに探りたい」

──アルジョだと、フェザー級でも全く見劣ることはないかと思います。ただし、やはり対戦相手はバンタム級時代と比較すると大きくなるかと。

「カルヴィンに関しては、身長も変わらない。そして、ショーン・オマリーは4インチ(※約10センチ)も背が高かった。細かったけどね。それに練習で長身の選手とやってきたし、相手が大きくなっても構わない」

──では体格面でなく、技術面でケイターのことをどのように思っていますか。

「ボクシングの基礎がある。フットワークも良いし、ジャブも良い。右クロスが特に良いね。ただ、いくら威力のあるクロスを持っていても、その威力が発揮できるような攻防にはならない。そんな場所に留まることがない。すぐに移動するからね。

それでも自分の力を試すファイトになるだろう。今回は過去2試合と比較しても、しっかりと調整できた。過去最高の体調だといえる。だから、ファンの皆に喜んでもらえるよう戦界、その腕でこの手が挙げてもらうファイトをするよ。それからフェザー級タイトルに向けて、動き始める。

正直なことをいえば、現時点でもう自分がやりたいことは全てやってきた。やり切った。もうゴールに辿り着いている。だからこそ2024年は新しいゴールを目指し、新しい挑戦を始めるんだ。今回の試合で、他のフェザー級のタフ・ファイター達にアルジャメイン・ステーリングの存在を認識させるつもりだ」

──ところで、今ではずっとラスベガスでキャンプをしているのですか。

「そうだね。NYに戻る理由がない。最高のトレーニング・パートナーに囲まれていて、より整備された環境で練習ができているからね。NYよりもラスベガスの方が、必要なピースが簡単に手に入るんだ。可能な限り、最高の練習がしたいからベガスでやっている」

──アルジョ、今日はインタビューを受けていただきありがとうございました。最後に日本のファンにメッセージをお願いできますか。日本ファンは井上姉弟のチームメイトだったアルジョのことを少し身近に感じていると思います。

「そうなんだ。ありがとう。そして、いつも日本のファンのサポートに感謝している。そんな皆に伝えたいことは、大変な時を迎えても顔を上げて前に進んで欲しいということ。どんな困難にぶちあたってもダイジョウブ、ダイジョウブ(※日本語で)」

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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45 AB BELLATOR MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN54 アントン・トゥルキャリ アンドレ・ペトロスキー イボ・アスラン エリン・ブランクフィールド エルベウチ・バーンズ カイル・ネルソン クリス・ワイドマン コナー・マシューズ ジェイコブ・マルクーン ジュリオ・アルセ ジョアキン・バックリー セドリクス・デュマ チディ・ンジョグアニ デニス・ブズーキア ヌルスルタン・ルジボエフ ネイト・ランドヴェール ビル・アレジオ ブルーノ・シウバ マノン・フィオホ メリッサ・ガト ルピタ・ゴディネス ヴィクトリア・ダダコワ ヴィセンチ・ルケ ヴィルナ・ジャンジローバ 食事

【UFC ESPN54】ウスベキスタンMMAのパイオニア=ヌルスルタン・ルジボエフ「何かを残す」

【写真】セレモニアル計量には、ウズベキスタン国旗とともに臨んだ(C)MMAPLANET

30日(土・現地時間)、ニュージャージー州アトランティックシティのボードウォーク・ホールで開催されるUFC on ESPN54「Blanchfield vs Firot」。同大会にカザフスタン、キルギスに続き、中央アジアから台頭しつつあるウズベキスタン人ファイターのヌルスルタン・ルジボエフが出場し、メインカードでセドリクス・デュマと対戦する。
Text by Manabu Takashima

大会開催地であるアトランティックシティ近隣の大都市は、実は州を跨いだフィラデルフィア。ウズベキスタンMMA界のルジボエフは、現在フィラデルフィア在住でご当地ファイターということになる。フィラデルフィアに存在するウズベキスタン・コミュニティに支えられ、ルジボエフを65カ月振りにインタビューした。


――ヌルスルタン、2018年11月にキルギスで取材をさせてもらって以来、5年5カ月振りにインタビューできて凄く嬉しいです。

「あぁ、WEFでマルコス・ソウザと戦った次の日にインタビューをしてもらったね。覚えているよ(笑)」

──あの時、ヌルスルタンはUFCかBellatorファイターになってウズベキスタンのMMAを盛り上げたいと言っていました。そして今、UFCファイターになっています。

「サンキュー。あれから、僕も随分と場数を踏んできた。それと同じように、ウズベキスタンのMMAも成長してきた。あの頃、ウズベキスタンではMMAの大会も行われてもいなかったけど、今ではいくつかの団体があってイベントも定期的に開かれている。良い感じで成長しているよ」

──当時は国内に良い練習環境がなく、チェチェンで練習をしていると言っていました。その後、練習環境はどのようになっているのでしょうか。

「あれからウズベキスタンでもMMAの練習ができるようになっていたけど、3年前から米国にやってきてフィラデルフィアのマルコスMMAで、ジョアォン・マルコスの指導を受けているんだ」

──言葉、食事、習慣、随分とウズベキスタンと米国と違うと思いますが、困難なことはなかったですか。

「ペンシルヴァニアにはウズベキスタン料理のレストランもあるし、ウズベキスタンのコミュニティが、しっかりと存在しているので何も問題はない。今の練習環境を与えてくれたスポンサーにはとても感謝している」

──日本ではないですが、韓国のスウォンに中央アジアやコーカサスのファイターが集まって練習しているジムもありました。

「あぁアジスベク・ノロフのところだろう?」

──ハイ、そうです!!

「アジスベクはとても仲が良いんだ、普段から頻繁に連絡を取り合っている。彼もウズベキスタンを離れて頑張っている。ウズベキスタンでも練習環境は整いつつあるけど、僕と毎日練習したいと思う相手がいなかった。だから、米国で練習しようと思ったんだ(笑)。米国では1日に3部練をすることも可能だ。休んで、食べて、練習──その繰り返しの日々を送ることができる」

──そのような練習環境を経て、UFC2戦目を迎えます。今の気持ちは?

「全て順調に調整できている。3カ月かけて、しっかりと準備してきた。その全てを土曜日の夜に披露したいと思っている」

──では対戦相手の印象を教えてください。

「若いのに3度も、UFCで戦っている。良い選手だと思う」

──どのような試合をファンに見せたいと思っていますか。

「それは秘密だ。試合を見てほしい」

──どのような作戦かということでなく、どのような試合を見せたいのかを教えてもらっても良いですか。

「ケージのなかでは何が起こるか分からない。でも、何かを残したい。そして、ウズベキスタンに持っているフィットネスジムの皆に、この間の練習の成果を見せたい」

■視聴方法(予定)
3月31日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC FIGHT PASS
午前7時30分~U-NEXT

■UFC ESPN54対戦カード

<女子フライ級/5分5R>
エリン・ブランクフィールド(米国)
マノン・フィオホ(フランス)

<ウェルター級/5分3R>
ヴィセンチ・ルケ(ブラジル)
ジョアキン・バックリー(米国)

<ミドル級/5分3R>
ブルーノ・シウバ(ブラジル)
クリス・ワイドマン(米国)

<ミドル級/5分3R>
ヌルスルタン・ルジボエフ(ウズベキスタン)
セドリクス・デュマ(米国)

<フェザー級/5分3R>
ビル・アレジオ(米国)
カイル・ネルソン(カナダ)

<ウェルター級/5分3R>
チディ・ンジョグアニ(米国)
リース・マッキー(アイルランド)

<フェザー級/5分3R>
ネイト・ランドヴェール(米国)
ジャマル・エマース(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
ヴィルナ・ジャンジローバ(ブラジル)
ルピタ・ゴディネス(メキシコ)

<フェザー級/5分3R>
ジュリオ・アルセ(米国)
エルベウチ・バーンズ(米国)

<フェザー級/5分3R>
コナー・マシューズ(米国)
デニス・ブズーキア(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イボ・アスラン(トルコ)
アントン・トゥルキャリ(スウェーデン)

<女子フライ級/5分3R>
メリッサ・ガト(ブラジル)
ヴィクトリア・ダダコワ(ロシア)

<ミドル級/5分3R>
アンドレ・ペトロスキー(米国)
ジェイコブ・マルクーン(豪州)

<バンタム級/5分3R>
エンジェル・パチェコ(米国)
キャオラン・ローラン(アイルランド)

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45 DEEP MMA MMAPLANET NØRI o PANCRASE Pancrase341 ROAD FC YouTube キム・ジヨン パンクラス ライカ 海外 端貴代 重田ホノカ 食事

【Pancrase341】重田ホノカの挑戦を受ける、端貴代「格闘魂の底力とは――気合いと根性です」

【写真】今年の9月でデビュー20周年を迎える端(C)SHOJIRO KAMEIKE

31日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE341にて、フライ級QOPの端貴代が重田ホノカの挑戦を受ける。
Text by Shojiro Kameike

2021年10月にNØRIを下して暫定QOPとなった端は、正規王者に昇格後、ダイレクトリマッチでもNØRIに判定勝ちを収めて初防衛に成功した。11カ月の試合に向けて――というよりも、20年にも及ぶ端のキャリアを支えてきた「格闘魂の底力」について訊いたところ、まさかの答えが返ってきた。


――練習後のお疲れのところインタビューを受けていただき、ありがとうございます。

「こちらこそ、すみません。こんな遅い時間に……(※22時から取材がスタート)」

――我々は問題ないのですが、端選手は現在どのようなスケジュールで1日を過ごしているのですか。

「昼間は飲食店で仕事をしていて、夜は19時から22時、23時ぐらいまでジムで練習です。あと土日は実家(御食事処 三好弥)の手伝いをしています」

――今、ファイターが注目するお店といえば三好弥か「スナックふじの」ですね。

「アハハハ! 何か始まりましたね(笑)」

――多くの選手が「端さんの練習はハードだ」と口にします。試合前と通常の期間で練習内容は異なるのでしょうか。

「通常はいろんなことを試して、試合前は試合でやることを徹底して練習するという感じですね。だいたい試合の2カ月前ぐらいから練習内容を切り替えます」

――端選手がプロデビューした頃は、ショートノーティスで試合をすることも多かったです。一方で今回は前の試合から1年という期間が空いており、一般的には「ブランク」と呼ばれる試合間隔ではあります。ただ、現在の端選手にとっては、それぐらいの試合間隔のほうが良いのでしょうか。

「昔のように試合を詰め込むよりは――というぐらいですね。でも最近は、試合のない期間に試し、繰り返していることが試合でも繋がってきています。そういう意味では良い試合間隔なのかもしれないですね。

試合も『機会があれば』という感じで、試合が無ければ無いで……とは考えています。昔は私の人生には格闘技しかなかったけど、今はそういうわけではないですし」

――前回の試合が1年前なので昔の話を振り返るようですが……、端選手は試合前に「相手の心を折りに行く試合をしたい」と仰っていました。実際のところ、相手の心を折ることはできたのですか。

「う~ん、相手も心が強かったですよね。そこで自分も仕留めることができませんでした。私自身がもっと攻めていれば――特に最後は腕十字を極めきりたかったです」

――1Rにあれだけ端選手がコントロールしていながら、2RにNØRIがバックマウントを奪うなど盛り返してくるとは思いませんでした。

「2Rは私がミスしましたね。今もまだ凄く反省しています(苦笑)」

――端選手がバックマウントまで奪われる展開は、あまり記憶にありません。

「そう言われてみると、私も最近では記憶にないですね。特に四の字で腕まで巻き込まれて。自分でも過去最悪のポジションを許してしまったと思います。だから、なのか……2Rは『アレッ!? こんな展開になっちゃった』と、焦りはありました。ただ、あの展開で極められることはないとは感じていましたね。何がどう、ということではなく長年の経験と感覚で(笑)」

――2Rを凌いだ端選手が、3R以降は一方的に攻め込みました。あの展開で心が折れなかったNØRI選手も成長を感じさせたと思います。そんななかで端選手は、どの段階で仕留めようと考えていたのですか。

「一つひとつ積み上げて、最後に極めたいと思っていました。私って、いきなりバシッと極めるスタイルではないじゃないですか。とにかく、私がやることは決まっている。自分がやることを徹底して、貫く。ラウンドごとに細かく作戦を変えるわけでもないですし」

――それが端選手らしさであり、凄さだと思います。フルラウンドに渡って、試合前に決めたスタイルを貫くために動き続ける。普段は体力面のトレーニングはしているのですか。

「体力トレーニングというより、サーキットトレーニングやミット打ちで鍛えていきますね。NØRI選手との初戦は相手がサークリングし続けたので、私も打撃を練習どおりには出せなかったんですよ。それが再戦では相手も組んできてくれて、私としては戦いやすい面はありました。戦いやすい……うん、『試合をした!』という実感はありました」

――端選手はこれまでスマックガール、DEEPジュエルス、そしてパンクラスQOPのベルトを巻いてきました。今の端選手にとってベルトとは、どのようなものなのでしょうか。

「私の『生きた証』ですかね。毎日やり続けてきたことが結果として、形として表れたのがベルトなんじゃないかなって思います。特にパンクラスのベルトに対しては、『守りたい』という気持ちが強いです。今まで初防衛に成功したことがなかったですし」

――確かに。これまでスマックガールはベルトを巻いたあとに活動休止となってしまいましたし、DEEPジュエルスは初防衛戦でキム・ジヨンに敗れました。

「あの頃はベルトを持って海外に挑んでいた時期でもあったんですよ」

(C)STRIKEFORCE

――スマックガール王者となってストライクフォースの王座決定戦に出場

(C)DAVE MANDEL

DEEPジュエルスのベルトを巻いてインヴィクタFC王座に挑戦したりと……。

「はい。だからといって初防衛戦に憧れがあったというわけではないんですけど――やっぱりキム・ジヨンとの防衛戦が、ずっと心のどこかに残っていて。

(C)ROAD FC

キム・ジヨンとはROAD FCで試合をしたことがあり、その時はドローでした。

そうやって一度対戦したことがある選手のことって何となく分かるじゃないですか。だから再戦では……、何と言えばいいのか」

――再戦では試合前から「勝てる」と考えていたということですか。

「勝つか負けるかは、やってみないと分からないと思うんです。でも試合に向かうまでの気持ちを考えると、自分の中に甘さがありました」

――つまり自分に負けたということですね。

「そんな甘えがあった自分に納得がいかないと言ったら言い過ぎかもしれないけどね。だからNØRI選手との初防衛戦では甘えもなく、私としては初戦の続きを戦うという意識で。ただ初防衛に成功して、NØRI選手との再戦に勝っても結局は満足できなくて(苦笑)。

勝ったことについては、その時は嬉しいです。でも試合後は『あぁバックを取られてしまったなぁ』とか「仕留めきれなかった!」という気持ちのほうが強くなります。だから、ずっとMMAを辞めることができないのかもしれませんね」

――前回のNØRI戦で初防衛を果たすことができました。端選手の中はキム・ジヨン戦のことを払拭できたかもしれません。そして今回も防衛戦になったということは、端選手としては今後もタイトルマッチを続けていきたいということなのでしょうか。

「私としてはタイトルマッチでも、ノンタイトルマッチでも構いません。ただ、私ももうこの年齢なので……」

――どういうことでしょうか。

「NØRI選手に勝って暫定王者になったのが2021年で。そのベルトを持って他のところで戦えるような状態でもなかったです。だから諦めたというわけでもなく、とにかく目の前の試合を考える。チャンピオンであるかぎり、絶対に防衛戦はやらないといけないものじゃないですか。だからMMAを続けるために、このベルトがあるんだなと思っています。

それと今、パンクラスの女子が徐々に盛り上がってきていますよね。同じ大会で女子の試合が他にも3試合あって。私が対戦する重田選手もそうですけど、新しい選手が上がってきて対戦するというのが楽しいんです。もっともっと選手層が厚くなってくれればって」

――では重田選手について印象を教えてください。

「ライカ戦の前はストロー級でやっていたので、当時は対戦するとは考えていなかったです。でもストロー級の時も、『強い選手が出てきなぁ。こういう戦い方を自分もやってみたいなぁ』と思っていましたよ。それは重田選手に限らず、他の選手の試合を視ていても。

でもやっぱりライカ戦の時は『本当に強いなぁ』と感じました。私もライカさんとは対戦したことがありますし。特にテイクダウンする力は本当に強いと思いますね」

――端選手にとっては久々に組みが中心の相手と対戦することになります。

「私の場合は、グラップラーの選手でもあっても組みを避けてくるじゃないですか。だからガッツリ組んで来る試合は、もともと少なかったです(苦笑)。だから重田選手が、どう出て来るのか。ライカ戦を視ると、私としては『テイクダウンしてから、こういうふうに展開できると良いなぁ』と思いました」

――端選手が重田選手のように戦いたいと思うことがあるのですか。

「アハハハ、そうです。『私がやりたい戦いってコレだな』と思う展開がありました。どの展開かは言わないけど、コントロールの方法としてはベーシックで強いと思います。だから私もやりたいけど、自分もしっかり対策できるという面はありますね」

――重田選手の煽りについては、どのように受け止めていますか。

「別に、どうとも思っていないです。私たちがやっているのは言葉の交換ではないので。MMAだから体で感じるものだし、次の試合で感じてもらえることができるとは思います」

――試合で相手に感じさせたいものが、記者会見で仰っていた「格闘魂の底力」なのでしょうか。

「あぁ、あれですね。格闘魂の底力とは――気合いと根性です」

――そこですか!

「やっぱり最後にモノを言うのは気合いと根性なので。次の試合も気合いと根性で頑張ります!」

■視聴方法(予定)
2024年3月31日(日)
午後1時00分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

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45 MMA MMAPLANET MMAとフィジカル o Special YouTube   栄養 鈴木陽一 食事

【Special】『MMAで世界を目指す』第4回:鈴木陽一ALIVE代表「MMAファイターの食事と栄養」─02─

【写真】練習も試合も屋内であることが多いMMAだが、それが栄養素にも関わってくるとは――(C)SHOJIRO KAMEIKE

世界的なスポーツとなったMMAで勝つために、フィジカル強化は不可欠となった。MMAPLANETでは「MMAに必要なフィジカルとは?」というテーマについて、総合格闘技道場ALIVEを運営する鈴木社長=鈴木陽一代表が各ジャンルの専門家とともに、MMAとフィジカルについて考えていく連載企画をスタート。公認スポーツ栄養士の牛島千春氏とMMAファイターの食事と栄養について考える第4回目の後編は、栄養素について学ぼう。
Text by Shojiro Kameike

<連載第4回Part.01はコチラから>


鈴木 そもそも「栄養とは何か」というところから説明していただけますか。

牛島 栄養の基本とは、まず「栄養の5大要素」ですよね。糖質(炭水化物)、脂質、たんぱく質がエネルギーに変わる栄養素で、3大栄養素とも呼ばれます。さらにビタミンとミネラルを加えたものが5大栄養素です。何をどれだけ摂取すればOKということはなく、一番大事なのは5大栄養素のバランス——3大栄養素をしっかり摂りながら、それらをエネルギーに変えてくれるビタミンとミネラルが必要になってきます。

鈴木 我々がやっているMMAというのは、まず体重制限がある。普段から練習で体を動かしながら減量しないといけません。またピリオダイゼーションとして、①試合がない時期の練習②試合が決まってからの練習③試合直前の練習と内容が変わってくるために、摂取すべき栄養も違ってきますか。

牛島 コンタクトスポーツですと、試合時のエネルギー源は糖質になると思います。すると糖質は減らしすぎず、脂質でコントロールしていくというアプローチをすることが多いです。それは①②③どの時期も変わりません。

鈴木 なるほど。いわゆる「運動性貧血」については、どう考えますか? 運動のしすぎで起こってしまう貧血のことですね。MMAもコンタクトスポーツだから、血液が壊れてしまうことが多くて。鉄分を含めたミネラルの摂取については注意していますか。

牛島 注意していますね。コンタクトスポーツとして体を動かした時に血液が壊れてしまうこともありますし、そもそも汗を流すと鉄分も一緒に体内から出てしまいます。そのため鉄分はもちろん、鉄分を吸収するためのビタミンCやたんぱく質も一緒に摂取しないといけない。こうした食べ合わせが大事になります。

それとコンタクトスポーツの場合は怪我も多くなるので、怪我をしにくい――あるいは回復が早くなる骨づくりも大切ですよね。骨の材料となるのは、たんぱく質とカルシウムです。ただ、カルシウムは吸収率が良くないので、ビタミンDと一緒に摂らないといけません。ビタミンDって紫外線によって生成される、少し変わった栄養素で。

鈴木 紫外線によって生成される、というのは……。

牛島 たとえば紫外線が少なくなる冬場は、ビタミンDが不足しがちになります。それと室内競技は紫外線を浴びることが少ないため、屋外競技よりもビタミンD不足になりやすいです。すると疲労骨折を引き起こしたりとか。そういった面でビタミンDは最近注目されている栄養素なんですよ。

栄養を考えるには食事だけでなく生活習慣から――自然って凄い

鈴木 まさにMMAは、その室内競技じゃないですか。室内競技のほうが骨の生成は難しくなると。

牛島 さらに減量がありますから。大幅な減量、脱水を行うと、どうしても骨の生成に大きな影響を及ぼしてしまいます。

鈴木 結果、怪我しやすい体になってしまう。

牛島 ビタミンDはお魚に多く含まれています。お肉だけではなく、お魚もしっかり食べたほうが良いですね。お肉を食べる時でも、もう一品――しらす、ツナ、サバ缶でも何でもお魚を加えるようにはアドバイスしています。

鈴木 室内競技だとビタミンDが不足する……それは知らなかったです。盲点ですね。

牛島 コロナ禍はビタミンD不足になる方が多かったんですよ。家から出ないために紫外線を浴びませんし、ビタミンD不足が免疫力の低下を引き起こしたりとか。それと室内競技のアスリート、デスクワークの方、さらに日焼け止めを塗りすぎている方はビタミンDが不足しやすくなります。カーテン越しの紫外線では足りなくて、やはり外に出ないといけないです。

鈴木 昔から野球選手もそうですし、格闘家も「長時間のジョギングは必要か」という議論がありました。ビタミンDのことを考えると、日に当たりながらのジョギングやランニングも必要になってくるのですね。

牛島 必要だと思います。食事からの摂取と、日に当たって紫外線による生成も大事です。ジョギングやランニングを朝に行うのは、体内のリズムを整えることはもちろん、紫外線を浴びてビタミンDを生成することにも役立つことで。

鈴木 昔から人間が理論ではなく体験や習慣に基づいて行っていたことは、実は理に適っているんですね。たとえばトレッドミルで走ると、スピードや心拍数を管理できるけど、必要なのはそれだけではない。夜に走っている場合は体脂肪が減って、毛細血管は増えるけど、骨密度には関係なかったりとか。

牛島 そういうことになりますね。

鈴木 これが一番興味深いところで。スポーツトレーナーや理学療法士といった専門分野が違えば、観点も違うし意見も異なってくる。各々の意見が間違っているわけではなく、いろんな専門家の意見を聞き、取り入れるべきものは取り入れていかないといけない。

牛島 私もいろんな専門家の方々のご意見を聞きたいです。

鈴木 MMAファイターも栄養について学んでいる人は多いと思います。しかし個人では俯瞰で考えることができない。どうしても次の試合について考えることが優先になってしまいます。だからこそ学校で専門的なものを学び、牛島さんのような専門家の意見を聞いてみないと分からないですよね。

それと栄養素の摂取といえば、やはりいろんなものを摂取するべきですか。たんぱく質といっても肉、卵、豆類と様々で。

バランスが良い食事とは……。次回はファイター向きの食事内容と時間について考えます

牛島 もちろんです。付加価値もあるので……。

鈴木 付加価値というのは?

牛島 たとえばお肉の中でも牛肉は赤身が多いのは、鉄分が多いためなんです。だから牛肉を食べると、たんぱく質だけでなく鉄分も摂取できるのが付加価値になります。豚肉は他のお肉よりもビタミンB1が多いし、鶏肉はBCAAが多かったりアミノ酸バランスが良いので、筋肉づくりに効果的である、とか。

反対にお肉からビタミンDは、あまり摂れません。お魚はたんぱく質だけでなく、オメガ3など良い脂質が含まれていますし、大豆製品であれば食物繊維が入っています。だから、たんぱく質の付加価値も考えて、いろんな種類の食べ物を摂取したほうが良いですね。

鈴木 こうなってくると、もう本当に専門家じゃないと無理ですよ(笑)。トレーナーだけではなく、牛島さんのような公認スポーツ栄養士と一緒に考えたほうが良い。次回も牛島さんと、ファイターに必要な食べ物や食べる時間などを考えていきたいと思います。

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